以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。図1に示す本実施例の画像形成装置1は、所謂インクジェットプリンタとして構成され、用紙搬送路11の上下流に位置する複数のローラ15,17を用いて、用紙Pを記録ヘッド23による画像形成位置に所定量ずつ送り出し、用紙Pを所定量送り出す度に、記録ヘッド23を用紙Pの搬送方向である副走査方向とは直交する主走査方向(図1紙面法線方向)に搬送することにより、用紙Pに一連の画像を形成するものである。
この画像形成装置1は、湾曲形状にされた第一の用紙搬送路11と、用紙搬送路11の上流に位置する給紙トレイ13と、給紙トレイ13に載置された用紙群の表面に接触して、最上位の用紙Pを給紙トレイ13から分離搬送する給紙ローラ15と、用紙搬送路11の下流に位置する搬送ローラ17と、搬送ローラ17より下流に設けられた第二の用紙搬送路21と、記録ヘッド23を搭載するキャリッジであって用紙搬送路21を構成するプラテン211上で主走査方向に搬送されるキャリッジ25と、用紙搬送路21の下流領域に設けられた排紙ローラ27と、更に下流に設けられた排紙トレイ29と、を備える。
給紙トレイ13は、画像形成に供される用紙を格納するトレイであり、この給紙トレイ13には、複数の用紙が積層配置される。給紙ローラ15は、給紙トレイ13に積層された用紙群の表面と当接するように設置され、直流モータM1(図2参照。以下、給紙モータと表現する。)からの駆動力を受けて回転して、これにより給紙トレイ13から最上位の用紙Pを一枚分離し、用紙搬送路11に搬送する。
具体的に、給紙ローラ15は、支軸Oを中心に回動可能な回動アーム151の自由端側で軸支されており、自重により回動アーム151が支軸Oを中心に変位することにより、給紙トレイ13に載置された用紙Pの表面に接触する。この給紙ローラ15には、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構153を通じて給紙モータM1の駆動力が伝達され、この駆動力を受けて、給紙ローラ15は回転する。
給紙ローラ15の回転により給紙トレイ13から分離される用紙Pは、給紙トレイ13の上流側に位置する分離傾斜板131と接触して、上方へ案内され、用紙搬送路11に送り出される。また、用紙搬送路11は、給紙トレイ13から送り出された用紙Pを、搬送ローラ17に導くためのものであり、給紙トレイ13から搬送ローラ17側へと湾曲した形状にされている。即ち、給紙ローラ15の回転により用紙搬送路11に送り出された用紙Pは、このU字形状の用紙搬送路11を通じて、給紙トレイ13の上部に位置する搬送ローラ17側に供給される。
また、搬送ローラ17は、用紙搬送路11を通じて給紙ローラ15から供給されてくる用紙Pをピンチローラ171と共に挟持し、挟持した用紙Pを、回転により、記録ヘッド23による画像形成位置(プラテン211上)に搬送する。この搬送ローラ17に対しては、給紙モータM1とは別の直流モータM2(図2参照。以下、搬送モータと表現する。)が設けられており、搬送ローラ17は、この搬送モータM2の駆動力を受けて回転する。この搬送ローラ17の回転により搬送される用紙Pは、用紙搬送路21を通じて記録ヘッド23による画像形成位置に搬送され、更に、排紙ローラ27に供給される。
尚、用紙搬送路21は、搬送ローラ17から排紙ローラ27までの用紙搬送路を構成するものであり、中央部にプラテン211を備える。プラテン211上では、上述したように、記録ヘッド23を搭載するキャリッジ25が主走査方向に搬送され、このとき、記録ヘッド23からはインク液滴が吐出されて、用紙Pには、画像が形成される。
尚、キャリッジ25の搬送機構については、周知であるので詳細な説明を省略するが、例えば、キャリッジ搬送機構は、主走査方向に延びるガイド軸(図示せず)と、ガイド軸の両端に設けられたプーリ(図示せず)と、プーリに巻回された無端ベルト(図示せず)と、を備えた構成にされる。このキャリッジ搬送機構において、キャリッジ25は、ガイド軸に貫挿されて、移動方向が主走査方向に規制され、更に、無端ベルトに接続される。即ち、キャリッジ25は、無端ベルトの回転により駆動力を受け、ガイド軸に沿って主走査方向に移動する。このキャリッジ搬送機構において、無端ベルトは、プーリの一方に接続された直流モータM3(図2参照。以下、CRモータと表現する。)の駆動力を受けて回転する。これによって、キャリッジ25ひいては記録ヘッド23は、主走査方向に搬送される。
また、排紙ローラ27は、拍車ローラ271と共に、上記画像形成位置にて画像形成に供された用紙Pを挟持し、この用紙Pを、回転により排紙トレイ29へと排出するものである。この排紙ローラ27は、搬送ローラ17と同一の搬送モータM2の駆動力を受けて、搬送ローラ17と共に回転する。
続いては、画像形成装置1の電気的構成について説明する。図2に示すように本実施例の画像形成装置1は、記録ヘッド23、キャリッジ25及びローラ15,17,27を駆動するための構成として、上述のモータM1,M2,M3の他、エンコーダE1,E2,E3、信号処理回路31,33,35、制御ユニット40、及び、駆動回路51,53,55,57を備える。
エンコーダE1は、給紙モータM1の回転軸に接続されて、給紙モータM1の回転位置(回転角)に応じたパルス信号(所謂A相信号及びB相信号)を出力する周知のロータリエンコーダである。信号処理回路31は、このエンコーダE1から入力されるパルス信号に基づき、給紙モータM1の回転位置(具体的には初期位置からの回転量)及び回転速度を検出し、この情報を制御ユニット40に入力する。尚、給紙モータM1の回転位置及び回転速度は、給紙ローラ15の回転位置及び回転速度に対応する。このエンコーダE1は、例えば、給紙ローラ15の回転軸、給紙モータM1の回転軸や給紙モータM1から給紙ローラ15へ駆動を伝達する駆動伝達機構の回転軸に取り付けられて、給紙モータM1の回転軸に直接又は間接的に接続される。
また、エンコーダE2も、同様にロータリエンコーダとして構成されており、搬送モータM2の回転軸に接続されて、搬送モータM2の回転位置に応じたパルス信号を出力する。信号処理回路33は、このエンコーダE2から入力されるパルス信号に基づき、搬送モータM2の回転位置(具体的には初期位置からの回転量)及び回転速度を検出し、この情報を制御ユニット40に入力する。尚、搬送モータM2の回転位置及び回転速度は、搬送ローラ17の回転位置及び回転速度に対応する。このエンコーダE2は、例えば、搬送ローラ17の回転軸、搬送モータM2の回転軸や搬送モータM2から搬送ローラ17へ駆動を伝達する駆動伝達機構の回転軸に取り付けられて、搬送モータM2の回転軸に直接又は間接的に接続される。この他、エンコーダE3は、リニアエンコーダで構成されており、キャリッジ搬送機構におけるキャリッジ25の主走査方向の位置に応じたパルス信号を出力する。信号処理回路35は、このエンコーダE3から出力されるパルス信号に基づき、キャリッジ25の位置及び速度を検出し、この情報を制御ユニット40に入力する。
一方、制御ユニット40は、図示しない通信インタフェースを通じて外部装置(パーソナルコンピュータ等)から入力される印刷指令に従って、印刷指令と共に入力された印刷対象の画像データに基づく画像を用紙Pに形成するものである。具体的に、この制御ユニット40は、記録制御部41と、給紙制御部43と、用紙搬送制御部45と、記憶部47と、閾値設定部49と、を備える。
記録制御部41は、キャリッジ25の搬送制御及び記録ヘッド23によるインク液滴の吐出制御を行うものであり、印刷指令が入力されると、信号処理回路35から入力されるキャリッジ25の速度情報に基づき、CRモータM3に対する操作量(電流指令値)を決定して、決定した操作量の情報を駆動回路55に入力する。駆動回路55は、この記録制御部41から入力される操作量の情報に基づき、当該操作量に対応する駆動電流をCRモータM3に入力して、CRモータM3を駆動する。この動作によって、キャリッジ25は、主走査方向に定速搬送される。尚、キャリッジ25は、記録制御部41を通じて、主走査方向に往復運動するように制御される。
また、記録制御部41は、キャリッジ25の搬送に合わせて、駆動回路57に対して制御信号を入力することにより、記録ヘッド23に印刷対象の画像データに対応したインク液滴の吐出動作を実行させる。このようにして、記録制御部41は、記録ヘッド23を主走査方向に搬送しつつ、用紙Pに印刷対象の画像データに対応した画像を形成する。
一方、給紙制御部43は、給紙モータM1を制御することにより、給紙ローラ15を回転させて、給紙トレイ13に載置された用紙Pを一枚分離し、これを搬送ローラ17へと供給するものである。この給紙動作が完了して搬送ローラ17に用紙Pが供給(挟持)されると、更に、給紙制御部43は、用紙搬送制御部45の動作に合わせて、給紙モータM1を制御することにより、搬送ローラ17及び排紙ローラ27の回転に合わせた給紙ローラ15の回転、即ち、用紙搬送制御部45による用紙Pの間欠搬送動作に合わせた用紙Pの間欠搬送動作を実現する。
詳細については後述するが、この際、給紙制御部43は、信号処理回路31から得られる給紙モータM1の回転位置Xaと、目標位置プロファイルに基づいて決定した目標位置Xcとの偏差Eaに基づき、給紙モータM1に対する操作量Uaを決定し、この操作量Uaの情報を駆動回路51に入力する。これによって、駆動回路51を通じ、操作量Uaに対応する駆動電流を給紙モータM1に入力し、用紙搬送制御部45による用紙Pの間欠搬送動作に合わせた給紙モータM1の制御を実現する。
この他、用紙搬送制御部45は、給紙ローラ15を通じて給紙トレイ13から供給された用紙Pを、搬送モータM2の制御により、搬送ローラ17及び排紙ローラ27を通じて排紙トレイ29へと搬送するものである。この用紙搬送制御部45は、信号処理回路33から得られる搬送モータM2の回転位置Xと、目標位置プロファイルに従う目標位置Xrとの偏差Eに基づき、搬送モータM2に対する操作量Uを決定し、この操作量Uを駆動回路53に入力する。この動作によって、駆動回路53を通じ、操作量Uに対応する駆動電流を搬送モータM2に入力し、搬送モータM2を駆動する。このような制御により、用紙Pの間欠搬送を実現する。
また、制御ユニット40が備える記憶部47は、制御に必要な各種パラメータを記憶するものであり、例えば、後述するノミナル操作量Un及び用紙種類毎の閾値補正量γの情報を記憶する。そして、閾値設定部49は、記憶部47が記憶するノミナル操作量Unや用紙種類毎の閾値補正量γに基づき、後述する閾値TH1及び閾値TH2を設定するものである。
ところで、本実施例の画像形成装置1では、図1に示すように、給紙ローラ15から搬送ローラ17までの経路長よりも、用紙Pの長さのほうが大きいため、給紙ローラ15の回転により搬送ローラ17まで到達した用紙Pは、給紙ローラ15を抜けないまま、搬送ローラ17とピンチローラ171とにより挟持される。本実施例では、このような状態で、搬送モータM2及び給紙モータM1の両者を回転駆動することにより、搬送ローラ17及び給紙ローラ15の両者から用紙Pに対して駆動力を付与し、用紙Pを画像形成位置に間欠搬送する。
即ち、制御ユニット40は、記録制御部41の制御により、キャリッジ25が主走査方向に片道分搬送され、この過程で記録ヘッド23からインク液滴が吐出されて、用紙Pに主走査方向片道分の線状画像が形成される度に、給紙制御部43及び用紙搬送制御部45を通じて、給紙モータM1及び搬送モータM2を駆動し、これによって搬送ローラ17及び給紙ローラ15から用紙Pに駆動力を付与して、用紙Pを上記形成された線状画像の幅に対応する所定量、副走査方向に搬送する。上述の「間欠搬送」は、このような主走査方向片道分の線状画像が用紙Pに形成される度に、所定量用紙Pを送り出す動作のことを言う。
ここで、搬送モータM2及び給紙モータM1の両者を駆動することにより、搬送ローラ17及び給紙ローラ15の両者から用紙Pに対して駆動力を付与して、用紙Pを画像形成位置に間欠搬送する場合の利点・欠点について述べると、用紙搬送路11が湾曲した状態では、用紙Pの搬送負荷が大きいので、複数のモータM1,M2を通じて用紙Pを搬送することで、用紙Pに対して十分な駆動力を付与することができる。
但し、搬送ローラ17による用紙Pの搬送量と給紙ローラ15による用紙Pの搬送量とが一致していないと、用紙Pは、適切な状態よりも張ったり撓んだりした状態となり、このような状態変化が、所定量の間欠搬送に誤差を生み、用紙Pに形成される画像の品質が劣化する可能性がある。例えば、用紙Pが大きく撓んだ状態では、撓みを解消する方向の復元力が大きく働くため、この力により、用紙Pが目標とする停止位置よりも下流に移動してしまう可能性がある。一方、用紙Pが過剰に張った状態では、搬送ローラ17と用紙Pとの間での滑りが大きくなり、用紙Pが目標とする停止位置よりも手前で止まってしまう可能性がある。
本実施例の画像形成装置1は、このような問題を、次のようなモータ制御により解消する。以下では、本実施例の画像形成装置1に特徴的なモータ制御の概略を、図3を用いて説明し、その後、モータ制御の詳細を、図4以降に示すフローチャートを用いて説明する。
図3上段のグラフは、用紙搬送制御部45が設定する搬送モータM2に対する操作量U(実操作量)の一例を実線で示し、設計段階で想定された操作量であって記憶部47が記憶するノミナル操作量Unを点線で示し、ノミナル操作量Unと閾値TH1(TH1>0)との加算値で定まる操作量Uの許容上限値Umax=Un+TH1を一点鎖線で示し、ノミナル操作量Unと閾値TH2(TH2<0)との加算値で定まる操作量Uの許容下限値Umin=Un+TH2を二点鎖線で示したグラフである。
また、図3下段のグラフは、予め定められた目標位置プロファイルに従う給紙モータM1の目標位置軌跡を点線で示し、搬送モータM2に対する操作量Uが許容上限値Umaxを上回る事象が発生したこと又は許容下限値Uminを下回る事象が発生したことに起因して、目標位置を補正したときの補正後の目標位置軌跡を実線で表す図である。
本実施例では、搬送モータM2に対する操作量Uがノミナル操作量Unを基準とする許容上限値Umaxを上回ったときには、搬送モータM2が搬送する用紙Pの搬送負荷が大きく、用紙Pが正常な状態よりも張った状態にあると推定して、給紙モータM1に対する操作量Uaを大きくする。具体的には、目標位置プロファイルに従う目標位置Xarの補正量ΔXを大きくして、この補正後の目標位置Xc=Xar+ΔXに基づき、操作量Uaを算出することで、給紙モータM1に対する操作量Uaを大きくする。
一方、搬送モータM2に対する操作量Uがノミナル操作量Unを基準とする許容下限値Uminを下回ったときには、搬送モータM2が搬送する用紙Pの搬送負荷が小さく、用紙Pが正常な状態よりも撓んだ状態にあると推定して、給紙モータM1に対する操作量Uaを小さくする。具体的には、目標位置プロファイルに従う目標位置Xarの補正量ΔXを小さくして、この補正後の目標位置Xc=Xar+ΔXに基づき、操作量Uaを算出することで、給紙モータM1に対する操作量Uaを小さくする。本実施例では、このようにして、用紙Pが過度に張った状態や撓んだ状態を解消し、上記問題を解消する。
尚、本実施例の給紙制御部43は、目標位置プロファイルに従う目標位置Xarに補正量ΔXを加算した値Xcを制御に用いる目標位置Xcに設定して、この目標位置Xcと信号処理回路31から得られる給紙モータM1の回転位置Xaとの偏差Eaに基づき、給紙モータM1に対する操作量Uaを決定する。そして、各用紙の搬送開始時における補正量ΔXは、初期値ゼロに設定される。このため、搬送初期において、目標位置Xcは、図3下段に示すように目標位置プロファイルが示す目標位置Xarと同一値に設定され、給紙モータM1は、この目標位置Xcと検出された回転位置Xaとの偏差Eaに基づき位置制御される。
一方、搬送モータM2に対する操作量Uが許容上限値Umaxを上回った場合又は許容下限値Uminを下回った場合には、上記のように補正量ΔXが更新され、これによって、目標位置Xcの進度が、図3下段に示すように、目標位置プロファイルに従う目標位置Xarの進度に対して変更され、搬送モータM2により搬送される用紙Pの搬送量と、給紙モータM1により搬送される用紙の搬送量とが適切な関係となるよう調整される。これによって、本実施例では、用紙Pの張りや撓みが、解消される。本実施例では、このような手法にて、過度の張りや撓みを抑制し、これによって、間欠搬送の際に用紙Pが上記所定量より多く移動したり少ない量しか移動しなくなったりするのを抑制し、用紙Pに形成される画像の品質が劣化するのを抑制する。
ちなみに、図3下段のグラフによれば、補正後の目標位置Xcが、目標位置プロファイルが示す当初の目標位置Xarとは異なる値に収束するが、この誤差は、信号処理回路31により検出される位置Xaと、実際の用紙Pの搬送量との間にズレが生じることに起因するものである。また、本実施例では、給紙モータM1を逆回転させてまで用紙Pの過度の張りや撓みを解消することを考えていない。
続いて、給紙制御部43や用紙搬送制御部45が実行する処理の詳細について、図4以降のフローチャートを用いて説明する。
本実施例の用紙搬送制御部45は、給紙制御部43による上述の給紙動作(用紙Pを搬送ローラ17に供給する動作)が完了すると、各回の間欠搬送に際して、所定の制御周期毎(所謂サンプリング周期毎)に、図4に示す搬送モータ制御ルーチンを実行する。これによって、信号処理回路33から搬送モータM2の回転位置Xの情報を取得し、これに基づき搬送モータM2に対する操作量Uを決定して、上記間欠搬送動作を実現する。
搬送モータ制御ルーチンを開始すると、用紙搬送制御部45は、まず入出力を実行する。具体的には、前回の搬送モータ制御ルーチンにて算出した操作量Uを駆動回路53に出力すると共に、信号処理回路33から搬送モータM2の回転位置Xを取得する処理を実行する(S110)。
この後、用紙搬送制御部45は、記憶部に予め記憶されている目標位置プロファイルに従って目標位置Xrを設定し(S120)、この目標位置Xrと、信号処理回路33から取得した回転位置Xとの偏差E=Xr−Xを算出する(S130)。そして、偏差Eを所定伝達関数に入力して、偏差Eに対応する操作量Uを算出し、これを一時記憶する(S140)。尚、ここで一時記憶した操作量Uは、上述したように、次回の入出力処理(S110)実行時に、駆動回路53に入力される。但し、操作量Uの初期値はゼロである。
S140の処理を終えると、用紙搬送制御部45は、図5に示す補正パラメータ設定処理を実行し(S160)、その後、当該搬送モータ制御ルーチンを終了する。
続いて、図5を用いて補正パラメータ設定処理の内容を説明する。補正パラメータ設定処理を開始すると、用紙搬送制御部45は、今回のS140で算出した操作量Uに対応するノミナル操作量Unと閾値TH1との和(Un+TH1)で定まる許容上限値Umaxを算出し(S161)、今回のS140で算出した操作量Uが許容上限値Umaxよりも大きいか否かを判断する(S162)。
そして、上記操作量Uが許容上限値Umaxよりも大きい場合には(S162でYes)、S163に移行し、上述した補正量ΔXの算出に用いる補正パラメータCを、上記操作量Uと許容上限値Umaxとの差分(U−Umax)で定まる正の値に設定する(C←U−Umax)。その後、当該補正パラメータ設定処理を終了する。尚、この補正パラメータCは、各回の間欠搬送開始時に値ゼロに初期化される。
一方、上記操作量Uが許容上限値Umax以下である場合(S162でNo)、用紙搬送制御部45は、S165に移行して、上記ノミナル操作量Unと閾値TH2(但しTH2は負の値である。)との和(Un+TH2)で定まる許容下限値Uminを算出し、上記操作量Uが許容下限値Uminよりも小さいか否かを判断する(S166)。そして、上記操作量Uが許容下限値Uminよりも小さいと判断すると(S166でYes)、S167に移行して、補正パラメータCを、上記操作量Uと許容下限値Uminとの差分(U−Umin)で定まる負の値に設定する(C←U−Umin)。その後、当該補正パラメータ設定処理を終了する。
この他、上記操作量Uが許容上限値Umax以下且つ許容下限値Umin以上である場合(S166でNo)、用紙搬送制御部45は、補正パラメータCをゼロに設定して(S169)、当該補正パラメータ設定処理を終了する。
一方、給紙制御部43は、給紙動作(給紙トレイ13から用紙Pを搬送ローラ17に供給する動作)が終了すると、上記搬送モータ制御ルーチンと同一の制御周期毎に、図6に示す給紙モータ制御ルーチンを実行することにより、搬送モータM2による用紙Pの間欠搬送動作に合わせた給紙モータM1による用紙Pの間欠搬送動作を実現する。
給紙制御部43は、この給紙モータ制御ルーチンを開始するとまず、前回の制御周期(給紙モータ制御ルーチン)にて算出した操作量Uaを駆動回路51に出力すると共に、信号処理回路31から給紙モータM1の回転位置Xaを取得する入出力処理を実行する(S210)。尚、操作量Uaの初期値はゼロである。
この後、給紙制御部43は、記憶部に予め記憶されている目標位置プロファイルに従う目標位置Xarを求め(S220)、更に目標位置Xarの補正量ΔXを設定する(S230)。具体的には、同時刻に実行される上記搬送ローラ制御ルーチンにて設定された補正パラメータCに補正ゲインKを掛けた値(K・C)を、前回の補正量ΔXに加算して得られる値(ΔX+K・C)を、今回の補正量ΔXに設定する。尚、補正ゲインKは、予め設計段階で定められる係数であり、具体的には、操作量のスケールで表される補正パラメータCを、位置のスケールに変換するための係数である。
この後、給紙制御部43は、目標位置プロファイルに従う目標位置Xarを、ここで設定した補正量ΔXで補正して、補正後の目標位置Xc=Xar+ΔXを、制御に用いる目標位置Xcに設定する(S240)。
また、S240での処理を終えると、給紙制御部43は、補正後の目標位置Xcと、信号処理回路31から取得した給紙モータM1の回転位置Xaとの偏差Ea=Xc−Xaを算出し(S250)、これを所定伝達関数に入力して、偏差Eaに算出した操作量Uaを算出する(S260)。そして、この操作量Uaを一時記憶し、当該給紙モータ制御ルーチンを終了する。そして、次回の給紙モータ制御ルーチンの実行時にはS210で、この操作量Uaを駆動回路51に設定する。
本実施例の画像形成装置1は、このようにして給紙モータM1及び搬送モータM2を制御することにより、図3に示すような目標位置Xcの調整を通じて、給紙モータM1による用紙搬送量と、搬送モータM2による用紙搬送量とを適切な関係に補正し、用紙Pを高精度に所定量ずつ搬送できるようにする。
以上に、操作量Uaの補正方法について説明したが、本実施例の画像形成装置1は、上述したように閾値TH1及び閾値TH2を設定する閾値設定部49を制御ユニット40に備える。この閾値設定部49は、図7に示す処理を実行することにより、モータM2の回転負荷及び用紙種類に応じた閾値TH1及び閾値TH2を設定する。尚、図7(a)は、画像形成装置1の電源投入時に、閾値設定部49が実行する基準閾値設定処理を表すフローチャートであり、図7(b)は、外部から印刷指令が入力される度に、閾値設定部49が実行する主閾値設定処理を表すフローチャートである。本実施例では、この基準閾値設定処理により基準閾値B1,B2を設定し、この基準閾値B1,B2に対して、搬送対象の用紙種類に対応した閾値補正量γを作用させることにより、閾値TH1及び閾値TH2を設定する。
基準閾値設定処理を開始すると、閾値設定部49は、まず用紙搬送制御部45を起動して、用紙搬送制御部45を通じて搬送モータM2をテスト駆動する。具体的には、用紙搬送制御部45に上記間欠搬送時と同様の目標位置プロファイルに基づく搬送モータM2の制御を実行させる。尚、この処理は、画像形成装置1の電源投入直後において実行されるため、搬送ローラ17に用紙Pが供給されていない状態で行われる。
そして、閾値設定部49は、このテスト駆動時に駆動回路53に対して入力された操作量Uの履歴(操作量Uの時系列データ)を用紙搬送制御部45から取得する(S310)。その後、閾値設定部49は、この履歴に基づき、当該履歴が示す各時刻の操作量Uと対応する時刻のノミナル操作量Unの差分ΔU=U−Unを算出し、各時刻の差分ΔUの一群から当該差分ΔUの最大値Max{ΔU}及び最小値Min{ΔU}を検出する(S320)。尚、最大値Max{ΔU}は正の値、最小値Min{ΔU}は負の値となることが期待される。
そして、閾値TH1の算出に用いる第一基準閾値B1を、最大値Max{ΔU}に設定し(S330)、閾値TH2の算出に用いる第二基準閾値B2を、最小値Min{ΔU}に設定する(S340)。その後、当該基準閾値設定処理を終了する。
閾値設定部49は、このような基準閾値設定処理の実行後、印刷指令が入力される度に、図7(b)に示す主閾値設定処理を実行する。具体的に、閾値設定部49は、印刷指令に対応する画像形成処理(用紙Pを間欠搬送しては、主走査方向に記録ヘッド23を搬送して用紙Pに線状画像を形成する処理)の開始前に、次に説明する内容の処理を実行する。
主閾値設定処理を開始すると、閾値設定部49は、まず今回搬送対象とされる用紙Pの種類を特定する。外部装置から入力される印刷指令には、搬送対象の用紙種類(具体的には、サイズや普通紙、光沢紙、はがき等の紙質・紙厚で特定される用紙種類)の情報及び印刷対象の画像データが付属する。このため、閾値設定部49は、印刷指令に付属する用紙種類の情報に基づき、今回搬送対象とされる用紙Pの種類を特定する(S410)。
この処理を終了すると、閾値設定部49は、特定した用紙種類の情報に基づき、今回搬送される用紙Pの種類に対応した閾値補正量γを、記憶部47から読み出す(S420)。尚、上述したように記憶部47には、用紙種類毎の閾値補正量γが記憶されている。
この後、閾値設定部49は、今回の用紙搬送(間欠搬送)時に用いる閾値TH1を、電源投入時に設定された基準閾値B1に閾値補正量γを加算した値(TH1=B1+γ)に設定し、閾値TH2を、基準閾値B2に閾値補正量γを減算した値(TH2=B2−γ)に設定する(S430,S440)。その後、当該主閾値設定処理を終了する。
搬送モータM2に対する操作量Uは、搬送対象とする用紙の材質や大きさによって変化するため、本実施例では、印刷指令が入力される度、このように閾値補正量γを用いて閾値TH1及び閾値TH2を設定することにより、用紙種類に対応した適切な閾値TH1及び閾値TH2を設定する。
以上、本実施例の画像形成装置1の構成について説明したが、本実施例によれば、用紙搬送路11の上下流に位置するローラ15,17を、各ローラ15,17個別のモータM1,M2を通じて回転駆動して、用紙Pを搬送する際に、従来技術のように、エンコーダE2の出力信号から特定されるローラ17の回転量を指標に、上流側に位置するローラ15の回転量を調整するのではなく、下流側のローラ17を駆動するモータM2に対する操作量Uを指標に、上流側に位置するローラ15の回転量を調整する。
従って、滑り等でローラ15,17の回転量と用紙搬送量との間にズレがあるときでも、本実施例の画像形成装置1によれば、ローラ15,17夫々での用紙搬送量を適切な関係に保って、用紙Pを高精度に搬送することができ、用紙Pを高精度に目標とする位置に停止させることができる。即ち、用紙Pの過剰な張りや撓みにより、用紙Pが目標とする停止位置に対してオーバーランしてしまったり、手前に止まったりしてしまうのを抑制することができる。よって、本実施例によれば、用紙Pに高品質な画像を形成することができ、高性能な画像形成装置1をユーザに提供することができる。
特に、用紙搬送路11を湾曲形状とする場合には、画像形成装置1をコンパクトに設計できるものの搬送負荷によって制御誤差が生じ易いので、用紙搬送路11が湾曲する画像形成装置1に、本発明の手法を適用すれば、上述の効果が一層発揮される。また、本実施例の画像形成装置1のように、給紙ローラ15が回動アーム151の自重により用紙Pに当接している程度では、用紙搬送時に滑りが発生しやすいので、この装置に、本発明の手法を採用すれば、滑りによる影響を抑えて用紙Pの搬送精度を向上させることができる。
[変形例1]
ところで、上記実施例では、搬送ローラ17にて用紙Pが搬送されていない状態での操作量Uの履歴に基づき、閾値TH1及び閾値TH2を決定するようにしたが、この手法では、実際に用紙Pを搬送したときの操作量Uの変動量を、閾値補正量γで予想することになるため、実際の変動量との誤差が生じる。
一方、連続印刷時には、同一種類の用紙Pを複数枚続けて搬送するが、この際には、用紙Pの後端が、給紙ローラ15を抜けて、搬送ローラ17より上流のローラからは駆動力を受けていない状態で、当該用紙Pが搬送される状態が発生する。そして、搬送ローラ17より上流のローラからは駆動力を受けていない状態で、用紙Pが搬送ローラ17により搬送される状態の操作量Uの変動は、用紙Pを搬送ローラ17及び給紙ローラ15にて正常に搬送している環境での操作量Uの変動に類似する。そこで、閾値設定部49は、印刷指令が連続印刷指令である場合、図7(b)に示す主閾値設定処理を実行した後、図8に示す連続印刷時閾値設定処理を実行する構成にされてもよい。
この連続印刷時閾値設定処理において、閾値設定部49は、用紙搬送制御部45の動作を監視し、搬送ローラ17により間欠搬送される用紙Pが搬送ローラ17より上流側のローラ(給紙ローラ15)を抜けるまで待機する。そして、抜けた後には、その後の間欠搬送時(1回又は複数回の間欠搬送時)に用紙搬送制御部45から駆動回路53に入力された操作量Uの履歴(時系列データ)を用紙搬送制御部45から取得する(S510)。そして、この履歴に基づき、当該履歴が示す各時刻の操作量Uと対応する時刻のノミナル操作量Unの差分ΔU=U−Unを算出し、各時刻の差分ΔUの一群から当該差分ΔUの最大値Max{ΔU}及び最小値Min{ΔU}を検出する(S520)。
その後、閾値設定部49は、最終頁までの印刷が完了して連続印刷が完了するか、最終頁までの印刷が完了していないことに起因して次用紙が給紙トレイ13から搬送ローラ17に供給されるまで待機する(S530,S540)。具体的に、S540では、操作量Uの履歴を取得した際の搬送用紙Pが排紙トレイ29へと排紙され、その後給紙制御部43の動作により給紙ローラ15を通じて新たな用紙Pが搬送ローラ17に供給されるまで待機する。
そして、給紙ローラ15を通じて新たな用紙Pが搬送ローラ17に供給された場合には(S540でYes)、当該新たな用紙Pの間欠搬送時に用いるべき閾値TH1として、S520で検出した差分ΔUの最大値Max{ΔU}を設定し(S550)、閾値TH2として、S520で検出した差分ΔUの最小値Min{ΔU}を設定する(S560)。その後、閾値設定部49は、S510に移行し、新たに供給された用紙Pが搬送ローラ17より上流側のローラ(給紙ローラ15)を抜けるまで待機し、その後に続く処理を、上述したように実行する。そして、連続印刷が終了すると(S530でYes)、当該連続印刷時閾値設定処理を終了する。
このようにして変形例では、連続印刷時において、前頁の用紙Pにおける操作量Uの履歴に基づいて次頁の用紙Pの間欠搬送に際して用いるべき閾値TH1及び閾値TH2を設定する。変形例では、このようにして閾値TH1及び閾値TH2を、前頁搬送時の操作量Uの履歴が示す操作量Uの変動範囲では、操作量Uが許容上限値Umaxを上回らず且つ許容下限値Uminを下回らないように、閾値TH1及び閾値TH2を設定する。このため変形例によれば、用紙Pが適切に搬送されているにも拘らず、操作量Uが許容上限値Umaxを上回ったり許容下限値Uminを下回ったりすることで、不要な操作量Uの補正がなされるのを極力回避することができ、より高精度に用紙Pを搬送することができる。
[変形例2]
図3上段に示すような操作量Uの入力により、上記実施例の画像形成装置1において、用紙Pは、搬送モータM2を通じて初期状態では加速され、その後定速搬送され、その後減速・停止されて、間欠搬送されることになる。しかしながら加減速区間では、操作量Uの揺動が大きい。このため、変形例2では、補正パラメータCに基づく補正量ΔXの更新動作を、用紙Pが定速搬送される区間(定速区間)に限定して実行する。
即ち、変形例2において用紙搬送制御部45は、S150及びS155の処理が追加された図9に示す搬送モータ制御ルーチンを実行する。詳述すると、用紙搬送制御部45は、S140での操作量Uの算出後、現在時刻が定速搬送の実行区間(定速区間)であるか否かを判断し(S150)、定速区間である場合には(S150でYes)、上記実施例と同様、S160に移行して図5に示す補正パラメータ設定処理を実行する。一方、定速区間ではなく加減速区間である場合には(S150でNo)、補正パラメータCをゼロに設定し(S155)、補正量ΔXの更新動作を停止する。その後、当該搬送モータ制御ルーチンを終了する。尚、S150での判断は、予め設計段階で定められた制御開始時点を基準とする定速搬送の実行区間(図3に示すノミナル操作量Unが一定である時間区間)と、制御開始時点を基準とする現在時刻と、の比較により実現することができる。
加減速区間では操作量Uの変動が定速区間と比較して大きいため、正常な用紙搬送が実現されている場合でも、操作量Uが許容上限値Umaxを上回ったり許容下限値Uminを下回ったりする可能性があるが、変形例2では、定速区間に限定して補正量ΔXの更新動作を実行するので、このような問題を極力回避して、良好な用紙Pの搬送制御を実現することができる。
以上、変形例を含む本発明の実施例について説明したが、給紙ローラ15は、本発明の第一ローラの一例に対応し、搬送ローラ17は、本発明の第二ローラの一例に対応する。また、給紙モータM1は、第一モータの一例に対応し、搬送モータM2は、第二モータの一例に対応し、画像形成装置1におけるローラ15,17,27及び用紙搬送路11,21及び給紙トレイ13等で構成される機械構成は、本発明のシート搬送機構の一例に対応する。また、給紙制御部43は、第一駆動制御手段の一例に対応し、用紙搬送制御部45は、第二駆動制御手段の一例に対応する。また、用紙搬送制御部45による補正パラメータCの設定動作及び給紙制御部43による補正パラメータCに基づく目標位置の補正動作は、本発明の補正手段に対応する。また、ノミナル操作量Unは、本発明の基準値に対応し、許容上限値Umaxは、本発明の許容上限値の一例に対応し、許容下限値Uminは、本発明の許容下限値の一例に対応する。
また、補正パラメータCを設定することで、目標位置Xarの補正量ΔXに対する加算値をK・Cに設定する動作は、補正パラメータ設定手段が補正パラメータを設定する動作の一例に対応し、値(K・C)は、本発明の補正パラメータの一例に対応する。また、補正量ΔXをS230で更新する動作は、本発明の補正量更新手段が実行する処理の一例に対応する。この他、閾値設定部49は、本発明の調整手段の一例に対応する。また、閾値設定部49が、用紙種類に対応する閾値補正量γを読み出す動作は、本発明の調整手段が、シートの種類に応じて、第二操作量の変動量を推定する動作の一例に対応する。
また、本発明は、上記実施例に限定されることなく、種々の態様を採ることができる。例えば、画像形成装置1は、搬送ローラ17と給紙ローラ15との間に、中間ローラを備える構成にされてもよい。更に、中間ローラは、モータからの駆動力を受けない構成にされてもよいし、給紙モータM1により駆動される構成にされてもよい。即ち、本発明は、種々のシート搬送装置に適用することができる。
また、上記実施例においては、本発明の第一操作量の一例である給紙モータM1に対する操作量Uaを補正するために、給紙モータM1の目標位置Xcを補正したが、給紙モータM1に対する操作量Ua自体を補正してもよい。また、上記実施例では、目標位置Xcと給紙モータM1の回転位置Xaとの偏差Eaに応じた操作量Uaを算出するようにしたが、本発明の第一駆動制御手段の一例に対応する給紙制御部43は、目標位置Xcに対応した操作量を算出して、フィードフォワード制御により給紙モータM1(給紙ローラ15)を制御する構成にされてもよい。