JP5096435B2 - 光学活性α−メチルシステイン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
1)光学活性システインとピバルアルデヒドより得られる光学活性チアゾリジン化合物への不斉メチル化による方法(特許文献1)。
2)光学活性アラニンとベンズアルデヒドより得られる光学活性オキサゾロン化合物への不斉チオメチル化による方法(非特許文献1)。
3)システインとシアノベンゼンより得られるチアゾリン化合物のメチル化を行い、得られたラセミ体のチアゾリン化合物をキラルHPLCにて分離精製する方法(非特許文献2)。
4)光学活性バリンとアラニンより合成される光学活性ジケトピペラジン化合物を不斉ブロモメチル化し、得られた化合物の臭素原子をアルカリ金属アルキルチオラートで置換する方法(非特許文献3)。
5)2−メチル−2−プロペン−1−オールのシャープレス不斉酸化により得られる光学活性な2−メチルグリシドールから光学活性アジリジンを合成し、これにチオールを反応させる方法(非特許文献4)。
6)アミノマロン酸誘導体をメチル化した後に、豚肝臓エステラーゼ(以下PLEと略す)による非対称化を行い、得られた非対称エステルをチオ酢酸アルカリ金属塩と反応させる方法(非特許文献5)。
また、α−メチルシステイン及びその塩は、酸化に対して不安定で2量化しジスルフィドになりやすい。例えば、類似構造を有するシステインの場合、シスチンへの2量化は速やかに進行する(非特許文献6)。本化合物においても2量化が進行し、しかもジスルフィド体が一旦生成するとその除去は容易ではなく、製品中への混入を避けることは難しい。故に、ジスルフィド体の生成及び混入を高度に抑制したプロセスの構築も重要である。
このように、工業的に実施可能な、高品質の光学活性α−メチルシステイン及びその塩を好適に結晶として晶析取得する方法の確立が強く望まれていた。
酵素的光学分割を用いる方法を実現するうえで、基質となるラセミ体α−メチルシステイン誘導体は、簡便かつ効率的に製造できること、酵素の基質特異性に適合し、かつ高い立体選択性を得るための適切な保護基あるいは補助基を有すること、更には、酵素反応後に前記保護基あるいは補助基が簡単に除去できること、が要求される。このような観点からは、好適なラセミ体α−メチルシステイン誘導体として、N−カルバモイル−α−メチルシステイン誘導体を挙げることができる。
ラセミ体N−カルバモイル−α−メチルシステイン誘導体は、一般的なアミノ酸の化学的合成法とN−カルバモイル化反応とを組み合わせて製造することができるが、ラセミ体のN−カルバモイル−α−メチルシステイン誘導体を短工程かつ高収率で製造する方法は、未だ確立されていない。
一方、ラセミ体N−カルバモイル−α−メチルシステイン誘導体の酵素的光学分割に関しては、特許文献3には、ラセミ体N−カルバモイル−アミノ酸誘導体にヒダントイナーゼを作用させ立体選択的に環化することにより分割を行う方法が記されているが、N−カルバモイル−α−メチルシステイン誘導体の反応の可能性については、記載も示唆もない。
また、D−5−メチル−5−チオメチルヒダントイン誘導体又はその塩の加水分解及び硫黄原子の脱保護を行うことにより、α−メチル−D−システイン誘導体又はその塩を得る方法を見出した。さらには、上記方法の原料となるラセミ体N−カルバモイル−α−メチルシステイン誘導体を簡便かつ高収率で製造する方法も確立し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一般式(1):
また、本発明は、前記N−カルバモイル−α−メチル−L−システイン誘導体(3)又はその塩を脱カルバモイル化し、必要に応じて硫黄原子の脱保護を行うことを特徴とする、一般式(4):
また、本発明は、前記式(3)においてR1が炭素数4〜15の3級アルキル基であるN−カルバモイル−α−メチル−L−システイン誘導体又はその塩を酸で処理することにより、脱カルバモイル化と硫黄原子の脱保護を同時に行うことを特徴とする、一般式(5):
また、本発明は、前記N−カルバモイル−α−メチル−L−システイン誘導体(3)又はその塩の、環化及び硫黄原子の脱保護を行うことを特徴とする、一般式(6):
また、N−カルバモイル−α−メチル−L−システイン誘導体(3)又はその塩を環化して、一般式(7):
また、本発明は、前記D−5−メチル−5−チオメチルヒダントイン誘導体(2)又はその塩を加水分解し、必要に応じて硫黄原子の脱保護を行うことを特徴とする、一般式(8):
また、本発明は、前記式(2)においてR1が炭素数4〜15の3級アルキル基である化合物を、酸で処理することにより加水分解反応と硫黄原子の脱保護を同時に行うことを特徴とする、一般式(9):
また、本発明は、前記式(8)においてR2がR1と同じであるα−メチル−D−システイン誘導体又はその塩をカルバモイル化し、一般式(10):
また、本発明は、前記式(2)で表される化合物を酸で処理することにより、硫黄原子の脱保護を行うことを特徴とする、前記式(11)で表されるD−5−メチル−5−チオメチルヒダントイン又はその塩の製造方法に関する。これら光学活性5−メチル−5−チオメチルヒダントイン誘導体又はその塩は、加水分解することにより容易に光学活性α−メチルシステインに変換することができ、光学活性α−メチルシステインと同様に、医薬等の合成中間体として好適に使用できる。
さらに、本発明は、光学活性α−メチルシステイン又はその塩の水溶液から、有機溶剤の共存下にこれらの晶出を行うことを特徴とする、光学活性α−メチルシステイン又はその塩の晶析方法にも関する。
さらに、本発明は、下記式(12):
さらに、本発明は、前記式(1)で表されるラセミ体N−カルバモイル−α−メチルシステイン誘導体又はその塩;前記式(3)又は(10)で表されるL体又はD体の光学活性N−カルバモイル−α−メチルシステイン誘導体又はその塩;前記式(2)又は(7)においてR1が炭素数4〜15の3級アルキル基である、D体又はL体の光学活性5−メチル−5−チオメチルヒダントイン誘導体又はその塩;前記式(4)又は(8)において、R2が置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数7〜20のアラルキル基、又は、置換基を有していても良い炭素数6〜20のアリール基である、L体又はD体の光学活性α−メチルシステイン誘導体又はその塩;前記式(6)又は(11)で表されるL体又はD体の光学活性5−メチル−5−チオメチルヒダントイン又はその塩に関する。
本発明に用いるラセミ体N−カルバモイル−α−メチルシステイン誘導体(1)において、R1は、置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数7〜20のアラルキル基、又は、置換基を有していても良い炭素数6〜20のアリール基を表す。
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、t−ヘキシル基等の分枝アルキル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である。
炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えばベンジル基,p−メトキシベンジル基、フェネチル基,ナフチルメチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数7〜15のアラルキル基である。
炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基,ナフチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数6〜15のアリール基である。
上記アルキル基、アラルキル基、アリール基は、それぞれ無置換であってもよく、また置換基を有していてもよい。置換基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、アリール基、アルカノイル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記R1の中でも、脱保護の容易さ及びヒダントイナーゼによる立体選択的環化反応の反応性の点からは、置換基を有していても良い炭素数4〜15の3級アルキル基が好ましい。具体的には、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−ヘキシル基等が挙げられ、より好ましくはt−ブチル基である。
上記アルキル基、アラルキル基、アリール基は無置換であってもよく、置換基を有していても良い。置換基としては、前記R1の説明で挙げた置換基に加え、
下記式(15):
−SR1 (15)
で表される置換チオ基を挙げることができる。ここで、R1は上記と同じであり、その好ましい具体例も上記と同じである。
原料となるラセミ体5,5−二置換ヒダントイン誘導体(12)又はその塩は、対応するケトンから当業者周知のBucherer法により合成することができる。
塩基の使用量としては、特には限定されないが、基質に対して、好ましくは1〜10モル当量、より好ましくは2〜5モル当量である。
上記溶媒として水と混合する有機溶媒は、特には限定されないが、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤等が挙げられる。好ましくは炭化水素系溶剤である。
上記炭化水素系溶剤としては、特には限定されないが、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、これらのいずれか一種を単独で用いても良いし、又は二種以上を任意の割合で混合して用いても良い。好ましくはトルエンである。
エステル系溶剤としては、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等が挙げられる。
ニトリル系溶剤としては、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
反応に用いる水は、基質に対して、好ましくは0.1倍〜100倍重量であり、収率、容積効率の点から、より好ましくは0.1倍〜10倍重量、さらに好ましくは0.2〜3倍重量である。
また、基質に対して、水を0.2倍〜3倍重量、塩基を2〜5モル当量使用する場合に、最も反応は収率良く進行する。
反応時間は、基質の種類、試材量、反応温度に依存するので一概に言えないが、1〜50時間反応させるのが好ましく、収率良く生成物を得るには、より好ましくは2〜24時間である。
反応後の後処理としては、このまま、次の反応に用いても良いし、酸を加えて中和した後に、抽出、精製により単離してもよい。また、反応混合物をろ過して該化合物を単離してもよい。
ここでヒダントイナーゼとは、5−置換ヒダントイン誘導体又はその塩を加水分解してN−カルバモイル−α−アミノ酸誘導体を生成する活性を有する酵素である。また、本酵素は、一般に、加水分解反応の逆反応として、N−カルバモイル−α−アミノ酸誘導体を環化して5−置換ヒダントイン誘導体を生成することが知られている(特開平1−1243989号公報)。
好ましくは、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、バチルス属(Bacillus)、シュードモナス属(Pseudomonas)又はリゾビウム属(Rhizobium)に属する微生物由来の酵素が挙げられる。
より好ましくは、アグロバクテリウム・スピーシーズ(Agrobacterium sp.)KNK712(FERM BP−1900)、バチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK245(FERM BP−4863)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)IFO12996、シュードモナス・スピーシーズ(Pseudomonas sp.)KNK003A(FERM BP−3181)又はリゾビウム・スピーシーズ(Rhizobium sp.)KNK1415由来の酵素が挙げられる。
なお、アグロバクテリウム・スピーシーズ(Agrobacterium sp.)KNK712は、FERM BP−1900の受託番号で、1988年5月31日付で;バチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK245は、FERM BP−4863の受託番号で、1994年11月2日付で;シュードモナス・スピーシーズ(Pseudomonas sp.)KNK003Aは、FERM BP−3181の受託番号で、1990年12月1日付で;それぞれ、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、ブダペスト条約に基づいて国際寄託されている。
ヒダントイナーゼを効率良く高生産する形質転換微生物の作成方法としては、例えばWO96/20275記載のように、ヒダントイナーゼ活性を示す菌株からヒダントイナーゼ遺伝子をクローニングした後、適当なベクターとの組換えプラスミドを作成して、これを用いて適当な宿主菌を形質転換することで得られる。なお、組換えDNA技術については当該分野において周知であり、例えば、Molecular Cloning 2nd Edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)、Current Protocols in Molecular Biology (Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience)に記載されている。
なお、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pTH104は、FERM BP−4864の受託番号で、1994年11月2日付で;エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pAH1043は、FERM BP−4865の受託番号で、1994年11月2日付で;エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pPHD301は、FERM BP−4866の受託番号で、1994年11月2日付で;それぞれ、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、ブダペスト条約に基づいて国際寄託されている。
さらにそれらは、酵素自体あるいは菌体のまま公知の手段で固定化して得た固定化酵素として用いられ得る。なお、酵素を固定化して安定化することで、酵素反応を、より過酷な温度域で行うこと等が可能となり、反応をより効率的に進行させることができる。さらに、酵素の反復使用が可能となること、製造プロセスが簡略化できる等による製造コストの低減等のメリットも期待できる。
この場合、得られたN−カルバモイル−α−メチル−L−システインを含むろ液は、そのまま次工程に使用してもよいし、精製して次工程に使用してもよい。精製する場合、例えばpHを酸性にすることで結晶を析出させ、ろ過することにより該化合物を取得することができる。
まず、脱カルバモイル化と硫黄原子の脱保護を一緒に行う方法について説明する。本発明者らは検討を重ねる中で、硫黄原子の保護基(R1)として、t−ブチル基等に代表される炭素数4〜15の3級アルキルを用いた場合、N−カルバモイル−α−メチル−L−システイン誘導体(3)又はその塩を酸で処理することにより、脱カルバモイル化(アミノ基の脱保護)と硫黄原子の脱保護を一段階で行えることを見出した。
亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸バリウム等が挙げられ、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウムが好ましい。また組み合わせる酸としては、酢酸、塩酸、硫酸、臭化水素酸等が好ましく、特に好ましくは塩酸である。溶媒としては特に制限されるものではないが、基質の溶解性から、水又はアルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等)を用いることが好ましい。
亜硝酸酸化法の反応温度は、−5℃〜100℃の範囲で行うことが好ましく、生成物の安定性、収率向上の面から、より好ましくは0℃〜50℃の範囲である。
アルカリ加水分解の反応温度は、−5℃〜150℃の範囲で行うことが好ましく、生産性及び収率向上の面から、より好ましくは80℃〜120℃の範囲である。
まず、N−カルバモイル−α−メチル−L−システイン誘導体(3)又はその塩の硫黄原子の脱保護と環化反応を一段階で行う方法について説明する。硫黄原子上の保護基がt−ブチル基に代表される3級アルキル基の場合、酸で処理することにより脱保護と環化を同時に行うことが可能である。
用いるアルカリとしては、特に制限されるものではなく、例えば水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウム,水酸化マグネシウム,水酸化バリウム,水酸化カルシウム等が挙げられるが、入手の容易さ、価格の面等から、水酸化ナトリウム,水酸化カリウムあるいは水酸化リチウムが好ましい。
L−5−メチル−5−チオメチルヒダントイン誘導体(7)又はその塩は、そのまま次工程に用いてもよいし、有機溶媒で抽出後に次工程に用いてもよいし、晶析等により単離してから次工程に用いてもよい。
得られた(7)又はその塩をさらに酸で処理することにより硫黄原子の脱保護が進行し、L−5−メチル−5−チオメチルヒダントイン(6)又はその塩を得ることができる。
加水分解は、通常、アルカリを用いて行われる。加水分解に用いるアルカリは特に制限されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウム,水酸化バリウム,水酸化マグネシウム,水酸化カルシウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウムである。反応後に生成物の晶析を行う際に、生じる無機塩不純物が水に対して良好な溶解度を有することから、水酸化リチウムを用いることが特に好ましい。
反応温度としては、好ましくは−5℃〜150℃、より好ましくは80℃〜120℃である。
ここで用いる酸は、反応液のpHを下げ得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば塩酸,硫酸,臭化水素酸,硝酸,酢酸,トリフルオロ酢酸等が挙げられ、前記から選ばれる任意の1種を単独で用いても良く、あるいは2種以上を任意の割合で混合して用いても良い。加水分解に水酸化リチウムを用いた場合、中和時に生成する無機塩不純物が水に対して良好な溶解度を有し、結晶中に混入しにくいことから塩酸を用いることが好ましい。
反応温度としては、好ましくは70℃〜180℃、より好ましくは90℃〜150℃である。
反応温度としては、好ましくは70℃〜180℃、より好ましくは90℃〜150℃である。
この場合、D−5−メチル−5−チオメチルヒダントイン誘導体(2)又はその塩からα−メチル−D−システイン誘導体(8)又はその塩への変換は、既に記載した方法で行うことができる。
前記の酸との塩の酸としては、ハロゲン化水素酸、スルホン酸、硫酸、硝酸、カルボン酸等が挙げられるが、好ましくはハロゲン化水素酸である。
前記ハロゲン化水素酸としては、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸等が挙げられるが、好ましくは塩酸である。
スルホン酸としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられ、カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。また、塩基との塩の塩基としては、アンモニア、トリエチルアミン、アニリン、ピリジン等が挙げられる。
本晶析方法の実施にあたっては、有機溶剤の添加に先立ち、光学活性α−メチルシステイン又はその塩の水溶液を予備的に濃縮しておくこともできる。この場合、該化合物の重量濃度が10重量%以上、より好ましくは30重量%以上となる程度に水溶液を濃縮するのが好ましい。
前記水と相溶性の低い又はない有機溶剤として、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、又はエーテル系溶剤等が挙げられる。水と相溶性が低く、光学活性α−メチルシステイン又はその塩の溶解性が低く、溶剤の回収再利用が容易である点から、好ましくは炭化水素系有機溶剤である。
炭化水素系有機溶剤としては、特には限定されないが、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンのいずれかの一種又は二種以上混合して用いても良い。好ましくは経済性の点からトルエンである。
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル等が挙げられる。
これら上記溶剤は、各々単独で用いても良いし、同種または異種の溶剤を任意の割合で混合して用いても良い。
有機溶剤添加後、水を系外に除去しつつ、光学活性α−メチルシステイン又はその塩を晶出させるときの濃度としては、溶質としての光学活性α−メチルシステイン又はその塩が0.1〜70重量%、好ましくは1〜70重量%である。
上記操作により、系外に水を除去した後に最終的に残存する水の量としては、光学活性α−メチルシステイン又はその塩に対して、100重量%以下であることが好ましく、得られる結晶の性状、ろ過性、晶出率、スラリーの流動性の点からは、40重量%以下まで水を系外に除去することがより好ましい。
濃縮時の温度は、減圧度、装置の能力に依存するが、取り扱いが容易な、高品質の結晶を取得する為には、0℃〜150℃であり、好ましくは10℃〜100℃、より好ましくは30〜70℃である。
上記操作により、有機溶剤を添加し、系外に水を除去するとき最終的に残存する水の量としては、光学活性α−メチルシステイン又はその塩に対して、好ましくは100重量%以下であり、除去すべき無機塩の析出量の点から、40重量%以下まで水を系外に除去することがより好ましい。
アルコール系溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。これらの中から任意に1種を単独で用いても良いし、2種以上を任意の割合で混合して用いても良いが、脱水効率、経済性、エステル化等の副反応を低減する観点から、好ましくはイソプロピルアルコールである。
上記水と相溶性のあるエーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル等が挙げられる。これらの中から任意に1種を単独で用いても良いし、2種を任意の割合で混合して用いても良いが、脱水効率、経済性の点から、好ましくはテトラヒドロフランである。
上記貧溶媒としては、特には限定されず、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、水と相溶性のない又は低いエーテル系溶剤等が挙げられる。結晶の析出量、純度の点から、好ましくは炭化水素系溶剤及びエステル系溶剤である。より好ましくは炭化水素系溶剤である。
上記炭化水素系溶剤としては、特には限定されないが、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、好ましくはトルエン、キシレン、ヘキサン、へプタン、より好ましくはトルエンである。
上記エステル系溶剤としては、特には限定されないが、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等が挙げられ、好ましくは酢酸エチルである。
水と相溶性のない又は低いエーテル系溶剤としては、特には限定されないが、例えばジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル等が挙げられる。
これら上記溶剤は、各々単独で用いても良いし、同種または異種の溶剤を任意の割合で混合して用いても良い。
窒素風船を備えた反応容器に、5wt%水酸化ナトリウム水溶液(9.6g,12mmol)、t−ブチルメルカプタン(1.13mL,10mmol)を0℃で混合し、10分間攪拌した。クロロアセトン(0.79mL,10mmol)を加え、室温に昇温し2時間反応させた。このとき反応溶液は淡黄色で二相分離していた。反応容器にジムロート型冷却管を備え、NaCN(588mg,12mmol)、(NH4)HCO3(2.77g,35mmol)、28%アンモニア水(3.1mL)を加え、均一な溶液とした後、55−60℃に昇温した。6時間加熱攪拌した後、0℃に冷却し、反応溶液に濃塩酸を加えpH=7.0−7.6に調整した。生成した白色結晶を濾別し、1H NMR分析を行ったところ目的物(1.84g、収率84.8%)であった。
2−メトキシフェニルアセトン(16.4g、100mmol)と水164gを混合し、これにNaCN(5.88g、120mmol)、(NH4)HCO3(27.7g、350mmol)、28%アンモニア水27.7gを加えた。50℃で4時間、60℃で12時間攪拌した後に、23℃まで放冷し、濃塩酸を加えpH7.5に調整した。析出した固体をろ取し、トルエンで洗浄した後に、減圧乾燥し、標題化合物22.10g(収率94.5%)を得た。
1H NMR(300MHz,CDCl3) δ:7.10−6.88(m,4H),5.49(brs,1H),3.86(s,3H),3.20(d,1H),2.97(d,1H),1.49(s,3H)。
ラセミ体5−メチル−5−チオメチルヒダントイン(4.77g,22.1mmol)を10%水酸化ナトリウム水溶液(75g)に溶解し、72時間還流させた。室温まで放冷後、反応液を一部抜き取り、HPLC(カラム:コスモシルAR−II(ナカライ社製)、移動相:リン酸二水素カリウム・リン酸水溶液(pH2.0)/アセトニトリル=97/3、流速:1.0ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:40℃、保持時間21.15分)にてラセミ体S−t−ブチル−α―メチルシステインの生成を確認した。濃塩酸にてpHを8に調整した後、溶液を70℃に加熱、シアン酸カリウム(2.07g)を蒸留水(10mL)に溶解した溶液を20分かけて滴下した。滴下終了後、5時間攪拌した後、反応液の一部を抜き取りHPLCにて分析したところ未反応のアミノ酸が認められたので、さらにシアン酸カリウム(4.14g)を蒸留水(20mL)に溶かした溶液を20分かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間攪拌し室温まで放冷、濃塩酸にてpHを2とし、析出した固体をろ取した。得られた固体を水洗、乾燥させ1H NMRで分析したところ目的物であることがわかった(3.38g、収率66%)。
WO96/20275記載の培養方法と固定化酵素の調製方法に従い、バチルス sp.KNK245株(FERM BP−4863)を培養、集菌後、超音波破砕して得た酵素液に、固定化用担体である陰イオン交換樹脂、Duolite A−568を添加して酵素を吸着させ、さらにグルタルアルデヒドで架橋処理することで固定化ヒダントイナーゼを得た。
N−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチル−L−システイン:1H NMR(300MHz,CD3OD)δ:3.22(d,1H),3.16(d,1H),1.52(s,3H),1.29(s,9H)
D−5−t−ブチルチオメチル−5−メチルヒダントイン:1H NMR(300MHz,CDCl3 with 3 drops of CD3OD)δ:2.90(d,1H),2.80(d,1H),1.49(s,3H),1.30(s,9H)。
バチルス sp.KNK245株(FERM BP−4863)のヒダントイナーゼ遺伝子を組み込んだ形質転換微生物エシェリヒア・コリ HB101 pTH104(FERM BP−4864)を10ml液体培地(10g/l トリプトン、10g/l イーストエキス、5g/l NaCl、pH7を120℃で15分間殺菌後、100mg/l アンピシリンをろ過滅菌にて添加)に植菌し、37℃にて18時間振とう培養した。この培養液1mlを、500ml容坂口フラスコ中、120℃で15分間殺菌した50ml液体培地(10g/l トリプトン、10g/l イーストエキス、5g/l NaCl、pH7)に植菌し、37℃にて24時間振とう培養した。この培養液1mlから遠心分離により得られた菌体を1.5mlの0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁し、ラセミ体のN−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステイン150mgと0.5M硫酸マンガン水溶液0.003mlを添加後、10N水酸化ナトリウム水溶液によりpHを6.5に調整した。そして、6N塩酸によりpHを6.5付近に保ちつつ、40℃で24時間攪拌して反応させた。反応液をHPLC分析(カラム:COSMOSIL 5C8−MS、移動相:アセトニトリル/10mMリン酸二水素カリウム水溶液=3/7、流速:0.8ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:40℃)した結果、N−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステインの残存率は49%であった。さらに、反応液中N−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステインの光学純度をHPLC分析(カラム:CHIRALPAK AS(ダイセル社製)、移動相:ヘキサン/イソプロパノール/トリクロロ酢酸=7/3/0.01、流速:0.5ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:30℃)したところ94.6%eeであり、また、実施例1で得られたN−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチル−L−システインとの保持時間の比較からL体であることを確認した。
バチルス sp.KNK245株(FERM BP−4863)の乾燥保存菌体を、500ml容坂口フラスコ中、120℃で15分間殺菌した100ml液体培地(10g/l ポリペプトン、10g/l 肉エキス、5g/l イーストエキス、pH7.5)に植菌し、45℃にて15時間振とう培養した。この培養液2mlを、上記培地成分にさらに1g/l ウラシル、20mg/l 塩化マンガンを加えた培地に植菌し、45℃にて24時間振とう培養した。この培養液15mlから遠心分離により得られた菌体を1.5mlの0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁し、ラセミ体のN−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステイン150mgと0.5M硫酸マンガン水溶液0.003mlを添加後、10N水酸化ナトリウム水溶液によりpHを6.5に調整した。そして、6N塩酸によりpHを6.5付近に保ちつつ、40℃で19時間攪拌して反応させた。反応液をHPLC分析(カラム:COSMOSIL 5C8−MS、移動相:アセトニトリル/10mMリン酸二水素カリウム水溶液=3/7、流速:0.8ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:40℃)した結果、N−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステインの残存率は44%であった。さらに、反応液中N−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステインの光学純度をHPLC分析(カラム:CHIRALPAK AS(ダイセル社製)、移動相:ヘキサン/イソプロパノール/トリクロロ酢酸=9/1/0.01、流速:0.5ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:30℃)したところ99.0%eeであり、また、実施例1で得られたN−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチル−L−システインとの保持時間の比較からL体であることを確認した。
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)IFO12996を固体培地(10g/l ポリペプトン、2g/l イーストエキス、1g/l 硫酸マグネシウム七水和物、15g/l 寒天、pH7.0)で30℃にて24時間培養した。この菌体一白金耳を、500ml容坂口フラスコ中、120℃で15分間殺菌した100ml液体培地(20g/l 肉エキス、6g/l グリセロール、1g/l ウラシル、2g/l リン酸二水素カリウム、1g/l 硫酸マグネシウム七水和物、40mg/l 塩化カルシウム二水和物、20mg/l 硫酸第一鉄七水和物、20mg/l 硫酸マンガン四〜六水和物、20mg/l 硫酸銅五水和物、pH5.5)に植菌し、30℃にて24時間振とう培養した。この培養液10mlから遠心分離により得られた菌体を1mlの0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁し、ラセミ体のN−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステイン10mgと0.5M硫酸マンガン水溶液0.002mlを添加した。そして、6N塩酸によりpHを6.5付近に保ちつつ、40℃で50時間攪拌して反応させた。反応液をHPLC分析(カラム:COSMOSIL 5C8−MS、移動相:アセトニトリル/10mMリン酸二水素カリウム水溶液=3/7、流速:0.8ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:40℃)した結果、N−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステインの残存率は52%であった。さらに、反応液中N−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステインの光学純度をHPLC分析(カラム:CHIRALPAK AS(ダイセル社製)、移動相:ヘキサン/イソプロパノール/トリクロロ酢酸=9/1/0.01、流速:0.5ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:30℃)したところ95.6%eeであり、また、実施例1で得られたN−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチル−L−システインとの保持時間の比較からL体であることを確認した。
アグロバクテリウム・スピーシーズ KNK712株(FERM BP−1900)を大型試験管中、120℃で15分間殺菌した10ml液体培地(10g/l ポリペプトン、10g/l 肉エキス、5g/l イーストエキス、5g/l グリセリン、5g/l リン酸二水素カリウム、5g/l リン酸水素二ナトリウム、pH6.5)に植菌し、30℃にて24時間振とう培養した。この培養液1mlを、100ml液体培地(25g/l グリセリン、5g/l シュークロース、5g/l リン酸二水素カリウム、5g/l リン酸水素二ナトリウム、1g/l リン酸マグネシウム七水和物、10mg/l 塩化マンガン四水和物、4g/l イーストエキス、pH6.5を120℃で15分間殺菌後、2g/l ウレア、1g/l D−N−カルバモイル−α−p−ヒドロキシフェニルグリシンをろ過滅菌にて添加)に植菌し、33℃にて23時間振とう培養した。この培養液5mlから遠心分離により得られた菌体を1mlの0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁し、ラセミ体のN−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステイン10mgと0.5M硫酸マンガン水溶液0.002mlを添加した。そして、6N塩酸によりpHを6.5付近に保ちつつ、40℃で5時間攪拌して反応させた。反応液をHPLC分析(カラム:COSMOSIL 5C8−MS、移動相:アセトニトリル/10mMリン酸二水素カリウム水溶液=3/7、流速:0.8ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:40℃)した結果、N−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステインの残存率は23%であった。さらに、反応液中N−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチルシステインの光学純度をHPLC分析(カラム:CHIRALPAK AS(ダイセル社製)、移動相:ヘキサン/イソプロパノール/トリクロロ酢酸=9/1/0.01、流速:0.5ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:30℃)したところ85.8%eeであり、また、実施例1で得られたN−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチル−L−システインとの保持時間の比較からL体であることを確認した。
実施例3の方法により得られた酵素とD−5−t−ブチルチオメチル−5−メチルヒダントインの混合物(50g)に不純物として含まれるS−t−ブチル−α−メチル−L−システインを除去するために、水(400g)を加え攪拌した後に不溶分をろ取し、水(200g)でさらに洗浄した。これに5wt%水酸化ナトリウム水溶液(120g)を加え、攪拌した。酵素を不溶分としてろ別し、ろ液を濃塩酸にてpH=9に調整した。析出した結晶をろ取し、これを水洗した後に、減圧下にて乾燥を行い、粗生成物を結晶として得た(19.7g)。これをHPLCにて分析(カラム:COSMOSIL 5C8−MS、移動相:アセトニトリル/リン酸二水素カリウム・リン酸水溶液(pH2.0)=2/8、流速:1.0ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:40℃)し、標品との比較により純度及び収率を算出したところ、純度87.5wt%,収率79.6%であった。また光学純度は、HPLC分析(カラム:CHIRALPAK AS(ダイセル社製)、移動相:ヘキサン/イソプロパノール=9/1、流速:1.0ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:30℃,保持時間:D体=15.2分,L体=39.8分)により決定し、97.6%eeであった。
実施例1〜5のいずれかの方法で取得したD−5−t−ブチルチオメチル−5−メチルヒダントインと酵素混合物(80g)に、10wt%水酸化リチウム水溶液(150mL)を加えて溶解させた。酵素をろ別した後に、母液中に含まれるD−5−t−ブチルチオメチル−5−メチルヒダントインをHPLC(分析条件は実施例6と同じ)にて定量したところ44.2g含有していた。この溶液に水酸化リチウム(54g)、蒸留水(51g)を加え38時間加熱還流した。室温まで放冷し、生じた固体をろ別した。母液を内温20oC付近に保ち、濃塩酸(110g)を加えpH=6.7に調整し、内温2oCに冷却し2時間攪拌を続けた。次に生じた固体をろ取し、40oCで24時間真空乾燥し、乾燥結晶(34.9g)を取得した。HPLC(カラム:Cosmosil 5C18−AR(ナカライ社製)、移動相:リン酸二水素カリウム・リン酸水溶液(pH2.0)/アセトニトリル=90/10、流速:1.0ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:40℃)で分析して、上記目的物であることを確認し、標品との比較により純度及び収率を決定した(純度96.7wt%,収率85.7%)。
S−t−ブチル−α−メチル−D−システイン(20g)を濃塩酸(180g)に溶解させ45時間加熱還流した。室温まで放冷し、反応溶液を35gまで濃縮した。これを40oCに加温し、トルエン(110mL)を加え、約40gになるまで濃縮した。この操作をさらに4回行い、生じた固体をろ取し、60oCで48時間真空乾燥し、標題化合物を白色固体として得た(15.3g)。HPLC(カラム:CAPCELL PAK SCX(資生堂社製)、移動相:リン酸二水素カリウム・リン酸水溶液(pH2.0)/アセトニトリル=95/5、流速:0.3ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:30℃)で分析したところ、上記目的物であることを確認した(収率84.6%)。また旋光度を測定したところ、[α]D 20=−6.28(c1.21,H2O)であり、符号が実施例10で得られたα−メチル−L−システイン塩酸塩と逆であることから、立体が目的とするD体であることを確認した。
N−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチル−L−システイン(100mg,0.43mmol)を濃塩酸(1mL)に溶解し、窒素下、60時間還流させ、α−メチル−L−システイン塩酸塩の水溶液を得た。
実施例9で得られたα−メチル−L−システイン塩酸塩反応溶液に、イソプロピルアルコール(0.5mL)を加えて減圧下濃縮し、共沸脱水を行った。同様の操作を3回繰り返し、容量が約1/3となったところで濃縮を止め、60℃に加熱、トルエン(1mL)を加え、攪拌しながら室温まで放冷した。そのまま約1時間攪拌した後、析出した結晶をろ別、トルエンで洗浄し、減圧下乾燥させ、標題化合物を白色固体として得た(44.3mg)。HPLC(実施例8の分析条件)で分析したところ、上記目的物であることを確認した(収率60.0%)。また旋光度を測定したところ、[α]D 20=8.77(c1.15,H2O)であり、符号が文献値(Tetrahedron,1993,49,2131〜2138,WO98/38177)と一致することから、立体が目的とするL体であることを確認した。
1H NMR(300MHz,D2O)δ:3.18(d,1H),2.89(d,1H),1.60(s,3H)。
N−カルバモイル−S−t−ブチル−α−メチル−L−システイン(82.4g,351.4mmol)を18%水酸化リチウム水溶液(630g)に溶解し、窒素下、41時間還流させた。室温まで放冷後、不溶分をろ別した後の溶液に濃塩酸(180.1g)を加えてpHを6に調整し、そのまま約1時間攪拌した後に4〜5oCに冷却し、さらに1時間攪拌した。得られた結晶をろ別し、水洗の後に減圧下乾燥を行い、標題化合物を白色固体として得た(53.9g)。HPLC(カラム:Cosmosil 5C18−AR(ナカライ社製)、移動相:リン酸二水素カリウム・リン酸水溶液(pH2.0)/アセトニトリル=90/10、流速:1.0ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:40℃)で分析したところ、上記目的物であることを確認した(収率85.7%)。
1H NMR(300MHz,D2O)δ:3.18(d,1H),2.91(d,1H),1.60(s,3H),1.35(s,9H)。
実施例11記載の方法で得られたS−t−ブチル−α−メチル−L−システイン(38.4g,201mmol)に濃塩酸(345.3g)を加え、24時間還流し、α−メチル−L−システイン塩酸塩の水溶液を得た。
実施例12により得られたα−メチル−L−システイン塩酸塩反応溶液を67.5gにまで濃縮(減圧度30〜60mmHg、温度45℃)し、トルエン(206g)を加え、減圧濃縮操作(減圧度40〜60mmHg、温度40℃、留出速度107L/h・m2)を行い、全量109gとした。さらにトルエン(206g)を加えて濃縮し、同様の操作を合計6回繰り返し、得られたα−メチル−L−システイン塩酸塩トルエンスラリー(104g)を得た。このものの水分含量は30重量%(対α−メチル−L−システイン塩酸塩)であった。ろ過し、トルエンにて結晶を洗浄、減圧下乾燥(0〜100mmHg、30〜80℃、5−10時間)させ、標題化合物を白色固体として得た(32.2g、収率93.4%)。
実施例11記載の方法で得られたS−t−ブチル−α−メチル−L−システイン(25g,131mmol)に水(47.6g)及び濃塩酸(177.4g)を加え、41時間還流した。さらに濃塩酸(47.6g)を加え3時間還流させた後に、室温まで放冷した。イソプロピルアルコール(90mL)を加え減圧下濃縮を行い、共沸脱水を3回、同量のイソプロピルアルコールを用いて行った。最後にイソプロピルアルコールを加え濃縮し、容量が約1/3となったところで濃縮を止め60oCに加熱、トルエン(90mL)を加え、攪拌しながら室温まで放冷した。そのまま約1時間攪拌した後、析出した結晶をろ取し、トルエンで洗浄し、減圧下乾燥させ、標題化合物を白色固体として得た(13.5g、収率60.0%)。
実施例6により得られたD−5−t−ブチルチオメチル−5−メチルヒダントイン(4.38g)を濃塩酸(100g)に溶解し、80℃で18.5時間攪拌した。室温まで放冷後、約半量となるまで濃縮した後、30wt%水酸化ナトリウム水溶液を30.5g加えてpHを0とした。酢酸エチル(100mL×3)で抽出後、有機相を全量の10%となるまで濃縮した後、トルエン(30mL)を加えて析出した結晶をろ取し、目的のD−5−メルカプトメチル−5−メチルヒダントイン(2.65g)を収率80%で得た。このものの光学純度をHPLC(CHIRALPAK AS(ダイセル社製)、移動相:ヘキサン/イソプロパノール=9/1、流速:1.0ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:35℃、保持時間D体;30.4分、L体;33.8分)により測定したところ、L体は検出されなかった。
1H NMR(400MHz、MeOH−d4)δ:1.32(s、3H)、2.60(d、1.6Hz、1H)、2.72(d、1.6Hz、1H)。
実施例13記載の方法で得られたα−メチル−L−システイン塩酸塩(74.9mg,0.44mmol)を水(3mL)に溶解させ、炭酸水素ナトリウム(197.7mg)を添加し、エタノール3mLを加えた。窒素置換後、クロロ炭酸ベンジルエステル(0.17mL,1.10mmol)を加え、室温で2日間攪拌した。反応液に濃塩酸を添加してpH=1.9とし、酢酸エチルで抽出後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去した。これをPTLC(ヘキサン/酢酸エチル=1/1に少量の酢酸を添加)で精製し1H NMRにて分析したところ、目的物(106mg、収率60%)であることを確認した。これをHPLCにて分析(カラム:CHIRALCEL OD−RH(ダイセル社製)、移動相:リン酸二水素カリウム・リン酸水溶液(pH2.0)/アセトニトリル=6/4、流速:1.0ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:30℃、保持時間19.15分(D)、22.92分(L))した結果、光学純度は98.6%eeであった。
1H NMR(300MHz,D2O)δ:7.30−7.40(m,10H),5.22(s,2H),5.10(s,2H),3.60(s,2H),1.63(s,3H)。
5−t−ブチルチオメチル−5−メチルヒダントインに水酸化ナトリウムと水を加え、所定の温度まで加熱攪拌した。反応液をHPLC分析(カラム:COSMOSIL 5C18−AR(ナカライ社製),移動相:アセトニトリル/10mMリン酸二水素カリウム水溶液=30/70,流速:1.0ml/min,検出波長:210nm,カラム温度:40℃)し、表題化合物の収率を求めた。結果を表1に示す。
5−t−ブチルチオメチル−5−メチルヒダントイン(5g、23mmol)と58%水酸化カリウム水溶液(9.2g)を混合した後、95℃まで加熱し、22時間攪拌した。反応液をHPLC分析した結果、反応収率92%で表題化合物が生成していた。
5−t−ブチルチオメチル−5−メチルヒダントイン(5g、23mmol)、65%水酸化カリウム水溶液(4.4g)及び、トルエン5mlを混合した後、95oCまで加熱し、27時間攪拌した。反応液をHPLC分析した結果、反応収率88%で表題化合物が生成していた。
5−t−ブチルチオメチル−5−メチルヒダントイン(5g、23mmol)、73%水酸化カリウム水溶液(5.7g)及び、トルエン10mlを混合した後、95oCまで加熱し、51時間攪拌した。反応液をHPLC分析した結果、反応収率90%で表題化合物が生成していた。
5,5−ジメチルヒダントイン4.0g、水酸化ナトリウム4.0g、水4.0gを混合し、85〜90℃で3.5時間攪拌した。反応混合物をHPLC(カラム:COSMOSIL 5C18−ARII(ナカライ社製),移動相:アセトニトリル/10mMリン酸二水素カリウム水溶液=20/80,流速:0.5ml/min,検出波長:210nm,カラム温度:40℃)にて分析したところ、標題化合物が3.38g(収率74.1%)生成していた。
1H NMR(300MHz,D2O) δ:1.39(s,6H)。
5−(2−メトキシフェニルメチル)−5−メチル−ヒダントイン4.40g、水酸化ナトリウム2.64g、水3.5gを混合し、94〜96℃で30時間反応させた。反応混合物をHPLC(カラム:COSMOSIL 5C18−ARII(ナカライ社製),移動相:アセトニトリル/10mMリン酸二水素カリウム水溶液=20/80,流速:1.0ml/min,検出波長:210nm,カラム温度:40℃)にて分析したところ、標題化合物と2−アミノ−3−(2−メトキシフェニル)−2−メチルプロピオン酸と原料が78.8:5.5:15.5の面積比で生成していた。
1H NMR(300MHz,D2O) δ:7.32−6.90(m,4H),4.84(s,3H),3.19(d,1H),3.18(d,1H),1.37(s,3H)。
5−ベンジルチオメチル−5−メチル−ヒダントイン5.0g、水酸化カリウム3.6g、水3gを混合し、94〜96℃で12時間反応させた。反応混合物をHPLC(カラム:COSMOSIL 5C18−ARII(ナカライ社製),移動相:アセトニトリル/10mMリン酸二水素カリウム水溶液=30/70,流速:1.0ml/min,検出波長:254nm,カラム温度:40℃)にて分析したところ、標題化合物が3.56g(収率66.4%)生成していた。
1H NMR(300MHz,D2O) δ:7.40−7.30(m,5H),3.78(s,2H),3.15(d,1H),3.14(d,1H),1.41(s,3H)。
5−t−ブチルチオメチル−5−メチルヒダントイン(5g、23mmol)、水酸化バリウム(11.7)、水(10g)を混合した後、95oCまで加熱し、2時間攪拌した。反応液をHPLC分析した結果、反応収率39%で表題化合物が生成していた。
5−t−ブチルチオメチル−5−メチルヒダントイン(純分10.82g、50.0mmol)、水酸化カルシウム(3.70g、50.0mmol)、水(60g)を混合した後、100oCまで加熱し、3.5時間攪拌した。反応液をHPLC分析した結果、反応収率25%で表題化合物が生成していた。
Claims (11)
- 加水分解に用いるアルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、又は、水酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 加水分解反応後に、反応溶液に酸を加えてpHを下げることにより、前記式(8)で表される化合物を晶析し、結晶を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
- 用いる酸が、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸から選ばれる任意の1種あるいは2種以上の混酸であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
- 用いる酸が塩酸であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
- 反応溶液のpHを9.5以下に下げることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の製造方法。
- 硫黄原子の脱保護に用いる酸が、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸から選ばれる任意の1種あるいは2種以上の混酸であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
- 硫黄原子の脱保護に用いる酸が塩酸であることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
- ヒダントイナーゼが、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、バチルス属(Bacillus)、シュードモナス属(Pseudomonas)又はリゾビウム属(Rhizobium)に属する微生物由来である請求項9記載の製造方法。
- ヒダントイナーゼが、アグロバクテリウム・スピーシーズ(Agrobacterium sp.)KNK712(FERM BP−1900)、バチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.)KNK245(FERM BP−4863)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)IFO12996、シュードモナス・スピーシーズ(Pseudomonas sp.)KNK003A(FERM BP−3181)又はリゾビウム・スピーシーズ(Rhizobium sp.)KNK1415由来である請求項9記載の製造方法。
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