屋根瓦を葺き並べて形成される屋根にあって、屋根頂部の棟において屋根裏の換気を行なうことができるようにした換気棟がある。図8乃至図12は棟の両側に屋根瓦6が葺かれる一般的な両流れの屋根における換気棟の施工構造の一例を示すものであり、この換気棟の施工について説明する。
すなわち、屋根下地1は垂木の上に野地板21を張り渡して取り付けることによって形成されるものであり、図8(a)に示すように屋根頂部の棟に沿った長孔として野地板21に換気口11を設け、屋根裏の空間をこの換気口11で外部に連通させてある。そして屋根下地1の上に防水シート22を張り、図8(b)のように防水シート22の上に屋根瓦6が葺き並べてある。このとき、防水シート22には窓を開口して換気口11を露出させるようにしてある。さらにこの換気口11には捨て水切り16が取り付けられる。捨て水切り16は細長い開口部で上下に開口する筒部16aの長手辺下端に設置片16bを設けて形成されるものであり、設置片16bをシーリング材で水密的に防水シート22の上に密着させると共に釘材24で固定することによって、換気口11を囲むように捨て水切り16を取り付け、換気口11の周囲を封水した状態で換気口11を捨て水切り16の筒部16aを通して外部に開口するようにしてある。尚、この捨て水切り16を取り付ける作業が終わるまでは、最上段には屋根瓦6を葺かないようにするものである。
このように捨て水切り16を取り付けた後、図9のように屋根頂部の棟に沿った複数箇所に受け金具23を立設し、捨て水切り16の上側において、受け金具23に人工木材などで形成される長尺角材状の棟桟2を掛け渡して取り付ける。
次に、捨て水切り16を取り付けた箇所、つまり換気口11を形成した箇所に図10(a)のように換気役物14を取り付ける。換気役物14は図10(b)に示すように、断面形状が左右対称に形成されるものであり、左右両片にそれぞれ通気孔17が設けてある。そしてこの換気役物14を棟桟2の上に跨がらせるように配置し、釘材24を打ち付けることによって棟桟2に換気役物14を固定する。換気口11以外の箇所には、通気孔17を設けていない他は、断面形状・寸法を換気役物14と同じに形成された金属面戸5を用い、同様に棟桟2の上に跨がらせて配置し、釘材24を打ち付けることによって棟桟2に金属面戸5を取り付ける。
この後、換気役物14や金属面戸5の上に棟包4を取り付ける。棟包4は断面形状が左右対称形に形成されるものであり、換気役物14や金属面戸5の上から棟桟2に跨らせるように配置し、棟包4から釘材24を換気役物14や金属面戸5を通して棟桟2に打入することによって、図11のように棟包4を取り付けることができるものである。このとき、換気役物14の上に取り付けられる棟包4としては、両側下端に換気用切欠18を設けた棟包4aが、金属面戸5の上に取り付けられる棟包4としては、このような換気用切欠18を設けない棟包4bが用いられるものである。そしてさらに図12のように、棟のけらば側端部には、棟包4と同じ断面形状の棟巴10が取り付けられる。図12において25はけらば瓦である。
上記のように形成される換気棟にあって、屋根裏の空気は、屋根下地1に設けた換気口11から捨て水切り16の筒部16aを通して換気役物14の下側に流入し、換気役物14の換気孔17を通過して棟包4の下側に流入した後、棟包4aの換気用切欠18から排出される。また逆の流れで外気を屋根裏に流入させることもできるものであり、このように換気役物14と棟包4によって形成される通気経路を通して換気を行なうことができるものである。
上記のように、棟の両側に屋根瓦6が葺かれる一般的な両流れの屋根においては、換気部材13として使用される換気役物14や棟包4としては、棟の両側に跨るように左右対称形状に形成されたものが用いられる。
一方、図13は一方のみに傾斜する片流れ屋根における換気棟の構造を示すものであり、1は垂木20と野地板21から形成される屋根下地、11は野地板21に設けられた換気口、6は屋根下地1の上に葺かれた屋根瓦、30は棟側の端面を形成する破風板であり、片流れ屋根の頂部の棟において換気口11を覆う換気部材13が取り付けてある。この換気部材13にはがらり26が設けてあって、屋根裏の空気は換気口11から換気部材13のがらり26を通して排出されるようにしてあり、この換気口11とがらり26との間の通気経路を通して屋根裏の換気が行なわれるようにしてある(特許文献1参照)。
片流れ屋根ではこのように棟の片側のみに屋根瓦6が葺かれているので、換気部材13は左右の一方の側端部は屋根瓦6の上に重ねられるようにしてあるが、他方の側端部は片流れ屋根の棟側の端面に接して取り付けることができるように垂下した形状に形成してあり、換気部材13と棟側の端面との間に隙間ができないようにして、この部分での防水性を確保するようにしてある。このために、片流れ屋根においては、図13のように左右非対称な断面形状に形成された換気部材13が用いられる。
特開2001−303732号公報
上記のように、片流れ屋根の換気棟において使用される換気部材13は、棟の両側に屋根瓦6が葺かれる一般的な両流れの屋根の換気棟に使用される換気部材13とは異なる形状であることが必要である。例えば、両流れ屋根の換気棟に使用される図10のような左右対称形状の換気役物14や、図11のような左右対称形状の棟包4を、図13のような片流れ屋根の換気棟において用いると、換気役物14や棟包4の棟側の側端部と、片流れ屋根の棟側の端面との間に隙間が生じ、この部分から屋根下地1へと雨水が浸入するおそれがあり、防水性を保つことができなくなるものである。
このため、片流れ屋根を施工する場合に、一般的な両流れの屋根に使用される換気役物14や棟包4をそのまま用いることはできず、建築頻度が低い片流れ屋根用に特別に作製した換気役物14や棟包4を用いることが必要であって、コスト高の原因となるものであった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、一般的な両流れの屋根に使用される換気部材をそのまま用いることができる片流れ屋根の棟換気構造を提供することを目的とするものである。
本発明に係る片流れ屋根の棟換気構造は、片流れ屋根の屋根下地1に屋根裏と連通する換気口11を設け、片流れ屋根の棟頂部において屋根下地1の上に棟桟2を取り付け、棟桟2に水切り材3を取り付けると共に棟桟2の棟側の側面から片流れ屋根の棟側の端面にかけての間を水切り材3で覆い、内外に通じる通気経路を有し、断面形状が対称形状に形成される換気部材13を棟桟2に跨らせて取り付けると共に、換気部材13で換気口11と水切り材3を覆って成ることを特徴とするものである。
このように棟桟2の棟側の側面から片流れ屋根の棟側の端面にかけてを水切り材3で覆うことによって、片流れ屋根の屋根瓦6が存在しない棟側の端面での防水性を水切り材3で確保することができるものであり、片流れ屋根用に特別に作製した換気部材13を用いる必要なく、一般的な両流れの屋根に使用される対称形状の換気部材13をそのまま用いることができるものである。
また本発明は、換気部材13を、断面形状が対称形状に形成される換気役物14と、換気役物14の上に被せて取り付けられ、断面形状が対称形状に形成される棟包4とから構成して成ることを特徴とするものである。
このように換気部材13を換気役物14と棟包4の二重に形成することによって、換気口11への雨水の浸入を防止する防水性が高まるものである。
また本発明は、水切り材3に内外に開口する連通口7を形成して成ることを特徴とするものである。
このように水切り材3に設けた連通口7を通して空気が流通するものであり、水切り材3で換気性が低下することを防ぐことができるものである。
また本発明は、片流れ屋根の棟側の端面に化粧破風8を設けて成ることを特徴とするものであり、片流れ屋根の棟を化粧破風8で美麗に仕上げることができるものである。
また本発明は、片流れ屋根の端部において棟桟2にエンドキャップ9を取り付け、棟包4と同様な断面形状に形成され且つ一方の端部が閉じられた形状の棟巴10をエンドキャップ9の上から棟桟2に被せ、棟巴10の開口側の端部を棟包4の端部に接続すると共に棟巴10を棟桟2に取り付けて成ることを特徴とするものである。
このように棟巴10を取り付けることによって、エンドキャップ9と棟巴10で棟包4の端部の開口を閉じて棟の端部での防水性を確保することができるものであり、また棟巴10として一般的な両流れの屋根に使用される対称形状のものをそのまま用いることができるものである。
本発明によれば、棟桟2の棟側の側面から片流れ屋根の棟側の端面にかけて水切り材3で覆うことによって、片流れ屋根の屋根瓦6が存在しない棟側の端面での防水性を水切り材で確保することができ、片流れ屋根用に特別に作製した換気部材13を用いる必要なく、一般的な両流れの屋根に使用される対称形状の換気部材13をそのまま用いることができるものであり、コスト高となることなく片流れ屋根の換気棟を施工することができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図2は片流れ屋根の屋根下地1を示すものであり、屋根下地1は、傾斜して配置される垂木20の上に野地板21を張り渡して取り付けることによって形成してある。屋根下地1は一方から他方へと片流れに傾斜するものであり、棟となる頂部において垂木20の先端面に破風板30が取り付けてある。
このように片流れに傾斜する屋根下地1の上に屋根瓦6や棟包4を葺設する施工を行なうことによって、片流れ屋根を造作することができるものであり、この施工は既述の図8〜図12のような一般的な両流れの屋根の施工に準じて行なうことができる。
すなわち図2(a)に示すように、野地板21の上端に換気口11を切り欠いて設けることによって、屋根下地1の頂部に換気口11を形成し、まず野地板21の上面から破風板30の外面にかけて防水シート22を張る。防水シート22には切り欠いて窓22aが設けてあり、この窓22aを通して換気口11が露出するようにしてある。また破風板30の外面に防水シート22の上から化粧破風8を取り付け、片流れ屋根の棟の端面に化粧を施すようにしてある。
次に図2(b)に示すように、既述の図8(b)に示す捨て水切り16や、図9に示す受け金具23を屋根下地1の頂部の棟に取り付ける。捨て水切り16は既述のように筒部16aと設置片16bから形成されるものであり、既述と同様にして、捨て水切り16を換気口11の上に取り付けることによって、換気口11の周囲を封水した状態で換気口11を筒部16aの上端開口を通して外部に連通させるようにしてある。また受け金具23には既述と同様にして、長尺角材状の人工木材などで形成される棟桟2を掛け渡し、棟に沿って棟桟2を取り付ける。尚、棟桟2はこのように受け金具23によって取り付ける他に、長尺角材状の人工木材などで形成されるこの棟桟2を所定の高さになるように複数本積み重ねて、野地板21に直接取り付けるようにすることもできる。この場合、野地板21に接する下端の棟桟2は、換気口11の箇所を避けて、換気口11を塞がないように取り付けられるものである。
次に、水切り材3を棟桟2に取り付ける。水切り材3は図3に示すように、鉛直な固定片34の下端に斜めに傾斜片35を延設すると共に傾斜片35の先端に水切り片36を垂下して延設することによって形成されるものであり、長尺金属板で形成されるものである。ここで、水切り材3としては、換気口11を設けた部分において取り付けられる換気用の水切り材3aと、換気口11を設けた部分以外の部分において取り付けられる非換気用の水切り材3bとが用いられるものである。換気用の水切り材3aは、固定片34の上下幅寸法を非換気用の水切り材3bのものよりも長く形成し、水切り片36の上下幅寸法を非換気用の水切り材3bのものよりも短く形成してある。また換気用の水切り材3aの上端部には、固定片34の下端位置において連通口7が設けてある。この連通口7は横に長細いスロット状に形成されるものである。
そして水切り材3を棟桟2の棟側の側面(軒側と反対側の側面)に配置して、図2(b)のように水切り材3の固定片34を棟桟2のこの側面に当接して釘材24を打入することによって、棟桟2に水切り材3を取り付ける。このように棟桟2に取り付けた水切り材3の下端部の水切り片36は、片流れ屋根の棟側の端面を形成する化粧破風8の上部の外面に当接するようになっている。図2(b)の実施の形態では、水切り材3の水切り片36から釘材24を破風板30に打入して水切り片36も固定するようにしてあるが、水切り片36は特に固定する必要はない。このように水切り材3を取り付けることによって、棟桟2の棟側の側面の上端から片流れ屋根の棟側の端面にかけて水切り材3で覆うことができるものである。
ここで、上記のように水切り材3のうち、換気用の水切り材3aは換気口11を設けた部分において、非換気用の水切り材3bは換気口11を設けた部分以外の部分において、棟桟2に取り付けられるが、換気用の水切り材3aの固定片34の上下幅を長く形成してその下端に連通口7を設けることによって、図3に示すように、連通口7が棟桟2の下側に配置されるようにしてある。そして換気用の水切り材3aと非換気用の水切り材3bは端部同士を重ねて接続されるが、換気用の水切り材3aと非換気用の水切り材3bにおいて、傾斜片35の高さ位置が異なるので、図3(a)のように換気用の水切り材3aの傾斜片35の上面の全幅に防水シーラー56を設け、非換気用の水切り材3bの傾斜片35をこの防水シーラー56の上に重ねた状態で、換気用の水切り材3aと非換気用の水切り材3bの端部同士を重ねることによって、図3(b)のように隙間が生じることなく接続を行なうことができるようにしてある。
上記のようにして図2(b)、図3(b)のように棟桟2に水切り材3を取り付けた後、換気用の水切り材3aを取り付けた箇所、つまり換気口11を形成した箇所に換気役物14を取り付ける。換気役物14は図4に示すように、断面形状が左右対称に形成されるものであり、断面下向きコ字形の嵌合片42と、嵌合片42の両下端から斜め外下方へ延出される中段傾斜片43と、各中段傾斜片43の先端に延設されるL型端面の先端水切り片44とから形成されるものである。換気役物14において各中段傾斜片43には通気孔17が設けてある。そして、図5に示すように、水切り材3の上から嵌合片42を棟桟2の上端部に嵌め込むことによって、棟桟2に跨らせた状態で換気役物14を取り付けるようにしてある。尚、図4において、58は換気用の水切り材3aの傾斜片35に設けたシーリング材であり、換気役物14の下面に設けられている後述の邪魔板57の下面を密着させて防水性を確保するためのものである。
また非換気用の水切り材3bを取り付けた箇所、つまり換気口11を形成していない箇所には金属面戸5を取り付ける。図4に示すように、金属面戸5は中段傾斜片43に通気孔17を設けない他は、換気役物14とほぼ同形状・同寸法の嵌合片42、中段傾斜片43、先端水切り片44を備えて形成されるものである。そして換気役物14と同様にして、非換気用の水切り材3bの上から棟桟2に金属面戸5を取り付けることができる。
ここで、上記の換気役物14や金属面戸5は、左右の先端水切り片44のうち軒側の先端水切り片44を、図1に示すように防水シーラー45を介して最上段の屋根瓦6の上面に密着させるようにしてあり、棟桟2の軒側の側面と屋根瓦6の上面との間を換気役物14や金属面戸5の軒側の部分で覆って防水性を確保し、雨水が屋根下地1へと浸入することを防ぐようにしてある。また換気役物14や金属面戸5の軒と反対側の中段傾斜片43は、図5のように非換気用の水切り材3bの傾斜片35の上に載置されるようになっている。左右対称形に形成される換気役物14や金属面戸5を棟桟2に取り付けると、換気役物14や金属面戸5の棟側の側端部が棟より外方へ飛び出すことになるが、この飛び出す側の中段傾斜片43をこのように非換気用の水切り材3bの傾斜片35の上に載置させることによって、換気役物14や金属面戸5の棟から飛び出す側の端部を支持することができ、換気役物14や金属面戸5の取り付けにガタツキが生じることを防ぐことができるものである。尚、図1にみられるように、換気役物14の中段傾斜片43の下面側には連通孔57a付きの邪魔板57が設けてあり、空気が直進しないようにして、雨水が空気の流れとともに流入することを防ぐようにしているが、換気役物14はこの邪魔板57によって換気用の水切り材3aの傾斜片35の上に上記シーリング材58を介して載置されるようになっている。
上記のように換気役物14や金属面戸5を取り付けた後、片流れ屋根の上端部の棟頂部に棟包4を取り付ける。この棟包4としては、棟の両側に屋根瓦6が葺かれる一般的な両流れの屋根に使用される、下面が開口し断面形状が対称形に形成されるもの、例えば既述の図11に示すような下向き開口の断面略C字形に形成されるものを用いるものである。そしてこの棟包4を水切り材3及び換気役物14や金属面戸5の上から棟桟2の上に跨らせるように被せ、棟包4の中央部から棟桟2に釘材24を打入することによって、棟包4を棟桟2に固定するものである。
このように断面対称形状に形成される棟包4を棟桟2に跨らせて取り付けることによって、図1に示すように、棟包4の軒側の側端部は最上段の屋根瓦6の棟側端部の上に被せられるが、棟包4の軒側と反対側の側端部は片流れ屋根の棟よりも外方へ飛び出すことになり、棟包4のこの飛び出す側端部の下面と片流れ屋根の棟側の端面との間に隙間が生じることになる。しかし上記のように棟桟2の棟側の側面の上端から片流れ屋根の棟側の端面にかけての間を水切り材3で覆うようにしてあるので、棟包4の飛び出した側端部と片流れ屋根の棟側の端面の間の隙間から雨水が吹き込むなどしても、水切り材3で遮断して雨水が屋根下地1へと浸入することを防ぐことができ、防水性を確保することができるものである。このように棟包4が棟より外方に飛び出す部分での防水性を水切り材3で確保することによって、片流れ屋根においても、両流れの一般的な屋根に使用される対称形状の棟包4をそのまま用いることが可能になるものである。この棟包4としては、既述の図11と同様に、換気役物14の上に取り付けられる棟包4aとして両側下端に換気用切欠18を設けたものが用いられ、金属面戸5の上に取り付けられる棟包4bとしてこのような換気用切欠18を設けないものが用いられるものである。
また上記のように棟包4は、棟側の側端部は最上段の屋根瓦6の上に載置して支持されており、反対側の側端部は棟より外方に飛び出すが、図1に示すように、この飛び出した部分の下面が換気役物14や金属面戸5の中段傾斜片43の上に載置されるようにしてあり、棟包4の飛び出す側の端部も支持されるようにしてある。このように棟包4の左右の両側端部を支持することによって、ガタツキなく安定して棟包4を取り付けることができるものである。
上記のように形成される片流れ屋根の換気棟にあって、屋根裏の空気は、屋根下地1に設けた換気口11から捨て水切り16の筒部16aを通して換気役物14の下側に流入し、換気役物14の換気孔17を通して棟包4の下側に流入した後、棟包4の軒側の側端部においては換気用切欠18から排出され、棟包4の棟側の側端部においてはその開放されている下面から排出される。このとき、上記のように水切り材3には連通口7が形成してあるので、換気口11から捨て水切り16の筒部16aを通して流出した屋根裏の空気は、水切り材3の連通口7を通過して換気役物14の下側に流入するものであり、空気の流れが水切り材3で遮断されて換気性能が低下することを防ぐことができるものである。また逆の流れで外気を屋根裏に流入させることもできるものであり、このように換気役物14と棟包4によって形成される通気経路を通して換気を行なうことができるものである。
尚、上記の実施の形態では、棟包4と換気役物14とから通気経路を有する換気部材13を形成するようにした。しかし本発明において、換気部材13としてはこのような棟包4と換気役物14の二部材から形成されるものに限定されるものではなく、一部材構造で換気部材13を形成することもできるものである。
また、上記の各実施の形態のように棟包4を取り付ける施工を行なった後、棟のけらば側の端部において棟包4に接続して棟巴10を取り付けることによって、棟の端部の水仕舞いが行なわれるものであり、棟巴10の取り付け施工について説明する。
この棟巴10を取り付けにはエンドキャップ9が用いられる。図6は本発明の片流れ屋根用に形成されたエンドキャップ9を示すものであり、図6(c)のように裁断された金属板を、図6(c)に鎖線で示す線で山折りに、破線で示す線で谷折りに折曲することによって、図6(a)(b)のような形状にエンドキャップ9を形成することができるものである。すなわちエンドキャップ9は、鉛直な固定片47と、固定片47の下端に斜めに延出される傾斜片48と、傾斜片48の先端に垂下して延出される水切り片49とから形成される側板50と、側板50の水切り片49の一方の側端縁に直角に屈曲されて設けられるエンド板51とからなるものであり、エンド板51の下端には下水平片52が内側へ折曲して設けてある。エンド板51の横幅寸法は傾斜片48の横幅寸法の2倍強に形成してあって、エンド板51の上端縁の水切り片49側の半分弱の範囲は傾斜片48と同じ角度で傾斜するように切り落としてあり、傾斜片48から延設して折曲した接合片53をこの箇所においてエンド板51にリベット等で固定し、エンドキャップ9の上記の形状が保たれるようにしてある。ここで、側板50の固定片47、傾斜片48、水切り片49の断面形状・寸法は、既述の水切り材3の固定片34、傾斜片35、水切り片36の断面形状・寸法とほぼ一致するように形成されているものである。
また棟巴10としては、既述の図12に示すような、一般的な両流れの屋根に使用される断面形状が対称形に形成されるものを用いることができる。すなわち、上記の棟包4と同様な断面形状に形成される本体部10aと、本体部10aの一方の端部の開口を閉じるけらば片10bとで形成されるものであり、けらば片10bは下部が本体部10aよりも下方へ突出した形状に形成してある。
そして、棟のけらば側の端部において、図7(a)のように、エンドキャップ9を棟桟2に取り付ける。エンドキャップ9の取り付けは、側板50を棟桟2の棟側に配置して、固定片47を棟桟2の側面に当接させると共に、釘材24を固定片47から棟包支持桟2に打入することによって行なうものであり、このとき水切り片49が化粧破風8の上部の外面に当接するようにしてあり、エンド板51で棟のけらば側端面が覆われるものである。このようにエンドキャップ9を棟桟2に取り付けた後、棟巴10の本体部10aをエンドキャップ9の上から棟桟2の上に跨らせるように被せて載置し、本体部10aから棟桟2に釘材24をして固定することによって、棟巴10を取り付けるものである。