本実施形態に係る屋根の換気構造及び換気部材100について説明する。
本実施形態に係る屋根の換気構造は、片流れ屋根の棟部分における換気構造である。
換気構造は、図1に示すように、外壁材1、屋根下地2、屋根下地2上に設置されている屋根材3、屋根下地2を貫通する換気口4、屋根下地2に固定されている棟桟受け具50、棟桟受け具50に支持されている棟桟5、棟桟5に固定された換気役物7、及び換気役物7を覆う換気棟包8を具備する。
更に、換気構造において、換気役物7よりも屋内側に換気口4に通じる換気空間9が形成され、換気棟包8と換気役物7との間には通気空間10が形成されている。
換気棟包8の屋根側端部と屋根材3との間には、屋外と通気空間10とを通じさせる屋根側換気口11が形成されている。換気棟包8の外壁側端部と外壁材1との間には、屋外と通気空間10とを通じさせる壁側換気口12が形成されている。
換気役物7は、固定部71と、屋根側傾斜片72と、垂直片73と、屋根側開口部74と、壁側開口部75と、第一邪魔板76と、第二邪魔板77と、第三邪魔板78と、第四邪魔板79とを備える。
固定部71は棟桟5に固定される。屋根側傾斜片72は、固定部71から屋根下地2に沿って突出している。垂直片73は、固定部71から外壁材1に沿って突出している。屋根側開口部74は、屋根側傾斜片72を貫通して換気空間9と通気空間10とを通じさせる。壁側開口部75は、垂直片73を貫通して換気空間9と通気空間10とを通じさせる。第一邪魔板76は、屋根側傾斜片72の屋根側開口部74よりも軒側の位置から換気空間9へ突出ている。第二邪魔板77は、垂直片73の壁側開口部75より下方位置から換気空間9へ突出し、壁側開口部75と対向している。第三邪魔板78は、屋根側傾斜片72の上方で固定部71から屋根側傾斜片72に沿って通気空間10へ突出し、屋根側開口部74と対向している。第四邪魔板79は、屋根側傾斜片72の屋根側開口部74よりも軒側の位置から通気空間10へ突出している。第四邪魔板79の先端と第三邪魔板78の先端との間には間隙710が存在する。
また、本実施形態に係る換気部材100は、上記換気構造に適用される。換気部材100は、換気構造における換気役物7と、換気構造における換気棟包8とを具備する。
すなわち、換気部材100は、片流れ屋根の棟部分に設置される換気役物7及び換気役物7を覆う換気棟包8を具備する。
換気部材100において、換気棟包8と換気役物7との間には通気空間10が形成される。
換気部材100における換気役物7は、固定部71と、屋根側傾斜片72と、垂直片73と、屋根側開口部74と、壁側開口部75と、第一邪魔板76と、第二邪魔板77と、第三邪魔板78と、第四邪魔板79とを備える。
屋根側傾斜片72は固定部71から斜め下方に突出している。垂直片73は、固定部71から下方に突出している。尚、「下方」とは、換気部材100を片流れ屋根の棟部分に設置した場合における下方を意味する。下方を第一の方向と言い換えて、屋根側傾斜片72は固定部71から第一の方向に対して斜めに突出し、垂直片73は固定部71から第一の方向に突出している、ということもできる。屋根側開口部74は、屋根側傾斜片72を貫通して通気空間10に通じている。壁側開口部75は、垂直片73を貫通して通気空間10に通じている。第一邪魔板76は、屋根側傾斜片72の屋根側開口部74よりも先端側の位置から通気空間10とは反対側へ突出している。第二邪魔板77は、垂直片73の壁側開口部75より先端側の位置から通気空間10とは反対側へ突出し、壁側開口部75と対向している。第三邪魔板78は、固定部71から屋根側傾斜片72に沿って通気空間10へ突出し、屋根側開口部74と対向している。第四邪魔板79は、屋根側傾斜片72の屋根側開口部74よりも先端側の位置から通気空間10へ突出している。第四邪魔板79の先端と第三邪魔板78の先端との間には間隙710が存在する。
本実施形態に係る屋根の換気構造及び換気部材100について、更に詳しく説明する。本実施形態では、垂木21及び垂木21に支持されている野地板22が、屋根下地2を構成する。垂木21は屋根の棟部分において棟木25に支持されている。野地板22は一方向だけに勾配を有する。本実施形態では、屋根下地2に形成されている換気口4は、野地板22を貫通している。
本実施形態では、外壁材1は、下地材23と、下地材23の外面に設置された外層材24とを備える。外壁材1の上端は、垂木21の棟側端部上に配置されている。外壁材1は、更に破風板及び化粧破風を備えてもよい。破風板は例えば外層材24の上端部の外面上に設置され、化粧は不は破風板の外面上に設置される。
本実施形態では、野地板22上に防水シートが設置されていてもよい。この場合、防水シートには、換気口4に合致する開口が形成されている。尚、以降の説明における野地板22には、防水シートが設置されている野地板22と、防水シートが設置されていない野地板22との、両方が含まれる。
野地板22上には、捨て水切り27が取り付けられている。捨て水切りの詳細は図8A、図8B及び図8Cに示す。捨て水切り27は、筒部271と設置片272とを備える。筒部271は上下に開口する筒状体であり、設置片272は筒部271の下端の全周から外方へ突出している。捨て水切り27は例えば金属製であるが、これに限られない。捨て水切り27の設置片272は野地板22上に配置され、筒部271は換気口4に合致する位置に配置される。設置片272は、例えば釘、リベットなどの固定具6で、野地板22上に固定される(図9参照)。これにより、捨て水切り27が野地板22上に固定されている。捨て水切り27の周りには、全周に亘って防水テープ273が貼り付けられている(図10A及び図10B参照)。防水テープ273は、例えばブチルゴム製の片面粘着テープである。防水テープ273は設置片272上から野地板22上に跨がって設けられている。この防水テープ273が、設置片272と野地板22との間から屋内への水の浸入、並びに固定具6の打ち込み位置から屋内への水の浸入を、抑制することができる。
このように捨て水切り27が設置されると、野地板22上の水が換気口4を通じて屋内に浸入するためには、水が筒部271を乗り越えなければならなくなる。このため、捨て水切り27は水が野地板22上から換気口4を通じて屋内へ浸入することを、阻害することができる。
野地板22上には、複数の屋根材3が設置されている。屋根材3は、例えば立体的形状を有する繊維補強軽量セメント瓦、又は平面視矩形状の化粧スレート瓦であるが、これらに限られない。屋根材3の棟側端部は、換気口4よりも軒側の位置に配置され、この屋根材3の棟側端部よりも棟側では、野地板22の一部が露出している。
本実施形態では、野地板22上の、換気口4よりも棟側の位置に、棟桟受け具50が固定されている。棟桟受け具50は、上方と軒棟方向と直交する水平方向とに開口する被冠部51と、被冠部51から下方に突出する脚部52と、脚部52の下端から外方に突出する設置片53とを備える。棟桟受け具50の設置片53は野地板22上に配置される。設置片53は、例えば釘などの固定具6で、野地板22上に固定される(図9参照)。これにより、棟桟受け具50が野地板22上に固定されている。
野地板22上には、複数の棟桟受け具50が、軒棟方向と直交する水平方向に沿って、間隔をあけて並ぶように設けられていてもよい。
本実施形態では、棟桟5は、軒棟方向と直交する水平方向に沿って長い角材である。棟桟5は例えば木製であるが、これに限られない。棟桟5は、棟桟受け具50の被冠部51に嵌合している。これにより、棟桟5が棟桟受け具50で支持されている。本実施形態では、ビス、リベットなどの固定具6で被冠部51に棟桟5を固定している(図11参照)。このため棟桟5が棟桟受け具50に強固に固定される。
棟桟5に換気役物7が固定されている。換気役物7の上方に換気棟包8が配置され、換気棟包8が換気役物7を覆っている。換気棟包8と換気役物7との間には通気空間10が形成され、換気役物7よりも屋内側に換気空間9が形成されている。換気空間9は、換気口4に通じている。
換気役物7の詳細は、図2A、2B、3,4、5及び6に示す。換気役物7は、例えば金属製である。換気役物7は、固定部71、固定部71から屋根下地2に沿って突出する屋根側傾斜片72、及び固定部71から外壁材1に沿って突出する垂直片73を備える。
本実施形態では、換気役物7は本体部材70、第一邪魔板部材701、第二邪魔板部材702、第三邪魔板部材703及び第四邪魔板部材704を備え、これらのうち本体部材70が、固定部71、屋根側傾斜片72、及び垂直片73を備える。
固定部71は、棟桟5の上部に嵌合する嵌合部711と、嵌合物の棟側端部から斜め下方に突出する傾斜部712とを備える。嵌合部711は、平板部713と、平板部713の棟側端部から下方に突出する棟側垂下部714と、平板部713の軒側端部から下方に突出する軒側垂下部715とを備える。棟桟5の上部と嵌合部711とが嵌合すると、棟桟5の上部は、平板部713、棟側垂下部714及び軒側垂下部715に囲まれた空間に配置される。
屋根側傾斜片72は、固定部71の軒側垂下部715の先端から固定部71に対して斜めに突出している。本実施形態では、屋根側傾斜片72は屋根下地2と略平行である。屋根側傾斜片72の先端は、屋根材3の上面の上方に配置されている。屋根側傾斜片72の先端部の下面と屋根材3の上面との間には防水シール材721が介在しており、これにより屋外から屋根側傾斜片72と屋根材3との間への水の浸入が抑制される。防水シール材721は、例えばEPDMである。
垂直片73は、固定部71における傾斜部712の先端から固定部71に対して垂直に突出している。垂直片73は下方に向けて突出している。垂直片73の先端部は化粧破風24の外面と対向するように配置される。垂直片73は化粧破風24と重なっていてもよい。本実施形態では、外壁材1の化粧破風24と垂直片73との間に防水シール材731を介在させることで、外壁材1と垂直片73との間の防水性を向上している。
換気役物7は、屋根側開口部74及び壁側開口部75も備える。
屋根側開口部74は、屋根側傾斜片72を貫通して換気空間9と通気空間10とを通じさせる。本実施形態では、屋根側開口部74は、屋根側傾斜片72における固定部71の近傍に形成されている。また、本実施形態では、複数の屋根側開口部74が、軒棟方向と直交する水平方向に沿って並んでいる。また、本実施形態では、屋根側開口部74は、屋根下地2における換気口4の直上に位置している。
壁側開口部75は、垂直片73を貫通して換気空間9と通気空間10とを通じさせている。本実施形態では、壁側開口部75は、垂直片73における固定部71の近傍に形成されている。また、本実施形態では、複数の壁側開口部75が、軒棟方向と直交する水平方向に沿って並んでいる。
換気役物7は、第一邪魔板76、第二邪魔板77、第三邪魔板78及び第四邪魔板79を備える。本実施形態では、第一邪魔板部材701、第二邪魔板部材702、第三邪魔板部材703及び第四邪魔板部材704が、それぞれ第一邪魔板76、第二邪魔板77、第三邪魔板78及び第四邪魔板79を備える。
第一邪魔板部材701は、第一邪魔板76と固定片705とを備える。固定片705は、屋根側開口部74よりも軒側の位置で屋根側傾斜片72の換気空間9側の面に重ねられ、ビス、リベットなどの固定具6で屋根側傾斜片72に固定されている。第一邪魔板76は、固定片の棟側端部から換気空間9へ向けて突出し、第一邪魔板76と固定片705とがL字状をなしている。これにより、本体部材70に第一邪魔板部材701が取り付けられ、第一邪魔板76が屋根側傾斜片72の屋根側開口部74よりも軒側(すなわち屋根側傾斜片72の先端側)の位置から換気空間9へ突出している。第一邪魔板76の先端からは、下方へ向けて水切り片706が突出している。水切り片706の下端は、捨て水切り27の筒部271の上部開口の直上よりも軒側の位置にある。
第二邪魔板部材702は、第二邪魔板77と固定片707とを備える。固定片707は、壁側開口部75よりも下方の位置で垂直片73の換気空間9側の面に重ねられ、ビス、リベットなどの固定具6で垂直片73に固定されている。第二邪魔板77は、壁側開口部75より下方位置(すなわち垂直片73の先端側の位置)から換気空間9へ突出し、壁側開口部75と対向している。本実施形態では第二邪魔板77は、壁側開口部75より下方位置から換気空間9へ突出する突出片771と、突出片771の先端から上方に突出する遮蔽片772とを備えることで、断面L状の形状を有する。遮蔽片772は壁側開口部75と対向している。第二邪魔板部材702の軒棟方向と直交する水平方向の端部には、第二邪魔板77と垂直片73とで挟まれた空間を閉塞する閉塞片717が設けられている(図4参照)。閉塞片717は、例えば第二邪魔板部材702の端部を折り曲げることで形成される。
第三邪魔板部材703は、第三邪魔板78と固定片708とを備える。固定片708は、固定部71における平板部713の上に重ねられ、ビス、リベットなどの固定具6で固定部71に固定されている。第三邪魔板78は、固定片708の軒側端部から軒側に向けて、屋根側傾斜片72に沿って突出している。第三邪魔板78の先端は、屋根側開口部74と対向する位置よりも軒側に位置している。これにより、第三邪魔板78が屋根側傾斜片72の上方で固定部71から屋根側傾斜片72に沿って通気空間10へ突出し、屋根側開口部74と対向している。第三邪魔板78の先端部には、屋根下地2へ向けて突出する屈曲片781が形成されている。このため、屈曲片781は、第三邪魔板78に付着した雨水又は結露水を屋根側開口部74よりも軒側の位置に導くことができる。
第四邪魔板部材704は、第四邪魔板79と固定片709とを備える。固定片709は、屋根側傾斜片72の通気空間10側の面上に、屋根側開口部74よりも軒側の位置で重ねられ、ビス、リベットなどの固定具6で屋根側傾斜片72に固定されている。第四邪魔板79は、固定片709の棟側端部から通気空間10に向けて突出している。第四邪魔板79の先端は、第三邪魔板78の先端よりも軒側に位置し、第四邪魔板79の先端と第三邪魔板78の先端との間には間隙710が存在する。これにより、第四邪魔板79は、屋根側傾斜片72の屋根側開口部74よりも軒側の位置から通気空間10へ突出し、第四邪魔板79の先端と第三邪魔板78の先端との間に間隙710が存在する。第四邪魔板79の上端部には、屋根下地2とほぼ平行に軒側に向けて突出する水返し片791が形成されている。このため、水返し片791は、雨水が第四邪魔板79を超えて屋根側開口部74に浸入することを阻害することができる。
本実施形態では、屋根側傾斜片72の換気空間9を向く面における屋根側開口部74と第一邪魔板76との間の領域上、並びに第一邪魔板76における棟側を向く面上に、防露材761が設けられている(特に図5参照)。このため、第一邪魔板部材701には結露が生じにくくなり、結露により生じた水滴が換気口4へ落下して屋内に浸入することが抑制される。防露材761は、例えばポリエチレンフォームである。
また、本実施形態では、換気役物7の軒棟方向と直交する水平方向の両端部の各々における、固定部71の換気空間9側の面及び屋根側傾斜片72の換気空間9側の面に、防水シール材722が設けられている(特に図6参照)。
本実施形態では、換気棟包8は、屋根に沿って配置される屋根側部81と、外壁に沿って配置される外壁側部82とを備える。換気棟包8の詳細を、図7A〜7Kに示す。換気棟包8は、例えばセメント成形品製又は無機窯業材料製であるが、これらに限られない。
屋根側部81は、換気役物7の固定部71及び屋根側傾斜片72に沿って配置されることで、固定部71及び屋根側傾斜片72を覆っている。屋根側部81の先端には、切り欠き状の凹所83が形成されている。凹所83は、屋根側部81の先端側並びに軒棟方向に開口している。凹所83と屋根材3との間に、屋外と通気空間10とを通じさせる屋根側換気口11が形成されている。尚、換気棟包8に凹所83が形成されずに、屋根側部81の先端と屋根材3との間の隙間に屋根側換気口11が形成されてもよい。また、屋根側部81は、上傾斜片811、中傾斜片812及び下傾斜片813を備える。上傾斜片811、中傾斜片812及び下傾斜片813は、棟側から軒側に向けて順に並んでいる。上傾斜片811、中傾斜片812及び下傾斜片813はいずれも、棟包8が屋根の棟部分に設置されている状態で、水平に対して軒側に向けて下方に傾斜しており、その傾斜角度は上傾斜片811、中傾斜片812、下傾斜片813の順に大きくなっている。これにより、上傾斜片811に雨水が滞留することなく、屋根材3上へスムーズに流れるものである。
外壁側部82は換気役物7の垂直片73に沿って配置されることで、垂直片73を覆っている。外壁側部82の垂直片73と対向する面からは、突起84が垂直片73に向けて突出している。突起84は、垂直片73に接触することで、突起84以外の位置で垂直片73と外壁側部82とが接触することを阻害している。外壁側部82の先端と外壁材1との間には、屋外と通気空間10とを通じさせる壁側換気口12が形成されている。
本実施形態では、屋根側傾斜片72の上方では、屋根側部81の傾きが屋根側傾斜片72の傾きよりも大きい。これにより、通気空間10における屋根側換気口11と第四邪魔板79との間で、換気役物7と換気棟包8との間の間隔が、屋根側換気口11から第四邪魔板79に向かって大きくなっている。
また、第三邪魔板78の上方では、屋根側部81の傾きが第三邪魔板78の傾きとほぼ同じであり、固定部71の上方では固定部71がほぼ水平であるのに対して屋根側部81は棟側に向けて上り傾斜している。このため、換気役物7と換気棟包8との間の間隔は、間隙710から固定部71の上方の間の部分において、徐々に大きくなっている。傾斜部712の上方では換気役物7と換気棟包8との間の間隔は更に大きくなる。また、外壁側部82と垂直片73との間の間隔は、傾斜部712の上方における換気役物7と換気棟包8との間の間隔よりも小さい。これにより、通気空間10における間隙710と壁側開口部75との間で、換気役物7と換気棟包8との間の間隔が、間隙710から壁側開口部75に向かって、大きくなってから小さくなっている。
換気棟包8は、その軒棟方向と直交する水平方向の一端に、重ね代85を備える。重ね代85は、換気棟包8の屋根側部81及び外壁側部82の換気空間9側の面の形状と合致するように形成される。換気棟包8が重ね代85を備えると、屋根の棟部分に換気棟包8の隣に別の棟包800を設置する場合に、換気棟包8の重ね代85に別の棟包800を重ねることで、防水性が向上する(図15参照)。
本実施形態における換気構造の施工方法の一例について説明する。
図9に示すように、まず野地板22上に必要に応じて防水シートを敷いてから、屋根下地2上に屋根材3を設置する。最も棟側に設置された屋根材3の棟側端部と、野地板22の棟側端部との間には、間隔をあけておくことで、野地板22の棟側部分を露出させる。この野地板22の棟側部分に、換気口4を形成する。換気口4は、野地板22上に屋根材3を設置する前に形成しても、野地板22上に屋根材3を設置した後に形成してもよい。次に野地板22の棟側部分の上に、棟桟受け具50及び捨て水切り27を設置する。棟桟受け具50は、軒棟方向と直交する水平方向に並んで、間隔をあけて設置される。捨て水切り27は、筒部271と換気口4とが合致するように野地板22上に配置され、この状態で設置片272にビス、リベットなどの固定具6が打ち込まれることで、野地板22上に固定される。続いて、図10A及び図10Bに示すように防水テープ273を設置片272上から野地板22上に跨がって貼り付ける。
次に、図11及び図12に示すように棟桟5を棟桟受け具50の被冠部51に嵌合させることで、棟桟受け具50に棟桟5を支持させる。続いて、被冠部51にビス、リベットなどの固定具6を打ち込むことで、棟桟5を棟桟受け具50に強固に固定する。屋根材3の棟側端部上には防水シール材721を設け、外壁材1上には防水シール材731を設ける。
次に、図13及び図14に示すように面戸700及び換気役物7を設置する。面戸700は、屋根側開口部74及び壁側開口部75を備えないこと以外は、換気役物7と同じ形状を有する部材である。但し、面戸700の軒棟方向と直交する水平方向の寸法は、本体部材70よりも大きい。面戸700は、野地板22の棟側部分を覆うように配置され、ビス、リベットなどで棟桟5に固定される。面戸700と屋根材3との間には防水シール材721が介在することで、面戸700と屋根材3との間の水の浸入が抑制され、面戸700と外壁材1との間には防水シール材731が介在することで、面戸700と外壁材1との間の水の浸入が抑制される。換気口4の上方には、面戸700は設置されず、換気役物7が設置される。
換気役物7は、例えば軒棟方向と直交する水平方向の両端の各々が、面戸700の端部の上に重なるように配置される。この場合、換気役物7の両端に通気空間10側の面に防水シール材722が設けられていることで、面戸700の端部と換気役物7との間に防水シール材722が介在し、このため面戸700と換気役物7との間への水の浸入が抑制される。本実施形態では、換気役物7の固定部71における平板部713から棟桟5までビス、リベットなどの固定具6を打ち込むことで、換気役物7が棟桟5に固定される。平板部713における固定具6が打ち込まれる位置には防水テープ716が貼り付けられていることで、固定具6が打ち込まれる位置からの水の浸入が抑制される。また、換気役物7の屋根側傾斜片72と屋根材3との間には防水シール材721が介在することで、換気役物7と屋根材3との間の水の浸入が抑制され、換気役物7の垂下片73と外壁材1との間には防水シール材731が介在することで、換気役物7と外壁材1との間の水の浸入が抑制される。
次に、図15に示すように、面戸700を覆うように複数の棟包800を設置すると共に、換気役物7を覆うように換気棟包8を設置する。本実施形態では、棟包800は、凹所83を備えないこと以外は換気棟包8と同じ形状を有する。尚、棟包800が換気棟包8と同じ形状を有してもよい。複数の棟包800は、軒棟方向と直交する水平方向に並んで設置される。これらの換気棟包8及び棟包800の各々に、棟桟5へ向けてビス、リベットなどの固定具6を打ち込むことで、換気棟包8及び棟包800を棟桟5に固定することができる。
本実施形態に係る換気構造では、図1に示すように、屋根側換気口11、通気空間10、間隙710、屋根側開口部74、換気空間9及び換気口4を介して屋外と屋内とが通じていると共に、壁側換気口12、通気空間10、壁側開口部75、換気空間9及び換気口4を介して屋外と屋内とが通じている。このため、片流れ屋根の棟部分で屋内と屋外との間の換気を行うことができる。特に本実施形態では換気口4の直上に屋根側開口部74があるため、屋根側開口部74と換気口4との間を空気がスムーズに流れやすくなり、このため換気の効率が高くなる。
また、空気が屋外から屋根側換気口11を通じて通気空間10へ流入する場合、空気は通気空間10内で第四邪魔板79に到達する。このため、空気と共に水が通気空間10内に浸入しても、水が第四邪魔板79に遮られ、水が屋根側開口部74へ到達しにくくなる。これにより、屋内への水の浸入が抑制される。また、屋外から屋根側換気口11を通じて通気空間10に流入した空気が屋根側傾斜片72と屋根材3との間を通じて換気空間9に流入し、この空気と共に水が換気空間9に浸入しても、水は第一邪魔板76に遮られ、換気口4へ到達しにくくなる。これにより、屋内への水の浸入が抑制される。特に、本実施形態では通気空間10における屋根側換気口11と第四邪魔板79との間で、換気役物7と換気棟包8との間の間隔が、屋根側換気口11から第四邪魔板79に向かって大きくなっているため、屋根側換気口11を通じて通気空間10に流入した空気の流速は、屋根側換気口11から第四邪魔板79に近づくほど遅くなる。このため、空気と共に流入した水が第四邪魔板79で遮られやすくなる。
また、本実施形態では防露材761が第一邪魔板部材701における結露を抑制しているが、万が一結露が生じても、水滴が第一邪魔板76に誘導されて水切り片706から落下しやすくなる。水切り片706の下端は、捨て水切り27の筒部271の上部開口の直上よりも軒側の位置にあるため、水切り片706から落下した水滴は換気口4へ浸入しにくい。これにより、屋内への水の浸入が抑制される。
また、空気が屋外から壁側換気口12を通じて通気空間10へ流入し、更に壁側開口部75を通じて換気空間9に流入する場合、空気と共に水が壁側開口部75を通じて換気空間9に流入しても、水は第二邪魔板77に遮られ、換気口4に到達しにくくなる。これにより、屋内への水の浸入が抑制される。また、本実施形態では、第二邪魔板77に付着した水が第二邪魔板77に沿って水平方向に流れても、水は第二邪魔板部材702の端部において閉塞片717で堰き止められる。このため、水は換気空間9側へ溢れ出すことなく壁側開口部75から通気空間10を通じて壁側換気口12から屋外へ排出されやすくなる。これにより、屋内への水の浸入が抑制される。
また強い風が水と共に屋根側換気口11から通気空間10へ吹き込む場合、換気構造内の空気の流れは、通気空間10から間隙710、屋根側開口部74、換気空間9及び換気口4を通じて屋内へ流入する経路と、換気空間9へ流入せずに通気空間10のみを流れて壁側換気口12を通じて屋外へ流出する経路とに分かれる。以下、通気空間10における間隙710と壁側開口部75との間の部分を、分岐空間101という。このため、換気空間9を通じて屋内へ流入する空気の量が低減され、屋内への水の浸入が抑制される。また、空気が分岐空間101を流れる場合、第三邪魔板78が屋根側開口部74を遮蔽しているため、屋根側開口部74への水の浸入が抑制される。
特に本実施形態では、分岐空間101において、換気役物7と換気棟包8との間の間隔が、間隙710から壁側開口部75に向かって大きくなってから小さくなっている。このため、空気が通気空間10において分岐空間101を流れる際は、まず換気役物7と換気棟包8との間の間隔が小さいために空気は比較的速い流速で流れる。このため、空気は分岐空間101に引き込まれやすくなり、このため空気が間隙710及び屋根側開口部74を通じて換気空間9へ流入することが抑制される。続いて、換気役物7と換気棟包8との間の間隔が大きくなることで空気の流速が遅くなる。このため空気は垂直片73と換気棟包8との間で壁側換気口12へ向けて下方へ誘導されやすくなり、それに伴い、空気と共に分岐空間101へ流入した水が分岐空間101に残留することなく屋外へ排出されやすくなる。
また強い風が水と共に壁側換気口12から通気空間10へ吹き込む場合、換気構造内の空気の流れは、通気空間10から壁側開口部75、換気空間9及び換気口4を通じて屋内へ流入する経路と、換気空間9へ流入せずに通気空間10のみを流れて屋根側換気口11を通じて屋外へ流出する経路とに分かれる。このため、換気空間9を通じて屋内へ流入する空気の量が低減され、屋内への水の浸入が抑制される。また、空気が分岐空間101を流れる場合、第三邪魔板78が屋根側開口部74を遮蔽しているため、屋根側開口部74への水の浸入が抑制される。
特に本実施形態では、分岐空間101において、換気役物7と換気棟包8との間の間隔が、間隙710から壁側開口部75に向かって大きくなってから小さくなっている。このため、空気が通気空間10において分岐空間101を流れる際は、まず換気役物7と換気棟包8との間の間隔が小さいために空気は比較的速い流速で流れる。このため、空気は分岐空間101に引き込まれやすくなり、このため空気が壁側開口部75を通じて換気空間9へ流入することが抑制される。続いて、換気役物7と換気棟包8との間の間隔が大きくなることで空気の流速が遅くなる。このため空気は屋根側傾斜片72と換気棟包8との間で屋根側換気口11へ向けて誘導されやすくなり、それに伴い、空気と共に分岐空間101へ流入した水が分岐空間101に残留することなく屋外へ排出されやすくなる。
本実施形態では、上述の通り片流れ屋根の棟部分において屋内と屋外との間の換気を行うことができ、更に強風下であっても屋内への水の浸入を効果的に抑制することができる。しかも、邪魔板を四つ設けるという簡易な構成で、屋内への水の浸入を効果的に抑制することができる。更に換気構造は換気棟包8を備えることで良好な外観を有する。