以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
[第一実施例]
本実施例の画像形成装置1は、所謂インクジェットプリンタであり、図1に示すように、給紙機構10と、用紙搬送機構20と、印字機構30と、制御ユニット50と、切替機構SWと、LFモータM1と、モータドライバDR1と、CRモータM3と、モータドライバDR3と、ヘッド駆動回路DR4と、紙検出センサSNと、を備える。
LFモータM1は、給紙機構10及び用紙搬送機構20に切替機構SWを通じて動力を付与する直流モータであり、モータドライバDR1によって駆動される。切替機構SWは、制御ユニット50に制御されて、LFモータM1を給紙機構10及び用紙搬送機構20の一方に接続する。
一方、CRモータM3は、印字機構30に動力を付与する直流モータであり、モータドライバDR3によって駆動される。この他、ヘッド駆動回路DR4は、記録ヘッド31を駆動する。
給紙機構10は、LFモータM1からの動力を受けて、給紙トレイ101に収容された用紙Qを1枚ずつ分離して用紙搬送機構20に供給するものである。この給紙機構10は、図2に示すように、給紙トレイ101と、給紙ローラ103と、アーム104と、ロータリエンコーダ109(図1参照)と、を備える。給紙トレイ101には、複数枚の用紙Qが積層される。アーム104は、重力又はバネによる付勢力を用いて、給紙ローラ103を給紙トレイ101に積層された用紙Qの表面に押し当てるものである。アーム104は、給紙ローラ103を回転可能な状態で保持し、給紙ローラ103は、LFモータM1の動力を受けて回転する。
ロータリエンコーダ109は、給紙ローラ103の回転に伴ってエンコーダ信号を出力する周知のインクリメンタル型のロータリエンコーダである。ロータリエンコーダ109は、例えば、給紙ローラ103の回転軸に取り付けられて、エンコーダ信号として、給紙ローラ103の回転に応じたパルス信号を出力する。
この給紙機構10では、給紙ローラ103が用紙Qに押し当てられた状態でLFモータM1の動力を受けて回転することによって、用紙Qに対し、給紙ローラ103から用紙Qの搬送方向である副走査方向への力が作用し、用紙Qが用紙搬送機構20に繋がる下流の用紙搬送路に送り出される。給紙トレイ101から送り出される用紙Qは、この用紙搬送路を構成するU字形状のUターンパス111により案内されて、湾曲した状態で用紙搬送機構20が有する搬送ローラ201とピンチローラ202との間に搬送される。
紙検出センサSNは、この給紙機構10から用紙搬送機構20までの用紙搬送路における用紙搬送機構20から所定距離上流の地点に設けられて、この地点を通過する用紙Qを検知し、この地点を用紙Qが通過している場合にはセンサ信号としてオン信号を出力し、それ以外の場合には、センサ信号としてオフ信号を出力する。
一方、用紙搬送機構20は、図2に示すように、搬送ローラ201と、ピンチローラ202と、排紙ローラ203と、拍車ローラ204と、ロータリエンコーダ209(図1参照)と、を備える。ピンチローラ202は、搬送ローラ201に対向配置され、拍車ローラ204は、排紙ローラ203に対向配置される。また、排紙ローラ203は、搬送ローラ201よりも副走査方向下流に設けられる。
搬送ローラ201は、切替機構SWを通じてLFモータM1からの動力を受けて回転する。一方、排紙ローラ203は、搬送ローラ201とベルト等で連結され、搬送ローラ201と連動するように回転する。即ち、搬送ローラ201及び排紙ローラ203は、互いに同期回転して周方向に同量回転する。
この他、ロータリエンコーダ209は、搬送ローラ201の回転に伴ってエンコーダ信号を出力する周知のインクリメンタル型のロータリエンコーダとして構成される。このロータリエンコーダ209は、例えば、搬送ローラ201の回転軸に取り付けられて、エンコーダ信号として搬送ローラ201の回転に応じたパルス信号を出力する。
この用紙搬送機構20では、LFモータM1からの動力を受けて搬送ローラ201及び排紙ローラ203が互いに同期回転することにより、搬送ローラ201及び排紙ローラ203を通じて用紙Qに副走査方向の力が作用して、給紙機構10から供給された用紙Qが、排紙ローラ203下流の図示しない排紙トレイまで搬送される。この際には、ピンチローラ202が、搬送ローラ201との間に用紙Qを挟んだ状態で、搬送ローラ201に従動するように回転し、拍車ローラ204が、排紙ローラ203との間に用紙Qを挟んだ状態で、排紙ローラ203に従動するように回転する。用紙Qは、このように搬送ローラ201とピンチローラ202との間で挟持され、更には、排紙ローラ203と拍車ローラ204との間で挟持された状態で、搬送ローラ201及び排紙ローラ203の回転により下流に搬送される。
また、副走査方向において搬送ローラ201と排紙ローラ203との間には、プラテン250が設けられている。プラテン250は、搬送ローラ201から搬送される用紙Qを下方から支持して排紙ローラ203へ導く。搬送ローラ201から排紙ローラ203へと搬送される用紙Qに対しては、このプラテン250上で、印字機構30を構成する記録ヘッド31から吐出されるインク液滴により画像が形成される。
印字機構30は、図1及び図2に示すように、記録ヘッド31と、記録ヘッド31を搭載するキャリッジ32と、リニアエンコーダ36と、を備える。記録ヘッド31は、ヘッド駆動回路DR4から入力される駆動信号に応じたインク液滴を、プラテン250に対向するノズル面から吐出する。
また、印字機構30は、CRモータM3からの動力を受けてキャリッジ32を主走査方向(図2紙面の法線方向)に搬送するキャリッジ搬送機構の構成要素として、図3に示すように、CRモータM3に駆動される駆動プーリ331と、従動プーリ332と、駆動プーリ331と従動プーリ332との間に巻回されたベルト333と、副走査方向とは直交する主走査方向に延びるガイドレール34aを備えるフレーム34と、主走査方向に延びるガイドレール35aを備えるフレーム35と、を備える。
キャリッジ32は、このキャリッジ搬送機構を構成するガイドレール34a,35aに設けられる。図2に示すように、キャリッジ32は、下面において主走査方向に平行に形成された溝部32a,32bにガイドレール34a,35aが挿入されるようにしてガイドレール34a,35aに設置される。
また、キャリッジ32は、ガイドレール34a,35aに併設されたベルト333に固定され、ベルト333を通じてCRモータM3からの動力を間接的に受けて、主走査方向に移動する。駆動プーリ331(図3参照)は、CRモータM3から発生する動力を、ギヤを介して受けて回転する。この駆動プーリ331の回転によって、駆動プーリ331と従動プーリ332との間に巻回されたベルト333は、回転する。一方、キャリッジ32は、ガイドレール34a,35aによって、その移動が主走査方向に規制されている。従って、CRモータM3が回転すると、ベルト333の回転に連動して、キャリッジ32は、主走査方向に移動する。本実施例では、この構成によって、キャリッジ32が主走査方向に搬送される。
また、リニアエンコーダ36は、キャリッジ32の主走査方向への移動に応じたパルス信号をエンコーダ信号として制御ユニット50(図1参照)に出力するものである。リニアエンコーダ36は、エンコーダスケール36aと、センサ部36bとを備える。エンコーダスケール36aは、図3に示すように、主走査方向に沿って延設されており、キャリッジ32の上面において主走査方向に平行に設けられた溝部32c(図2参照)に挿入されている。一方、センサ部36bは、キャリッジ32の溝部32cに設けられている。即ち、リニアエンコーダ36によれば、キャリッジ32の移動に伴って、センサ部36bがエンコーダスケール36aを読み取る。これにより、リニアエンコーダ36は、センサ部36bからキャリッジ32の主走査方向への移動に対応したパルス信号をエンコーダ信号として制御ユニット50に出力する。
続いて、制御ユニット50について説明する。本実施例の制御ユニット50は、装置各部を統括制御して、外部装置3から印刷指令と共に入力された印刷対象の画像データに基づく画像を、用紙Qに形成するものである。制御ユニット50は、外部装置3から印刷指令が入力されると、用紙Qに対する給紙処理、頭出し処理、及び送出処理を含む印刷処理を実行する。
給紙処理では、切替機構SWを制御してLFモータM1を給紙機構10に接続し、その後、ロータリエンコーダ109から出力されるエンコーダ信号に基づき、LFモータM1を、予め定められた制御シーケンスに従って駆動制御する。この駆動制御により、制御ユニット50は、給紙ローラ103を制御し、給紙ローラ103の回転により給紙トレイ101に載置された用紙Qを一枚分離して、この用紙Qを用紙搬送機構20に供給する。尚、ここで言う制御シーケンスとは、LFモータM1の駆動を開始してから駆動を停止するまでの間の制御手順のことであり、本実施例によれば、この制御シーケンスに従って、LFモータM1の制御の各段階を実行する。本実施例の制御シーケンスは、主に、各段階における速度指令値のパターンと、制御時間とによって規定される。
給紙処理を終了すると、制御ユニット50は、次に頭出し処理を実行する。頭出し処理では、切替機構SWを制御してLFモータM1を用紙搬送機構20に接続した後、ロータリエンコーダ209から出力されるエンコーダ信号に基づき、LFモータM1を、予め定められた制御シーケンスに従って駆動制御する。この制御により搬送ローラ201を制御し、用紙Qを、その画像形成開始ラインが記録ヘッド31による画像形成地点に到達するまで搬送する。
また、頭出し処理を終了すると、制御ユニット50は、次にライン画像形成処理を実行する。このライン画像形成処理では、CRモータM3を、リニアエンコーダ36から出力されるエンコーダ信号に基づき駆動制御する。この制御により、キャリッジ32を主走査方向折返し地点まで搬送する。更に、キャリッジ32の搬送時には、ヘッド駆動回路DR4を通じた記録ヘッド31の駆動制御により、インク液滴を記録ヘッド31に吐出させて、用紙Qに、印刷対象の画像データに基づく今回形成すべきライン画像を形成する。
また、ライン画像形成処理を終了すると、制御ユニット50は、次に送出処理を実行する。送出処理では、LFモータM1を用紙搬送機構20に接続した後、ロータリエンコーダ209から出力されるエンコーダ信号に基づき、LFモータM1を、予め定められた制御シーケンスに従って駆動制御する。この制御により、搬送ローラ201を制御し、用紙Qを、副走査方向下流に所定量送出する。ここで言う所定量は、各回のライン画像形成処理において用紙Qに形成されるライン画像の副走査方向の幅に対応する。
また、この送出処理を終えると、制御ユニット50は、再度ライン画像形成処理を実行して、次のライン画像を用紙Qに形成する。制御ユニット50は、このようなライン画像形成処理及び送出処理を、用紙Qへの画像形成が全ライン終了するまで繰り返し実行し、終了すると、LFモータM1を、予め定められた制御シーケンスに従って駆動制御することで、用紙Qを排出する。制御ユニット50は、外部装置3から印刷指令が入力されると、頁毎に、このような内容の印刷処理を実行することにより、印刷対象の画像データに基づく一連の画像を用紙Qに形成する。
続いて、LFモータM1の駆動制御に関わる制御ユニット50の構成要素について、図4を用いて説明する。図4には、制御ユニット50が有する構成要素の内の、特にLFモータM1の駆動制御に関わる構成要素を機能ブロックにより示す。
制御ユニット50は、図4に示すように、主制御部51と、給紙制御部53と、用紙搬送制御部55と、選択部57とを備える。主制御部51は、外部装置3から印刷指令が入力された際に実行する一連の処理の実行を管理するものである。主制御部51は、装置各部に指令入力して、給紙から排紙までの一連の処理を実現する。
具体的に、主制御部51は、用紙Qを用紙搬送機構20に供給する給紙処理の実行時には、図5(A)に示すように、切替機構SWを制御して、LFモータM1を給紙機構10に接続する一方(S110)、給紙制御部53により実現されるべき制御シーケンスを定義する制御パラメータT1,T2,T3,T4,T5,Ac、当該制御シーケンスの補正方法を定義する補正パラメータδVa,δTa,δVb,δTb、及び、当該制御シーケンスに従う用紙Qの目標搬送量Leを給紙制御部53に対して設定する(S120)。これらの制御パラメータや補正パラメータは、図示しないレジスタ等に記憶される。更に、給紙制御部53から出力される操作量Uが選択部57を通じてモータドライバDR1に入力されるように、選択部57の出力を切り替えつつ、給紙制御部53に対し制御開始命令を入力する(S130)。これにより、主制御部51は、給紙制御部53に上記制御パラメータに従うLFモータM1の駆動制御を実行させて、給紙トレイ101に載置された用紙Qが一枚分離されて目標搬送量Le分搬送され、用紙搬送機構20に供給されるようにする。また、LFモータM1において逆起電力等を原因とした電流飽和現象が発生した際には、上記補正パラメータに従って制御シーケンスが補正されるようにする。
一方、主制御部51は、用紙搬送機構20を用いた用紙Qの頭出し処理及び送出処理の実行時には、図5(B)に示すように、切替機構SWを制御して、LFモータM1を用紙搬送機構20に接続し(S210)、用紙搬送制御部55により実現されるべき制御シーケンスを定義する制御パラメータT1,T4,T5,Ac、当該制御シーケンスの補正パラメータδVb,δTb、及び目標搬送量Leを用紙搬送制御部55に対して設定する(S220)。更に、用紙搬送制御部55から出力される操作量Uが選択部57を通じてモータドライバDR1に入力されるように、選択部57の出力を切り替えつつ、用紙搬送制御部55に対し制御開始命令を入力する(S230)。これにより、主制御部51は、用紙搬送制御部55に上記制御パラメータに従うLFモータM1の駆動制御を実行させて、頭出し処理又は送出処理に対応する用紙Qの1回分の搬送動作が用紙搬送機構20を通じて実現されるようにする。以下では、頭出し処理及び送出処理を区別せずに表現するとき、これらを「用紙搬送処理」と表現する。
また、給紙制御部53及び用紙搬送制御部55は、制御開始命令が入力されると、主制御部51から設定された上記制御パラメータに従って、LFモータM1に対する操作量Uを繰り返し演算し出力することにより、LFモータM1の駆動制御を行う。操作量Uとしては、LFモータM1に印加する駆動電流の指令値である電流指令値を出力することができる。モータドライバDR1は、このような電流指令値が操作量Uとして入力されると、この電流指令値に対応する駆動電流をLFモータM1に印加する。
このような操作量Uの出力により、給紙制御部53は、給紙機構10を介して、給紙トレイ101に載置された用紙Qを一枚分離し、この用紙Qを用紙搬送機構20に供給する。一方、用紙搬送制御部55は、給紙機構10から用紙搬送機構20に供給された用紙Qの頭出し及び送出を実現する。
また、選択部57は、主制御部51に制御されて、給紙制御部53から出力される操作量U及び用紙搬送制御部55から出力される操作量Uのいずれか一方をモータドライバDR1に入力する。
続いて、給紙制御部53の詳細構成を説明する。用紙Qを用紙搬送機構20に供給するまでのLFモータM1の駆動制御を行う給紙制御部53は、図6(A)に示すように、エンコーダ信号処理部531と、制御器533と、指令生成部535と、飽和検知部539と、を備える。
エンコーダ信号処理部531は、ロータリエンコーダ109から入力されるエンコーダ信号に基づき、給紙ローラ103の回転量YF及び回転速度VFを計測するものである。上述したように、用紙Qは、給紙ローラ103の回転により搬送される。このため、給紙ローラ103の回転量YFの変化分は、その時の用紙Qの搬送量に対応する。即ち、エンコーダ信号処理部531は、給紙ローラ103の回転量YF及び回転速度VFを計測することにより、間接的には、用紙Qの搬送位置YF及び搬送速度VFを計測する。以下では、エンコーダ信号処理部531による計測値YFを、用紙Qの(搬送)位置Yとも表現し、エンコーダ信号処理部531による計測値VFを、用紙Qの(搬送)速度Vとも表現する。エンコーダ信号処理部531が保持する計測値YFは、例えば、給紙処理の開始時に、主制御部51により、ゼロに初期化されて、給紙処理開始時からの給紙機構10による用紙Qの搬送量(給紙開始地点を基準とした用紙Qの搬送位置)を表すものとされる。
一方、制御器533は、エンコーダ信号処理部531から入力される位置Y及び速度Vと、指令生成部535から入力される速度指令値Vrと、に基づき、LFモータM1に対する操作量Uを演算し、この操作量Uを出力するものである。これによって、制御器533は、給紙機構10において、用紙Qの速度Vが、指令生成部535から入力される速度指令値Vrに追従するようなLFモータM1に対する操作量Uを出力する。制御器533としては、例えば、周知のPID(比例積分微分)制御器を用いることができる。
この他、指令生成部535は、主制御部51から設定された制御パラメータT1,T2,T3,T4,T5,Acによって定義される制御シーケンスに従って、制御開始時点からの各時刻の速度指令値Vrを出力するものである。図7(A)には、S120で主制御部51から設定される制御パラメータT1,T2,T3,T4,T5,Acに従う速度指令値Vrの軌跡を表す。
図7(A)に示すように、給紙処理の制御シーケンスは、用紙Qを速度Va=Ac・T1まで加速させるようにLFモータM1を制御する加速制御区間[1]と、加速制御区間[1]の終了後、用紙Qの速度Vが一定速度VaとなるようにLFモータM1を制御する定速制御区間[2]と、定速制御区間[2]の終了後、用紙Qを速度Vaよりも大きい速度Vb=Ac・(T1+T3)まで加速させるようにLFモータM1を制御する加速制御区間[3]と、加速制御区間[3]の終了後、用紙Qの速度Vが一定速度VbとなるようにLFモータM1を制御する定速制御区間[4]と、用紙Qを速度Vbからゼロまで減速させて、搬送開始時から目標搬送量Le分進んだ地点で用紙Qが停止するようにLFモータM1を制御する減速制御区間[5]と、を含む。
目標搬送量Leは、紙検出センサSNがオン信号に切り替わる地点から下流に距離Lz離れた地点で用紙Qが停止するように設定される。距離Lz離れた地点は、用紙Qの先端が用紙搬送機構20に到達する地点である。
同図からも理解できるように、制御パラメータT1は、加速制御区間[1]での制御時間を表し、制御パラメータT2は、定速制御区間[2]での制御時間を表し、制御パラメータT3は、加速制御区間[3]での制御時間を表し、制御パラメータT4は、定速制御区間[4]での制御時間を表し、制御パラメータT5は、減速制御区間[5]での制御時間を表す。また、制御パラメータAcは、加速制御区間[1][3]での用紙Qの加速度を表す。以下では、制御パラメータT1〜T5を、制御時間T1〜T5とも表現する。
この給紙処理における加速制御区間[1]及び定速制御区間[2]は、給紙トレイ101における最上層の用紙Qの、それより下層の用紙Qからの分離が完了するまでの過程において、用紙Qを低速搬送し、分離を確実なものとするための区間である。給紙機構10から用紙搬送機構20までの用紙搬送路において、用紙Qの分離を支援する爪113等が設けられている場合には、例えば、用紙Qの先頭が爪113を通過して下層用紙からの分離が確実なものとなった時点で定速制御区間[2]から加速制御区間[3]に移行するように、給紙処理における制御時間T1,T2を決定することができる。
また、飽和検知部539は、LFモータM1において電流飽和現象が発生したことを示す飽和検知信号を、指令生成部535に入力する構成にされたものである。飽和検知部539は、例えば、制御器533から出力される操作量Uが、LFモータM1に印加可能な駆動電流の上限値Umax以上であるか否かを判断することにより、LFモータM1において電流飽和現象が発生しているか否かを判断することができる。上限値Umaxとしては、仮にLFモータM1に逆起電力が発生していない場合の上限値Umax0から、逆起電力に起因した低下分ΔU(ω)を減算した値Umax=Umax0−ΔU(ω)を用いることができる。周知のように、低下分ΔU(ω)は、LFモータM1の回転速度ωが大きくなる程、大きくなる。この値ΔU(ω)は、エンコーダ信号処理部531から得られる速度Vを用いて演算により特定することができる。
指令生成部535は、このような飽和検知信号が飽和検知部539から入力された場合には、図10、図13、図15及び図17に示すように、その時点以降の速度指令値Vrを、必要に応じて補正パラメータδVa,δTa,δVb,δTbを用いて当初値から低下させる方向に補正する。これによって、LFモータM1における電流飽和現象を解消する。また、速度指令値Vrの補正によっても用紙Qが目標搬送量Le分搬送されるように、制御時間T4を補正する(詳細後述)。即ち、本実施例によれば、制御時間T4の補正により減速制御区間[5]への移行タイミング及び用紙Qの停止タイミングを調整する。
また、用紙搬送制御部55も、給紙制御部53と同様に、エンコーダ信号処理部551と、制御器553と、指令生成部555と、飽和検知部559と、を備える(図6(B)参照)。
エンコーダ信号処理部551は、ロータリエンコーダ209から入力されるエンコーダ信号に基づき、搬送ローラ201の回転量YL及び回転速度VLを計測するものである。このエンコーダ信号処理部551は、搬送ローラ201の回転量YL及び回転速度VLを計測することにより、間接的に用紙Qの搬送位置YL及び搬送速度VLを計測する。以下では、エンコーダ信号処理部531による計測値YF,VFと同様に、エンコーダ信号処理部551による計測値YLを、用紙Qの(搬送)位置Yとも表現し、エンコーダ信号処理部551による計測値VLを、用紙Qの(搬送)速度Vとも表現する。エンコーダ信号処理部551が保持する計測値YLは、例えば、用紙搬送処理の開始時に、主制御部51により、ゼロに初期化されて、用紙搬送機構20による用紙搬送開始時からの用紙Qの搬送量(用紙搬送開始地点を基準とした用紙Qの搬送位置)を表すものとされる。
また、制御器553は、制御器533と同様に、例えば、周知のPID制御器として構成され、エンコーダ信号処理部551から入力される位置Y及び速度Vと指令生成部555から入力される速度指令値Vrとに基づき、用紙搬送機構20において、用紙Qの速度Vが指令生成部555から入力される速度指令値Vrに追従するようなLFモータM1に対する操作量Uを演算し出力するものである。
この他、指令生成部555は、主制御部51から設定された制御パラメータT1,T4,T5,Acによって定義される制御シーケンスに従って、制御開始時点からの各時刻の速度指令値Vrを出力する。図7(B)には、S220で主制御部51から設定される制御パラメータT1,T4,T5,Acに従う速度指令値Vrの軌跡を表す。
図7(B)に示すように、用紙搬送処理の制御シーケンスは、用紙Qを速度Vb=Ac・T1まで加速させるようにLFモータM1を制御する加速制御区間[1]と、加速制御区間[1]の終了後、用紙Qの速度Vが一定速度VbとなるようにLFモータM1を制御する定速制御区間[4]と、定速制御区間[4]の終了後、用紙Qを速度Vbからゼロまで減速させて、用紙Qの搬送開始時から目標搬送量Le分進んだ地点で用紙Qが停止するようにLFモータM1を制御する減速制御区間[5]と、を含む。
即ち、用紙搬送処理の制御シーケンスは、給紙処理の制御シーケンスから、定速制御区間[2]及び加速制御区間[3]を省いた構成にされる。加速制御区間[1]の制御時間T1、定速制御区間[4]の制御時間T4、及び、減速制御区間[5]の制御時間T5は、用紙Qが目標搬送量Le分進んだ地点で停止するように設計者により定められ、主制御部51によるS220の処理により、指令生成部555に設定される。勿論、目標搬送量Leは、頭出し処理及び送出処理の夫々で異なる。
また、飽和検知部559は、LFモータM1において電流飽和現象が発生したことを示す飽和検知信号を、指令生成部555に入力する構成にされたものである。飽和検知部559は、飽和検知部539と同様に、制御器553から出力される操作量Uに基づき、電流飽和現象が発生しているか否かを判断する構成にすることができる。
指令生成部555は、このような飽和検知信号が飽和検知部559から入力された場合には、図22等に示すように、その時点以降の速度指令値Vrを、必要に応じて補正パラメータδVb,δTbを用いて当初値から低下させる方向に補正する。これによって、LFモータM1における電流飽和現象を解消する。また、速度指令値Vrの補正によっても用紙Qが目標搬送量Le分搬送されるように、制御時間T4を補正する。
続いて、主制御部51から制御開始命令が入力されると、給紙制御部53の指令生成部535が繰り返し実行する給紙制御処理について図8を用いて説明する。給紙制御部53の指令生成部535は、この給紙制御処理を、制御周期に合わせて繰り返し実行する。
図8に示す給紙制御処理を開始すると、指令生成部535は、まず、制御開始命令に基づくLFモータM1の駆動制御開始時点(制御開始命令入力時点)からの経過時間tが、主制御部51により設定された制御時間T1未満であるか否かを判断することにより、現区間が加速制御区間[1]であるか否かを判断する(S310)。そして、経過時間tが制御時間T1未満であると判断すると(S310でYes)、加速制御区間[1]に対応する速度指令値Vrを演算し出力する処理である第一指令生成処理を実行する(S315)。その後、次の制御周期が到来するまで、当該給紙制御処理を一旦終了する。
一方、指令生成部535は、S310で否定判断すると、S320に移行して、現時点での経過時間tが、制御時間T1,T2の合算値である時間T1+T2未満であるか否かを判断することにより、現区間が定速制御区間[2]であるか否かを判断する。そして、経過時間tが時間T1+T2未満であると判断すると(S320でYes)、定速制御区間[2]に対応する速度指令値Vrを演算し出力する処理である第二指令生成処理を実行する(S325)。その後、次の制御周期が到来するまで、当該給紙制御処理を一旦終了する。
また、指令生成部535は、S320で否定判断すると、S330に移行して、経過時間tが、時間T1+T2+T3未満であるか否かを判断することにより、現区間が加速制御区間[3]であるか否かを判断する。そして、経過時間tが時間T1+T2+T3未満であると判断すると(S330でYes)、加速制御区間[3]に対応する速度指令値Vrを演算し出力する処理である第三指令生成処理を実行する(S335)。その後、次の制御周期が到来するまで、当該給紙制御処理を一旦終了する。
また、指令生成部535は、S330で否定判断すると、S340に移行して、経過時間tが、時間T1+T2+T3+T4未満であるか否かを判断することにより、現区間が定速制御区間[4]であるか否かを判断する。そして、経過時間tが時間T1+T2+T3+T4未満であると判断すると(S340でYes)、定速制御区間[4]に対応する速度指令値Vrを演算し出力する処理である第四指令生成処理を実行する(S345)。その後、次の制御周期が到来するまで、当該給紙制御処理を一旦終了する。
また、指令生成部535は、S340で否定判断すると、S350に移行して、経過時間tが、時間T1+T2+T3+T4+T5未満であるか否かを判断することにより、現区間が減速制御区間[5]であるか否かを判断する。そして、経過時間tが時間T1+T2+T3+T4+T5未満であると判断すると(S350でYes)、減速制御区間[5]に対応する速度指令値Vrを演算し出力する処理である第五指令生成処理を実行する(S355)。その後、次の制御周期が到来するまで当該給紙制御処理を一旦終了する。
この他、指令生成部535は、S350で否定判断すると、S360に移行して、一定時間、速度指令値Vrとして値ゼロを出力する停止処理を実行する。その後、給紙制御処理の繰り返し動作を終了する。本実施例では、このようにして、各区間に対応する速度指令値Vrを制御周期毎に演算し出力する。
続いて、S315で指令生成部535が実行する第一指令生成処理の詳細を図9〜図11を用いて説明する。第一指令生成処理を開始すると、指令生成部535は、まず、フラグF1が値1にセットされているか否かを判断し、フラグF1が値1にセットされていると判断すると(S410でYes)、S490に移行し、フラグF1が値1にセットされていない(F1=0である)と判断すると(S410でNo)、S420に移行する。尚、フラグF1は、後述するフラグF0,F2〜F4と共に、制御開始命令の入力時点で指令生成部535により値ゼロにリセットされる。
S420に移行すると、指令生成部535は、飽和検知部539から飽和検知信号が入力されているか否かの判断によって、LFモータM1において電流飽和現象が発生しているか否かを判断し、発生していないと判断すると(S420でNo)、S430に移行して、制御パラメータAc及び現時点での経過時間tに基づき、速度指令値Vrとして値Ac・tを算出及び出力する。その後、第一指令生成処理を終了する。この処理により制御器533には、図7(A)に示すような加速制御区間[1]の速度指令値Vrが入力される。
一方、電流飽和現象が発生していると判断すると(S420でYes)、指令生成部535は、S440に移行して、フラグF1及びフラグF0を、値1にセットする。このようにして、加速制御区間[1]において電流飽和現象が発生したことをフラグF1で表現し、加速制御区間[1]から定速制御区間[4]までの期間において電流飽和現象が発生したことをフラグF0で表現する。
また、S440の処理後には、電流飽和現象発生後の制御シーケンスを補正する処理の一つとして、制御時間T2,T3をゼロに補正する処理を実行する(S445)。この後には、今回の電流飽和現象発生時点での用紙Qの速度Vs1及び搬送量Ls1、並びに、加速制御区間[1]における電流飽和現象発生時点までの駆動制御の実行時間Ts1を特定する(S450)。搬送量Ls1は、制御開始命令の入力時点(t=0)から電流飽和現象発生時点までの用紙Qの搬送量であり、実行時間Ts1は、図10に示すように、加速制御区間[1]の開始時点(t=0)から電流飽和現象発生時点(t=Ts1)までの時間長である。ここでは、例えば、現在の速度指令値Vrを、速度Vs1として特定し、現時点までの速度指令値Vrの積分値を、搬送量Ls1として特定することができる。
S450の処理後、指令生成部535は、更に電流飽和現象発生後の制御シーケンスを補正する処理の一つとして、電流飽和現象発生後の定速制御区間[4]における目標搬送速度を、当初の定速制御区間[2]における目標搬送速度Va=Ac・T1及び当初の定速制御区間[4]における目標搬送速度Vb=Ac・(T1+T3)から下げる方向に補正する(S460)。具体的には、上記特定した電流飽和現象発生時点での用紙Qの速度Vs1、実行時間Ts1、及び、制御パラメータAc,T1に基づき、次式
Vd=Vs1+Ac*(T1−Ts1)/3
に従って、補正後の目標搬送速度Vdを算出する。
その後、指令生成部535は、定速時間補正処理(詳細後述)を実行することにより、電流飽和現象発生後の制御シーケンスを補正する処理の一つとして、用紙Qが目標搬送量Leに対応する地点(目標位置)で停止するように、定速制御区間[4]における制御時間T4を補正する処理を実行する(S470)。その後、S490に移行する。
また、S490では、電流飽和現象発生後の加速制御区間[1]における速度指令値Vrとして、次式
に従う速度指令値Vrを、現時点での経過時間t、電流飽和現象発生時点での速度Vs1及び実行時間Ts1、及び、制御パラメータAc,T1に基づき算出し、これを制御器533に出力する。その後、第一指令生成処理を終了する。
尚、加速制御区間[1]において電流飽和現象が発生すると、S440においてフラグF1が値1にセットされることに伴って、S490の処理が繰り返し実行されることになる。指令生成部535は、このようにして、電流飽和現象発生後には、上式に従う各時刻t(経過時間t)での速度指令値Vrを制御器533に出力する。これにより、図10及び図11に示すように、電流飽和現象が発生していないときの速度指令値Vr=Ac・tよりも低い上式に従う速度指令値Vrの軌跡、及び、電流飽和現象が発生していないときの加速度Acよりも低い加速度Ac・(t−T1)2/(Ts1−T1)2の軌跡に沿って、用紙Qを定速状態に移行させる。この軌跡は、飽和現象が発生した時点での加速度Acと飽和が発生した時刻とに基づくものであり、時間T1において加速度がゼロとなり、かつ時間T1の前後において加速度が滑らかに連続するような下に凸の二次関数で表される。上式に従って用紙Qを定速状態に移行させた場合、加速制御区間[1]の終了時点t=T1での用紙Qの速度指令値Vrは、S460で算出される目標搬送速度Vdとなる。
図11には、上式に従って速度指令値Vrを算出した場合の速度指令値Vrの軌跡を、その上段グラフにおいて実線で表す。図11における上段グラフは、加速制御区間[1]における速度指令値Vrの軌跡であって、電流飽和現象が発生したときの軌跡を実線で表し、電流飽和現象が発生しなかったときの軌跡を一点鎖線で表したものである。また、図11における下段グラフは、電流飽和現象が発生したときの速度指令値Vrの微分値(加速度指令値)Arの軌跡を実線で表したものである。
このようにして、本実施例では、加速制御区間[1]において電流飽和現象が発生しない場合には、図10一点鎖線で示す速度指令値Vrの軌跡に沿うように用紙Qの給紙制御を行う一方、加速制御区間[1]において電流飽和現象が発生した場合には、図10に実線で示す速度指令値Vrの軌跡に沿うように用紙Qの給紙制御を行う。尚、加速制御区間[1]において電流飽和現象が発生した場合には、制御時間T2,T3をゼロに変更することから、電流飽和現象発生後の制御シーケンスは、加速制御区間[1]の終了後、定速制御区間[2]及び加速制御区間[3]をスキップして、目標搬送速度Vdで用紙Qを一定速度に制御する定速制御区間[4]に移行する制御シーケンスに補正される。図10及び図11と同様、図13、図15、図17、図22においては、電流飽和現象が発生していないときの速度指令値Vrの軌跡を、一点鎖線で表す。
続いて、S325で指令生成部535が実行する第二指令生成処理の詳細を図12及び図13を用いて説明する。
第二指令生成処理を開始すると、指令生成部535は、まず、フラグF2が値1にセットされているか否かを判断し、フラグF2が値1にセットされていると判断すると(S510でYes)、S580に移行し、フラグF2が値1にセットされていないと判断すると(S510でNo)、S520に移行する。
S520に移行すると、指令生成部535は、S420での処理と同様に、LFモータM1において電流飽和現象が発生しているか否かを判断し、発生していないと判断すると(S520でNo)、S530に移行して、制御パラメータAc,T1に基づき、速度指令値Vrとして値Ac・T1を算出及び出力する。その後、第二指令生成処理を終了する。この処理により制御器533には、図7(A)に示すような定速制御区間[2]の速度指令値Vrが入力される。
一方、電流飽和現象が発生していると判断すると(S520でYes)、指令生成部535は、S540に移行して、フラグF2及びフラグF0を値1にセットし、更に、電流飽和現象発生後の制御シーケンスを補正する処理の一つとして、制御時間T3をゼロに補正する処理を実行する(S545)。
また、S545の処理後には、電流飽和現象発生時点での用紙Qの搬送量Ls2及び定速制御区間[2]における電流飽和現象発生時点までの駆動制御の実行時間Ts2を特定する(S550)。搬送量Ls2は、制御開始命令の入力時点(t=0)から電流飽和現象発生時点までの用紙Qの搬送量であり、実行時間Ts2は、図13に示すように、定速制御区間[2]の開始時点(t=T1)から電流飽和現象発生時点(t=T1+Ts2)までの時間長である。S550では、S450での処理と同様、現時点までの速度指令値Vrの積分値を、搬送量Ls2として特定することができる。
S550の処理後、指令生成部535は、更に電流飽和現象発生後の制御シーケンスを補正する処理の一つとして、電流飽和現象発生後の定速制御区間[2][4]における目標搬送速度を、当初の定速制御区間[2]における目標搬送速度Va=Ac・T1及び当初の定速制御区間[4]における目標搬送速度Vb=Ac・(T1+T3)から下げる方向に補正する(S560)。具体的には、電流飽和現象発生時点での用紙Qの速度Va、及び、主制御部51により設定された補正パラメータδVaに基づき、次式
Vd=Va−δVa
に従って、補正後の目標搬送速度Vdを算出する。
その後、指令生成部535は、S470での処理と同様に定速時間補正処理を実行することにより、定速制御区間[4]における制御時間T4を補正した後(S570)、S580に移行する。
また、S580では、現時点での経過時間tが、加速制御区間[1]終了時の経過時間T1と、定速制御区間[2]の開始時点から電流飽和現象発生時点までの時間Ts2と、補正パラメータδTaが表す移行時間δTa(図13参照)との合算値である時間(T1+Ts2+δTa)未満であるか否かを判断する。
そして、時間(T1+Ts2+δTa)未満であると判断すると(S580でYes)、S585に移行して、次式
に従う速度指令値Vrを、現時点での経過時間tと、補正パラメータδVa,δTaと、電流飽和現象発生時点での速度Va及び経過時間t=T1+Ts2とに基づき算出し、これを制御器533に出力する。その後、第二指令生成処理を終了する。この補正パラメータδVa,δTaは、駆動対象の追従性を考慮して実験的に決まるものである。
尚、定速制御区間[2]において電流飽和現象が発生すると、S540においてフラグF2が値1にセットされることに伴って、S580〜S590の処理が繰り返し実行されることになる。指令生成部535は、このようにして、電流飽和現象発生後、一定時間δTaが経過するまでの期間には、上式に従う各時刻t(経過時間t)での速度指令値Vrを制御器533に出力することにより、図13に実線で示す速度指令値Vrの軌跡に沿って、目標搬送速度Vdまで用紙Qの速度Vを低下させる。
また、経過時間tが時間(T1+Ts2+δTa)以上となると(S580でNo)、S590に移行して、速度指令値Vr=Vdを制御器533に出力する。このようにして、指令生成部535は、電流飽和現象発生後、一定時間δTaが経過した後の期間であって、定速制御区間[2]の終了時刻t=T1+T2が到来するまでの期間では、図13に実線で示すように目標搬送速度Vdに対応する一定速度で用紙Qを定速制御する。尚、定速制御区間[2]において電流飽和現象が発生した場合には、制御時間T3をゼロに変更することから、電流飽和現象発生後の制御シーケンスは、定速制御区間[2]の終了後、加速制御区間[3]をスキップして、当初値Vb=Ac・(T1+T3)よりも低い目標搬送速度Vdで用紙Qを一定速度に制御する定速制御区間[4]に移行する制御シーケンスに補正される。
続いて、S335で指令生成部535が実行する第三指令生成処理の詳細を図13及び図14を用いて説明する。第三指令生成処理を開始すると、指令生成部535は、まず、フラグF3が値1にセットされているか否かを判断し(S610)、フラグF3が値1にセットされていると判断すると(S610でYes)、S690に移行し、フラグF3が値1にセットされていないと判断すると(S610でNo)、S620に移行する。
S620に移行すると、指令生成部535は、LFモータM1において電流飽和現象が発生しているか否かを判断し、発生していないと判断すると(S620でNo)、S630に移行して、制御パラメータAc,T1及び現時点での経過時間tに基づき、速度指令値Vrとして値Ac・(t+T1)を算出及び出力する。その後、第三指令生成処理を終了する。この処理により制御器533には、図7(A)に示すような加速制御区間[3]の速度指令値Vrが入力される。
一方、電流飽和現象が発生していると判断すると(S620でYes)、指令生成部535は、フラグF3及びフラグF0を値1にセットする(S640)。この後には、S450,S550での処理と同様に、今回の電流飽和現象発生時点での用紙Qの速度Vs3及び搬送量Ls3、並びに、加速制御区間[3]における電流飽和現象発生時点までの駆動制御の実行時間Ts3を特定する(S650)。搬送量Ls3は、制御開始命令の入力時点(t=0)から電流飽和現象発生時点までの用紙Qの搬送量であり、実行時間Ts3は、図15に示すように、加速制御区間[3]の開始時点(t=T1+T2)から電流飽和現象発生時点(t=T1+T2+Ts3)までの時間長である。
S650の処理後、指令生成部535は、電流飽和現象発生後の制御シーケンスを補正する処理の一つとして、電流飽和現象発生後の定速制御区間[4]における目標搬送速度を、当初値Vb=Ac・(T1+T3)から下げる方向に補正する(S660)。具体的には、上記特定した電流飽和現象発生時点での用紙Qの速度Vs3、実行時間Ts3、及び制御パラメータAc,T3に基づき、次式
Vd=Vs3+Ac*(T3−Ts3)/3
に従って、補正後の目標搬送速度Vdを算出する。
その後、指令生成部535は、定速時間補正処理(詳細後述)を実行し(S670)、S690に移行する。また、S690では、電流飽和現象発生後の加速制御区間[3]における速度指令値Vrとして、次式
に従う現時点(経過時間t)での速度指令値Vrを算出し、これを制御器533に入力する。その後、第三指令生成処理を終了する。電流飽和現象発生後、指令生成部535は、S640においてフラグF3が値1にセットされることに伴って、定速制御区間[4]の開始時刻(t=T1+T2+T3)までS690の処理を繰り返し実行し、上式に従う各時刻t(経過時間t)での速度指令値Vrを制御器533に出力することにより、図15に示すように、電流飽和現象が発生していないときの速度指令値Vr=Ac・(t+T1)よりも低い速度指令値Vrの軌跡(図15において実線で示す軌跡)、及び、電流飽和現象が発生していないときの加速度Acよりも低い加速度Ac・(t−T3)2/(Ts3−T3)2の軌跡に沿って、用紙Qを定速状態に移行させる。そして、定速制御区間[4]では、加速制御区間[3]終了時の速度Vdを目標搬送速度として、用紙Qの定速制御を行う。
続いて、S345で指令生成部535が実行する第四指令生成処理の詳細を図16及び図17を用いて説明する。
第四指令生成処理を開始すると、指令生成部535は、まず、フラグF4が値1にセットされているか否かを判断し、フラグF4が値1にセットされていると判断すると(S710でYes)、S780に移行し、フラグF4が値1にセットされていないと判断すると(S710でNo)、S720に移行する。
S720に移行すると、指令生成部535は、S420での処理と同様に、LFモータM1において電流飽和現象が発生しているか否かを判断し、発生していないと判断すると(S720でNo)、S730に移行して、これまでの区間において電流飽和現象の発生による制御シーケンスの補正が行われたか否かを、フラグF0が値1にセットされているか否かによって判断する。そして、フラグF0が値1にセットされていないと判断すると(S730でNo)、速度指令値Vrとして値Vb=Ac・(T1+T3)を算出及び出力する(S731)。その後、第四指令生成処理を終了する。この処理により制御器533には、図7(A)に示すような定速制御区間[4]の速度指令値Vrが入力される。これに対し、フラグF0が値1にセットされていると判断すると(S730でYes)、速度指令値Vrとして、S460,S560,S660のいずれかのステップで算出された値Vdを出力する(S735)。その後、第四指令生成処理を終了する。この処理により制御器533には、図10、図13及び図15に示す態様にて定速制御区間[4]の速度指令値Vrが入力される。
一方、電流飽和現象が発生していると判断すると(S720でYes)、指令生成部535は、フラグF4及びフラグF0を、値1にセットする(S740)。更に、電流飽和現象発生時点での用紙Qの速度Vs4及び搬送量Ls4、並びに、定速制御区間[4]における電流飽和現象発生時点までの駆動制御の実行時間Ts4を特定する(S750)。速度Vs4は、速度Vb又は速度Vdであり、搬送量Ls4は、制御開始命令の入力時点(t=0)から電流飽和現象発生時点までの用紙Qの搬送量であり、実行時間Ts4は、図17に示すように、定速制御区間[4]の開始時点(t=T1+T2+T3)から電流飽和現象発生時点(t=T1+T2+T3+Ts4)までの時間長である。
S750の処理後、指令生成部535は、電流飽和現象発生後の制御シーケンスを補正する処理の一つとして、電流飽和現象発生後の定速制御区間[4]における目標搬送速度を下げる方向に補正する(S760)。具体的には、電流飽和現象発生時点での用紙Qの速度Vs4、及び、主制御部51により設定された補正パラメータδVbに基づき、次式
Vd=Vs4−δVb
に従って、補正後の目標搬送速度Vdを算出する。
その後、指令生成部535は、S470での処理と同様に定速時間補正処理を実行することにより、定速制御区間[4]における制御時間T4を補正した後(S770)、S780に移行する。
また、S780では、現時点での経過時間tが、定速制御区間[4]開始時点での経過時間T1+T2+T3と、定速制御区間[4]の開始時点から電流飽和現象発生時点までの時間Ts4と、補正パラメータδTbが表す移行時間δTb(図17参照)との合算値である時間(T1+T2+T3+Ts4+δTb)未満であるか否かを判断する。
そして、時間(T1+T2+T3+Ts4+δTb)未満であると判断すると(S780でYes)、S785に移行して、次式
に従う速度指令値Vrを、現時点での経過時間tと、補正パラメータδVb,δTbと、電流飽和現象発生時点での速度Vs4及び経過時間t=T1+T2+T3+Ts4とに基づき算出し、これを制御器533に出力する。その後、第四指令生成処理を終了する。
指令生成部535は、電流飽和現象発生後、S740においてフラグF4が値1にセットされることに伴って、S780〜S790の処理を繰り返し実行することにより、一定時間δTbが経過するまでの期間には、上式に従う各時刻t(経過時間t)での速度指令値Vrを制御器533に出力することにより、例えば図17に実線で示す速度指令値Vrの軌跡に沿って、用紙Qの速度を、補正後の目標搬送速度Vdまで低下させる。
また、経過時間tが時間(T1+T2+T3+Ts4+δTb)以上となると(S780でNo)、S790に移行して、S760での算出値Vdに基づく、速度指令値Vr=Vdを制御器533に出力する。このようにして、指令生成部535は、電流飽和現象発生後、一定時間δTbが経過した後の期間であって、定速制御区間[4]の終了時刻t=T1+T2+T3+T4が到来するまでの期間では、例えば図17に実線で示す補正後の目標搬送速度Vdに対応する一定速度で用紙Qを定速制御する。そして、定速制御区間[4]の終了時刻t=T1+T2+T3+T4が到来すると、第五指令生成処理(S355)を実行することにより、用紙Qが速度ゼロまで減速して目標搬送量Leに対応する地点(目標位置)で停止するように、LFモータM1の駆動制御を行う。
以上に、第四指令生成処理の内容について説明したが、第四指令生成処理で用いられる補正パラメータδVb,δTbは、第二指令生成処理で用いられる補正パラメータδVa,δTaと同一値に設定されてもよいし、異なる値に設定されてもよい。補正パラメータδVb,δTbを補正パラメータδVa,δTaとは独立して設定すれば、用紙Qの搬送位置に応じて、適切な補正パラメータを用いて目標搬送速度を補正することができ、電流飽和現象の再発を高精度に抑えつつ、高速に用紙Qを搬送することができる。
続いて、S355で指令生成部535が実行する第五指令生成処理の詳細を、図18を用いて説明する。第五指令生成処理を開始すると、指令生成部535は、まず、フラグF0が値1にセットされているか否かを判断し、フラグF0が値1にセットされていないと判断すると(S810でNo)、S820に移行し、フラグF0が値1にセットされていると判断すると(S810でYes)、S830に移行する。
そして、S820では、次式
に従う速度指令値Vrを、現時点での経過時間t、減速制御区間[5]の開始時点での速度Vb及び経過時間t=T1+T2+T3+T4、並びに制御時間T5に基づき算出し、これを制御器533に出力する。その後、第五指令生成処理を終了する。
一方、S830に移行すると、次式
に従う速度指令値Vrを、減速制御区間[5]の開始時点での速度Vd等に基づき算出し、これを制御器533に出力する。その後、第五指令生成処理を終了する。
このようにして、定速制御区間[4]の終了時点までに電流飽和現象が発生しなかった場合には、図7(A)に示すように定速制御区間[4]での目標搬送速度Vbから速度ゼロまで時間T5をかけて用紙Qを減速させるように、LFモータM1の駆動制御を行い、定速制御区間[4]の終了時点までに電流飽和現象が発生した場合には、図10、図13、図15及び図17に示すように定速制御区間[4]での目標搬送速度Vbから速度ゼロまで時間T5をかけて用紙Qを減速させるように、LFモータM1の駆動制御を行う。
また、単に電流飽和現象の発生を抑えるために、速度指令値Vrを当初値から下げただけでは、目標搬送量Leに対応する地点(目標位置)で用紙Qを停止させることができない。このため、上述したように、電流飽和現象が発生した場合には、S470,S570,S670,S770にて定速時間補正処理を実行することにより、用紙Qが目標搬送量Leに対応する地点で停止するように、制御時間T4を補正する。
図19に示す定速時間補正処理を開始すると、指令生成部535は、制御時間T5及びこの時点で算出されている(又は補正されている)目標搬送速度Vdに基づき、減速制御区間[5]における用紙Qの搬送量である減速距離Ld=Vd・T5/2を算出する(S910)。
また、現区間が加速制御区間[1]であるか否かを判断し(S920)、現区間が加速制御区間[1]であると判断すると(S920でYes)、加速制御区間[1]終了時点での搬送量Le1を次式に従い算出する(S930)。
そして、搬送量Le1、減速距離Ld、目標搬送量Le、及び、加速制御区間[1]に続く定速制御区間[4]での目標搬送速度Vdに基づき、次式
T4=(Le−Le1−Ld)/Vd
に従って、制御時間T4を補正した後(S935)、定速時間補正処理を終了する。
一方、現区間が加速制御区間[1]ではなく定速制御区間[2]であると判断すると(S920でNo且つS940でYes)、指令生成部535は、S950に移行し、定速制御区間[2]終了時点での搬送量Le2を次式に従い算出する。
そして、この搬送量Le2に基づき、補正後の制御時間T4=(Le−Le2−Ld)/Vdを算出し、この算出値を新たな制御時間T4に設定した後(S955)、当該定速時間補正処理を終了する。
この他、現区間が加速制御区間[1]及び定速制御区間[2]ではなく、加速制御区間[3]であると判断すると(S920,S940でNo且つS960でYes)、S970に移行し、定速制御区間[3]終了時点での搬送量Le3を次式に従い算出する。
そして、算出した搬送量Le3に基づき、補正後の制御時間T4=(Le−Le3−Ld)/Vdを算出し、この算出値を新たな制御時間T4に設定した後(S975)、当該定速時間補正処理を終了する。
また、現区間が加速制御区間[1][3]及び定速制御区間[2]ではなく、定速制御区間[4]であると判断すると(S920,S940,S960でNo且つS980でYes)、S990に移行し、第四指令生成処理のS780での判断が肯定判断から否定判断に切り替わる時点、換言すれば、速度指令値Vrが補正後の目標搬送速度Vdに到達する時点での用紙Qの搬送量Lfを次式に従い算出する。
そして、この搬送量Lf、減速距離Ld、目標搬送量Le、S760による補正後の目標搬送速度Vd、実行時間Ts4、及び、補正パラメータδTbに基づき、次式
T4=Ts4+δTb+(Le−Lf−Ld)/Vd
に従って、補正後の制御時間T4を算出し、この算出値を新たな制御時間T4に設定した後に(S995)、定速時間補正処理を終了する。本実施例では、電流飽和現象発生後の制御シーケンスを補正する処理として、このような制御時間T4を補正する処理を実行することによって、目標搬送量Leに対応する地点で用紙Qを停止させることができるようにする。
続いて、主制御部51から制御開始命令が入力されると、指令生成部535が給紙制御処理と並列に実行する検出時補正処理について図20を用いて説明する。指令生成部535は、図20に示す検出時補正処理を実行することにより、紙検出センサSNの出力信号に基づいて、定速制御区間[4]における制御時間T4を補正する。これにより、用紙Qを目標搬送量Leに対応する地点で高精度に停止させることができるようにする。尚、図10、図13、図15、図17においては、補正された制御シーケンスに従って駆動した場合の、紙検出センサの検出状態を示す。
図20に示すように検出時補正処理を開始すると、指令生成部535は、紙検出センサSNの出力信号がオフ信号からオン信号に切り替わるまで、紙検出センサSNの出力信号を監視する(S1010)。そして、紙検出センサSNの出力信号がオン信号に切り替わると(S1010でYes)、フラグF0が値1にセットされているか否かを判断する(S1020)。ここで、フラグF0が値1にセットされていないと判断すると(S1020でNo)、S1030に移行し、次式
T4=Tn+(Lz−Ld)/Vb
に従って、補正後の制御時間T4を算出し、この算出値を新たな制御時間T4に設定した後、当該検出時補正処理を終了する。上式における速度Vbは、定速制御区間[4]での速度指令値Vrであり、距離Lzは、紙検出センサSNによる用紙Qの検出地点から目標搬送量Leに対応する地点まで用紙Qを搬送するのに必要な用紙Qの搬送量(距離)であり、距離Ldは、定速時間補正処理におけるS910と同様の手法により算出される減速距離であり、時間Tnは、定速制御区間[4]の開始時点(t=T1+T2+T3)から、紙検出センサSNの出力信号がオン信号に切り替わる時点(t=T1+T2+T3+Tn)までの時間長である。距離Lzは、例えば、目標搬送量Leと共に主制御部51から給紙制御部53に対して設定されるものであり、予めレジスタ等に記憶される。
一方、フラグF0が値1にセットされていると判断すると(S1020でYes)、指令生成部535は、S1040に移行し、次式
T4=Tn+(Lz−Ld)/Vd
に従って、補正後の制御時間T4を算出し、この算出値を新たな制御時間T4に設定した後、当該検出時補正処理を終了する。上式における速度Vdは、定速制御区間[4]における補正後の速度指令値Vrであり、他の値Lz,Ld,Tnは、S1030の処理と同様である。
検出時補正処理では、このようにして、制御時間T4を、紙検出センサSNによる用紙Qの検出地点を用紙Qの先端が通過したことを契機に補正することにより、一層高精度に、用紙Qが目標搬送量Leに対応する地点で停止するように、制御シーケンスを補正する。尚、本実施例では、このようにして、紙検出センサSNの出力信号がオン信号となった時点で制御時間T4を補正するため、電流飽和現象が発生して速度指令値Vrを下げた場合であっても、当該検出時補正処理により、用紙Qを目標搬送量Le分搬送することができる。但し、電流飽和現象の発生態様によっては、図10、図13及び図15に示すように、定速時間補正処理による補正無しでは、定速制御区間[4]が終了するまでに、用紙Qの先端が紙検出センサSNによる検出地点に到達しない場合がある。このため、本実施例では、定速時間補正処理及び検出時補正処理の両者を実行することにより、電流飽和現象が発生しても、高精度に用紙Qを目標搬送量Leに対応した地点まで搬送して停止できるようにしている。
以上には、給紙制御部53による制御の詳細について説明したが、用紙搬送制御部55も概ね同様の手法でLFモータM1の駆動制御を行う。即ち、指令生成部555は、主制御部51から制御開始命令が入力されると、図21に示す用紙搬送制御処理を、制御周期に合わせて繰り返し実行する。図21からも理解できるように、用紙搬送制御処理は、制御時間T2,T3が仮にゼロであるときの給紙制御処理と基本的に同じである。
指令生成部555は、用紙搬送制御処理を開始すると、制御開始命令に基づくLFモータM1の駆動制御開始時点からの経過時間tが、制御時間T1未満であるか否かを判断することにより、現区間が加速制御区間[1]であるか否かを判断する(S1110)。そして、肯定判断すると、加速制御区間[1]に対応する速度指令値Vrを演算し出力する図9に示す第一指令生成処理を実行する(S1115)。その後、次の制御周期が到来するまで、当該用紙搬送制御処理を一旦終了する。
一方、指令生成部535は、S1110で否定判断すると、S1120に移行して、経過時間tが時間T1+T4未満であるか否かを判断することにより、現区間が加速制御区間[1]に続く定速制御区間[4]であるか否かを判断する。そして、肯定判断すると、定速制御区間[4]に対応する速度指令値Vrを演算し出力する図16に示す第四指令生成処理を実行する(S1125)。その後、次の制御周期が到来するまで、当該用紙搬送制御処理を一旦終了する。
また、指令生成部535は、S1120で否定判断すると、S1130に移行して、経過時間tが、時間T1+T4+T5未満であるか否かを判断することにより、現在時刻が減速制御区間[5]であるか否かを判断する。そして、肯定判断すると(S1130でYes)、減速制御区間[5]に対応する速度指令値Vrを演算し出力する図18に示す処第五指令生成処理を実行する(S1135)。その後、次の制御周期が到来するまで当該用紙搬送制御処理を一旦終了する。
この他、指令生成部535は、S1130で否定判断すると、S1140に移行して、一定時間、速度指令値Vrとして値ゼロを出力する停止処理を実行する。その後、一連の用紙搬送制御処理の繰り返し動作を終了する。本実施例では、このようにして各区間に対応する速度指令値Vrを演算し、これを制御器553に入力する。
具体的に説明すれば、電流飽和現象が発生しなかった場合には、図7(B)に示す軌跡に対応する速度指令値Vrを制御器553に入力し、加速制御区間[1]において電流飽和現象が発生した場合には、図10に実線で示す軌跡に対応する速度指令値Vrを制御器553に入力し、定速制御区間[4]において電流飽和現象が発生した場合には、図22に実線で示す軌跡に対応する速度指令値Vrを制御器553に入力する。そして、電流飽和現象が発生した場合には、制御時間T4を補正する。
以上、第一実施例の画像形成装置1について説明したが、本実施例によれば、上記手法により、電流飽和現象の発生を抑えつつ、高精度に用紙Qを目標搬送量Leに対応する地点で停止させることができる。
尚、上記用紙搬送制御部55に対しては、補正パラメータδVbとして、給紙制御部53に設定する補正パラメータδVa,δVbよりも小さい値を設定することができる。δVbを大きくすると、結果として、用紙Qを目標搬送量Leに対応する地点(目標地点)に搬送するまでの時間が長くなるが、給紙処理の実行時に比べて用紙搬送処理の実行時に用紙Qに作用する負荷は小さく、電流飽和現象が発生する可能性は、給紙処理におけるそれよりも低い。従って、用紙搬送制御部55に対する補正パラメータδVbを、給紙制御部53に対する補正パラメータδVaよりも小さくすると、電流飽和現象の再発を抑えつつ、用紙Qを高速に目標とする地点に搬送することができる。
[第二実施例]
続いて、第二実施例の画像形成装置1の構成について説明する。但し、本実施例の画像形成装置1は、紙検出センサSNが、第一実施例よりも用紙搬送路上流側に設置されている点、給紙制御部53が図23に示すように構成されて図24に示す軌跡で速度指令値Vrを出力する構成にされている点、及び、指令生成部536が図25に示す給紙制御処理を実行する構成にされている点を除けば、概ね第一実施例と同一である。従って、以下では、第二実施例の説明として、第一実施例とは異なる画像形成装置1の構成を選択的に説明する。
本実施例の給紙制御部53は、図23に示すように、第一実施例の指令生成部535に代えて、エンコーダ信号処理部531により計測された用紙Qの搬送位置Yに基づき、当該搬送位置Yに対応する速度指令値Vrを出力する指令生成部536を有する。具体的に、指令生成部536は、主制御部51により設定される制御パラメータK,Vb,Vp,Dkにより定まる制御シーケンスに従って、逐次、その時点での搬送位置Yに対応する速度指令値Vrを制御器533に入力する。この制御パラメータK,Vb,Vp,Dkは、主制御部51が実行するS120の処理により、指令生成部536に対して設定される。
図24上段には、主制御部51から設定される制御パラメータK,Vb,Vp,Dkに従う速度指令値Vrの軌跡を表す。図24上段に示すように、本実施例の制御シーケンスは、用紙Qを速度Vbまで加速させるようにLFモータM1を制御する加速制御区間[11]と、加速制御区間[11]の終了後、用紙Qの速度Vが一定速度VbとなるようにLFモータM1を制御する定速制御区間[12]と、定速制御区間[12]の終了後、用紙Qを速度Vaよりも大きい速度Vpまで加速させるようにLFモータM1を制御する加速制御区間[13]と、加速制御区間[13]の終了後、用紙Qを速度Vpからゼロまで減速させるようにLFモータM1を制御する減速制御区間[15]と、を含む。本実施例において目標とする用紙Qの停止点は、紙検出センサSNがオン信号に切り替わる地点から下流に距離Dz離れた地点である。
上記制御パラメータKは、用紙Qを加減速させる際の加速度の大きさを定めるものであり、具体的には、搬送位置Yに対する速度指令値Vrの傾きの大きさ|dVr/dY|を表すものである。また、制御パラメータDkは、加速制御区間[13]への移行タイミングを規定するものである。指令生成部536は、紙検出センサSNによる出力信号がオフ信号からオン信号に切り替わった時点での計測値Y=Ykを基準に、計測値Yが値Ya=(Yk+Dk)となった時点で、定速制御区間[12]での定速制御を止めて、加速制御を開始する。制御パラメータDkは、このように紙検出センサSNによる用紙Qの検出地点からの搬送量により加速制御区間[13]への移行タイミングを規定するものである。以下では、制御パラメータDkにて規定される加速制御の開始地点のことを、加速開始点と表現し、その加速開始点に対応する位置Ya=(Yk+Dk)のことを加速開始位置Yaとも表現する。
また、指令生成部536には、上記制御パラメータK,Vb,Vp,Dkと共に補正パラメータδVb(図23参照)が設定される。補正パラメータδVbは、定速制御区間[12]において電流飽和現象が発生した際の速度指令値Vrの補正量を表すものである。図24下段に示すように、定速制御区間[12]において電流飽和現象が発生すると、指令生成部536は、速度指令値Vrを、δVb下げた値Vd=Vb−δVbに補正する。図24下段には、定速制御区間[12]において電流飽和現象が発生した場合の速度指令値Vrの軌跡を表す。この他、図24中段には、加速制御区間[11]において電流飽和現象が発生した場合の速度指令値Vrの軌跡を表す。
このような速度指令値Vrの出力による給紙制御を実現するために、指令生成部536は、主制御部51から制御開始命令が入力されると、図25に示す給紙制御処理を繰り返し実行する。指令生成部536は、この給紙制御処理を、制御周期に合わせて繰り返し実行する。
給紙制御処理を開始すると、指令生成部536は、エンコーダ信号処理部531から得られる現在の用紙Qの搬送位置Yに基づき、用紙Qが加速開始点を通過したか否かを判断する(S1210)。尚、加速開始点は、紙検出センサSNにより用紙Qが検出されるまで設定されないが、加速開始点が設定されていない状態では、S1210において否定判断する。
そして、加速開始点を通過していないと判断すると(S1210でNo)、指令生成部536は、フラグF0が値1にセットされているか否かを判断する(S1220)。フラグF0は、制御開始命令の入力時に値ゼロにリセットされ、S1250で値1にセットされるものである。
そして、フラグF0が値1にセットされていると判断すると(S1220でYes)、S1280に移行し、値1にセットされていないと判断すると(S1220でNo)、S1230に移行する。S1230に移行すると、指令生成部536は、飽和検知部539から飽和検知信号が入力されているか否かの判断によって、LFモータM1において電流飽和現象が発生しているか否かを判断し、電流飽和現象が発生していないと判断すると(S1230でNo)、S1240に移行し、電流飽和現象が発生していると判断すると(S1230でYes)、S1250に移行する。
S1240に移行すると、指令生成部536は、主制御部51から設定された上述の制御パラメータK,Vbにて定まる標準の制御シーケンスに従って、図24上段に示すような現在の搬送位置Yに対応する速度指令値Vrを、制御器533に出力する。更に、紙検出センサSNの出力信号がオフ信号からオン信号に切り替わった直後であるか否かを判断し(S1283)、否定判断すると(S1283でNo)、S1287の処理を実行せずに給紙制御処理を終了し、肯定判断すると(S1283でYes)、加速開始点を設定した後に(S1287)、当該給紙制御処理を終了する。
具体的に、S1287では、加速開始位置Yaを、現時点での用紙Qの搬送位置(計測値)Y=Ykから制御パラメータDk分加算した値(Yk+Dk)に設定することにより加速開始点を設定する(S1287)。このように、加速開始位置Ya=Yk+Dkが設定されると、指令生成部536は、次回以降の給紙制御処理におけるS1210において、エンコーダ信号処理部531から得られる現在の用紙Qの搬送位置(計測値)Yと、S1287で設定された加速開始位置Yaとを比較し、現在の搬送位置YがS1287で設定された加速開始位置Yaを超えた時点で、用紙Qが上記加速開始点を通過したと判断する。
一方、S1250に移行すると、指令生成部536は、フラグF0を値1にセットし、その後、制御パラメータVbで定義される定速制御区間[12]における目標搬送速度Vbを補正することで、電流飽和現象発生後の制御シーケンスを補正する(S1260)。
具体的に、電流飽和現象が加速制御区間[11]において発生した場合のS1260では、定速制御区間[12]における目標搬送速度Vbを、直前の速度指令値Vrに補正する。一方、電流飽和現象が定速制御区間[12]において発生した場合のS1260では、定速制御区間[12]における目標搬送速度Vbを、δVb減算した値Vb−δVbに補正する。以下では、補正後の定速制御区間[12]における目標搬送速度をVdと表現する。
このような補正により、電流飽和現象発生後の定速制御区間[12]では、当初値よりも低い補正後の目標搬送速度Vdで用紙Qの搬送を行うことになる。そして、加速制御区間[13]では、補正後の目標搬送速度Vdから制御パラメータVpで定義される速度Vpに、用紙Qの速度Vが到達するまで、用紙Qを制御パラメータKで定義される傾きKで加速させることになる。このため、補正後の制御シーケンスにおける加速制御区間[13]での用紙搬送量である加速距離Daは、制御シーケンス補正前の距離Da=(Vp−Vb)/Kから、距離Da=(Vp−Vd)/Kに変化する。そして、このような場合、制御パラメータDkの値を何ら補正しなければ、図24中段及び図24下段において二点鎖線で示すように、加速距離Daの増分(Vb−Vd)/Kに対応する量、用紙Qの停止点が目標とする地点から副走査方向下流にずれてしまう。
そこで、S1260に続くS1270では、加速制御区間[13]への移行タイミングを規定する制御パラメータDkの値を、現在値から(Vb−Vd)/K減算した値に補正する(S1270)。
Dk←Dk−(Vb−Vd)/K
本実施例では、このようにして制御シーケンスの補正に伴う加速距離Daの増分に対応する距離、加速制御区間[13]への移行タイミングを早めて、用紙Qが目標とする地点で停止するようにする。
その後、指令生成部536は、補正後の制御シーケンスに従って、図24中段又は下段に示すような現在の搬送位置Yに対応する速度指令値Vrを、制御器533に出力する(S1280)。即ち、加速制御区間[11]において電流飽和現象が発生した場合には、直後から速度指令値Vrとして、一定値Vdを継続的に制御器533に出力する。一方、定速制御区間[12]において電流飽和現象が発生した場合には、電流飽和現象の発生直後から距離δVb/K、用紙Qが搬送されるまでは、線形に速度指令値Vrを、値Vbから値Vdまで変化させ、速度指令値Vrが値Vdに到達した後には、速度指令値Vrとして、一定値Vdを継続的に制御器533に出力する。
また、この処理を終えると、指令生成部536は、上述したS1283の判断を行い、紙検出センサSNの出力信号がオン信号に切り替わった直後である場合には(S1283でYes)、補正後の制御パラメータDkを用いて、加速開始位置Ya=Yk+Dkを設定することにより加速開始点を設定した後(S1287)、当該給紙制御処理を終了する。
そして、指令生成部536は、用紙Qが加速開始点を通過したと判断すると(S1210でYes)、S1290に移行し、加速制御区間[13]及び減速制御区間[14]に対応する速度指令値Vrであって、現在の搬送位置Yに対応する速度指令値Vrを、制御器533に出力する。即ち、用紙Qが加速開始点に到達した後には、速度指令値Vrを、加速制御区間[13]開始時の値Vb又は値Vdから値Vpに到達するまで傾きKで増加させ、その後、速度指令値Vrを、値Vpから値ゼロに到達まで傾きKで減少させるような動作で、現在の搬送位置Yに対応する速度指令値Vrを、制御器533に出力する(S1290)。その後、当該給紙制御処理を終了する。
このようにして、本実施例では、LFモータM1における電流飽和現象の発生を抑えつつ、高精度に、用紙Qを目標位置に停止できるようにする。
[最後に]
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、本発明は、画像読取装置や他のシートの搬送を伴う種々の電子機器に適用することができる。
また、用語間の対応関係は、次の通りである。第一及び第二実施例における給紙機構10及び用紙搬送機構20は、シートを搬送する搬送機構の一例に対応し、指令生成部535,536,555は、制御手段の一例に対応し、飽和検知部539,559は、飽和検知手段の一例に対応する。この他、給紙ローラ103は、第一の搬送ローラの一例に対応し、Uターンパス111は、シート案内部の一例に対応し、搬送ローラ201は、第二の搬送ローラの一例に対応する。また、給紙制御処理によって実現される用紙Qの搬送制御は、第一の動作モードによる搬送制御の一例に対応し、用紙搬送制御処理によって実現される用紙Qの搬送制御は、第二の動作モードによる搬送制御の一例に対応する。また、紙検出センサSNは、通過検知手段の一例に対応する。