JP5098627B2 - 電子部品及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子部品及びその製造方法に関する。
近年のプリント配線基板やパッケージ基板は高密度化が進み、部品実装方式も殆ど表面実装になってきている。それらの電子部品には、部品表面層の銅回路を保護して部品実装までの間、(1)表面層の酸化を防止すること、(2)はんだ付け性の劣化を防止すること、及び、(3)はんだ付け性を維持すること等を目的として、最終表面処理が行われる。
これらの最終表面処理には、HALSL(はんだレベラー)やOSP(耐熱プリフラックス)、ENIG(無電解Ni/Auめっき)、ISn(置換スズめっき)、及び、IAg(置換銀めっき)が主に使用されている。
また、最近では電子部品の小型化や両面実装がさらに進み、実装に使用するはんだ材として環境問題から鉛フリーはんだ材の適用が進んでいる。これにより、部品実装時のリフロー回数の増加やリフロー温度が上昇し、実装条件が年々厳しくなってきている。
このため、非特許文献1に記載されているような、リフロー回数が増えてもはんだ濡れ性の劣化が少ないENIG(無電解Ni/Auめっき)やIAg(置換銀めっき)を最終表面処理に使用する割合が増えてきている。
しかしながら、これら各種表面処理は個々に問題を抱えている。例えば、表面処理のENIG(無電解Ni/Auめっき)では、下地銅が置換Auめっき皮膜表面に拡散することを防止するために、中間層として無電解Niめっき皮膜を形成している。このとき、無電解Niめっきには、還元剤に次亜リン酸ナトリウムを使用しているため、めっき皮膜はNiとリンとの合金皮膜が形成されることとなる。
一方、電子部品の急激な小型化により、はんだ接合の面積が小さくなり単位面積当たりの接合応力が高くなってきている。このため、接合界面に応力が集中してNi−Pめっき皮膜とはんだとの界面で剥離不良が数多く発生するようになってきた。
また、フレキシブル配線基板等の屈曲性を必要とする電子部品に無電解Niめっき皮膜を形成した場合、Niめっき皮膜には実装時や組み立て時に大きな応力がかかる。このとき無電解Niめっき皮膜は脆く、硬い性質なため、配線を折り曲げた時に配線が割れる事故が多く発生している。
この対策として、第21回エレクトロニクス実装講演大会(14A−07)に報告があるように、無電解Niめっき液の組成変更により、配線割れに対応している。
しかし、上記のように無電解Niめっきは合金皮膜であるため皮膜組成コントロールが難しく、配線パターンやめっき面積により合金組成が変化する。このため、配線割れを制御、予測することが困難であり大きな問題になっている。
一方、IAg(置換銀めっき)による表面処理は、はんだ実装によって銀めっき皮膜がはんだ層や銅配線に拡散して無くなってしまうため、はんだ界面での剥離不良が発生し難いという優れた性質を有している。
しかし、Agは周知の様にマイグレーションの問題があり、また最終仕上げの変色防止処理、水分管理などの厳しい管理が必要になる。しかも、電気製品に組み込まれた場合には、長期間使用した場合にマイグレーションが発生するリスクを伴うことになる。
また、置換めっきであるため、下地銅合金の状態や種類により使用条件が大きく異なる場合がある。例えば、下地銅が銀で置換し易い場合は膜厚が大きく、置換し難い場合は膜厚が小さくなり、膜厚のコントロールが難しいという問題がある。また、置換めっきであるため、還元型めっきと違い膜厚を厚くすると下地銅を激しく腐食するため欠陥が多く生じることとなる。このため、厚くて欠陥のない均一な膜を形成できないという欠点がある。
これらの問題を解決するために、特許文献1には、銅系材料への置換金めっき方法が提案されている。この中には、銅系素材に直接置換金めっきを均一に行うために、めっき前処理にカルボキシル基を2個以上有する多塩基酸及びその塩から選ばれた少なくとも一種の成分を含有する水溶液からなる表面調整剤を接触させた後、水洗することなく、置換金めっき液と接触させて、置換金めっきを行うことを特徴とする銅系材料への置換金めっき方法が提案されている。
また、特許文献2、3に記載されているように、銅及び銅合金上に金めっき皮膜を施す方法として、過酸化水素と硫酸とを主成分とする水溶液からなるエッチング液を用いてソフトエッチングし、次に置換還元併用反応で金めっきを施す方法が提案されている。
表面技術協会誌(Vol.58,No.2,2007) 特開2002−220676号公報 特開2004−124110号公報 特開2004−327940号公報
上記特許文献1〜3に記載された方法によれば、銅表面に置換金めっき皮膜を形成することができると考えられる。しかしながら、特許文献1〜3に記載された方法で形成される皮膜は置換金めっき皮膜であるため、めっき表面に欠陥が多くなりやすいという問題がある。そして、上述したように、リフロー回数が増えたり、リフロー温度が高くなると、置換金めっき皮膜中に下地金属の一部が溶解及び拡散して金めっき皮膜表面で酸化物となり、金めっき皮膜の変色を生じるとともに、上記酸化物の存在により、はんだ濡れ性が低下して、はんだ付け性が低下するという問題がある。
また、上述した置換銀めっきと同様に、置換金めっきは金属イオンの置換反応を利用するものであるため、下地銅合金の状態や種類により使用条件が大きく異なる場合がある。すなわち、下地銅が金で置換し易い場合は膜厚が大きく、置換し難い場合は膜厚が小さくなり、膜厚のコントロールが難しいという問題がある。また、置換めっきであるため、還元型めっきと違い膜厚を厚くすると下地銅を激しく腐食するため欠陥が多く生じることとなる。このため、厚くて欠陥のない均一な膜を形成できず、必ずしも十分なはんだ接合性が得られないという欠点がある。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、プリント配線板やフレキシブル配線板等の銅回路、パッケージ基板等の半導体実装基板の銅系素材で形成された表面、及び、はんだ接合端子などの各種基板の銅を含む導体部に金めっき皮膜が形成されてなる電子部品であって、はんだ接合性、耐折性、耐熱性及び耐リフロー性に優れた電子部品、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、銅及び/又は銅合金系素材を含む導体部と、上記導体部上に直接形成された膜厚0.03〜0.05μmの置換金めっき皮膜と、上記置換金めっき皮膜上に形成された無電解金めっき皮膜と、を有する、フレキシブル配線板である電子部品を提供する。
かかる電子部品によれば、導体部上に直接置換めっき皮膜が形成され、さらにその上に無電解金めっき皮膜が形成された構造を有することにより、優れたはんだ接合性、耐折性、耐熱性及び耐リフロー性を得ることができる。
通常、銅や銅合金上に直接置換金めっきを均一に行うことは困難であり、形成される置換金めっき皮膜は局部的なピンホールが多く、熱処理やリフローによって皮膜が変色してしまうという欠点を有している。これに対し、本発明においては、置換金めっき皮膜上に更に無電解金めっきを行うことにより、ピンホールを低減させ、また、金皮膜を厚くすることにより、上記の問題を解決することが可能となる。
ここで、本発明の電子部品は、フレキシブル配線板、プリント配線板又はセラミック配線板のいずれかであることが好ましい。本発明の電子部品は、プリント配線板及びセラミック配線板において重要な特性であるはんだ接合性、耐熱性及び耐リフロー性に優れており、且つ、フレキシブル配線板の重要な特性である耐折性に優れているため、これらの配線板として好適に使用することができる。
本発明はまた、銅及び/又は銅合金系素材を含む導体部上に、置換金めっき液を用いて膜厚0.03〜0.05μmの置換金めっき皮膜を直接形成する工程と、上記置換金めっき皮膜上に、還元剤と錯化剤とを含む無電解金めっき液を用いて無電解金めっき皮膜を形成する工程と、を有する、フレキシブル配線板である電子部品の製造方法を提供する。
かかる製造方法によれば、導体部上に直接置換めっき皮膜を形成し、さらにその上に無電解金めっき皮膜を形成することにより、優れたはんだ接合性、耐折性、耐熱性及び耐リフロー性を有する電子部品を得ることができる。また、かかる製造方法によれば、銅及び/又は銅合金系素材からなる導体部表面に、均一な無電解金めっき皮膜を形成することができる。
本発明の電子部品の製造方法において、上記電子部品は、フレキシブル配線板、プリント配線板又はセラミック配線板のいずれかであることが好ましい。本発明の電子部品の製造方法によれば、はんだ接合性、耐折性、耐熱性及び耐リフロー性に優れた電子部品を製造することができるため、電子部品は、それらの特性が要求されるプリント配線板、セラミック配線板又はフレキシブル配線板であることが好適である。
また、本発明の電子部品の製造方法において、上記無電解金めっき液のpHは5〜10であることが好ましい。これにより、無電解金めっき時の金の析出速度を速めることができ、良好な無電解金めっき皮膜を形成することができる。また、無電解金めっき液のpHが5〜10であることにより、従来からあるアルカリ性の無電解金めっき液(pH13以上)と比較して、適用できる電子部品が多くなり、従来アルカリ性の薬品に使用できなかった材料等を使用した優れた電子部品を製造できるというメリットも生じる。
また、本発明の電子部品の製造方法において、上記無電解金めっき液に含まれる上記錯化剤は、硫黄のオキソ酸イオンを含むものであることが好ましい。かかる錯化剤を用いることにより、めっき液の自己分解の原因となる不均化反応を抑制して、めっき液を安定に保つことができる。
更に、本発明の電子部品の製造方法において、上記無電解金めっき液は、シアン化合物を含まないものであることが好ましい。なお、シアン化合物は使用可能であるが、その含有量は1〜500ppm程度であることが好ましく、1〜100ppm程度であることが更に好ましい。その理由としては、シアン単独(金塩以外)の場合、シアン化合物はめっき液の安定性を向上させる効果があるものの、過剰に添加した場合には、めっき液の反応を止めてしまうというデメリットが生じるためである。また、シアン化合物は毒性が高く使用が限定される。また、電子部品に使用する材料によっては、シアン化合物が部品に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、シアン化合物を添加する場合には、その量を制御することが要求される。シアン化合物を使用しない場合には量を制御する必要がなく、上記の心配をしなくていいというメリットがあるため、使用しないことが好適である。
本発明によれば、プリント配線板やフレキシブル配線板等の銅回路、パッケージ基板等の半導体実装基板の銅系素材で形成された表面、及び、はんだ接合端子などの各種基板の銅を含む導体部に金めっき皮膜が形成されてなる電子部品であって、はんだ接合性、耐折性、耐熱性及び耐リフロー性に優れた電子部品、及び、その製造方法を提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の電子部品の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、本発明の電子部品10は、基板1上に、銅及び/又は銅合金系素材を含む導体部2と、上記導体部2上に直接形成された置換金めっき皮膜3と、上記置換金めっき皮膜3上に形成された無電解金めっき皮膜4と、を有するものである。
また、本発明の電子部品の製造方法は、銅及び/又は銅合金系素材を含む導体部2上に、置換金めっき液を用いて置換金めっき皮膜3を直接形成する工程と、上記置換金めっき皮膜3上に、還元剤と錯化剤とを含む無電解金めっき液を用いて無電解金めっき皮膜4を形成する工程と、を有する方法である。かかる製造方法により、上記本発明の電子部品10を好適に製造することができる。以下、本発明の電子部品及びその製造方法について詳細に説明する。
本発明で行う無電解金めっき法の対象になる被めっき物は、その表面端子や配線に銅及び/又は銅合金部分を含んでいる。本発明で行う無電解金めっき法は、これら銅を含む素材の表面を有する電子部品10の導体部2上に直接、置換金めっき液で置換金めっき皮膜3を形成し、さらにその上に還元剤と錯化剤とを含む無電解金めっき液で無電解金めっき皮膜4を形成する方法である。
被めっき物において、導体部2は銅及び/又は銅合金系素材以外に更に他の金属を含んでいてもよい。他の金属としては特に制限はなく、例えば、Ni、Pd、Ag、Fe、Zn、Sn、Au等が挙げられる。等が挙げられる。また、銅合金としては特に制限はなく、例えば、銅亜鉛合金、銅錫合金、銅ニッケル合金、銅コバルト合金等が挙げられる。これら銅合金としては、銅含有率が50質量%以上の銅比率の多い合金が望ましい。
これらめっきの対象となる導体部2は、電子部品を構成する基板1の表面に形成されている。これら導体部2の形成方法については特に制限はなく、例えば、圧延等の機械加工や、電気めっき法又は無電解めっき法等のより形成することができる。また、導体部2は、CVD、スパッタ法等の気相めっき法で形成することもできる。さらに、導体部2としては、セラッミクス基板上に銅及び/又は銅合金を含むペーストを印刷し、その後に焼成して形成された銅配線なども使用できる。
このような銅及び/又は銅合金系材料で配線パターンやはんだ接合端子が形成された電子部品の具体例としては、プリント配線板、フレキシブル配線板、半導体実装用のパッケージ基板、セラミックス等を利用したLTCC基板等が例示できる。
本発明で行う無電解金めっき法では、プリント配線板で使用する一般的な前処理を行うことが好ましい。前処理としては、例えば、被めっき物表面の汚れを除去する脱脂処理を行い、次に、被めっき物表面の酸化物層を除去するソフトエッチングを行う。さらに被めっき物表面の活性を均一にするための活性化処理を順次行ってもよい。以下、これらの前処理について詳しく説明する。
被めっき物表面の油脂分を除去する脱脂方法については、特に制限はなく、例えば、酸性脱脂液に浸漬する方法等を用いることができる。また、酸に対して弱い基材の場合には、アルカリ性の脱脂液等も使用できる。
また、被めっき物表面のソフトエッチング方法についても特に制限はなく、一般的な方法が使用でき、例えば、過硫酸塩(ナトリウム、カリウム、アンモニウム)、過硫酸塩と硫酸との混合液、過酸化水素水−硫酸混合液等に浸漬する方法等を用いることができる。
さらに、被めっき物表面の活性化処理についても特に制限はなく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸系の水溶液に浸漬する方法等を用いることができる。
このように表面調整を行った被めっき物表面に、無電解金めっきの前処理として置換金めっきを行う必要がある。ここで使用する置換金めっき液は特に制限はないが、好適にはシアン系の置換金めっき液を用いることが有効である。
置換金めっき方法としては特に制限されず、例えば、置換金めっき液に浸漬する方法等を用いることができる。これにより、被めっき物表面に置換金めっき皮膜3が形成され、導体部2上に置換金めっき皮膜3が、他のめっき皮膜等を介さずに直接形成される。
また、置換金めっき皮膜3の形成は、液温50〜95℃の置換金めっき液で行うことが好ましく、液温75〜85℃の置換金めっき液で行うことがより好ましい。液温が50℃未満であると、置換反応が起こり難くなる傾向があり、95℃を超えると、過剰な置換反応により、ピンホールが多くなり、皮膜にムラが生じやすくなる傾向がある。
次に、置換金めっき皮膜3上に、無電解金めっき液を用いて無電解金めっき皮膜4を形成する。この無電解金めっき皮膜4についても、他のめっき皮膜等を介さずに置換金めっき皮膜3上に直接形成することが好ましい。本発明で使用する無電解金めっき液は、金塩、錯化剤、還元剤、添加剤等からなるが、これらについて順次詳しく説明する。なお、添加剤としては特に制限されないが、重金属塩類、水溶性アミン類、金属隠蔽剤、pH緩衝剤、安定剤等が挙げられ、これらを適時組み合わせて使用することもできる。
(金塩)
無電解金めっき液に使用可能な金塩としては特に制限はないが、シアン系金塩、非シアン系金塩等が挙げられる。シアン系金塩としては、シアン化第一金カリウム、シアン化第二金カリウム等が挙げられ、非シアン系金塩としては、塩化金酸塩、亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩、チオリンゴ酸金塩等が挙げられる。金塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。また、金塩としては、上記のうち亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩等の非シアン系金塩を用いることが好ましい。
無電解金めっき液中の金塩の含有量は、金として1〜10g/Lの範囲であることが好ましく、2〜5g/Lの範囲であることがより好ましい。金の含有量が1g/L未満であると、金の析出反応が生じ難くなる傾向があり、10g/Lを超えると、めっき液の安定性が低下すると共に、めっき液の持ち出しにより金消費量が多くなるため経済的に好ましくない。
(還元剤)
無電解金めっき液に含有される還元剤類としては、例えば、アスコルビン酸又はその塩、ヒドラジンとその塩、メチルヒドラジンとその誘導体、エチルヒドラジンとその誘導体等のヒドラジン化合物、フェニル化合物類等が使用できる。
フェニル化合物類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、t−ブチルフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンスルホン酸、カテコール、ピロガロール、メチルヒドロキノン、アニリン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−トルイジン、p−トルイジン、o−エチルアニリン、p−エチルアニリン、没食子酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
無電解金めっき液中の還元剤の含有量は、0.5〜50g/Lであることが好ましく、2〜10g/Lであることがより好ましく、2〜5g/Lであることがさらに好ましい。還元剤の含有量が0.5g/L未満であると、実用的な金の析出速度を得ることが困難となる傾向があり、50g/Lを超えると、めっき液の安定性が低下する傾向がある。
(錯化剤)
無電解めっき液には錯化剤を含有させることが好ましく、当該成分を含有させることにより、金イオン(Au)が安定的に錯体化されて、Auの不均化反応(3Au→Au3++2Auの発生を低下させ、液が安定に保たれるという効果が得られる。錯化剤は1種類を単独で用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
好適な錯化剤としては、例えば、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等のシアン系錯化剤や、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、チオリンゴ酸塩、チオシアン酸塩、メルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール、2−メルカプトエタノール、グルコースシステイン、1−チオグリセロール、メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム、N−アセチルメチオニン、チオサリチル酸、2−チアゾリン−2−チオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−ベンゾチアゾールチオール又は2−ベンズイミダゾールチオール等の非シアン系錯化剤が挙げられる。本発明で使用する無電解金めっき液においては、取扱いの良さや、環境問題、毒性の観点から、非シアン系の亜硫酸塩又はチオ硫酸塩を錯化剤として用いることが好ましい。
無電解金めっき液中の錯化剤の含有量は、1〜200g/Lであることが好ましく、20〜50g/Lであることがより好ましい。錯化剤の含有量が1g/L未満である場合、金錯化力が低下し、安定性が低下する傾向があり、200g/Lを超えると、めっき液の安定性は向上するが、液中に再結晶が発生し、経済的に負担となる傾向がある。
(添加剤)
[添加剤1:水溶性アミン類]
無電解金めっき液には、析出速度向上を目的に水溶性アミン類を添加することができる。水溶性アミン類としては特に制限はないが、例えば、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン、エチレントリアミン、m−ヘキシルアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジメチルアミン、トリエタノールアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、EDTA塩等を用いることができ、中でもエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトレミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンが好ましく、これらのうちエチレンジアミンが最も好ましい。これらの水溶性アミン類は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
無電解金めっき液中の水溶性アミン類の含有量は、0.1〜100g/Lの範囲とすることが好ましく、2〜10g/Lの範囲とすることがより好ましい。この水溶性アミン類の含有量が0.1g/L未満であるとアミン類の添加の効果が十分発揮されない傾向があり、100g/Lを超えるとめっき液の安定性が低下する場合があるため好ましくない。
水溶性アミン類を無電解金めっき液に添加することにより、金の析出速度を向上させることができ、且つ、金めっきの外観や付き回り性を向上させることができ、しかも液安定性を著しく向上させることができる。
[添加剤2:重金属塩類]
無電解金めっき液には重金属塩を添加することもできる。析出速度の向上と皮膜外観を改善する観点から、重金属塩は、タリウム塩、鉛塩、砒素塩、アンチモン塩、テルル塩及びビスマス塩からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
タリウム塩としては、硫酸タリウム塩、塩化タリウム塩、酸化タリウム塩、硝酸タリウム塩等の無機化合物塩、マロン酸二タリウム塩などの有機錯体塩が挙げられる。鉛塩としては、硫酸鉛塩、硝酸鉛塩等の無機化合物塩、酢酸鉛などの有機錯体塩が挙げられる。
また、砒素塩としては、亜砒素塩、砒酸塩、三酸化砒素等の無機化合物塩や有機錯体塩が挙げられる。アンチモン塩としては酒石酸アンチモニル塩などの有機錯体塩、塩化アンチモン塩類、オキシ硫酸アンチモン塩、三酸化アンチモン等の無機化合物塩類が挙げられる。
更に、テルル塩としては、亜テルル酸塩、テルル酸塩等の無機化合物塩や、有機錯体塩が挙げられる。ビスマス塩としては、硫酸ビスマス(III)、塩化ビスマス(III)、硝酸ビスマス(III)等の無機化合物塩、シュウ酸ビスマス(III)等の有機錯体塩が挙げられる。
本発明においては、重金属塩として、タリウム塩(好ましくはタリウム無機化合物又はタリウム有機錯体塩)を用いることが好ましい。上述した重金属塩は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
無電解金めっき液中の重金属塩の含有量は、1〜100ppmであることが好ましく、1〜10ppmであることがより好ましい。この含有量が1ppm未満では析出速度向上効果が充分に得られない場合があり、100ppmを超える場合はめっき液安定性が低下する傾向がある。
[添加剤3:pH緩衝剤]
無電解金めっき液には、pH緩衝剤を含有させることが好ましい。pH緩衝剤を含有させることにより、析出速度を所望の値に調整することができ、また、めっき液のpHを一定に保つことができる。
pH緩衝剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好適なpH緩衝剤としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、硼酸塩、クエン酸塩、硫酸塩等が挙げられ、これらの中でも硼酸塩及び硫酸塩が特に好ましい。
無電解金めっき液中のpH緩衝剤の含有量は、1〜100g/Lであることが好ましく、20〜50g/Lであることがより好ましい。pH緩衝剤の含有量が1g/L未満であると、pHの緩衝効果が十分に得られず、めっき液の状態が変化する傾向があり、100g/Lを超えると、めっき液中で再結晶化が進行する傾向がある。
[添加剤4:金属イオン隠蔽剤]
無電解金めっき液には、金属イオン隠蔽剤を含有させることが好ましい。めっき作業中、無電解金めっき液には、めっき装置の錆、金属破片等の持込などによる不純物の混入や、被めっき物の付き回り不足による下地金属のめっき液中への溶解などによって、銅、ニッケル、鉄等の不純物イオンが混入し、めっき液の異常反応が進行して、めっき液の分解が発生する場合がある。そこで、無電解金めっき液中に金属イオン隠蔽剤を含有させることにより、このような異常反応を抑制することが可能となる。
金属イオン隠蔽剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物を用いることができる。ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾールナトリウム、ベンゾトリアゾールカリウム、テトラヒドロベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール等が例示できるが、これらに制限されるものではない。
無電解金めっき液中の金属イオン隠蔽剤の含有量は、0.5〜100g/Lであることが好ましく、コスト及び効果の観点から2〜10g/Lであることがより好ましい。金属イオン隠蔽剤の含有量が0.5g/L未満であると、不純物の隠蔽効果が少なく、充分な液安定性を確保できない傾向がある。一方、100g/Lを超えると、めっき液中で再結晶化が生じる場合がある。
[添加剤5:安定剤類]
無電解金めっき液には、めっき液の安定性を向上することのできる各種安定剤を添加することもできる。選択できる安定剤としては大きく分類して、硫黄を構造式に持つ物質を挙げることができる。その例としては、大きく分類して硫化物塩、チオシアン酸塩、チオ尿素化合物、メルカプタン化合物、ジスルフィド化合物、チオケトン化合物、チアゾール化合物、チオフェン化合物等が挙げられる。
個々の物質については詳しく説明はしないが、安定剤類として好ましくはチアゾール化合物類が用いられる。チアゾール化合物類として具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−アミノチアゾール、2,1,3−ベンゾチアジゾール、1,2,3−ベンゾチアジゾール、(2−ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸等が好適である。
また、その他の安定剤として有効な物質は含窒素化合物を例示できる。含窒素化合物としては、ビピリジル化合物、フェナントロリン化合物、シアン化合物等が挙げられる。その具体的な例としてビピリジル系化合物としては、2,2’−ビピリジル、2,3’−ビピリジル、2,4’−ビピリジル、4,4’−ビピリジル、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸等が例示できる。フェナントロリン化合物としては、1,10−フェナントロリン無水物、1,10−フェナントロリン一水和物、1,10−フェナントロリン−2,9−ジカルボン酸、o−フェナントロリン塩酸塩等が例示できる。
シアン化合物は、その金めっき全体(置換金めっき及び無電解金めっきの全体)の組成として、錯塩や金塩にシアン化合物を使用しない場合に特に有効であり、その成分としてはシアン化カリウム、シアン化ナトリウム等が挙げられる。
さらに、無電解金めっき液には安定剤として非イオン性界面活性剤を使用できる。その具体的例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。使用する界面活性剤の分子量は特に制限はないが、分子量200〜9000程度が好適である。
本発明で使用する安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
無電解金めっき液中の安定剤の含有量は、1〜500ppmであることが好ましく、1〜30ppmであることがより好ましく、1〜10ppmであることがさらに好ましい。安定剤の含有量が1ppm未満では、めっき液の安定性向上に効果が少なく、濃度管理が困難になる傾向がある。また、500ppmを超えると金の析出速度が低下し、めっき付き回り不良を生じ、皮膜外観が悪化する傾向がある。
(無電解金めっき液のpH)
本発明で使用する無電解金めっき液のpHは5〜10の範囲であることが好ましく、還元剤の析出効率を向上させ、速い析出速度を得るためには6〜8であることがより好ましい。めっき液のpHが5未満であると、めっき液の錯化剤である亜硫酸塩や、チオ硫酸塩等が分解し、毒性の亜硫酸ガスが発生する恐れがある。一方、pHが10を超えると、めっき液の安定性が低下する傾向がある。
(無電解金めっき方法)
次に、本発明で行う無電解金めっき法について説明する。本発明で行う無電解金めっき法では、上述した無電解金めっき液中に被めっき物を浸漬して、この被めっき物表面に金皮膜を形成させる。
また、無電解金めっき皮膜4の形成は、液温50〜95℃の無電解金めっき液で行うことが好ましく、65〜70℃の無電解金めっき液で行うことがより好ましい。液温が50℃未満である場合は、析出速度が低いため効率が悪く、95℃を超えると液安定性が低下する傾向がある。
上記のような無電解金めっき液を使用して、銅配線上に置換金めっき皮膜3を介して無電解金めっき膜を成膜することができる。この方法においては、金塩、錯化剤、還元剤、添加剤の組み合わせは数多く存在するが、特定の組み合わせに制限されるものではない。
上述した方法により、銅及び/又は銅合金系素材を含む導体部上に、置換金めっき皮膜3及び無電解金めっき皮膜4が順次形成され、本発明の電子部品が得られる。
こうして得られる電子部品において、置換金めっき皮膜3の膜厚は、0.01〜0.1μmであることが好ましく、0.03〜0.05μmであることがより好ましい。この膜厚が0.01μm未満であると、その後の無電解金めっきが均一に製膜できにくくなる傾向があり、0.1μmを超えると、置換金皮膜によるピンホールが多くなり、その部分がめっきピットとなって、無電解金めっきでも十分にカバーリングできにくくなる傾向がある。
また、上記電子部品において、無電解金めっき皮膜4の膜厚は、0.1〜1μmであることが好ましく、0.3〜0.5μmであることがより好ましい。この膜厚が0.1μm未満であると、無電解金めっき皮膜4のピンホールやムラをカバーできにくくなる傾向があり、膜厚が厚くなっても特性に大きな変化はなく、1μmを超えると、めっきコストが高くなり経済的にマイナスになる傾向がある。
図2は、本発明の電子部品の他の好適な一実施形態を示す斜視図である。図2に示す電子部品20は、ボールグリッドアレイ(BGA:ball grid array)と呼ばれる半導体パッケージである。
図2に示すように、電子部品20においては、半導体素子搭載用の支持部材となる基板1上に半導体素子6が積層されている。また、基板1には、回路パターン5及び端子7が形成されており、この回路パターン5と半導体素子6とがワイヤボンド8によって接続されている。そして、かかる電子備品20の回路パターン5は、図1に示したように、導体部2と、該導体部2上に直接形成された置換金めっき皮膜3と、該置換金めっき皮膜3上に形成された無電解金めっき皮膜4と、を含む構成を有している。なお、図示していないが、基板1の半導体素子6が積層されている側、すなわち、半導体素子6、回路パターン5及びワイヤボンド8は、封止材により封止されていてもよい。
このような電子部品は、本発明の構成を有しているため、優れたはんだ接合性、耐折性、耐熱性及び耐リフロー性を得ることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実験方法)
[めっき方法及びサンプル基板作成方法]
評価用の被めっき物としては、(1)ファインパターン性及びめっき外観評価用のフレキシブル配線板、(2)はんだ濡れ性評価用のMCL基板(3cm×3cm×1.5mm、18μm厚の銅箔使用)、(3)はんだボール接続信頼性評価用のパターンが形成されたプリント基板、並びに、(4)耐折性評価用(巻き付け試験及びMIT試験用)のフレキシブル配線板の4種類のサンプル基板を用意した。これらのサンプル基板を以下の方法で一度にめっきして電子部品を作製し、評価を行った。
<実施例1〜3>
サンプル基板を最初に酸性脱脂処理液〔日立化成工業(株)製、商品名:HCR−4101〕中に入れ、液温40℃で3分間処理を行った。その後、余分な界面活性剤を除去するために、純水による湯洗を40℃で3分間行い、さらに流水洗を3分間行った。
次に、ソフトエッチング処理として、硫酸−過水系のエッチング液〔日立化成工業(株)製、商品名:HET−100〕により、液温40℃で1分間処理を行った。その後、さらに室温で流水洗を1分間行った。
その後、置換金めっき液〔日立化成工業(株)製、商品名:HGS−500〕中にて85℃で10分間処理を行い、サンプル基板の銅箔上に直接置換金めっき皮膜を形成した。次いで、流水洗を1分間室温で行った後、還元剤及び錯化剤を含む無電解金めっき液〔日立化成工業(株)製、商品名:HGS−5400〕中にて65℃で、10分間(実施例1)、20分間(実施例2)、30分間(実施例3)の3条件で処理を行い、置換金めっき皮膜上に無電解金めっき皮膜を形成した。これにより、実施例1〜3の電子部品を得た。これらを評価用のサンプル基板とした。なお、上記の方法でめっきを何度も行ったが、めっき液が分解することはなかった。
<比較例1〜3>
サンプル基板を最初に酸性脱脂処理液〔日立化成工業(株)製、商品名:HCR−4101〕中に入れ、液温40℃で3分間処理を行った。その後、余分な界面活性剤を除去するために、純水による湯洗を40℃で3分間行い、さらに流水洗を3分間行った。
次に、ソフトエッチング処理として、硫酸−過水系のエッチング液〔日立化成工業(株)製、商品名:HET−100〕により、液温40℃で1分間処理を行った。その後、さらに室温で流水洗を1分間行った。
その後、無電解Ni−Pめっき用の前処理として、置換Pdめっき液〔日立化成工業(株)製、商品名:SA−100〕中にて25℃で5分間処理を行った後、さらに室温で流水洗を1分間行った。
その後、無電解Ni−Pめっき液〔日立化成工業(株)製、商品名:NIPS−100〕中にて85℃で、10分間(比較例1)、20分間(比較例2)、30分間(比較例3)の3条件で処理を行ってNi−Pめっき皮膜を形成し、さらに室温で流水洗を1分間行った。
次いで、置換金めっき液〔日立化成工業(株)製、商品名:HGS−500〕中にて85℃で10分間処理を行い、Ni−Pめっき皮膜上に置換金めっき皮膜を形成した。その後、流水洗を1分間室温で行った後、還元剤及び錯化剤を含む無電解金めっき液〔日立化成工業(株)製、商品名:HGS−5400〕中にて65℃で30分間処理を行い、置換金めっき皮膜上に無電解金めっき皮膜を形成した。これにより、比較例1〜3の電子部品を得た。これらを評価用のサンプル基板とした。なお、上記の方法でめっきを何度も行ったが、めっき液が分解することはなかった。
<比較例4>
サンプル基板を最初に酸性脱脂処理液〔日立化成工業(株)製、商品名:HCR−4101〕中に入れ、液温40℃で3分間処理を行った。その後、余分な界面活性剤を除去するために、純水による湯洗を40℃で3分間行い、さらに流水洗を3分間行った。
次に、ソフトエッチング処理として、硫酸−過水系のエッチング液〔日立化成工業(株)製、商品名:HET−100〕により、液温40℃で1分間処理を行った。その後、さらに室温で流水洗を1分間行った。
その後、置換金めっき液〔日立化成工業(株)製、商品名:HGS−500〕中にて85℃で10分間処理を行い、サンプル基板の銅箔上に直接置換金めっき皮膜を形成した。これにより、比較例4の電子部品を得た。これを評価用のサンプル基板とした。なお、上記の方法でめっきを何度も行ったが、めっき液が分解することはなかった。
(評価方法)
[ファインパターン性評価方法]
上記方法でめっきした(1)フレキシブル配線板について、微細パターンが形成された部分と、目視で評価できる大きな四角パットを有した部分とを、実体顕微鏡及び金属顕微鏡で観察してファインパターン性を評価した。ファインパターン性が良好な場合は「A」、若干配線に異常析出(スソヒキ等)がある場合は「B」、配線間が繋がってしまったような配線ショート(めっきブリッジ)が発生した場合は「C」とした。
また、フレキシブル配線板上の各めっき皮膜の膜厚は、蛍光X線膜厚計〔(株)フィッシャー・インストルメンツ製、製品名:XDVM−W〕で測定した。
[はんだ濡れ性評価方法]
はんだ濡れ性の評価は、上記方法でめっきした(2)MCL基板を、150℃で6時間大気加熱した後に行った。加熱後のサンプル基板表面に、フラックス〔日本アルファメタルズ(株)製、商品名:ソルボンドK183/水溶性〕を塗布した後、直径0.6mm(φ)の鉛フリー(Sn−Ag系)はんだボール〔千住金属工業(株)製、商品名:エコソルダーボールS〕を載せて240℃でリフローを行った。はんだ濡れ性は、はんだボールの濡れ広がった面積を測定することで評価した(はんだ濡れ拡がり性のリフロー前の初期面積を0.2mmとして比較する)。
[耐熱性評価方法]
耐熱性の評価は、上記方法でめっきした(2)MCL基板を、150℃で6時間連続加熱し、基板表面の変色を目視で観察することで行った。評価基準としては、変色が殆ど見られない場合を「A」、一部に変色が見られた場合を「B」、MCL基板全体が変色した場合を「C」として評価した。
[耐リフロー性評価方法]
耐リフロー性の評価は、窒素リフロー装置〔日本電熱計器製、商品名:ILF−350BS〕を使用して行った。すなわち、上記方法でめっきした(2)MCL基板を、ピーク温度を252℃に設定して、リフロー炉を連続7回通した後の基板表面の変色を目視で観察した。評価基準としては、変色が殆ど見られない場合を「A」、一部に変色が見られた場合を「B」、MCL全体が変色した場合を「C」として評価した。
[はんだ接合性評価方法]
上記方法でめっきした(3)はんだボール接続信頼性評価用のパターンが形成されたプリント基板上にある、ボールシェアー評価用の直径0.5mm(φ)のボールパッドに、フラックス〔日本アルファメタルズ(株)製、商品名:ソルボンドK183/水溶性〕を塗布した後、直径0.6mm(φ)の鉛フリー(Sn−Ag系)はんだボール〔千住金属工業(株)製、商品名:エコソルダーボールS〕を載せて240℃でリフローを行った。その後、ボンドテスター(デイジー社製、製品名:SERIES4000)を用いて、シェアー速度0.3mm/min、シェアー高さ50μmの条件でボールシェアー試験を行った。この試験ではシェアー強度及び剥離モードを測定した。
[耐折性試験方法]
上記方法でめっきした(4)耐折性評価用(巻き付け試験及びMIT試験用)のフレキシブル配線板を使用し、以下の巻き付け試験及びMIT試験により耐折性を評価した。
[巻き付け試験]
JIS Z2248金属材料曲げ試験に準じて巻き付け試験を行った。巻き付け試験は、幅1mmの配線部分に上記めっきを施した後、直径0.8mm(φ)のSUS棒を用いて行った。クラック発生の有無は顕微鏡及びマイクロスコープで観察して評価した。観察した結果、クラックが発生しなかった場合を「A」、小さいクラックの発生があった場合を「B」、クラックが鮮明に確認された場合を「C」として評価を行った。
[MIT試験]
MIT試験には、銅厚18μm、導体幅75μmの片面フレキシブル配線板を使用した。この基板に上記の各種めっき処理を行った後、基板の端子部分を通電させた。その後、回路部分に175回/分、折り曲げ角度135°の負荷を掛けて、回路が断線するまでの屈曲回数を測定した。最大400回まで折り曲げ試験を行い比較した。
以上、実施例1〜3及び比較例1〜4の評価結果をまとめて表1に示す。
Figure 0005098627

実施例1〜3については、各種評価基板の銅配線上に直接置換金めっき液で置換金めっきを行い、さらにその上に還元剤と錯化剤とを含む無電解金めっき液で無電解金めっきを行った。無電解金めっき皮膜の膜厚は3水準で、処理時間を変えることにより0.13μm、0.25μm、0.5μmとした。フレキシブル配線板の銅配線上に直接金めっき皮膜を施した場合、ファインパターン性は何れの条件でも良好であった。また、150℃、6時間の大気加熱後でもはんだ濡れ性が良好であった。
さらに、プリント基板やセラミックス基板でも重要な特性の一つである、はんだ接合性については、無電解Ni−Pめっき皮膜の合金層が存在しないため剥離強度及び剥離モードの双方とも良好であり、金めっき皮膜の膜厚による影響は見られなかった。
また、フレキシブル配線板の重要な特性である耐折性試験を行った。まず、巻き付け試験では、金めっき皮膜の膜厚の影響を受けることもなく、配線折れの発生が無く良好であった。さらにMIT試験を行ったが、これも巻き付け試験と同様に、400回折り曲げを行っても無電解金めっきされた銅配線は断線しなかった。
以上の結果からも推定されるように、配線基板の銅及び/又は銅合金系素材からなる導体上に置換金めっき液で置換金めっきを施し、さらにその上に還元剤と錯化剤とを含む無電解金めっき液で無電解金めっきを行うことにより、プリント基板、セラミックス基板等で問題になっているはんだ接合性、耐熱性及び耐リフロー性の問題が解決できることが分かった。また、フレキシブル基板においては耐折性が向上し、本明細書に示す多くの本質的問題を解決できることが分かった。
一方、比較例1〜3では、銅配線上の皮膜構成を無電解Ni−Pめっき/置換金めっき/還元型無電解金めっきとした。下地無電解Ni−Pめっきは膜厚の影響を確認するために、Ni膜厚を1.5μm、3.3μm、5.6μmの3水準とし、置換金めっきの厚みは0.05μm、還元型無電解金めっきの厚みは0.5mm一定として評価した。
フレキシブル基板でのファインパターン性は無電解Ni−Pめっきの膜厚に影響することなく良好であった。また、150℃、6時間大気加熱後のはんだ濡れ性は何れの水準でも良好であった。次に、プリント基板、セラミックス基板で重要な特性の一つである、はんだ接合性については、ボールシェアー剥離強度は1205〜1240gと良好であったが、剥離モードについては無電解Ni−Pめっき皮膜と置換金めっき皮膜との界面で剥離が生じ、無電解Ni−Pめっき皮膜が露出する皮膜界面剥離の問題が発生した。
さらに、フレキシブル基板で重要な特性である耐折性試験では大きな問題があることが分かった。すなわち、巻き付け試験では、無電解Ni−Pめっき膜厚が1.5μmでも若干のクラックが確認された。膜厚をさらに厚くした条件では大きなクラックが発生して配線が折れるという問題が発生した。これと同様に、MIT試験でも無電解Ni−Pめっき膜厚が厚くなるに従って、試験回数が少ない条件で配線回路が断線するという問題が発生した。
また、比較例4では、銅配線上の皮膜構成を置換金めっきのみとした。この場合、はんだ濡れ性、耐熱性及び耐リフロー性に劣るという問題が発生した。
以上の結果から明らかなように、配線基板の銅及び/又は銅合金系素材からなる導体上に置換金めっき液で置換金めっきを施し、さらにその上に還元剤と錯化剤とを含む無電解金めっき液で無電解金めっきを施す方法を適用することにより、プリント配線板、セラミックス基板で問題になっているはんだ接合性、耐熱性及び耐リフロー性の問題が解決できることが分かった。また、フレキシブル基板に必要とされる耐折性についても、上記方法を使用すれば金めっき皮膜の膜厚に大きく影響することなく優れた特性を得られることが分かった。
これに対して、無電解Ni−Pめっき/置換金めっき/無電解金めっきの3層構造のめっきでは、はんだ接合性における剥離モードでのNi界面剥離が発生した。また、無電解Ni−Pめっき皮膜は皮膜自体が硬く、脆いため、フレキシブル配線板に要求される耐折性が満足できない結果となった。
本発明の電子部品の一実施形態を示す模式断面図である。 本発明の電子部品の他の一実施形態を示す斜視図である。
符号の説明
1…基板、2…導体部、3…置換金めっき皮膜、4…無電解金めっき皮膜、5…回路パターン、6…半導体素子、7…端子、8…ワイヤボンド、10,20…電子部品。

Claims (5)

  1. 銅及び/又は銅合金系素材を含む導体部と、
    前記導体部上に直接形成された膜厚0.03〜0.05μmの置換金めっき皮膜と、
    前記置換金めっき皮膜上に形成された無電解金めっき皮膜と、
    を有する、フレキシブル配線板である電子部品。
  2. 銅及び/又は銅合金系素材を含む導体部上に、置換金めっき液を用いて膜厚0.03〜0.05μmの置換金めっき皮膜を直接形成する工程と、
    前記置換金めっき皮膜上に、還元剤と錯化剤とを含む無電解金めっき液を用いて無電解金めっき皮膜を形成する工程と、
    を有する、フレキシブル配線板である電子部品の製造方法。
  3. 前記無電解金めっき液のpHが5〜10である、請求項記載の電子部品の製造方法。
  4. 前記無電解金めっき液に含まれる前記錯化剤が、硫黄のオキソ酸イオンを含むものである、請求項2又は3記載の電子部品の製造方法。
  5. 前記無電解金めっき液が、シアン化合物を含まないものである、請求項2〜4のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
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