以下、図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。尚、以下に説明する幾つかの実施形態において互いに共通する部材については同一符号を付しており、それらについて繰り返しとなる説明は省略する。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態における画像形成装置1の一例を示す概略図である。この画像形成装置1は、いわゆる複合機やMFPなどと呼ばれる装置であり、例えばコピー、ネットワークプリンタ、スキャナ、FAXなどの複数の機能を備えている。画像形成装置1は、その下部に用紙搬送装置2を備えており、その用紙搬送装置2の上部に画像形成部3が設けられている。用紙搬送装置2と画像形成部3は、画像形成装置1において画像形成が行われる場合、すなわちコピー機能、プリンタ機能、FAX機能などが使用される場合に機能する。用紙搬送装置2は、画像形成媒体となる用紙を積載して収容しており、その収容された用紙を1枚ずつ搬送して画像形成部3に給紙する。画像形成部3は、例えば電子写真方式で画像形成を行うものであり、用紙搬送装置2から搬送される用紙に対してトナー像を転写して定着させた後、画像形成部3の上部に設けられた排出口4を介して画像形成が行われた用紙を排出部5に順次排出する。このとき用紙搬送装置2は、画像形成部3のトナー像に一致するタイミングで用紙を画像形成部3に供給する。
図2は、用紙搬送装置2の概略構成を示す図である。用紙搬送装置2は、複数枚の用紙9を積載して収容する給紙部8と、給紙部8に収容された用紙9を所定の搬送路11に沿って1枚ずつ搬送することにより給紙を行う搬送機構部10と、搬送機構部10による用紙9の搬送動作を制御する制御機構部20とを備えている。
搬送機構部10は、給紙部8に収容された最上面の用紙に接触して給紙部8から用紙を送り出すことにより給紙を開始するピックアップローラ12と、ピックアップローラ12によって給紙される用紙を1枚ずつ分離し、最上面の用紙のみを下流側に給紙する給紙ローラ13と、給紙ローラ13よりも下流側の所定位置に設けられた搬送ローラ14と、搬送ローラ14よりも更に下流側の所定位置に設けられたタイミングローラ17とを備えている。ピックアップローラ12が給紙を行うと、最上面の用紙だけでなく、その下の用紙が最上面の用紙と共に移動することがある。給紙ローラ13は最上面の用紙と共に移動してくる用紙を捌くための捌きローラ13aを備えており、捌きローラ13aは最上面以外の用紙が給紙ローラ13よりも下流側に搬送されることを防止する。したがって、ピックアップローラ12によって給紙された用紙は、最上面に位置する用紙のみが給紙ローラ13によって下流側に搬送される。給紙ローラ13によって搬送される用紙は、搬送ローラ14まで到達すると、その後は搬送ローラ14によって搬送される。搬送ローラ14は、用紙が給紙されてからタイミングローラ17に到達するまでのタイミングが所定のタイミングとなるように搬送速度の調整が行われる。タイミングローラ14は、画像形成部3のトナー像に一致するタイミングで用紙を画像形成部3に供給するローラである。
制御機構部20は、コントローラ21と、給紙モータ駆動回路31と、給紙モータ32と、搬送モータ駆動回路41と、搬送モータ42と、タイミングモータ駆動回路51と、タイミングモータ52と、搬送ローラ14近傍の下流側所定位置で用紙を検知する搬送センサ15と、タイミングローラ17近傍の上流側所定位置で用紙を検知するタイミングセンサ16とを備えている。給紙モータ32、搬送モータ42及びタイミングモータ52のそれぞれは、例えばパルスモータなどで構成されている。給紙モータ32は、給紙モータ駆動回路31によって駆動され、ピックアップローラ12及び給紙ローラ13を回転させることにより、給紙部8から給紙を行う。搬送モータ42は、搬送モータ駆動回路41によって駆動され、搬送ローラ14を回転させることにより、用紙をタイミングローラ17まで搬送する。タイミングモータ52は、タイミングモータ駆動回路51によって駆動され、用紙を画像形成部3に搬送する。
コントローラ21は、給紙モータ駆動回路31、搬送モータ駆動回路41及びタイミングモータ駆動回路51のそれぞれに対して指令を与えることにより、搬送機構部10における用紙の搬送動作を制御する。このコントローラ21は、搬送機構部10の各部を制御するための制御手段として設けられたCPU22と、CPU22が搬送機構部10を制御する際に用いられる各種パラメータや数値などを記憶する記憶手段として設けられたメモリ23と、CPU22が時間の計測を行う際のクロック信号などを発生させるタイマ24とを備えている。
用紙搬送装置2において、給紙を開始する際、CPU22は給紙モータ駆動回路31に対して給紙開始を指示する。これにより、給紙モータ32が作動し、ピックアップローラ12及び給紙ローラ13による給紙動作が開始される。このとき給紙される用紙の初期位置には、ばらつきWがある。またピックアップローラ12や給紙ローラ13のスリップ量にもばらつきがある。そのため、給紙を開始してからその給紙された用紙の先端が搬送センサ15に到達するまでのタイミングにはばらつきが生じる。そのため、CPU22は搬送センサ15の出力を監視しており、搬送センサ15が用紙先端を検知するタイミングに応じて搬送モータ駆動回路41に搬送速度に関する指令を与えることにより、搬送ローラ14による用紙の搬送速度を制御する。つまり、CPU22は、搬送センサ15が用紙を検知するタイミングに応じて搬送ローラ14による搬送速度を変更することにより、その用紙が搬送センサ15よりも更に下流側のタイミングセンサ16に到達するタイミングを所定のタイミングとなるように補正するのである。
本実施形態では、用紙先端がタイミングセンサ16に到達するタイミングを補正するため、従来と同様に、搬送ローラ14による用紙の搬送速度を定常速度Vから減速する減速制御を行う。ただし、本実施形態では定常速度Vから減速を行う際に採用し得る減速速度として、複数の減速速度が用意されており、それら複数の減速速度が予めメモリ23に格納されている。そしてCPU22は、搬送機構部10によって給紙部8から用紙の給紙が開始されてから搬送センサ15がその用紙の先端を検知するまでの到達時間Tsを計測し、その到達時間Tsに基づいて搬送ローラ14の速度変更を行うか否かを決定し、速度変更を行う場合にはメモリ23に記憶された複数の減速速度のうちから到達時間Tsに応じて最適となる一の減速速度を選択し、その選択した一の減速速度と到達時間Tsとに基づいて減速時における速度保持時間を算出して搬送ローラ14による搬送動作を制御するように構成されている。尚、以下においては、説明を簡単にするため、定常速度Vから減速する場合の減速速度として、第1減速速度Vd1と第2減速速度Vd2との2つの減速速度が用意されており、それら2つの減速速度のいずれか一方に減速する制御を行う場合を例示する。
図3は、本実施形態における減速制御によって搬送される用紙先端の動作軌跡を示す動作線図である。ピックアップローラ12によって時刻T1に用紙の給紙が開始されるとすると、上述したように用紙の初期位置やピックアップローラ12のスリップ量にばらつきがあるため、用紙先端が最も早く搬送センサ15に到達する場合には図中破線で示す動作線Laを辿る。また用紙先端が最も遅く搬送センサ15に到達する場合には図中破線で示す動作線Lbを辿り、用紙先端が搬送センサ15に到達するタイミングは時刻T2となっている。そのため、ピックアップローラ12が給紙を開始してから用紙先端が搬送センサ15に到達するタイミング(到達時間Ts)には、ばらつきΔTが発生する。
このばらつきΔTを抑制するため、本実施形態では、給紙部8から用紙の給紙が開始されてから搬送センサ15がその用紙の先端を検知するまでの到達時間Tsを評価するための2つの閾値Tth1,Tth2が設定されている。第1閾値Tth1は、第2閾値Tth2よりも小さな値(すなわち、Tth1<Tth2)に設定されている。第2閾値Tth2は、用紙先端が最も遅く搬送センサ15に到達するタイミングよりも短い値(すなわち、Tth2<T2−T1)に設定されている。そして給紙を開始してから搬送センサ15が用紙先端を検知するまでの到達時間Tsが、Ts<Tth1であれば、搬送ローラ14による搬送速度を定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速する制御を行う。また到達時間Tsが、Tth1≦Ts<Tth2であれば、搬送ローラ14による搬送速度を定常速度Vから第2減速速度Vd2に減速する制御を行う。さらに到達時間Tsが、Tth2≦Tsであれば、搬送ローラ14による搬送速度を減速せず、定常速度Vのままで搬送する制御を行う。
本実施形態では、第1減速速度Vd1は第2減速速度Vd2よりも低速に設定される。そのため、給紙された用紙が搬送センサ15に到達するまでの到達時間Tsが、Ts<Tth1であれば、図中実線で示す動作線L1のように、搬送ローラ14による搬送速度が定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速され、その用紙の先端がタイミングセンサ16に到達するまでにその動作線L1が最も遅い動作線Lbに一致するように制御される。また給紙された用紙が搬送センサ15に到達するまでの到達時間Tsが、Tth1≦Ts<Tth2であれば、図中鎖線で示す動作線L2のように、搬送ローラ14による搬送速度が定常速度Vから第2減速速度Vd2に減速され、その用紙の先端がタイミングセンサ16に到達するまでにその動作線L2が最も遅い動作線Lbに一致するように制御される。
図4は搬送ローラ14を駆動する搬送モータ42の速度変化を示す図であり、(a)は搬送モータ42を一時的に定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速させる場合を、(b)は搬送モータ42を一時的に定常速度Vから第2減速速度Vd2に減速させる場合を示している。図4(a)及び(b)に示すように、減速制御は、搬送モータ42を一時的に定常速度Vから第1減速速度Vd1又は第2減速速度Vd2に減速させることで行われる。このとき、図4(a)及び(b)のそれぞれに示すように斜線部分の面積が各減速制御によって補正できる補正量となっている。言い換えると、これら斜線部分の面積が、定常速度Vのままでの搬送と比較した場合の各減速制御によって用紙先端の進み度合いを遅らせることができる量(距離)である。そのため、各減速速度Vd1又はVd2での速度保持時間Tdhを増減させることにより、各減速制御における補正量の調整が行われる。ここで、図4(a)及び(b)のそれぞれに示す速度保持時間Tdhが同じであるとすると、第1減速速度Vd1に減速した場合には、第2減速速度Vd2に減速した場合よりも補正量が大きくなるため、限られた時間(又は距離)の範囲内で用紙先端がタイミングセンサ16に到達するタイミングをより大きく遅らせることができる。
一方、既に述べたようにパルスモータなどで構成される搬送モータの脱調などを防止するため、定常速度Vから第1減速速度Vd1又は第2減速速度Vd2に減速を行った場合、その第1減速速度Vd1又は第2減速速度Vd2を少なくとも一定時間以上保持しなければならない。その一定時間を最小速度保持時間Tdh(min)とすると、この最小速度保持時間Tdh(min)によって各減速制御における補正量の下限値が決定される。図5は、最小速度保持時間Tdh(min)で減速制御を行った場合の搬送モータ42の速度変化を示す図であり、(a)は搬送モータ42を定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速させる場合を、(b)は搬送モータ42を定常速度Vから第2減速速度Vd2に減速させる場合を示している。
まず図5(a)に示すように定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速する場合、第1減速速度Vd1を最小速度保持時間Tdh(min)保持すると、この減速制御によって補正される補正量の下限値は、図中斜線部分の面積S1(min)となる。つまり、定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速する場合、この面積S1(min)よりも小さな量は補正することができない。この面積S1(min)は、第1減速速度Vd1と、定常速度Vと、定常速度Vから第1減速速度Vd1まで減速するのに要する減速遷移時間Tdnと、第1減速速度Vd1で最小限保持しなければならない最小速度保持時間Tdh(min)と、第1減速速度Vd1から再び定常速度Vまで増速させるのに要する増速遷移時間Tunとに基づいて算出することが可能である。またこの面積S1(min)は、定常速度Vのままでの搬送と比較して、第1減速速度Vd1に減速する場合の用紙先端を遅らせることができる補正時間の下限値を規定する。そのため、本実施形態では、搬送ローラ14による搬送速度を定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速する場合、第1減速速度Vd1での速度保持時間Tdhを最小速度保持時間Tdh(min)以上確保することができるように、第1閾値Tth1の値を面積S1(min)に基づいて決定している。すなわち、第1閾値Tth1は、定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速する場合において、第1減速速度Vd1を最小速度保持時間Tdh(min)保持した場合でも、その動作線L1(図3参照)が最も遅い動作線Lbよりも遅くならないように設定されている。図3に示す時間Th12は、面積S1(min)で規定される補正時間の下限値を示しており、第1減速速度Vd1を最小速度保持時間Tdh(min)保持した場合に、用紙先端を遅らせることができる時間である。具体的には、時間Th12=S1(min)/Vとなる。
次に図5(b)に示すように定常速度Vから第2減速速度Vd2に減速する場合、第2減速速度Vd2を最小速度保持時間Tdh(min)保持すると、この減速制御によって補正される補正量の下限値は、図中斜線部分の面積S2(min)となる。つまり、定常速度Vから第2減速速度Vd2に減速する場合、この面積S2(min)よりも小さな量は補正することができない。この面積S2(min)は、第2減速速度Vd2と、定常速度Vと、定常速度Vから第2減速速度Vd2まで減速するのに要する減速遷移時間Tdnと、第2減速速度Vd2で最小限保持しなければならない最小速度保持時間Tdh(min)と、第2減速速度Vd2から再び定常速度Vまで増速させるのに要する増速遷移時間Tunとに基づいて算出することが可能である。またこの面積S2(min)は、定常速度Vのままでの搬送と比較して、第2減速速度Vd2に減速する場合の用紙先端を遅らせることができる補正時間の下限値を規定する。そのため、本実施形態では、搬送ローラ14による搬送速度を定常速度Vから第2減速速度Vd2に減速する場合、第2減速速度Vd2での速度保持時間Tdhを最小速度保持時間Tdh(min)以上確保することができるように、第2閾値Tth2の値を面積S2(min)に基づいて決定している。すなわち、第2閾値Tth2は、定常速度Vから第2減速速度Vd2に減速する場合において、第2減速速度Vd2を最小速度保持時間Tdh(min)保持した場合でも、その動作線L2(図3参照)が最も遅い動作線Lbよりも遅くならないように設定されている。図3に示す時間Th22は、面積S2(min)に対応する補正時間の下限値を示しており、第2減速速度Vd2を最小速度保持時間Tdh(min)保持した場合に、用紙先端を遅らせることができる時間である。具体的には、時間Th22=S2(min)/Vとなる。
また本実施形態においても搬送ローラ14を定常速度Vから第1減速速度Vd1又は第2減速速度Vd2に減速する制御を行った場合には、その用紙の先端がタイミングセンサ16に到達するまでに搬送ローラ14の速度を定常速度Vに復帰させることが必要である。つまり、図4(a)及び(b)のそれぞれに示す減速制御を行った場合、搬送モータ42の速度を定常速度Vに復帰させるタイミングTeは、遅くとも用紙先端がタイミングセンサ16に到達するタイミングとなる。そのため、各減速制御での速度保持時間Tdhは、用紙先端がタイミングセンサ16に到達するときには搬送モータ42の速度を定常速度Vに復帰させることができる時間に設定しなければならず、これによって各減速制御における補正量の上限値が決定される。以下、この補正量の上限値がタイミングセンサ16に用紙先端が到達するタイミングに与える影響(最も遅い動作線Lbからの到達タイミングのずれ)について検討する。
まず図6は、給紙が開始されてから最も早く搬送センサ15に到達する用紙先端の動作軌跡を示す動作線図である。この場合、図6の実線で示す動作線L3のように、給紙された用紙の先端が最も早い動作線Laに一致して搬送センサ15に到達する。給紙が開始されてから搬送センサ15に到達する到達時間Tsは第1閾値Tth1よりも小さいため、この場合、CPU22は、搬送センサ15が用紙先端を検知したタイミングで搬送ローラ14の速度を定常速度Vから最も低速の第1減速速度Vd1に減速制御する。この用紙先端がタイミングセンサ16に到達するまでに搬送速度を第1減速速度Vd1から定常速度Vに復帰させる必要がある。そのため、CPU22はその制約の範囲内で第1減速速度Vd1を保持する速度保持時間Tdhを算出し、定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速した後、速度保持時間Tdhの間その速度を保持し、速度保持時間Tdh経過後、第1減速速度Vd1から定常速度Vに復帰させる。このような減速制御を行うことにより、用紙先端は減速制御を行わない場合と比較してタイミングセンサ16に到達するタイミングが時間Th11だけ遅れることになる。このような減速制御において搬送速度を定常速度Vに復帰させるまでに動作線L3を最も遅い動作線Lbに一致させることができなかった場合、最終的に動作線L3は動作線Lbに対してずれΔX1が発生する。このずれΔX1は、第1減速速度Vd1に減速する場合のずれ最大値となり、ΔX1=ΔT−Th11で表される。尚、ΔT−Th11≦0の場合には速度保持時間Tdhを短く設定することにより、ずれΔX1をほぼ0にすることができる。
次に図7は、給紙が開始されてから搬送センサ15に到達するタイミングが第1閾値Tth1と等しい場合の用紙先端の動作軌跡を示す動作線図である。この場合、用紙先端は図7の実線で示す動作線L4で示す軌跡を辿る。給紙が開始されてから搬送センサ15に到達する到達時間Tsは第1閾値Tth1と等しいため、CPU22は、搬送センサ15が用紙先端を検知したタイミングで搬送ローラ14の速度を定常速度Vから、定常速度Vよりも低速で第1減速速度Vd1よりも高速の第2減速速度Vd2に減速制御する。この用紙先端がタイミングセンサ16に到達するまでに搬送速度を第2減速速度Vd2から再び定常速度Vに復帰させる必要がある。そのため、CPU22はその制約の範囲内で第2減速速度Vd2を保持する速度保持時間Tdhを算出し、定常速度Vから第2減速速度Vd2に減速した後、速度保持時間Tdhの間その速度を保持し、速度保持時間Tdh経過後、第2減速速度Vd2から定常速度Vに復帰させる。このような減速制御を行うことにより、用紙先端は減速制御を行わない場合と比較してタイミングセンサ16に到達するタイミングが時間Th21だけ遅れることになる。このような減速制御において搬送速度を定常速度Vに復帰させるまでに動作線L4を最も遅い動作線Lbに一致させることができなかった場合、最終的に動作線L4は動作線Lbに対してずれΔX2が発生する。このずれΔX2は、第2減速速度Vd2に減速する場合のずれ最大値となり、ΔX2=Th12−Th21で表される。尚、Th12−Th21≦0の場合には速度保持時間Tdhを短く設定することにより、ずれΔX2をほぼ0にすることができる。
次に図8は、給紙が開始されてから搬送センサ15に到達するタイミングが第2閾値Tth2と等しい場合の用紙先端の動作軌跡を示す動作線図である。この場合、用紙先端は図8の実線で示す動作線L5で示す軌跡を辿る。給紙が開始されてから搬送センサ15に到達する到達時間Tsは第2閾値Tth2と等しいため、CPU22は、搬送ローラ14の速度を減速する制御を行わない。そのため、用紙は定常速度Vのままでタイミングセンサ16に到達する。そして最終的に動作線L5は動作線Lbに対してずれΔX3が発生する。このずれΔX3は、減速制御を行わない場合のずれ最大値となり、ΔX3=Th22で表される。
したがって、本実施形態の場合、最終的にタイミングセンサ16に用紙先端が到達するタイミングのずれΔXは図9に示すようになる。
第1減速速度Vd1で減速する場合のずれΔX1を小さくするためには、減速制御によって補正することができる遅れ時間Th11を大きくすれば良い。この遅れ時間Th11は、図4(a)に示した斜線部分の面積に比例するため、遅れ時間Th11を大きくするためには、第1減速速度Vd1をより低速に設定すれば良い。第1減速速度Vd1を低速に設定することにより、図6に示す動作線L3における減速時の傾きが小さくなるため、用紙先端がタイミングセンサ16に到達するまでに動作線L3を最も遅い動作線Lbに一致させることができるようになる。その結果、ずれΔX1をほぼ0に抑えることができる。ただし、この場合、第1減速速度Vd1を低速にすればする程良いというものではない。第1減速速度Vd1を低速に設定しすぎると、上述した第1閾値Tth1を規定する時間Th12=S1(min)/Vが大きくなるからである。それ故、第1減速速度Vd1は、給紙が開始されてから最も早いタイミングで搬送センサ15に到達する用紙先端を時刻T3(最も遅い動作線Lbがタイミングセンサ16に到達するタイミング)に合わせてタイミングセンサ16に到達させることができる程度の速度に設定することが好ましい。
また第2減速速度Vd2で減速する場合のずれΔX2を小さくするためには、減速制御によって補正することができる遅れ時間Th21を大きくすれば良い。この遅れ時間Th21は、図4(b)に示した斜線部分の面積に比例するため、遅れ時間Th21を大きくするためには、第2減速速度Vd2をより低速に設定すれば良い。第2減速速度Vd2を低速に設定することにより、図7に示す動作線L4における減速時の傾きが小さくなるため、第2減速速度Vd2から定常速度Vに復帰させるまでに動作線L4を最も遅い動作線Lbに一致させることができるようになる。その結果、ずれΔX2をほぼ0に抑えることができる。ただし、この場合もまた、第2減速速度Vd2を低速にすればする程良いというものではない。第2減速速度Vd2を低速に設定しすぎると、上述した第2閾値Tth2を規定する時間Th22=S2(min)/Vが大きくなるからである。それ故、第2減速速度Vd2は、給紙が開始されてから第1閾値Tth1とほぼ等しいタイミングで搬送センサ15に到達する用紙先端を、時刻T3(最も遅い動作線Lbがタイミングセンサ16に到達するタイミング)に合わせてタイミングセンサ16に到達させることができる程度の速度に設定することが好ましい。
上記のように第2減速速度Vd2を、給紙が開始されてから第1閾値Tth1とほぼ等しいタイミングで搬送センサ15に到達する用紙先端を、時刻T3(最も遅い動作線Lbがタイミングセンサ16に到達するタイミング)に合わせてタイミングセンサ16に到達させることができる速度に設定することにより、減速制御を行わない場合のずれΔX3を小さくすることができる。すなわち、減速制御を行わない場合のずれΔX3を小さくするためには、時間Th22を小さくすれば良い。上述したようにこの時間Th22は、第2減速速度Vd2を最小速度保持時間Tdh(min)保持した場合に、用紙先端を遅らせることができる時間であり、Th22=S2(min)/Vで表される。したがって、時間Th22を小さくするためには、第2減速速度Vd2をなるべく高速に設定すれば良い。給紙が開始されてから第1閾値Tth1とほぼ等しいタイミングで搬送センサ15に到達する用紙先端を時刻T3に合わせてタイミングセンサ16に到達させることができる第2減速速度Vd2は、図7に示したずれΔX2をほぼ0に抑えることができる最も高速の減速速度であるため、その第2減速速度Vd2を採用すれば減速制御を行わない場合のずれΔX3も小さく抑えることができるようになる。
この場合、減速制御を行わない場合のずれΔX3はほぼ0に抑えることができないが、従来の減速速度が1つしかない場合のずれΔXa又はΔXb(図20、図21参照)と比較すると、本実施形態のずれΔX3はそれよりも小さくなっており、従来よりも高精度に用紙の到達タイミングを補正し、用紙間隔を一定の間隔に安定させることができるようになる。
尚、上述した第1減速速度Vd1及び第2減速速度Vd2は一例である。上記説明では、第1減速速度Vd1で減速する場合のずれΔX1と、第2減速速度Vd2で減速する場合のずれΔX2とをほぼ0に抑制し、減速制御を行わない場合のずれΔX3をなるべく小さく抑制するために第1減速速度Vd1と第2減速速度Vd2とを決定する好ましい例を述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本実施形態では、第1減速速度Vd1で減速する場合のずれΔX1と、第2減速速度Vd2で減速する場合のずれΔX2と、減速制御を行わない場合のずれΔX3とのそれぞれが、従来の減速速度が1つしかない場合のずれΔXa又はΔXbよりも小さくなるため、これらのずれΔX1,ΔX2,ΔX3のうちの少なくとも一つを最小にするように第1減速速度Vd1と第2減速速度Vd2とを決定しても良い。
また最終的に発生し得るずれを最小に抑えるためには、ずれΔX1,ΔX2,ΔX3の全てを最小にする必要があるため、この場合は、ΔX1=ΔX2=ΔX3となるように第1減速速度Vd1と第2減速速度Vd2とを決定しても良い。
上記のようにして第1減速速度Vd1及び第2減速速度Vd2が決定されると、第1減速速度Vd1に基づいて第1閾値Tth1が決定され、第2減速速度Vd2に基づいて第2閾値Tth2が決定される。これら第1減速速度Vd1及び第2減速速度Vd2並びに第1閾値Tth1及び第2閾値Tth2は予めメモリ23に格納されている。
次に、用紙搬送装置2における具体的な動作について説明する。図10は、CPU22が搬送機構部10による用紙の搬送動作を制御する際の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、複数枚の用紙を連続給紙する場合、1枚ずつの用紙に対して行われる処理である。CPU22は、給紙を行うタイミングになると、給紙モータ駆動回路31に給紙開始を指示することにより、給紙モータ32を駆動する(ステップS101)。これにより、ピックアップローラ12及び給紙ローラ13が作動し、給紙部8から用紙9の給紙が開始される。CPU22は、給紙開始を指示すると、タイマ24から入力するクロック信号に基づいて時間計測を開始する(ステップS102)。そして搬送センサ15がオンするまで待機する(ステップS103)。搬送センサ15は給紙された用紙の先端を検知するとオンし、その検知信号をCPU22に出力する。CPU22は、搬送センサ15がオンすると(ステップS103でYES)、ステップS102で開始した時間計測を終了する(ステップS104)。これにより、給紙が開始されてからその用紙の先端が搬送センサ15に到達するまでの到達時間Tsが確定する。
CPU22は、メモリ23から第1閾値Tth1を読み出し、用紙先端の到達時間Tsが第1閾値Tth1よりも小さいか否かを判断する(ステップS105)。ここでYESと判断されると、搬送モータ42の速度を定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速することが決定される。そしてCPU22は、第1減速速度Vd1に減速する場合の速度保持時間Tdhを算出する(ステップS106)。
図11は速度保持時間Tdhの算出方法を説明する図である。速度保持時間Tdhを算出する際、搬送モータ42を定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速する際及び第1減速速度Vd1から再び定常速度Vに復帰させる際の加速度を無視することはできない。ただし、この加速度はCPU22が搬送モータ42を制御する際の一定値として予め設定しておくことができる。そのため、図11に示すように、搬送モータ42を定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速するまでに要する減速遷移時間Tdnの間に用紙先端が遅れる量(距離)はDdnとなり、この値Ddnは定常速度Vと第1減速速度Vd1と減速遷移時間Tdnとに基づいて予め算出しておくことができる。また搬送モータ42を第1定常速度Vd1から定常速度Vに増速(加速)するまでに要する増速遷移時間Tunの間に用紙先端が遅れる量(距離)はDunとなり、この値Dunもまた、定常速度Vと第1減速速度Vd1と増速遷移時間Tunとに基づいて予め算出しておくことができる。
したがって、第1減速速度Vd1で速度保持時間Tdhを保持した場合、この減速制御で用紙先端を遅らせることができる補正量Sは、次式(1)の通りとなる。
S=Ddn+Dun+(V−Vd1)・Tdh ・・・式(1)
上記式(1)によって算出される補正量Sで補正時間を算出すると、その補正時間Thは次式(2)で表される。
Th=(Ddn+Dun+(V−Vd1)・Tdh)/V ・・・式(2)
上記式(2)で表される補正時間Thは、この減速制御によって用紙先端を遅らせるべき時間に相当する。図3において時刻T1=0とすると、減速制御によって用紙先端を遅らせるべき時間は(T2−Ts)で表されるため、次式(3)が成立する。
T2−Ts=Th ・・・式(3)
したがって、上記式(2)と(3)から速度保持時間Tdhを算出すると、次式(4)の通りとなる。
Tdh=(V・(T2−Ts)−Ddn−Dun)/(V−Vd1) ・・・式(4)
上記式(4)の右辺に計測した到達時間Tsの他、各値を代入することにより、第1減速速度Vd1に減速する場合の到達時間Tsに応じた速度保持時間Tdhを算出することができる。したがって、ステップS106では、CPU22が計測した到達時間Tsに基づいて上記式(4)の演算を行うことにより、速度保持時間Tdhを算出する。尚、第1減速速度Vd1に減速する場合の到達時間Tsと速度保持時間Tdhとの関係を予め算出しておき、その算出したデータをテーブルデータとしてメモリ23に格納しておいても良い。この場合、CPU22は第1減速速度Vd1に減速する場合の到達時間Tsに応じた速度保持時間Tdhをメモリ23から即座に取得することができるので、処理効率が向上する。そして、第1減速速度Vd1に減速する場合の速度保持時間Tdhが算出されると、ステップS109に進み、CPU22は搬送モータ42の減速処理を実行する。
一方、ステップS105でNOと判断された場合、CPU22は、メモリ23から第2閾値Tth2を読み出し、用紙先端の到達時間Tsが第2閾値Tth2よりも小さいか否かを判断する(ステップS107)。ここでYESと判断されると、搬送モータ42の速度を定常速度Vから第2減速速度Vd2に減速することが決定される。そしてCPU22は、第2減速速度Vd2に減速する場合の速度保持時間Tdhを算出する(ステップS108)。
第2減速速度Vd2に減速する場合の速度保持時間Tdhの算出方法もまた、上述した算出方法と同様である。すなわち、第2減速速度Vd2に減速する場合の速度保持時間Tdhは、次式(5)で表される。
Tdh=(V・(T2−Ts)−Ddn−Dun)/(V−Vd2) ・・・式(5)
したがって、上記式(5)の右辺に計測した到達時間Tsの他、各値を代入することにより、第2減速速度Vd2に減速する場合の到達時間Tsに応じた速度保持時間Tdhを算出する。尚、この場合においても、到達時間Tsと速度保持時間Tdhとの関係を予め算出しておき、その算出したデータをテーブルデータとしてメモリ23に格納しておいても良い。そして第2減速速度Vd2に減速する場合の速度保持時間Tdhが算出されると、ステップS109に進み、CPU22は搬送モータ42の減速処理を実行する。
また、ステップS107でNOと判断された場合(すなわち、到達時間Tsが第2閾値Tth2よりも大きい場合)、CPU22は、搬送モータ42の減速処理を行うことなく、搬送モータ42を定常速度Vに保持したまま用紙の搬送制御を行う(ステップS110)。
図12は、ステップS109の搬送モータの減速処理の詳細を示すフローチャートである。CPU22は、搬送モータ42の減速処理を行う場合、減速速度が第1減速速度Vd1であるか否かを判定する(ステップS120)。そしてYESであれば、CPU22は、搬送モータ42の速度を第1減速速度Vd1に減速する要求を搬送モータ駆動回路41に出力する(ステップS121)。これにより、搬送モータ駆動回路41は、搬送モータ42を一定の加速度で第1減速速度Vd1に減速していく。
またステップS120においてNOと判断すると、CPU22は、搬送モータ42の速度を第2減速速度Vd2に減速する要求を搬送モータ駆動回路41に出力する(ステップS122)。これにより、搬送モータ駆動回路41は、搬送モータ42を一定の加速度で第2減速速度Vd2に減速していく。
CPU22は搬送モータ駆動回路41を監視しており、搬送モータ42の速度が要求した減速速度に到達するまで待機する(ステップS123)。そして要求した減速速度に到達すると、CPU22は、ステップS106又はS108で算出した速度保持時間Tdhを設定し、時間計測を開始する(ステップS124)。そして速度保持時間Tdhが経過するまで待機し(ステップS125)、速度保持時間Tdhが経過すると、CPU22は搬送モータ42の速度を定常速度Vに増速する要求を搬送モータ駆動回路41に出力する(ステップS126)。これにより、搬送モータ駆動回路41は、搬送モータ42を一定の加速度で定常速度Vに増速していく。その後、搬送モータ42の速度が定常速度Vに到達すれば、処理を終了する(ステップS127)。
以上のような処理により、給紙部8に収容された用紙の給紙を開始してからその用紙が搬送センサ15に到達するまでの到達時間Tsが第1閾値Tth1よりも小さい場合には、搬送モータ42の速度が定常速度Vから第1減速速度Vd1に減速される。また用紙の到達時間Tsが第1閾値Tth1よりも大きく、かつ第2閾値Tth2よりも小さい場合には、搬送モータ42の速度が定常速度Vから第2減速速度Vd2に減速される。このような減速制御により、給紙された用紙の先端がタイミングセンサ16に到達するタイミングがほぼ一定のタイミングとなるように補正され、用紙間隔がほぼ一定の間隔で安定する。
その後、CPU22はタイミングセンサ16で検知される用紙の到達タイミングに基づいて画像形成部3のトナー像に一致させることができるタイミングを決定し、その決定したタイミングでタイミングモータ52を駆動させることにより、タイミングローラ17まで到達した用紙を画像形成部3に供給する。
以上のように、本実施形態では、給紙部8から給紙を開始した用紙が所定時間よりも早く搬送センサ15に到達した場合に、搬送ローラ14による搬送速度を減速することにより、その用紙が搬送センサ15よりも下流のタイミングセンサ16に到達するタイミングがほぼ一定となるように制御する。この減速制御のために、本実施形態では、第1減速速度Vd1と第2減速速度Vd2の2つの減速速度が設定されている。そして給紙開始から用紙が搬送センサ15に到達するまでの到達時間Tsに応じて第1減速速度Vd1と第2減速速度Vd2の2つの減速速度のうちから最適な減速速度を選択して減速制御を行うため、その用紙がタイミングセンサ16に到達するタイミングのばらつき(ずれ)を従来よりも小さく抑えることができる。また減速制御を行わない場合でも、その用紙がタイミングセンサ16に到達するタイミングのばらつき(ずれ)は従来よりも小さくなる。
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、給紙部8から給紙を開始した用紙が所定時間よりも早く搬送センサ15に到達した場合に、搬送ローラ14による搬送速度を減速することにより、その用紙が搬送センサ15よりも下流のタイミングセンサ16に到達するタイミングがほぼ一定となるように制御する形態について説明した。これに対し、本実施形態では、給紙部8から給紙を開始した用紙が所定時間よりも遅く搬送センサ15に到達した場合に、搬送ローラ14による搬送速度を定常速度よりも高速の速度に増速(加速)することにより、その用紙が搬送センサ15よりも下流のタイミングセンサ16に到達するタイミングがほぼ一定となるように制御する形態について説明する。尚、本実施形態でも、画像形成装置1の構成及び用紙搬送装置2の構成は第1の実施の形態で説明したものと同様である。
図13は、本実施形態における増速制御によって搬送される用紙先端の動作軌跡を示す動作線図である。ピックアップローラ12によって時刻T1に用紙の給紙が開始されるとすると、上述したように用紙の初期位置やピックアップローラ12のスリップ量にばらつきがあるため、用紙先端が最も早く搬送センサ15に到達する場合には図中破線で示す動作線Laを辿り、用紙先端が搬送センサ15に到達するタイミングは時刻T2となる。また用紙先端が最も遅く搬送センサ15に到達する場合には図中破線で示す動作線Lbを辿り、用紙先端が搬送センサ15に到達するタイミングは時刻T3となっている。そのため、ピックアップローラ12が給紙を開始してから用紙先端が搬送センサ15に到達するタイミング(到達時間Ts)には、ばらつきΔTが発生する。
このばらつきΔTを抑制するため、本実施形態では、給紙部8から用紙の給紙が開始されてから搬送センサ15がその用紙の先端を検知するまでの到達時間Tsを評価するための2つの閾値Tth1,Tth2が設定されている。第1閾値Tth1は、第2閾値Tth2よりも大きな値(すなわち、Tth1>Tth2)に設定されている。第2閾値Tth2は、用紙先端が最も早く搬送センサ15に到達するタイミングよりも長い値(すなわち、Tth2>T2−T1)に設定されている。そして給紙を開始してから搬送センサ15が用紙先端を検知するまでの到達時間Tsが、Ts>Tth1であれば、搬送ローラ14による搬送速度を定常速度Vから第1増速速度Vu1に増速する制御を行う。また到達時間Tsが、Tth2<Ts≦Tth1であれば、搬送ローラ14による搬送速度を定常速度Vから第2増速速度Vu2に増速する制御を行う。さらに到達時間Tsが、Ts≦Tth2であれば、搬送ローラ14による搬送速度を増速せず、定常速度Vのままで搬送する制御を行う。
本実施形態では、第1増速速度Vu1は第2増速速度Vu2よりも高速に設定される。そのため、給紙された用紙が搬送センサ15に到達するまでの到達時間Tsが、Ts>Tth1であれば、図中実線で示す動作線L7のように、搬送ローラ14による搬送速度が定常速度Vから第1増速速度Vu1に増速され、その用紙の先端がタイミングセンサ16に到達するまでにその動作線L7が最も早い動作線Laに一致するように制御される。また給紙された用紙が搬送センサ15に到達するまでの到達時間Tsが、Tth2<Ts≦Tth1であれば、図中鎖線で示す動作線L6のように、搬送ローラ14による搬送速度が定常速度Vから第2増速速度Vu2に増速され、その用紙の先端がタイミングセンサ16に到達するまでにその動作線L6が最も早い動作線Laに一致するように制御される。
第1増速速度Vu1は第2増速速度Vu2よりも高速であるため、第1増速速度Vu1に増速する場合には、第2増速速度Vu2に増速する場合よりも補正量が大きくなり、限られた時間(又は距離)の範囲内で用紙先端がタイミングセンサ16に到達するタイミングを大幅に早めることができる。
また減速制御の場合と同様に、パルスモータなどで構成される搬送モータ42の脱調などを防止するため、定常速度Vから第1増速速度Vu1又は第2増速速度Vu2に増速を行った場合、その第1増速速度Vu1又は第2増速速度Vu2を少なくとも一定時間以上保持しなければならない。この一定時間を最小速度保持時間Tdh(min)とすると、第1増速速度Vu1及び第2増速速度Vu2のそれぞれに増速した場合に補正することができる補正量の下限値は、この最小速度保持時間Tdh(min)によって決定される。
図14は、最小速度保持時間Tdh(min)で増速制御を行った場合の搬送モータ42の速度変化を示す図であり、(a)は搬送モータ42を定常速度Vから第1増速速度Vu1に増速させる場合を、(b)は搬送モータ42を定常速度Vから第2増速速度Vu2に増速させる場合を示している。
まず図14(a)に示すように定常速度Vから第1増速速度Vu1に増速する場合、第1増速速度Vu1を最小速度保持時間Tdh(min)保持すると、この増速制御によって補正される補正量の下限値は、図中斜線部分の面積S1(min)となる。つまり、定常速度Vから第1増速速度Vu1に増速する場合、この面積S1(min)よりも小さな量は補正することができない。この面積S1(min)は、第1増速速度Vu1と、定常速度Vと、定常速度Vから第1増速速度Vu1まで増速するのに要する増速遷移時間Tunと、第1増速速度Vu1で最小限保持しなければならない最小速度保持時間Tdh(min)と、第1増速速度Vu1から再び定常速度Vまで減速させるのに要する減速遷移時間Tdnとに基づいて算出することが可能である。またこの面積S1(min)は、定常速度Vのままでの搬送と比較して、第1増速速度Vu1に増速する場合の用紙先端を早く進めることができる補正時間の下限値を規定する。具体的には、この補正時間の下限値は、S1(min)/Vとして表される。そのため、本実施形態では、搬送ローラ14による搬送速度を定常速度Vから第1増速速度Vu1に増速する場合、第1増速速度Vu1での速度保持時間Tdhを最小速度保持時間Tdh(min)以上確保することができるように、第1閾値Tth1の値を面積S1(min)に基づいて決定している。具体的には、第1閾値Tth1=(T2−T1)+S1(min)/Vである。これにより、第1閾値Tth1は、定常速度Vから第1増速速度Vu1に増速する場合において、第1増速速度Vu1を最小速度保持時間Tdh(min)保持した場合でも、その動作線L7(図13参照)が最も早い動作線Laよりも早くならないように設定される。
次に図14(b)に示すように定常速度Vから第2増速速度Vu2に増速する場合、第2増速速度Vu2を最小速度保持時間Tdh(min)保持すると、この増速制御によって補正される補正量の下限値は、図中斜線部分の面積S2(min)となる。つまり、定常速度Vから第2増速速度Vu2に増速する場合、この面積S2(min)よりも小さな量は補正することができない。この面積S2(min)は、第2増速速度Vu2と、定常速度Vと、定常速度Vから第2増速速度Vu2まで増速するのに要する増速遷移時間Tunと、第2増速速度Vu2で最小限保持しなければならない最小速度保持時間Tdh(min)と、第2増速速度Vu2から再び定常速度Vまで減速させるのに要する減速遷移時間Tdnとに基づいて算出することが可能である。またこの面積S2(min)は、定常速度Vのままでの搬送と比較して、第2増速速度Vu2に増速する場合の用紙先端を早く進めることができる補正時間の下限値を規定する。具体的には、この補正時間の下限値は、S2(min)/Vとして表される。そのため、本実施形態では、搬送ローラ14による搬送速度を定常速度Vから第2増速速度Vu2に増速する場合、第2増速速度Vu2での速度保持時間Tdhを最小速度保持時間Tdh(min)以上確保することができるように、第2閾値Tth2の値を面積S2(min)に基づいて決定している。具体的には、第2閾値Tth2=(T2−T1)+S2(min)/Vである。これにより、第2閾値Tth2は、定常速度Vから第2増速速度Vu2に増速する場合において、第2増速速度Vu2を最小速度保持時間Tdh(min)保持した場合でも、その動作線L6(図13参照)が最も早い動作線Laよりも早くならないように設定される。
第1増速速度Vu1の値については、例えば、給紙が開始されてから最も遅いタイミング(時刻T3)で搬送センサ15に到達する用紙先端を、時刻T4(最も早い動作線Laがタイミングセンサ16に到達するタイミング)に合わせてタイミングセンサ16に到達させることができる速度に設定することが好ましい。また第2増速速度Vu2の値については、例えば、給紙が開始されてから第1閾値Tth1とほぼ等しいタイミングで搬送センサ15に到達する用紙先端を、時刻T4(最も早い動作線Laがタイミングセンサ16に到達するタイミング)に合わせてタイミングセンサ16に到達させることができる速度に設定することが好ましい。
そして第1増速速度Vu1及び第2増速速度Vu2並びに第1閾値Tth1及び第2閾値Tth2は予めメモリ23に格納される。
次に、本実施形態の用紙搬送装置2における具体的な動作について説明する。図15及び図16は、CPU22が搬送機構部10による用紙の搬送動作を制御する際の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理もまた、複数枚の用紙を連続給紙する場合、1枚ずつの用紙に対して行われる処理である。CPU22は、給紙を行うタイミングになると、給紙モータ駆動回路31に給紙開始を指示することにより、給紙モータ32を駆動する(ステップS201)。これにより、ピックアップローラ12及び給紙ローラ13が作動し、給紙部8から用紙9の給紙が開始される。CPU22は、給紙開始を指示すると、時間計測を開始し(ステップS202)、搬送センサ15がオンするまで待機する(ステップS203)。搬送センサ15がオンすると(ステップS203でYES)、CPU22はステップS202で開始した時間計測を終了する(ステップS204)。これにより、給紙が開始されてからその用紙の先端が搬送センサ15に到達するまでの到達時間Tsが確定する。
CPU22は、メモリ23から増速制御のために設定された第1閾値Tth1を読み出し、用紙先端の到達時間Tsが第1閾値Tth1よりも大きいか否かを判断する(ステップS205)。ここでYESと判断されると、搬送モータ42の速度を定常速度Vから第1増速速度Vu1に増速することが決定される。そしてCPU22は、第1増速速度Vu1に増速する場合の速度保持時間Tdhを算出する(ステップS206)。ここでは、第1の実施の形態で説明した減速制御の場合と同様にして速度保持時間Tdhが算出される。
すなわち、図13において時刻T1=0と仮定し、搬送モータ42を定常速度Vから第1増速速度Vu1に増速するまでに要する増速遷移時間の間に用紙先端を進めることができる量(距離)をDun、搬送モータ42を第1増速速度Vu1から定常速度Vに減速するまでに要する増速遷移時間の間に用紙先端を進めることができる量(距離)をDdnとすると、速度保持時間Tdhは、次式(6)で表される。
Tdh=(V・(Ts−T2)−Ddn−Dun)/(Vu1−V) ・・・式(6)
上記式(6)の右辺に計測した到達時間Tsの他、各値を代入することにより、第1増速速度Vu1に増速する場合の到達時間Tsに応じた速度保持時間Tdhを算出することができる。そして第1増速速度Vu1に増速する場合の速度保持時間Tdhが算出されると、ステップS209に進み、CPU22は搬送モータ42の増速処理を実行する。
一方、ステップS205でNOと判断された場合、CPU22は、メモリ23から第2閾値Tth2を読み出し、用紙先端の到達時間Tsが第2閾値Tth2よりも大きいか否かを判断する(ステップS207)。ここでYESと判断されると、搬送モータ42の速度を定常速度Vから第2増速速度Vu2に増速することが決定される。そしてCPU22は、第2増速速度Vu2に増速する場合の速度保持時間Tdhを算出する(ステップS208)。すなわち、第2増速速度Vu2に増速する場合の速度保持時間Tdhは、次式(7)で表される。
Tdh=(V・(Ts−T2)−Ddn−Dun)/(Vu2−V) ・・・式(7)
したがって、上記式(7)の右辺に計測した到達時間Tsの他、各値を代入することにより、第2増速速度Vu2に増速する場合の到達時間Tsに応じた速度保持時間Tdhを算出することができる。そして第2増速速度Vu2に増速する場合の速度保持時間Tdhが算出されると、ステップS209に進み、CPU22は搬送モータ42の増速処理を実行する。
また、ステップS207でNOと判断された場合(すなわち、到達時間Tsが第2閾値Tth2よりも小さい場合)、CPU22は、搬送モータ42の増速処理を行うことなく、搬送モータ42を定常速度Vに保持したまま用紙の搬送制御を行う(ステップS210)。
図16は、ステップS209の搬送モータの増速処理の詳細を示すフローチャートである。CPU22は、搬送モータ42の増速処理を行う場合、増速速度が第1増速速度Vu1であるか否かを判定する(ステップS220)。そしてYESであれば、CPU22は、搬送モータ42の速度を第1増速速度Vu1に増速する要求を搬送モータ駆動回路41に出力する(ステップS221)。これにより、搬送モータ駆動回路41は、搬送モータ42を一定の加速度で第1増速速度Vu1に増速していく。
またステップS220においてNOと判断すると、CPU22は、搬送モータ42の速度を第2増速速度Vu2に増速する要求を搬送モータ駆動回路41に出力する(ステップS222)。これにより、搬送モータ駆動回路41は、搬送モータ42を一定の加速度で第2増速速度Vu2に増速していく。
そしてCPU22は搬送モータ42の速度が要求した増速速度に到達するまで待機し(ステップS223)、要求した増速速度に到達すると(ステップS223でYES)、ステップS206又はS208で算出した速度保持時間Tdhを設定し、時間計測を開始する(ステップS224)。そして速度保持時間Tdhが経過するまで待機し(ステップS225)、速度保持時間Tdhが経過すると、CPU22は搬送モータ42の速度を定常速度Vに減速する要求を搬送モータ駆動回路41に出力する(ステップS226)。これにより、搬送モータ駆動回路41は、搬送モータ42を一定の加速度で定常速度Vまで減速していく。その後、搬送モータ42の速度が定常速度Vに到達すれば、処理を終了する(ステップS227)。
以上のような処理により、給紙部8に収容された用紙の給紙を開始してからその用紙が搬送センサ15に到達するまでの到達時間Tsが第1閾値Tth1よりも大きい場合には、搬送モータ42の速度が定常速度Vから第1増速速度Vu1に増速される。また用紙の到達時間Tsが第1閾値Tth1よりも小さく、かつ第2閾値Tth2よりも大きい場合には、搬送モータ42の速度が定常速度Vから第2増速速度Vu2に増速される。このような増速制御により、給紙された用紙の先端がタイミングセンサ16に到達するタイミングがほぼ一定のタイミングとなるように補正され、用紙間隔がほぼ一定の間隔で安定する。
その後、CPU22はタイミングセンサ16で検知される用紙の到達タイミングに基づいて画像形成部3のトナー像に一致させることができるタイミングを決定し、その決定したタイミングでタイミングモータ52を駆動させることにより、タイミングローラ17まで到達した用紙を画像形成部3に供給する。
以上のように、本実施形態では、給紙部8から給紙を開始した用紙が所定時間よりも遅く搬送センサ15に到達した場合に、搬送ローラ14による搬送速度を増速(加速)することにより、その用紙が搬送センサ15よりも下流のタイミングセンサ16に到達するタイミングがほぼ一定となるように制御する。この増速制御のために、本実施形態では、第1増速速度Vu1と第2増速速度Vu2の2つの増速速度が設定されている。そして給紙開始から用紙が搬送センサ15に到達するまでの到達時間Tsに応じて第1増速速度Vu1と第2増速速度Vu2の2つの増速速度のうちから最適な増速速度を選択して増速制御を行うため、その用紙がタイミングセンサ16に到達するタイミングのばらつき(ずれ)を従来よりも小さく抑えることができる。また増速制御を行わない場合でも、その用紙がタイミングセンサ16に到達するタイミングのばらつき(ずれ)は従来よりも小さくなる。
(変形例)
以上、本発明に関する幾つか実施の形態について説明したが、本発明は上述した内容に限定されるものではない。つまり、本発明には上述した内容の他、種々の変形例が適用可能である。
例えば、上述した第1の実施の形態では、定常速度Vから減速する際の減速速度として、主として、第1減速速度Vd1と第2減速速度Vd2の2つの減速速度が設定されている場合を例示した。しかし、減速速度の設定数は2つに限定するものではなく、3つ以上であっても良い。減速速度の設定数を3つ以上にした場合には、最終的に用紙先端がタイミングセンサ16に到達するタイミングのばらつきをより小さく抑えることができるようになる。この場合、nを3以上の整数とすると、複数の減速速度は、Vd1<Vd2<…<Vdn<Vとして設定され、減速制御を行うか否かを判定するための複数の閾値は、Tth1<Tth2<…<Tthnとして設定される。そして給紙された用紙が搬送センサ15に到達した到達時間Tsが、Ts<Tth1であれば定常速度Vから減速速度Vd1に減速する減速制御を行い、Tth1≦Ts<Tth2であれば定常速度Vから減速速度Vd2に減速する減速制御を行う。以下同様の判定を行っていき、Tth(n−1)≦Ts<Tthnであれば定常速度Vから減速速度Vdnに減速する減速制御を行い、Tthn≦Tsであれば減速制御を行わずに、定常速度Vのままで用紙を搬送する。このような構成とすることにより、従来と比較して著しくばらつきの少ないタイミング調整(すなわち、用紙間隔の補正)が行えるようになる。
また上述した第2の実施の形態では、定常速度Vから増速する際の増速速度として、主として、第1増速速度Vu1と第2増速速度Vu2の2つの増速速度が設定されている場合を例示した。しかし、増速速度の設定数は2つに限定するものではなく、3つ以上であっても良い。増速速度の設定数を3つ以上にした場合には、最終的に用紙先端がタイミングセンサ16に到達するタイミングのばらつきをより小さく抑えることができるようになる。この場合、nを3以上の整数とすると、複数の増速速度は、Vu1>Vu2>…>Vun>Vとして設定され、増速制御を行うか否かを判定するための複数の閾値は、Tth1>Tth2>…>Tthnとして設定される。そして給紙された用紙が搬送センサ15に到達した到達時間Tsが、Ts>Tth1であれば定常速度Vから増速速度Vu1に増速する増速制御を行い、Tth1≧Ts>Tth2であれば定常速度Vから増速速度Vu2に増速する増速制御を行う。以下同様の判定を行っていき、Tth(n−1)≧Ts>Tthnであれば定常速度Vから増速速度Vunに増速する増速制御を行い、Tthn≧Tsであれば増速制御を行わずに、定常速度Vのままで用紙を搬送する。このような構成とすることにより、従来と比較して著しくばらつきの少ないタイミング調整(すなわち、用紙間隔の補正)が行えるようになる。
尚、上述の実施形態では、画像形成装置1として複合機やMFPなどを例示したが、本発明における画像形成装置はそれに限定するものではない。すなわち、本発明において画像形成装置は、プリンタ機能のみを備えたプリンタ専用装置であっても良いし、コピー機能のみを備えたコピー専用装置であっても良い。またFAX機能のみを備えたFAX専用装置であっても構わない。