以下、本発明の実施の形態に係る印刷装置および連続印刷のための印刷媒体の搬送制御方法を、図面に基づいて説明する。印刷装置は、インクジェットプリンタを例として説明する。連続印刷のための印刷媒体の搬送制御方法は、インクジェットプリンタの動作の一部として説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の機構構造の要部を示す側面図である。
インクジェットプリンタ1は、給紙トレイとしてのリア給紙トレイ2と、フロント給紙トレイ3と、を有する。リア給紙トレイ2は、インクジェットプリンタ1の背面部に上方へ突出するように配設される。フロント給紙トレイ3は、インクジェットプリンタ1の底部に略水平に配設される。リア給紙トレイ2およびフロント給紙トレイ3には、たとえば普通紙、光沢紙、写真用紙、はがき用紙、L判写真用紙などの各種の印刷媒体Pを載置することができる。
リア給紙トレイ2およびフロント給紙トレイ3に載置された印刷媒体Pは、所定の印刷媒体搬送経路により搬送され、インクジェットプリンタ1の前面側に配設される図示外の排紙トレイへ搬送される。図1中には、印刷媒体の搬送方向としてのリア用印刷媒体搬送経路4を一点鎖線により図示している。このリア用印刷媒体搬送経路4にそって印刷媒体Pの搬送方向を規制するガイド部材5や、プラテン6などが配設される。
インクジェットプリンタ1は、リア給紙トレイ2に載置されている印刷媒体Pを搬送するための機構部材として、たとえば上流側搬送ローラとしてのLD(ロード)ローラ11、LD従動ローラ12、ホッパ13、下流側搬送ローラとしてのPF(ペーパフィード)ローラ14、PF従動ローラ15、排紙ローラ16、排紙従動ローラ17などを有する。また、インクジェットプリンタ1は、この他にも、フロント給紙トレイ3に載置されている印刷媒体Pを搬送するための機構部材として、第二LDローラ18などを有する。
LDローラ11は、リア給紙トレイ2の下端縁に隣接して回転可能に配設される。LDローラ11は、図1の紙面に垂直な方向を軸とするローラ軸11aと、その周囲に周設されたゴム材11bと、を有する。LDローラ11の外周は、略円周形状である。LDローラ11は、後述するASF(オートシートフィーダ)モータ32の駆動により、回転する。
LD従動ローラ12は、LDローラ11と略同じ幅の円柱形状を有し、LDローラ11の下側に回転可能に配設される。LD従動ローラ12は、後述するASFサブモータ33の駆動により、LDローラ11と接離する向きで移動する。LDローラ11とLD従動ローラ12とは、リア給紙トレイ2の下端縁付近の位置において接する。LDローラ11とLD従動ローラ12とは、所定の圧接力により圧接される。
ホッパ13は、リア給紙トレイ2の下部側が揺動するように配設される。ホッパ13は、LD従動ローラ12がLDローラ11と圧接される場合、LDローラ11へ近接するように姿勢を変化させ、LD従動ローラ12がLDローラ11から離間する場合、LDローラ11から離間するように姿勢を変化させる。リア給紙トレイ2に印刷媒体Pが載置されている場合、ホッパ13がLDローラ11に近接することで、最も上にある印刷媒体Pの下端部がLDローラ11に当たる。これにより、リア給紙トレイ2上の印刷媒体Pは、ホッパ13とLDローラ11との間に挟まれる。
PFローラ14は、ガイド部材5とプラテン6との間において、リア用印刷媒体搬送経路4の下側に配設される。PFローラ14は、金属材料を円柱形状に形成したものであり、その円柱軸方向が図1の紙面と略垂直となる向きで回転可能に配設される。また、円柱形状の金属棒の外周面には、すべり止め用のセラミック製の粒子が凸凹を形成するように固着している。これにより、PFローラ14は、後述するPFモータ31の駆動により、回転する。
PF従動ローラ15は、PFローラ14と略同じ幅の円柱形状を有し、PFローラ14の上側に回転可能に配設される。PF従動ローラ15は、PF従動ローラ用アーム19により保持されている。PF従動ローラ用アーム19には、図示外の巻バネにより図1で下向きの付勢力が作用している。PF従動ローラ15は、強い圧接力によりPFローラ14に圧接される。
これにより、圧接状態にあるPFローラ14およびPF従動ローラ15による印刷媒体Pの搬送能力(保持力などを含むトータルでの搬送能力)は、圧接状態にあるLDローラ11およびLD従動ローラ12による印刷媒体Pの搬送能力より高くなる。1枚の印刷媒体Pが、PFローラ14およびPF従動ローラ15により挟持され、且つ、LDローラ11およびLD従動ローラ12により挟持されている場合、印刷媒体Pの搬送量は、PFローラ14およびPF従動ローラ15による搬送制御にしたがったものとなる。
排紙ローラ16は、プラテン6と図示外の排紙トレイのとの間において、リア用印刷媒体搬送経路4の下側に回転可能に配設される。排紙ローラ16は、後述するPFモータ31の駆動により、回転する。
排紙従動ローラ17は、排紙ローラ16の上側に回転可能に配設される。排紙従動ローラ17は、弱い圧接力により排紙ローラ16に圧接される。
また、インクジェットプリンタ1は、以上のような印刷媒体Pの搬送機構の他にも、キャリッジ21などの、印刷媒体Pに対してインクを吐出して印字するための印字機構を有する。
キャリッジ21は、プラテン6の上方において、図1の紙面に垂直な方向へ移動可能に配設される。キャリッジ21の内部には、たとえば図示外のインタンクなどが配設される。キャリッジ21は、図示外のCR(キャリッジ)モータの駆動により、図1の紙面に垂直な向きへ移動する。
キャリッジ21の下面には、プラテン6と対向させて記録ヘッド22が配設される。記録ヘッド22は、複数のインク吐出ノズル23を有する。複数のインク吐出ノズル23には、インタンクからインクが供給される。複数のインク吐出ノズル23は、たとえば印刷媒体Pの搬送方向に沿って配列して形成される。各インク吐出ノズル23内には、図示外のピエゾ素子が配設される。ピエゾ素子は、印加される電圧に応じて変形する。ピエゾ素子が変形すると、その変形量に応じた量のインクがインク吐出ノズル23から押出され、インク吐出ノズル23から吐出される。印刷媒体Pの、プラテン6と記録ヘッド22との間にある部位には、複数のインク吐出ノズル23から吐出されたインクが付着する。
キャリッジ21を図1の紙面に垂直な向きで移動させている間に、複数のピエゾ素子に対して印刷データに応じた波形の電圧を印加することで、印刷媒体Pの、プラテン6と記録ヘッド22との間にある部位には、印刷データに応じてインクを付着させることができる。この印字処理と、印刷媒体Pを所定量で送る紙送り処理とを繰り返し実行することで、インクジェットプリンタ1は、印刷媒体Pに、印刷データに基づく画像を印刷することができる。
図2は、図1のインクジェットプリンタ1の制御系の一部の構成を示すブロック図である。なお、図2の上部には、リア用印刷媒体搬送経路4と、その経路に沿って配設される各種の機構部材とが模式的に図示されている。リア用印刷媒体搬送経路4には、制御用基準位置として、ページ間制御開始位置、給紙スタンバイ位置、印字開始位置などが設定されている。
ページ間制御開始位置は、LDローラ11とPFローラ14との間に設定される。ページ間制御開始位置は、リア給紙トレイ2に載置された複数の印刷媒体Pを連続的に搬送する場合において、その連続して搬送される2枚の印刷媒体Pの間に、所定のページ間ギャップ長(間隔)を確保する制御を実行するための基準位置である。連続的に搬送される後の印刷媒体Pは、その先端縁がこのページ間制御開始位置に到達すると、搬送が停止される。連続的に搬送される先の印刷媒体Pの後端縁がページ間制御開始位置から所定のページ間ギャップ長により離れると、連続的に搬送される後の印刷媒体Pの搬送が再開される。このようなページ間制御により、連続的に搬送される複数の印刷媒体Pの間に、ページ間ギャップ長の間隔を確保することができる。
給紙スタンバイ位置は、通常の給紙処理において、印刷媒体Pの先端縁の停止目標位置である。給紙スタンバイ位置は、記録ヘッド22に形成される複数のインク吐出ノズル23のうち、印刷媒体Pの搬送方向の最も上流側(リア給紙トレイ2側)のものを基準として、そこから所定の距離(たとえば3〜5ミリメートル)により下流側へ離れた位置に設定される。
印字開始位置は、印刷媒体Pの印字処理を開始するときに、印刷媒体Pの先端縁の停止目標位置である。印字開始位置は、記録ヘッド22に形成される複数のインク吐出ノズル23のうち、印刷媒体Pの搬送方向の最も下流側(排紙トレイ側)のものを基準として、そこから所定の距離(たとえば3〜5ミリメートル)により上流側へ離れた位置に設定される。
このように印字開始位置よりも印刷媒体Pの搬送方向の上流側に、給紙スタンバイ位置を設けることで、通常の給紙処理では、印刷媒体Pは、一旦給紙スタンバイ位置に停止させられた後、印字開始位置へ給紙される。そのため、印刷媒体Pがリア給紙トレイ2から印字開始位置まで一回の制御により一気に搬送される場合にくらべて、印字開始位置に対する印刷媒体Pの停止位置の精度を向上することができる。
インクジェットプリンタ1は、上述したPFローラ14および排紙ローラ16を回転駆動させる下流側搬送モータとしてのPFモータ31、LDローラ11を回転駆動させる上流側搬送モータとしてのASFモータ32、LDローラ11に対してLD従動ローラ12を接離させるASFサブモータ33、図示外のCRモータの他に、PFロータリエンコーダ34、ASFロータリエンコーダ35、センサとしてのPE(ペーパエッジ)センサ36、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)37、マイクロコンピュータ38などを有する。
なお、PFモータ31、ASFモータ32、ASFサブモータ33、CRモータなどには、DC(直流)モータ、ステッピングモータなどのパルスモータなどが使用できる。DCモータは、所定の直流電圧が印加されると、定格速度で回転する。DCモータは、印加電圧がPWM(Pulse Width Modulation)制御されると、定格速度より低いDuty比に応じた速度で回転する。また、DCモータは、直流電圧の向きが逆転されると、逆方向へ回転する。
PFロータリエンコーダ34は、PFローラ14とともに回転するPFスケール板34aと、PFスケール板34aの外周に沿って形成される複数のスリットを検出するPFフォトインタラプタ34bと、を有する。PFロータリエンコーダ34のPFフォトインタラプタ34bは、PFローラ14とともにPFスケール板34aが回転すると、スリットの検出に応じてレベルが変化する検出信号を生成する。検出信号は、パルス波形となる。検出信号のパルス周期は、PFスケール板34aの回転速度に応じて変化する。たとえばPFスケール板34aの回転速度が上がると、検出信号のパルス周期は短くなる。
ASFロータリエンコーダ35は、ASFモータ32の回転子とともに回転するASFスケール板35aと、ASFスケール板35aの外周に沿って形成される複数のスリットを検出するASFフォトインタラプタ35bと、を有する。ASFモータ32の回転子の回転量は、LDローラ11の回転量と一定の関係にある。ASFスケール板35aの回転量は、LDローラ11の回転量に対応付け可能である。ASFロータリエンコーダ35のASFフォトインタラプタ35bは、ASFモータ32およびLDローラ11とともにASFスケール板35aが回転すると、スリットの検出に応じてレベルが変化するパルス波形の検出信号を生成する。
PEセンサ36は、図示外の発光素子と受光素子とが所定の間隔を開けて対向して配設されたものである。PEセンサ36は、発光素子と受光素子との間に、リア用印刷媒体搬送経路4が位置するように配設される。PEセンサ36は、LDローラ11とPFローラ14との間において、ページ間制御開始位置を基準として、少なくともページ間ギャップ長以上の距離により下流側へ離れた位置に配設される。PEセンサ36の受光素子は、発光素子が発した光の受光状態に応じて変化する検出信号を出力する。PEセンサ36は、発光素子と受光素子との間の印刷媒体Pの有無に応じて変化する検出信号を出力する。
ASIC37は、マイクロコンピュータの一種であり、メモリ39、図示外のCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、タイマ、入出力ポートなどを有する。入出力ポートには、PFロータリエンコーダ34の検出信号、ASFロータリエンコーダ35の検出信号、PEセンサ36の検出信号などが入力される。図示外のCPUが所定のプログラムを実行することで、ASIC37には、下流側搬送制御手段としてのPF制御実行部41、上流側搬送制御手段としてのASF制御実行部42、検出値演算部43などが実現される。
メモリ39は、インクジェットプリンタ1の制御に使用する各種の検出データなどを記憶する。メモリ39が記憶する検出データとしては、たとえばPF検出速度51、PF絶対搬送量52、PE検後PF搬送量53、ASF検出速度54、ASF絶対搬送量55、PE検後ASF搬送量56などがある。
マイクロコンピュータ38は、図示外のメモリ、CPU、タイマ、入出力ポートなどを有する。マイクロコンピュータ38の入出力ポートは、ASIC37の入出力ポートなどに接続される。図示外のCPUが所定のプログラムを実行することで、マイクロコンピュータ38には、次制御判断部61、下流側搬送量演算手段の一種および上流側搬送量演算手段の一種としての給紙処理指示部62、下流側搬送量演算手段の一種および上流側搬送量演算手段の一種としての紙送り処理指示部63、下流側搬送量演算手段の一種および上流側搬送量演算手段の一種としての排紙処理指示部64、印字処理指示部65などが実現される。
なお、ASIC37のCPUが実行するプログラムは、たとえばASIC37のメモリ39などに記憶されていればよい。マイクロコンピュータ38のCPUが実行するプログラムは、たとえばマイクロコンピュータ38のメモリなどに記憶されていればよい。また、これらのプログラムあるいはその一部は、インクジェットプリンタ1の出荷前にこれらのメモリに記憶されていても、インクジェットプリンタ1の出荷後にこれらのメモリに記憶されていてもよい。インクジェットプリンタ1の出荷後にこれらのメモリに記憶されるプログラムあるいはその一部は、たとえばCD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されているものをインクジェットプリンタ1に接続されるパーソナルコンピュータで読み込んでメモリに書込まれても、サーバ装置に記憶されているものをインクジェットプリンタ1に接続されるパーソナルコンピュータでインターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしてメモリに書込まれてもよい。
ASIC37に実現される検出値演算部43は、ASIC37に入力されるPFロータリエンコーダ34の検出信号、ASFロータリエンコーダ35の検出信号、PEセンサ36の検出信号などに基づいて、各種の検出値を生成し、メモリ39の記憶データを更新する。検出値演算部43は、たとえばPID制御周期毎に、周期的に、各種の検出値を生成し、メモリ39を更新する。
具体的にはたとえば、検出値演算部43は、PFロータリエンコーダ34の検出信号における単位時間当たりのパルス数を、PF区間パルス数として計測する。検出値演算部43は、PF区間パルス数を、PFローラ14による搬送速度を示すPF検出速度51としてメモリ39に記録する。
検出値演算部43は、PFロータリエンコーダ34の検出信号における累積的なパルス数を、PF累積パルス数として計測する。検出値演算部43は、PF累積パルス数を、PFローラ14による累積的な搬送量を示すPF絶対搬送量52としてメモリ39に記録する。
検出値演算部43は、ASFロータリエンコーダ35の検出信号における単位時間当たりのパルス数を、ASF区間パルス数として計測する。検出値演算部43は、ASF区間パルス数を、LDローラ11による搬送速度を示すASF検出速度54としてメモリ39に記録する。
検出値演算部43は、ASFロータリエンコーダ35の検出信号における累積的なパルス数を、ASF累積パルス数として計測する。検出値演算部43は、ASF累積パルス数を、LDローラ11による累積的な搬送量を示すASF絶対搬送量55としてメモリ39に記録する。
検出値演算部43は、PEセンサ36の検出信号のレベルに応じて、PEセンサ36による印刷媒体Pの検出の有無を判断する。そして、印刷媒体Pが検出されると、検出値演算部43は、その検出後のPFロータリエンコーダ34の検出信号における単位時間当たりのパルス数をカウントする。検出値演算部43は、カウントしたパルス数を、PE検後PF搬送量53としてメモリ39に記録する。また、印刷媒体Pが検出されると、検出値演算部43は、その検出後のASFロータリエンコーダ35の検出信号における単位時間当たりのパルス数をカウントする。検出値演算部43は、カウントしたパルス数を、PE検後ASF搬送量56としてメモリ39に記録する。
PF制御実行部41は、PFモータ31の駆動を制御する。PF制御実行部41は、メモリ39に記憶されるPF検出速度51が所定の速度プロファイルに沿ったものとなるように、PFモータ31の駆動速度や回転方向などを制御するための瞬時電流値を生成する。そして、PF制御実行部41は、たとえば指示などに基づく搬送量で停止するように瞬時電流値を生成する。
ASF制御実行部42は、ASFモータ32の駆動を制御する。ASF制御実行部42は、メモリ39に記憶されるASF検出速度54が所定の速度プロファイルに沿ったものとなるように、ASFモータ32の駆動速度や回転方向などを制御するための瞬時電流値を生成する。そして、ASF制御実行部42は、たとえば指示などに基づく搬送量で停止するように瞬時電流値を生成する。
マイクロコンピュータ38に実現される給紙処理指示部62は、未印刷の印刷媒体Pを、たとえばリア給紙トレイ2などから印字開始位置まで搬送する給紙処理のための指示を生成する。具体的には、給紙処理指示部62は、PF制御実行部41へ給紙制御を指示し、ASF制御実行部42へ給紙制御などを指示する。また、給紙処理指示部62は、ASFサブモータ33を駆動するための指示をASIC37へ供給する。
紙送り処理指示部63は、記録ヘッド22とプラテン6との間の印刷領域に給紙されている印刷媒体Pを所定量により搬送する紙送り処理のための指示を生成する。具体的には、紙送り処理指示部63は、PF制御実行部41へPF目標搬送量などを指示する。また、複数の印刷媒体Pを連続的に搬送して印刷する連続印刷モードでは、紙送り処理指示部63は、ASF制御実行部42にもASF目標搬送量などを指示する。
排紙処理指示部64は、印刷領域に給紙されている印刷媒体Pを、印刷領域からたとえば排紙トレイまで搬送する排紙処理ための指示を生成する。具体的には、紙送り処理指示部63は、PF制御実行部41へPF目標搬送量などを指示する。また、連続印刷モードでは、排紙処理指示部64は、ASF制御実行部42にもASF目標搬送量などを指示する。
印字処理指示部65は、印刷領域に給紙されている印刷媒体Pに対する1印字走査のための指示を生成する。具体的には、印字処理指示部65は、ASIC37に、図示外のCRモータの駆動を指示し、記録ヘッド22が印刷媒体Pに対向している状態で、複数のピエゾ素子に対して印刷データに応じた波形の電圧を印加することを指示する。
次制御判断部61は、インクジェットプリンタ1の停止中に状態を判断する。そして、次制御判断部61は、その判断結果に応じて、給紙処理指示部62、紙送り処理指示部63、排紙処理指示部64、印字処理指示部65などの複数の処理指示部の内から1つを選択し、その選択した処理指示部へ実行を指示する。
たとえばインクジェットプリンタ1へ図示外のパーソナルコンピュータなどから印刷データが供給された場合において、印刷可能な状態であると判断すると、次制御判断部61は、その印刷データに基づく印刷を実行するために、給紙処理指示部62、紙送り処理指示部63、排紙処理指示部64、印字処理指示部65の中から1つを順番に選択し、その選択の度に選択した処理指示部へ実行を指示する。正常に印刷がなされている場合、次制御判断部61は、まず給紙処理指示部62を選択し、次に未印刷の印刷データが無くなるまで印字処理指示部65および紙送り処理指示部63を交互に選択し、未印刷の印刷データが無くなったら排紙処理指示部64を選択する。これにより、印刷媒体Pは、記録ヘッド22に対向する印刷領域へ給紙され、印字走査と所定量の紙送りの繰り返しにより印刷データに基づく印刷がなされ、排紙トレイへ排紙される。
次に、以上の構成を有する実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の動作を説明する。ここでは特に、連続印刷モードでの動作について説明する。
図3は、図1のインクジェットプリンタ1へ供給される、連続印刷用の印刷データのデータ構造を示す説明図である。
インクジェットプリンタ1へ供給される連続印刷用の印刷データは、各印刷媒体Pへの印刷制御に使用される複数の印刷媒体毎の印刷データを有する。印刷媒体毎の印刷データは、印刷する用紙サイズなどを指定する印刷設定データと、その印刷媒体Pへ印刷するイメージをたとえば1印字幅毎に分割した複数のインク吐出パターンデータと、連続する2つのインク吐出パターンデータの間に挿入される複数の紙送り量データと、ページ区切りデータと、を有する。複数のインク吐出パターンデータと、複数の紙送り量データとは、印刷媒体毎の印刷データにおいて、交互に配列される。
また、印刷枚数をn(nは2以上の整数)としたとき、1枚目からn−1枚目までの印刷媒体毎の印刷データは、その先頭の印刷設定データ中に、次の印刷ページがあることを示す次ページ有りデータを有する。最後のn枚目の印刷媒体毎の印刷データは、その先頭の印刷設定データ中に、次の印刷ページが無いことを示す次ページ無しデータを有する。
インクジェットプリンタ1は、このようなデータ構造の連続印刷用の印刷データが供給されると、連続印刷モードによる印刷を実行する。インクジェットプリンタ1は、リア給紙トレイ2に載置されている複数の印刷媒体Pを連続的に搬送して印刷する。また、インクジェットプリンタ1の次制御判断部61は、通常の印刷モードの場合と同様に、印刷媒体P毎に、まず給紙処理指示部62を選択し、次に未印刷の印刷データが無くなるまで印字処理指示部65および紙送り処理指示部63を交互に選択し、未印刷の印刷データが無くなったら排紙処理指示部64を選択する。次制御判断部61は、連続印刷用の印刷データにより指定される枚数の印刷媒体Pを搬送し、印刷を実行する。
以下、この連続印刷モードにおけるインクジェットプリンタ1の詳細な印刷動作を説明する。
図4は、図2中の給紙処理指示部62が連続印刷モードにおいて実行する処理の流れを示すフローチャートである。図5は、図2中の紙送り処理指示部63が連続印刷モードにおいて実行する処理の流れを示すフローチャートである。図6は、図2中の排紙処理指示部64が連続印刷モードにおいて実行する処理の流れを示すフローチャートである。
インクジェットプリンタ1へ図3に示すような連続印刷用の印刷データが供給されると、次制御判断部61は、データ処理を開始する。次制御判断部61は、インクジェットプリンタ1が印刷可能な状態にあることを確認した後、連続印刷用の印刷データの先頭部分のデータを読込む。次制御判断部61は、1枚目の印刷媒体毎の印刷データの印刷設定データを読み込み、給紙処理指示部62へ実行を指示する。
なお、インクジェットプリンタ1の図示外の印刷データの受信バッファには物理的な容量制限がある。そのため、連続印刷用の印刷データは、実際には、受信バッファの空き状況に合わせて、複数回に分けてインクジェットプリンタ1へ供給される。このような状況でも、次制御判断部61は、連続印刷用の印刷データの先頭部分のデータを読込むことができる。受信バッファの物理的な容量制限は、制御上問題となることはない。
実行が指示された給紙処理指示部62は、図4に示す給紙処理フローチャートを実行する。給紙処理指示部62は、まず、ASIC37のメモリ39に記憶されているPF絶対搬送量52と、ASF絶対搬送量55とを「0」にリセットする(ステップST1)。これにより、PF絶対搬送量52と、ASF絶対搬送量55とは、印刷媒体P毎の、給紙からの搬送量を示すようになる。
絶対位置をリセットした後、給紙処理指示部62は、今回の給紙処理が連続印刷の2枚目以降のものであるか否かを判断する(ステップST2)。今回は連続印刷の最初の給紙である。給紙処理指示部62は、ステップST2でNoと判断する。
連続印刷の2枚目以降のものではないと判断した給紙処理指示部62は、ASFサブモータ33の駆動をASIC37に指示する(ステップST3)。ASIC37は、ASFサブモータ33を駆動する。これにより、LD従動ローラ12は、LDローラ11に圧接される。ホッパ13は、リア給紙トレイ2上の複数の印刷媒体PをLDローラ11との間に挟む。
ASFサブモータ33を駆動してLD従動ローラ12をLDローラ11へ圧接させた後、給紙処理指示部62は、ASF制御実行部42へ給紙開始を指示する(ステップST4)。具体的には、給紙処理指示部62は、ASF制御実行部42へ給紙制御を指示する。ASF制御実行部42は、ASFモータ32の駆動を開始する。ASFモータ32の駆動により、LDローラ11は回転し始める。LDローラ11に当接する最も上の印刷媒体Pは、LDローラ11の回転にしたがって搬送され始める。
なお、LDローラ11には、LD従動ローラ12が圧接されている。したがって、LDローラ11の回転にしたがって最も上の印刷媒体P以外の印刷媒体P、たとえば上から2枚目の印刷媒体Pが、最も上の印刷媒体Pとともに搬送され始めたとしても、その最も上の印刷媒体P以外の印刷媒体Pは、LDローラ11とLD従動ローラ12との圧接位置を通過し難い。LD従動ローラ12は、2枚目の印刷媒体Pなどに対して給紙を妨げる負荷となる。
また、ASFモータ32が駆動されると、ASFロータリエンコーダ35は、パルス波形の検出信号を出力し始める。検出値演算部43は、この検出信号に基づいて、メモリ39のASF検出速度54と、ASF絶対搬送量55とを更新する。
ASFモータ32の駆動を開始したASF制御実行部42は、たとえばPID制御周期などの所定の周期でこのメモリ39に記憶されるASF検出速度54を読み込む。ASF制御実行部42は、ASF目標速度に対するASF検出速度54の偏差に応じたPID制御値を有する瞬時電流値を生成する。ASFモータ32の回転速度は、この瞬時電流値に応じて増減する。ASF制御実行部42は、ASF検出速度54が所定の速度プロファイルに沿ったものとなるようにPID制御を実行する。印刷媒体Pは、所定の速度で搬送される。
LDローラ11の回転により搬送され始めた印刷媒体Pは、リア用印刷媒体搬送系路4上を排紙トレイへ向かって移動する。印刷媒体Pは、PEセンサ36を通過し、その後、PFローラ14とPF従動ローラ15との間に突き当たる。
印刷媒体Pの先端部が、PEセンサ36の発光素子と受光素子との間に入り込むと、PEセンサ36の検出信号が用紙無しから用紙ありへ変化する。このPEセンサ36による用紙検出があると、検出値演算部43は、メモリ39に記憶されるPE検後PF搬送量53と、PE検後ASF搬送量56との更新を始める。
検出値演算部43は、PE検後PF搬送量53を、PEセンサ36による印刷媒体Pの検出後の、PFロータリエンコーダ34の検出信号に基づいて演算されるLDローラ11の搬送量にしたがって更新する。検出値演算部43は、ASFによるPE検後ASF搬送量56を、PEセンサ36による印刷媒体Pの検出後の、ASFロータリエンコーダ35の検出信号に基づいて演算されるLDローラ11の搬送量にしたがって更新する。
なお、検出値演算部43は、常に、ASFロータリエンコーダ35やPFロータリエンコーダ34の検出信号に基づいて、PE検後PF搬送量53や、PE検後ASF搬送量56などを更新するものであってもよい。
給紙処理指示部62は、ステップST4においてLDローラ11の回転駆動を開始した後、たとえばPE検後PF搬送量53やPE検後ASF搬送量56などに基づいて、PEセンサ36が印刷媒体Pを検出したことを知る(ステップST5)。給紙処理指示部62は、今回の給紙処理が連続印刷であるか否かを判断する(ステップST6)。連続印刷であるときはさらに次ページの印刷があるか否かを判断する(ステップST7)。今回の給紙処理は、連続印刷の1枚目の給紙処理であり、次ページの印刷がある。給紙処理指示部62は、ステップST7においてYesと判断し、給紙スタンバイ位置までの同時駆動制御を開始する(ステップST9)。LD従動ローラ12は、LDローラ11に圧接された状態に維持される。
なお、今回の給紙処理が連続印刷ではないとき(ステップST6でNoの場合)や、次ページが無いとき(ステップST7でNoの場合)には、給紙処理指示部62は、ASIC37へニップ解除を指示する(ステップST8)。ASIC37は、ASFサブモータ33を駆動し、LD従動ローラ12をLDローラ11から離間させる。
次に、給紙処理指示部62は、給紙スタンバイ位置までの同時駆動制御を実行する(ステップST9)。給紙処理指示部62は、PF制御実行部41へPFモータ31の駆動を指示する。PE制御実行部41は、PFモータ31の駆動を開始させる。PFローラ14およびPF従動ローラ15は、回転し始める。PFローラ14とPF従動ローラ15との間に突き当たっていた印刷媒体Pは、PFローラ14およびPF従動ローラ15により挟持され、その後PFローラ14およびPF従動ローラ15の回転により印刷領域へ給紙され始める。
なお、PFモータ31が駆動されると、PFロータリエンコーダ34は、PFローラ14の回転にしたがってパルス波形の検出信号を出力し始める。検出値演算部43は、この検出信号に基づいて、メモリ39のPF検出速度51、PF絶対搬送量52およびPE検後PF搬送量53を更新する。PFモータ31の駆動を開始したPF制御実行部41は、たとえばPID制御周期などの所定の周期でこのメモリ39に記憶されるPF検出速度51を読み込む。PF制御実行部41は、PF目標速度に対するPF検出速度51の偏差に応じたPID制御値を有する瞬時電流値を生成する。PFモータ31の回転速度は、この瞬時電流値に応じて増減する。PF制御実行部41は、PF検出速度51が所定の速度プロファイルに沿ったものとなるようにPID制御を実行する。印刷媒体Pは、所定の速度で搬送される。
給紙制御が指示されたPF制御実行部41は、ASIC37のメモリ39に記憶されるPE検後PF搬送量53を周期的に読み込む。PF制御実行部41は、読み込んだPE検後PF搬送量53がPEセンサ36から給紙スタンバイ位置までに相当する搬送量となるときにPFモータ31が停止するように、所定のパルス数において減速制御を開始する。PF制御実行部41は、PFモータ31への電流指令値を減らし、停止する。
同様に、ASF制御実行部42は、ASIC37のメモリ39に記憶されるASF絶対搬送量55を周期的に読み込む。ASF制御実行部42は、読み込んだPE検後ASF搬送量56がPEセンサ36から給紙スタンバイ位置までに相当する搬送量となるときにASFモータ32が停止するように、所定のパルス数において減速制御を開始する。ASF制御実行部42は、ASFモータ32への電流指令値を減らし、停止する。
以上の処理により、リア給紙トレイ2の最も上に載置されていた印刷媒体Pは、その先端縁が給紙スタンバイ位置に停止するように給紙される。1枚目の印刷媒体Pは、PFモータ31とASFモータ32との同時駆動制御により、給紙スタンバイ位置まで給紙される。
1枚目の印刷媒体Pを給紙スタンバイ位置まで給紙した後、給紙処理指示部62は、PF制御実行部41およびASF制御実行部42へ、印字開始位置までの給紙制御を指示する。PF制御実行部41およびASF制御実行部42は、PFモータ31とASFモータ32の同時駆動制御により、その印刷媒体Pを更に印字開始位置まで搬送する(ステップST10)。
以上の同時駆動制御による給紙処理が完了すると、給紙処理指示部62は、1枚目の給紙処理を終える。PFローラ14やLDローラ11は停止する。ASIC37のメモリ39に記憶されるPF検出速度51やASF検出速度54も「0」に更新される。次制御判断部61は、メモリ39のこれらの速度データなどに基づいてインクジェットプリンタ1が正常に停止していると判断し、連続印刷用の印刷データの1枚目のデータの続きを読み込む。次制御判断部61は、1枚目の印刷媒体毎の印刷データの最初のインク吐出パターンデータを読み込み、印字処理指示部65へ実行を指示する。
実行が指示された印字処理指示部65は、印字処理を実行する。印字処理指示部65は、ASIC37へ、インク吐出パターンデータを供給するとともに、図示外のCRモータの駆動を指示する。キャリッジ21は、ASIC37によるCRモータの駆動により移動する。記録ヘッド22の複数のインク吐出ノズル23が給紙された印刷媒体Pに対向している状態で、ASIC37は、インク吐出パターンデータに基づく波形の電圧を複数のピエゾ素子へ印加する。複数のインク吐出ノズル23からインクが飛翔し、印刷媒体Pに付着する。
以上の1印字制御処理が完了すると、印字処理指示部65は、最初の1回の印字走査を終える。次制御判断部61は、キャリッジ21の検出速度などに基づいてインクジェットプリンタ1が正常に停止していると判断し、連続印刷用の印刷データの1枚目のデータの続きを読み込む。次制御判断部61は、1枚目の印刷媒体毎の印刷データの最初の紙送り量データを読み込み、紙送り処理指示部63へ実行を指示する。
実行が指示された紙送り処理指示部63は、図5の紙送り処理フローチャートを実行する。紙送り処理指示部63は、まず、連続印刷用の印刷データなどに基づいて、今回の紙送り処理が連続印刷中であり且つ次ページがある場合のものであるか否かを判断する(ステップST21)。今回の紙送り処理は、連続印刷の最初の印刷媒体Pである。紙送り処理指示部63は、ステップST21においてYesと判断する。
紙送り処理指示部63は、引き続き、次の印刷媒体Pの先端縁がページ間制御開始位置を過ぎているか否かを判断する(ステップST22)。今回の紙送り処理は、印刷媒体Pの最初の紙送り処理であり、ページ間制御開始位置には印刷中の印刷媒体Pが存在している。紙送り処理指示部63は、ステップST22においてNo(未達)と判断する。
さらに、紙送り処理指示部63は、今回の紙送り処理を実行した結果、次の印刷媒体Pの先端縁がページ間制御開始位置を過ぎてしまうか否かを判断する(ステップST23)。今回の紙送り処理は、印刷媒体Pの最初の紙送り処理であり、次の印刷媒体Pの給紙は開始されていない。紙送り処理指示部63は、ステップST23においてNoと判断する。
ステップST23においてNoと判断した紙送り処理指示部63は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量52(前回までの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、さらに補正量を含む新たなASF目標搬送量(パルス数)を演算する(ステップST24)。具体的には、紙送り処理指示部63は、補正量を含む新たなASF目標搬送量を、下記式1により演算する。補正量を含む新たなASF目標搬送量は、新たなPF目標搬送量より若干大きくなる。
下記式1において、「1.05」は、5%ほど余分に送ることを意味する目標搬送量補正割合係数である。目標搬送量補正割合係数は、1より大きく、且つ、たとえば1.05以下とすればよい。1以下では、補正の効果がなく、1.05より大きくなると、LDローラ11により押し込められた印刷媒体Pのたわみが大きくなり、印刷媒体Pの搬送量がPFローラ14の搬送量に好適に追従しなくなってしまう。
ASF目標搬送量(パルス数)=PF目標搬送量(パルス数)×1.05 ・・・式1
なお、PFロータリエンコーダ34の搬送量の分解能と、ASFロータリエンコーダ35の搬送量の分解能とが異なる場合には、式1より求めたASF目標搬送量に、所定の搬送量におけるPFロータリエンコーダ34の検出パルス数とASFロータリエンコーダ35の検出パルス数との比に基づく分解能の補正係数を乗算し、その演算結果を、ASF制御実行部42に指示する新たなASF目標搬送量(パルス数)とすればよい。
PF目標搬送量(パルス数)とASF目標搬送量(パルス数)とを演算した後、紙送り処理指示部63は、指示送り量を基準としたシンクロ(ならい)制御を実行する(ステップST25)。
図7は、図1のインクジェットプリンタ1におけるシンクロ(ならい)制御の特徴と、同時駆動制御の特徴との比較表を提示する図である。図7の左側がシンクロ(ならい)制御の主な特徴のリストであり、図7の右側が同時駆動制御の主な特徴のリストである。以下に特徴を列挙して説明する。
第一に、シンクロ(ならい)制御では、図7の欄Aに示すように、PFモータ31とASFモータ32との駆動タイミングについての特徴がある。具体的には、シンクロ(ならい)制御では、同時駆動制御と同様にPFモータ31とASFモータ32とを同時に駆動する。特に、シンクロ(ならい)制御では、ASFモータ32の駆動をPFモータ31の駆動より先に開始する。同時駆動制御では、このような駆動の開始に制限はなく、基本的に同時に駆動する。
第二に、シンクロ(ならい)制御では、図7の欄Bに示すように、ASFモータ32の搬送量がPFモータ31の搬送量より若干多くなるように補正量を演算することに特徴がある。具体的には、シンクロ(ならい)制御では、上記式1の演算により、ASF目標搬送量(パルス数)を、PF目標搬送量(パルス数)より若干大きくする。同時駆動制御では、このような搬送量補正はなされない。PF目標搬送量(パルス数)と、ASF目標搬送量(パルス数)とは別々に演算される。
第三に、シンクロ(ならい)制御では、図7の欄Cに示すように、ASFモータ32を駆動するためのASF目標搬送量を、PFモータ31を駆動するためのPF目標搬送量にならわせる点に特徴がある。具体的には、シンクロ(ならい)制御では、ASF制御実行部42へ指示するASF目標搬送量は、上記式1の演算にあるように、PF制御実行部41へ指示するPF目標搬送量を基準とする。PF制御実行部41へ指示するPF目標搬送量は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量52(前回までの指示に基づく実際の搬送量)との差である。これに対して、同時駆動制御では、ASF制御実行部42へ指示するASF目標搬送量は、給紙完了後にASF制御実行部42へ指示したASF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のASF絶対搬送量55(前回までの指示に基づく実際の搬送量)との差である。すなわち、ASF絶対搬送量55が基準となる。
第四に、シンクロ(ならい)制御では、図7の欄Dに示すように、給紙位置を制御するときの基準ロータリエンコーダを切り替える点に特徴がある。具体的には、シンクロ(ならい)制御では、連続印刷中の二枚目以降の給紙位置は、PEセンサ36がその印刷媒体を検出した後のPE検後ASF搬送量56が、PEセンサ36から印字開始位置までの距離に相当する搬送量となるように決定する。同時駆動制御では、給紙位置は、常に、PEセンサ36がその印刷媒体を検出した後のPE検後PF搬送量53が、PEセンサ36から印字開始位置までの距離に相当する搬送量となるように決定する。
シンクロ(ならい)制御は、同時駆動制御に比べて以上のような制御上の特徴を有する。
そして、紙送り処理指示部63は、指示送り量を基準としたシンクロ(ならい)制御(ステップST24)において、PF制御実行部41へPF目標搬送量を指示し、ASF制御実行部42へASF目標搬送量を指示する。
シンクロ(ならい)制御では、まず、ASF制御実行部42がASFモータ32の駆動を開始する。これにより、LDローラ11およびLD従動ローラ12により挟持されている印刷媒体Pは、搬送される。このとき、印刷媒体Pは、LDローラ11とPFローラ14との間でたるむ。
ASF絶対搬送量55の値が所定量変化すると、PF制御実行部41は、PFモータ31の駆動を開始する。これにより、PFローラ14およびPF従動ローラ15により挟持されている印刷媒体Pは、搬送され始める。印刷媒体Pは、LDローラ11とPFローラ14との間でたるんだ状態を維持したまま、紙送り搬送される。
ASF制御実行部42は、ASF絶対搬送量55の紙送り制御開始後の変化量が指示されたASF目標搬送量となるように、駆動中のASFモータ32を停止させる。遅れて駆動を開始したPF制御実行部41も、PF絶対搬送量52の紙送り制御開始後の変化量が指示されたPF目標搬送量となるように、駆動中のPFモータ31を停止させる。PFローラ14より印刷媒体Pの搬送方向の下流側へ搬送された印刷媒体Pの搬送量は、PFローラ14による搬送量(パルス数)であり、指示されたPF目標搬送量となる。
なお、ASFモータ32は、PFモータ31より先に駆動が開始される。しかしながら、LDローラ11のASF目標搬送量は、PFローラ14のPF目標搬送量と略同じである。したがって、ASFモータ32およびPFモータ31が停止した状態では、LDローラ11とPFローラ14との間でのたるみは略解消される。
また、LDローラ11のASF目標搬送量は、PFローラ14のPF目標搬送量より若干大きい。そのため、PFモータ31による印刷媒体Pの搬送を、停止しているLDローラ11が妨げてしまうことはない。ASFモータ32の停止後のPFローラ14の回転により、LDローラ11とPFローラ14との間において印刷媒体Pが延び切って突っ張ってしまう状態になることはない。その結果、PFローラ14より下流側における印刷媒体Pの実際の搬送量は、PFローラ14のPF目標搬送量に好適に追従し、指示された紙送り量に精度良く一致するようになる。
以上の処理により、紙送り処理指示部63による、最初の1回の紙送り処理が終わる。
印刷媒体毎の印刷データには、図3に示すように、インク吐出パターンデータと、紙送り量データとが交互に並んでいる。印字処理指示部65と紙送り処理指示部63とは、このインク吐出パターンデータと紙送り量データとの並び順にしたがって交互に実行される。これにより、印刷媒体Pには、印刷データに基づく印刷がたとえば1走査幅毎に印刷される。
以上のように、1枚目の印刷媒体Pへの印刷処理が進み、その1枚目の印刷媒体Pの後端縁がLDローラ11とLD従動ローラ12との間から抜けると、ホッパ13により押し上げられているリア給紙トレイ2上の最も上にある2枚目の印刷媒体Pが、LDローラ11の回転にしたがって給紙され、LDローラ11とLD従動ローラ12との間に挟持される。2枚目の印刷媒体Pは、紙送り制御においてPFモータ31とシンクロ(ならい)制御されるLDローラ11の回転により、1枚目の印刷媒体Pに続けて給紙され始める。2枚目の印刷媒体Pは、通常は、1枚目の印刷媒体Pと間隔を空けずに給紙され始める。
その後の1枚目の印刷のための紙送り処理では、紙送り処理指示部63は、2枚目の印刷媒体Pの搬送状態に応じて紙送り処理の指示を切り替えるようになる。紙送り処理指示部63は、具体的には、以下の各パターンに応じて紙送り処理の指示を切り替えるようになる。各パターンでの紙送り処理を、図2および図5を参照しながら説明する。
第一に、2枚目の印刷媒体Pの搬送が開始され始めた直後で、2枚目の印刷媒体Pの先端縁がページ間制御開始位置を過ぎていない場合(図2の領域Aにいる場合)であって、今回の紙送り処理の完了時でもページ間制御開始位置を過ぎることが無いと予想される場合(図2の領域Aのままの場合)、紙送り処理指示部63は、ステップST23においてNoと判断する。紙送り処理指示部63は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量52(前回までの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、それよりも若干大きい搬送量のLDローラ11のASF目標搬送量をたとえば式1にしたがって演算し(ステップST24)、シンクロ(ならい)制御を実行する(ステップST25)。
第二に、今回の紙送り処理の完了時に、ページ間制御開始位置を過ぎることと予想される場合(図2の領域Aから領域Bへ移動する場合)、紙送り処理指示部63は、ステップST23においてYesと判断する。紙送り処理指示部63は、まず、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、ページ間制御開始位置までの搬送量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量52(前回までの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、それよりも若干大きい搬送量のLDローラ11のASF目標搬送量をたとえば式1にしたがって演算し(ステップST26)、シンクロ(ならい)制御を実行する(ステップST27)。
その後、紙送り処理指示部63は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量(ページ間制御開始位置までの前回の搬送量を含む)の累積値に、今回新たに指示する紙送り量の残りを加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量52(前回のページ間制御開始位置までの制御に基づく変化量)との差を、PFローラ14による新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、それよりも若干大きい送り量のLDローラ11のASF目標搬送量をたとえば式1にしたがって演算し(ステップST28)、シンクロ(ならい)制御を実行する(ステップST29)。これにより、ページ間制御が完了し、さらに印刷中の印刷媒体は、今回新たに指示される紙送り量により搬送され、且つ、その次に給紙される印刷媒体は、印刷中の印刷媒体との間にページ間ギャップ長を開けた位置へ搬送される。
第三に、2枚目の印刷媒体Pの先端縁がページ間制御開始位置からページ間ギャップ長の距離の範囲内(図2の領域Bにいる場合)にあって、且つ、今回の紙送り処理の完了時でも図2の領域Bを超えないことが無いと予想される場合、紙送り処理指示部63は、ステップST22でYesと判断し、さらにステップST30でYesと判断する。紙送り処理指示部63は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量52(前回までの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、PF制御実行部41へ供給する(ステップST31)。これにより、PFローラ14のみが印刷媒体Pを搬送する。
第四に、2枚目の印刷媒体Pの先端縁がページ間制御開始位置からページ間ギャップ長の距離の範囲内(図2の領域Bにいる場合)にあって、且つ、今回の紙送り処理の完了時にはページ間ギャップ長以上に離れることが予想される場合(図2の領域Bから領域Cへ移動する場合)、つまり今回の指示送り量でページ間制御が完了する場合、紙送り処理指示部63は、ステップST22でYesと判断し、ステップST30でNoと判断し、さらにステップST32でNoと判断する。紙送り処理指示部63は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量52(前回までの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、このPF目標搬送量を送り量補正割合係数により補正したものから、ページ間ギャップ長に対する不足分を減算した搬送量を、LDローラ11による新たなASF目標搬送量(パルス数)とし(ステップST33)、シンクロ(ならい)制御を実行する(ステップST34)。これにより、ページ間制御が完了し、さらに印刷中の印刷媒体は、今回新たに指示される紙送り量により搬送され、且つ、その次に給紙される印刷媒体は、印刷中の印刷媒体との間にページ間ギャップ長を開けた位置へ搬送される。
第五に、2枚目の印刷媒体Pの先端縁が既にページ間制御開始位置からページ間ギャップ長以上に離れている場合(図2の領域Cにいる場合)、紙送り処理指示部63は、ステップST22でYesと判断し、ステップST30でNoと判断し、さらにステップST32でYesと判断する。紙送り処理指示部63は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量52(前回までの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、それよりも若干大きい送り量のLDローラ11による新たなASF目標搬送量(パルス数)を演算し(ステップST35)、シンクロ(ならい)制御を実行する(ステップST36)。
なお、紙送り処理指示部63は、第六のパターンも有する。この第六のパターンは、たとえば連続印刷の最終の印刷媒体Pの紙送り処理において選択されるものである。第六のパターンでは、紙送り処理指示部63は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量52(前回までの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、PF制御実行部41へ供給する(ステップST37)。これにより、PFローラ14のみが印刷媒体Pを搬送する。
また、これらの紙送り制御により、次の印刷媒体Pの先端縁がPEセンサ36を通過すると、検出値演算部43は、メモリ39に記憶されるPE検後PF搬送量53およびPE検後ASF搬送量56を、PEセンサ36によるその新たな用紙検出後の搬送量へ更新する。
以上のように、紙送り処理指示部63による紙送り処理での指示パターンが切り替えられながら、1枚目の印刷媒体Pの紙送り処理と、印字処理とが繰り返される。その後、次制御判断部61は、1枚目と2枚目とを区切る最初のページ区切りデータを読み込む。次制御判断部61は、排紙処理指示部64へ実行を指示する。
実行が指示された排紙処理指示部64は、図6に示す印字処理フローチャートを実行する。排紙処理指示部64は、まず、今回の排紙処理が連続印刷中の排紙処理であるか否かと次ページの印刷の有無とを判断する(ステップST41)。今回の排紙処理は、連続印刷の1枚目の印刷媒体Pの排紙処理である。排紙処理指示部64は、ステップST41においてYesと判断する。
さらに、排紙処理指示部64は、次の印刷媒体Pの先端縁が既にページ間制御開始位置を過ぎているか否かを判断する(ステップST42)。そして、たとえば1枚目の印刷媒体Pへの印刷が用紙の半分くらいまでで完了してしまう場合、次の印刷媒体Pの先端縁は、ページ間制御開始位置を過ぎていない。この場合、排紙処理指示部64は、ステップST42においてNoと判断する。
次の印刷媒体Pの先端縁がページ間制御開始位置を過ぎていないと判断すると、排紙処理指示部64は、次の2枚目の印刷媒体Pの先端縁がページ間制御開始位置となるように、PFローラ14によるPF目標搬送量(パルス数)を、ページ間制御開始位置までの残り距離とし、それよりも若干大きい搬送量のLDローラ11によるASF目標搬送量(パルス数)を演算し、シンクロ(ならい)制御を実行する(ステップST43)。これにより、次の印刷媒体Pの先端縁は、ページ間制御開始位置となる。
この他にもたとえば、1枚目の印刷媒体Pへの印刷が用紙の後端縁までである場合、次の印刷媒体Pの先端縁は、既にページ間制御開始位置を過ぎてしまう。この場合、排紙処理指示部64は、ステップST42においてYesと判断する。排紙処理指示部64は、具体的な搬送制御をすることなく排紙処理を終了する。
以上のように、排紙処理指示部64による1枚目の印刷媒体Pの排紙処理が完了すると、1枚目の印刷媒体毎の印刷データの処理を終える。2枚目の印刷媒体Pの先端縁は、ページ間制御開始位置あるいはページ間制御開始位置と印刷領域との間に位置する。次制御判断部61は、2枚目の印刷媒体毎の印刷データを読み込み、給紙処理指示部62へ2枚目の印刷媒体Pの給紙処理を指示する。
給紙処理指示部62は、図4のフローチャートにしたがって2枚目の印刷媒体Pの給紙処理を開始する。給紙処理指示部62は、ASIC37のメモリ39に記憶されているPF絶対搬送量52と、ASF絶対搬送量55とを「0」にリセットした(ステップST1)後、今回の給紙処理が連続印刷の2枚目以降の印刷であると判断する(ステップST2においてYes)。
今回の給紙処理が連続印刷の2枚目以降の印刷であると判断した給紙処理指示部62は、さらに、ページ間制御が完了しているかを判断する(ステップST11)。そして、ページ間制御が完了してない場合、給紙処理指示部62は、ページ間制御を実行する(ステップST12)。具体的には、給紙処理指示部62は、残りのページ間ギャップ長をPFローラ14のPF目標搬送量とし、PF制御実行部41のみへPF目標速度を指示する。これにより、PFローラ14のみが印刷媒体Pを搬送する。ページ間制御により、1枚目の印刷媒体Pの後端縁と2枚目の印刷媒体Pの先端縁との間に所定のページ間ギャップ長が確保される。
このようにページ間ギャップ長を確保し、あるいは既にページ間制御が完了している場合には、給紙処理指示部62は、印字開始位置までのシンクロ(ならい)制御による給紙制御を、PF制御実行部41およびASF制御実行部42へ指示する(ステップST13)。
この連続印刷中の2枚目以降の印刷媒体Pに関する、印字開始位置までのシンクロ(ならい)制御において、ASF制御実行部42は、PE検後ASF搬送量56が、PEセンサ36から印字開始位置までの距離に相当する搬送量になるように、ASFモータ32の駆動を停止させる。また、図7の第四の特徴として説明したように、PF制御実行部41は、PE検後ASF搬送量56が、PEセンサ36から印字開始位置までの距離に相当する搬送量になるときに停止するように、PFモータ31の駆動を停止させる。
PFローラ14は、LDローラ11より後に駆動が開始される。給紙制御において、PF絶対搬送量52やPE検後PF搬送量53の搬送量は、その遅れた分だけ、ASF絶対搬送量55やPE検後ASF搬送量56の搬送量に比べて少ない。すなわち、図7A中の斜線ハッチング分だけ少ない。その結果、複数の印刷媒体Pを連続的に給紙搬送する場合には、二枚目以降の給紙位置精度が悪くなる。2枚目以降の給紙位置は、一枚目の給紙位置に比べて、印刷媒体Pの搬送方向4の上流側へずれる傾向がある。連続印刷中の二枚目以降の印刷媒体Pは、一枚目の正確な給紙位置より、搬送方向4の上流側へずれる傾向となる。その結果、印刷媒体Pの先端縁は、印字開始位置の手前までしか給紙されなくなってしまう。
これに対して、PF制御実行部41が、PE検後ASF搬送量56がPEセンサ36から印字開始位置までの距離に相当する搬送量になるときに停止するように、PFモータ31の駆動停止を制御すると、印刷媒体Pの先端縁は、印字開始位置に精度良く、給紙されるようになる。二枚目以降の印刷媒体Pの給紙位置は、1枚目以降の印刷媒体Pの給紙位置と略揃うようになる。
なお、実際には、PF制御実行部41は、ASF制御実行部42が減速停止制御を開始するときに、同時に、減速停止制御を開始すればよい。減速停止制御開始直前には、LDローラ11によるASF検出速度54と、PFローラ14によるPF検出速度51とは略一定の速度に揃っている。したがって、このように減速停止制御の開始タイミングを揃えることで、PF制御実行部41は、ASF制御実行部42がLDローラ11を停止するときに、PFローラ14を停止することができる。PF制御実行部41は、PEセンサ36が連続的に給紙される新たな印刷媒体Pを検出した後のLDローラ11の搬送量が所定の搬送量となるときにPFローラ14が停止するように制御することができる。
2枚目の印刷媒体Pを印字開始位置へ給紙した後、給紙処理指示部62は、連続印刷用の印刷データなどに基づいて、次ページ印刷の有無を判断する(ステップST14)。そして、たとえば3枚目以降の次ページ印刷が無い場合、給紙処理指示部62は、ASIC37へASFサブモータ33を駆動するための指示を供給する(ステップST15)。ASIC37は、ASFサブモータ33を駆動し、LD従動ローラ12は、LDローラ11から離間する。逆に、3枚目以降の次ページ印刷がある場合、給紙処理指示部62は、LD従動ローラ12をLDローラ11から離間させることなく、給紙処理を終了する。
以上の2枚目の印刷媒体Pの給紙処理により、2枚目の印刷媒体Pは、1枚目の印刷媒体Pの紙送り処理により既に給紙され始めている場合でも、2枚目の給紙処理後に給紙され始める場合であっても、印刷開始位置まで給紙される。
その後、インクジェットプリンタ1では、2枚目の印刷媒体毎の印刷データに基づいて、印字処理指示部65による印字制御と、紙送り処理指示部63による紙送り制御とを繰り返す。また、次制御判断部61が2枚目の印刷媒体毎の印刷データの最後のページ区切りデータを読み込むと、排紙処理指示部64による排紙処理が開始される。
インクジェットプリンタ1は、連続印刷用の印刷データに含まれる印刷媒体毎の印刷データを読込み、3枚目以降についても2枚目と同様の制御を実行する。そして、連続印刷中の次制御判断部61が最後の印刷媒体毎の印刷データを読み込むと、それまでとは異なる制御が実行される。
具体的には、最後の印刷媒体Pの紙送り処理では次の印刷ページが無いので、給紙処理指示部62は、図4中のステップST14の判断においてNo(最終ページ)と判断する。給紙処理指示部62は、たとえば印刷設定データ中の次ページ無しのデータに基づいてNo(最終ページ)と判断する。紙送り処理指示部63は、ASIC37へASFサブモータ33を駆動するための指示を供給する(ステップST15)。ASIC37は、ASFサブモータ33を駆動し、LD従動ローラ12は、LDローラ11から離間する。
また、紙送り処理指示部63は、次の印刷ページが無いので、図5中のステップST21の判断においてNoと判断する。紙送り処理指示部63は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量52(前回までの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、PF制御実行部41のみへPF目標速度を指示する(ステップST37)。これにより、印刷媒体Pは、PFローラ14のみにより搬送される。LD従動ローラ12とLDローラ11との圧接状態は解除されており、印刷媒体Pは、PFローラ14の回転にしたがって搬送される。
また、排紙処理指示部64は、次の印刷ページが無いので、図6中のステップST41の判断においてNo(最終ページ)と判断する。紙送り処理指示部63は、給紙されている印刷媒体Pを排紙トレイまで搬送することができる所定の搬送量を、PFローラ14によるPF目標搬送量(パルス数)とし、PF制御実行部41のみへPF目標速度を指示する(ステップST44)。LD従動ローラ12とLDローラ11との圧接状態は解除されており、印刷済みの印刷媒体Pは、PFローラ14のみにより搬送され、排紙トレイに排出される。
このようにインクジェットプリンタ1は、連続印刷用の印刷データの中の、最終ページの印刷データが供給されると、それまでの連続印刷中の印刷媒体Pに対する制御とは異なる制御を実行する。すなわち、インクジェットプリンタ1は、通常の印刷データに基づく印刷と略同じ紙送り制御を実行する。
図8は、この実施の形態のシンクロ(ならい)制御による紙送り制御の流れの一例と、同時駆動制御による紙送り制御の流れの一例とを示す説明図である。図8の上段は、シンクロ(ならい)制御による紙送り制御の流れである。図8の下段は、同時駆動制御による紙送り制御の流れである。また、この図8では、理解し易くするために、シンクロ(ならい)制御でのASF目標搬送量には、搬送量補正を考慮しないものを図示している。つまり、シンクロ(ならい)制御でのASF目標搬送量は、PF目標搬送量と一致している。また、図8には、6回分の紙送り制御を例示している。各回の紙送り制御では、PFロータリエンコーダ34の100ステップ分の紙送り量が指示されている。
紙送り処理指示部63は、この紙送り量の指示に基づいて、1回目の紙送り制御では「100(ステップ分)」のPF目標搬送量を、PF制御実行部31へ指示する。そして、PF制御実行部31の紙送り制御により、1回目の紙送り制御での実際のPF搬送量は「98」とすると、PF絶対搬送量52は「98」となる。ここで、PF絶対搬送量52の初期値は、仮に「0」としている。
紙送り処理指示部63は、2回目の紙送り制御では「102(=今回までの累積紙送り量「200」−前回までのPF絶対搬送量52「98」)」のPF目標搬送量を、PF制御実行部31へ指示する。そして、PF制御実行部31の紙送り制御により、2回目の紙送り制御での実際のPF搬送量は「99」とすると、PF絶対搬送量52は「197(=98+99)」となる。紙送り処理指示部63およびPF制御実行部31は、紙送り制御の度に、以上のような処理を繰り返す。
図8の下段の同期駆動制御では、紙送り処理指示部63は、ASF制御実行部42に対して、PF制御実行部31へのPF目標搬送量と同様の演算処理により得られるASF目標搬送量を指示する。すなわち、紙送り処理指示部63は、1回目のASF目標搬送量として「100」を指示し、2回目のASF目標搬送量として「100(=今回までの累積紙送り量「200」−前回までのASF絶対搬送量55「100」)」を指示する。
これに対して、図8の上段のシンクロ(ならい)制御では、紙送り処理指示部63は、ASF制御実行部42に対して、PF目標搬送量と同じ値のASF目標搬送量を指示する。すなわち、紙送り処理指示部63は、1回目のASF目標搬送量として「100」を指示し、2回目のASF目標搬送量として「102」を指示する。
仮に、図8の5回目の紙送り制御において、実際のPF搬送量が、何らかの要因で「60」と極端に少なくなったものとする。なお、実際のPF搬送量が「60」となっても、この値は実際のASF搬送量より少なくなるものなので、所謂バックテンションは発生しない。そして、6回目の紙送り制御でのASF目標搬送量は、図8の上段のシンクロ(ならい)制御では「141」となり、下段の同期駆動制御では「100」となる。
その結果、シンクロ(ならい)制御での6回目の紙送り制御では、その6回目の1回での紙送り制御における実際のPF搬送量と実際のASF搬送量との差は「0」となるのに対して、同期駆動制御でのその搬送量の差は「−40」となってしまう。このように、1回の紙送り制御において、実際のASF搬送量に比べて実際のPF搬送量が極端に大きくなると、印刷媒体Pの搬送後の状態は、搬送前の状態に比べてPFローラ14とLDローラ11との間で引っ張られるように変化する。この引っ張り方向への変化により、印刷媒体Pには、印刷媒体PをPFローラ14側からLDローラ11側へ引っ張る所謂バックテンションが作用することになる。
以上のように、この実施の形態に係るインクジェットプリンタ1は、連続印刷用の印刷データが供給されると、LDローラ11とPFローラ14とを共に駆動して、リア給紙トレイ2に載置されている複数の印刷媒体Pを連続的に給紙して印刷する。特に、この実施の形態に係るインクジェットプリンタ1は、上述した特徴的な構成および動作により、以下の効果を有する。
通常のインクジェットプリンタでは、印刷媒体P毎に、常に同じ印刷動作をする。具体的には、給紙処理指示部62は、ASFサブモータ33によりLD従動ローラ12をLDローラ11に圧接させた状態でPFローラ14およびLDローラ11を駆動し、リア給紙トレイ2から給紙スタンバイ位置および印字開始位置まで給紙処理を実行する。また、給紙処理指示部62は、給紙完了前にLD従動ローラ12とLDローラ11との圧接状態を解除する。紙送り処理指示部63は、PFローラ14を駆動し、給紙されている印刷媒体Pを所定量ずつ送る処理を実行する。排紙処理指示部64は、PFローラ14を駆動し、給紙されている印刷媒体Pを排紙トレイまで搬送する処理を実行する。
これに対して、この実施の形態のインクジェットプリンタ1は、連続印刷において、リア給紙トレイ2上の複数の印刷媒体Pを連続的に給紙する。また、印字開始位置までの給紙処理中に、所定のページ間ギャップ長を確保するように、ASFモータ32を駆動しない停止期間を設ける。その上で、インクジェットプリンタ1は、ページ間ギャップ長を開けて給紙される複数の印刷媒体Pを、シンクロ(ならい)制御により搬送する。
したがって、この実施の形態のインクジェットプリンタ1では、印刷する複数の印刷媒体Pの間隔を、PEセンサ36の検出に必要となる最小限のページ間ギャップ長に揃えることができる。つまり、連続給紙される2枚の印刷媒体Pの間隔として、最小限のページ間ギャップ長以上の間隔を確保してしまうことはない。また、連続印刷中には、LD従動ローラ12とLDローラ11とが圧接状態に維持される。このとき、連続印刷中に印刷媒体P毎にASFサブモータ33を駆動する必要が無くなり、その駆動制御の時間が不要となる。そのため、複数の印刷媒体Pに対する総合的な印刷時間を、通常のインクジェットプリンタより短くすることができる。また、LD従動ローラ12とLDローラ11との圧接状態を維持し続けるので、LD従動ローラ12とLDローラ11との接離動作にともなう当接音などの音の発生を効果的に減らすことができる。
特に、この実施の形態のインクジェットプリンタ1では、PFローラ14およびLDローラ11をともに駆動するときには、図7に示す特徴を有するシンクロ(ならい)制御により駆動する。シンクロ(ならい)制御では、紙送り処理指示部63などの処理指示部は、ASF制御実行部42に対して、PF目標搬送量を用いて、それよりも搬送量が多くなるように補正したASF目標搬送量を供給する。ASF制御実行部42は、このPF目標搬送量より搬送量が多くなるASF目標搬送量においてLDローラ11が停止するように、LDローラ11の駆動を制御する。
したがって、LDローラ11による実際の搬送量は、PFローラ14による実際の搬送量より多くなる。したがって、搬送後の印刷媒体Pは、搬送前の印刷媒体Pの状態よりもたるんだ状態となる。また、1回の紙送りなどの搬送制御において、LDローラ11による実際の搬送量が、PFローラ14による実際の搬送量に対して不足してしまうことを抑制することができる。搬送前後において、印刷媒体Pに大きなバックテンションが作用するように、印刷媒体Pの状態が変化してしまわないようにすることができる。
しかも、紙送り処理指示部63などの処理指示部は、PFローラ14による搬送量として、印刷中の印刷媒体Pを所定の目標紙送り量毎に断続的に搬送する紙送り制御での累積的な搬送量誤差を含む搬送量を演算し、PF制御実行部41へPF目標搬送量として供給する。したがって、PFローラ14による搬送量の、断続的な紙送り制御などでの搬送量誤差を補正することができる。バックテンションなどによって生じた搬送量誤差を補正することができる。
また、この実施の形態のインクジェットプリンタ1のPF制御実行部41は、ASF制御実行部42がLDローラ11の駆動を開始した後に、PFローラ14の駆動を開始する。したがって、PFローラ14の駆動が開始される前にLDローラ11の駆動が開始され、印刷媒体Pは、その時間差での搬送量により、PFローラ14とLDローラ11との間でたるむ。搬送制御中に、PFローラ14の搬送速度がLDローラ11の搬送速度より瞬時的に速くなることがあったとしても、搬送中の印刷媒体Pはたるんだ状態に維持される。搬送中に、印刷媒体Pに大きなバックテンションが作用しないようにすることができる。また、たとえばASF制御実行部42がLDローラ11の駆動を開始した後にPF制御実行部41がPFローラ14の駆動を開始することなどにより、LDローラ11の停止後にPFローラ14が停止する場合であっても、印刷媒体Pをたるんだ状態のままで停止する。印刷媒体Pの状態はたるんだ状態の範囲内で変化するので、停止時に、印刷媒体Pに大きなバックテンションが作用しないようにすることができる。
このように、この実施の形態のインクジェットプリンタ1では、紙送り制御などの搬送制御において、印刷媒体Pに大きなバックテンションが作用しないようにすることができる。したがって、印刷媒体Pに、バックテンションが作用し難くなる。そのため、印刷媒体Pの搬送方向4に対する姿勢が変化して斜め搬送となったり、搬送制御終了時の印刷媒体Pの実際の搬送量が目標とする搬送量に対して不足したりし難くなる。印刷媒体Pの搬送精度の低下を抑えることができる。また、印刷媒体Pには、バックテンションによるダメージが生じ難くなる。また、搬送制御による印刷媒体Pの引っ張り音が発生し難くなる。
以上の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や変更が可能である。
上記実施の形態では、検出値演算部43は、たとえばPEセンサ36の検出後の搬送量を、PE検後PF搬送量53およびPE検後ASF搬送量56としてメモリ39に保存している。この他にもたとえば、検出値演算部43は、PEセンサ36が印刷媒体Pを検出したときのPF絶対搬送量52の値やASF絶対搬送量55の値を、メモリ39に保存するようにしてもよい。
この変形例の場合、PF制御実行部41やASF制御実行部42は、メモリ39に記憶されているPF絶対搬送量52から、メモリ39に記憶されている検出したときのPF絶対搬送量の値を減算して、これをPE検後PF搬送量53と同じものとして利用すればよい。また、PF制御実行部41やASF制御実行部42は、メモリ39に記憶されているASF絶対搬送量55から、メモリ39に記憶されている検出したときのASF絶対搬送量の値を減算して、これをPE検後ASF搬送量56と同じものとして利用すればよい。
上記実施の形態では、インクジェットプリンタ1は、たとえばリア給紙トレイ2上の複数の印刷媒体Pを給紙する場合において、複数の印刷媒体Pを連続給紙している。この他にもたとえば、インクジェットプリンタ1は、フロント給紙トレイ3上の複数の印刷媒体Pを給紙する場合において、複数の印刷媒体Pを連続給紙するようにしてもよい。
1 インクジェットプリンタ(印刷装置)、2 リア給紙トレイ(給紙トレイ)、4 リア用印刷媒体搬送方向(印刷媒体の搬送方向)、11 LDローラ(上流側搬送ローラ)、14 PFローラ(下流側搬送ローラ)、31 PFモータ(下流側搬送モータ)、32 ASFモータ(上流側搬送モータ)、36 PEセンサ(センサ)、41 PF制御実行部(下流側搬送制御手段)、42 ASF制御実行部(上流側搬送制御手段)、62 給紙処理指示部(下流側搬送量演算手段の一種、上流側搬送量演算手段の一種)、63 紙送り処理指示部(下流側搬送量演算手段の一種、上流側搬送量演算手段の一種)、64 排紙処理指示部(下流側搬送量演算手段の一種、上流側搬送量演算手段の一種)、P 印刷媒体