JP4246885B2 - 換気棟 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、家屋における小屋裏空間の自然換気を行うべく、屋根の棟部に取り付けられる、いわゆる換気棟の構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
棟木に所定間隔で配設された垂木に対して屋根板が葺かれてなる住宅家屋等において、屋根の棟部に穿設された開口部を覆うように装着され、雨水の浸入を防止しつつ小屋裏空間の自然換気を図る略山形状をした換気棟については、和洋瓦に代わって軽量な平板状スレート材が屋根材の主流となりつつある状況を背景として、従来より様々な構造のものが提案されている。例えば、特開昭62-197556号や実開昭62-71210号、実開昭62-137946号などでは、下換気孔を穿孔した下水切板で棟部開口部を被覆し、さらにスペーサを介在させながら上換気孔を穿孔した上水切板で被覆して、棟部開口部から下換気孔を経て上換気孔に至る換気流路を形成した換気棟が開示されている。
【0003】
また、特開平9-78782号では、前記下水切板に代えて棟部開口部を跨ぐように配設された中空体上に、山形に形成された棟板を被覆した換気棟が提案されている。この明細書においては、中空体における棟部中央側端縁を庇側に折り返して水切りとし、該水切りを棟板上に穿設されたルーバー状貫通孔の下方に隙間をあけて配置することによって、ルーバー状貫通孔より吹き込んだ雨水を庇側排水口へと導く換気棟が、実施形態2として開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記いずれの換気棟においても、強風等により上水切板ないし棟板の端縁から吹き込む雨水への対策は十分とは言えなかった。また、後者の換気棟では、ルーバー状貫通孔の下方に近接して水切りを配設したことで、換気量が犠牲にされてしまう欠点があった。
【0005】
本発明では、前記従来の換気棟に改良を加えて、強風による雨水の吹き込み又は逆流を防止しながらも、十分な換気量を確保しうる換気棟を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、略山形状で左右傾斜面谷側方向に平行に開口した複数本のルーバー状換気口を長手方向に所定間隔で備えた棟板部材と、該棟板部材の左右傾斜面裏側に対して屋根棟部開口部を跨ぐ略対称位置にスペーサを介して固着される2つの水切り部材とから構成されて、屋根棟部開口部を被覆しつつ小屋裏空間の自然換気を可能とする従来の換気棟において、前記水切り部材を、屋根板に沿った傾斜面をなして裏面に防水パッキンを備えた底板と、該底板の上端縁より立設された前壁と、該前壁上端から前記棟板部材裏面に沿って谷側方向に折り返された上板と、該上板よりさらに下降傾斜した水切りと、該水切りの下端縁に対して谷側方向に隙間を確保しつつ底板より立設された止水ガードとから構成し、前記前壁と前記上板の隅部において長手方向に複数個の通気孔を穿設する一方、前記止水ガードの基部に排水導孔を穿設して、該排水導孔の穿設位置を、前記棟板部材におけるルーバー状換気口の穿設位置と一致しないようにすることで、前記所期の課題解決を図った。
【0007】
すなわち、雨水に対する防水対策が施されているはずの換気棟より小屋裏内へ漏水してしまうのは、強風や大雨によって、棟板部材の換気口などから雨水が逆流してしまうからであるが、本発明では、従来の換気棟では見られなかった止水ガードを水切り部材内に追加配置し、さらに該止水ガード基部における排水導孔を、棟板部材におけるルーバー状換気口の穿設位置とずらして換気口と換気口の間に設けることによって、棟板部材の換気口や、ハゼ部と称される棟板部材の谷側下端部と水切り部材谷側下端部との隙間から雨水が逆流することを防止したのである。
【0008】
また、このように棟板部材の換気口やハゼ部から雨水が逆流することを防止できた結果、従来品に比して多くの換気口を穿設することが可能となったので、水切り部前壁と上板の隅部における通気孔を大きく穿設することで、従来品以上の換気量を確保できるようになったのである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明に係る換気棟について詳細に説明する。図1は本発明に係る換気棟の一例の施工状態を示す断面図、図2は同換気棟における棟板部材の斜視図、図3は同換気棟における2つの水切り部材の斜視図である。
【0010】
一般の住宅家屋では、長尺の棟木Mに対して軸直方向に所定間隔で垂木Tが配設され、該垂木T上に野地板N、下葺材F、平板瓦Hの順に重ねて敷設されることにより屋根が形成されている。棟木M上方の棟頂部には長手方向に屋根を跨ぐように略山形形状の棟板が複数枚連続して被設される。一方、棟木Mの長手方向には所定間隔で開口部Oが配設されており、該開口部O上に位置する棟板に代えて本発明に係る換気棟Kが被設される。
【0011】
開口部Oは、一般に長さ850mm程度で幅60mm程度、換気棟Kは、一般に長さ1200mm程度で幅230mm程度である。開口部Oの左右側壁面には、必要に応じて一対の捨水切りSが対向して配設される。この捨水切りSは、前記野地板N、下葺材Fおよび平板瓦Hの上端面を覆いながらその上端部が前記平板瓦Hの上端縁より若干突出する位置に配設されるか、図1のように、野地板N、下葺材Fおよび平板瓦Hの上端面から若干隔離して配設されるのが一般的である。
【0012】
本発明に係る換気棟Kは、1枚の鋼板を略山形状に屈曲形成した棟板部材1と、該棟板部材1の裏側に固着された2つの水切り部材2,2とから概略構成される。
【0013】
棟板部材1は、ほぼ屋根勾配に沿って左右に傾斜した棟板本体11a,11bと、該棟板本体11a,11b端縁から各々下方に略鉛直に屈曲形成された側壁部12a,12b、および該側壁部12a,12bの端縁から各々左右に突出しつつ先端縁が折り返されたフランジ部13a,13bとからなり、その棟板本体11a,11bにおいて、谷側方向に、平行に並んだ3本の透孔14a〜14cからなるルーバー状換気口14が穿設されている。本例の棟板部材1では、図2において手前側から順に、棟板部材1の長手方向に所定間隔をおいて片側5カ所の換気口14A〜14Eが配設され、棟板部材1全体として計10カ所の換気口を備えている。
【0014】
棟板部材1における換気口14Aより中央寄りに配設された小円形状の透孔や、換気口14Eより中央寄りに配された透孔は、換気棟Kを屋根に固定するための固定釘3挿入用の取付孔15a〜15dであり、本例では片側2カ所、計4カ所に設けられている。各取付孔15a〜15dは、バーリング加工によって棟板本体11a,11b表側に環状に突出するよう形成されており、後述するスペーサ4の上端縁が取付孔15の内周面に密接するよう嵌着されることによって取付孔15からの漏水防止が図られている。なお、片側2カ所の取付孔15aと取付孔15bの間隔、又は取付孔15cと取付孔15dの間隔は、換気棟Kの確実な固定を図るべく、屋根の垂木Tを配設する間隔に合致するように設定するのが望ましい。
【0015】
棟板部材1の左右傾斜面裏側には、2つの水切り部材2,2が左右対称に固着される。図1および図4に示されるように、各水切り部材2は、後述の止水ガード5を除いて、平板瓦Hなど家屋の屋根面に沿った傾斜をなした底板21と、該底板の上端縁より立設された前壁22と、該前壁22上端から棟板部材1の裏面に沿って谷側方向に折り返された上板23と、該上板23よりさらに下降傾斜した水切り部24とが、1枚の鋼板から屈曲形成されてなるものである。
【0016】
水切り部材2の内部には、底板21より止水ガード5が立設される。図3および図4に示されるように、止水ガード5は、1枚の帯状鋼板を略L字形に屈曲形成したものであって、水切り部材2上端縁を下方に屈曲させてなる水切り部24の下端縁に対して、谷側方向に隙間を確保しつつ、リベット接合等によって底板21より立設される。
【0017】
前記止水ガード5の上端は、水切り部材2水切り部24の下端縁より上方に突出するように設定するのが望ましい。また、止水ガード5の立設位置は、水切り部材2上に被着された棟板部材1において最も山側(棟芯側)に位置する換気口14aの下端縁よりも山側に位置するように設定するのが望ましい。このように止水ガード5の立設位置を設定することで、ルーバー状換気口14から水切り部材2内に流れ込む雨水の逆流防止が図られる。
【0018】
図3に示されるように、水切り部材2における前壁22と上板23の隅部には、長手方向に複数個の通気孔26が穿設されている。一方、止水ガード5の基部には、計8個の排水導孔51A〜51Hが穿設されている。そして、これら排水導孔51A〜51Hの穿設位置は、前述の棟板部材1における換気口14A〜14Eの穿設位置と一致しないように設定される。すなわち、止水ガード5における排水導孔51は、万一、雨水が止水ガード5を越えて水切り部材2の前壁22近くに逆流した場合の排水手段として必要不可欠である反面、排水導孔51の穿設位置によっては止水ガード5を立設させた意義を損なってしまうので、排水導孔51A〜51Hを換気口14A〜14Eと互い違いに穿設することにしたのである。
【0019】
なお、本例の換気棟では、スペーサ4の配設位置とも一致しないように排水導孔51B,51Cや排水導孔51F,51Gの穿設位置を設定することで、これら排水導孔51B,51Cや排水導孔51F,51Gから排水される雨水がスペーサ4の基部より屋根側に染み込んだり、スペーサ4基部が嵌着された水切り部材2の取付孔(図示されていない)が雨水によって腐食することを防止している。
【0020】
2つの水切り部材2,2は、棟板部材1における左右傾斜面、つまり棟板本体11a,11bの裏側に対して、屋根棟部開口部Oを跨ぐ略対称位置に,スペーサ4を介して固着される。スペーサ4は、ゴム製で、中心に固定釘3挿入用の透孔を備えた略円筒形状をしており、その基部が水切り部材2における底板21と嵌合した状態にあり、一回り小径となったその上端部が棟板部材1の棟板本体11a,11bにおける透孔15内に嵌挿される。棟板部材1と2つの水切り部材2,2は、スポット溶接やリベット接合などにより固着される。
【0021】
図5は、図1の例の換気棟の端部付近の拡大底面図である。図示されるように、棟板部材1の方が2つの水切り部材2,2より長いのは、隣接する棟板との重ね代を確保しているためである。
【0022】
棟板部材1の中央部(2つの水切り部材2,2の間)にはペフと称される結露防止シート6が貼着される。とくに冬季の夜間に外気が冷却されると、棟板部材1の表裏で温度差が大きくなり、棟板部材1の裏面に結露が生じるので、屋根棟部開口部より小屋裏空間へと結露した水蒸気が落下することを防止する必要があるからである。
【0023】
また、各水切り部材2,2における底板21の裏面には、防水パッキン7が貼着される。この防水パッキン7は、各水切り部材2と平板瓦Hとの空隙をなくし、水シール性を高めて、強風等により平板瓦表面を逆流してくる雨水が前記空隙より流入してくることを防止し、ひいては屋根棟部開口部より小屋裏空間へ漏水することを防止している。この防水パッキン7として使用する素材としては、日東電工(株)製エプトシーラーNo. 686P(商品名)などが挙げられる。
【0024】
かくして換気棟が設置されると、日照により小屋裏空間内において暖められた空気は、屋根棟部開口部Oより上昇し、水切り部材2前壁22上端部に穿設された通気孔26より、水切り部24と止水ガード5との間の空隙を経て、棟板本体11a,11bのルーバー状換気口14より放出される。一方、ルーバー状換気口14から水切り部材2,2内に流入してきた雨水は、止水ガード5や水切り部24の存在によって逆流が防止される一方、棟板部材1におけるフランジ部13a,13bと、水切り部材2,2におけるフランジ25の間の空隙8から排出される。この空隙8は、換気棟の長尺方向に連続して開放しているので、雨水のスムーズな排出が確保されることになる。
【0025】
【発明の効果】
本発明に係る換気棟では、水切り部材内に止水ガードを新設する一方、換気用開口部の位置を調整したので、棟板部材におけるルーバー状換気口や、棟板部材フランジ部と水切り部材フランジ部の間における長尺スリット状開口からの、強風による雨水の吹き込み又は逆流の防止が図られる。
【0026】
また、換気用開口部の位置調整を図ったことで、有効換気面積を最大限まで広げることができ、従来の換気棟に比して十分な換気量を確保しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る換気棟の一例の施工状態を示す断面図である。
【図2】同換気棟における棟板部材の斜視図である。
【図3】同換気棟における2つの水切り部材の斜視図である。
【図4】図1における水切り部材付近の部分拡大図である。
【図5】図1の例の換気棟の端部付近の拡大底面図である。
【符号の説明】
1 棟板部材
2 水切り部材
3 固定釘
4 スペーサ
5 止水ガード
6 結露防止シート
7 防水パッキン
14 換気口
15 取付孔
21 底板
22 前壁
23 上板
24 水切り部
Claims (1)
- 略山形状で左右傾斜面谷側方向に平行に開口した複数本のルーバー状換気口を長手方向に所定間隔で備えた棟板部材と、該棟板部材の左右傾斜面裏側に対して屋根棟部開口部を跨ぐ略対称位置にスペーサを介して固着される2つの水切り部材とから構成されて、屋根棟部開口部を被覆しつつ小屋裏空間の自然換気を可能とする換気棟において、
前記水切り部材が、屋根板に沿った傾斜面をなして裏面に防水パッキンを備えた底板と、該底板の上端縁より立設された前壁と、該前壁上端から前記棟板部材裏面に沿って谷側方向に折り返された上板と、該上板よりさらに下降傾斜した水切り部と、該水切り部の下端縁に対して谷側方向に隙間を確保しつつ底板より立設された止水ガードとからなり、前記前壁と前記上板の隅部において長手方向に複数個の通気孔を穿設する一方、前記止水ガードの基部に排水導孔を穿設して、
該排水導孔の穿設位置を、前記棟板部材におけるルーバー状換気口の穿設位置と一致しないようにしたことを特徴とする換気棟。
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