以下、図面を参照しながら実施例によって本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
図1は記録装置の全体構成を示す斜視図,図2は用紙搬送駆動系の断面図、図3は用紙搬送系の断面図である。
記録装置は、(A)自動紙給紙、搬送部、(B)キャリッジ部、(C)排紙部、(D)クリーニング部からなっている。そこで、これらを項目に分けて概略を順次述べる。
(A)自動給紙部、搬送部
2つの自動給紙部を有している。以後、上方の自動給紙をASF給紙と呼び、下方の自動給紙部をUターン給紙及びカセット給紙と呼ぶ。
A−1 ASF給紙搬送部
記録紙Pを積載する圧板1、記録紙Pを給紙する給紙ローラ301、記録紙Pを分離する分離ローラ302、記録紙Pを積載位置に戻す為の戻しレバー(不図示)、等がASFベース2に取り付けられる構成となっている。
給紙ローラー301は断面円形状をしており、これによって記録紙を給紙する。給紙ローラ301への駆動は、後述のクリーニング部と共用の不図示のモータ(以後APモータ)から伝達される。
圧板1にはサイドガイド3が移動可能に設けられて、記録紙Pの積載位置を規制している。圧板1はASFベース2に結合された回転軸を中心に回転可能で、圧板バネ302により給紙ローラ301に付勢される。圧板1は不図示のカムによって、給紙ローラ301に、当接、離間できるように構成されている。
さらに、記録紙Pを一枚ずつ分離するための分離ローラ303を取り付けた分離ローラーホルダ304がASFベース2に設けられた回転軸を中心に回転可能で、分離ローラーバネ(不図示)により給紙ローラ301に付勢される。分離ローラ303は、クラッチバネ(不図示)が取り付けられ、所定以上の負荷がかかると、回転できる構成になっている。分離ローラ303は不図示のコントロールカムによって、給紙ローラー28に、当接、離間できるように構成されている。
また、記録紙Pを積載位置に戻す為の不図示の戻しレバーは、回転可能にベース2に取り付けられ、記録紙Pを戻す時は、前記不図示のコントロールカムによって回転するように構成されている。
給紙が始まると、不図示のAPモータの駆動によって、まず、分離ローラ303が給紙ローラ301に当接する。そして、戻しレバー(不図示)がリリースされ、圧板1が給紙ローラ301に当接する。この状態で、記録紙Pの給紙が開始される。送られた記録紙Pはこのニップ部で分離され、最上位の記録紙Pのみが給紙される。
給紙された記録用紙Pは、LFピンチローラ5が取り付けられ、記録紙Pのガイドも兼ねるピンチローラホルダ6およびペーパーガイド319及びこのペーパーガイド319に回動可能に取り付けられ印字中は下方に下りている両面切り替えガイド317により案内されて、LF搬送ローラー4とLFピンチローラ5とのローラニップに送られる。ここで、LFピンチローラ5は不図示のバネにより搬送ローラ4に押圧されて搬送力を生み出している。また、第1の用紙位置検知センサレバー318が搬送されてきた記録紙Pの先端により回動され、レバーの動作を用紙端部位置検知センサ(不図示)により検知することで記録用紙の先端位置を検知して、これにより記録紙Pの印字位置を求めている。また、印字時には、記録紙PはLF搬送ローラ4とLFピンチローラ5のローラ対によりプラテン8上を搬送される。
A−2 Uターン給紙・自動両面搬送部
装置前面に設けられたカセット305に記録紙Pが収納される。この記録紙Pを分離給紙する為に、記録紙Pを積載し、Uターン給紙ローラ306に当接させるカセット圧板307がカセット306に設けられている。記録紙Pを給紙する給紙ローラー306、記録紙Pを分離するUターン分離ローラ308、記録紙Pを積載位置に戻す為のUターン戻しレバー309等が本体のUターンベース310取り付けられる構成となっている。
Uターン給紙ローラ306は断面半月形状をしており、これによってシート材を給紙する。
カセット圧板307にはカセットサイドガイド311が移動可能に設けられて、記録紙Pの積載位置を規制している。カセット圧板307はカセット305に結合された回転軸を中心に回転可能で、左右に設置されたカセットアーム211とカセット圧板バネ212によりUターン給紙ローラ306に付勢される。カセット圧板307は給紙ローラ306軸上に設けられた圧板カム210によって、給紙ローラ306に、当接、離間できるように構成されている。
さらに、Uターンベース310には、記録紙Pを一枚ずつ分離するための分離308を取り付けたUターン分離ローラーホルダ312が回転軸を中心に回転可能で、分離ローラーバネ(不図示)により給紙ローラ306に付勢される。Uターン分離ローラ308は、クラッチバネ(不図示)が取り付けられ、所定以上の負荷がかかると、回転できる構成になっている。Uターン分離ローラ308は不図示のコントロールカムによって、Uターン給紙ローラ306に、当接、離間できるように構成されている。
また、記録紙Pを積載位置に戻す為のUターン戻しレバー309は、回転可能にUターンベース310に取り付けられ、解除方向に戻しレバーバネ(不図示)で付勢されている。シート材Pを戻す時は、前記コントロールカム(不図示)によって回転するように構成されている。
通常の待機状態では、Uターン圧板307は圧板カム210でリリースされ、Uターン分離ローラ308はリリースされ、Uターン戻しレバー309はシート材Pを戻し、積載時に記録紙Pが奥に入らないように、積載口を塞ぐような積載位置に設けられている。この状態から、給紙が始まると、第2の搬送モータ32の駆動によって、まず、Uターン分離ローラ308がUターン給紙ローラ306に当接、Uターン戻しレバー309がリリース、カセット圧板307がUターン給紙ローラ306に当接する。この状態で、記録紙Pの給紙が開始される。記録紙Pは分離ローラニップ部で分離され、最上位のシート材Pのみが搬送される。
分離・搬送された記録紙が第1のUターン搬送ローラ205、第1のUターンピンチローラ313まで到達すると、カセット圧板307は圧板カム210によって、Uターン分離ローラ308は前記不図示コントロールカムによって、リリースされ、Uターン戻しレバー309は積載位置に戻る。この時、分離ニップ部に到達していた記録紙Pを積載位置まで、戻すことができる。
給紙部分より下流側には、給紙・搬送された記録紙Pを搬送する為の、第1のUターン搬送ローラ205、第2のUターン搬送ローラ206の2本の搬送ローラーが構成されている。(以後、第1、2のUターンローラの両方を示す場合は、単にUターン搬送ローラと呼ぶ)このゴム部に対応した位置に、シート材Pを挟持するための、第1のUターンピンチローラ313、第2のUターンピンチローラ314がばね軸(不図示)で取り付けられ、各Uターン搬送ローラに付勢している。(以後、第1、2のUターンピンチローラの両方を示す場合は、単にUターンピンチローラと呼ぶ)また、搬送パスを形成する為に、内側を形成するUターンインナーガイド320、321、322、外側を形成するUターンアウターガイド323、リアガイド324、ASFベース2の下面の紙ガイド部2aが構成されている。
前述の給紙部2との紙パスの合流点は回動可能なフラッパ316で構成され、お互いのパスの合流がスムーズに行くように構成されている。
Uターン搬送ローラ205,206で搬送された記録紙Pは、第1の用紙位置検知センサレバー318より上流位置で上記ASF給紙パスと合流し、搬送印字される。
印字時には、記録紙PはLF搬送ローラ4のローラ対のみならず、搬送領域によってはLF搬送ローラ4のローラ対とUターン搬送ローラ205、206のローラ対の同期送りによりプラテン8上を搬送される。記録紙Pのこのプラテンに位置する領域に対して、記録ヘッドが走査することで記録がなされる。そして、この記録ヘッドの走査記録と搬送動作が交互に行われ、記録紙Pに画像記録が行われる。
また、第2の用紙位置検知センサレバー330が、Uターン搬送ローラ205より搬送方向上流に位置しており、記録紙P抜け時の第2の用紙位置検知センサレバー330の回動動作を不図示のセンサで検知することで、第1のUターン搬送ローラ205のローラ対を記録紙Pの後端が抜ける前に、記録紙Pの後端位置を検知する事ができる。
自動両面印字の際は、記録紙Pの後端が再度LF搬送ローラ4とLFピンチローラ5に挟み込まれ、搬送される。再度送り込まれた記録紙Pは、両面搬送ローラ209と両面ピンチローラ315に挟持され、搬送される。そして、記録紙Pは、不図示の切り替え機構で上方回動された両面切り替えガイド317にガイドされ、両面搬送パス内へ搬送される。搬送された記録紙Pは、ペーパーガイド319の下面、両面インナーガイド328、両面アウターガイド325、326、アンダーガイド327により案内される。
両面用の紙搬送パスは、フラッパ316を過ぎると、前述のUターン搬送時の紙パスに合流する構成になっている。従って、その後の、紙パスの構成、作用は、上記内容と同一である。
印字時には、記録紙Pは搬送ローラ4のローラ対搬送、搬送領域によっては搬送ローラ4のローラ対とUターン搬送ローラ205、206のローラ対の同期送り搬送のみならず、LF搬送ローラ4のローラ対とUターン搬送ローラ205、206のローラ対、両面搬送ローラ209のローラ対の同期送り搬送によりプラテン8上を搬送される。
A−3 搬送部の駆動系
LF搬送エンコーダセンサ28がシャーシ12に取り付けられている。LF搬送モータ25の駆動力はLF搬送タイミングベルト30を介して搬送ローラ4に圧入固定されたLF搬送ローラギア(不図示)に伝達される。このLF搬送エンコーダセンサ28によりLF搬送ローラギア(不図示)に固定されたLF搬送エンコーダスケール26のライン数を読み取ることで得られるLF搬送ローラ4の回転量(速度)情報からフィードバック制御を行い、DCモータであるLF搬送モーター25を回転制御して記録用紙Pが搬送される。
一方Uターン、自動両面搬送の駆動は、Uターン搬送モータ32の駆動力はUターン搬送タイミングベルト201を介してスケールアイドラギア202に伝達され、更に第1のUターン搬送ローラ205と第2のUターン搬送ローラ206にそれぞれ固定された第1のUターン搬送ローラギア203と第2のUターン搬送ローラギア204に伝達される。第2のUターン搬送ローラギア204の先にアイドラギア207を介して両面搬送ローラ209に固定された両面搬送ローラギア208に伝達されている。ここで、スケールアイドラギア202同軸上に固定されたUターン搬送エンコーダスケール202のライン数をUターン搬送エンコーダセンサ213で読み取ることで得られる第1のUターン搬送ローラ205、第2のUターン搬送ローラ206、両面搬送ローラ209の回転量(速度)情報からフィードバック制御を行い、DCモータであるUターン搬送モーター32を回転制御して記録用紙Pが搬送される。
Uターン給紙ローラ306への駆動は、第1のUターン搬送ローラ205と第2のUターン搬送ローラ206の先の遊星ギア等(不図示)によって伝達される。
(B)キャリッジ部
キャリッジ部は、ヘッドカートリッジ7を取り付けるキャリッジ9を有している。そしてキャリッジ9は、記録紙Pの搬送方向に対して直角方向に往復走査させるためのガイド軸10およびキャリッジ9の上部後端を保持して記録ヘッド7と記録紙Pとの隙間を維持するガイドレール11によって支持されている。なお、これらガイド軸10およびガイドレール11は、シャーシ12に取り付けられている。
キャリッジ9はシャーシ12に取り付けられたDCモータであるキャリッジモータ13によってタイミングベルト14を介して駆動される。このタイミングベルト14は、アイドルプーリ15によって張設、支持されている。さらに、キャリッジ9には、電気基板16からヘッドカートリッジ7へヘッド信号を伝えるためのフレキシブルケーブル17が備えられている。また、キャリッジ9にはキャリッジの位置を検出するリニアエンコーダ(不図示)が搭載されており、シャーシ12に取り付けられたリニアスケール18のライン数を読みとることにより、キャリッジ9の位置を検出することができる。このリニアエンコーダ18の信号は、フレキシブルケーブル17を介して、電気基板16に伝えられ処理される。電気関連部品への電圧及び電流は電源29により供給される。
上記構成において、記録紙Pに画像形成する時は、画像形成する行位置(記録紙Pの搬送方向の位置)に上述のLF搬送ローラが記録紙Pを搬送するとともに、キャリッジモータ13と、リニアエンコーダを使用したフィードバック制御により、キャリッジ9を画像形成する列位置(記録紙Pの搬送方向と垂直な位置)に移動させて、ヘッドカートリッジ7を画像形成位置に対向させる。その後、電気基板16からの信号により、ヘッドカートリッジ7が記録用紙Pに向けてインクを吐出して画像が形成される。
(C)排紙部
排紙部は、排紙ローラ19に従動して回転可能なように拍車ホルダ27にバネ軸(不図示)で固定された拍車304が排紙ローラ19に当接されている。排紙ローラ19には、LF搬送ローラギア(不図示)からの駆動が排紙伝達ギア31、排紙ローラギア20を介して伝達される。以上の構成によって、駆動されキャリッジ部で画像形成された記録用紙Pは、排紙ローラー19と拍車304とのニップに挟まれて搬送され、不図示の排紙トレー等に排出される。
(D)クリーニング部
ヘッドカートリッジ7のクリーニングを行なうポンプ24とヘッドカートリッジ7の乾燥を抑えるためのキャップ21、ヘッドカートリッジ7のフェイス面を清掃するワイパー22、および駆動源である不図示のAPモータから構成されている。
図4は、電気基板16上に構成されたプリンタの制御構成を説明するブロック図である。
同図において、401はプリンタ装置のプリンタ制御用のCPUで、ROM402に記憶されたプリンタ制御プログラムやプリンタエミュレーション、印字フォントを利用して印刷処理を制御する。
403はRAMで、印字のための展開データ、ホストからの受信データを蓄える。404は記録ヘッド(前述のヘッドカートリッジ7のブロック図表現)、405はモータを駆動するモータドライバ、406はプリンタコントローラで、RAM403のアクセス制御やホスト装置とのデータのやりとりやモータドライバへの制御信号送出を行う。407はサーミスタ等で構成される温度センサで、プリンタ装置の温度を検知する。
CPU401はROM402内の制御プログラムにより本体のメカ的/電気的制御を行いつつ、ホスト装置からプリンタ装置へ送られてくるエミュレーションコマンド等の情報をプリンタコントローラ406内のI/Oデータレジスタから読み出し、コマンドに対応した制御をプリンタコントローラ406内のI/Oレジスタ、I/Oポートに書き込み、読み出しを行う。
図5は一般的なDCモータの位置制御系を説明する模式図であり、位置サーボをかける場合の手法について示している。本実施例装置において位置サーボは、加速制御領域、定速制御領域、減速制御領域において使用される。DCモータは、PIDコントロールあるいは古典制御と呼ばれる手法で制御されており、以下その手順を説明する。
まず、制御対象に与えたい目標位置は、6001の理想位置プロファイルという形で与える。本実施例装置においては、これは該当する時刻においてラインフィードモータによって搬送された紙が到達しているべき絶対位置に該当する。時刻の進行とともに、この位置情報は変化していく。この理想位置プロファイルに対して追値制御を行うことで、本実施例装置の駆動は遂行される。
装置には6005のエンコーダセンサが具備されており、モータの物理的な回転を検知する。6009のエンコーダ位置情報変換手段は、エンコーダセンサが検知したスリット数を加算していき絶対位置情報を得る手段であり、6006のエンコーダ速度情報変換手段はエンコーダセンサの信号と、プリンタに内蔵された時計から、現在のラインフィードモータの駆動速度を算出する手段である。
6001の理想位置プロファイルから、6009の位置情報変換手段により得られた実際の物理的位置を減算した数値を、目標位置に対して足りない位置誤差として、6002以降の位置サーボのフィードバック処理に受け渡す。6002は位置サーボのメジャーループであり、一般的には比例項Pに関する計算を行う手段が知られている。
6002における演算の結果としては、速度指令値が出力される。この速度指令値が、6003以降の速度サーボのフィードバック処理に受け渡される。速度サーボのマイナーループは、比例項P、積分項I、微分項Dに対する演算を行うPID演算により行う手段が一般的である。本実施例装置においては、速度指令値の非線形な変化が発生した場合の追従性を改善し、なおかつ追値制御時の微分演算の弊害を防ぐために、一般に微分先行形と呼ばれる手法を示しており、6006で得られたエンコーダ速度情報は、6002で得られた速度指令値との差を取る前に、6007の微分演算を通される。この手法自体は本発案の主題となるものではなく、制御対象の系の特性によっては、6003において該微分演算を行えば充分なものもある。
速度サーボのマイナーループにおいては、速度指令値からエンコーダ速度情報を減算した数値を、目標速度に対して足りない速度誤差として、6003のPI演算回路に受け渡し、その時点でDCモータに与えるべきエネルギーを、PI演算と呼ばれる手法で算出する。それを受けたモータドライバ回路は、例えばモータ印加電圧は一定として、印加電圧のパルス幅を変化させる手段(以下「PWM(Pules Width Modulation)制御」と呼ぶ)を用い、印加電圧のDutyを変化させて、電流値を調節し、6004のDCモータに与えるエネルギーを調節し、速度制御を行う。
電流値を印可されて回転するDCモータは、6008の外乱による影響を受けながら物理的な回転を行い、その出力が6005のエンコーダセンサにより検知される。
図6は一般的なDCモータの速度制御系を説明する模式図であり、速度サーボをかける場合の手法について示している。本実施例装置において速度サーボは、位置決め制御領域において使用される。DCモータは、PIDコントロールあるいは古典制御と呼ばれる手法で制御されており、以下その手順を説明する。
まず、制御対象に与えたい目標速度は、7001の理想速度プロファイルという形で与える。本実施例装置においては、これは該当する時刻においてラインフィードモータにより紙を搬送すべき理想速度であり、該当する時刻における速度指令値ということになる。時刻の進行とともに、この速度情報は変化していく。この理想速度プロファイルに対して追値制御を行うことで、本実施例装置の駆動は遂行される。
速度サーボにおいては、比例項P、積分項I、微分項Dに対する演算を行うPID演算により行う手段が一般的である。本実施例装置においては、速度指令値の非線形な変化が発生した場合の追従性を改善し、なおかつ追値制御時の微分演算の弊害を防ぐために、一般に微分先行形と呼ばれる手法を示しており、6006で得られたエンコーダ速度情報は、7001で得られた速度指令値との差を取る前に、7003の微分演算を通される。この手法自体は本発案の主題となるものではなく、制御対象の系の特性によっては、7002において該微分演算を行えば充分なものもある。
速度サーボにおいては、速度指令値からエンコーダ速度情報を減算した数値を、目標速度に対して足りない速度誤差として、7002のPI演算回路に受け渡し、その時点でDCモータに与えるべきエネルギーを、PI演算と呼ばれる手法で算出する。それを受けたモータドライバ回路は、例えばPWM制御を用い、印加電圧のDutyを変化させて、電流値を調節し、6004のDCモータに与えるエネルギーを調節し、速度制御を行う。
電流値を印可されて回転するDCモータは、6008の外乱による影響を受けながら物理的な回転を行い、その出力が6005のエンコーダセンサにより検知される。
図7、8、9は、本実施例装置におけるLF制御において外乱の及ぼす影響と制御の実際について、詳細に説明したものである。横軸は時間を示している。2001の縦軸は速度を、2002の縦軸は位置を示している。
図7は停止直前速度v_stopが、平均的かつ理想的な値V_APPROACHで終了する場合(t_approach=T_APPROACH)を示し、図8はt_approach<T_APPROACHすなわち見込み時間よりも早く終了する場合を示し、図9はt_approach>T_APPROACHすなわち見込み時間よりも遅く終了する場合を示している。
8001は理想位置プロファイルを示しており、2004は理想速度プロファイルを示している。該理想位置プロファイル8001は4つの制御領域からなり、加速制御領域2011、定速制御領域2012、減速制御領域2013、位置決め制御領域2014により構成されている。
2004の理想速度プロファイルにおいて、V_STARTは初速度であり、V_FLATは定速制御領域2012の速度を示している。V_APPROACHは位置決め制御領域の速度を示しており、V_PROMISEは位置決め精度性能を達成するために絶対に守られなければならない停止直前速度の最速値を示している。v_stopは、現実の駆動を想定した場合に外乱によってあらゆる値に変化する現実の値としての停止直前速度である。実際の駆動における速度変動を考慮して、V_APPROACHはいかなる速度変動が発生してもv_stopがV_PROMISEを超えることがないよう充分に低く設定された速度であることが要求される。
本実施例装置においては、2011、2012、2013では位置サーボを、2014では速度サーボを採用している。図示した8001の曲線は、位置サーボ時の理想位置プロファイルを示している。図示した2004の曲線は、速度サーボ時には理想速度プロファイルを示し、位置サーボ時には該理想位置プロファイルに追従して動作するために求められる要求速度プロファイルを示している。
8001は理想位置プロファイルであり、位置サーボを行う2011、2012、2013の各領域に対して設定されるが、S_APPROACHまでしか計算されない。これは、S_APPROACHを通り過ぎると速度サーボに切り替わるため、S_APPROACH以降では理想位置プロファイルが不必要であるからである。8001における減速所要時間T_DECは現実の駆動と関わりなく一定であり、これに該当する制御領域を理想減速制御領域9001として示すものとする。
8003、9003、10003は、各図における外乱影響の状況における現実位置プロファイルである。位置サーボにおいては、遅れが必ず発生するため、8001に対して8003、9003、10003はいずれも遅れを持っている。従って、理想位置プロファイル8001が終了しても、現実位置はS_APPROACHには到達しないことが一般的であり、本実施例装置においては、8001が終了してから現実の駆動がS_APPROACHに到達するまでの間には、仮想の理想位置プロファイル8006によって位置サーボへの指令位置値として代用するものとする。仮想の理想位置プロファイル8006は、理想位置プロファイル8001の最終的な傾きを用いて、理想位置プロファイルの終点から伸ばした直線とする。
8005、9005、10005は、物理的なモータの現実駆動速度プロファイルを意味している。理想位置プロファイル8001を入力としてフィードバック制御をかけていき、理想速度プロファイルに対して若干の遅れを出しつつも、位置決め制御領域2014が進むに従って理想速度に近づいて、最終的な停止直前速度としては位置決め精度性能を達成できる速度V_APPROACHに収束せんとするものである。なお、減速制御領域2013から位置決め制御領域2014への移行は、物理的な駆動速度状態に関わらず、S_APPROACHに達した瞬間に行われるものとする。
S_DECは定速制御領域2012が終了して減速制御領域2013が開始される位置を示しており、あくまでも理想位置プロファイル8001によって決定づけられる値であるため、現実の駆動における外乱の影響とは無関連である。
図中のS_APPROACHは減速制御領域2013が終了して位置決め制御領域2014が開始される位置を示しており、S_STOPは停止位置を示している。T_ADDは加速制御領域2011に費やされる所要時間であり、T_DECは減速制御領域2013に費やされる所要時間である。T_FLATは定速制御領域2012に費やされる時間であり、駆動開始位置を0としたときの停止位置S_STOP、すなわち総駆動距離を満足する理想位置プロファイル8001を設定した時点で決定する固定値である。T_APPROACHは位置決め制御領域2014に費やされる時間を示している。T_APPROACHは、駆動制御対象が実際に動いたときに、位置決め制御領域2014に突入する位置S_APPROACHから停止位置S_STOPまでの距離S_APR_STOPを移動するのに要する時間である。図7では、位置決め領域を駆動制御対象がほぼ理想速度通りに動いた場合を示しているが、現実の制御において理想通りの物理的動作は一般的に大変困難である。
高速かつ高精度の位置決めを行うために、理想位置プロファイル8001のカーブは系に適したチューニングが必要である。具体的には、定速制御領域2012の速度は位置決め所要時間性能の向上を実現するために系の性能の許す限り速く、位置決め制御領域2014の速度は位置決め精度性能の向上を実現するために系の性能の許す限り遅く、さらに加速制御領域2011、減速制御領域2013、位置決め制御領域2014の距離は位置決め所要時間性能の向上を実現するために系の性能の許す限り短くなるように理想位置プロファイル8001を設定することが望ましい。しかしながら、より詳細な該チューニングの手法については本発案の主題となるものではないため、ここではすでに該理想位置プロファイル8001が最適調整されているものとして説明を進める。
t_approachは、現実の駆動を想定した場合に外乱によってあらゆる値に変化する現実の値として、位置決め制御領域2014に費やされる時間の現実変数値である(本実施例装置における説明では、定数値を英大文字、変数値を英小文字で示している。同一スペリングの値について英大文字、英小文字の表記がある場合、英大文字で示された値は理想定数値であり、英小文字で示された値は同じ内容の値について変化しうる変数値を示している)。
次に、本発明の主題となる複数のサーボ制御駆動源による複数の搬送ローラの駆動方法を述べる。
用紙搬送上流側のUターン搬送ローラ205,206の回転制御と下流側のLF搬送ローラ4の回転制御にはおのおの上述の制御が独立に適用されている。その際、制御目標となる理想プロファイルは同一のプロファイルが設定してある。もちろんローラ直径やローラ表面上解像度に相違がある場合には、ローラ表面送り距離が一致する様(減速比を考慮して)プロファイルが設定されている。
理想的には、Uターン搬送ローラ205,206により記録紙Pを搬送している区間のUターン搬送経路で発生した搬送抵抗(搬送負荷)とUターン搬送ローラ205,206の搬送力が釣り合った状態を維持できれば良い。すなわち、LF搬送ローラ4のみで搬送している領域に対応して、Uターン搬送経路領域を送る場合に、搬送力と搬送抵抗力が釣り合った外力0をLF搬送ローラ4に与えるものであれば、LF搬送ローラ4による搬送量に変化は生じない。
Uターン搬送経路で発生した搬送抵抗とUターン搬送ローラ205,206の搬送力が釣り合った状態を常に維持することは困難であるが、Uターン搬送経路形状、Uターン搬送ガイド部の摩擦係数、各ローラの摩擦係数と従動ローラの圧接力すなわち搬送力、搬送用紙のコシ(剛度)と摩擦係数が分かっていればこれに近い状況を作り出すことが可能である。
本実施形態では2本のUターン搬送ローラ205,206によりUターン搬送経路を搬送する形態を示すが、1本のUターン搬送ローラでも同様の手法を適用でき、なんら本発明の範囲を逸脱するものではない。
この形態において、搬送経路内を記録紙Pが搬送される場合において、記録紙Pの後端が存在する位置(領域)における搬送抵抗の変化を図10から図14を用いて説明する。記録紙PがLF搬送ローラ4とUターン搬送ローラ205,206とで搬送されていることを示す図である。
図10は、記録紙Pの後端が搬送ローラ205の上流位置(搬送方向)にあることを示し、図13は、記録紙Pの後端が、搬送ローラ206と搬送ローラ205の間に位置することを示す。また、図14は、記録紙Pの後端が、搬送ローラ206の下流位置(搬送方向)にあることを示す。
図10において、領域U1に記録紙Pの後端がある状態では搬送抵抗に大きな変化はない。第1のUターン搬送ローラ205に記録紙P の後端が近づけば近づくほど記録紙Pとリアガイド324の当接ポイントTが近くなるが、記録紙Pの曲げ角度が小さくなっていくため搬送抵抗の変化は少ない。ここで、U1の搬送方向下流側の境界は、記録紙Pがリアガイド324から離れる地点である。
その後、図11に示すように、ガイド部から記録紙Pが離間しているU2の領域では、記録紙Pの後端がリアガイド324からの第1のUターンピンチローラ313の突出量によりリアガイド324から離間するにつれ搬送抵抗が減少する。
そして、図12に示すように、第1のUターン搬送ローラ205を抜けて回転物である第1のUターンピンチローラ313を抜けた途端に、記録紙Pのコシによる復元力で記録紙Pの後端に大きな抵抗力が生まれ、さらに第2のUターンピンチローラ314の下流側の位置Tでも紙ガイド2aに記録紙Pが当接すると共に第1のUターン搬送ローラ205の搬送力も存在しなくなり、大きな搬送抵抗が発生する(U3領域)。ここで、第1のUターン搬送ローラ205の抜け前と抜け後の領域では搬送抵抗も異なっている。
その後、図13に示すように、U4領域では記録紙の曲げ角度が小さくなって位置Tでの搬送抵抗がなくなった状態で、領域U1と同様に第2のUターン搬送ローラ206に記録紙Pの後端が近づけば近づくほど記録紙Pと紙ガイド部の当接ポイントTが近くなるが、記録紙Pの曲げ角度が小さくなっていくため、大きな搬送抵抗変化は発生しない。
そして、図14に示すように、第2のUターン搬送ローラ206を抜けた領域U5ではUターン形状の搬送パスの抵抗を受けることもUターン搬送ローラの搬送力を受けることもないため、搬送抵抗は安定している。ただし、第2のUターン搬送ローラ206を抜ける近傍では、Uターン搬送ローラからの記録紙Pの抜け方向と用紙搬送方向が等しいため(第2のUターン搬送ローラ206と第2のUターンピンチローラ314が仮想Uターン円からLF搬送ローラ4のニップへの接線の接点の位置に配置してあるため)搬送抵抗の変化は発生しないが、第2のUターン搬送ローラ206のニップを抜ける前後で搬送抵抗の差が発生している。これは今まで付加されていたUターン搬送経路の搬送抵抗が急に失われるためである。
上述の搬送抵抗の変化は、Uターン紙ガイド形状、Uターン搬送ローラの本数と配置、Uターンピンチローラの突出量、ピンチローラから記録紙Pが抜ける方向(搬送方向)により変化するものであり、実施形態に応じた搬送抵抗を個別に把握し、搬送制御に反映させる。
この搬送抵抗の変化がLF搬送ローラの搬送量に与える影響を低減するために、Uターン搬送ローラ205,206の送り量に補正値を設定し領域毎に可変設定を行う。図10から図14の搬送抵抗によるLF搬送ローラ4の搬送量変化(正確にはピンチローラのバネ圧損失も含んだ余剰搬送力の変化)を図15に模式的に示した。図15の横軸は搬送領域を表し、縦軸は搬送量変化を表す。
Uターン搬送ローラ205,206の送り量に補正値を設定し領域毎に可変設定を行うことで、図15(A)の状態から図15(B)に示すように改善するものである。
この可変制御は、以下のように行われる。LF搬送量ローラ4のみで搬送する領域U5のLF搬送量に対して、LF搬送量が多い領域U1,U2ではUターン搬送ローラ205,206の搬送量補正値を小さくしてLF搬送ローラ4に対して搬送抵抗を与えるように搬送量の補正値を設定する。
また、LF搬送量が少ない領域U3,U4ではUターン搬送ローラ205,206の搬送量の補正値を大きくして、領域U5のLF搬送量に近づける。この設定により、LF搬送ローラ4に対して搬送抵抗を低減することができる。
例えば、上述した搬送量の補正値について補足する。この補正値は、図7で説明した定速制御領域2012を長くする(長さを変更する)。あるいは、図7で説明した位置決め制御領域2014の長さを変更しても構わない。
好ましくは、この補正値はあらかじめ搬送する記録紙Pの種類別に求めておき、ユーザの指定したプリンタドライバの記録紙の種類選択指令に応じて補正値を選択する制御構成、あるいは、紙種類を検知するセンサの検知結果に応じて補正値を選択する制御構成でもよい。このことで、コシの強さの異なる記録紙に対しても適切な補正値を設定することができる。
図15(B)に示すように、各領域の境界に若干の変動する領域(不連続点)が存在するが、その境界領域においては、さらに細かく領域を分けて、それぞれ補正値を段階的に変化させる制御を行ってもかまわない。この制御により更にLFローラでの搬送量を安定化することが可能である。
ここで、Uターン搬送ローラ205、206の送り量の補正値を可変とするところに大きな意味を持つ。第1の理由が、Uターン搬送ローラの搬送量は、調整できる幅が大きい。LF搬送ローラ4を補正すると、ダイレクトに補正の結果が出て、補正がずれた場合には、搬送精度を低下させる可能性がある。
そこで、影響が少なく補正量を大きくすることができるUターン搬送ローラ205,206に大して補正を行ったほうが、容易でかつ安定的な搬送制御を行うことができる。
第2の理由が、搬送されている記録紙Pの挙動の安定化である。LF搬送ローラ4のみで補正しようとすると、搬送抵抗が大きい場合、すなわち、Uターン搬送ローラ205、206による搬送量が少ないために、LF搬送ローラ4とUターン搬送ローラ205、206との間の記録紙Pは引っ張られている状態にある。搬送量を長くしようとして、LF搬送ローラ4が更に引っ張ろうとする。逆に、搬送抵抗が小さい場合には、その状態で補正をかけると、LF搬送ローラ4は搬送量を少なくしようとして、さらに押し合う状態になる。だから、記録紙Pに対してこのような作用が働けば、記録紙Pの挙動は安定しない。特にUターン搬送ローラ205,206を記録紙Pの後端が抜ける(通過する)ときのLF搬送量変化を安定化するのが困難となる。更には引っ張りすぎ、押し込みすぎた場合には、限界点近傍では補正のリニアリティーから大きく逸脱し、所望の補正を得られない可能性がある。これらの理由からもUターン搬送ローラ205,206の搬送量に対して補正を行うのである。
本実施形態ではすでに記したように、このUターン搬送ローラ205,206の補正値を搬送抵抗が発生する領域に分けて可変に設定する。この領域の切り替え地点を判断する手段として第2の用紙位置検知センサレバー330を使用する。
記録紙Pの後端の検知を、この第2の用紙位置検知センサレバー330が検知したタイミング(搬送位置)を基点として、上述した領域U1〜U5の切り替え地点に、記録紙Pの後端が搬送されたところで、Uターン搬送ローラ205,206の補正値を変更する。
ここで、少なくとも搬送量の急激な変化が発生するUターンピンチローラ313,314の位置よりも搬送方向の上流側に位置することが必要となる。この様に、記録紙後端をこの第2の位置検知手段が検知したタイミング(搬送位置)を基点とすることで、搬送量が変化する地点を正確に判断することができる。
この搬送量補正に加えて、補正量の累積ずれを防止するために、更にUターン搬送の送り指令の起点位置を切り替える閾値を設定する。この説明を図16を用いて説明する。この図は、記録紙が左から右に移動する様子を示したもので、矢印はその移動を示している。記号F1からF4はそれぞれ1回の搬送動作を示している。
図16(A)において、理想的には、搬送動作Fi1〜Fi4により、理想とする停止位置PT0、PT1、PT2にそれぞれ停止する。しかし、実際には駆動系や記録紙Pのコシのチャージ等により、実際の動作F1では、(理想とする)目標停止位置PT0からΔP0だけずれた位置PA0に停止する(矢印は、PT0まで進むが、ΔP0分逆戻りしてPA0に停止することを示している)。
そこで、送り長さピッチPPを停止位置の変動の影響に係らず一定にするため、次の搬送動作の停止する目標停止位置PT1を、実際に停止した位置PA0に基づく位置ではなく、前回の停止目標位置PT0に基づいて算出する。つまり、前回の停止目標位置PT0にピッチPPを加算した位置(PT0+PP)を次に停止する目標停止位置PT1として、その停止位置のための搬送量で搬送(F2)を行う。
これにより、図16(A)に示すように、ずれΔP1が発生してPA1に停止しても、ずれΔP0とΔP1はほぼ等しいことから停止位置PA1と停止位置PA0との距離(PA0−PA1間距離)と、PT0とPT1との距離(PT0−PT1間距離)はほぼ等しくなる。同様に、次の停止目標位置PT2は、PT1+PPとする。
ところで、このように搬送制御をおこなうと、Uターン搬送ローラの搬送量を増大させる方向に補正値を大きくしすぎた場合、Uターン搬送ローラの送り量がLF搬送ローラに対して過大に大きくなり、Uターン搬送ローラの停止位置が戻される。
図16(B)に示すように、1回の搬送動作において、その戻り量ΔXは大きくないとしても、2度目の搬送動作の戻り量は2ΔX(ΔXの2倍の量)、3度目の搬送動作の戻り量は3ΔX(ΔXの3倍の量)となり、Uターン搬送ローラが大きく戻されるようになる。このため、実際の停止位置と理想の停止位置のずれが次第に大きくなる。いいかえると停止位置の誤差が累積されてしまう。
そこで、このような誤差の累積をなくすための制御の一例を説明する。まず、この戻り量とある閾値ΔSと比較を行う。なお、この戻り量は、エンコーダーのスリットをカウントすることで求められる。そして、戻り量が閾値ΔSよりも大きくなった場合には、図17(A)に示すように、実際に停止した位置PA2を基準に搬送量PPを加算して停止目標位置PT3aを設定する。つまり、停止目標位置の基準を変更するのである。
このような制御により、位置PA2と位置PA3との距離(F4による送り量)はほぼPPと等しくなると共に、ずれ量の累積すなわち過剰な戻り量をキャンセルすることができる。
逆に、実際の停止位置PA3が目標の停止位置PT3に対してある設定した閾値ΔSより搬送方向側に大きくなった場合にも同様に、実際の停止位置PA2基準で所望の送りピッチPPだけ先に目標停止位置を設定して搬送動作をおこなう。これにより、過剰な行き過ぎによるずれの累積をキャンセルすることができる。
次に、誤差の累積をなくすための制御の2つめの例を説明する。これは、戻り量が閾値ΔSよりも大きくなった場合には、図17(B)に示すように、実際に停止した位置PA2を基準に搬送量PPと想定する戻り量ΔBを加算して停止目標位置PT3bを設定する。これにより、PT3aにより近く停止させることができる。このΔBは、例えばΔSの値、あるいは経験的に求められた値などである。
次に、誤差の累積を無くすための3つめの例を説明する。これは戻り量が閾値ΔSよりも大きくなった場合には、図17(C)に示すように、実際に停止した位置PA2とPT2との間の所定の位置を起点(PA2’)としてPPを加算してPT3cとする。なお、さらにこのPPにΔBを加算しても構わない。
このような制御を行うことで、部品のばらつき等に起因する補正値のずれをある許容範囲内に収めることができ、大きな精度劣化を防止することができる。また、逆に、搬送量誤差の累積チャージを利用して搬送量補正を強くかけることも可能となる。その場合、閾値ΔSの値を変更する制御を行う。具体的には、搬送量補正を強くかけたい場所では閾値ΔSを大きく設定し、弱くかけたい場合にはΔSの値を小さくするとよい。
また、これらに加えて、第2のUターン搬送ローラを抜けた時の搬送抵抗(搬送量)の段差(U4とU5の段差)発生の主な原因も上述の駆動列や用紙のコシによる弾性チャージ力の開放による停止位置ずれにあり、この停止位置ずれがLF搬送ローラ4とUターン搬送ローラ205,206で異なることに起因する。本実施例の駆動構成では、LF搬送ローラ回転搬送量で4μm程度の戻りが確認されている。一方、Uターン搬送を行っている場合の搬送戻り量はUターン搬送ローラ回転搬送量で20μmを超える戻りが確認されている。これは、Uターン搬送ローラ205,206に対して、Uターンの搬送経路により記録紙Pが曲げられているため、停止時にこの曲げられた形状の復元力が加算されるのが一番の原因である。
すなわち、図18(A)に示すように、LF搬送ローラ4とUターン搬送ローラ205,206とで記録紙Pを搬送する場合、両者がたとえ同時にある目標停止位置PTで停止動作を行ったとしたとしても、Uターン搬送ローラがΔUだけ逆回転してPA_Uの位置に停止するため、LF搬送ローラが記録紙Pを媒体として外乱を受け逆転量がΔL+ΔUとなり、PA_ULの位置に停止してしまう。この状況がUターン搬送ローラを印字用紙(記録紙P)の後端が抜けるまで継続される。
ところが、Uターン搬送ローラを印字用紙後端が抜けた後ではUターン搬送ローラの外力が解消される。したがって、図18(B)に示すように、ΔLだけ逆転した停止位置PA_Lに停止する。
仮にUターン搬送ローラの戻り外力が一定だったとしても、Uターン搬送ローラとLFローラで搬送している場合の送りピッチとLF搬送ローラのみで搬送している場合の搬送ピッチは等しくなるが、Uターン搬送ローラを抜ける前後ではΔLU−ΔL分だけ搬送量がずれてしまう。
この搬送量ずれを防止するために、Uターン搬送ローラ205,206が停止するスリットに到達した状態でモータへの供給する電源(モータへ供給する電流)を切ることなく、戻りを発生する弾性力と釣り合うだけの微小な駆動力をUターン搬送モータ32に与えつづける。その駆動力は搬送方向側に加える。これにより、Uターン搬送ローラ205,206の戻りを防止するこができる。以後、この搬送方向にかける微小な駆動力をフォワードブレーキと呼ぶ。
しかしながら、実際にはこの戻り力にはバラツキを有しており、ある決められたフォワードブレーキに対して予想より小さな搬送抵抗力しか発生しなかった場合には、搬送方向に回転してしまう可能性が残る。これに対して、目標停止位置より搬送方向先にフォワードブレーキをかけている状態での駆動停止ポイントを新たに設定することでこれを保証する。具体的には、エンコーダの目標停止スリット(ポイント)に対して先のエンコーダスリットを保証スリットとして設定する(通常5〜10μm先に位置するスリットを保証スリットとすると効果が得られる)。
ここでは、フォワードブレーキで行き過ぎた際の歯止めとして駆動停止ポイントを設けたが、この歯止めポイントでモータへの電源を切った際の戻りを防止するため、今まで印加していたフォワードブレーキの駆動力より小さな駆動力に切り替えることも有効である。この小さく切り替えたフォワードブレーキの更なる歯止めとして更に駆動力を下げるか、あるいはモータへの電源を切る構成としておく。
以上述べた、Uターン搬送の搬送量の補正値、制御を切り替えるための閾値、フォワードブレーキ力及び保証スリット位置のパラメータなどの値は、記録紙の種類や記録紙Pの位置情報などにより、あらかじめ決定されているものとし、制御部(制御回路)に設けられたメモリに格納されている。あるいは、記録紙の種類などの情報をホスト装置など外部から入力して、上述した制御パラメータを取得してもかまわない。
このように、制御パラメータを、搬送経路の仕様や状態、搬送物(記録紙)の性質や大きさなどに適切に変化させることで、たとえばコシの異なる記録紙に対しても搬送経路で変化する搬送抵抗(搬送負荷)の影響を低減し、LFローラ4の搬送量精度を向上することができる。
次に、LF搬送モータ25とUターン搬送モータ32の2つのモータのサーボ制御に関して、上述したように、LF搬送ローラ4が主、Uターン搬送ローラ205,206が従の関係とする。
まず、LF搬送ローラ4の駆動モータ25のサーボパラメータはUターン搬送ローラ205,206の駆動モータ32の動作に関係なく決定する。LF搬送ローラ4を単独で記録紙Pを搬送する状態で最適となるように、LF搬送モータ25のサーボパラメータを決定する。よって、ASF給紙されて記録紙に印字(記録)を行う場合の、搬送動作で使用するパラメータと基本的に同一となる。一方、Uターン搬送ローラ205,206の動作を制御するUターン搬送モータ32のサーボパラメータに関しては、LF搬送ローラ4及びLF搬送モータ25の制御に大きな影響を与えない様に弱めの制御をおこなう。一例としては比例項のゲインを低めに設定している。
Uターン搬送ローラ205,206の動作を理想に近づけるためには、外乱の影響を排除するためにゲインを大きくすればよいが、Uターン搬送ローラ205,206は外乱の大きなUターン形状パスの搬送抵抗を受けるため、いくらUターン搬送ローラ205,206を理想の動作に制御したとしても、Uターン搬送ローラ205,206による記録紙Pの送り量が搬送抵抗により変化するため、結果として記録紙Pは理想の搬送量を送ることはできない。それに加えて外乱に強いということは、2つの制御系が記録紙Pでつながっており、逆に記録紙Pの搬送量とUターン搬送ローラ205,206の送り量のずれという外乱を、主のLF搬送ローラ4へ与えやすくなってしまう。
一般的に、サーボのゲインは発振しない範囲でできるだけ大きく設定するが、Uターン搬送モータ32においては、LF搬送モータ25の制御、動作プロファイルにできるだけ影響を与えない様に決定する。すなわち、Uターン搬送モータ32の動作はLF搬送モータ25の制御により搬送されている記録紙Pの動作にならって動作することが好ましく、Uターン搬送モータ32の制御ゲインを小さく設定する。
このような制御条件の上で、Uターン搬送モータ32の起動を指示するタイミングを、LF搬送モータ25の起動を指示するタイミングと等しくして、両モータの起動のタイミングを合わせておき、実際の挙動は記録紙Pの状態によりUターン搬送モータ3の追随性が乱されることで自動的に決定される状態としておことが好ましい。
ここで、上述の手法はUターン給紙時の印字にとどまらず、同様の手法で自動両面印字にも適用できる。その際、搬送抵抗がUターン給紙時と同じであればそのまま適用できるが、両面搬送パス内で搬送抵抗が異なる領域があれば、その領域に応じたパラメータの設定を行えばよい。また、記録紙の長さが第1の用紙位置検知センサレバー318によって判明されているため、第2の用紙位置検知センサレバー330に記録紙Pが到達する前にも記録紙Pの後端位置を認識可能である。
以上述べたようにUターン搬送ローラの制御を行うことで、搬送パス形状やUターン搬送ローラの配置による搬送抵抗や搬送力の変化、搬送抵抗チャージ力の影響、制御による外乱を抑えることができ、搬送ローラによる搬送量の変化を抑え、高画質印字を達成することができる。なお、搬送パス形状は、Uターンパスに限定するものではないし、記録紙Pとガイド部(リヤガイド部など)との当接する状態は、上述した場合に限定しない。
(実施例2)
本実施例装置の主たる構成は、実施例1において述べた構成と同一であるため、説明を省略する。
第二の実施例では記録紙Pの後端の位置を把握する手段として、プリンタドライバからの用紙長さを使用する。この長さと実際に送った搬送量とあらかじめ決定されている搬送経路形状から記録紙Pの後端の位置を把握することが可能である。このことで、第2の用紙位置検知センサレバー330より搬送方向上流に記録紙Pの後端がいる領域でも適切にパラメータを設定することができるし、また、第2の用紙位置検知センサレバー330を取り除き、低コストで同様の達成効果を得ることもできる。
また、Uターン搬送ローラの搬送量補正値、及び送り量の基点の位置を切り替える閾値を領域分割するのではなく、記録紙Pの後端位置に対する関数もしくはテーブルとして設定する。こにより、搬送抵抗や搬送力が複雑で必ずしもいくつかの領域に分ける手法では十分近似が得られない場合にも効果的な制御が可能となり、LFローラ4での搬送量変化を抑え更なる高画質化を実現することができる。
また、LF搬送ローラ4やUターン搬送ローラ205,206の搬送量はこれらの部品の直径の部品公差により大きくばらつく場合がある。これに対しては、工場の出荷時もしくはユーザのテスト搬送により搬送量の補正値を変更設定することで影響を軽減することができる。具体的には摩擦係数とコシ(剛度)があらかじめわかっている記録紙をテスト搬送し、そのときのUターン搬送エンコーダの出力履歴から求める。すなわち、あらかじめ想定したUターン搬送エンコーダの出力値に対して停止時の戻り量が大きい場合は、Uターン搬送ローラ205の搬送量がLF搬送ローラ4の搬送量に対して大きい状況にあり、そのUターン搬送エンコーダの出力値の戻り量の大きさに応じて一律にUターン搬送量を少なくする搬送量補正値を加算すればよい。逆に戻り量が小さい場合は搬送量を大きくする搬送量補正値を加算すればよい。特に、ユーザのテスト搬送により補正値を変更設定する手法を採用すると、温度変化等によるローラ直径の変化や耐久によるローラの摩擦抵抗の経時変化といったさまざまな使用環境においても適切な送り量を得ることができ、安定した高画質な出力画像を提供することができる。
(その他の実施例)
以上、第1の実施例、第2の実施例において、インクジェット記録装置における被記録媒体の搬送について説明したが、電子写真方式の記録装置に適用しても構わない。また、記録装置だけでなく、シート状の原稿を読み取る画像入力装置や複写機などに適用しても構わない。