以下、本発明の実施の形態に係る印刷装置、および連続搬送中の用紙サイズ不一致検出時の印刷処理の中断方法を、図面に基づいて説明する。印刷装置は、インクジェットプリンタを例として説明する。連続搬送中の用紙サイズ不一致検出時の印刷処理の中断方法は、インクジェットプリンタの動作の一部として説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の機構構造の要部を示す側面図である。
インクジェットプリンタ1は、給紙トレイとしてのリア給紙トレイ2と、フロント給紙トレイ3と、を有する。リア給紙トレイ2は、インクジェットプリンタ1の背面部に上方へ突出するように配設される。フロント給紙トレイ3は、インクジェットプリンタ1の底部に略水平に配設される。リア給紙トレイ2およびフロント給紙トレイ3には、たとえば普通紙、光沢紙、写真用紙、はがき用紙、L判写真用紙などの各種の印刷媒体Pを載置することができる。
リア給紙トレイ2およびフロント給紙トレイ3に載置された印刷媒体Pは、所定の印刷媒体搬送経路を搬送され、インクジェットプリンタ1の前面側に配設される図示外の排紙トレイへ排出される。図1中には、印刷媒体の搬送経路としてのリア用印刷媒体搬送経路4を一点鎖線により図示している。このリア用印刷媒体搬送経路4にそって印刷媒体Pの搬送方向を規制するガイド部材5や、プラテン6などが配設される。
インクジェットプリンタ1は、リア給紙トレイ2に載置されている印刷媒体Pを搬送するための機構部材として、たとえば上流側搬送ローラとしてのLD(ロード)ローラ11、上流側従動ローラとしてのLD従動ローラ12、ホッパ13、下流側搬送ローラとしてのPF(ペーパフィード)ローラ14、下流側従動ローラとしてのPF従動ローラ15、排紙ローラ16、排紙従動ローラ17などを有する。また、インクジェットプリンタ1は、この他にも、フロント給紙トレイ3に載置されている印刷媒体Pを搬送するための機構部材として、第二LDローラ18などを有する。
LDローラ11は、リア給紙トレイ2の下端縁に隣接して回転可能に配設される。LDローラ11は、図1の紙面に垂直な方向を軸とするローラ軸11aと、その周囲に周設されたゴム材11bと、を有する。LDローラ11は、略円筒形状に形成されている。LDローラ11は、後述するASF(オートシートフィーダ)モータ32の駆動により、回転する。
LD従動ローラ12は、LDローラ11と略同じ幅の円柱形状を有し、LDローラ11の下側に回転可能に配設される。LD従動ローラ12は、後述するASFサブモータ33の駆動により、LDローラ11と接離する向きで移動する。LDローラ11とLD従動ローラ12とは、リア給紙トレイ2の下端縁付近の位置において接する。LDローラ11とLD従動ローラ12とは、所定の圧接力により圧接される。
ホッパ13は、リア給紙トレイ2の下部側が揺動するように配設される。ホッパ13は、LD従動ローラ12がLDローラ11と圧接される場合、LDローラ11へ近接するように姿勢を変化させ、LD従動ローラ12がLDローラ11から離間する場合、LDローラ11から離間するように姿勢を変化させる。リア給紙トレイ2に印刷媒体Pが載置されている場合、ホッパ13がLDローラ11に近接することで、最も上にある印刷媒体Pの下端部がLDローラ11に当たる。リア給紙トレイ2上の印刷媒体Pは、ホッパ13とLDローラ11との間に挟まれる。
PFローラ14は、ガイド部材5とプラテン6との間において、リア用印刷媒体搬送経路4の下側に配設される。PFローラ14は、金属材料を円柱形状に形成したものであり、その円柱軸方向が図1の紙面と略垂直となる向きで回転可能に配設される。また、円柱形状の金属棒の外周面には、すべり止め用のセラミック製の粒子が外周面に微小な凸凹を形成するように固着している。PFローラ14は、後述するPFモータ31の駆動により、回転する。
PF従動ローラ15は、PFローラ14と略同じ幅の円柱形状を有し、PFローラ14の上側に回転可能に配設される。PF従動ローラ15は、PF従動ローラ用アーム19により保持されている。PF従動ローラ用アーム19には、図示外の巻バネにより図1で下向きの付勢力が作用している。それにより、PF従動ローラ15は、強い圧接力によりPFローラ14に圧接される。
これにより、圧接状態にあるPFローラ14およびPF従動ローラ15による印刷媒体Pの搬送能力(保持力などを含むトータルでの搬送する能力)は、圧接状態にあるLDローラ11およびLD従動ローラ12による印刷媒体Pの搬送能力より高くなる。1枚の印刷媒体Pが、PFローラ14およびPF従動ローラ15により挟持され、且つ、LDローラ11およびLD従動ローラ12により挟持されている場合、印刷媒体Pの搬送量は、PFローラ14およびPF従動ローラ15による搬送制御にしたがったものとなる。
排紙ローラ16は、プラテン6と図示外の排紙トレイのとの間において、リア用印刷媒体搬送経路4の下側に回転可能に配設される。排紙ローラ16は、後述するPFモータ31の駆動により、回転する。
排紙従動ローラ17は、排紙ローラ16の上側に回転可能に配設される。排紙従動ローラ17は、弱い圧接力により排紙ローラ16に圧接される。
また、インクジェットプリンタ1は、以上のような印刷媒体Pの搬送機構の他にも、キャリッジ21などの、印刷媒体Pに対してインクを吐出して印字するための印字機構を有する。
キャリッジ21は、プラテン6の上方において、図1の紙面に垂直な方向へ移動可能に配設される。キャリッジ21の内部には、たとえば図示外のインタンクなどが配設される。キャリッジ21は、図示外のCR(キャリッジ)モータの駆動により、図1の紙面に垂直な向きへ移動する。
キャリッジ21の下面には、プラテン6と対向させて記録ヘッド22が配設される。記録ヘッド22は、複数のインク吐出ノズル23を有する。複数のインク吐出ノズル23には、インタンクからインクが供給される。複数のインク吐出ノズル23は、たとえば印刷媒体Pの搬送方向に沿って配列して形成される。各インク吐出ノズル23内には、図示外のピエゾ素子が配設される。ピエゾ素子は、印加される電圧に応じて変形する。ピエゾ素子が変形すると、その変形量に応じた量のインクがインク吐出ノズル23から押出され、インク吐出ノズル23から吐出される。印刷媒体Pの、プラテン6と記録ヘッド22との間にある部位には、複数のインク吐出ノズル23から吐出されたインクが付着する。
キャリッジ21を図1の紙面に垂直な向きで移動させている間に、複数のピエゾ素子に対して印刷データに応じた波形の電圧を印加することで、印刷媒体Pの、プラテン6と記録ヘッド22との間にある部位には、印刷データに応じてインクを付着させることができる。この印字処理と、印刷媒体Pを所定量で送る紙送り処理とを繰り返し実行することで、インクジェットプリンタ1は、印刷媒体Pに、印刷データに基づく画像を印刷することができる。
図2は、図1のインクジェットプリンタ1の制御系の一部の構成を示すブロック図である。なお、図2の上部には、リア用印刷媒体搬送経路4と、その経路に沿って配設される各種の機構部材とが模式的に図示されている。リア用印刷媒体搬送経路4には、制御用基準位置として、所定の一時停止位置としてのページ間制御開始位置、給紙スタンバイ位置、印字開始位置などが設定されている。
ページ間制御開始位置は、LDローラ11とPFローラ14との間の印刷媒体Pの搬送経路中に設定される。このページ間制御開始位置は、リア給紙トレイ2に載置された複数の印刷媒体Pを連続的に搬送する場合において、その連続的に搬送される2枚の印刷媒体Pの間に、所定のページ間ギャップ長(所定の紙間距離)を確保する制御を実行するための基準位置である。連続的に後から搬送される印刷媒体Pは、その先端縁がこのページ間制御開始位置に到達すると、搬送が停止される。連続的に且つ先に搬送される印刷媒体Pの後端縁がページ間制御開始位置から所定のページ間ギャップ長により離れると、連続的に後から搬送される印刷媒体Pの搬送が再開される。このようなページ間制御により、連続的に搬送される複数の印刷媒体Pの間に、ページ間ギャップ長の間隔を確保することができる。なお、このページ間制御開始位置は、具体的には、LDローラ11から離間されたLD従動ローラ12が所定の退避位置まで移動する制御の間に、LD従動ローラ12の周囲で、印刷媒体Pの搬送方向と逆向きに1回転する図示外の引き戻しアームなどにより、印刷媒体Pをリア給紙トレイ2へ戻すことができる範囲内に設定するのが望ましい。
給紙スタンバイ位置は、通常の給紙処理において、印刷媒体Pの先端縁の停止目標位置である。給紙スタンバイ位置は、記録ヘッド22に形成される複数のインク吐出ノズル23のうち、印刷媒体Pの搬送方向の最も上流側(リア給紙トレイ2側)のものを基準として、そこから所定の距離(たとえば3〜5ミリメートル)だけ下流側へ離れた位置に設定される。
印字開始位置は、印刷媒体Pの印字処理を開始するときの、印刷媒体Pの先端縁の停止目標位置である。印字開始位置は、記録ヘッド22に形成される複数のインク吐出ノズル23のうち、印刷媒体Pの搬送方向の最も下流側(排紙トレイ側)のものを基準として、そこから所定の距離(たとえば3〜5ミリメートル)だけ上流側へ離れた位置に設定される。
このように印字開始位置よりも印刷媒体Pの搬送方向の上流側に、給紙スタンバイ位置を設けることで、通常の給紙処理では、印刷媒体Pは、一旦給紙スタンバイ位置に停止させられた後、印字開始位置へ給紙される。そのため、印刷媒体Pがリア給紙トレイ2から印字開始位置まで一回の制御により一気に搬送される場合にくらべて、印字開始位置に対する印刷媒体Pの停止位置の精度を向上させることができる。
なお、以下の説明において、リア給紙トレイ2からページ間制御開始位置までの範囲を領域Aとよび、ページ間制御開始位置から、その下流側へページ間ギャップ長だけ離れた位置までの範囲を領域Bとよび、そのページ間ギャップ長だけ離れた位置から排紙トレイまでの範囲を領域Cとよぶ。
インクジェットプリンタ1は、上述したPFローラ14および排紙ローラ16を回転駆動する下流側駆動モータとしてのPFモータ31、LDローラ11を回転駆動する上流側駆動モータとしてのASFモータ32、LDローラ11に対してLD従動ローラ12を接離させるASFサブモータ33、図示外のCRモータの他に、PFロータリエンコーダ34、ASFロータリエンコーダ35、センサとしてのPE(ペーパエッジ)センサ36、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)37、マイクロコンピュータ38などを有する。
なお、PFモータ31、ASFモータ32、ASFサブモータ33、CRモータなどには、DC(直流)モータ、ステッピングモータなどのパルスモータなどが使用できる。DCモータは、所定の直流電圧が印加されると、定格速度で回転する。DCモータは、印加電圧がPWM(Pulse Width Modulation)制御されると、定格速度より低いDuty比に応じた速度で回転する。また、DCモータは、直流電圧の向きが逆転されると、逆方向へ回転する。
PFロータリエンコーダ34は、PFローラ14とともに回転するPFスケール板34aと、PFスケール板34aの外周に沿って形成される複数のスリットを検出するPFフォトインタラプタ34bと、を有する。PFロータリエンコーダ34のPFフォトインタラプタ34bは、PFローラ14とともにPFスケール板34aが回転すると、スリットの検出に応じてレベルが変化する検出信号を生成する。検出信号は、パルス波形となる。検出信号のパルス周期は、PFスケール板34aの回転速度に応じて変化する。たとえばPFスケール板34aの回転速度が上がると、検出信号のパルス周期は短くなる。
ASFロータリエンコーダ35は、ASFモータ32の回転子とともに回転するASFスケール板35aと、ASFスケール板35aの外周に沿って形成される複数のスリットを検出するASFフォトインタラプタ35bと、を有する。ASFモータ32の回転子の回転量は、LDローラ11の回転量と一定の関係にある。ASFスケール板35aの回転量は、LDローラ11の回転量に対応付け可能である。ASFロータリエンコーダ35のASFフォトインタラプタ35bは、ASFモータ32およびLDローラ11とともにASFスケール板35aが回転すると、スリットの検出に応じてレベルが変化するパルス波形の検出信号を生成する。
PEセンサ36は、図示外の発光素子と受光素子とが所定の間隔を開けて対向して配設されたものである。PEセンサ36は、発光素子と受光素子との間に、リア用印刷媒体搬送経路4が位置するように配設される。PEセンサ36は、LDローラ11とPFローラ14との間において、ページ間制御開始位置を基準として、少なくともページ間ギャップ長以上により下流側に離れた位置に配設される。PEセンサ36の受光素子は、発光素子が発した光の受光状態に応じて変化する検出信号を出力する。PEセンサ36は、発光素子と受光素子との間の印刷媒体Pの有無に応じて変化する検出信号を出力する。
ASIC37は、マイクロコンピュータの一種であり、メモリ39、図示外のCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、タイマ、入出力ポートなどを有する。入出力ポートには、PFロータリエンコーダ34の検出信号、ASFロータリエンコーダ35の検出信号、PEセンサ36の検出信号などが入力される。図示外のCPUが所定のプログラムを実行することで、ASIC37には、PF制御実行部41、ASF制御実行部42、検出値演算部43などが実現される。
マイクロコンピュータ38は、記憶手段としてのメモリ70、図示外のCPU、タイマ、入出力ポートなどを有する。マイクロコンピュータ38のメモリ70は、ページ間制御開始位置(所定の制御開始位置)に関するデータとしての距離データ71と、上述したページ間ギャップ長のデータ72と、を記憶する。この距離データ71は、図2中に距離Dとして示す、ページ間制御開始位置からPEセンサ36による検出位置までの距離のデータである。この距離Dは、ページ間ギャップ長より長い。また、マイクロコンピュータ38の入出力ポートは、ASIC37の入出力ポートなどに接続される。図示外のCPUが所定のプログラムを実行することで、マイクロコンピュータ38には、制御手段の一部および処理判断手段としての処理判断部51、制御手段の一部および給紙処理手段としての給紙処理指示部52、制御手段の一部および紙送り処理手段としての紙送り処理指示部53、制御手段の一部および排紙処理手段としての排紙処理指示部54、印字処理指示部55などが実現される。
なお、ASIC37のCPUが実行するプログラムは、たとえばASIC37のメモリ39などに記憶されていればよい。マイクロコンピュータ38のCPUが実行するプログラムは、たとえばマイクロコンピュータ38のメモリ70などに記憶されていればよい。また、これらのプログラムあるいはその一部は、インクジェットプリンタ1の出荷前にこれらのメモリ39,70に記憶されていても、インクジェットプリンタ1の出荷後にこれらのメモリ39,70に記憶されていてもよい。インクジェットプリンタ1の出荷後にこれらのメモリ39,70に記憶されるプログラムあるいはその一部は、たとえばCD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されているものをインクジェットプリンタ1に接続されるパーソナルコンピュータで読み込んでメモリ39,70に書込まれても、サーバ装置に記憶されているものをインクジェットプリンタ1に接続されるパーソナルコンピュータでインターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしてメモリ39,70に書込まれてもよい。
ASIC37に実現される検出値演算部43は、ASIC37に入力されるPFロータリエンコーダ34の検出信号、ASFロータリエンコーダ35の検出信号、PEセンサ36の検出信号などに基づいて、各種の検出値を生成し、メモリ39の記憶データを更新する。検出値演算部43は、たとえばPID制御周期毎に、周期的に、各種の検出値を生成し、メモリ39を更新する。
具体的にはたとえば、検出値演算部43は、PFロータリエンコーダ34の検出信号における単位時間当たりのパルス数を、PF区間パルス数として計測する。検出値演算部43は、PF区間パルス数を、PFローラ14による搬送速度を示すPF検出速度61としてメモリ39に記録する。
検出値演算部43は、PFロータリエンコーダ34の検出信号における累積的なパルス数を、PF累積パルス数として計測する。検出値演算部43は、PF累積パルス数を、PFローラ14による累積的な搬送量を示すPF絶対搬送量62としてメモリ39に記録する。
検出値演算部43は、ASFロータリエンコーダ35の検出信号における単位時間当たりのパルス数を、ASF区間パルス数として計測する。検出値演算部43は、ASF区間パルス数を、LDローラ11による搬送速度を示すASF検出速度63としてメモリ39に記録する。
検出値演算部43は、ASFロータリエンコーダ35の検出信号における累積的なパルス数を、ASF累積パルス数として計測する。検出値演算部43は、ASF累積パルス数を、LDローラ11による累積的な搬送量を示すASF絶対搬送量64としてメモリ39に記録する。
検出値演算部43は、PEセンサ36の検出信号のレベルに応じて、PEセンサ36による印刷媒体Pの検出の有無を判断する。そして、印刷媒体Pが検出されると、検出値演算部43は、その検出後のPFロータリエンコーダ34の検出信号におけるパルス数をカウントする。検出値演算部43は、カウントしたパルス数を、PE検後PF搬送量65としてメモリ39に記録する。また、印刷媒体Pが検出されると、検出値演算部43は、その検出後のASFロータリエンコーダ35の検出信号におけるパルス数をカウントする。検出値演算部43は、カウントしたパルス数を、PE検後ASF搬送量66としてメモリ39に記録する。
PF制御実行部41は、PFモータ31の駆動を制御する。PF制御実行部41は、メモリ39に記憶されるPF検出速度61が所定の速度プロファイルに沿ったものとなるように、PFモータ31の駆動速度や回転方向などを制御するための瞬時電流値を生成する。そして、PF制御実行部41は、たとえば指示などに基づく搬送量で停止するように瞬時電流値を生成する。
ASF制御実行部42は、ASFモータ32の駆動を制御する。ASF制御実行部42は、メモリ39に記憶されるASF検出速度63が所定の速度プロファイルに沿ったものとなるように、ASFモータ32の駆動速度や回転方向などを制御するための瞬時電流値を生成する。そして、ASF制御実行部42は、たとえば指示などに基づく搬送量で停止するように瞬時電流値を生成する。
マイクロコンピュータ38に実現される給紙処理指示部52は、未印刷の印刷媒体Pを、たとえばリア給紙トレイ2などから印字開始位置まで搬送する給紙処理のための指示を生成する。具体的には、給紙処理指示部52は、PF制御実行部41へ給紙制御を指示し、ASF制御実行部42へ給紙制御などを指示する。また、給紙処理指示部52は、ASFサブモータ33を駆動するための指示をASIC37へ供給する。
紙送り処理指示部53は、記録ヘッド22とプラテン6との間の印刷領域に給紙されている印刷媒体Pを所定量により搬送する紙送り処理のための指示を生成する。具体的には、紙送り処理指示部53は、PF制御実行部41へPF目標搬送量などを指示する。また、複数の印刷媒体Pを連続的に搬送して印刷する連続印刷モードでは、紙送り処理指示部53は、ASF制御実行部42にもASF目標搬送量などを指示する。
排紙処理指示部54は、印刷領域に給紙されている印刷媒体Pを、印刷領域からたとえば排紙トレイまで搬送する排紙処理ための指示を生成する。具体的には、紙送り処理指示部53は、PF制御実行部41へPF目標搬送量などを指示する。また、連続印刷モードでは、排紙処理指示部54は、ASF制御実行部42にもASF目標搬送量などを指示する。
印字処理指示部55は、印刷領域に給紙されている印刷媒体Pに対する1印字走査のための指示を生成する。具体的には、印字処理指示部55は、ASIC37に、図示外のCRモータの駆動を指示し、記録ヘッド22が印刷媒体Pに対向している状態で、複数のピエゾ素子に対して印刷データに応じた波形の電圧を印加することを指示する。
処理判断部51は、インクジェットプリンタ1の停止中に状態を判断する。そして、処理判断部51は、その判断結果に応じて、給紙処理指示部52、紙送り処理指示部53、排紙処理指示部54、印字処理指示部55などの複数の処理指示部の内から1つを選択し、その選択した処理指示部へ実行を指示する。
たとえばインクジェットプリンタ1へ図示外のパーソナルコンピュータなどから印刷データが供給された場合において、印刷可能な状態であると判断すると、処理判断部51は、その印刷データに基づく印刷を実行するために、給紙処理指示部52、紙送り処理指示部53、排紙処理指示部54、印字処理指示部55の中から1つを順番に選択し、その選択の度に選択した処理指示部へ実行を指示する。正常に印刷がなされている場合、処理判断部51は、まず給紙処理指示部52を選択し、次に未印刷の印刷データが無くなるまで印字処理指示部55および紙送り処理指示部53を交互に選択し、未印刷の印刷データが無くなったら排紙処理指示部54を選択する。これにより、印刷媒体Pは、記録ヘッド22に対向する印刷領域へ給紙され、印字走査と所定量の紙送りの繰り返しにより印刷データに基づく印刷がなされ、排紙トレイへ排紙される。
次に、以上の構成を有する実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の動作を説明する。ここでは特に、連続印刷モードでの動作について説明する。
図3は、図1のインクジェットプリンタ1へ供給される、連続印刷用の印刷データのデータ構造を示す説明図である。
インクジェットプリンタ1へ供給される連続印刷用の印刷データは、各印刷媒体Pへの印刷制御に使用される複数の印刷媒体毎の印刷データを有する。印刷媒体毎の印刷データは、印刷する用紙サイズなどを指定する印刷設定データと、その印刷媒体Pへ印刷するイメージをたとえば1印字幅毎に分割した複数のインク吐出パターンデータと、連続する2つのインク吐出パターンデータの間に挿入される複数の紙送り量データと、ページ区切りデータと、を有する。複数のインク吐出パターンデータと、複数の紙送り量データとは、印刷媒体毎の印刷データにおいて、交互に配列される。
印刷設定データは、印刷する用紙のサイズを指定する用紙サイズデータを記憶する。連続印刷において、複数の印刷媒体毎の印刷データに格納される用紙サイズデータは、基本的に、同じものである。連続印刷における印刷設定データは、この他にも、次ページ有りデータあるいは次ページ無しデータを有する。次ページ有りデータは、印刷枚数をn(nは2以上の整数)としたとき、1枚目からn−1枚目までの印刷媒体毎の印刷データに含まれるものであり、次の印刷ページがあることを示すものである。次ページ無しデータは、最後のn枚目の印刷媒体毎の印刷データに含まれるものであり、次の印刷ページが無いことを示すものである。なお、これらの印刷設定データは、インクジェットプリンタ1と通信可能なパーソナルコンピュータにインストールされた図示外のプリンタドライバが、印刷データを生成する際に、その印刷データに埋め込むものである。また、後述する連続印刷の制御においては、次ページ無しデータが含まれていなくても制御が可能である。
なお、この連続印刷用の印刷データは、パーソナルコンピュータにおいて、たとえばインクジェットプリンタ1のリア給紙トレイ2を指定した複数枚の普通紙への高速印刷が指定されたりすることで、生成される。これ以外の印刷のとき、たとえば専用紙への印刷のときには、パーソナルコンピュータは、通常の印刷データを生成する。通常の印刷データは、図3中の印刷媒体毎の印刷データから、次ページ有りデータや次ページ無しデータを除いたデータ構造のものである。
インクジェットプリンタ1は、このようなデータ構造の連続印刷用の印刷データが供給されると、連続印刷モードによる印刷を実行する。インクジェットプリンタ1は、リア給紙トレイ2に載置されている複数の印刷媒体Pを連続的に搬送して印刷する。また、インクジェットプリンタ1の処理判断部51は、通常の印刷モードの場合と同様に、印刷媒体P毎に、まず給紙処理指示部52を選択し、次に未印刷の印刷データが無くなるまで印字処理指示部55および紙送り処理指示部53を交互に選択し、未印刷の印刷データが無くなったら排紙処理指示部54を選択する。処理判断部51は、連続印刷用の印刷データにより指定される枚数の印刷媒体Pを搬送し、印刷を実行する。
以下、この連続印刷モードにおけるインクジェットプリンタ1の詳細な印刷動作を説明する。
図4は、図2中の処理判断部51が連続印刷モードなどにおいて実行するメインの印刷処理の流れを示すフローチャートである。図5は、図2中の給紙処理指示部52が連続印刷モードなどにおいて実行する給紙処理の流れを示すフローチャートである。図6は、図2中の紙送り処理指示部53が連続印刷モードなどにおいて実行する紙送り処理の流れを示すフローチャートである。図7は、図2中の紙送り処理指示部53による紙送り実行サブフローチャートである。図8は、図2中の排紙処理指示部54が連続印刷モードなどにおいて実行する排紙処理の流れを示すフローチャートである。
インクジェットプリンタ1へ図3に示すような連続印刷用の印刷データが供給されると、処理判断部51は、図4に示すように、未印刷データが有りと判断し(ステップST1)、データ処理を開始する。処理判断部51は、まず、インクジェットプリンタ1が印刷可能な状態にあることを確認する。処理判断部51は、たとえば、用紙サイズ違いなどによる例外排紙処理要求が無いことなどを確認する(ステップST2でNo)。その後、処理判断部51は、連続印刷用の印刷データの先頭部分のデータを読込む。処理判断部51は、1枚目の印刷媒体毎の印刷データの印刷設定データを読み込み、給紙処理指示部52へ実行を指示する(ステップST4)。
なお、インクジェットプリンタ1の図示外の印刷データの受信バッファには物理的な容量制限がある。そのため、連続印刷用の印刷データは、実際には、受信バッファの空き状況に合わせて、複数回に分けてインクジェットプリンタ1へ供給される。このような状況でも、処理判断部51は、連続印刷用の印刷データの先頭部分のデータを読込むことができる。受信バッファの物理的な容量制限は、制御上問題となることはない。
実行が指示された給紙処理指示部52は、図5に示す給紙処理フローチャートを実行する。給紙処理指示部52は、まず、ASIC37のメモリ39に記憶されているPF絶対搬送量62と、ASF絶対搬送量64とを「0」にリセットする(ステップST11)。これにより、PF絶対搬送量62と、ASF絶対搬送量64とは、印刷媒体P毎の、給紙処理を開始してからの搬送量を示すようになる。
絶対位置をリセットした後、給紙処理指示部52は、LD従動ローラ12がLDローラ11に当接するLDニップ状態であるか否かを確認する(ステップST12)。連続的に印刷媒体Pを給紙するとき、その間、LD従動ローラ12はLDローラ11に当接するLDニップ状態に維持される。したがって、LDニップ状態であるか否かを確認することで、今回の給紙処理が連続印刷の2枚目以降のものであるか否かを確認することができる。今回は連続印刷の最初の給紙である。給紙処理指示部52は、ステップST12でNoと判断する。
連続印刷の2枚目以降のものではないと判断した給紙処理指示部52は、ASFサブモータ33の駆動をASIC37に指示する(ステップST13)。ASIC37は、ASFサブモータ33を駆動する。これにより、LD従動ローラ12は、LDローラ11に圧接される。ホッパ13は、リア給紙トレイ2上の複数の印刷媒体PをLDローラ11との間に挟む。
ASFサブモータ33を駆動してLD従動ローラ12をLDローラ11へ圧接させた後、給紙処理指示部52は、PF制御実行部41およびASF制御実行部42へ、後述する同時駆動制御を指示する(ステップST14)。具体的には、給紙処理指示部52は、ASF制御実行部42へ、給紙のための所定搬送量での給紙制御を指示する。ASF制御実行部42は、ASFモータ32の駆動を開始する。ASFモータ32の駆動により、LDローラ11は回転し始める。LDローラ11に当接する最も上の印刷媒体Pは、LDローラ11の回転にしたがって搬送され始める。また、給紙処理指示部52は、PF制御実行部41へ、給紙のための所定搬送量での給紙制御を指示する。PF制御実行部41は、PFモータ31の駆動を開始する。PFモータ31の駆動により、PFローラ14は回転し始める。
なお、LDローラ11には、LD従動ローラ12が圧接されている。したがって、LDローラ11の回転にしたがって最も上の印刷媒体P以外の印刷媒体P、たとえば上から2枚目の印刷媒体Pが、最も上の印刷媒体Pとともに搬送され始めたとしても、その最も上の印刷媒体P以外の印刷媒体Pは、LDローラ11とLD従動ローラ12との圧接位置を通過し難い。LD従動ローラ12は、2枚目の印刷媒体Pなどに対して給紙を妨げる負荷となる。
また、ASFモータ32が駆動されると、ASFロータリエンコーダ35は、パルス波形の検出信号を出力し始める。検出値演算部43は、この検出信号に基づいて、メモリ39のASF検出速度63と、ASF絶対搬送量64とを更新する。同様に、PFモータ31が駆動されると、PFロータリエンコーダ34は、パルス波形の検出信号を出力し始める。検出値演算部43は、この検出信号に基づいて、メモリ39のPF検出速度61と、PF絶対搬送量62とを更新する。
ASFモータ32の駆動を開始したASF制御実行部42は、たとえばPID制御周期などの所定の周期でこのメモリ39に記憶されるASF検出速度63を読み込む。ASF制御実行部42は、ASF目標速度に対するASF検出速度63の偏差に応じたPID制御値を有する瞬時電流値を生成する。ASFモータ32の回転速度は、この瞬時電流値に応じて増減する。ASF制御実行部42は、ASF検出速度63が所定の速度プロファイルに沿ったものとなるようにPID制御を実行する。印刷媒体Pは、所定の速度で搬送される。PF制御実行部41も、メモリ39に記憶されるPF検出速度61が所定の速度となるように、PID制御を実行する。
LDローラ11の回転により搬送され始めた印刷媒体Pは、リア用印刷媒体搬送系路4上を排紙トレイへ向かって移動する。印刷媒体Pは、PEセンサ36を通過し、その後、PFローラ14とPF従動ローラ15との間に挟持される。
印刷媒体Pの先端部が、PEセンサ36の発光素子と受光素子との間に入り込むと、PEセンサ36の検出信号が用紙無しから用紙ありへ変化する。このPEセンサ36による用紙検出があると、検出値演算部43は、メモリ39に記憶されるPE検後PF搬送量65と、PE検後ASF搬送量66との更新処理を始める。
検出値演算部43は、PE検後PF搬送量65を、PEセンサ36による印刷媒体Pの検出後の、PFロータリエンコーダ34の検出信号に基づいて演算されるLDローラ11の搬送量にしたがって更新する。検出値演算部43は、PE検後ASF搬送量66を、PEセンサ36による印刷媒体Pの検出後の、ASFロータリエンコーダ35の検出信号に基づいて演算されるLDローラ11の搬送量にしたがって更新する。
なお、検出値演算部43は、常に、ASFロータリエンコーダ35やPFロータリエンコーダ34の検出信号に基づいて、PE検後PF搬送量65や、PE検後ASF搬送量66などを更新するものであってもよい。
給紙処理指示部52は、ステップST14においてLDローラ11などの回転駆動を開始した後、たとえばPEセンサ36の検出が用紙無しから用紙ありへ変化したか否かを判断する(ステップST15)。給紙処理指示部52は、今回の給紙処理が連続印刷であるか否かを判断する(ステップST16)。連続印刷であるときはさらに次ページの印刷があるか否かを判断する(ステップST17)。なお、給紙処理指示部52は、たとえば印刷媒体毎の印刷データに次ページ有りデータが含まれている場合、連続印刷中であり且つ次ページ有りと判断すればよい。今回の給紙処理は、連続印刷の1枚目の給紙処理であり、次ページの印刷がある。給紙処理指示部52は、ステップST17においてYesと判断し、給紙スタンバイ位置までの後述の同時駆動制御を開始する(ステップST19)。LD従動ローラ12は、LDローラ11に圧接された状態に維持される。
なお、今回の給紙処理が連続印刷ではないとき(ステップST16でNoの場合)や、次ページが無いとき(ステップST17でNoの場合)には、給紙処理指示部52は、ASIC37へニップ解除を指示する(ステップST18)。ASIC37は、ASFサブモータ33を駆動し、LD従動ローラ12をLDローラ11から離間させる。
次に、給紙処理指示部52は、給紙スタンバイ位置までの後述する同時駆動制御を実行する(ステップST19)。給紙処理指示部52は、PF制御実行部41へPFモータ31の駆動を指示するとともに、ASF制御実行部42へASFモータ32の駆動を指示する。PF制御実行部41は、PFモータ31の駆動を開始させる。ASF制御実行部42は、ASFモータ32の駆動を開始させる。PFローラ14およびPF従動ローラ15は、LDローラ11およびLD従動ローラ12とともに回転し始める。印刷媒体Pは、LDローラ11、LD従動ローラ12、PFローラ14およびPF従動ローラ15の回転により印刷領域へ給紙され始める。
なお、PFモータ31が駆動されると、PFロータリエンコーダ34は、PFローラ14の回転にしたがってパルス波形の検出信号を出力し始める。検出値演算部43は、この検出信号に基づいて、メモリ39のPF検出速度61、PF絶対搬送量62およびPE検後PF搬送量65を更新する。PFモータ31の駆動を開始したPF制御実行部41は、たとえばPID制御周期などの所定の周期でこのメモリ39に記憶されるPF検出速度61を読み込む。PF制御実行部41は、PF目標速度に対するPF検出速度61の偏差に応じたPID制御値を有する瞬時電流値を生成する。PFモータ31の回転速度は、この瞬時電流値に応じて増減する。PF制御実行部41は、PF検出速度61が所定の速度プロファイルに沿ったものとなるようにPID制御を実行する。印刷媒体Pは、所定の速度で搬送される。
給紙制御が指示されたPF制御実行部41は、ASIC37のメモリ39に記憶されるPE検後PF搬送量65を周期的に読み込む。PF制御実行部41は、読み込んだPE検後PF搬送量65が所定の搬送量となるときにPFモータ31が停止するように、所定のパルス数において減速制御を開始する。PF制御実行部41は、PFモータ31への電流指令値を減らし、停止する。
同様に、ASF制御実行部42は、ASIC37のメモリ39に記憶されるASF絶対搬送量64を周期的に読み込む。ASF制御実行部42は、読み込んだPE検後ASF搬送量66が所定の搬送量となるときにASFモータ32が停止するように、所定のパルス数において減速制御を開始する。ASF制御実行部42は、ASFモータ32への電流指令値を減らし、停止する。
以上の処理により、リア給紙トレイ2の最も上に載置されていた印刷媒体Pは、その先端縁が給紙スタンバイ位置に停止するように給紙される。1枚目の印刷媒体Pは、PFモータ31とASFモータ32との同時駆動制御により、給紙スタンバイ位置まで給紙される。
1枚目の印刷媒体Pを給紙スタンバイ位置まで給紙した後、給紙処理指示部52は、PF制御実行部41およびASF制御実行部42へ、さらに、印字開始位置までの給紙制御を指示する。PF制御実行部41およびASF制御実行部42は、PFモータ31とASFモータ32の同時駆動制御により、その印刷媒体Pを更に印字開始位置まで搬送する(ステップST20)。
以上の同時駆動制御による給紙処理が完了すると、給紙処理指示部52は、1枚目の給紙処理を終える。PFローラ14やLDローラ11は停止する。ASIC37のメモリ39に記憶されるPF検出速度61やASF検出速度63も「0」に更新される。処理判断部51は、未印刷データ有りと判断し(図4のステップST1でYes)、用紙サイズ違いなどによる例外排紙処理要求が無いことなどを確認する(ステップST2でNo)。その後、処理判断部51は、連続印刷用の印刷データの1枚目のデータの続きを読み込む。処理判断部51は、1枚目の印刷媒体毎の印刷データの最初のインク吐出パターンデータを読み込み、印字処理指示部55へ実行を指示する(ステップST4)。
実行が指示された印字処理指示部55は、印字処理を実行する。印字処理指示部55は、ASIC37へ、インク吐出パターンデータを供給するとともに、図示外のCRモータの駆動を指示する。キャリッジ21は、ASIC37によるCRモータの駆動により移動する。記録ヘッド22の複数のインク吐出ノズル23が給紙された印刷媒体Pに対向している状態で、ASIC37は、インク吐出パターンデータに基づく波形の電圧を複数のピエゾ素子へ印加する。複数のインク吐出ノズル23からインクが飛翔し、印刷媒体Pに付着する。
以上の1印字制御処理が完了すると、印字処理指示部55は、最初の1回の印字走査を終える。処理判断部51は、未印刷データ有りと判断し(図4のステップST1でYes)、用紙サイズ違いなどによる例外排紙処理要求が無いことなどを確認する(ステップST2でNo)。その後、処理判断部51は、連続印刷用の印刷データの1枚目のデータの続きを読み込む。処理判断部51は、1枚目の印刷媒体毎の印刷データの最初の紙送り量データを読み込み、紙送り処理指示部53へ実行を指示する(ステップST4)。
実行が指示された紙送り処理指示部53は、図6および図7の紙送り処理フローチャートを実行する。処理指示部53は、まず、PEセンサ36が給紙を終えた印刷中の印刷媒体Pの後端縁を検出済みであるか否かを確認する(ステップST41)。今回の紙送り処理は、印刷媒体Pの最初の紙送り処理である。紙送り処理指示部53は、ステップST41においてNoと判断する。紙送り処理指示部53は、図7の紙送り実行サブフローチャートを実行する(ステップST42)。
図7の紙送り実行サブフローチャートにおいて、紙送り処理指示部53は、連続印刷用の印刷データなどに基づいて、今回の紙送り処理が連続印刷中であり且つ次ページがある場合のものであるか否かを判断する(ステップST51)。紙送り処理指示部53は、たとえば印刷媒体毎の印刷データに次ページ有りデータが含まれている場合、連続印刷中であり且つ次ページがあると判断すればよい。今回の紙送り処理は、連続印刷の最初の印刷媒体Pである。紙送り処理指示部53は、ステップST51においてYesと判断する。
紙送り処理指示部53は、引き続き、印刷中の印刷媒体Pの後端縁の現在位置がページ間制御開始位置を既に過ぎているか否かを判断する(ステップST52)。紙送り処理指示部53は、たとえば印刷媒体毎の印刷データに含まれる用紙サイズデータにより印刷媒体Pの搬送方向における長さ寸法を特定し、その特定した長さ寸法と、PE検後PF搬送量65やPE検後ASF搬送量66に基づいて演算される、ページ間制御開始位置から印刷中の印刷媒体Pの先端縁までの距離(以下、給紙済み距離とよぶ。)とを比較する。そして、紙送り処理指示部53は、たとえば給紙済み距離の方が大きい場合、印刷中の印刷媒体Pの後端縁の現在位置がページ間制御開始位置を既に過ぎていると判断すればよい。そして、今回の紙送り処理は、印刷媒体Pの最初の紙送り処理であり、ページ間制御開始位置には印刷中の印刷媒体Pが存在している。紙送り処理指示部53は、ステップST52においてNo(未達)と判断する。
さらに、紙送り処理指示部53は、今回の紙送り処理を実行した結果、印刷中の印刷媒体Pの後端縁の位置がページ間制御開始位置を過ぎてしまうか否かを判断する(ステップST53)。紙送り処理指示部53は、たとえば印刷媒体毎の印刷データに含まれる用紙サイズデータにより印刷媒体Pの搬送方向における長さ寸法を特定し、その特定した長さ寸法と、演算した給紙済み距離に今回指示された紙送り量を加算したものとを比較する。そして、紙送り処理指示部53は、たとえば給紙済み距離に今回指示された紙送り量を加算したものの方が大きい場合、印刷中の印刷媒体Pの後端縁の位置がページ間制御開始位置を過ぎてしまうと判断すればよい。そして、今回の紙送り処理は、印刷媒体Pの最初の紙送り処理である。紙送り処理指示部53は、通常、ステップST53においてNoと判断する。
ステップST53においてNoと判断した紙送り処理指示部53は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量62(前回のまでの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、さらに補正量を含む新たなASF目標搬送量(パルス数)を演算する(ステップST54)。具体的には、紙送り処理指示部53は、補正量を含む新たなASF目標搬送量を、下記式1により演算する。補正量を含む新たなASF目標搬送量は、新たなPF目標搬送量より若干大きくなる。
下記式1において、「1.05」は、5%ほど余分に送ることを意味する目標搬送量補正割合係数である。目標搬送量補正割合係数は、1より大きく、且つ、たとえば1.05以下とすればよい。1以下では、補正の効果がなく、1.05より大きくなると、LDローラ11により押し込められた印刷媒体Pのたわみが大きくなり、印刷媒体Pの搬送量がPFローラ14の搬送量に好適に追従しなくなってしまう。
ASF目標搬送量(パルス数)=PF目標搬送量(パルス数)×1.05 ・・・式1
なお、PFロータリエンコーダ34の搬送量の分解能と、ASFロータリエンコーダ35の搬送量の分解能とが異なる場合には、式1より求めたASF目標搬送量に、所定の搬送量におけるPFロータリエンコーダ34の検出パルス数とASFロータリエンコーダ35の検出パルス数との比に基づく分解能の補正係数を乗算し、その演算結果を、ASF制御実行部42に指示する新たなASF目標搬送量(パルス数)とすればよい。
PF目標搬送量(パルス数)とASF目標搬送量(パルス数)とを演算した後、紙送り処理指示部53は、指示送り量(すなわち、PF目標搬送量およびASF目標搬送量)を基準としたシンクロ(ならい)制御を実行する(ステップST55)。
図9は、図1のインクジェットプリンタ1におけるシンクロ(ならい)制御の特徴と、同時駆動制御の特徴との比較表を提示する図である。図9の左側がシンクロ(ならい)制御の主な特徴のリストであり、図9の右側が同時駆動制御の主な特徴のリストである。以下に特徴を列挙して説明する。
第一に、シンクロ(ならい)制御では、図9の欄Aに示すように、同時駆動制御と同様にPFモータ31とASFモータ32とを同時に駆動する。特に、シンクロ(ならい)制御では、ASFモータ32の駆動をPFモータ31の駆動より先に開始する。同時駆動制御では、このような駆動の開始に制限はなく、基本的に同時に駆動する。
第二に、図9の欄Bに示すように、シンクロ(ならい)制御では、上記式1の演算により、ASF目標搬送量(パルス数)を、PF目標搬送量(パルス数)より若干大きくする。同時駆動制御では、このような搬送量補正はなされない。PF目標搬送量(パルス数)と、ASF目標搬送量(パルス数)とは別々に演算される。
第三に、図9の欄Cに示すように、シンクロ(ならい)制御では、ASF制御実行部42へ指示するASF目標搬送量は、上記式1の演算にあるように、PF制御実行部41へ指示するPF目標搬送量を基準とする。これに対して、同時駆動制御では、ASF制御実行部42へ指示するASF目標搬送量は、給紙完了後にASF制御実行部42へ指示したASF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のASF絶対搬送量64(前回のまでの指示に基づく実際の搬送量)との差である。すなわち、ASF絶対搬送量64が基準となる。なお、PF制御実行部41へ指示するPF目標搬送量は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量62(前回のまでの指示に基づく実際の搬送量)との差である。
第四に、シンクロ(ならい)制御では、図9の欄Dに示すように、連続印刷中の二枚目以降の給紙位置は、PEセンサ36がその印刷媒体を検出した後のPE検後ASF搬送量66が、PEセンサ36から印字開始位置までの距離に相当する搬送量となるように決定する。同時駆動制御では、給紙位置は、常に、PEセンサ36がその印刷媒体を検出した後のPE検後PF搬送量65が、PEセンサ36から印字開始位置までの距離に相当する搬送量となるように決定する。
シンクロ(ならい)制御は、同時駆動制御に比べて以上のような制御上の特徴を有する。
そして、紙送り処理指示部53は、指示送り量を基準としたシンクロ(ならい)制御(ステップST55)において、PF制御実行部41へPF目標搬送量を指示し、ASF制御実行部42へASF目標搬送量を指示する。
シンクロ(ならい)制御では、まず、ASF制御実行部42がASFモータ32の駆動を開始する。これにより、LDローラ11およびLD従動ローラ12により挟持されている印刷媒体Pは、搬送される。このとき、印刷媒体Pは、LDローラ11とPFローラ14との間でたるむ。
ASF絶対搬送量64の値が所定量変化すると、PF制御実行部41は、PFモータ31の駆動を開始する。これにより、PFローラ14およびPF従動ローラ15により挟持されている印刷媒体Pは、搬送され始める。印刷媒体Pは、LDローラ11とPFローラ14との間でたるんだ状態を維持したまま、紙送り搬送される。
ASF制御実行部42は、ASF絶対搬送量64の紙送り制御開始後の変化量が指示されたASF目標搬送量となるように、ASFモータ32を停止させる。遅れて駆動を開始したPF制御実行部41も、PF絶対搬送量62の紙送り制御開始後の変化量が指示されたPF目標搬送量となるように、PFモータ31を停止させる。PFローラ14より印刷媒体Pの搬送方向の下流側へ搬送された印刷媒体Pの搬送量は、PFローラ14による搬送量(パルス数)であり、指示されたPF目標搬送量となる。
なお、ASFモータ32は、PFモータ31より先に駆動が開始される。しかしながら、LDローラ11のASF目標搬送量は、PFローラ14のPF目標搬送量と略同じである。したがって、ASFモータ32およびPFモータ31が停止した状態では、LDローラ11とPFローラ14との間でのたるみは略解消される。
また、LDローラ11のASF目標搬送量は、PFローラ14のPF目標搬送量より若干大きい。そのため、PFモータ31による印刷媒体Pの搬送を、停止しているLDローラ11が妨げてしまうことはない。ASFモータ32の停止後のPFローラ14の回転により、LDローラ11とPFローラ14との間において印刷媒体Pが延び切って突っ張ってしまう状態になることはない。その結果、PFローラ14より下流側における印刷媒体Pの実際の搬送量は、PFローラ14のPF目標搬送量に好適に追従し、指示された紙送り量に精度良く一致するようになる。
以上の処理により、紙送り処理指示部53による、図6のステップST42による最初の1回の紙送り処理が終わる。紙送り処理指示部53は、PEセンサ36が、今回の紙送り制御中に、印刷中の印刷媒体Pの後端縁を検出したか否かを確認する(ステップST43)。最初の1回の紙送り処理では、通常、印刷媒体Pの後端縁は検出されない。紙送り処理指示部53は、ステップST43においてNoと判断し、紙送り処理を終了する。
印刷媒体毎の印刷データには、図3に示すように、インク吐出パターンデータと、紙送り量データとが交互に並んでいる。印字処理指示部55と紙送り処理指示部53とは、このインク吐出パターンデータと紙送り量データとの並び順にしたがって交互に実行される。これにより、印刷媒体Pには、印刷データに基づく印刷がたとえば1走査幅毎に印刷される。
以上のように1枚目の印刷媒体Pへの印刷処理が進み、その1枚目の印刷媒体Pの後端縁がLDローラ11とLD従動ローラ12との間から抜けると、ホッパ13により押し上げられているリア給紙トレイ2上の最も上にある2枚目の印刷媒体Pが、LDローラ11の回転にしたがって給紙され、LDローラ11とLD従動ローラ12との間に挟持される。2枚目の印刷媒体Pは、紙送り制御においてPFモータ31とシンクロ(ならい)制御されるLDローラ11の回転により、1枚目の印刷媒体Pに続けて給紙され始める。2枚目の印刷媒体Pは、通常は、1枚目の印刷媒体Pと間隔を空けずに給紙され始める。
なお、1枚目の印刷のための紙送り処理では、紙送り処理指示部53は、その印刷中の1枚目の印刷媒体Pの後端縁の位置に応じて紙送り処理の指示を切り替えるようになる。紙送り処理指示部53は、具体的には、以下の各パターンに応じて紙送り処理の指示を切り替えるようになる。各パターンでの紙送り処理を、図2および図7を参照しながら説明する。
第一に、1枚目の印刷媒体Pの搬送が開始され始めた直後で、その印刷中の印刷媒体Pの後端縁がページ間制御開始位置を過ぎていない場合(図2の領域Aにいる場合)であって、今回の紙送り処理の完了時でもページ間制御開始位置を過ぎることが無いと予想される場合(図2の領域Aのままの場合)、紙送り処理指示部53は、ステップST53においてNoと判断する。紙送り処理指示部53は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量62(前回のまでの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、それよりも若干大きい搬送量のLDローラ11のASF目標搬送量をたとえば式1にしたがって演算し(ステップST54)、シンクロ(ならい)制御を実行する(ステップST55)。
第二に、今回の紙送り処理の完了時に、印刷中の印刷媒体Pの後端縁がページ間制御開始位置を過ぎることと予想される場合(図2の領域Aから領域Bへ移動する場合)、紙送り処理指示部53は、ステップST53においてYesと判断する。紙送り処理指示部53は、まず、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、ページ間制御開始位置までの搬送量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量62(前回のまでの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、それよりも若干大きい搬送量のLDローラ11のASF目標搬送量をたとえば式1にしたがって演算し(ステップST56)、シンクロ(ならい)制御を実行する(ステップST57)。印刷中の印刷媒体と間隔を空けずに搬送され始めた次の印刷媒体Pは、ページ間制御開始位置まで搬送される。
その後、紙送り処理指示部53は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量(ページ間制御開始位置までの前回の搬送量を含む)の累積値に、今回新たに指示する紙送り量の残りを加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量62(前回のページ間制御開始位置までの制御に基づく変化量)との差を、PFローラ14による新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、PF制御実行部41へ供給する(ステップST58)。これにより、PFローラ14のみが印刷媒体Pを搬送する。印刷中の印刷媒体は、今回新たに指示される紙送り量により搬送される。
第三に、印刷中の印刷媒体Pの後端縁の現在位置がページ間制御開始位置を既に過ぎている場合、紙送り処理指示部53は、ステップST52でYesと判断する。そして、紙送り処理指示部53は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量62(前回のまでの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、PF制御実行部41へ供給する(ステップST59)。これにより、PFローラ14のみが印刷媒体Pを搬送する。印刷中の印刷媒体は、今回新たに指示される紙送り量により搬送される。
なお、紙送り処理指示部53は、第四のパターンも有する。この第四のパターンは、たとえば連続印刷の最終の印刷媒体Pの紙送り処理において選択されるものである。第四のパターンでは、紙送り処理指示部53は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量62(前回のまでの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、PF制御実行部41へ供給する(ステップST137)。これにより、PFローラ14のみが印刷媒体Pを搬送する。印刷中の印刷媒体は、今回新たに指示される紙送り量により搬送される。なお、この第四のパターンでは、ホッパ13は、給紙位置から退避位置へ下がり、LD従動ローラ12は、LDローラ11から離間した退避状態になっている。
また、これらの紙送り制御により、印刷中の印刷媒体Pの後端縁がPEセンサ36を通過すると、紙送り処理指示部53は、図6のステップST43において、PEセンサ36が、紙送り中に印刷中の印刷媒体Pの後端縁を検出したと判断する。紙送り処理指示部53は、用紙サイズ判定処理を実行する(ステップST44)。
この用紙サイズ判定処理において、紙送り処理指示部53は、推定未印刷領域幅を設定する。この推定未印刷領域幅は、印刷中の印刷媒体Pの後端部分の、まだ印刷がなされていない領域の、印刷媒体搬送方向の長さに相当するものである。図2に示すように、キャリッジ21は、印刷媒体の搬送経路上の一定の位置を走査する。したがって、インクジェットプリンタ1において、PEセンサ36から印刷領域までの距離は、予め判っている。紙送り処理指示部53は、基本的に、このPEセンサ36から印刷領域までの距離に、印刷領域の幅(印刷媒体搬送方向での幅)を加算した値を、推定未印刷領域幅に設定する。紙送り処理指示部53は、縁無し印刷などの場合には、上述した加算値に更に所定の値を加算した値を、推定未印刷領域幅に設定する。
また、これらの紙送り制御により、次の印刷媒体Pの先端縁がPEセンサ36を通過すると、検出値演算部43は、メモリ39に記憶されるPE検後PF搬送量65およびPE検後ASF搬送量66を、PEセンサ36によるその新たな用紙検出後の搬送量へ更新する。
以上のように、紙送り処理指示部53による紙送り処理での指示パターンが切り替えられながら、1枚目の印刷媒体Pの紙送り処理と、印字処理とが繰り返される。そして、PEセンサ36により紙送り中に印刷中の印刷媒体Pの後端縁が検出された後では、紙送り処理指示部53は、ステップST41においてYesと判断する。
紙送り処理指示部53は、さらに、推定未印刷領域幅の残量より、今回の指示送り量が大きいか否かを判断する。推定未印刷領域幅の残量は、印字処理指示部55により印字がなされる度に減る。推定未印刷領域幅の残量は、たとえは印字毎に印刷領域の幅ずつ減る。ステップST44により推定未印刷領域幅が設定された直後では、推定未印刷領域幅の残量は、今回の指示送り量より大きい。紙送り処理指示部53は、ステップST45でNoと判断する。
なお、上述したように推定未印刷領域幅は、縁無し印刷などの印刷モードに応じた適切な値に設定される。したがって、正常に印刷がなされている場合には、推定未印刷領域幅の残量より今回の指示送り量が大きなることは、通常有り得ない。ただし、推定未印刷領域幅の残量より今回の指示送り量が大きなると、紙送り処理指示部53は、ステップST45でYesと判断し、例外排紙処理を要求する(ステップST48)。詳しくは、後述する。
ステップST45でNoと判断した場合、紙送り処理指示部53は、印刷データのマスク設定を実行する(ステップST46)。たとえば、印刷データには、実際の用紙サイズより大きい範囲を印刷するものがある。このような場合、印刷データを最後まで印刷に利用すると、印刷媒体Pの範囲外へインクを吐出してしまうことになる。印刷媒体Pの範囲外へ吐出されたインクは、インクジェットプリンタ1内を汚染する。印刷データのマスク設定処理は、このようなインク吐出をしないように、あるいは最小限に抑えるための設定処理である。
印刷データのマスク設定を終えると、紙送り処理指示部53は、紙送り処理を実行する。紙送り処理指示部53は、印刷中の印刷媒体Pの搬送経路上の位置に応じて、図7中の3つのパターンの中の1つの紙送り処理を実行する(ステップST47)。紙送り処理を実行すると、紙送り処理指示部53は、紙送り処理を終了する。
印刷データに対する処理が進むと、処理判断部51は、図4のステップST1において、1枚目と2枚目とを区切る最初のページ区切りデータを読み込む。処理判断部51は、排紙処理指示部54へ実行を指示する。
実行が指示された排紙処理指示部54は、図8に示す排紙処理フローチャートを実行する。排紙処理指示部54は、まず、今回の排紙処理が連続印刷中の排紙処理であるか否かと次ページの印刷の有無とを判断する(ステップST71)。排紙処理指示部54は、たとえば印刷媒体毎の印刷データに次ページ有りデータが含まれている場合、連続印刷中であり且つ次ページ有りであると判断すればよい。なお、排紙処理指示部54は、処理判断部51が印刷データから読み込んだ次ページ有りデータあるいは次ページ無しデータにより値が書き換えられるフラグなどを参照し、判断するようにしてもよい。今回の排紙処理は、連続印刷の1枚目の印刷媒体Pの排紙処理である。排紙処理指示部54は、ステップST71においてYesと判断する。
さらに、排紙処理指示部54は、印刷中の印刷媒体Pの後端縁の現在位置がページ間制御開始位置を既に過ぎているか否かを判断する(ステップST72)。排紙処理指示部54は、たとえば印刷媒体毎の印刷データに含まれる用紙サイズデータにより印刷媒体Pの搬送方向における長さ寸法を特定し、その特定した長さ寸法と給紙済み距離とを比較する。そして、排紙処理指示部54は、たとえば給紙済み距離の方が大きい場合、印刷中の印刷媒体Pの後端縁の現在位置がページ間制御開始位置を既に過ぎていると判断すればよい。
そして、たとえば1枚目の印刷媒体Pへの印刷が用紙の半分くらいまでで完了してしまう場合、印刷中の印刷媒体Pの後端縁の現在位置は、ページ間制御開始位置を過ぎていない。この場合、排紙処理指示部54は、ステップST72においてNoと判断する。
印刷中の印刷媒体Pの後端縁の現在位置がページ間制御開始位置を過ぎていないと判断すると、排紙処理指示部54は、印刷中の印刷媒体Pの後端縁の位置がページ間制御開始位置となるように、PFローラ14によるPF目標搬送量(パルス数)を、ページ間制御開始位置までの残り距離とし、それよりも若干大きい搬送量のLDローラ11によるASF目標搬送量(パルス数)を演算し、シンクロ(ならい)制御を実行する(ステップST73)。これにより、印刷中の印刷媒体Pの後端縁の位置がページ間制御開始位置となる。また、印刷中の印刷媒体Pと連続して給紙され始める次の印刷媒体Pの先端縁も、ページ間制御開始位置となる。
この他にもたとえば、1枚目の印刷媒体Pへの印刷が印刷媒体Pの後端縁までである場合、印刷中の印刷媒体Pの後端縁の位置は、既にページ間制御開始位置を過ぎてしまう。この場合、排紙処理指示部54は、ステップST72においてYesと判断する。排紙処理指示部54は、具体的な搬送制御をすることなく排紙処理を終了する。
以上のように、排紙処理指示部54による1枚目の印刷媒体Pの排紙処理が完了すると、1枚目の印刷媒体毎の印刷データの処理を終える。たとえば印刷データと一致するサイズの印刷媒体Pが搬送されている場合のように正常な印刷がなされている場合には、1枚目の印刷媒体Pの排紙制御を終えた時点で、2枚目の印刷媒体Pの先端縁は、ページ間制御開始位置にある。処理判断部51は、図4のステップST4において2枚目の印刷媒体毎の印刷データを読み込み、給紙処理指示部52へ2枚目の印刷媒体Pの給紙処理を指示する。
給紙処理指示部52は、図5のフローチャートにしたがって2枚目の印刷媒体Pの給紙処理を開始する。給紙処理指示部52は、ASIC37のメモリ39に記憶されているPF絶対搬送量62と、ASF絶対搬送量64とを「0」にリセットした(ステップST11)後、LDニップ状態を確認する。今回の給紙処理が連続印刷の2枚目以降の印刷である場合、LDニップ状態にあるので、給紙処理指示部52は、ステップST12においてYesと判断する。
LDニップ状態にあると、すなわち今回の給紙処理が連続印刷の2枚目以降の印刷であると判断した給紙処理指示部52は、さらに、連続給紙される複数の印刷媒体Pの間に間隔を空けるページ間制御が完了しているかを判断する(ステップST21)。給紙処理指示部52は、たとえば印刷媒体毎の印刷データに含まれる用紙サイズデータにより印刷媒体Pの搬送方向における長さ寸法を特定し、その特定した長さ寸法に距離データ71が示す距離Dを加算したものと、リセット前のPF絶対搬送量62あるいはASF絶対搬送量64により演算される給紙済み距離と、を比較する。そして、給紙処理指示部52は、たとえばリセット前の給紙済み距離の方が大きい場合、ページ間制御が完了していると判断すればよい。
なお、給紙処理指示部52は、この他にもたとえば、紙送り処理指示部53がステップST58やステップST59によるPF制御を実行した場合や、紙送り処理指示部53が、前回印刷した印刷媒体Pと今回給紙する印刷媒体Pとの間にページ間ギャップ長以上の間隔を生成した場合に立てるフラグを参照し、フラグが立っている場合に、ページ間制御が完了していると判断するようにしてもよい。
そして、たとえば1枚目の印刷媒体Pの後端縁がページ間制御位置となるように排紙制御を実行した場合のように、ページ間制御が完了してない場合、給紙処理指示部52は、ページ間制御を実行する(ステップST22)。具体的には、給紙処理指示部52は、残りのページ間ギャップ長をPFローラ14のPF目標搬送量とし、PF制御実行部41のみへPF目標速度を指示する。これにより、PFローラ14のみが印刷媒体Pを搬送する。ページ間制御により、1枚目の印刷媒体Pの後端縁と2枚目の印刷媒体Pの先端縁との間に所定のページ間ギャップ長が確保される。1枚目の印刷媒体Pの後端縁と2枚目の印刷媒体Pの先端縁との間隔は、少なくとも所定のページ間ギャップ長以上となる。なお、給紙処理指示部52は、ページ間ギャップ長を一律にPFローラ14のPF目標搬送量とし、PF制御実行部41のみへPF目標速度を指示するようにしてもよい。
このようにステップST22でページ間制御を実行した後、あるいは既にページ間制御が完了している場合には、給紙処理指示部52は、印字開始位置までのシンクロ(ならい)制御による給紙制御を、PF制御実行部41およびASF制御実行部42へ指示する(ステップST23)。
この連続印刷中の2枚目以降の印刷媒体Pに関する、印字開始位置までのシンクロ(ならい)制御において、ASF制御実行部42は、PE検後ASF搬送量66が、PEセンサ36から印字開始位置までの距離に相当する搬送量になるように、ASFモータ32の駆動を停止させる。また、図9の第四の特徴として説明したように、PF制御実行部41は、PE検後ASF搬送量66が、PEセンサ36から印字開始位置までの距離に相当する搬送量になるときに停止するように、PFモータ31の駆動を停止させる。
PFローラ14は、LDローラ11より後に駆動が開始される。ステップST23において、PF絶対搬送量62やPE検後PF搬送量65の搬送量は、その遅れた分だけ、ASF絶対搬送量63やPE検後ASF搬送量66の搬送量に比べて少ない。すなわち、図9A中の斜線ハッチング分だけ少ない。その結果、PF制御実行部41が、PE検後PF搬送量65がPEセンサ36から印字開始位置までの距離に相当する搬送量になるときに停止するように、PFモータ11の駆動停止を制御すると、複数の印刷媒体Pを連続的に給紙搬送する場合には、二枚目以降の給紙位置精度が悪くなる。具体的には、2枚目以降の給紙位置は、一枚目の給紙位置に比べて、印刷媒体Pの搬送方向4の上流側へずれる傾向となる。すなわち、連続印刷中の二枚目以降の印刷媒体Pは、一枚目の正確な給紙位置より、搬送方向4の上流側へずれる傾向となる。その結果、印刷媒体Pの先端縁は、印字開始位置の手前までしか給紙されなくなってしまう。
これに対して、PF制御実行部41が、PE検後ASF搬送量66がPEセンサ36から印字開始位置までの距離に相当する搬送量になるときに停止するように、PFモータ31の駆動停止を制御すると、印刷媒体Pの先端縁は、印字開始位置に精度良く、給紙されるようになる。二枚目以降の印刷媒体Pの給紙位置は、1枚目以降の印刷媒体Pの給紙位置と略揃うようになる。
なお、実際には、PF制御実行部41は、ASF制御実行部42が減速停止制御を開始するときに、同時に、減速停止制御を開始すればよい。減速停止制御開始直前には、LDローラ11によるASF検出速度63と、PFローラ14によるPF検出速度61とは略一定の速度に揃っている。したがって、このように減速停止制御の開始タイミングを揃えることで、PF制御実行部41は、ASF制御実行部42がLDローラ11を停止するときに、PFローラ14を停止することができる。PF制御実行部41は、PEセンサ36が連続的に給紙される新たな印刷媒体Pを検出した後のLDローラ11の搬送量が所定の搬送量となるときにPFローラ14が停止するように制御することができる。
2枚目の印刷媒体Pを印字開始位置へ給紙した後、給紙処理指示部52は、連続印刷用の印刷データなどに基づいて、次ページ印刷の有無を判断する(ステップST24)。そして、たとえば3枚目以降の次ページ印刷が無い場合、給紙処理指示部52は、ASIC37へASFサブモータ33を駆動するための指示を供給する(ステップST25)。ASIC37は、ASFサブモータ33を駆動し、LD従動ローラ12は、LDローラ11から離間する。逆に、3枚目以降の次ページ印刷がある場合、給紙処理指示部52は、LD従動ローラ12をLDローラ11から離間させることなく、給紙処理を終了する。
以上の2枚目の印刷媒体Pの給紙処理により、2枚目の印刷媒体Pが1枚目の印刷媒体Pの紙送り処理により既に給紙され始めている場合でも、あるいは、2枚目の印刷媒体Pが2枚目の給紙処理により給紙され始める場合であっても、2枚目の印刷媒体Pは、印刷開始位置まで給紙される。
その後、インクジェットプリンタ1では、2枚目の印刷媒体毎の印刷データに基づいて、印字処理指示部55による印字制御と、紙送り処理指示部53による紙送り制御とを繰り返す。印刷処理が進むつれて、紙送り処理指示部53は、図6のフローチャートに基づいて推定未印刷領域幅を設定し(ステップST44)、各紙送りにおける指示送り量が推定未印刷領域幅の残量より大きいか否かを判断し(ステップST45)、印刷データのマスク設定を実行する(ステップST46)。また、処理判断部51が図4のステップST4において2枚目の印刷媒体毎の印刷データの最後のページ区切りデータを読み込むと、排紙処理指示部54による排紙処理が開始される。
インクジェットプリンタ1は、連続印刷用の印刷データに含まれる印刷媒体毎の印刷データを読込み、3枚目以降についても2枚目と同様の制御を実行する。そして、連続印刷中の処理判断部51が図4のステップST4において最後の印刷媒体毎の印刷データを読み込むと、それまでとは異なる制御が実行される。
具体的には、最後の印刷媒体Pの紙送り処理では次の印刷ページが無いので、給紙処理指示部52は、図5中のステップST24の判断においてNo(最終ページ)と判断する。給紙処理指示部52は、たとえば印刷設定データ中の次ページ無しのデータに基づいてNo(最終ページ)と判断する。紙送り処理指示部53は、ASIC37へASFサブモータ33を駆動するための指示を供給する(ステップST25)。ASIC37は、ASFサブモータ33を駆動し、LD従動ローラ12は、LDローラ11から離間する。
また、紙送り処理指示部53は、次の印刷ページが無いので、図7中のステップST51の判断においてNoと判断する。紙送り処理指示部53は、紙送り制御の第四のパターンにより紙送りを制御する。つまり、紙送り処理指示部53は、給紙完了後にPF制御実行部41に指示したPF目標搬送量の累積値に、今回新たに指示する紙送り量を加算した値と、給紙完了後のPF絶対搬送量62(前回のまでの指示に基づく実際の搬送量)との差を、新たなPF目標搬送量(パルス数)とし、PF制御実行部41のみへPF目標速度を指示する(ステップST60)。これにより、印刷媒体Pは、PFローラ14のみにより搬送される。LD従動ローラ12とLDローラ11との圧接状態は解除されており、印刷媒体Pは、PFローラ14の回転にしたがって搬送される。
また、排紙処理指示部54は、次の印刷ページが無いので、上述したフラグなどを参照して、図8中のステップST71の判断においてNo(最終ページ)と判断する。紙送り処理指示部53は、さらに、LD従動ローラ12がLDローラに当接するニップ状態にあることを確認した後(ステップST74)、給紙されている印刷媒体Pを排紙トレイまで搬送することができる所定の搬送量を、PFローラ14によるPF目標搬送量(パルス数)とし、PF制御実行部41のみへPF目標速度を指示する(ステップST75)。LD従動ローラ12とLDローラ11との圧接状態は解除されており、印刷済みの印刷媒体Pは、PFローラ14のみにより搬送され、排紙トレイに排出される。
このようにインクジェットプリンタ1は、連続印刷用の印刷データの中の、最終ページの印刷データが供給されると、それまでの連続印刷中の印刷媒体Pに対する制御とは異なる制御を実行する。すなわち、インクジェットプリンタ1は、通常の印刷データに基づく通常の印刷モードでの紙送り制御と略同じ制御を実行する。
なお、このインクジェットプリンタ1は、普通紙、写真用紙などの各種の印刷媒体Pに対して印刷をすることができる。また、このインクジェットプリンタ1は、印刷媒体Pに対して、異なる複数の解像度により印刷をすることができる。インクジェットプリンタ1は、印刷する印刷媒体Pの種類や印刷品質などに応じて複数の印刷モードを有する。印刷モードには、たとえば普通紙に対して高速に印刷するモードや、写真用紙に対して高品質に印刷するモードなどがある。
このように複数の印刷モードにおいて、このインクジェットプリンタ1は、たとえば普通紙などに対して高速に印刷するモードにおいて、上述した連続印刷モードによる印刷を実行する。つまり、インクジェットプリンタ1は、LD従動ローラ12をLDローラ11に当接させた状態に維持したまま、ASFモータ32およびPFモータ31を共に駆動して、リア給紙トレイ2上の複数の印刷媒体Pを連続的に給紙する。
また、インクジェットプリンタ1は、残りの印刷モードにおいては、他の一般的なインクジェットプリンタと同様に、1枚ずつ印刷媒体Pを給紙し、その印刷媒体Pに対する印刷を終えたら排紙をし、その排紙後にリア給紙トレイ2上の次の印刷媒体Pを印刷領域へ給紙する。
次に、複数の印刷媒体Pを連続的に搬送して印刷する印刷データが供給された場合において、リア給紙トレイ2に実際に載置されている印刷媒体Pが、その印刷データにより指定された用紙サイズより小さいものである場合を例に、用紙サイズ不一致の場合の処理を説明する。
リア給紙トレイ2に実際に載置されている印刷媒体Pが、その印刷データにより指定された用紙サイズより小さいものである場合、PEセンサ36は、紙送り処理指示部53が紙送り実行をすることで、印刷中の印刷媒体Pの後端縁を検出する。紙送り処理指示部53は、図6のステップST43においてYesと判断し、推定未印刷領域幅を設定する(ステップST44)。
また、その後の紙送り処理では、紙送り処理が指示される度に、紙送り処理指示部53は、図6のステップST41においてYesと判断し、推定未印刷領域幅の残量より、今回の指示搬送量が大きいか否かを判断する(ステップST45)。リア給紙トレイ2に実際に載置されている印刷媒体Pが印刷データにより指定された用紙サイズと同じものである場合、紙送り処理指示部53は、ステップST45でNoと判断し、紙送り処理(ステップST47)などを実行する。
しかしながら、リア給紙トレイ2に実際に載置されている印刷媒体Pが、その印刷データにより指定された用紙サイズより小さいものである場合、紙送り処理を繰り返すことで、最終的には、推定未印刷領域幅の残量より今回の指示搬送量が大きくなる。紙送り処理指示部53は、ステップST45でYesと判断し、例外排紙処理を要求する(ステップST48)。紙送り処理指示部53は、紙送り処理を実行することなく、その処理を終了する。
紙送り処理指示部53により例外排紙処理が要求されると、処理判断部51は、図4のステップST2においてYesと判断する。印刷データに基づいて複数の印刷媒体Pを連続的に搬送して印刷をする処理を開始していた処理判断部51は、次ページ無しを設定する(ステップST3)。処理判断部51は、印刷データの最後のページの処理に入っていないにもかかわらず、インクジェットプリンタ1に次ページ無しの設定に基づく処理を開始する。処理判断部51は、印刷処理を中止する。その後、処理判断部51は、排紙処理指示部54に排紙処理を指示する(ステップST4)。なお、このインクジェットプリンタ1に設定される次ページ無しの設定は、たとえばメモリ70などに記憶されればよい。
インクジェットプリンタ1に次ページ無しが設定されているため、排紙処理指示部54は、図8のステップST71においてNoと判断する。排紙処理指示部54は、さらにLDニップ状態であるか否かを判断する。複数の印刷媒体Pを連続的に搬送する場合、LD従動ローラ12は、LDローラ11に当接するニップ状態に維持される。したがって、排紙処理指示部54は、ステップST74においてYesと判断する。排紙処理指示部54は、ステップST76の判断結果に応じて所定量のシンクロ(ならい)制御を実行した後(ステップST77)、給紙処理指示部52(ステップST78)。また、排紙処理指示部54は、PFモータ31を駆動させて(ステップST75)、排紙処理を終了する。
この用紙サイズ違いを検出した後の最初の排紙処理により、印刷中の印刷媒体Pは、排紙される。また、印刷中の印刷媒体Pに続いて搬送される白紙の印刷媒体Pは、PFローラ14とPF従動ローラ15との間に挟持された後、印刷領域へ給紙されることになる。
紙送り処理指示部53により例外排紙処理が要求された後の排紙処理指示部54による排紙処理が完了すると、処理判断部51は、さらに、図4のステップST4において、給紙処理指示部52に給紙処理を指示する。
給紙処理指示部52は、図5のステップST11において絶対位置をリセットした後、LDニップ状態であるか否かを判断する。先の排紙処理指示部54の処理により、LDニップ状態は解除されている。給紙処理指示部52は、ステップST12においてNoと判断する。
給紙処理指示部52は、ASFサブモータ32を駆動させてLDニップ状態に制御した後(ステップST13)、所定搬送量での同時駆動制御を実行する(ステップST14)。給紙処理指示部52は、PEセンサ36の検出が用紙無しから用紙ありへ変化したか否かを判断する(ステップST15)。
なお、リア給紙トレイ2に実際に載置されている印刷媒体Pが、その印刷データにより指定された用紙サイズより小さいものである場合、その小さいサイズの印刷媒体Pが連続的に給紙される。したがって、このステップST14の同時駆動制御中に、PEセンサ36の検出が、用紙無しから用紙ありへ変化しない場合がありえる。PEセンサ36の検出が用紙無しから用紙ありへ変化しない場合(ステップST15でNoの場合)、給紙処理指示部52は、次に、PFモータ31やASFモータ32を停止させ(ステップST31)、LDニップを解除する(ステップST32)。その後、給紙処理指示部52は、先の停止処理中に、PEセンサ36の検出が用紙無しから用紙ありへ変化したか否かを再確認する(ステップST33)。
先の停止処理中に無しからありへ変化していない場合、給紙処理指示部52は、ステップST33でYesと判断し、白紙排出処理を実行する。具体的には、給紙処理指示部52は、LDニップ状態に制御し、所定搬送量でのシンクロ(ならい)制御を実行し、さらにLDニップを解除する(ステップST34)。
白紙排出処理を実行した後、給紙処理指示部52は、その白紙排出処理を所定回数(たとえば2回)実行したか否かを判断する(ステップST35)。白紙排出処理を所定回数繰り返していない場合、給紙処理指示部52は、PEセンサ36の検出が用紙無しから用紙ありへ変化したか否かを判断する(ステップST33)。PEセンサ36の検出が用紙無しから用紙ありへ変化していない場合、給紙処理指示部52は、白紙排出処理を繰り返し(ステップST34)、白紙排出処理を所定回数(たとえば2回)実行したか否かを判断する(ステップST35)。
白紙排出処理を所定回数繰り返している場合、給紙処理指示部52は、エラー処理を要求し(ステップST36)、給紙処理を終了する。エラー処理要求があると、処理判断部51は、図示外のエラー処理部にエラー処理を指示する。エラー処理部は、たとえば図示外の表示パネルなどにエラー表示などを表示させる。エラー処理部は、エラーをユーザへ報知する。
ステップST15、ステップST33などの判断において、PEセンサ36の検出が用紙無しから用紙ありへ変化した場合、給紙処理指示部52は、連続印刷中で無いことを確認した後(ステップST16でNo)、LDニップを解除し(ステップST18)、同時駆動制御により印刷媒体Pを印字開始位置まで搬送する(ステップST19、ST20)。PEセンサ36を通過し、PFローラ14およびPF従動ローラ15の間に挟持されている印刷媒体Pは、印字開始位置まで搬送される。
ステップST15、ステップST33などの判断において、PEセンサ36の検出が用紙無しから用紙ありへ変化するとき、PEセンサ36は、最初の白紙の印刷媒体Pの次の白紙の印刷媒体Pの先端を検出している。PEセンサ36は、2番目の白紙の印刷媒体Pの先端を検出している。したがって、この用紙サイズ違いを検出した後の最初の給紙処理により、2番目の白紙の印刷媒体Pが印字開始位置まで搬送されることになる。
用紙サイズ違いを検出した後の最初の給紙処理が終わると、処理判断部51は、排紙処理指示部54に、2回目の排紙処理を指示する。なお、処理判断部51は、排紙処理の指示に先立って、紙送り処理を数回指示するようにしてもよい。
排紙処理が指示された排紙処理指示部54は、ステップST71においてNoと判断する。また、給紙処理(ステップST18)によりLDニップが解除されているので、排紙処理指示部54は、ステップST74においてNoと判断する。排紙処理指示部54は、PFモータ31を駆動させる排紙処理を実行する(ステップST75)。PFローラ14およびPF従動ローラ15の間に挟持された状態で印字開始位置まで搬送されてた印刷媒体Pは、排出される。
このように複数の印刷媒体Pを連続的に搬送して印刷をする制御中に、紙送り処理指示部53が、印刷データにより指定されたものより小さい用紙サイズの印刷媒体Pを検出すると、排紙処理指示部54による排紙処理と、給紙処理指示部52による給紙処理と、排紙処理指示部54による排紙処理とが実行される。排紙処理指示部54は、1回目の排紙処理においてLDニップを解除する。給紙処理指示部52は、LDニップが解除されていることに基づいて、印刷媒体Pを1枚ずつ搬送する給紙処理を実行する。印刷媒体Pを1枚ずつ搬送する給紙処理では、LDニップが解除された状態で給紙処理が終了する。排紙処理指示部54は、2回目の排紙処理において、LDニップが解除されていることに基づいて、PFモータ31による排紙処理を実行する。
その結果、複数の印刷媒体Pを連続的に搬送して印刷をする制御中に、紙送り処理指示部53が、印刷データにより指定されたものより小さい用紙サイズの印刷媒体Pを検出した場合、その用紙サイズ不一致を検出する際に印刷中の印刷媒体Pの他に、少なくとも2枚の印刷媒体Pが排出される。インクジェットプリンタ1は、複数の印刷媒体Pを連続的に搬送した印刷が終えるのを待つことなく、早期に印刷処理を中断することができる。
以上のように、この実施の形態では、マイクロコンピュータ38に、処理判断部51、給紙処理指示部52、紙送り処理指示部53および排紙処理指示部54により構成される制御手段が実現される。そして、この制御手段は、印刷領域へ搬送される印刷媒体Pの用紙サイズが印刷データに指定されるものと一致しない場合に、PEセンサ36により印刷媒体Pの先端が検出されるまで、LDローラ11およびPFローラ14をともに回転駆動し、LD従動ローラ12をLDローラ11から離間した後にPFローラ14を回転駆動する。
したがって、制御手段は、複数の印刷媒体Pの連続的な搬送中に用紙サイズの不一致が検出されると、LDローラ11およびPFローラ14の間においてPEセンサ36により印刷中の印刷媒体Pより後に搬送される印刷媒体P(たとえば印刷中の印刷媒体Pの次に搬送される印刷媒体P)の先端が検出されるまで、LDローラ11およびPFローラ14をともに回転駆動する。その後、制御手段は、LD従動ローラ12をLDローラ11から離間した後にPFローラ14を回転駆動する。したがって、インクジェットプリンタ1は、複数の印刷媒体Pの連続的な搬送中に用紙サイズの不一致が検出されると、印刷媒体Pの搬送経路に印刷媒体Pが残らないように、印刷媒体Pを排出することができる。印刷処理を適切に中断することができる。
また、この実施の形態では、制御手段は、PEセンサ36による印刷中の印刷媒体Pの後端縁の検出に基づいて判断されるその印刷中の印刷媒体Pの推定未印刷領域を超えた範囲に対して印刷をすることになる場合に、印刷領域へ搬送される印刷媒体Pの用紙サイズが印刷データに指定されるものと一致しないと判断する。したがって、制御手段は、印刷領域へ搬送される印刷媒体Pの用紙サイズが印刷データに指定されるものより小さい場合に、用紙サイズの不一致を検出することができる。
また、この実施の形態では、制御手段は、PEセンサ36により、後に搬送される印刷媒体Pの先端が検出されるまで、LDローラ11およびPFローラ14をともに回転駆動する制御を繰り返し実行する。そのため、制御手段は、PEセンサ36により最初の印刷媒体Pの先端が検出されたときに、LDローラ11およびPFローラ14の回転駆動を終えることができる。制御手段は、必要最小限の駆動制御により短時間で印刷媒体Pの先端を検出することができる。
また、この実施の形態では、制御手段は、LDローラ11およびPFローラ14をともに回転駆動する制御を所定回数繰り返しても、PEセンサ36により、後に搬送される印刷媒体Pの先端が検出されない場合には、所定のエラー処理を実行する。したがって、制御手段は、LDローラ11およびPFローラ14をともに回転駆動する制御を延々と続けることがない。
以上の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や変更が可能である。
上記実施の形態では、制御手段は、PEセンサ36により、印刷中の印刷媒体Pより後に搬送される印刷媒体Pの先端が検出されるまでの各駆動制御において、印刷媒体Pが、PEセンサ36の検出位置を通過し、さらにPFローラ14とPF従動ローラ15との間に挟持され、さらにPFローラ14により搬送可能になるように制御している。この他にもたとえば、制御手段は、PEセンサ36により、後に搬送される印刷媒体Pの先端が検出されるまで駆動制御を続け、さらにその検出後にPEセンサ36の検出位置からPFローラ11のニップ位置まで搬送する駆動制御を実行するようにしてもよい。
上記実施の形態では、制御手段は、印刷領域へ搬送される印刷媒体Pの用紙サイズが印刷データに指定されるものより小さい場合に、用紙サイズの不一致を検出している。この他にもたとえば、制御手段は、印刷領域へ搬送される印刷媒体Pの用紙サイズが印刷データに指定されるものより大きい場合に、用紙サイズの不一致を検出するようにしてもよい。制御手段は、たとえば各ページへの印刷が終えた時点で、推定未印刷領域幅の残量が所定の値(たとえば3ミリメートル)以上であるか否かを判断し、推定未印刷領域幅の残量が所定の値以上である場合に、用紙サイズの不一致を検出するようにしてもよい。
上記実施の形態では、LDローラ11とPFローラ14との間において印刷媒体Pを検出するPEセンサ36は、光学的に印刷媒体Pを検出する光センサである。この他にもたとえば、LDローラ11とPFローラ14との間において印刷媒体Pを検出するセンサは、リア印刷媒体の搬送経路4上を搬送される印刷媒体Pにより持上げられて回転するレバーと、このレバーの位置を光学的に検出する光センサとで構成されていてもよい。
上記実施の形態では、検出値演算部43は、たとえばPEセンサ36の検出後の搬送量を、PE検後PF搬送量65およびPE検後ASF搬送量66としてメモリ39に保存している。この他にもたとえば、検出値演算部43は、PEセンサ36が印刷媒体Pを検出したときのPF絶対搬送量62の値やASF絶対搬送量64の値を、メモリ39に保存するようにしてもよい。
この変形例の場合、PF制御実行部41やASF制御実行部42は、メモリ39に記憶されているPF絶対搬送量62から、メモリ39に記憶されている検出したときのPF絶対搬送量の値を減算して、これをPE検後PF搬送量65と同じものとして利用すればよい。また、PF制御実行部41やASF制御実行部42は、メモリ39に記憶されているASF絶対搬送量64から、メモリ39に記憶されている検出したときのASF絶対搬送量の値を減算して、これをPE検後ASF搬送量66と同じものとして利用すればよい。
上記実施の形態では、インクジェットプリンタ1は、たとえばリア給紙トレイ2上の複数の印刷媒体Pを給紙する場合において、複数の印刷媒体Pを連続給紙している。この他にもたとえば、インクジェットプリンタ1は、フロント給紙トレイ3上の複数の印刷媒体Pを給紙する場合において、複数の印刷媒体Pを連続給紙するようにしてもよい。
上記実施の形態では、インクジェットプリンタ1へ供給される印刷データは、インクジェットプリンタ1と通信可能なパーソナルコンピュータにおいて生成されたものを例として説明している。この他にもたとえば、DSC(デジタルスチルカメラ)などもインクジェットプリンタ1と通信して印刷データを供給することができる。また、インクジェットプリンタ1が組み込まれた所謂複合機においては、その複合機に設けられたスキャナユニットやICカードリーダなどがインクジェットプリンタ1と通信して印刷データを供給することができる。
1 インクジェットプリンタ(印刷装置)、2 リア給紙トレイ(給紙トレイ)、4 リア用印刷媒体搬送方向(印刷媒体の搬送方向)、11 LDローラ(上流側搬送ローラ)、12 LD従動ローラ(上流側従動ローラ)、14 PFローラ(下流側搬送ローラ)、15 PF従動ローラ(下流側従動ローラ)、36 PEセンサ(センサ)、51 処理判断部(制御手段の一部、処理判断手段)、52 給紙処理指示部(制御手段の一部、給紙処理手段)、53 紙送り処理指示部(制御手段の一部、紙送り処理手段)、54 排紙処理指示部(制御手段の一部、排紙処理手段)、P 印刷媒体