JP5736969B2 - 搬送装置、印刷装置、及び搬送方法 - Google Patents

搬送装置、印刷装置、及び搬送方法 Download PDF

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Description

本発明は、シート状物を2組のローラーで処理位置へ搬送する装置等に関し、特に、装置規模を大きくすることなく、下流側ローラーへのバックテンションの作用をなくすことができる搬送装置等に関する。
従来、プリンター等の装置においては用紙などのシート状の媒体に対して処理を行うため、当該シート状物の搬送を行う装置が必要となる。かかる搬送装置として、一般によく用いられるものは、例えば、シート状媒体を格納する部分から当該媒体を搬送路に供給する上流側のローラーと、当該供給された媒体を搬送路にそって印刷等の処理を実行する位置へ搬送する下流側のローラーとを備える。
このような搬送装置では、搬送する媒体への印刷等の処理を精度良く高品質で実行するために、上記下流側ローラーからの媒体の供給速度を正確に制御することが求められる。しかし、下流側ローラーにおいて上流側から引っ張られるバックテンションが存在するとその制御が困難である、という課題がある。
そこで、それを克服するための技術として、従来、下記特許文献1のような提案がなされている。当該文献では、上流側ローラーの駆動タイミングを早める、また、その搬送量を多くする、という点が示されている。
特開2008−56367号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、上述した早める駆動タイミングや搬送量の増やし方が状況に関わらず固定的に決定されるので、変化する搬送状態に応じて常に適切な制御を行うという点で課題がある。例えば、各ローラーの摩耗状況や媒体の格納状況(媒体がロール紙である場合にはそのロール径)などにより、各ローラーにかかる力や搬送力は変化するので、常に固定値による制御では、上流側ローラーと下流側ローラーの間で媒体が弛みなしの状況になったり、逆に弛みすぎの状態になり搬送経路内の部材にこすれてしまう状況になり得、下流側ローラーにバックテンションが発生する虞がある。また、上記弛みがなくならないように常に多めの弛みを保持し、かつ、弛みが搬送経路内の部材に接触しないようにするためには、装置規模を大きくしなくてはならないという問題がある。
そこで、本発明の目的は、シート状物を2組のローラーで処理位置へ搬送する装置であって、装置規模を大きくすることなく、下流側ローラーへのバックテンションの作用をなくすことができる搬送装置、等を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、シート状の被処理媒体を搬送路に送り出す上流側ローラーと、当該送り出された媒体を処理位置に供給する下流側ローラーと、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーの駆動を制御し前記被処理媒体を定速で搬送させる制御部と、を備える搬送装置において、前記制御部が、前回の搬送動作時における前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーの前記定速に至るまでの挙動を示す情報に基づいて、搬送動作開始時の前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーの起動タイミングを決定する、ことである。
更に、上記発明において、その好ましい態様は、前記起動タイミングの決定は、前記上流側ローラーに対して前記下流側ローラーの起動タイミングを遅らせるように決定する、ことを特徴とする。
更にまた、上記発明において、その一つの態様は、前記定速に至るまでの挙動を示す情報は、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーの起動から前記定速に至るまでの時間である、ことを特徴とする。
更に、上記発明において、別の態様は、前記定速に至るまでの挙動を示す情報は、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーのそれぞれの起動から、前記上流側ローラーが起動してから定速に至るまでに要した時間経過するまでに、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーのそれぞれによって前記被処理媒体が搬送された量である、ことを特徴とする。
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記定速に至るまでの挙動を示す情報と前記起動タイミングの関係を示す情報を、前記被処理媒体の種類毎に予め保持する、ことを特徴とする。
更に、上記発明において、その好ましい態様は、前記被処理媒体がロール状に保持された状態から前記上流側ローラーに供給される、ことを特徴とする。
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、上記記載の搬送装置を備え、前記処理位置で前記被処理媒体に印刷を実行する印刷装置とすることである。
上記の目的を達成するために、本発明の更に別の側面は、シート状の被処理媒体を搬送路に送り出す上流側ローラーと、当該送り出された媒体を処理位置に供給する下流側ローラーと、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーの駆動を制御し前記被処理媒体を定速で搬送させる制御部と、を備える搬送装置における搬送方法において、前記制御部が、前回の搬送動作時における前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーの前記定速に至るまでの挙動を示す情報に基づいて、搬送動作開始時の前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーの起動タイミングを決定する、ことである。
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
本発明を適用した搬送装置を備える印刷装置の実施の形態例に係る概略構成図である。 搬送動作の開始時における給紙ローラー29及び搬送ローラー30の挙動の一例を示した図である。 搬送制御部22が実行する処理の手順を例示したフローチャートである。 ウェイト時間ΔTを説明するための図である。 モーター27A及び27BのDuty値の一例を経時的に示した図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
図1は、本発明を適用した搬送装置を備える印刷装置の実施の形態例に係る概略構成図である。図1に示すプリンター2が本実施の形態例に係る印刷装置であり、当該印刷装置は、印刷媒体の用紙26を給紙ローラー29(上流側ローラー)及び搬送ローラー30(下流側ローラー)で印刷位置に搬送して印刷処理を実行するが、各搬送動作において、当該両ローラーの駆動開始タイミングを、前回の搬送動作における両ローラーの駆動開始時の挙動に基づいて決定し、両ローラー間の用紙26の弛みを常に一定に保とうとするものである。
本プリンター2は、図1に示すように、コンピューターなどのホスト装置1からの指示を受けて印刷処理を実行する装置であり、ここでは、一例として、ロール紙25を用紙26として使用し、用紙26を搬送しながら連続的に印刷を実行する印刷装置である。
図1ではプリンター2の概略構成を模式的に示しているが、プリンター2は、印刷内容を制御し用紙26に印刷処理を実行する印刷系と用紙26の搬送を担う搬送系が備えられる。
印刷系には、印刷制御部21が設けられ、当該印刷制御部21は、ホスト装置1からの印刷指示を受信し、当該指示に従ってヘッド部23に印刷命令を出すと共に搬送系の搬送制御部22に対して用紙26の搬送要求を出す。ヘッド部23では、当該印刷命令に従ってヘッド部23とプラテン24との間を所定速度で移動する用紙26に対して印刷処理を実行する。
搬送系では、図1に示されるように、印刷媒体の格納場所にロール紙25として保持される用紙26を、搬送路33に沿ってヘッド部23に搬送し、その後、排紙ローラー32を介してプリンター2から排出する搬送動作が実行される。
そのヘッド部23への用紙搬送のために、それぞれ対応するモーター(27A及び27B)で駆動される給紙ローラー29(上流側ローラー)及び搬送ローラー30(下流側ローラー)が備えられる。当該両ローラーには、それぞれ、用紙26を挟んで対向する位置に従動ローラー(28A及び28B)が用紙26側に圧力を加えられた状態で配置される。
給紙ローラー29は、ロール紙25として保持される用紙26を搬送路33に供給する機能を有し、減速機を介して伝えられるモーター27Aのトルクによって回転し、従動ローラー28Aと共に押圧する用紙26との間の摩擦力に行って用紙26を移動させる。
搬送ローラー30は、給紙ローラー29によって供給された用紙26を印刷位置へ、すなわち、ヘッド部23の位置へ搬送する機能を有し、減速機を介して伝えられるモーター27Bのトルクによって回転し、従動ローラー28Bと共に押圧する用紙26との間の摩擦力に行って用紙26を移動させる。
給紙ローラー29及び搬送ローラー30には、それぞれ、エンコーダー31A及び31Bが設けられ、それらによって検知される両ローラーの回転速度が搬送制御部22へ通知される。
図1に示す搬送制御部22は、搬送系を制御する部分であり、印刷制御部21からの指示に基づいて用紙26の上記搬送動作を制御する。特に、給紙ローラー29及び搬送ローラー30の駆動・停止を制御して印刷位置への用紙26の良好な搬送を実行させる。この給紙ローラー29及び搬送ローラー30の駆動・停止制御に本プリンター2の特徴があり、その具体的内容については後述する。
搬送制御部22は、図示していないが、CPU、ROM、RAM、NVRAM(不揮発性メモリ)等で構成されており、搬送制御部22が実行する上記処理は、主にROMに格納されるプログラムに従ってCPUが動作することによって実行される。
上記RAMには、処理に必要な各データが一時的に保持され、給紙ローラー29及び搬送ローラー30の駆動・停止制御に必要な上記搬送動作時の各駆動データ、後述するウェイト時間ΔTはここに記憶される。記憶される各駆動データには、給紙ローラー29及び搬送ローラー30の、駆動開始時刻、搬送速度、及び対応するモーター27のDuty値(ここではモーター27に供給される電流量)が含まれる。
また、上記NVRAMには、上記ウェイト時間ΔTを決定するための関係情報が予め記憶されている。当該関係情報については後述する。
なお、給紙ローラー29、搬送ローラー30、及び搬送制御部22を含む当該搬送系が本発明の搬送装置に相当する。
以上説明したような構成を有する本プリンター2では、用紙26の搬送制御に特徴があり、以下、その具体的な内容について説明する。
前述のとおり、本プリンター2では、所定の(一定の)速度で搬送される用紙26に対して印刷処理を実行するので、搬送制御部22は、印刷処理が開始されると、給紙ローラー29及び搬送ローラー30の搬送速度が当該所定速度に素早くなるように制御し、印刷処理が終了するまでその搬送速度を維持し、印刷処理が終了すると両ローラーを停止させる。かかる搬送動作、搬送処理が印刷処理を実行する度に繰り返し実行される。
また、用紙26を最初にセットする場合には、搬送制御部22は、給紙ローラー29と搬送ローラー30の間で用紙26に一定の弛み(例えば、図1に示すような弛み)ができるように両ローラーを制御して、用紙26を所定の位置まで搬送しておく。これは、前述したように、搬送ローラー30にバックテンションが作用しないようにするためのものであり、これにより搬送ローラー30から常に一定の速度で用紙26を印刷位置へ供給することができるようになる。
また、給紙ローラー29は、上流側に位置するロール紙25から用紙26を引き出すための力をバックテンションとして受けることになるので、通常、用紙26の搬送中に搬送ローラー30よりも大きなバックテンションを受けることになる。
従って、上記各搬送動作の開始時において、給紙ローラー29の方が上記所定速度に到達するまでに時間がかかる傾向にある。図2は、搬送動作の開始時における給紙ローラー29及び搬送ローラー30の挙動の一例を示した図である。当該図において、横軸は、駆動を開始してからの経過時間(T)を表し、縦軸は、各ローラーの搬送速度(V)を表している。そして、グラフの曲線Aが給紙ローラー29の挙動を示し、曲線Bが搬送ローラー30の挙動を示している。
上述のとおり、搬送ローラー30と比べて給紙ローラー29の方により大きなバックテンションが作用するので、図2に示すとおり、目標とする上記所定速度に達するまでの搬送速度の立ち上がりが給紙ローラー29(曲線A)の方が緩やかとなってしまう。そのため、両ローラーが上記所定速度に達するまでの両ローラーの用紙搬送量に差が生じることにある。図2に示す例では、曲線Bと曲線Aの間にできた面積分の搬送量差(ΔL)が生じることになる。
従って、上記搬送動作の開始時に両ローラーを同時に起動すると、両ローラーが所定速度に達し同じ搬送量で制御されるまでに、搬送ローラー30の方が当該搬送量差(ΔL)分多く搬送することになる。これは、上述した用紙26の弛みを減らしてしまうことであり、その搬送量差によっては弛みがなくなってしまう虞もある。
そこで、本プリンター2の搬送制御部22では、上記初期状態で生成した弛みを上記各搬送動作中においてほぼ一定に保てるような制御を実行する。以下、その具体的な制御内容を説明する。
図3は、搬送制御部22が実行する処理の手順を例示したフローチャートである。以下、図3に従って上記搬送動作についての制御内容を説明する。なお、当該制御は、上述した駆動開始時の搬送量差を搬送ローラー30の起動タイミングを遅らせることによって解消する、という発想に基づくものであり、その起動タイミングを、ロール紙25の残量などその時の装置状況をよく表す、前回の搬送動作時における駆動データに基づいて決定しようとするものである。さらに、当該駆動データとして、給紙ローラー29及び搬送ローラー30の立ち上がり時間差(上記所定速度に到達するまでの時間差)、給紙ローラー29及び搬送ローラー30の立ち上がるまでの搬送量差、及び、上記所定速度に達した後の給紙ローラー29及び搬送ローラー30の各モーター27のDuty値差、をそれぞれ用いた方法が実行され得る。
各搬送動作において、まず、搬送制御部22は、印刷制御部21から用紙の搬送開始指示を受信すると(ステップS1)、前述したRAMに保持されているウェイト時間ΔTの値を取得する(ステップS2)。このウェイト時間ΔTは、上述した、搬送ローラー30の起動タイミングを遅らせるための待ち時間であり、各搬送動作の終了後に決定し、次の搬送動作のために保持しておく情報である。具体的な決定方法については後述する。なお、当該プリンター2の起動後、最初の搬送動作である場合には、上記NVRAMに保持される予め定められたデフォルト値を取得する。また、各搬送動作時に決定したウェイト時間ΔTの値を上記NVRAMに記憶して、そこから取得するようにしても良い。
また、搬送制御部22は、上記指示の後、給紙ローラー29の駆動を開始させる(ステップS3)。すなわち、モーター27Aを起動させ、その後、給紙ローラー29における搬送速度が目標とする上記所定速度になるように制御を継続する。なお、搬送制御部22は、給紙ローラー29及び搬送ローラー30の駆動制御を、エンコーダー31A及び31Bの検知結果に基づくPID制御で行う。
次に、搬送制御部22は、当該給紙ローラー29の駆動開始後、上記取得したウェイト時間ΔTが経過するのを待って(ステップS4)、搬送ローラー30の駆動を開始させる(ステップS5)。すなわち、モーター27Bを起動させ、その後、搬送ローラー30における搬送速度が目標とする上記所定速度になるように制御を継続する。
その後、給紙ローラー29及び搬送ローラー30が上記所定速度に達すると、両ローラーについて定速駆動の制御を継続する(ステップS6)。
その後、印刷制御部21から搬送の停止指示を受信すると(ステップS7)、搬送制御部22は、給紙ローラー29及び搬送ローラー30の駆動を停止させる制御を行う(ステップS8)。当該制御では、両ローラーについて、それぞれ、単に素早く速度をゼロにする制御を行ってもよいが、好ましくは、今回の搬送動作における両ローラーの搬送量が同じになるように各ローラーを停止させる制御を実行する。これにより、当該搬送動作の開始時における給紙ローラー29・搬送ローラー30間の用紙26の弛みが保持される。
このようにして、両ローラーが停止されて今回の搬送動作が終了すると、搬送制御部22は、今回の搬送動作における給紙ローラー29及び搬送ローラー30の駆動状況から、次の搬送動作における上記ウェイト時間ΔTを決定し、上記RAMに記憶する(ステップS9)。
当該ウェイト時間ΔTは、駆動開始時における給紙ローラー29と搬送ローラー30の挙動の差による搬送量の相違を克服するためのものであるので、両ローラーの駆動開始時の挙動からこのウェイト時間ΔTを決定する方法を取ることができる。具体的には、上述したとおり、一つの方法として、給紙ローラー29及び搬送ローラー30の立ち上がり時間差から求める。
図4は、ウェイト時間ΔTを説明するための図である。図4の(A)は、図2に示したグラフと同様、給紙ローラー29と搬送ローラー30が同時に駆動開始をした場合の経時的な速度変化を示しており、上記立ち上がり時間差は、ここではΔT1に相当する。すなわち、各ローラーが駆動を開始してから目標の所定速度に達するまでの所要時間差である。
図4の(B)は、図3に基づいて説明した本プリンター2における制御を実行した場合の、給紙ローラー29と搬送ローラー30の経時的な搬送速度変化を示している。曲線Bで示される搬送ローラー30の駆動開始が、前述の説明のとおり、曲線Aで示される給紙ローラー29の駆動開始よりもウェイト時間ΔTだけ遅らされている。これにより、2つのローラーが両方とも目標の所定速度に達した時点(図中のT3)までに、両ローラーがそれぞれ搬送する量が概ね同じとなり(図中のΔL1とΔL2の面積がほぼ同じとなり)、当該搬送動作中に上記用紙26の弛みがほぼ一定に保たれることになる。
上述した立ち上がり時間差ΔT1とウェイト時間ΔTは概ね比例的な関係にあるといえるので、予め実験によりΔT=k1×ΔT1の比例係数k1を決定しておき、その情報を上述した関係情報としてNVRAMに記憶しておく。従って、当該方法では、給紙ローラー29及び搬送ローラー30について、それぞれ、駆動開始から上記所定速度到達までの時間を求め、図4の(B)に示す例では、TAとTBを求め、それらの差からΔT1を算出し、上記関係情報である比例係数k1を用いて、ΔT=k1×ΔT1の関係からウェイト時間ΔTを決定する。
なお、上述したRAMに記憶される各駆動データは、かかるウェイト時間ΔTの決定に用いるが、これらのデータは搬送制御部22が適宜取得して記憶する。また、給紙ローラー29及び搬送ローラー30の搬送速度及び対応するモーター27のDuty値(ここではモーター27に供給される電流量)は、所定の時間間隔で記憶される。
二つ目の方法は、給紙ローラー29及び搬送ローラー30の立ち上がるまでの搬送量差ΔLから決定する方法である。この場合にも、当該搬送量差ΔLとウェイト時間ΔTは概ね比例的な関係にあるといえるので、予め実験によりΔT=k2×ΔLの比例係数k2を決定しておき、その情報を上述した関係情報としてNVRAMに記憶しておく。従って、当該方法では、給紙ローラー29及び搬送ローラー30について、それぞれ、駆動開始から、給紙ローラー29の駆動開始から上記所定速度到達までの時間(図4の(B)に示すTA)に用紙26を搬送した量を求め、それらの差からΔLを算出し、上記関係情報である比例係数k2を用いて、ΔT=k2×ΔLの関係からウェイト時間ΔTを決定する。
図4の(B)に示す例においては、給紙ローラー29の加速中の上記搬送量は時刻T1からT3までの搬送量であり、搬送ローラー30の加速中の上記搬送量はT2からT4までの搬送量となって、これら搬送量の差からΔLが算出される。
次に、三つ目の方法について説明する。当該方法は、駆動開始時における給紙ローラー29と搬送ローラー30の挙動の差を、上記所定速度に達した後の給紙ローラー29及び搬送ローラー30の各モーター27のDuty値差ΔDで計ろうとするものである。すなわち、上記Duty値差ΔDからウェイト時間ΔTを決定する。
図5は、モーター27A及び27BのDuty値の一例を経時的に示した図である。Duty値は、各モーター27に供給される電流量を相対値で示したものであり、この値が大きいほどローラーに加えるべき力が大きいことを示す。
図5では、給紙ローラー29と搬送ローラー30の駆動開始からのモーター27A(曲線A)及び27B(曲線B)のDuty値を示している。通常、起動時には大きな力が必要であるので、Duty値は図5に示す山状となり、目標速度に達した以降はほぼ一定したDuty値となる。
同じ目標速度に制御しようとする二つのローラーについて、このDuty値がより大きいということは、駆動の負荷がより大きいことを意味し、すなわち、給紙ローラー29へ作用するバックテンションがより大きいことを示している。従って、Duty値差により駆動開始時の前述した立ち上がりの遅れを計ることが可能である。そこで、この方法では、Duty値差からウェイト時間ΔTを決定する。また、用いるDuty値差は、駆動開始時の制御においては、Duty値が大きく変動し安定していないため、上記所定速度に達成した以降の安定した時間帯(例えば、図5のPに示す時間帯)でのDuty値差ΔDを用いる。
この場合にも、当該Duty値差ΔDとウェイト時間ΔTは概ね比例的な関係にあるといえるので、予め実験によりΔT=k3×ΔDの比例係数k3を決定しておき、その情報を上述した関係情報としてNVRAMに記憶しておく。従って、当該方法では、給紙ローラー29及び搬送ローラー30が上記所定速度に到達した以降の各ローラーの代表的なDuty値を求め、それらの差からΔDを算出し、上記関係情報である比例係数k3を用いて、ΔT=k3×ΔDの関係からウェイト時間ΔTを決定する。
なお、上記代表的なDuty値は、予め設定した時間内で検知される複数のDuty値の平均値とすることができる。
なお、これら3つの方法において、ここでは、ウェイト時間を決定するための情報(ΔT1、ΔL、ΔD、これらを総称してΔX)とウェイト時間ΔTの関係を線形としたが、それらの関係をΔT=f(ΔX)なる関数fとしてもよい。この場合にも関数fを事前に定め、関係情報として記録しておく。
このようにして、ウェイト時間ΔTを決定し、それを上記RAMに記憶すると(ステップS9)、当該搬送動作についての一連の制御処理が終了し、以降、同様の処理を繰り返し実行する。
なお、上述したウェイト時間を決定するための情報(ΔT1、ΔL、ΔD)とウェイト時間の関係は、用紙26の種類等によって異なるため、本プリンター2で使用される各用紙毎に上記関係情報を用意しておくようにしてもよい。
以上説明したように、本実施の形態例に係るプリンター2の搬送系では、前回の搬送動作時における挙動に基づいて、すなわち、直前の状況に基づいて、搬送ローラー30の起動タイミングを適切に遅らせるので、給紙ローラー29の起動開始時における搬送遅れを適切に解消することができ、給紙ローラー29と搬送ローラー30の間の用紙26の弛みを搬送動作中もほぼ変化なく一定に保つことが可能になる。これにより、ロール紙25の残量など搬送状況の変化があっても、常に、搬送ローラー30へのバックテンションをなくすことができ、搬送ローラー30から印刷位置への用紙26の正確な供給が可能となって印刷品質を高めることができる。
また、最初に設定した上記弛みがほぼ変化しないため、弛み過ぎて用紙26が搬送路の部材に接触してしまうようなことも起こらず、搬送路には最小限の空間があればよく、上記バックテンションをなくすために装置を大きくする必要もない。
また、当該搬送方法は、給紙ローラー29へのバックテンションが変化し易いロール紙25を用いた装置においてより有効に作用する。
また、適切な各指標を用いて上記搬送ローラー30のウェイト時間ΔTを決定するので、正確な制御が可能である。
さらに、上述のとおり、用紙種類毎に上記関係情報を用意して制御することで、より正確な制御が可能となる。
なお、本実施の形態例では、印刷媒体が紙であったがシート状の媒体であればこれに限定されることはない。
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
1 ホスト装置、 2 プリンター、 21 印刷制御部、 22 搬送制御部、 23 ヘッド部、 24 プラテン、 25 ロール紙、 26 用紙、 27A、B モーター、 28A、B 従動ローラー、 29 給紙ローラー、 30 搬送ローラー、 31A、B エンコーダー、 32 排紙ローラー、 33 搬送路

Claims (8)

  1. シート状の被処理媒体を搬送路に送り出す上流側ローラーと、当該送り出された媒体を処理位置に供給する下流側ローラーと、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーの駆動を制御し前記被処理媒体を定速で搬送させる制御部と、を備える搬送装置であって、
    前記制御部は、少なくとも、前回の搬送動作時における、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーの起動から前記定速に至るまでのそれぞれの経過時間に基づいて決定されるウェイト時間分、前記上流側ローラーに対して前記下流側ローラーの起動タイミングを遅らせる
    ことを特徴とする搬送装置。
  2. 請求項1において、
    前記ウェイト時間は、前回の搬送動作時における、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーのそれぞれの起動から、前記上流側ローラーが起動してから定速に至るまでに要した時間経過するまでに、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーのそれぞれによって前記被処理媒体が搬送された量に基づいて決定される
    ことを特徴とする搬送装置。
  3. 請求項1あるいは2において、
    前記ウェイト時間は、前回の搬送動作時における、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーのそれぞれのモーターのDuty値に基づいて決定される
    ことを特徴とする搬送装置。
  4. 請求項1において、
    前記ウェイト時間は、前記上流側ローラーの前記経過時間と前記下流側ローラーの前記経過時間の差に比例する値として決定される
    ことを特徴とする搬送装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項において、
    前記ウェイト時間を決定するための指標と前記ウェイト時間の関係を示す情報を、前記被処理媒体の種類毎に予め保持する
    ことを特徴とする搬送装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項において、
    前記被処理媒体がロール状に保持された状態から前記上流側ローラーに供給される
    ことを特徴とする搬送装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の搬送装置を備え、前記処理位置で前記被処理媒体に印刷を実行する印刷装置。
  8. シート状の被処理媒体を搬送路に送り出す上流側ローラーと、当該送り出された媒体を処理位置に供給する下流側ローラーと、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーの駆動を制御し前記被処理媒体を定速で搬送させる制御部と、を備える搬送装置における搬送方法であって、
    前記制御部は、少なくとも、前回の搬送動作時における、前記上流側ローラー及び前記下流側ローラーの起動から前記定速に至るまでのそれぞれの経過時間に基づいて決定されるウェイト時間分、前記上流側ローラーに対して前記下流側ローラーの起動タイミングを遅らせる
    ことを特徴とする搬送方法。
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