(第1の実施形態)
以下、本発明のセンサ制御装置を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。本実施形態では、車載エンジンより排出される排ガス(燃焼ガス)を被検出ガスとして同ガス中の酸素濃度(空燃比:A/F)を検出する空燃比検出装置を具体化しており、空燃比の検出結果はエンジンECU等により構成される空燃比制御システムにて用いられる。空燃比制御システムでは、空燃比をストイキ近傍でフィードバック制御するストイキ燃焼制御や、同空燃比を所定のリーン領域でフィードバック制御するリーン燃焼制御等が適宜実現される。また本実施形態では、近年又は将来の排ガス規制や異常検出規制(OBD)に対応する広域の空燃比検出や、リッチ燃焼運転時のリッチ燃焼制御、排気系に設置されたNOx吸蔵還元型触媒の吸蔵NOx放出、硫黄被毒再生等の制御を実施すべく、リッチ域(例えばA/F11)から大気状態までの広い範囲で空燃比を検出可能としている。
先ずはじめに、A/Fセンサの構成を図2を用いて説明する。本A/Fセンサは積層型構造のセンサ素子10を有し、図2にはセンサ素子10の断面構成を示す。実際には当該センサ素子10は図2の紙面直交方向に延びる長尺状をなし、素子全体がハウジングや素子カバー内に収容される構成となっている。
センサ素子10は、固体電解質層11、拡散抵抗層12、遮蔽層13及び絶縁層14を有し、これらが図の上下に積層されて構成されている。同素子の周囲には図示しない保護層が設けられている。長方形板状の固体電解質層11は部分安定化ジルコニア製のシートであり、その固体電解質層11を挟んで上下一対の電極15,16が対向配置されている。拡散抵抗層12は電極15へ排ガスを導入するための多孔質シートからなり、遮蔽層13は排ガスの透過を抑制するための緻密層からなる。これら各層12,13は何れも、アルミナ、スピネル、ジルコニア等のセラミックスをシート成形法等により成形したものであるが、ポロシティの平均孔径及び気孔率の違いによりガス透過率が相違するものとなっている。
絶縁層14はアルミナ等の高熱伝導性セラミックスからなり、電極16に対面する部位には大気ダクト17が形成されている。また、同絶縁層14にはヒータ18が埋設されている。ヒータ18は、バッテリ電源からの通電により発熱する線状の発熱体よりなり、その発熱により素子全体を加熱する。
上記センサ素子10において、その周囲の排ガスは拡散抵抗層12の側方部位から導入されて電極15に達する。排ガスがリーンの場合、排ガス中の酸素が電極15で分解され、電極16より大気ダクト17に排出される。また、排ガスがリッチの場合、逆に大気ダクト17内の酸素が電極16で分解され、電極15より排気側に排出される。
図3は、A/Fセンサの電圧−電流特性(V−I特性)を示す図面である。図3において、V軸(横軸)に平行な直線部分はセンサ素子10の素子電流IL(限界電流)を特定する限界電流域であって、この素子電流ILの増減は空燃比の増減(すなわち、リーン・リッチの程度)に対応している。つまり、空燃比がリーン側になるほど素子電流ILは増大し、空燃比がリッチ側になるほど素子電流ILは減少する。なお、図中のLX1は、センサ素子10への印加電圧Vpを決定するための印加電圧直線(印加電圧特性)を表しており、その傾きは概ね抵抗支配域(限界電流域よりも低電圧側の傾き部分)に一致している。
次に、本発明の主要部たるセンサ制御系の電気的構成を図1を参照しながら説明する。
図1では、センサ制御系の主要な構成としてマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略す)20とセンサ制御回路30とが設けられており、これらによりA/Fセンサ(センサ素子10)に流れる素子電流の計測やその素子電流値に基づくA/F値の演算など実施される。マイコン20は、CPU、各種メモリ、A/D変換器等を備える周知の論理演算回路にて構成されており、素子電流値に相応するA/F出力電圧をセンサ制御回路30から入力し、同A/F出力電圧のA/D値によりA/F値を算出する。なお、A/D変換器は例えば10bit分解能を有するものであり、その作動電圧範囲は0〜5Vである。同マイコン20により演算されたA/F値はエンジンECU25に逐次出力される。
エンジンECU25は、車両の通常走行時におけるストイキフィードバック制御機能及びリーンフィードバック制御機能や、エンジン高負荷増量時におけるリッチフィードバック制御機能、燃料カットに伴う大気雰囲気下でのセンサ異常診断機能などを有しており、これらはいずれも実空燃比(A/Fセンサによる検出A/F)に基づいて実施される。
具体的には、ストイキフィードバック制御として、例えば目標空燃比をストイキ(A/F=14.7)とし、A/Fセンサにより検出された実空燃比が目標空燃比に一致するようインジェクタによる燃料噴射量を制御する(精密ストイキ制御)。リーンフィードバック制御として、リーン目標空燃比(例えばA/F=30)を設定し、A/Fセンサにより検出された実空燃比がリーン目標空燃比に一致するようインジェクタによる燃料噴射量を制御する(精密リーン燃焼制御)。また、リッチフィードバック制御として、車両加速時や登坂時など高負荷増量を行う際に、リッチ目標空燃比(例えばA/F=10)を設定し、A/Fセンサにより検出された実空燃比がリッチ目標空燃比に一致するようインジェクタによる燃料噴射量を制御する。さらに、燃料カット時のセンサ異常診断として、燃料カットに伴い排気管内のガス雰囲気が大気状態(すなわち、既知の雰囲気)となった場合に、A/Fセンサの出力値(素子電流値)が大気相当の値となるか否か等によりセンサ素子の劣化の有無などを判定する。
ここで、ストイキフィードバック制御やリーンフィードバック制御では、ストイキを含むストイキ近傍領域、又は所定のリーン制御領域で高精度に空燃比を検出する必要があるのに対し、リッチフィードバック制御やセンサ異常診断では、リッチ領域から超リーン領域(大気)まで広域に空燃比を検出する必要がある。そこで本実施形態では、空燃比検出範囲として、リッチ〜超リーン(大気)までを含む全域レンジRG1と、ストイキ近傍領域であるストイキズームレンジRG2と、所定のリーン制御領域であるリーンズームレンジRG3とを規定しておき、空燃比に関する各処理のいずれが行われるかに応じて空燃比検出レンジの切換(レンジRG1/RG2/RG3の切換)を実施する。
全域レンジRG1は、センサ素子10により検出可能となる「全空燃比範囲」に相当する。また、ストイキズームレンジRG2は、全域レンジRG1(全空燃比範囲)の一部分であってかつストイキ燃焼制御に用いられる「ストイキ検出範囲」に相当し、リーンズームレンジRG3は、同じく全域レンジRG1(全空燃比範囲)の一部分であってかつリーン燃焼制御に用いられる「リーン検出範囲」に相当する。
図4は、3つの空燃比検出レンジRG1〜RG3についてA/Fとセンサ出力電圧(マイコン入力値)との関係を示す図である。なお、A/F出力電圧の範囲は、マイコン20側のA/D処理範囲に相応して規定されており、図示のとおり0V付近〜5V付近となっている。
図4に示すように、全域レンジRG1はA/F=10〜大気の範囲で設定され、ストイキズームレンジRG2はA/F=13〜20の範囲で設定され、リーンズームレンジRG3はA/F=14〜35の範囲で設定されている。これら各レンジRG1〜RG3は、いずれもストイキ点を跨ぐ検出レンジとして設定されている。このとき、全域レンジRG1での空燃比検出によれば、本システムにおいて使用領域として想定される全域で空燃比が検出できる。また、ストイキズームレンジRG2及びリーンズームレンジRG3での空燃比検出によれば、限られた電圧範囲(A/Dの作動電圧範囲)内で空燃比の検出分解能を高めることができる。
また、図5は、素子電流ILとA/Fとの関係を示す図である。図5に示すように、ストイキ(A/F=14.7)では素子電流IL=0mAとなっている。また、リーン領域とリッチ領域とを比べると、素子電流ILに対するA/F感度が相違し、前者の方がA/F感度が高くなっている。なおこれは、センサ素子10における感度特性に依存するものである。この場合、ストイキズームレンジRG2とリーンズームレンジRG3とについて素子電流範囲(横軸のIL幅)がほぼ同じであっても、実質的な空燃比検出範囲(縦軸のA/F幅)が相違することが確認できる。
こうした理由から、本実施形態では、ストイキズームレンジRG2とリーンズームレンジRG3とについて素子電流範囲(換言すると、A/F出力電圧の範囲)は同じであるが、実質的な空燃比検出範囲が相違することとなっている。
上記したストイキフィードバック制御、リーンフィードバック制御、リッチフィードバック制御及びセンサ異常診断の各処理は、重複して同時に実施される処理ではなく、択一的に実施される処理である。故に、全域レンジRG1による空燃比検出と、ストイキ/リーンズームレンジRG2,RG3による空燃比検出とが同時に必要となる場合はなく、都度の状況に合わせて空燃比検出レンジがRG1,RG2,RG3のいずれかに切り換えられ、その検出レンジにより空燃比検出(A/F値の算出)が行われる。
図1の説明に戻り、センサ制御回路30において、センサ素子10の負側端子(−端子)にはオペアンプ31及び電流検出抵抗32(電流計測用抵抗)を介して基準電圧電源33が接続され、同センサ素子10の正側端子(+端子)にはオペアンプ34を介して印加電圧制御回路35が接続されている。また、オペアンプ34の出力端子側にはスイッチ36が設けられている。このスイッチ36は、センサ素子10に流れる電流を遮断するために設けられる電流遮断手段であり、通常は閉状態で保持されており、マイコン20からの開指令信号に応じて開放されるようになっている。
この場合、電流検出抵抗32の一端のA点は基準電圧Vfと同じ電圧に保持される。素子電流ILは電流検出抵抗32を介して流れ、素子電流ILに応じてB点の電圧が変化する。例えば排ガスがリーンの場合、センサ素子10の+端子から−端子に電流が流れるためB点電圧が低下し、リッチの場合、センサ素子10の−端子から+端子に電流が流れるためB点電圧が上昇する。印加電圧制御回路35では、B点電圧をモニタするとともにその電圧値に応じてセンサ素子10に印加すべき電圧を決定(例えば、図3の印加電圧直線LX1に基づき決定)し、オペアンプ34を介してC点電圧を制御する。ただし、ストイキ近傍のみでA/F検出を行う場合、印加電圧固定とすることも可能である。
また、電流検出抵抗32の両端のA点及びB点には反転増幅回路38が接続されており、その反転増幅回路38の出力であるA/F出力電圧がマイコン20のA/D入力端子に取り込まれる。マイコン20では、逐次取り込まれるA/F出力電圧のA/D値に基づきA/F値が算出される。反転増幅回路38は、オペアンプ39と、直列接続された3つの増幅用抵抗41,42,43と、例えばMOSトランジスタにより構成されるスイッチ素子44とを有する。なお、増幅用抵抗41,42,43の抵抗値をそれぞれR1,R2,R3とする。
反転増幅回路38の構成として詳しくは、オペアンプ39の負側入力端子(反転入力端子)には、電流検出抵抗32により検出された素子電流信号が入力される。また、オペアンプ39の負側入力端子(反転入力端子)に接続される信号入力経路上にはスイッチ素子44が設けられ、そのスイッチ素子44の切換接点である接点a、接点bが、前記3つの増幅用抵抗41,42,43のうち中央の増幅用抵抗42の両端にそれぞれ接続されている。この場合通常、スイッチ素子44は、図示のとおりオペアンプ39の負側入力端子と接点aとを導通接続する状態となっている。そして、マイコン20からゲイン切換信号が出力されると、スイッチ素子44において、オペアンプ39の負側入力端子と接点bとを導通接続するよう切換操作が行われる。
ここで、オペアンプ39の負側入力端子とスイッチ素子44の接点aとが導通接続された状態(図示の状態)では、増幅用抵抗41が反転増幅回路38の入力抵抗、増幅用抵抗42及び43が同増幅回路38の帰還抵抗となる。したがって、かかる状態での反転増幅回路38の増幅率GAは、
GA=(R2+R3)/R1 …(式1)
となる。
また、オペアンプ39の負側入力端子とスイッチ素子44の接点bとが導通接続された状態では、増幅用抵抗41及び42が反転増幅回路38の入力抵抗、増幅用抵抗43が同増幅回路38の帰還抵抗となる。したがって、かかる状態での反転増幅回路38の増幅率GBは、
GB=R3/(R1+R2) …(式2)
となる。
上記の増幅率GA,GBを比べると、GA>GBである。つまり、スイッチ素子44の導通接点が接点aとなる場合には増幅率が相対的に高い状態にあり、スイッチ素子44の導通接点が接点bとなる場合には増幅率が相対的に低い状態にある。したがって、スイッチ素子44の導通接点が接点aから接点bに切り換えられることにより、反転増幅回路38の増幅率が高い増幅率から低い増幅率に変更されることとなる。本実施形態では、スイッチ素子44の導通接点を接点aとした時の増幅率GAを「×15」、接点bとした時の増幅率GBを「×5」としている。
上述した空燃比検出レンジと併せ考えると、相対的に狭い検出レンジであるストイキ/リーンズームレンジRG2,RG3で空燃比検出を行う場合には、その検出分解能を高めるべく増幅回路38の増幅率を大きくするとよく、スイッチ素子44の導通接点が接点aとされる。これに対し、相対的に広い検出レンジである全レンジRG1で空燃比検出を行う場合には、検出レンジ拡張を優先して増幅回路38の増幅率を小さくするとよく、スイッチ素子44の導通接点が接点bとされる。かかる場合、マイコン20は、エンジンECU25から都度の空燃比制御状況に関する情報を受信し、該受信した情報に基づいてスイッチ素子44に対してゲイン切換信号を出力する。これにより、空燃比検出レンジに対応させて増幅回路38における増幅率の切換が行われる。
また、増幅用抵抗41,42の中間点にはオフセット設定回路50が接続されている。オフセット設定回路50は、反転増幅回路38の出力であるA/F出力電圧にオフセットを付与するものであり、オフセット付与によって空燃比検出範囲が変更されるようになっている。反転増幅回路38とオフセット設定回路50によれば加算回路が構成される。よって、反転増幅回路38は、素子電流ILの大きさに相当する素子電流信号にオフセット信号を加算した電圧信号としてA/F出力電圧を出力する。
オフセット設定回路50は、例えばMOSトランジスタにより構成されるスイッチ素子51と、そのスイッチ素子51に直列接続される抵抗52と、2つの分圧抵抗53,54を有してなる電源回路55とから構成されている。スイッチ素子51は、マイコン20から出力されるオフセット切換信号に基づいてオン/オフされる。
この場合、オフセット切換信号がロウ信号であれば、スイッチ素子51がオフされる。したがって、実質的には反転増幅回路38とオフセット設定回路50との接続が遮断され、反転増幅回路38はオフセット設定回路50に無関係に作動する。つまり、A/F出力電圧についてオフセット設定は行われない。
これに対し、オフセット切換信号がハイ信号であれば、スイッチ素子51がオンされる。したがって、反転増幅回路38とオフセット設定回路50とが接続され、反転増幅回路38は、オフセット設定回路50によるオフセット設定を反映した状態で動作する。つまり、抵抗52や電源回路55により決定されるオフセット電流が反転増幅回路38に流れ込み、そのオフセット電流に相応してA/F出力電圧にオフセットが付与される。
上述した空燃比検出レンジと併せ考えると、ストイキズームレンジRG2で空燃比検出を行う場合には、スイッチ素子51がオフされ、図4や図5に示すように、ストイキを中心とする空燃比検出レンジが実現される(全域レンジRG1も同様)。また、リーンズームレンジRG3で空燃比検出を行う場合には、スイッチ素子51がオフされ、図4や図5に示すように、所定のリーン領域での空燃比検出レンジが実現される。
次に、本空燃比検出装置における空燃比検出レンジの具体的な切換手順について説明する。図6は、レンジ切換処理を示すフローチャートであり、本処理は、マイコン20により所定の時間周期で繰り返し実行される。
図6において、ステップS11では始動時処理を実行する。この始動時処理は、エンジン始動直後に1度だけ起動される処理であり、その詳細は後述する。
その後、ステップS12〜S14では、都度のエンジン制御状態を判定する。すなわち、ステップS12では、エンジンECU25から送信されてくるECU信号がリーン燃焼制御中を表す信号であるか否かを判定する。例えば、高速一定走行のような軽負荷走行時にはリーン燃焼制御が実施されており、かかる場合にはステップS12を肯定し、ステップS15に進む。
また、ステップS13では、ECU信号がリッチ燃焼制御中を表す信号であるか否かを判定する。さらに、ステップS14では、ECU信号が燃料カット(F/C)中を表す信号であるか否かを判定する。そして、リッチ燃焼制御中か、もしくは燃料カット中であれば、ステップS13,S14のいずれかを肯定し、ステップS16に進む。ステップS12〜S14を全て否定した場合には、今現在ストイキ燃焼制御中であるとみなし、ステップS17に進む。
ステップS15では、空燃比検出レンジをリーンズームレンジRG3とする。具体的には、反転増幅回路38のスイッチ素子44を接点a側に操作するとともに、オフセット設定回路50のスイッチ素子51をオンする(ただし、既にその操作状態であれば、同状態を保持する、以下、ステップS16,S17も同様)。これにより、増幅率が相対的に高く、かつオフセットが付与された状態での空燃比検出レンジ、すなわち、リーンズームレンジRG3が設定される。
また、ステップS16では、空燃比検出レンジを全域レンジRG1とする。具体的には、反転増幅回路38のスイッチ素子44を接点b側に操作するとともに、オフセット設定回路50のスイッチ素子51をオフする。これにより、増幅率が相対的に低く、かつオフセットが付与されていない状態での空燃比検出レンジ、すなわち全域レンジRG1が設定される。
さらに、ステップS17では、空燃比検出レンジをストイキズームレンジRG2とする。具体的には、反転増幅回路38のスイッチ素子44を接点a側に操作するとともに、オフセット設定回路50のスイッチ素子51をオフする。これにより、増幅率が相対的に高く、かつオフセットが付与されていない状態での空燃比検出レンジ、すなわちストイキズームレンジRG2が設定される。
なお、上記の各レンジRG1〜RG3の切換条件は、上述した各条件(ステップS12〜S14)に限られず、他の条件が適用されてもよい。
図7は、上記ステップS11で起動される始動時処理の詳細を示すフローチャートである。この始動時処理は、センサ制御回路30の特性誤差を判定するものであり、具体的には、センサ素子10に流れる電流(素子電流)を遮断した状態(図1のスイッチ36を開放した状態)で、各レンジRG1〜RG3への切換を行い、その時のA/F出力電圧に基づいて各レンジRG1〜RG3での特性誤差を判定する。このとき、A/F出力電圧が、素子電流IL=0mA相当の値になるかどうかによって、特性誤差を診断する。以下、処理手順の詳細を説明する。
図7において、ステップS21では、ストイキズームレンジRG2への切換を行い、続くステップS22では、かかる状態でのA/F出力電圧を読み込む。また、ステップS23では、リーンズームレンジRG3への切換を行い、続くステップS24では、かかる状態でのA/F出力電圧を読み込む。さらに、ステップS25では、全域レンジRG1への切換を行い、続くステップS26では、かかる状態でのA/F出力電圧を読み込む。
そして最後に、ステップS27では、上記ステップS22,S24,S26で読み込んだA/F出力電圧と異常判定値(素子電流IL=0mA相当の値)とを比較し、その結果から、センサ制御回路30の特性誤差を判定する。
なお、ストイキズームレンジRG2と全域レンジRG1とはいずれもオフセットが付与されないことから、それぞれの特性誤差に相関があり、一方の特性誤差から他方の特性誤差を求めることが可能である。それ故、ステップS21,S22の処理、又はステップS25,S26の処理のいずれかを省略することが可能である。例えば、ストイキズームレンジRG2での特性誤差に基づいて全域レンジRG1の特性誤差を求める場合、ストイキズームレンジRG2の特性誤差に対して、それら両レンジの増幅率の比を乗算することで、全域レンジRG1の特性誤差を求めればよい。上記のような異常診断処理を、始動時以外に実施することも可能である。例えば、エンジンの運転途中やエンジン停止時に実施することも可能である。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
反転増幅回路38においてオペアンプ39の一方の信号入力端子に対するオフセット設定回路50の接続/未接続を切換可能とし、その接続/未接続の切換により、ストイキズームレンジRG2とリーンズームレンジRG3との切換を可能とした。この場合、オフセット設定がなされるリーンズームレンジRG3では、オフセット設定回路50からオペアンプ39側に流れ込む電流加算分があらかじめ分かっているため、その電流加算分を加味して正確に空燃比検出を行うことができる。
素子電流増幅用の増幅回路として反転増幅回路38を用いた上記構成によれば、差動増幅回路を用いた場合(前述した図14参照)とは異なり、意に反して信号増幅率や空燃比検出範囲が変動するといった問題が回避できる。また、差動増幅回路を用いた図14の構成では、バッファ102,103を介してオペアンプ111の両入力端子に信号が入力されるが、本実施形態の構成ではバッファが不要となり、そのことから構成の簡素化も可能となる。
また本実施形態では、電流検出抵抗32を流れる素子電流ILを、オペアンプ31と電流検出抵抗32との間の中間点(図1のB点)にて計測する構成としたため、オペアンプ39の出力端子から増幅用抵抗41〜43を通じて帰還される帰還電流が電流検出抵抗32に流れ込むのを抑制できる(つまりこの場合、帰還電流は図1のB点からオペアンプ31側に流れることとなる)。かかる場合、仮に帰還電流が電流検出抵抗32に流れ込むのであれば、それに起因する素子電流の検出精度低下を抑制するべくオペアンプ39の信号入力経路にバッファ等を設置する必要があるが、本実施形態の構成ではこうしたバッファ等の設置が不要となる。
また、反転増幅回路38において複数の増幅用抵抗41〜43のうちいずれが入力抵抗、帰還抵抗となるかをスイッチ素子44により切り換え、その切換に伴い反転増幅回路38の増幅率を可変設定した。これにより、空燃比の検出分解能を適宜調整することが可能となる。したがって、所望とする空燃比検出レンジにおいてその検出精度を高めることができる。
反転増幅回路38の増幅率の可変設定は、スイッチ素子44の切換に伴う入力抵抗、帰還抵抗の振り分けで行われるため、複数の増幅回路(オペアンプ)を用いることで複数の異なる増幅率を実現していた従前の構成とは異なり、構成の簡素化が可能となる。そして、回路構成の簡素化に伴い、回路の小型化、低コスト化、端子数の削減が可能となる。
以上により、本実施形態によれば、回路構成の簡易化を図りつつ、しかも所望とする空燃比検出レンジにおいてその検出精度を高めることが可能となる。
オペアンプ39の信号入力経路(負側入力端子に接続された入力ライン)上にスイッチ素子44を設けることで、反転増幅回路38におけるA/F出力電圧の増幅を精度良く実施することができる。つまり、オペアンプ39の信号入力経路は一般にハイインピーダンスであるため、スイッチ素子44が抵抗成分を有していてもその抵抗成分が無視できる。したがって、反転増幅回路38における信号増幅の精度が高められる。
ストイキズームレンジRG2での空燃比検出結果に基づいて高精度なストイキ燃焼制御(ストイキフィードバック制御)が実現できるとともに、リーンズームレンジRG3での空燃比検出結果に基づいて高精度なリーン燃焼制御(リーンフィードバック制御)が実現できる。また、全域レンジRG1での空燃比検出結果に基づいて、燃料カット時の大気検出によるA/Fセンサの劣化診断や、高負荷増量時のリッチフィードバック制御等が好適に実施できる。超リーン域で燃焼制御が行われる直噴リーン燃料制御にも好適に対応できる。
各空燃比検出レンジをいずれもストイキ点を含む検出レンジとして設定したため、回路上の特性誤差を診断する場合に、簡易かつ好適にその診断を実施することができる。
なお、上記図1の構成では、電流検出抵抗32や反転増幅回路38をセンサ素子10の+端子側に接続する構成例について説明したが、同電流検出抵抗32や反転増幅回路38をセンサ素子10の−端子側に接続する構成であってもよい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、空燃比検出レンジとして、所定のリッチ制御領域であるリッチズームレンジRG4を規定する。リッチズームレンジRG4は、例えばA/F=10〜15の範囲で設定される。かかる場合、図8に示すように、上述した3つのレンジ(全域レンジRG1、ストイキズームレンジRG2及びリーンズームレンジRG3)に加えて、リッチズームレンジRG4が規定されるとよい。これら各レンジは、前記同様、空燃比に関する各処理のいずれが行われるかに応じて適宜切り換えられる。図9には、4つの空燃比検出レンジRG1〜RG4を切り換える場合の回路構成を示す。図9では、前記図1に比べて、オフセット設定回路60の構成が相違しており、以下その相違点を説明する。
オフセット設定回路60は、前述したオフセット設定回路50(図1参照)と同様、増幅用抵抗41,42の中間点に接続されている。オフセット設定回路60は、例えばMOSトランジスタにより構成されるスイッチ素子61を有している。そのスイッチ素子61は3つの切換接点a,b,cを有しており、そのうち接点a,cにはそれぞれ抵抗62,63が直列接続されている。また、これら各抵抗62,63は、3つの分圧抵抗64,65,66を有してなる電源回路67に接続されており、具体的には、抵抗62が分圧抵抗64,65の中間点に接続され、抵抗63が分圧抵抗65,66の中間点に接続されている。スイッチ素子61は、マイコン20から出力されるオフセット切換信号に基づいてオン/オフされる。
この場合、オフセット切換信号は、スイッチ素子61の導通接点をa,b,cのいずれかに操作するための制御信号である。オフセット切換信号が、スイッチ素子61の導通接点を接点bに操作する信号である場合、実質的には反転増幅回路38とオフセット設定回路60との接続が遮断され、反転増幅回路38はオフセット設定回路60に無関係に作動する。つまり、A/F出力電圧についてオフセット設定は行われない。
これに対し、オフセット切換信号が、スイッチ素子61の導通接点を接点a又は接点cに操作する信号である場合、A/F出力電圧について電源回路67によるオフセット設定が行われる。このとき、接点a又は接点cへの切換により、2つのオフセット値のうちいずれかが選択的に設定される。
ここで、スイッチ素子61の導通接点が接点aに操作された場合には、電源回路67により設定される電圧V1がスイッチ素子61等を介して反転増幅回路38に印加され、同導通接点が接点bに操作された場合には、電源回路67により設定される電圧V2がスイッチ素子61等を介して反転増幅回路38に印加される。電圧V1,V2はV1>V2の関係にある。また、電圧V1,V2は、反転増幅回路38に対して各々正負逆側のオフセットを付与するものとなっている。つまり、電圧V1は、その電圧印加によってオフセット設定回路60から反転増幅回路38側にオフセット相当分の電流(オペアンプ39側に向けて正電流)を流入させることができる電圧値となっているのに対し、電圧V2は、その電圧印加によって反転増幅回路38側からオフセット設定回路60にオフセット相当分の電流(オペアンプ39側に向けて負電流)を流入させることができる電圧値となっている。具体的には、ストイキ検出時に、電流検出抵抗32の両端が共に2.2V〔ボルト〕になると想定した場合、例えばV1≒4V〔ボルト〕、V2≒1V〔ボルト〕程度である。
上述した空燃比検出レンジと併せ考えると、ストイキズームレンジRG2で空燃比検出を行う場合には、スイッチ素子61が接点bに操作され、図8に示すように、ストイキを中心とする空燃比検出レンジが実現される。また、リーンズームレンジRG3で空燃比検出を行う場合には、スイッチ素子61接点aに操作され、図8に示すように、所定のリーン領域での空燃比検出レンジが実現される。さらに、リッチズームレンジRG4で空燃比検出を行う場合には、スイッチ素子61接点cに操作され、図8に示すように、所定のリッチ領域での空燃比検出レンジが実現される。
以上詳述した第2の実施形態によれば、リッチズームレンジRG4においても空燃比検出精度が向上する。したがって、ストイキ燃焼制御やリーン燃焼制御に加えて、リッチ燃焼制御を好適に実施することが可能となる。例えば、高負荷増量時のリッチ燃焼制御や、排気浄化装置(リーンNOx触媒)等の機能再生のためのリッチ燃焼制御に際し、その制御精度の向上を図ることができる。
(別の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されても良い。
反転増幅回路38を構成するオペアンプ39として、図10の構成を採用することも可能である。この場合、図10(a)の等価回路に示すように、入力トランジスタQ1のコレクタにはトランジスタQ2のベースが接続され、同トランジスタQ2のエミッタには出力トランジスタQ3のベースが接続されている。また、同じく入力トランジスタQ1のコレクタには、出力トランジスタQ4のベースが接続されている。出力トランジスタQ3,Q4の間には抵抗81が設けられ、その一端側(トランジスタQ3側)にはトランジスタQ5のベースが接続され、他端側(トランジスタQ4側)には出力端子が接続されている。さらに、電源ラインと入力トランジスタQ1のコレクタとの間には定電流回路82が接続され、トランジスタQ5のエミッタと接地ラインとの間には定電流回路83が接続されている。上記構成によれば、出力端子に定電流回路83を接続したことにより、出力端子から定電流回路83への電流の流入(電流シンク)が生じ、それに伴い電源電圧範囲の下限値付近での電圧出力が可能となる。つまり、出力電圧の範囲が下限側で拡張できる。
また、図10(b)に示すように、オペアンプ39の出力端子にプルダウン抵抗85を接続してもよい。この場合、出力端子からプルダウン抵抗85への電流の流入が生じ、前記同様、電源電圧範囲の下限値付近での電圧出力が可能となる。つまり、出力電圧の範囲が下限側で拡張できる。
上記図10(a),(b)の構成によれば、出力電圧範囲の拡張を、安価でかつチップ面積の小さいオペアンプにて実現できる。これにより、センサ制御回路としての小型化を図ることができる。ちなみに、素子電流増幅用のオペアンプとして、電源電圧付近の入出力振幅が得られるレイルツーレイル構成のオペアンプを用いることが提案されているが(例えば特開2006−275628号公報)、かかる構成では高価で、かつチップ面積が大きくなるという不都合が生じると考えられる。
上記実施形態では、素子電流増幅用の増幅回路として反転型の増幅回路を用いたが、これを変更し、非反転型の増幅回路を用いることも可能である。
上記実施形態では、リーンズームレンジRG3を、ストイキ点を含む空燃比検出レンジとして規定したが、これを変更し、ストイキ点を含まない空燃比検出レンジとして規定することも可能である。例えば、リーンズームレンジRG3をA/F=20〜35の範囲で規定する。リッチズームレンジRG4についても、同様にストイキ点を含まない空燃比検出レンジとして規定することが可能である。
上記実施の形態では、センサ素子(A/Fセンサ)として図2の素子構造を有するものを説明したが、他の素子構造を有するセンサ素子に本発明を適用することも可能である。例えば、1セルタイプのセンサ素子に代えて、ポンプセル及び起電力セルを有する2セルタイプのセンサ素子を用いる。換言すれば、1層の固体電解質を有する構成に代えて、2層の固体電解質を有する構成や、3層の固体電解質を有する構成とする。また、積層型構造のセンサ素子に代えて、コップ型構造のセンサ素子に本発明を適用したりすることも可能である。
以下、2セル構造のセンサ素子について2つの構成例を図11(a),(b)により説明する。
図11(a)に示すセンサ素子130では、2層の固体電解質層131,132を有しており、一方の固体電解質層131には一対の電極133,134が対向配置され、他方の固体電解質層132には一対の電極135,136が対向配置されている。なお、電極133〜135は図の左右対象に2カ所に見えるが、それらは紙面の前後何れかの部位で連結された同一部材である。本センサ素子130では、固体電解質層131及び電極133,134によりポンプセル141が構成され、固体電解質層132及び電極135,136により酸素検知セル142が構成されている。センサ素子130が積層構造を有することは、前述のセンサ素子10と同じである。図11(a)において、符号137はガス導入孔、符号138は多孔質拡散層、符号139は大気ダクト、符号140はヒータである。
酸素検知セル142の電極136の電位は比較器145の負側入力端子に入力され、同比較器145の正側入力端子には比較電圧Vrefが入力される。ポンプセル141の電極133と比較器145の出力との間には電流検出抵抗146が接続されており、その電流検出抵抗146の両端子のA点及びB点がセンサ出力として取り出されるようになっている。
上記構造のセンサ素子130において、酸素検知セル142は、排ガスがストイキに対してリーンかリッチかに応じて2値(0V又は0.9V)の起電力出力を発生する。例えばリーンである場合、酸素検知セル142の起電力出力が小さくなり、比較器145の出力(図のB点電圧)が上昇する。故に、電流検出抵抗146にはB→Aの向きに電流が流れる。また逆に、リッチである場合、酸素検知セル142の起電力出力が大きくなり、比較器145の出力(図のB点電圧)が低下する。故に、電流検出抵抗146にはA→Bの向きに電流が流れる。なお、酸素検知セル142は、一般に起電力セル、酸素濃度検出セルとも称される。
また、図11(b)に示すセンサ素子150では、3層の固体電解質層151,152,153を有し、固体電解質層151には一対の電極154,155が対向配置され、固体電解質層152には一対の電極156,157が対向配置されている。本センサ素子150では、固体電解質層151及び電極154,155によりポンプセル161が構成され、固体電解質層152及び電極156,157により酸素検知セル162が構成されている。また、固体電解質層153は、酸素基準室158を確保するための壁材を構成している。センサ素子150が積層構造を有することは、前述のセンサ素子10等と同じである。図11(b)において、符号159は多孔質拡散層、符号160はガス検出室である。なお、酸素検知セル162は、図11(a)の酸素検知セル72と同様、一般に起電力セル、酸素濃度検出セルとも称される。
酸素検知セル162の電極157の電位は比較器165の負側入力端子に入力され、同比較器165の正側入力端子には比較電圧Vrefが入力される。ポンプセル161の電極154と比較器165の出力との間には電流検出抵抗166が接続されており、その電流検出抵抗166の両端子のA点及びB点がセンサ出力として取り出されるようになっている。この場合、リーン時にはB→Aの向きに電流検出抵抗166に電流が流れ、逆にリッチ時にはA→Bの向きに電流検出抵抗166に電流が流れる。
上記2セル構造のセンサ素子を有するガス濃度センサについて、そのセンサ制御回路の構成を図12に基づいて説明する。なお図12には、図11(a)のセンサ素子130に関するセンサ制御回路170の構成を示す。
図12のセンサ制御回路170において、ポンプセル141及び酸素検知セル142の共通端子には基準電圧電源171が接続されている。また、これら各セル141,142と、オペアンプ172と、電流検出抵抗173とからなる閉回路が構成されており、オペアンプ172の非反転入力端子(正側入力端子)には、比較電圧Vref(0.45V)を生成する比較電圧生成回路174が接続されている。リーン時にはB→Aの向きに電流検出抵抗173に電流が流れ、逆にリッチ時にはA→Bの向きに電流検出抵抗173に電流が流れる(なお、オペアンプ172が図11(a)のオペアンプ145に相当し、電流検出抵抗173が同電流検出抵抗146に相当する)。かかる場合、酸素検知セル142の出力電圧が所定値になるようポンプセル141がフィードバック制御される(ただし、フィードバック制御回路については既に種々公開されておりここでは図示及び詳細な説明を省略する)。
また、電流検出抵抗173の両端のA点、B点には差動増幅回路180が接続されている。差動増幅回路180は、電流検出抵抗173の両端の各端子電圧を入力してその電圧差を増幅するものであり、その差動増幅回路180の出力であるA/F出力電圧がマイコン(図示略)に対して出力される。差動増幅回路180はオペアンプ181を有し、その正側入力端子(非反転入力端子)に接続される信号入力経路上にスイッチ素子182が設けられるとともに、そのスイッチ素子182の切換接点である接点a、接点bが、直列接続された3つの増幅用抵抗183,184,185のうち中央の増幅用抵抗184の両端にそれぞれ接続されている。この場合通常、スイッチ素子182は、図示のとおりオペアンプ181の正側入力端子と接点aとを導通接続する状態となっている。
また、オペアンプ181の負側入力端子(反転入力端子)に接続される信号入力経路上にはスイッチ素子186が設けられるとともに、そのスイッチ素子186の切換接点である接点c、接点dが、直列接続された3つの増幅用抵抗187,188,189のうち中央の増幅用抵抗188の両端にそれぞれ接続されている。この場合通常、スイッチ素子186は、図示のとおりオペアンプ181の負側入力端子と接点cとを導通接続する状態となっている。
そして、図示しないマイコンからゲイン切換信号が出力されると、各スイッチ素子182,186において同時に切換操作が行われる。この場合、スイッチ素子182,186の切換操作に伴い差動増幅回路180の増幅率が変更される。いずれの場合に(すなわち、どの空燃比検出レンジで)増幅率を高くするか低くするかは前述の説明に従うこととし、ここではその説明を省略する。
なお、差動増幅回路180では、スイッチ素子182,186の切換の前後において「正側の入力抵抗の値=負側の入力抵抗の値」かつ「帰還抵抗の値=入力抵抗の値」の状態が保持される。
また、差動増幅回路180の帰還経路側において、増幅用抵抗187,188の中間点にはオフセット設定回路190が接続されている。オフセット設定回路190は、差動増幅回路180の出力であるA/F出力電圧にオフセットを付与するものであり、オフセット付与によって空燃比検出範囲が変更されるようになっている。差動増幅回路180とオフセット設定回路190によれば加算回路が構成される。よって、差動増幅回路180は、素子電流ILの大きさに相当する素子電流信号にオフセット信号を加算した電圧信号としてA/F出力電圧を出力する。
オフセット設定回路190は、例えばMOSトランジスタにより構成されるスイッチ素子191と、そのスイッチ素子191に直列接続される抵抗192と、2つの分圧抵抗193,194を有してなる電源回路195とから構成されている。スイッチ素子191は、図示しないマイコンから出力されるオフセット切換信号に基づいてオン/オフされる。
この場合、オフセット切換信号がロウ信号であれば、スイッチ素子191がオフされる。したがって、実質的には差動増幅回路180とオフセット設定回路190との接続が遮断され、差動増幅回路180はオフセット設定回路190に無関係に作動する。つまり、A/F出力電圧についてオフセット設定は行われない。
これに対し、オフセット切換信号がハイ信号であれば、スイッチ素子191がオンされる。したがって、差動増幅回路180とオフセット設定回路190とが接続され、差動増幅回路180は、オフセット設定回路190によるオフセット設定を反映した状態で動作する。つまり、抵抗192や電源回路195により決定されるオフセット電流が差動増幅回路180(オペアンプ181)に流れ込み、そのオフセット電流に相応してA/F出力電圧にオフセットが付与される。
上述した空燃比検出レンジと併せ考えると、ストイキズームレンジRG2で空燃比検出を行う場合には、スイッチ素子191がオフされ、ストイキを中心とする空燃比検出レンジが実現される(全域レンジRG1も同様)。また、リーンズームレンジRG3で空燃比検出を行う場合には、スイッチ素子191がオフされ、所定のリーン領域での空燃比検出レンジが実現される。
図12では、オフセット設定状態の切換に際し、差動増幅回路180の帰還経路側における入力抵抗と帰還抵抗との間の中間点にオフセット設定回路190が接続された状態と接続されていない状態とが切り換えられる。かかる場合、その切換の前後で、差動増幅回路180の帰還抵抗の値と接地抵抗の値とが一致する状態が保持される。したがって、オフセット切換に伴い、意に反して信号増幅率やガス濃度検出範囲が変動するといった不都合が回避され、適正なる空燃比検出を実現できる。
上記図12のセンサ制御回路170では、電流検出抵抗173の両端のA点、B点はいずれも固定されず変動するが、以下の図13に示すセンサ制御回路200では電流検出抵抗の一方の端子を固定できる構成としている。
図13に示すセンサ制御回路200において、ポンプセル141及び酸素検知セル142の共通端子にはオペアンプ203を通じて基準電圧Vf1と同等の電圧(例えば3V)が印加される。つまり、図のB点電圧は3V固定となる。また、酸素検知セル142と、フィードバック回路201と、電流検出抵抗202とからなる閉回路が構成されている。フィードバック回路201内の基準電圧Vf2は例えば2.55Vである。
センサ制御回路200の動作をリッチ時を例に説明する。リッチ時には、酸素検知セル142の起電力により図のC1点が3.45Vに上がるため、フィードバック回路201内のC2点の電位が下がる。すると、フィードバック回路201の出力、すなわちA点電圧が上昇する。つまり、リッチ時にはA→Bの向きに電流検出抵抗202に電流が流れる。逆に、リーン時にはB→Aの向きに電流検出抵抗202に電流が流れる。
また、電流検出抵抗202の両端のA点、B点には非反転型の増幅回路210が接続されており、その増幅回路210の出力であるA/F出力電圧がマイコン(図示略)に対して出力される。増幅回路210はオペアンプ211を有し、その負側入力端子(反転入力端子)に接続される信号入力経路上にはスイッチ素子212が設けられるとともに、そのスイッチ素子212の切換接点である接点a、接点bが、直列接続された3つの増幅用抵抗213,214,215のうち中央の増幅用抵抗214の両端にそれぞれ接続されている。この場合通常、スイッチ素子212は、図示のとおりオペアンプ211の負側入力端子と接点aとを導通接続する状態となっている。
そして、図示しないマイコンからゲイン切換信号が出力されると、スイッチ素子212において切換操作が行われる。この場合、スイッチ素子212の切換操作に伴い増幅回路210の増幅率が変更される。いずれの場合に(すなわち、どの空燃比検出レンジで)増幅率を高くするか低くするかは前述の説明に従うこととし、ここではその説明を省略する。
また、増幅回路210の帰還経路側において、増幅用抵抗213,214の中間点にはオフセット設定回路220が接続されている。オフセット設定回路220は、増幅回路210の出力であるA/F出力電圧にオフセットを付与するものであり、オフセット付与によって空燃比検出範囲が変更されるようになっている。増幅回路210とオフセット設定回路220によれば加算回路が構成される。よって、増幅回路210は、素子電流ILの大きさに相当する素子電流信号にオフセット信号を加算した電圧信号としてA/F出力電圧を出力する。
オフセット設定回路220は、例えばMOSトランジスタにより構成されるスイッチ素子221と、そのスイッチ素子221に直列接続される抵抗222と、2つの分圧抵抗223,224を有してなる電源回路225とから構成されている。スイッチ素子221は、図示しないマイコンから出力されるオフセット切換信号に基づいてオン/オフされる。
この場合、オフセット切換信号がロウ信号であれば、スイッチ素子221がオフされる。したがって、実質的には増幅回路210とオフセット設定回路220との接続が遮断され、増幅回路210はオフセット設定回路220に無関係に作動する。つまり、A/F出力電圧についてオフセット設定は行われない。
これに対し、オフセット切換信号がハイ信号であれば、スイッチ素子221がオンされる。したがって、増幅回路210とオフセット設定回路220とが接続され、増幅回路210は、オフセット設定回路220によるオフセット設定を反映した状態で動作する。つまり、抵抗222や電源回路225により決定されるオフセット電流が増幅回路210(オペアンプ211)に流れ込み、そのオフセット電流に相応してA/F出力電圧にオフセットが付与される。
上述した空燃比検出レンジと併せ考えると、ストイキズームレンジRG2で空燃比検出を行う場合には、スイッチ素子221がオフされ、ストイキを中心とする空燃比検出レンジが実現される(全域レンジRG1も同様)。また、リーンズームレンジRG3で空燃比検出を行う場合には、スイッチ素子221がオフされ、所定のリーン領域での空燃比検出レンジが実現される。
図13の回路構成においても、前記同様、オフセット設定状態の切換に際し、差動増幅回路210の帰還経路側における入力抵抗と帰還抵抗との間の中間点にオフセット設定回路220が接続された状態と接続されていない状態とが切り換えられる。この場合、オフセット切換に伴い、意に反して信号増幅率やガス濃度検出範囲が変動するといった不都合が回避され、適正なる空燃比検出を実現できる。
酸素濃度を検出対象とするA/Fセンサ以外に、他のガス濃度成分を検出対象とするガス濃度センサにも本発明が適用できる。例えば、複合型のガス濃度センサは、固体電解質にて形成された複数のセルを有し、そのうち第1セル(ポンプセル)では被検出ガス中の酸素を排出又はくみ出すと共に酸素濃度を検出し、第2セル(センサセル)では酸素排出後のガスから特定成分のガス濃度を検出する。このガス濃度センサは、例えば排ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサとして具体化されるものであり、本発明の適用によりNOx濃度の検出精度が向上する。また、上記第1セル、第2セルに加え、酸素排出後の残留酸素濃度を検出するための第3セル(モニタセル、若しくは第2ポンプセル)等の複数のセルを有するガス濃度センサであっても良い。
ガス濃度成分としてHC濃度やCO濃度を検出可能とするガス濃度センサにも適用できる。この場合、ポンプセルにて被検出ガス中の余剰酸素を排出し、センサセルにて余剰酸素排出後のガスからHCやCOを分解してHC濃度やCO濃度を検出する。
また、本発明のセンサ制御装置は、ガソリンエンジンに用いられるガスセンサ(センサ素子)だけでなく、ディーゼルエンジンなど、他の形式のエンジンに用いられるガスセンサ(センサ素子)にも適用できる。自動車以外の用途のセンサ制御装置として用いることや、排ガス以外のガスを被検出ガスとすることも可能である。
10…センサ素子、11…固体電解質層、20…マイコン、25…エンジンECU、30…センサ制御回路、32…電流検出抵抗、38…反転増幅回路、39…オペアンプ、41〜43…増幅用抵抗、44…スイッチ素子、50…オフセット設定回路、51…スイッチ素子、60…オフセット設定回路、61…スイッチ素子。