(第1の実施形態)
以下、本発明のセンサ制御装置を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。本実施形態では、車載エンジンより排出される排気(燃焼ガス)を被検出ガスとして同排気中の酸素濃度(空燃比:A/F)を検出する空燃比検出装置を具体化しており、空燃比の検出結果はエンジンECU等により構成される空燃比制御システムに用いられる。空燃比制御システムでは、空燃比をストイキ近傍でフィードバック制御するストイキ空燃比制御や、同空燃比を所定のリーン領域でフィードバック制御するリーン空燃比制御等が適宜実施される。
はじめに、A/Fセンサの素子構造を図2を用いて説明する。A/Fセンサは、固体電解質体を有し電圧印加状態で排気中の酸素濃度に応じた素子電流を流すセンサ素子10を備えており、図2には、積層型構造により構成されるセンサ素子10の断面構成を示す。実際には当該センサ素子10は図2の紙面直交方向に延びる長尺状をなし、素子全体がハウジングや素子カバー内に収容される構成となっている。
センサ素子10は、固体電解質層11、拡散抵抗層12、遮蔽層13及び絶縁層14を有し、これらが図の上下に積層されて構成されている。同素子の周囲には図示しない保護層が設けられている。長方形板状の固体電解質層11は部分安定化ジルコニア製のシートであり、その固体電解質層11を挟んで上下一対の電極15,16が対向配置されている。拡散抵抗層12は電極15へ排気を導入するための多孔質シートからなり、遮蔽層13は排気の透過を抑制するための緻密層からなる。拡散抵抗層12には、電極15を囲むようにしてミキシングチャンバ17が設けられている。
拡散抵抗層12と遮蔽層13は何れも、アルミナ、スピネル、ジルコニア等のセラミックスをシート成形法等により成形したものであるが、ポロシティの平均孔径及び気孔率の違いによりガス透過率が相違するものとなっている。
絶縁層14はアルミナ等の高熱伝導性セラミックスからなり、電極16に対面する部位には大気ダクト18が形成されている。また、同絶縁層14にはヒータ19が埋設されている。ヒータ19は、バッテリ電源からの通電により発熱する線状の発熱体よりなり、その発熱により素子全体を加熱する。
上記構成のセンサ素子10において、その周囲の排気は拡散抵抗層12の側方部位から導入された後、拡散抵抗層12内を経由してミキシングチャンバ17に流れ込み、電極15に達する。排気がリーンの場合、排気中の酸素が電極15で分解され、電極16より大気ダクト18に排出される。また、排気がリッチの場合、逆に大気ダクト18内の酸素が電極16で分解され、電極15より排気側に排出される。
図3は、センサ素子10の出力特性(V−I特性)を示す図面である。図3では、センサ素子10の正負両端子間の電位差を印加電圧Vpとして横軸に示し、素子電流ILを縦軸に示している。図3の特性線において、横軸であるVp軸に平行な直線部分(フラット部分)は限界電流としての素子電流ILを特定する限界電流域であって、素子電流ILの増減は空燃比の増減(すなわち、リーン・リッチの程度)に対応している。つまり、空燃比がリーン側になるほど素子電流ILは増大し、空燃比がリッチ側になるほど素子電流ILは減少する。
図3中のLXは、センサ素子10への印加電圧Vpを決定するための印加電圧特性線を表しており、その傾きは概ね抵抗支配域(限界電流域よりも低電圧側の傾き部分)に一致している。ただし、印加電圧特性線LXについて、IL≧K1の領域ではK1〜K2の領域とは異なり、素子電流ILの増加に伴い印加電圧Vpが減少する印加電圧特性が設定されている。また、IL≦K2の領域ではK1〜K2の領域とは異なり、素子電流ILの減少に伴い印加電圧Vpが増加する印加電圧特性が設定されている。上記のようにK1〜K2領域外で印加電圧特性線LX1の傾きが逆になっていることから、バッテリショート等が原因でセンサ素子10に過大な電圧が印加された場合にも、センサ素子10に過剰電流が流れることを抑制できる。
次に、本発明の主要部たるセンサ制御回路20の電気的構成を図1を参照しながら説明する。
図1において、センサ制御回路20には、センサ素子10の一方の端子に印加される端子印加電圧(本実施形態では、電極16に接続された正側端子S+の端子電圧VS+)を可変に制御する印加電圧制御回路21が設けられている。図1の構成では、センサ素子10の正側端子S+に経路開閉手段としてのスイッチ回路35を介して印加電圧制御回路21が接続されている。スイッチ回路35は常閉スイッチであり、通常時において閉状態となっている。印加電圧制御回路21は、素子電流ILに基づいて端子電圧VS+を可変設定する可変設定回路22と、端子電圧VS+の上限及び下限を制限する印加電圧ガード回路23とを備えている。
可変設定回路22は、基準電源24と、その基準電源24に接続された非反転増幅回路25とを備えている。本実施形態では、基準電源24の電圧値を2.6Vとしている。非反転増幅回路25は、オペアンプ25aと、その反転入力端子(−入力端子)に接続された帰還抵抗25b及び入力抵抗25cとを有しており、帰還抵抗25bに並列にコンデンサ26が接続されている。つまり本構成では、非反転増幅回路25にまとめて、印加電圧発振防止用のLPFが設けられている。LPFのカットオフ周波数fcは例えば2.7Hzである。
また、印加電圧ガード回路23はオペアンプ25aの非反転入力端子(+入力端子)に接続されている。印加電圧ガード回路23は、オペアンプ25aの入力電圧(+側入力電圧)に対して上限ガードと下限ガードとを付与することで、印加電圧制御回路21によるセンサ印加電圧(正側端子電圧VS+)を所定範囲に制限するものであり、印加電圧の上限ガードを実施する上限ガード回路部27と、同印加電圧の下限ガードを実施する下限ガード回路部28とを有している。これら各ガード回路部27,28は図のB点に接続されている。
上限ガード回路部27は、負帰還部が設けられたオペアンプ27aと、そのオペアンプ27aの出力端子に接続されたダイオード27bと、オペアンプ27aの非反転入力端子(+入力端子)に接続された第1基準電源27cとを有する。ダイオード27bは、オペアンプ27aの出力側であって負帰還部との接続点よりもオペアンプ側に、カソードをオペアンプ出力側にして設けられている。また、下限ガード回路部28は、負帰還部が設けられたオペアンプ28aと、そのオペアンプ28aの出力端子に接続されたダイオード28bと、オペアンプ28aの非反転入力端子(+入力端子)に接続された第2基準電源28cとを有する。ダイオード28bは、オペアンプ28aの出力側であって負帰還部との接続点よりもオペアンプ側に、アノードをオペアンプ出力側にして設けられている。
上記の印加電圧ガード回路23によれば、B点電圧(オペアンプ25aの+入力電圧)が第1基準電源27cの基準電圧V1に対して高くなる場合に、B点電圧が基準電圧V1で上限ガードされる。また、B点電圧(オペアンプ25aの+入力電圧)が第2基準電源28cの基準電圧V2に対して低くなる場合に、B点電圧が基準電圧V2で下限ガードされる。
また、センサ素子10の他方の端子(電極15に接続された負側端子S−)には、交流電源回路31、バッファ32及びシャント抵抗33が直列に接続されている。交流電源回路31は、例えば10〜20kHz程度の交流電圧を出力する交流電圧発生手段であり、交流電圧発生回路や、同発生回路の交流電圧出力をフィルタ処理するためのLPFにより構成されている。交流電源回路31によって所定の基準電圧(本実施形態では2.2V)を中心に所定の電圧幅で振幅する交流電圧が生成され、その交流電圧がS−端子側の端子印加電圧としてセンサ素子10に印加される。
素子電流ILを検出するためのシャント抵抗33は電圧変換素子であり、素子電流ILを電圧に変換して出力する。すなわち、シャント抵抗33は、交流電源回路31とセンサ素子10との間において素子電流ILが流れる電流経路上に設けられており、センサ素子10とは逆側の端子電圧が基準電圧(交流電源回路31の交流電圧の中心電圧)になっている。そして、シャント抵抗33とセンサ素子10(S−端子)との中間点Aでシャント抵抗33の端子電圧により素子電流ILが測定される。
また、シャント抵抗33とセンサ素子10(S−端子)との間の中間点Aには、抵抗及びコンデンサよりなるLPF34が接続され、さらに同LPF34は、印加電圧制御回路21においてオペアンプ25aの非反転入力端子(+入力端子)に接続されている。本構成では、シャント抵抗33とセンサ素子10との間の中間点電圧(すなわち、シャント抵抗33及びセンサ素子10による分圧電圧)が、LPF34を介して印加電圧制御回路21の非反転増幅回路25に入力される。なお、LPF34のカットオフ周波数fcは例えば150Hzである。
印加電圧制御回路21及び交流電源回路31は、センサ素子10の正負両端子S+,S−にそれぞれ電圧を印加する電圧印加手段に相当する。A/F検出の観点からすれば、交流電源回路31は、S−端子側の印加電圧として基準電圧(交流電圧の振幅中心である2.2V)を設定し印加するものであり、印加電圧制御回路21は、S+端子側の印加電圧として素子電流ILに応じた可変電圧を設定し印加するものである。また、交流電源回路31は、インピーダンス検出のために交流電圧を印加する電圧印加手段でもあり、本実施形態では2.2Vを基準としてその正負両側に1Vずつ振幅させた交流電圧を出力する。なお、センサ素子10の正側及び負側の両端子(S+端子,S−端子)にはノイズ等の除去を目的としてコンデンサ36,37が設けられている。
ここで、素子電流ILと、センサ素子10の端子電圧VS+,VS−との関係を図4を用いて説明する。負側端子電圧VS−(図1のA点電圧)は、素子電流ILに比例して増減されるものであり、素子電流ILが大きくなるにつれVS−値が大きくなる。これに対し、正側端子電圧VS+は、素子電流ILがK1〜K2の範囲にあれば素子電流ILに比例して増減設定され、素子電流ILがK1以上又はK2以下であればそれぞれ所定値に制限される。この場合、IL=K1〜K2の範囲内であれば、素子電流ILが大きくなるほど正負端子間の印加電圧として徐々に大きい電圧が設定される。なお、例えばIL=0mAでは0.4Vである。正側端子電圧VS+の上限ガード値は例えば4.3Vであり、下限ガード値は例えば1.4Vである。
一方、シャント抵抗33とセンサ素子10(S−端子)との間の中間点Aには、その中間点電圧(すなわち、シャント抵抗33及びセンサ素子10による分圧電圧)を各々個別に取り込むようにした2つの信号出力部41,42が設けられている。一方は、A/F検出信号としてのA/F検出電圧AFOを出力するためのA/F信号出力部41であり、他方は、インピーダンス検出信号としてのインピーダンス検出電圧Ioutを出力するためのインピーダンス信号出力部42である。A/F信号出力部41は、オペアンプ43とLPF部44とをまとめて設けた差動増幅回路により構成されている。A/F信号出力部41においてオペアンプ43の非反転入力端子(+入力端子)には、LPF34を経由してA点電圧が入力される。その際、インピーダンス検出のために交流的に変動しているA点電圧の変動分がLPF34により除去される。なお本実施形態では、構成の簡素化のために、印加電圧フィードバック経路に設けたLPF34を併用してA/F信号の交流変動分を除去する構成としている。
A/F信号出力部41として、非反転型の増幅回路を用いる構成であってもよい。この場合、非反転増幅回路を構成するオペアンプの非反転入力端子(+入力端子)には、LPF34を経由してA点電圧が入力され、反転入力端子(−入力端子)には基準電圧(2.2V)が入力される。
また、インピーダンス信号出力部42は、HPF45とピークホールド回路46とから構成されている。ピークホールド回路46には信号増幅部がまとめて設けられている。これにより、交流電源回路31による交流電圧の印加(印加電圧の掃引変化)に伴い振幅するA点電圧の変化量がインピーダンス検出電圧Ioutとして検出される。
A/F信号出力部41から出力されるA/F検出電圧AFOと、インピーダンス信号出力部42から出力されるインピーダンス検出電圧Ioutとは共に制御手段としてのCPU50に入力され、同CPU50にて認識される。CPU50は、演算部や記憶部(各種メモリ)を備えてなる周知の演算装置であり、同CPU50のAD変換器にA/F検出電圧AFOやインピーダンス検出電圧Ioutが入力されるようになっている。CPU50は、A/F検出電圧AFOに基づいてA/F(酸素濃度)を算出するとともに、インピーダンス検出電圧Ioutに基づいて素子インピーダンスZacを算出する。
A/F信号出力部41及びインピーダンス信号出力部42ではそれぞれで電圧信号が増幅されるが、それら各出力部41,42における増幅率は各々個別に設定されている。このとき、各出力部41,42における増幅率は、A/F信号分及びインピーダンス信号分の各電圧レベルと、マイコン48のAD変換器の電圧処理範囲(ここでは0〜5V)とに応じて設定され、本実施形態では、A/F信号出力部41の増幅率を10倍〜20倍、インピーダンス信号出力部42の増幅率を5倍としている。
上記構成によれば、交流電源回路31によってセンサ素子10に交流電圧が印加されると、その交流電圧の印加状態で、同センサ素子10に、A/F(排気中の酸素濃度)に相応する電流分と素子インピーダンスに相応する電流分とが合成された素子電流が流れる。このとき、A/F検出信号(AFO)及びインピーダンス検出信号(Iout)の測定点である、シャント抵抗33とセンサ素子10との間の中間点では、センサ印加電圧の周期(交流電圧の周波数)に合わせて電圧が振幅している。そして、LPF34及びA/F信号出力部41において、シャント抵抗33とセンサ素子10との間の中間点電圧から、素子電流のうち都度のA/Fに相応する電流分(直流成分)が抽出され、それが所定の増幅率にて増幅された後、A/F検出信号としてマイコン48に出力される。
また、インピーダンス信号出力部42において、シャント抵抗33とセンサ素子10との間の中間点電圧から、素子電流のうち都度の素子インピーダンスに相応する電流分(交流成分)が抽出され、さらにそのピーク値がインピーダンス検出信号としてマイコン48に出力される。マイコン48では、A/F検出信号に基づいてA/F(排気中の酸素濃度)が算出されるとともに、インピーダンス検出信号に基づいて素子インピーダンスが算出される。
ここで、シャント抵抗33とセンサ素子10との間の中間点で検出される電圧信号において、A/F信号分とインピーダンス信号分とは電圧レベルが相違するが、A/F信号出力部41及びインピーダンス信号出力部42には別系統で電圧信号が取り込まれ、それらが個別に増幅されるため、これら両信号分の信号レベルの相違に起因する検出精度の低下が抑制されるようになっている。すなわち、A/F信号分を基準に両信号分の増幅を行うと、素子インピーダンスの検出精度の低下が生じ、他方、インピーダンス信号分を基準に両信号分の増幅を行うと、A/Fの検出精度の低下が生じることが懸念されるが、本実施形態の回路構成ではこうした不都合が解消される。
ちなみに、センサ制御回路20では、交流電源回路31やA/F信号出力部41、印加電圧制御回路21(基準電圧の生成部を除く)といった回路構成がICに集積化され、センサ制御ICとして構成されている。ただし、シャント抵抗33はセンサ制御IC(IC素子)に対して外付けとなっており、こうしてシャント抵抗33を外付けにすることで、シャント抵抗33の抵抗値の誤差を極力小さくし(すなわち、高精度なシャント抵抗33を用いることができ)、素子電流ILの検出精度を向上させることができる。また、スイッチ回路35もセンサ制御ICに一体に設けられている。
CPU50には、A/F検出電圧AFO及びインピーダンス検出電圧Iout以外に、センサ素子10の正側端子S+の電圧である正側端子電圧VS+と、負側端子S−の電圧である負側端子電圧VS−とが上記同様AD変換器を介して入力される。なお、図示は省略するが、端子電圧VS+,VS−の信号経路にはLPFが設けられており、このLPFにより、端子電圧VS+,VS−に含まれる交流成分が除去されるようになっている。本実施形態では、CPU50と、その他シャント抵抗33、A/F信号出力部41及びインピーダンス信号出力部42により電圧電流検出手段が構成されている。
また、CPU50は、センサ制御回路20から入力される各種検出電圧(VS+,VS−,AFO)に基づいて、センサ素子10(A/Fセンサ)に関する異常を検出する。この場合、基本的には各検出電圧が正常値であるかどうかにより異常検出を行うものとなっている。また、本実施形態では特に、センサ素子10に関する異常(以下、センサ制御系の異常ともいう)の検出に際し、スイッチ回路35の開閉を制御することでセンサ素子10のS+端子側において電圧印加状態を切り替えるとともに、その切替前及び切替後の各検出電圧の変化に基づいて異常検出を実施する。
本実施形態では、センサ制御系の各種異常を検出することはもとより、その異常形態を特定することができる構成を採用しており、その詳細を以下に説明する。センサ制御系が正常である場合と異常である場合とでは各検出電圧が相違する。そこで、各検出電圧が正常時と同じであるかどうかによりセンサ制御系の異常の有無を判定するとともに、同検出電圧に基づいて異常形態を特定するようにしている。
センサ制御系における主な異常形態を次の(1)〜(6)に分別してそれらを順に説明する。
(1)センサ断線異常
(2)S+端子(センサ正側端子)のVBショート
(3)S+端子(センサ正側端子)のGNDショート
(4)S−端子(センサ負側端子)のVBショート
(5)S−端子(センサ負側端子)のGNDショート
(6)センサ端子間ショート
上記(1)はS+,S−端子の何れかで断線が生じた異常を、上記(2),(3)はS+端子でバッテリショート、グランドショートがそれぞれ生じた異常を、上記(4),(5)はS−端子でバッテリショート、グランドショートがそれぞれ生じた異常を、上記(6)はS+,S−端子間がショートした異常を、それぞれ指す。
本発明者らは、上記(1)〜(6)の各異常時におけるVS+,VS−,AFOの電圧値を各々測定した。その測定結果を図5に示しており、同図5を参照しながら上記(1)〜(6)の各異常の発生時におけるVS+,VS−,AFOの具体的な電圧値を説明する。図5の最下段には、比較のために正常時の電圧値を示している。図5には、センサ活性前の電圧値とセンサ活性後の電圧値とを示しており、ここではセンサ活性後の電圧値の説明を主に行い、補足的にセンサ活性前の電圧値の説明を行うこととする。なお、図5の各電圧値は、演算装置による演算値(CPU値:0〜5V)であり、これはセンサ活性途中における過渡的な電圧値とならないよう、活性前電圧値はセンサ起動直後(エンジン始動直後)に、活性後電圧値はセンサ起動後、規定時間(例えば1分程度)が経過した時に測定された数値である。
(1)センサ断線異常
センサ断線異常が生じた場合、素子電流ILが流れず、端子電圧VS+,VS−はそれぞれ各端子側の基準電圧と同じ電圧値となる。すなわち、端子電圧VS+は、基準電源24の電圧値(2.6V)となり、端子電圧VS−は交流電源回路31の基準電圧(2.2V)となる。また、A/F検出電圧AFOは、素子電流IL=0mAに対応する値(例えば2.2V)で保持される(ストイキ固定)。上記各値は、センサ活性前/活性後を通じて同様である。
(2)S+端子(センサ正側端子)のVBショート
S+端子のVBショートが生じた場合、同S+端子にバッテリ電圧VB(例えば14V)が印加され、素子電流ILとして大電流が流れる。この場合、端子電圧VS+がCPU上限値(5.0V)で固定される。また、端子電圧VS+の増加に合わせて端子電圧VS−が増加するため、VS−値もCPU上限値(5.0V)で固定される。なお、実際にはVS−が10.5〜6V程度まで増加する。A/F検出電圧AFOは、素子電流ILの増加に伴いCPU上限値(5.0V)で固定され、リーン側異常値(リーン張り付き)となる。なお、センサ活性前は、VS+=5.0Vになるとともに、素子インピーダンスZacが無限大であり素子電流ILが流れないため、断線異常時と同様、VS−=2.2V、AFO=2.2Vで保持される。
(3)S+端子(センサ正側端子)のGNDショート
S+端子のGNDショートが生じた場合、同S+端子がグランド電位(0V)で固定され、S+端子側の印加電圧は0V、S−端子側の印加電圧は交流電源回路31の交流電圧となる。この場合、端子電圧VS+が0Vで固定される。また、端子電圧VS−及びA/F検出電圧AFOは、排気中の酸素濃度に応じて変動する値となり、特にAFO値は空燃比リッチの電圧値(0〜1.0V)となる。なお、センサ活性前は、VS+=0Vになるとともに、素子インピーダンスZacが無限大であり素子電流ILが流れないため、断線異常時と同様、VS−=2.2V、AFO=2.2Vで保持される。
(4)S−端子(センサ負側端子)のVBショート
S−端子のVBショートが生じた場合、同S−端子にバッテリ電圧VB(例えば14V)が印加され、それに合わせてS+端子側でも電圧上昇するとともに、シャント抵抗33に大電流が流れる。なお、実際にはVS+が10〜6V程度まで増加する。この場合、端子電圧VS+,VS−及びA/F検出電圧AFOはいずれも5Vで固定される。
なお、センサ活性前は、センサ活性後と同様にVS−=5V、AFO=5Vになるとともに、端子電圧VS+が印加電圧制御回路21の制御値となる。VS+値について補足すると、印加電圧制御回路21では図1のA点電圧=5Vであるとして印加電圧制御が行われる。このとき、印加電圧ガード回路23の印加電圧ガード機能により、S+端子側の印加電圧(VS+)が上限ガード値である4.3Vに制限される。
(5)S−端子(センサ負側端子)のGNDショート
S−端子のGNDショートが生じた場合、同S−端子がグランド電位(0V)で固定され、S−端子側の印加電圧は0V、S+端子側の印加電圧は図1のA点電圧=0Vである時の印加電圧制御回路21の出力電圧となる。この場合、印加電圧ガード回路23の印加電圧ガード機能により、S+端子側の印加電圧(VS+)が下限ガード値である1.4Vに制限される。また、A/F検出電圧AFOは、排気中の酸素濃度に関係なく、シャント抵抗33の両端電位差に対応する所定のリッチ値(0V)で保持される。
なお、センサ活性前も、センサ活性後と同様にVS+=1.4V、VS−=0V、AFO=0Vになる。
(6)センサ端子間ショート
センサ端子間ショートが生じた場合、センサ素子10を迂回して素子電流ILが流れる。この場合、素子電流ILが大きくなることから、印加電圧制御回路21の出力電圧が上限ガード値(4.3V)まで上昇し、端子電圧VS+,VS−がいずれも4.3Vになる。また、A/F検出電圧AFOが最大値(5.0V)になり、リーン側異常値(リーン張り付き)となる。
なお、センサ活性前も、センサ活性後と同様にVS+=4.3V、VS−=4.3V、AFO=5Vになる。
上記のとおりセンサ異常時には、その異常形態に応じてVS+,VS−,AFOが正常値と異なり所定の異常値になるため、VS+,VS−,AFOのどれが如何なる異常値となるかで異常形態(異常種別)の特定が可能となる。
ただし、上述した(1)〜(6)の各異常のうち、(2)S+端子のVBショート、(4)S−端子のVBショート、(6)センサ端子間ショートについて着目すると、これら(2)(4)(6)の各異常はいずれも、
・正負両方の端子電圧VS+、VS−が同値であること(VS+=VS−)、
・A/F検出電圧AFOが異常値であり、特にリーン側異常値であること、
が共通する。つまり、異常形態が相違していても各電圧値が同様の異常値となっている。したがって、センサ端子のVBショート異常((2)(4)の異常)と、センサ端子間ショート異常((6)の異常)との区別が明確でないという懸念が生じる。
そこで本実施形態では、センサ素子10に対する電圧印加状態を一時的に切り替えるとともに、その切替前の各電圧値と切替後の各電圧値との比較に基づいて異常検出を実施する。具体的には、印加電圧制御回路21の出力側に設けたスイッチ回路35を一時的に開放することで、センサ制御回路20における回路接続状態を通常のガス濃度検出時の状態からそれとは異なる状態に変更する。この場合、センサ端子のVBショートの発生時とセンサ端子間ショートの発生時とでは、各電圧値が状態切替前には同様の電圧値であったとしても、状態切替後には各々相違するものとなるため、異常形態の区別が可能となる。なお、スイッチ回路35を閉じた状態が「第1状態」に相当し、スイッチ回路35を開放した状態が「第2状態」に相当する。
図6は、
・S+端子のVBショート、
・S−端子のVBショート、
・センサ端子間ショート、
の各異常について、スイッチ回路35を開放して印加電圧制御回路21による電圧印加を遮断(開放)した場合の、その開放前後におけるVS+,VS−,AFOを対比したものである。なお、数値はいずれもセンサ活性後のものである。
図6において、スイッチ回路35の開放前の各電圧値(VS+,VS−,AFO)は図5で説明したとおりである。つまり、図6の各異常ではいずれも、スイッチ開放前においてVS+=VS−であり、かつA/F検出電圧AFOがリーン側異常値になっている。
そして、スイッチ回路35が開放状態に切り替えられると、センサ端子(S+,S−)のVBショートとセンサ端子間ショートとで電圧値に違いが生じる。つまり、センサ端子のVBショートの場合、端子電圧VS+,VS−が最大値(5V)のまま保持されるとともに、A/F検出電圧AFOもリーン側異常値(5V)のまま保持される。これに対し、センサ端子間ショートの場合、各電圧値(VS+,VS−,AFO)がいずれも2.2Vに変化する。つまり、スイッチ回路35が開放されてS+端子側の電圧印加が遮断(開放)されることで、端子電圧VS+,VS−がS−端子側(スイッチ開放されていない端子側)の基準電圧と同じ電圧値(2.2V)になるとともに、A/F検出電圧AFOがストイキ相当の電圧値(2.2V)となる。
本実施形態では、異常形態が異なる場合において、上記のようにスイッチ回路35の開放前後で各電圧値(VS+,VS−,AFO)が相違することを利用し、異常形態の特定を行うこととしている。
次に、CPU50により実行される異常検出処理について図7のフローチャートを用いて説明する。図7の処理は、CPU50により例えば所定の時間周期で繰り返し実行される。
図7において、ステップS11では、異常検出の実行条件が成立しているか否かを判定する。異常検出の実行条件として具体的には、バッテリ電圧が所定の正常範囲(例えば11〜16V)であること、CPU50の駆動電圧である定電圧及びグランド電位が正常判定されていること等を含み、これら各条件が全て成立している場合に、後続のステップに進む。その他、センサ素子10が活性状態にあることを実行条件に含めてもよい。
ステップS12では、端子電圧VS+と端子電圧VS−とが同電位であるか否かを判定する。このとき実際には、VS+,VS−の差が所定値(例えば0.1V)以下であるか否かを判定する。そして、VS+≒VS−でなければステップS13に進み、VS+≒VS−であればステップS14に進む。なお、ステップS12では、VS+≒VS−の判定に加えて、VS+,VS−がいずれも異常値(例えば正常値に対して高電圧側の異常値)であることを判定してもよい。
ステップS13では、センサ制御系の各種異常のうちステップS12が否定される異常形態(上記(2)(4)(6)以外の異常形態)を検出対象として異常検出を実行する。このとき、図5に示すように各異常形態でそれぞれ異常値が相違することを利用して各異常形態を特定する。ステップS13での異常検出について簡単に説明すると、例えば、各電圧値(VS+,VS−,AFO)が正常範囲にあるものの、所定時間が経過しても変化しない場合にセンサ断線であると判定される。また、各端子電圧VS+,VS−のいずれかが0V固定になっている場合に、センサ端子のGNDショートであると判定される。
また、ステップS14では、A/F検出電圧AFOがリーン側異常値(4.7V以上)であるか否かを判定する。そして、ステップS14がYESであれば後続のステップS15に進み、NOであればそのまま本処理を一旦終了する。センサ素子10に関してセンサ端子のVBショート又はセンサ端子間ショート(上記(2)(4)(6)の異常)が生じている場合には、VS+≒VS−であり、かつAFO=リーン側異常値であるという事態が生じる。ゆえに、ステップS12,S14が共にYESとなりステップS15に進む。
ステップS12,S14が、スイッチ開放前においてセンサ素子10に関する異常(特に、センサ端子のVBショート又はセンサ端子間ショート)の有無を判定する開放前異常判定処理に相当する。なお、ステップS12,S14のいずれか一方のみにより開放前異常判定処理を実施することも可能である。
ちなみに、本実施形態の印加電圧制御では、正常動作においてVS+≒VS−となることがあり得る。例えば、図4のX点ではVS+≒VS−となる。かかる場合には、ステップS12がYESでかつステップS14がNOになり、ステップS15以降の異常検出が行われることなくそのまま本処理が終了される。
その後、ステップS15では、スイッチ回路35を開放させ、印加電圧制御回路21からS+端子側への電圧印加を遮断する。そして、ステップS16では、スイッチ開放後における端子電圧VS+,VS−を取得し、続くステップS17では、VS+値及びVS−値が、スイッチ回路35の開放前における値から変化しているか否かを判定する。ここでは例えば、VS+値及びVS−値が2.2Vであるかを判定する。
ステップS17において、端子電圧VS+,VS−がスイッチ開放前の値から変化していれば、より具体的には端子電圧VS+,VS−がスイッチ回路35とは反対側であるS−端子側の基準電圧2.2Vであれば、ステップS18に進み、センサ端子間ショートが発生している旨を判定する。
また、端子電圧VS+,VS−がスイッチ開放前の値から変化していなければ(VS+,VS−が2.2Vでなければ)ステップS19に進み、端子電圧VS+が4.4Vよりも高電圧側の異常値になっているか否かを判定する。そして、VS+>4.4Vであれば、ステップS20に進み、センサ端子のVBショートが発生している旨を判定する。また、VS+≦4.4Vであればそのまま本処理を終了し、異常検出のやり直しが行われる。
なお、異常判定に際しては同様の異常が複数回連続して検出された場合に、異常発生の最終判定を実施するようにしてもよい。異常発生の最終判定時には、故障警告灯を点灯させる、異常情報をバックアップRAM等に記憶する、A/Fセンサのヒータ19をOFFする等の処置が実施され、次回の電源投入時には再度異常検出が実施される。
ちなみに、ステップS16〜S20を以下のように変更することも可能である。すなわち、ステップS16では、スイッチ開放後におけるA/F検出電圧AFOを取得し、続くステップS17では、そのAFO値が、スイッチ回路35の開放前における値から変化しているか否かを判定する。そして、ステップS17がYESである場合(例えば、AFOが2.2Vに変化している場合)にステップS18に進み、センサ端子間ショートが発生している旨を判定する。また、ステップS17がNOである場合(AFO≠2.2Vである場合)にはステップS20に進み、VBショートが発生している旨を判定する(ステップS19の実施は任意である)。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
センサ素子10に対する電圧印加状態を一時的に切り替えるとともに、その切替前及び切替後のA/F検出電圧AFO(素子電流検出値)又は端子電圧VS+,VS−(端子電圧検出値)に基づいて、センサ素子10に関する異常を検出する構成とした。これにより、異なる異常形態についての区別が可能となり、好適なる異常検出を実現できる。
印加電圧状態の切替として具体的には、印加電圧制御回路21とセンサ素子10のS+端子との間の電圧印加経路に設けたスイッチ回路35を開放することで、印加電圧制御回路21によるセンサ素子10への電圧印加を一時的に遮断(開放)する構成とした。この場合、センサ端子のVBショートとセンサ端子間ショートとで、スイッチ開放前後の端子電圧VS+,VS−やA/F検出電圧AFOの変化に差異が生じることから、これら各異常の特定が可能となる。
印加電圧状態の切替手法として、センサ素子10への電圧印加を遮断する手法を用いることで、異常発生時におけるセンサ保護を図ることが可能となる。つまり、例えばVBショート異常が発生している場合に、スイッチ回路35を開放して電圧印加を遮断することにより、大電流が長時間にわたってセンサ素子10に流れ同素子が壊れるといった不都合を回避できる。
また、スイッチ開放前(電圧印加状態の切替前)の端子電圧VS+,VS−及びA/F検出電圧AFOに基づいて、センサ端子のVBショート及びセンサ端子間ショートについての異常の有無を判定し、異常有りと判定された場合に、スイッチ回路35の開放を行うとともに、同開放後の端子電圧VS+,VS−又はA/F検出電圧AFOに基づいて異常形態を特定する構成とした。かかる場合、センサ端子のVBショート及びセンサ端子間ショートのいずれかが発生したと判定されたことを条件に、スイッチ回路35が開放される。本構成では、スイッチ開放前及び開放後で2段階の異常検出処理が行われることにより、異常形態の特定を一層好適に行わせることができる。また、スイッチ回路35の開放が何らかの異常発生を判定した場合に限られるため、そのスイッチ開放の実施を必要最小限に抑えることができる。ゆえに、ガス濃度検出に対する影響を抑制することもできる。
センサ端子間ショートであることの判定基準を、正負両側の端子電圧VS+,VS−が同値であり、かつスイッチ開放前後で端子電圧VS+,VS−又はA/F検出電圧AFOが変化したこととした。また、センサ端子のVBショートであることの判定基準を、正負両側の端子電圧VS+,VS−が同値で、かつA/F検出電圧AFO(VS+,VS−でも可)が正常範囲外の値であり、さらにスイッチ開放前後で端子電圧VS+,VS−又はA/F検出電圧AFOが変化しないこととした。以上により、センサ端子のVBショートとセンサ端子間ショートとで、端子電圧VS+,VS−又はA/F検出電圧AFOが同様の異常値を呈しているとしても、それら各異常形態の特定が可能となる。
センサ素子10の正負両側の端子のうち、シャント抵抗33とは反対側の端子にスイッチ回路35を設けて電圧印加を遮断する構成とした。これにより、センサ制御IC(IC素子)にスイッチ回路35を追加して設ける場合において多大な設計変更や製造上の煩雑さを招くことを回避できる。補足すると、センサ制御回路20では、上述したとおり素子電流ILの検出精度向上のためにシャント抵抗33がIC外付けになっており、このシャント抵抗33と同じ側の端子にスイッチ回路35を設ける場合には、スイッチ回路35も同様に外付けにするか、又はセンサ制御ICに接続ポートを増設した上でスイッチ回路35を同ICに一体に設けるかが強いられ、多大な設計変更や製造上の煩雑さを招く。これに対し、シャント抵抗33とは反対側の端子にスイッチ回路35を設けることにより、こうした不都合を回避できる。
また、上記のとおり特徴的な構成を有するセンサ制御回路20と、センサ素子10を有しセンサ制御回路20に接続されるガスセンサ(A/Fセンサ)とを備える構成であれば、好適なる異常検出機能を具備したセンサユニットを実現することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。図8は、本実施形態におけるセンサ制御回路の電気的構成図である。
図8では、上述した図1の構成に対して、スイッチ回路35を削除するとともに、印加電圧ガード回路23の構成を一部変更している。すなわち、印加電圧ガード回路23の上限ガード回路部27においてオペアンプ27aの非反転入力端子(+入力端子)には基準電圧切替手段が設けられている。基準電圧切替手段は、2つの基準電源を切り替えることで、オペアンプ27aの+入力電圧(基準電圧)を変更するものである。具体的には、各々異なる基準電圧V1,V3を出力する2つの基準電源61,62が設けられ、そのいずれがオペアンプ27aの+入力端子に接続されるかがスイッチ回路63により切り替えられるようになっている。例えばV1>V3である。
上記構成では、通常の印加電圧制御に際しては、上限ガード回路部27の基準電源として基準電源61が用いられる。これに対し、センサ制御系の異常検出時には、スイッチ回路63がCPU50の指令信号により切り替えられて、基準電源61から基準電源62への変更が行われる。これにより、印加電圧制御回路21の上限ガード値が4.3Vから3Vに切り替えられる。なお、上限ガード値を4.3Vとする状態が「第1状態」に相当し、上限ガード値を3Vとする状態が「第2状態」に相当する。
図9は、
・S+端子のVBショート、
・S−端子のVBショート、
・センサ端子間ショート、
の各異常について、印加電圧制御回路21の上限ガード値を設定するための基準電圧を切り替えた場合の、その切替前後におけるVS+,VS−,AFOを対比したものである。なお、数値はいずれもセンサ活性後のものである。
図9において、基準電圧がV1である場合には、各電圧値(VS+,VS−,AFO)は図5で説明した電圧値と同じである。センサ端子間ショートについて特に言及すれば、素子電流ILが大きくなることから、印加電圧制御回路21の出力電圧が上限ガード値(4.3V)まで上昇し、端子電圧VS+,VS−がいずれも4.3Vになる。また、A/F検出電圧AFOが最大値(5.0V)になり、リーン側異常値(リーン張り付き)となる。
これに対し、基準電圧がV3に切り替えられると、各電圧値(VS+,VS−,AFO)のうち、センサ端子間ショートについての端子電圧VS+,VS−がいずれも3Vに変更される。つまり、基準電圧がV1からそれよりも小さいV3に切り替えられることで、印加電圧制御回路21の上限ガード値が4.3Vから3Vに切り替わり、端子電圧VS+,VS−がいずれも3Vになる。A/F検出電圧AFOについては不変である。
なお、印加電圧制御回路21の上限ガード値を3Vよりも小さい電圧値に変更する場合には、A/F検出電圧AFOが減少側に変化する。例えば、印加電圧制御回路21の上限ガード値を2.2V(ストイキ検出時と同じ電圧値)とする場合、A/F検出電圧AFOが2.2Vに変化する。
異常検出処理(図7)においては、ステップS15を、スイッチ回路63の切替(すなわち、上限ガード値の変更)を実施する処理に変更する。そして、そのスイッチ切替後における端子電圧VS+,VS−に基づいてセンサ端子間ショートが発生しているか否かを判定する。この場合、図9で説明したように、センサ端子間ショートが発生していれば端子電圧VS+,VS−がその切替前後で変化するのに対し、センサ端子間ショートではなくセンサ端子のVBショートが発生していれば端子電圧VS+,VS−が切替前後で変化しない。このことから、センサ端子間ショートとセンサ端子のVBショートとの判別が可能となる。
以上第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、異なる異常形態についての区別が可能となり、好適なる異常検出を実現できる。
また、印加電圧状態の切替として具体的には、印加電圧制御回路21の上限ガード値を一時的に変更する構成とした。この場合、センサ端子のVBショートとセンサ端子間ショートとで、上限ガード値の変更前後の端子電圧VS+,VS−やA/F検出電圧AFOの変化に差異が生じることから、これら各異常の特定が可能となる。
センサ端子のVBショート及びセンサ端子間ショートのいずれかが発生している場合、端子電圧VS+,VS−は印加電圧制御回路21の上限ガード値(4.3V)に達しており、その状態で、上限ガード値をそれよりも低電圧側に変更する構成としたため、上限ガード値の変更後における端子電圧VS+,VS−の変化を明確に把握できる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。図10は、本実施形態におけるセンサ制御回路の電気的構成図である。
図10では、上述した図1の構成に対して、スイッチ回路35を削除するとともに、印加電圧制御回路21及びA/F信号出力部41に対する電圧入力値を切り替えるための入力電圧切替手段を付加している。電圧入力値は、都度の素子電流ILに相当しており、印加電圧制御回路21に入力される制御入力信号である。入力電圧切替手段は、印加電圧制御回路21のオペアンプ25aの入力電圧及びA/F信号出力部41のオペアンプ43の入力電圧を、シャント抵抗33の両端子電圧のうちセンサ素子10側の端子電圧とするかそれとは反対側(交流電源回路31側)の電圧とするかを切り替えるものであり、具体的にはスイッチ回路65による切替を行う構成としている。スイッチ回路65は接続点C,Dの切替を行うものであり、同スイッチ回路65の接続をC側とすれば、前記入力電圧がシャント抵抗33のセンサ側端子電圧(A点電圧)となり、同スイッチ回路65の接続をD側とすれば、前記入力電圧がシャント抵抗33の反センサ側端子電圧となる。
なお、印加電圧制御回路21は、センサ素子10の端子印加電圧(本実施形態ではVS+)を素子電流ILに基づいてフィードバック制御しているものであり、この観点からすれば、制御入力信号はフィードバック入力信号である。本実施形態では、このフィードバック入力信号を強制的に変更するものとしている。
上記構成では、通常の印加電圧制御に際しては、スイッチ回路65が接続点Cに接続された状態で保持され、印加電圧制御回路21及びA/F信号出力部41にはシャント抵抗33のセンサ側端子電圧(A点電圧)が入力される。これに対し、センサ制御系の異常検出時において、スイッチ回路65がCPU50の指令信号により切り替えられて接続点Dに接続された状態に変更されると、印加電圧制御回路21及びA/F信号出力部41にはシャント抵抗33の反センサ側端子電圧が入力される。これにより、例えばA点電圧(VS−電圧も同じ)が最大値(5V)に保持されている場合において上記の入力電圧の切替が行われることで、同入力電圧が最大値(5V)から交流電源回路31の基準電圧(2.2V)に切り替えられる。なお、スイッチ回路65が接続点Cに接続された状態が「第1状態」に相当し、スイッチ回路65が接続点Dに接続された状態が「第2状態」に相当する。
図11は、
・S+端子のVBショート、
・S−端子のVBショート、
・センサ端子間ショート、
の各異常について、印加電圧制御回路21及びA/F信号出力部41の入力電圧を切り替えた場合(スイッチ回路65をC側接続/D側接続した場合)の、その切替前後におけるVS+,VS−,AFOを対比したものである。なお、数値はいずれもセンサ活性後のものである。
図11において、スイッチ回路65をC側接続とした場合には、各電圧値(VS+,VS−,AFO)は図5で説明した電圧値と同じである。センサ端子間ショートについて特に言及すれば、素子電流ILが大きくなることから、印加電圧制御回路21の出力電圧が上限ガード値(4.3V)まで上昇し、端子電圧VS+,VS−がいずれも4.3Vになる。また、A/F検出電圧AFOが最大値(5.0V)になり、リーン側異常値(リーン張り付き)となる。
これに対し、スイッチ回路65をD側接続に切り替えると、各電圧値(VS+,VS−,AFO)のうち、センサ端子間ショートについての端子電圧VS+,VS−がいずれも2.6Vに変更される。つまり、印加電圧制御回路21及びA/F信号出力部41の入力電圧がA点電圧(VS−電圧も同じ)の異常値(5V)から交流電源回路31の基準電圧(2.2V)に切り替えられることで、印加電圧制御回路21のオペアンプ25aにはストイキ検出時(IL=0時)と同じ電圧が入力され、同印加電圧制御回路21はストイキ検出時の印加電圧である2.6Vを出力する。また、A/F信号出力部41のオペアンプ43には正負両方の入力端子に同じ電圧(2.2V)が入力され、A/F検出電圧AFOが2.2Vになる。
異常検出処理(図7)においては、ステップS15を、スイッチ回路65の切替(すなわち、印加電圧制御回路21に対する電圧入力値の変更)を実施する処理に変更する。そして、そのスイッチ切替後における端子電圧VS+,VS−に基づいてセンサ端子間ショートが発生しているか否かを判定する。この場合、図11で説明したように、センサ端子間ショートが発生していれば端子電圧VS+,VS−がその切替前後で変化するのに対し、センサ端子間ショートではなくセンサ端子のVBショートが発生していれば端子電圧VS+,VS−が切替前後で変化しない。このことから、センサ端子間ショートとセンサ端子のVBショートとの判別が可能となる。
以上第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、異なる異常形態についての区別が可能となり、好適なる異常検出を実現できる。
また、印加電圧状態の切替として具体的には、印加電圧制御回路21に対する電圧入力値(制御入力信号)を一時的に変更する構成とした。この場合、センサ端子のVBショートとセンサ端子間ショートとで、電圧入力値の変更前後の端子電圧VS+,VS−の変化に差異が生じることから、これら各異常の特定が可能となる。
印加電圧制御回路21に対する電圧入力値を一時的に変更する場合に、その電圧入力値を、空燃比ストイキ状態で流れる素子電流(IL=0mA)に相当する電圧値に変更する構成とした。これにより、印加電圧制御回路21に対する電圧入力値の変更後に、各電圧値(VS+,VS−,AFO)がストイキ検出状態と同じ電圧値であることに基づいて、センサ端子間ショートが発生していることを特定できる。
(第4の実施形態)
上記のように端子電圧VS+,VS−やA/F検出電圧AFOに基づいて異常検出を実施する以外に、インピーダンス検出電圧Ioutに基づいて異常検出を実施する構成としてもよい。ここでは、第1の実施形態で説明したように、異常検出に際し、スイッチ回路35(図1参照)を開放する構成について説明する。
図12は、
・S+端子のVBショート、
・S−端子のVBショート、
・センサ端子間ショート、
の各異常について、図1のスイッチ回路35を開放して印加電圧制御回路21による電圧印加を遮断(開放)した場合の、その開放前後におけるIoutを対比したものである。なお、数値はいずれもセンサ活性後のものである。
センサ端子(S+,S−)のVBショートが発生している場合、スイッチ回路35を閉鎖した状態(開放前の状態)では、インピーダンス検出のために交流電源回路31から交流電圧を印加しても、インピーダンス検出電圧の検出点であるS−端子側で電圧変動がほとんど生じない。そのため、インピーダンス検出電圧Ioutはほぼ0Vとなる。この状態は、スイッチ回路35を開放した後でも同様である。なお、センサ素子10の活性後には、本来、都度の素子インピーダンス(ほぼ30Ω)に応じたインピーダンス検出電圧Ioutが検出される筈であり、Iout=0Vは異常値である。
これに対し、センサ端子間ショートが発生している場合、スイッチ回路35を閉鎖した状態(開放前の状態)ではインピーダンス検出電圧Ioutがほぼ0Vになり、スイッチ回路35を開放すると、インピーダンス検出電圧Ioutが5Vになる。これは以下の理由による。
すなわち、図1の回路構成では、インピーダンス検出電圧Ioutの検出点(A点)がシャント抵抗33とセンサ素子10との間の中間点電圧(シャント抵抗33及びセンサ素子10の分圧点)となっており、同A点では、シャント抵抗33及びセンサ素子10による分圧電圧としてインピーダンス検出電圧Ioutが検出される。かかる場合、センサ端子間ショートが発生しておりかつスイッチ回路35が閉鎖されていると、素子インピーダンスがほぼ0Ωであるのと同じ状態になり、シャント抵抗33及びセンサ素子10の分圧電圧として検出されるインピーダンス検出電圧Ioutがほぼ0Vになる(なおこのとき、交流的にはS+端子側がほぼ0Vになっている)。また、センサ端子間ショートが発生しておりかつスイッチ回路35が開放されていると、素子インピーダンスが無限大であるのと同じ状態になり、シャント抵抗33及びセンサ素子10の分圧電圧として検出されるインピーダンス検出電圧Ioutがほぼ5Vになる。
本実施形態において、CPU50は図13に示す異常検出処理を実行する。図13において、ステップS21では、異常検出の実行条件が成立しているか否かを判定する(図7のS11と同様)。そして、実行条件が成立していれば、後続のステップ22に進み、インピーダンス検出電圧Ioutが異常値であるか否かを判定する。このとき、異常発生時にはIoutが異常値になり、ステップS23以降の処理を実施する。なおここで、検出対象の異常形態を、センサ端子のVBショート及びセンサ端子間ショートに限定するのであれば、VS+≒VS−であること、及びAFO=リーン側異常値であることの少なくともいずれかの別条件を設定するとよい。
ステップS22が、スイッチ開放前においてセンサ素子10に関する異常(特に、センサ端子のVBショート又はセンサ端子間ショート)の有無を判定する開放前異常判定処理に相当する。
その後、ステップS23では、スイッチ回路35を開放させ、印加電圧制御回路21からS+端子側への電圧印加を遮断する。そして、ステップS24では、スイッチ開放後におけるインピーダンス検出電圧Ioutを取得し、続くステップS25では、インピーダンス検出電圧Ioutが、スイッチ回路35の開放前における値から変化しているか否かを判定する。
ステップS25において、インピーダンス検出電圧Ioutがスイッチ開放前の値から変化していれば、より具体的にはインピーダンス検出電圧Ioutが0Vから5Vに変化していれば、ステップS26に進み、センサ端子間ショートが発生している旨を判定する。また、インピーダンス検出電圧Ioutがスイッチ開放前の値から変化していなければ(Iout=0Vのままであれば)ステップS27に進み、センサ端子のVBショートが発生している旨を判定する。
以上第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、異なる異常形態についての区別が可能となり、好適なる異常検出を実現できる。
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、A/Fセンサのセンサ素子の構造を変更しており、まずは素子構造を図14により説明する。
図14において、センサ素子80は、2つの固体電解質層81,82を有しており、一方の固体電解質層81には一対の電極83,84が対向配置され、他方の固体電解質層82には一対の電極85,86が対向配置されている。なお、電極83〜85は図の左右対象に2カ所に見えるが、それらは紙面の前後何れかの部位で連結された同一部材である。本センサ素子80では、固体電解質層81及び電極83,84により第1セルとしてのポンプセル91が構成され、固体電解質層82及び電極85,86により第2セルとしてのモニタセル92が構成されている。各電極83〜86はセンサ制御回路100に接続されている。センサ素子80が積層構造を有することは、前述のセンサ素子10と同じである。図の符号87はガス導入孔、符号88は多孔質拡散層、符号89は大気ダクト、符号90はヒータである。モニタセル92は、一般に起電力セル、酸素濃度検出セルとも称される。
上記構成において、モニタセル92は、排気がストイキに対してリーンかリッチかに応じて2値(0V又は0.9V)の起電力出力を発生する。例えばリーンである場合、モニタセル92の起電力出力が小さくなり、逆にリッチである場合、モニタセル92の起電力出力が大きくなる。かかる場合において、モニタセル92の起電力出力がストイキ値(0.45V)になるようにポンプセル91の印加電圧が制御される。
なお、上記構成のセンサ素子80では、リーン時の限界電流域は正電圧域に、リッチ時の限界電流域は負電圧域に現れる。そのため、リーン時のポンプセル印加電圧は正電圧域に、リッチ時のポンプセル印加電圧は負電圧域にそれぞれ定められている。
図15は、上記構成のセンサ素子80に適用されるセンサ制御回路100の構成を示す回路図である。図15において、VMはポンプセル91及びモニタセル92の共通端子であり、その共通端子VMには基準電源101が接続されている。基準電源101の基準電圧は例えば2.5Vである。また、IPはポンプセル91の電極83に接続されるポンプセル端子であり、UNはモニタセル92の電極86に接続されるモニタセル端子である。これら各端子IP,UNには、オペアンプ102及びシャント抵抗103を有して構成される電圧印加回路が設けられており、そのオペアンプ102の反転入力端子(−入力端子)にはモニタセル端子UNが接続され、非反転入力端子(+入力端子)には基準電圧(3.0V)を生成する基準電源104が接続されている。
オペアンプ102は反転増幅回路を構成するものであり、その帰還経路にポンプセル91及びモニタセル92が設けられている。この場合、オペアンプ102は、モニタセル92の起電力に応じてポンプセル91の印加電圧(IP端子電圧)を可変設定する。
また、ポンプセル端子IPとシャント抵抗103との間(すなわち、ポンプセル91の電圧印加経路)には経路開閉手段としてのスイッチ回路105が設けられている。スイッチ回路105は常閉スイッチであり、通常時において閉状態とされ、CPU(図示略)からの指令信号に基づいて開放されるようになっている。また、オペアンプ102の反転入力端子(−入力端子)には定電圧Vcc(5V)を電源とするプルアップ回路106が接続されている。プルアップ回路106は、例えば抵抗値=1MΩの抵抗体を有して構成されている。
リーン時にはB→Aの向きにシャント抵抗103に電流が流れ、逆にリッチ時にはA→Bの向きにシャント抵抗103に電流が流れる。かかる場合、モニタセル92の出力電圧が所定値になるようポンプセル91がフィードバック制御される(フィードバック制御回路については公知であり、ここでは図示及び詳細な説明を省略する)。
シャント抵抗103の両端(A点及びB点)には、A/F信号出力部を構成する差動増幅回路107が接続されている。差動増幅回路107は、増幅素子としてオペアンプ108を有し、オペアンプ108の正負両入力端子にはシャント抵抗103の両端電圧が各々入力される。差動増幅回路107(オペアンプ108)の出力がA/F検出電圧AFOである。IP端子の電圧はポンプセル端子電圧Vipとして出力される。A/F検出電圧AFO、ポンプセル端子電圧Vipはそれぞれ図示しないCPUに入力される。なお本実施形態では、シャント抵抗103と差動増幅回路107とにより電流検出手段が構成されている。
また、モニタセル92を対象に素子インピーダンスが検出され、インピーダンス検出回路109では、モニタセル92に印加する電圧を交流的に変化させ、それに応答する電圧波形が検出される。そして、その検出結果がインピーダンス検出電圧VzとしてCPU(図示略)に出力される。
上記のセンサ制御回路100では、各端子UN,VM,IPのVBショート、GNDショート、断線、端子間ショート等を検出対象の異常形態として、ポンプセル端子電圧Vip、インピーダンス検出電圧Vz、A/F検出電圧AFOに基づいて異常検出が行われる。ただし本実施形態では、各異常形態のうち、
(1)UN−VM間の端子間ショート、
(2)VM端子断線、
についてのみ説明する。
ここでは、上記(1)(2)の各異常が発生した場合において、スイッチ回路105の開放前及び開放後でポンプセル端子電圧Vipが変化することを説明する。
上記(1)のUN−VM間の端子間ショートが発生している場合、スイッチ回路105の開放前には、ポンプセル端子電圧VipがVM端子の基準電圧(2.5V)に追従して変化し2.5Vになる。このとき、各電圧値Vip,Vz,AFOがいずれも同じ2.5Vで釣り合った状態になる。これに対し、スイッチ回路105が開放状態に切り替えられると、電圧の釣り合い(バランス)が崩れる。またこのとき、スイッチ開放により印加電圧のフィードバックループが途切れるため、オペアンプ102のコンパレータ動作を行うこととなる。そして、オペアンプ102の反転入力端子の入力電圧が2.5Vで、非反転入力端子の入力電圧が3Vであるため、オペアンプ出力は5V(上限)となり、ポンプセル端子電圧Vipが5Vになる。すなわち、スイッチ回路105の開放により、ポンプセル端子電圧Vipが2.5Vから5Vに変化する。
また、上記(2)のVM断線が発生している場合は、ポンプセル91及びモニタセル92からなる帰還経路の電圧フィードバックループによりUN端子及びIP端子が共に3Vになる。これに対し、スイッチ回路105が開放状態に切り替えられると、UN端子が3Vに制御されなくなる。そして、オペアンプ102の反転入力端子に接続されているプルアップ回路106が機能し、オペアンプ102の−入力信号がVcc電圧(5V)になる。このとき、オペアンプ102の+入力信号が3Vであるため、オペアンプ出力は0V(下限)になり、ポンプセル端子電圧Vipが0Vになる。すなわち、スイッチ回路105の開放により、ポンプセル端子電圧Vipが3Vから0Vに変化する。
上記のように、UN−VM間の端子間ショート、VM端子断線の各異常では、それぞれスイッチ回路105の開放前及び開放後でポンプセル端子電圧Vipが変化し、さらにその変化態様が各々相違することから、異常形態の特定が可能となる。
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
・上記第1の実施形態では、図1に示すように、センサ素子10のS+端子側(印加電圧制御回路21側)にスイッチ回路35を設け、異常検出に際して同スイッチ回路35を開放する構成としたが、これを変更し、これとは反対側のS−端子側(交流電源回路31側)にスイッチ回路35を設け、異常検出に際して同スイッチ回路35を開放する構成としてもよい。この場合、センサ端子間ショートが発生している状態では、スイッチ回路35の開放に伴い端子電圧VS+,VS−が4.3Vから2.6V(すなわち、電圧遮断側とは反対側の印加電圧)に変化する。これにより、その開放前後の電圧変化によりセンサ端子間ショートを検出できる。
・センサ制御回路20において、S+端子側に可変電圧(印加電圧制御回路21の設定電圧)を印加し、S−端子側に基準電圧(交流電源回路31の基準電圧:2.2V)を印加する構成としたが、これを変更し、S+端子側及びS−端子側の両方に可変電圧を印加する構成、又はS+端子側及びS−端子側の両方に基準電圧を印加する構成とすることも可能である。
・上記実施形態では、交流電源回路31を用い、センサ素子10の一方の端子に交流電圧を印加する構成としたが、交流電源回路31を用いない構成としてもよい。例えば、印加電圧制御回路21とは反対側のセンサ端子に、固定の基準電圧(2.2V固定)を出力する基準電圧設定回路を接続する構成としてもよい。
・「第2状態」を複数設定しておき、異常検出に際し、電圧印加状態を複数の第2状態のうちいずれかに切り替えるようにしてもよい。この場合、複数の第2状態のうちいずれに切り替えるかによって、A/F検出電圧AFOや端子電圧VS+,VS−の値が相違する。ゆえに、特定可能(区別可能な)異常形態を増やすことができる。例えば、第2の実施形態でいえば、印加電圧制御回路21の上限ガード値を3つ以上切替可能としておくとよい。
・センサ素子に対する電圧印加状態を第1状態から第2状態に切り替える場合に、その状態切替の前後における各種検出値(AFO,VS+,VS−,Iout)の変化量を算出し、その変化量に基づいてセンサ素子に関する異常を検出する構成としてもよい。具体的には、例えば、状態切替前後における各種検出値の変化量が所定以上であることに基づいて、センサ端子間ショートが発生していると判定する。
・上記実施形態では、インピーダンス検出値を取得する方法として、センサ制御回路20において交流電源回路31による交流電圧の印加(印加電圧の掃引変化)に伴い振幅するA点電圧の変化量をインピーダンス検出電圧Ioutとして検出する構成を採用したが、これを変更してもよい。インピーダンス検出値を取得する方法は、周知の方法のいずれを用いてもよく、インピーダンス検出時に電圧又は電流の掃引変化に応じて生じる電圧又は電流の変化量をインピーダンス検出値として取得できるものであればよい。
・センサ素子に対する電圧印加状態を第1状態から第2状態に切り替える場合に、その状態切替の前後における各種検出電圧(VS+,VS−,AFO)に基づいて、センサ制御回路20のオフセット値を算出する構成としてもよい。オフセット値は、図1のセンサ制御回路20等における定常的な出力誤差である。具体的には、例えば図1のセンサ制御回路20では、上述したとおりスイッチ回路35が開放されてS+端子側の電圧印加が遮断(開放)されることで、本来、端子電圧VS+,VS−がS−端子側(スイッチ開放されていない端子側)の基準電圧と同じ電圧値(2.2V)になるとともに、A/F検出電圧AFOがストイキ相当の電圧値(2.2V)となる。この場合、センサ制御回路20においてオフセット誤差(初期設定値からのずれ)が生じていれば、端子電圧VS+,VS−やA/F検出電圧AFOが初期設定値(それぞれ2.2V)から外れることになるため、その初期設定値からのずれ分をオフセット値として算出する。そして、このオフセット値を用いて、A/F検出電圧AFO等の補正(オフセット補正)を実施する。
・酸素濃度を検出対象とするA/Fセンサ以外に、他のガス濃度成分を検出対象とするガスセンサにも本発明が適用できる。例えば、複合型のガスセンサは、固体電解質体にて形成された複数のセルを有し、そのうち第1セル(ポンプセル)では被検出ガス中の酸素を排出又はくみ出すと共に酸素濃度を検出し、第2セル(センサセル)では酸素排出後のガスから特定成分のガス濃度を検出する。このガスセンサは、例えば排気中のNOx濃度を検出するNOxセンサとして具体化されるものである。また、上記第1セル、第2セルに加え、酸素排出後の残留酸素濃度を検出するための第3セル(モニタセル、若しくは第2ポンプセル)等の複数のセルを有するガスセンサであってもよい。
・ガス濃度成分としてHC濃度やCO濃度を検出可能とするガスセンサにも適用できる。この場合、ポンプセルにて被検出ガス中の余剰酸素を排出し、センサセルにて余剰酸素排出後のガスからHCやCOを分解してHC濃度やCO濃度を検出する。
・本発明のセンサ制御装置は、ガソリンエンジンに用いられるガスセンサ(センサ素子)だけでなく、ディーゼルエンジンなど、他の形式のエンジンに用いられるガスセンサ(センサ素子)にも適用できる。自動車以外の用途のセンサ制御装置として用いることや、排気以外のガスを被検出ガスとすることも可能である。