JP5099801B2 - エポキシ樹脂組成物及び電気積層板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非ハロゲン化処方(ハロゲンフリー)で優れた難燃性を有し、且つ、耐熱性および耐湿性に優れるため、積層部品材料、半導体封止材料、電気絶縁材料、繊維強化複合材料、塗装材料、成型材料、接着剤材料などに用途に使用でき、とりわけ電気用途である積層板(プリント配線板)および半導体封止材料として有用なエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は、その優れた密着性、電気特性(絶縁性)ゆえに電気電子材料部品を中心に幅広く使用されている。
【0003】
これら電気電子材料部品は、ガラスエポキシ積層板やIC封止材に代表される様に高い難燃性(UL:V−0)が求められる為、通常ハロゲン化されたエポキシ樹脂が用いられている。例えば、ガラスエポキシ積層板では、難燃化されたFR−4グレードとして、一般に臭素で置換されたエポキシ樹脂を主原料成分とし、これに種々のエポキシ樹脂を混合したエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂用硬化剤とを配合して用いられている。
【0004】
ところが近年、ダイオキシンに代表されるような有機ハロゲン物質の毒性が大きな問題となっており、ICパッケージにおける高温時のハロゲン解離による電気的な長期信頼性への悪影響などから、ハロゲンの使用量を低減するか、ハロゲンに代替できる他化合物を使用した難燃剤、あるいは他の難燃処方が強く求められていた。
【0005】
この様なハロゲンによる難燃処方に代わる技術として、例えば、リン系化合物などの難燃剤を添加する方法知られており、例えば、国際公開WO97/12925号公報には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂との混合エポキシ樹脂と、トリアジン環を有するフェノール樹脂と、リン化合物とを用いる技術が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記国際公開WO97/12925号公報記載の技術は、ノンハロゲン系での難燃効果は良好であるものの、架橋密度が低下し、耐熱性の低下を招く他、リン系化合物の使用により、その可塑化効果による極端な耐熱性の低下や耐水性の低下を招いていた。
【0007】
特に、電気積層板や半導体封止材料用途等の電気電子分野では、高温高湿処理、煮沸処理、PCT(プレッシャークッカーテスト)処理が行われる為、吸湿処理後における高度な耐熱性(ハンダ性)が求められており、耐熱性や耐水性の向上は吸湿処理後の耐熱性を高めるうえで不可欠なものであった。
本発明が解決しようとする課題は、ノンハロゲン系で優れた難燃効果を発現させると共に、硬化物の耐熱性や耐水性を高めることができ、電気電子分野、特に電気積層板用途において優れた耐ハンダ性を発現できる難燃性エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とリン含有化合物(C)からなるエポキシ樹脂において、エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とフェノールノボラック樹脂(a−2)とを反応させた構造(A−1)、又はビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とノボラック型エポキシ樹脂(a−3)とビスフェノール類(a−4)とを反応させた構造(A−2)を有する、実質的にハロゲン非含有のものを用いることにより、難燃性と耐熱性と耐湿性とを兼備させることができることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とフェノールノボラック樹脂(a−2)とを反応させた構造(A−1)、又はビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とノボラック型エポキシ樹脂(a−3)とビスフェノール類(a−4)とを反応させた構造(A−2) を有する、実質的にハロゲン非含有の多官能エポキシ樹脂(A) 、硬化剤(B)、及びリン原子含有化合物(C)を必須成分とすることを特徴とする難燃性エポキシ樹脂組成物、及び、 該組成物をクロス状基材に含浸後、それを積層し加熱加圧成形してなることを特徴とする電気積層板に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる多官能エポキシ樹脂(A)は、既述の通り、
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とフェノールノボラック樹脂(a−2)とを反応させた構造(A−1)、又は
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とノボラック型エポキシ樹脂(a−3)とビスフェノール類(a−4)とを反応させた構造(A−2)
を有するものであり、これにより多官能エポキシ樹脂(A)自体の難燃性を高められる他、硬化物の耐水性、耐熱性が飛躍的に向上する。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂を予め一部反応させグラフト化することによって得られたエポキシ樹脂を用いることで靭性と耐熱性の相反する特性を具備でき、密着性を損なうことなく耐熱性をも具備することができる。このため、特に電気積層板用途において性能バランスに優れたものとなり、耐湿耐熱性(ハンダ性)が従来に比べ大幅に改善される。
【0011】
また、多官能エポキシ樹脂(A)は、実質的にハロゲン原子非含有のものが好ましい。ここで、実質的にハロゲン原子非含有の多官能エポキシ樹脂(A)とは、エピクロルヒドリンと反応する前の原料中にハロゲン原子が含まれていないか或いはハロゲン化された化合物で変性していないものである。即ち、実質的にハロゲン原子非含有の多官能エポキシ樹脂(A)中には、該エポキシ樹脂の合成において原料として使用されるエピクロルヒドリンに起因する微量のハロゲン原子は混入してもよい。この様な実質的にハロゲン原子非含有の多官能エポキシ樹脂(A)中において許容されるハロゲン原子含有量としては、具体的には、多官能エポキシ樹脂(A)中5000ppm以下であることが好ましい。
【0012】
このような多官能エポキシ樹脂(A)を構成するビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)としては、具体的にはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0013】
これらのなかでも、耐熱性と機械強度のバランス面からは、BPA型エポキシ樹脂およびBPF型エポキシ樹脂が特に好ましい。また、難燃性の面からは、ビスフェノールF型およびビスフェノールS型が好ましい。
【0014】
これらビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)は、耐熱性と密着性とのバランスの点からエポキシ当量150〜350g/eqであることが好ましい。
【0015】
構造(A−1)で用いるノボラック樹脂(a−2)は、特に制限されるものではないが、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、イソブチルフェノール、タ−シャリブチルフェノール、セカンダリブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール、n−ドデシルフェノール、イソアミルフェノール、イソオクチルフェノール、ターシャリアミノフェノール、ターシャリオクチルフェノール、ビスフェノールA等のフェノール類をホルマリン類等で架橋したノボラック樹脂が挙げられる。これらのなかでも特に耐熱性の改善効果に優れる点からフェノールをホルマリンで架橋したフェノールノボラック樹脂、又はクレゾールをホルマリンで架橋したクレゾールノボラック樹脂が好ましい。
【0016】
ノボラック樹脂(a−2)は、耐熱性と、電気積層板用途におけるクロス状基材への含浸性とのバランスの点から軟化点50〜150℃であることが好ましい。
【0017】
構造(A−1)を有する多官能エポキシ樹脂(A)は、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とノボラック樹脂(a−2)とを反応させて得られる構造を有するものである。両者の反応割合は特に制限されるものではないが(a−1)中のエポキシ基と、(a−2)中のフェノール性水酸基との当量比で、エポキシ基/フェノール性水酸基=1/0.05〜1/0.50なる割合であることが耐熱性と密着性とのバランスに優れる点から好ましい。
【0018】
構造(A−1)を有する多官能エポキシ樹脂(A)の製造方法は、充分なグラフト化率が得られ、かつゲル化が起こらない様な条件であれば特に制限はないが、必要に応じて触媒の存在下、上記各原料を25〜200℃で反応させることが好ましい。
【0019】
上記反応は、無触媒でも反応が進行する場合もあるが、触媒を使用してもよい。使用可能な触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、イミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等リン系の触媒等が挙げられる。
【0020】
次に、構造(A−2)を有する多官能エポキシ樹脂(A)で用いるノボラック型エポキシ樹脂(a−3)は、特に制限されるものではなく、前記したノボラック樹脂(a−2)にエピハロヒドリンを反応させたエポキシ樹脂が何れも使用できる。そのなかでも特に難燃性、耐熱性、耐水性に優れる他、基材との密着性と耐熱性とのバランスに優れる点からフェノールノボラック樹脂にエピハロヒドリンを反応させた、いわゆるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、又は、クレゾールノボラック樹脂にエピハロヒドリンを反応させた、いわゆるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0021】
また、ノボラック型エポキシ樹脂(a−3)は、耐熱性と、電気積層板用途におけるクロス状基材への含浸性とのバランスの点から軟化点50〜150℃であることが好ましい。
【0022】
次に、構造(A−2)を有する多官能エポキシ樹脂(A)で用いるビスフェノール類(a−4)としては、特に制限されるものではないが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールA、ビスフェノールS等が挙げられるが、耐熱性と機械強度のバランス面からは、ビスフェノールAおよびビスフェノールFが好ましく、また、難燃性の面からは、ビスフェノールFおよびビスフェノールSが好ましい。
【0023】
構造(A−2)を有する多官能エポキシ樹脂(A)は、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とノボラック型エポキシ樹脂(a−3)とビスフェノール類(a−4)とを反応させて得られる構造を有するものである。(a−1)、(a−3)及び(a−4)の反応割合は特に制限されるものではないが、(a−1)中のエポキシ基、(a−3)中のエポキシ基、及び(a−4)中の水酸基の当量比で(a−4)/[(a−1)+(a−3)]=0.05/1〜0.50/1となる割合であって、かつ、(a−1)及び(a−3)の重量比が90/10〜10/90となる割合が耐熱性と密着性とのバランスに優れる点から好ましい。
【0024】
構造(A−2)を有する多官能エポキシ樹脂(A)の製造方法は、充分なグラフト化率が得られ、かつゲル化が起こらない様な条件であれば特に制限はないが、必要に応じて触媒の存在下、上記各原料を25〜200℃で反応させることが好ましい。
【0025】
上記反応は、無触媒でも反応が進行する場合もあるが、触媒を使用してもよい。使用し得る触媒としては、構造(A−1)を有する多官能エポキシ樹脂(A)の製造方法で例示したものが何れも使用できる。
【0026】
また、上記構造(A−1)を有する多官能エポキシ樹脂(A)、構造(A−2)を有する多官能エポキシ樹脂(A)の何れの場合も、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)の一部をその他の多官能エポキシ樹脂に置き換えて反応を行ってもよい。
【0027】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)と併用し得るその他の多官能エポキシ樹脂としては、特に制限されるものではないが、
レゾルシノールジグリシジルエーテル、1−6ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、ジメチルビスフェノールCジグリシジルエーテル等のその他の2官能型エポキシ樹脂、
【0028】
1,6−ジグリシジルオキシナフタレン型エポキシ樹脂、1−(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)−1−(2−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)−1−フェニル−メタン等のナフタレン系エポキシ樹脂、
【0029】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールADノボラック樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、
シクロヘキセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂、トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂、シクロペンテンオキサイド基を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンのエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂、
【0030】
フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルp−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステル、トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、
ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルp−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、
【0031】
ジグリシジルヒダントイン、グリシジルグリシドオキシアルキルヒダントイン等のヒダントイン型エポキシ樹脂、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂、
【0032】
フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂、
【0033】
テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、テトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0034】
以上詳述した多官能エポキシ樹脂(A)は、構造(a−1)及び構造(a−2)の何れも場合においても、単純にビスフェノール型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂とをブレンドしたものよりも耐熱性、密着性の特性バランスが向上する。これらの性能がより顕著に現れる点からエポキシ当量は、200〜400g/eqであることが好ましい。
【0035】
これらの多官能エポキシ樹脂(A)は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種類以上の併用も可能である。また、反応後のエポキシ樹脂として、一平均分子当たり少なくとも2個より多くなる様であれば、一部以下のn−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、P.Sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド等の1官能エポキシ樹脂を併用してもよい。
【0036】
次に、硬化剤(B)は、難燃性、耐熱性及び耐湿性の点からフェノール骨格とトリアジン骨格とを有する化合物(b)であることが好ましい。
【0037】
このフェノール骨格とトリアジン骨格とを有する化合物(b)は、特に制限されるものではないが、トリアジン化合物と、フェノール類と、アルデヒド類とを縮合反応させて得られる、種々の化合物の混合物(以下、これを「混合物(b)」と略記する)として用いることが好ましい。
【0038】
ここで、フェノール骨格とはフェノール類に起因するフェノール構造部位を現し、また、トリアジン骨格とはトリアジン化合物に起因するトリアジン構造部位を現す。
【0039】
ここで用いられるフェノール類としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール等のアルキルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールA、レゾルシン、カテコール等の多価フェノール類、モノヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシナフタレン当のナフトール類、その他フェニルフェノール、アミノフェノール等が挙げられる。これらのフェノール類は、単独又は2種類以上併用で使用可能であるが、最終的な硬化物が難燃性に優れ、且つアミノ基含有トリアジン化合物との反応性に優れる点からフェノールが好ましい。
【0040】
次に、トリアジン環を含む化合物としては、特に限定されるものではないが、下記一般式1又はイソシアヌル酸が好ましい。
【0041】
【化1】
(一般式1中、R1、R2、R3は、アミノ基、アルキル基、フェニル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エーテル基、エステル基、酸基、不飽和基、シアノ基のいずれかを表わす。)
【0042】
前記一般式1で示される化合物のなかでも特に、反応性に優れる点から前記中、R1、R2、R3のうちのいずれか2つ又は3つがアミノ基であるメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのグアナミン誘導体に代表されるアミノ基含有トリアジン化合物が好ましい。
【0043】
これらの化合物も使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく2種以上を併用することも可能である。
【0044】
次に、アルデヒド類は、特に限定されるものではないが、取扱いの容易さの点からホルムアルデヒドが好ましい。ホルムアルデヒドとしては、限定するものではないが、代表的な供給源としてホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0045】
これらトリアジン化合物と、フェノール類と、アルデヒド類とを縮合反応させて得られる混合物(b)のなかでも、特にトリアジン化合物として、前記したメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのグアナミン誘導体に代表されるアミノ基含有トリアジン化合物を用いて得られる混合物(以下、「混合物(b’)と略記する」が、難燃性の改善効果が顕著なものとなり好ましい。
【0046】
混合物(b’)としては、具体的には、
B1:アミノ基含有トリアジン化合物とフェノール類とアルデヒド類との縮合反応物、
B2:アミノ基含有トリアジン化合物とアルデヒド類との縮合反応物、
B3:フェノール類とアルデヒド類との縮合反応物、
B4:フェノール類、
B5:アミノ基含有トリアジン化合物
の混合物であって、かつ、
該混合物中に
−X−NH−CH2−NH− (b1)
−X−NH−CH2−Y− (b2)
(式中、Xはトリアジン骨格、Yはフェノール骨格を示す。)
なる構造部位を
(b2)/(b1)=1.5〜20
となる割合で含有するものが難燃効果の改善効果が飛躍的に向上し、かつ、エポキシ樹脂(A)との相溶性に優れる点から好ましい。
【0047】
混合物(b’)中、未反応成分たるフェノール類(B4)、アミノ基含有トリアジン化合物(B5)は、若干残ってもよいが、3重量%以下の範囲であることが好ましい。
【0048】
本発明において、トリアジン化合物と、フェノール類と、アルデヒド類とを縮合反応させて得られる前記混合物、または、トリアジン化合物としてアミノ基含有トリアジン化合物を用いた混合物(b’)は、混合物(b)又は混合物(b’)中の窒素原子含有量として5重量%以上、なかでも8重量%以上が好ましく、また、ボールアンドリング法によるグリセリン中で測定した軟化点が50℃以上、好ましくは80℃以上が好ましい。また、コーンプレート型粘度計で測定した150℃での溶融粘度が0.1Pa・s以上、好ましくは0.3Pa・s以上が好ましい。
【0049】
次に、本発明で使用するリン原子含有化合物(C)としては、ハロゲン原子を含まず且つリン原子を含有している化合物がいずれも使用可能であり、ホスフェート類、ホスホネート類、ホスフィネート類、ホスフィンオキシド類、9,10−ヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドといった5価のリン化合物、ホスファイト類、ホスホナイト類、ホスフィナイト類、ホスフィン類といった3価のリン化合物、赤リン、リン酸、酸性リン酸エステル、フォスファゼン環含有化合物、非ハロゲンのフェニルホスフォン酸とその誘導体が挙げられ、例えばフェニルホスフォン酸、ジフェニルホスフォン酸、他に誘導体としてフェニルホスフォン酸ジメチルエステルに代表されるフェニルホスフォン酸エステルなどが挙げられ、いずれも使用可能であるが、耐熱性と耐湿耐半田特性に優れることから、下記一般式2
【0050】
【化2】
(一般式2中、Rはそれぞれ独立的に、水素原子、又は炭素原子数1〜10の脂肪族基若しくは芳香族基であり、mは1〜4の整数、nは1〜4の整数をそれぞれ表す。尚、炭素原子数1〜10の脂肪族基若しくは芳香族基としては、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、フェニル基等が挙げられる。)
で表される化合物、又は、
【0051】
下記一般式3
【化3】
(一般式3中、Rはそれぞれ独立的に、水素原子、又は炭素原子数1〜10の脂肪族基若しくは芳香族基であり、mは1〜4の整数、nは1〜4の整数をそれぞれ表す。尚、炭素原子数1〜10の脂肪族基若しくは芳香族基としては、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、フェニル基等が挙げられる。)
で表される。
【0052】
これらのなかでも、特に難然効果に著しく優れる点から一般式2又は一般式3においてRが水素原子であることが好ましい。また、耐水性の点から一般式3よりも一般式2の方が好ましく、よって、特に一般式2においてRが水素原子である9,10−ヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドが最も好ましい。
【0053】
上記リン原子含有化合物(C)の使用量には特に制限はないが、組成物中の固形分に対して5〜50重量%となる範囲であることが好ましい。即ち、5重量%以上においては、難然効果が飛躍的に向上する他、50重量%以下においては、機械物性に優れたものとなる。これらのバランスに優れる点から特に10〜40重量%の範囲が好ましい。特に、更に上記リン含有化合物は、とりわけ難燃性と耐湿性の点から硬化物中のリン含有量が1〜10重量%、特には1〜5重量%となる様に配合することが難燃効果と耐湿性とに優れる点から好ましい。
【0054】
また、本発明においては、リン原子含有化合物(C)として上記一般式1又は一般式2で表される化合物(以下、これを「化合物(C’)」と略記する)を用いる場合には、予め、また予め多官能エポキシ樹脂(A)と反応させて使用するか、あるいは硬化反応時において多官能エポキシ樹脂(A)と反応する様にしても良い。
【0055】
ここで、化合物(C’)を予め多官能エポキシ樹脂(A)と反応させるには、例えば20〜200℃の温度条件下で反応させればよい。該反応は無触媒であってもよいが触媒存在下に行うことが好ましく、使用し得る触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、イミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン、四級ホスホニウム塩等が挙げられる。また、溶媒存在下に反応を行うことができるが、化合物(C’)が溶媒と反応することもあるので、無溶媒下に行うことが好ましい。また、上記した触媒としてはハロゲン原子非含有のものを用いることが好ましい。
【0056】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を用いてもよい。硬化促進剤としては公知慣用のものがいずれも使用できるが、例えば、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられ、これらは単独のみならず2種以上の併用も可能である。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分に加え、更に必要に応じ、有機溶剤(E)を使用することができる。とりわけ、電気積層板用のワニスを調整する際は、前記(A)、(B)、(C)及び(E)の各成分を必須の成分とすることが好ましい。尚、塗料用途等その他の用途においても、勿論(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の各成分を併用してもよい。
【0058】
有機溶剤(E)としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N、N−ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、メトキシプロパノール、エチルカルビトール、トルエン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらの溶剤は、適宜2種または、それ以上の混合溶剤として使用することも可能である。
【0059】
有機溶剤(E)の使用量は特に制限されるものではないが、プリプレグを作成する場合の基材への含浸性、樹脂付着性等が良好となる点から、固形分濃度30重量%以上、なかでも40〜70重量%となる範囲であることが好ましい。
【0060】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、さらに必要に応じて種々の硬化剤、添加剤、難燃剤、充填剤等を適宜配合することが出来るが、本発明の効果を顕著なものとするためには、無機系難燃剤、その他無機系充填材の使用はできるだけ避けた方が望ましく、使用する場合においても、組成物中5重量%以下の範囲であることが好ましい。
【0061】
以上詳述した本発明のエポキシ樹脂組成物は、既述の通り、電気積層板用途として極めて有用である。本発明のエポキシ樹脂組成物から電気積層板を製造する方法は特に制限されるものではないが、上記各成分のうち、有機溶媒(E)を除く各成分からなる固形の組成物を加熱溶融させて、樹脂量30〜70重量%となる割合でクロス状基材に含浸させるか、又は(A)〜(E)の各成分を配合してワニスを調整し、これを樹脂量30〜70重量%となる割合でクロス状基材に含浸してプリプレグとし、次いでこのプリプレグの複数枚、好ましくは1〜10枚を、銅箔と共に加熱プレスして得る方法が挙げられる。
【0062】
ここで、クロス状基材としては、特に限定されるものではないが、ガラスクロスやアラミドクロスが挙げられる。
【0063】
また、加熱加圧成形する際の条件としては、特に制限されないが、例えば温度条件として160〜220℃の範囲、圧力条件として2〜10MPaの範囲が好ましく適用できる。
【0064】
また、電気積層板用途における本発明の組成物は、上記詳述したものの他、銅箔に接着剤として塗布し、乾燥半硬化させてビルドアップ工法用にも適用できる。
【0065】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、さらに必要に応じて種々の硬化剤、添加剤、難燃剤、充填剤等を適宜配合することが出来る。
【0066】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記の通り電気積層板用として極めて有用であるが、硬化剤との組み合わせによって、例えば接着剤、注型、塗料等の各種用途に使用することもできる。
【0067】
即ち、本発明のエポキシ樹脂組成物は、耐熱性を低下させることなく、非ハロゲン系の難燃性硬化物を得られることから、封止、積層、塗料などの用途特にガラスエポキシ積層板やIC封止材用に適し、さらに金属密着性に優れるのでレジストや塗料用途にも適する被覆用エポキシ樹脂組成物を提供することが出来る。
【0068】
本エポキシ樹脂組成物、硬化促進剤及び有機溶剤を使用するワニスから積層板を製造する方法としては、特に制限はなく、公知慣用の方法によって製造することができるが、例えばガラスクロス等の基板に本発明のエポキシ樹脂組成物を樹脂量30〜70重量%となる割合で含浸してプリプレグとし、次いでこのプリプレグの1〜10枚を加熱プレスして得る方法が挙げられる。
【0069】
【実施例】
次に本発明を参考例、実施例および比較例により具体的に説明する。尚、例中において「部」および「%」は特に断りのない限りすべて重量基準である。
【0070】
合成例1
エポキシ当量が190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂100部と、水酸基当量が104で軟化点70℃のフェノールノボラック樹脂10部とを触媒存在下で140℃にて5時間反応させてエポキシ当量が260のエポキシ樹脂を得た。以下、これを樹脂(A−1)と略記する。
【0071】
合成例2
エポキシ当量が190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂100部と、水酸基当量が118で軟化点70℃のビスフェノールAノボラック樹脂16部とを合成例1と同様にして反応させてエポキシ当量が300のエポキシ樹脂を得た。
以下、これを樹脂(A−2)と略記する。
【0072】
合成例3
エポキシ当量が190g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂100部と軟化点60℃でエポキシ当量が205g/eqのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂20部とビスフェノールA18部を合成例1と同様にして反応させて、エポキシ当量300のエポキシ樹脂を得た。 以下、これを樹脂(A−3)と略記する。
【0073】
合成例4
エポキシ当量が474g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂100部と軟化点が95℃でエポキシ当量が215g/eqのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂25部を120℃で溶融混合し、エポキシ当量が385g/eqのエポキシ樹脂を得た。 以下、これを(A−4)とする。
【0074】
次に、第1表の配合に従ってワニスを調製した。ワニスは、エポキシ樹脂と硬化剤および予めメチルセロソルブとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶液に溶解したリン化合物を混合した後、そこに硬化剤2−エチル−4−メチルイミダゾ−ルを加え、最終的に配合エポキシ樹脂組成物の不揮発分(N.V.)が56%となるようにメチルエチルケトンにて調整し作成した。
【0075】
この際の硬化剤の量は、主剤エポキシ樹脂中のエポキシ当量に対して1.0当量となるような割合で配合した。また、硬化促進剤は、樹脂(エポキシ樹脂、硬化剤、リン化合物の合計)100部に対して0.1部となる割合とした。しかるのち、それぞれの混合溶液を用いて下記の如き条件で硬化させて両面銅張積層板を試作した。評価結果を第1表に示す。
【0076】
尚、第1表中、「EPICLON 850」はエポキシ当量188g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学社製)、また、「LA−7751」は窒素含有フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製 商品名: フェノライトLA−7751、水酸基当量135g/eq)
「PX−200」は縮合リン酸エステル(大八化学工業(株) 製、商品名: PX−200、リン含有率 9.0%)、「HCA」は9,10−ヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントイン−10−オキシド(三光(株)製;商品名:HCA)、2E4MZは2−エチル−4−メチル−イミダゾールを示す。
【0077】
[積層板作製条件]
基材 :180μm; 日東紡績株式会社製 ガラスクロス
プライ数 :8
プリプレグ化条件:160℃/3分
銅 箔 :35μm; 古河サ−キットホイ−ル株式会社製
硬化条件 :170℃、40kg/cm2で1時間
成型後板厚 :1.6mm
樹脂含有量 :40%
【0078】
[物性試験条件]
燃焼試験 :UL-94垂直試験に準拠。
ガラス転移温度 :エッチング処理を施し銅箔除去した後、DMA法にて測定。
【0079】
【0080】
【0081】
(判定基準)
○: 外観変化なし
△: 直径5mm以下の膨れが5個以下。
×: 直径5mmより大きい膨れ発生、又は直径5mm以下の膨れが6個以上
【0082】
【表1】
第 1 表
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、ノンハロゲン系で優れた難燃効果を発現させると共に、硬化物の耐熱性や耐水性を飛躍的に高めることができる。
従って、電気電子、接着剤、注型、塗料等種々の分野に使用出来特に電気絶縁材料用途である積層板、封止材用途、特に電気積層板用途において耐ハンダ性が非常に良好となるため特に有用である。
Claims (7)
- ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とノボラック樹脂(a−2)とを反応させた構造(A−1)、又は
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とノボラック型エポキシ樹脂(a−3)とビスフェノール類(a−4)とを反応させた構造(A−2)
を有する、実質的にハロゲン非含有の多官能エポキシ樹脂(A)、
フェノール骨格とトリアジン骨格とを有する化合物である硬化剤(B)、及びリン原子含有化合物(C)を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。 - 前記した実質的にハロゲン非含有の多官能エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とノボラック樹脂(a−2)とを、(a−1)中のエポキシ基と、(a−2)中のフェノール性水酸基との当量比で、エポキシ基/フェノール性水酸基=1/0.05〜1/0.50なる割合で反応させた構造(A−1)、又はビスフェノール型エポキシ樹脂(a−1)とノボラック型エポキシ樹脂(a−3)とビスフェノール類(a−4)とを、(a−1)中のエポキシ基、(a−3)中のエポキシ基、及び(a−4)中の水酸基の当量比で(a−4)/[(a−1)+(a−3)]=0.05/1〜0.50/1となる割合であって、かつ、(a−1)/(a−3)の重量比が90/10〜10/90となる割合で反応させた構造(A−2)を有し、かつ、エポキシ当量200〜400のものである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
- フェノール骨格とトリアジン骨格とを有する化合物が、トリアジン化合物と、フェノール類と、アルデヒド類とを縮合反応した構造を有するものである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
- フェノール骨格とトリアジン骨格とを有する化合物(B)が、
B1:アミノ基含有トリアジン化合物とフェノール類とアルデヒド類との縮合反応物、
B2:アミノ基含有トリアジン化合物とアルデヒド類との縮合反応物、
B3:フェノール類とアルデヒド類との縮合反応物、
B4:フェノール類、B5:アミノ基含有トリアジン化合物の混合物であって、かつ、
該混合物中に
−X−NH−CH2−NH− (b1)
−X−NH−CH2−Y− (b2)
(式中、Xはトリアジン骨格、Yはフェノール骨格を示す。)なる構造部位を(b2)/(b1)=1.5〜20となる割合で含有する混合物として用いられるものである請求項3記載の組成物。 - リン含有化合物(C)の融点が、80℃以上であるリン酸エステルである請求項1〜4の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
- エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、リン含有化合物(C)に加え、硬化促進剤(D)および有機溶剤(E)を含有するものである請求項1〜5の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜6の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物をクロス状基材に含浸後、それを積層し加熱加圧成形してなることを特徴とする電気積層板。
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