JP5082057B2 - 導電性ペーストとその製造方法、配線とその製造方法、並びにそれらを用いた電子部品及び電子機器 - Google Patents

導電性ペーストとその製造方法、配線とその製造方法、並びにそれらを用いた電子部品及び電子機器 Download PDF

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Description

本発明は、導電性ペーストとその製造方法、配線とその製造方法、並びにそれらを用いた電子部品及び電子機器に関し、より具体的には、導電性微粒子の表面に反応性基を導入した反応性導電性微粒子と硬化剤とを含む導電性ペーストとその製造方法、導電性ペーストの塗膜を硬化して得られる配線とその製造方法、及びこのようにして得られる配線を用いた電子部品及び電子機器に関する。
移動通信機器等に代表される電子機器の小型化及び低コスト化に伴い、微細配線を安価に成形するための技術に対するニーズが高まりつつある。こうした目的のために、金、銀、パラジウム、銅、ニッケル等の導電性微粒子をバインダー中に分散させた導電性ペーストが広く用いられている。スクリーン印刷、フォトリソグラフィー等の方法により所定のパターン状に選択的に塗布された導電性ペーストの塗布膜は、バインダーの熱硬化(例えば、特許文献1参照)、或いは、加熱焼結(例えば、特許文献2参照)等の処理を経て微細配線を形成する。
特開2004−356053号公報 特開2004−273205号公報
しかしながら、特許文献1記載の導電性ペーストのように熱硬化性樹脂をバインダーとして含んでいる場合には、導電性微粒子の体積分率が低くなり、十分な導電性が確保できない場合がある。また、特許文献2に記載の導電性ペーストのように導電性微粒子を焼結させて導体パターンを形成する場合には、基板がセラミックス等の耐熱性のものに限定されるため、安価で成形性に優れた樹脂基板を用いることが困難である。
更に、特許文献1及び2記載の導電性ペーストにおいては、形成された導体パターンと基板の表面との間に化学結合が存在しないため、耐剥離性に問題が生じる場合がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、バインダーが不要で、低温での熱処理により高い導電性を有する配線を形成することができる導電性ペーストとその製造方法、導電性ペーストの塗膜を硬化して得られる配線とその製造方法、及びこのようにして得られる配線を用いた電子部品及び電子機器を提供することを目的とする。
前記目的に沿う第1の発明に係る導電性ペーストは、分子の一端に反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が被覆されている導電性微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤とを含み、バインダー樹脂を含まない。
第1の発明に係る導電性ペーストにおいて、前記膜化合物はSi又はSを介して前記導電性微粒子の表面に共有結合していることが好ましい。
第1の発明に係る導電性ペーストにおいて、前記膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることが好ましい。
第1の発明に係る導電性ペーストにおいて、前記反応性基がエポキシ基を含む官能基であり、前記硬化剤がイミダゾール化合物及びメルカプトトリアゾール化合物のいずれかであってもよい。
第1の発明に係る導電性ペーストにおいて、前記反応性基がアミノ基又はイミノ基であり、前記硬化剤が2以上のイソシアネート基を有する化合物であってもよい。
第2の発明に係る導電性ペーストの製造方法は、反応性基及び表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を導電性微粒子と接触させ、前記表面結合基と前記導電性微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された反応性導電性微粒子を製造する工程Aと、前記反応性導電性微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤と、溶媒とを混合する工程Bとを含む。
第2の発明に係る導電性ペーストの製造方法において、前記工程Aでは、未反応の前記膜化合物は洗浄除去され、前記反応性導電性微粒子の表面で前記膜化合物が形成する被膜は、単分子膜であることが好ましい。
第2の発明に係る導電性ペーストの製造方法において、前記表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程Aは、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われてもよい。
第2の発明に係る導電性ペーストの製造方法において、前記表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程Aは、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われてもよい。
第3の発明に係る配線は、反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された導電性微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤とを含み、バインダー樹脂を含まない導電性ペーストを、前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基を有する第2の膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された基材の表面に塗布し、前記反応性基及び前記第2の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により硬化している。
第3の発明に係る配線において、前記膜化合物及び第2の膜化合物はそれぞれSi又はSを介して前記導電性微粒子及び前記基材の表面に共有結合していることが好ましい。
第3の発明に係る配線において、前記反応性基及び前記第2の反応性基がエポキシ基を含む官能基であり、前記硬化剤がイミダゾール化合物及びメルカプトトリアゾール化合物のいずれかであってもよい。
第3の発明に係る配線において、前記反応性基及び前記第2の反応性基がアミノ基又はイミノ基であり、前記硬化剤が2以上のイソシアネート基を有する化合物であってもよい。
第3の発明に係る配線において、前記膜化合物及び第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることが好ましい。
第4の発明に係る配線の製造方法は、反応性基及び表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を導電性微粒子と接触させ、前記表面結合基と前記導電性微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された反応性導電性微粒子を製造する工程Aと、前記反応性導電性微粒子、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤、及び溶媒を混合して導電性ペーストを製造する工程Bと、前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基及び第2の表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する第2の膜化合物を基材と接触させ、前記第2の表面結合基と前記基材の表面との間で結合を形成させ、前記第2の膜化合物で表面が被覆された反応性基材を製造する工程Cと、前記反応性基材の表面に前記導電性ペーストの塗膜を形成する工程Dと、前記塗膜を加熱して、前記反応性基と前記架橋反応基との反応、及び前記第2の反応性基と前記架橋反応基との反応により共有結合を形成させて前記塗膜を硬化させる工程Eとを含む。
第4の発明に係る配線の製造方法において、前記表面結合基及び前記第2の表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程A及び工程Cは、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われてもよい。
第4の発明に係る配線の製造方法において、前記表面結合基及び前記第2の表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程A及び工程Cは、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われてもよい。
第5の発明に係る電子部品は、第3の発明に係る配線を用いている。
第6の発明に係る電子機器は、第3の発明に係る配線を用いている。
請求項1〜5記載の導電性ペースト、請求項6〜9記載の導電性ペーストの製造方法においては、導電性ペーストに用いられている導電性微粒子の表面が、膜化合物の形成する被膜で被覆されており、被膜の表面に存在する反応性基は、導電性ペーストに含まれる硬化剤中の架橋反応基との反応により結合を形成する。そのため、例えば、配線の製造に際し、バインダー樹脂及び高温での焼結が不要の導電性ペーストが得られる。
また、導電性微粒子の表面が膜化合物の形成する被膜で被覆されているので、表面の酸化が起こりにくくなると共に、導電性ペーストに含まれる有機溶媒中への分散安定性が向上することから、保存安定性が向上する。
特に、請求項2記載の導電性ペーストにおいては、膜化合物がSi又はSを介して導電性微粒子の表面に共有結合しているので、膜化合物の形成する被膜を導電性微粒子の表面に強固に結合固定することができると共に、硬化を迅速に行うことができる。
請求項3記載の導電性ペースト及び請求項7記載の導電性ペーストの製造方法においては、膜化合物の形成する被膜が単分子膜であるので、バインダー相当成分を最少にできて、導電性を向上できると共に、硬化後の密度を向上させ、体積抵抗率を低減することができる。
請求項4記載の導電性ペーストにおいては、エポキシ基を含む反応性基とイミダゾール化合物又はメルカプトトリアゾール化合物である硬化剤との架橋反応により、N−CHCH(OH)結合が形成されるので、加熱により強固な結合を形成できる。
請求項5記載の導電性ペーストにおいては、アミノ基又はイミノ基である反応性基とイソシアネート基との架橋反応により、NH−CONH結合が形成されるので、加熱により強固な結合を形成できる。
請求項8記載の導電性ペーストの製造方法においては、工程Aが、アルコキシシリル基とヒドロキシル基との縮合反応を触媒する、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われるので、工程Aに要する時間を短縮し、導電性ペーストの製造をより高効率に行うことができる。
請求項9記載の導電性ペーストの製造方法においては、工程Aが、アルコキシシリル基とヒドロキシル基との縮合反応を触媒する、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からからなる群より選択される1又は2以上の存在下で行われるので、工程Aに要する時間を短縮し、導電性ペーストの製造をより高効率に行うことができる。
特に、これらの化合物と上述のカルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の両者が共に存在する場合には、これらの化合物は助触媒として作用するため、工程Aに要する時間をさらに短縮できる。
請求項10〜14記載の配線、及び請求項15〜17記載の配線の製造方法においては、反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された導電性微粒子と、反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤とを含む導電性ペーストを、第2の反応性基を有する第2の膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された基材の表面に塗布し、反応性基及び第2の反応性基と架橋反応基との架橋反応により導電性ペーストの塗膜を硬化させる。そのため、基材と配線が一体となり、耐剥離性に優れ導体密度が高い配線を、簡便な方法を用いて製造できる配線及びその製造方法を提供できる。
請求項11記載の配線においては、膜化合物及び第2の膜化合物がSi又はSを介して導電性微粒子及び基材の表面に共有結合しているので、膜化合物の形成する被膜を導電性微粒子の表面に、第2の膜化合物の形成する被膜を基材の表面に、強固に結合固定することができると共に、硬化を迅速に行うことができる。
請求項12記載の配線においては、エポキシ基を含む反応性基及び第2の反応性基とイミダゾール化合物又はメルカプトトリアゾール化合物との架橋反応により、N−CHCH(OH)結合が形成されるので、加熱により強固な結合を形成できる。
請求項13記載の配線においては、それぞれアミノ基又はイミノ基のいずれかである反応性基及び第2の反応性基とイソシアネート基との架橋反応により、NH−CONH結合が形成されるので、加熱により強固な結合を形成できる。
請求項14記載の配線においては、膜化合物及び第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であるので、バインダー相当成分を最少にできて、導電性を向上できると共に、硬化後の導体密度を向上させ、体積抵抗率を低減することができる。
請求項16記載の配線の製造方法においては、工程A及び工程Cが、アルコキシシリル基とヒドロキシル基との縮合反応を触媒する、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われるので、工程A及び工程Cに要する時間を短縮し、配線の製造をより高効率に行うことができる。
請求項17記載の配線の製造方法においては、工程A及び工程Cが、アルコキシシリル基とヒドロキシル基との縮合反応を触媒する、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からからなる群より選択される1又は2以上の存在下で行われるので、工程A及び工程Cに要する時間を短縮し、配線の製造をより高効率に行うことができる。
特に、これらの化合物と上述のカルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の両者が共に存在する場合には、これらの化合物は助触媒として作用するため、工程A及び工程Cに要する時間をさらに短縮できる。
請求項18記載の電子部品及び請求項19記載の電子機器においては、優れた導電性を有し、対剥離強度が高い請求項10〜14記載の配線を用いているので、内部損失やそれに伴う発熱が少なく、信頼性及び耐久性に優れている。
以下、図1〜図3を参照しながら本発明の一実施の形態に係る配線の一例である電極配線10について説明する。
電極配線10は、図1に示すように、銀微粒子(導電性微粒子の一例)21の表面がエポキシ基(反応性基の一例)を有する膜化合物の単分子膜(膜化合物の形成する被膜の一例)23で被覆されたエポキシ化銀微粒子(反応性導電性微粒子の一例)11と、エポキシ基と反応して結合を形成するイミノ基及びアミノ基(架橋反応基の一例)を有する硬化剤の一例である2−メチルイミダゾール12とを含む混合物からなる導電性ペーストの一例である銀ペーストを、エポキシ基(第2の反応性基の一例)を有する第2の膜化合物の単分子膜(第2の膜化合物の形成する被膜の一例)33で覆われた基材31であるエポキシ化基材(反応性基材の一例)13の表面に塗布し、得られた銀ペーストの塗膜14(図3参照)を、エポキシ基と架橋反応基との架橋反応により硬化することにより得られる。
銀ペーストの製造方法は、図2(a)、(b)に示すように、エポキシ基を有する膜化合物を銀微粒子21と接触させ、エポキシ化銀微粒子11を製造する工程Aと、エポキシ化銀微粒子11、2−メチルイミダゾール12(図1)、及び溶媒を混合して銀ペーストを製造する工程Bとを含んでいる。
また、電極配線10の製造方法は、上記の工程A及び工程Bと、基材31にエポキシ基を有する第2の膜化合物を接触させ、エポキシ化基材13を製造する工程Cと、エポキシ化基材13の表面に、工程Bで製造した銀ペーストを塗布し、図3に示すような塗膜14を形成する工程Dと、エポキシ基と架橋反応基との架橋反応により塗膜14を硬化させ、電極配線10(図1)を製造する工程Eとを含んでいる。
以下、工程A〜Eについてより詳細に説明する。
工程Aでは、エポキシ基を有する膜化合物を銀微粒子21と接触させ、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23で表面が覆われたエポキシ化銀微粒子11を製造する(図2)。
用いることのできる銀微粒子21の粒径に特に制限はないが、10nm〜1μmの範囲内であることが好ましい。銀微粒子21の粒径が10nm未満である場合には、膜化合物の分子サイズの影響が無視できなくなり、粒径が1μmを上回る場合には、形成される電極配線10の厚さに対して銀微粒子21の直径が大きくなり過ぎるため、空隙率が増大して電気特性が悪化する。なお、平均粒径の大きな(例えば、約1μm)銀微粒子と平均粒径の小さな(例えば、約100nm)銀微粒子を混合して用いてもよく、この場合、前者と後者の好ましい混合比率は25:75〜35:65、より好ましくは30:70(いずれも体積比)である。
エポキシ基を有する膜化合物としては、銀微粒子21の表面に吸着又は結合し、自己組織化により単分子膜を形成することのできる任意の化合物を用いることができるが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にエポキシ基(オキシラン環)を含む官能基を、他方の末端にアルコキシシリル基(表面結合基の一例)をそれぞれ有し、下記の一般式(化1)で表されるアルコキシシラン化合物が好ましい。
Figure 0005082057
化1において、Eはエポキシ基を有する官能基を、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
用いることのできるエポキシ基を有する膜化合物の具体例としては、下記(1)〜(12)に示したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(3) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(8) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(9) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(12) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
ここで、(CHOCH)CH−基は、化2で表される官能基(グリシジル基)を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、化3で表される官能基(3,4−エポキシシクロヘキシル基)を表す。
Figure 0005082057
Figure 0005082057
エポキシ化銀微粒子11の製造は、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基と銀微粒子21の表面の水酸基22(図2(a)参照)との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合した反応液中に銀微粒子21を分散させ、室温の空気中で反応させることにより行われる。
縮合触媒としては、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート等の金属塩が利用可能である。
縮合触媒の添加量は、好ましくはアルコキシシラン化合物の0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜1質量%である。
カルボン酸金属塩の具体例としては、酢酸第1スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第1スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄が挙げられる。
カルボン酸エステル金属塩の具体例としては、ジオクチルスズビスオクチルチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸金属塩ポリマーの具体例としては、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマーが挙げられる。
カルボン酸金属塩キレートの具体例としては、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレートが挙げられる。
チタン酸エステルの具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネートが挙げられる。
チタン酸エステルキレートの具体例としては、ビス(アセチルアセトニル)ジ−プロピルチタネートが挙げられる。
アルコキシシリル基と銀微粒子21の表面の水酸基22とが縮合反応(脱アルコール反応)を起こし、下記の化4で示されるような構造を有するエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23を生成する。なお、酸素原子から延びた3本の単結合は銀微粒子21の表面又は隣接するシラン化合物のケイ素(Si)原子と結合しており、そのうち少なくとも1本は銀微粒子21の表面のケイ素原子と結合している。
なお、ハロシラン化合物を用いた場合と異なり、縮合反応の際に生成するハロゲン化水素により銀微粒子21の表面が腐食を受けることはない。
Figure 0005082057
アルコキシシリル基は、水分の存在下で分解するので、反応は相対湿度45%以下の空気中で行うことが好ましい。なお、縮合反応は、銀微粒子21の表面に付着した油脂分や水分により阻害されるので、銀微粒子21をよく洗浄して乾燥することにより、これらの不純物を予め除去しておくことが好ましい。
縮合触媒として上述の金属塩のいずれかを用いた場合、縮合反応の完了までに要する時間は2時間程度である。
上述の金属塩の代わりに、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物を縮合触媒として用いた場合、反応時間を1/2〜2/3程度まで短縮できる。
あるいは、これらの化合物を助触媒として、上述の金属塩と混合(質量比1:9〜9:1の範囲で使用可能だが、1:1前後が好ましい)して用いると、反応時間をさらに短縮できる。
例えば、縮合触媒として、カルボン酸金属塩キレートであるジブチルスズビスアセチルアセトナートの代わりにケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3を用い、その他の条件は同一にしてエポキシ化銀微粒子11の製造を行うと、エポキシ化銀微粒子11の品質を損なうことなく反応時間を1時間程度にまで短縮できる。
さらに、縮合触媒として、ジャパンエポキシレジン社のH3とジブチルスズビスアセチルアセトネートとの混合物(混合比は1:1)を用い、その他の条件は同一にしてエポキシ化銀微粒子11の製造を行うと、反応時間を20分程度に短縮できる。
なお、ここで用いることができるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等が挙げられる。
また、用いることができる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸等が挙げられる。
反応液の製造には、有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系溶媒、及びこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコキシシラン化合物の加水分解を防止するために、乾燥剤又は蒸留により使用する溶媒から水分を除去しておくことが好ましい。また、溶媒の沸点は50〜250℃であることが好ましい。
具体的に使用可能な溶媒としては、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることもできる。
また、用いることができるフッ化炭素系溶媒としては、フロン系溶媒、フロリナート(米国3M社製)、アフルード(旭硝子株式会社製)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機塩素系溶媒を添加してもよい。
反応液におけるアルコキシシラン化合物の好ましい濃度は、0.5〜3質量%である。
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った過剰なアルコキシシラン化合物及び縮合触媒を除去すると、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23で表面が覆われたエポキシ化銀微粒子11が得られる。このようにして製造されるエポキシ化銀微粒子11の断面構造の模式図を図2(b)に示す。
洗浄溶媒としては、アルコキシシラン化合物を溶解できる任意の溶媒を用いることができるが、安価であり、溶解性が高く、風乾により容易に除去することのできるジクロロメタン、クロロホルム、N−メチルピロリドン等が好ましい。
反応後、生成したエポキシ化銀微粒子11を溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、エポキシ化銀微粒子11の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、エポキシ化銀微粒子11の表面に共有結合により必ずしも全てが固定されているわけではないが、エポキシ基を含んでいるため、エポキシ化銀微粒子11に対してエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、工程C以降の製造工程に特に支障をきたすことはない。
なお、本実施の形態においては、膜化合物としてエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いたが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にアミノ基を、他方の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ有し、下記の一般式(化5)で表されるアルコキシシラン化合物を用いてもよい。
Figure 0005082057
上式において、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
用いることのできるアミノ基を有する膜化合物の具体例としては、下記(21)〜(28)に示したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
(21) H2N(CH2)Si(OCH)3
(22) H2N(CH2)Si(OCH)3
(23) H2N(CH2)Si(OCH)3
(24) H2N(CH2)Si(OCH)3
(25) H2N(CH2)Si(OC)3
(26) H2N(CH2)Si(OC)3
(27) H2N(CH2)Si(OC)3
(28) H2N(CH2)Si(OC)3
反応液において用いることのできる縮合触媒のうち、スズ(Sn)塩を含む化合物は、アミノ基と反応して沈殿を生成するため、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物に対しては縮合触媒として用いることができない。
したがって、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合には、カルボン酸スズ塩、カルボン酸エステルスズ塩、カルボン酸スズ塩ポリマー、カルボン酸スズ塩キレートを除き、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の場合と同様の化合物を単独で又は2種類以上を混合して縮合触媒として用いることができる。
用いることのできる助触媒の種類及びそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、及び助触媒の濃度、反応条件並びに反応時間についてはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の場合と同様であるので、説明を省略する。
なお、本実施の形態では、導電性微粒子として銀微粒子を用いたが、他の導電性微粒子を用いることもできる。他の導電性微粒子としては、金、パラジウム、銅、ニッケル、或いは、銀メッキした貴金属や銅、ニッケルの金属微粒子、更には、導電性の金属酸化物微粒子であるITOやSnOが挙げられる。
銀微粒子以外の導電性微粒子であっても、その表面に水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する場合には、銀の場合と同様に、膜化合物としてアルコキシシラン化合物を用いることができる。
また、微粒子が、表面に活性水素基を有しない金(Au)や表面にAuメッキが施された金属微粒子等の場合には、表面結合基として、−SH基やトリアジンチオール基を有する膜化合物(例えば、一般式HN(CH−SH(nは整数)で表される化合物(ω−アミノアルカンチオール)で、具体例としては、3−アミノプロパンチオール(前記一般式においてn=3である化合物)等が挙げられる)を用いれば、硫黄原子を介して結合したアミノ基を含む膜化合物の単分子膜が形成された金微粒子を製造することができる。勿論、アミノ基の代わりにエポキシ基を有するチオールやトリアジン誘導体を用いることもできる。
なお、粒径が数nm〜数十nmの銀ナノ粒子を用いる場合には、体積に対する表面積の割合が増大することにより、例えば、230℃程度の低温で加熱することにより焼結が進行し、より緻密で導電性に優れた配線を形成できる。このような銀ナノ粒子を導電性微粒子として用いる場合には、焼結温度以下で銀ナノ粒子の表面から脱離するような膜化合物を用いることが好ましい。
(以上工程A)
工程Bでは、エポキシ化銀微粒子11、2−メチルイミダゾール12、及び溶媒を混合して銀ペーストを製造する。
2−メチルイミダゾール12はエポキシ基と反応するアミノ基及びイミノ基をそれぞれ1−位及び3−位に有しており、下記の化6に示すような架橋反応により結合を形成する。
Figure 0005082057
2−メチルイミダゾール12の添加量は、エポキシ化銀微粒子11の5〜15重量%が好ましい。2−メチルイミダゾール12の添加量がエポキシ化銀微粒子11の5重量%未満だと、製造させる電極配線10の強度が低くなり、15重量%を上回ると、銀ペーストがゲル化を起こしやすくなる等ハンドリングが悪化する。銀ペーストの製造には、2−メチルイミダゾール12が可溶な任意の溶媒を用いることができるが、価格、室温での揮発性、及び毒性等を考慮すると、イソプロピルアルコール、エタノール等の低級アルコール系溶媒が好ましい。
銀ペーストの製造に用いる溶媒の量は、エポキシ化銀微粒子11の粒径、製造する電極配線10の膜厚等によって適宜定められるため一義的に決定することは困難であるが、得られる銀ペーストの粘度が300〜5000Pa・sとなる程度の量が好ましく、より具体的にはエポキシ化銀微粒子11及び2−メチルイミダゾール12の10〜50重量%である。具体的には、エポキシ化銀微粒子11の表面を2−メチルイミダゾール12の単分子被膜で被覆するために必要な量に設定すればよい。
エポキシ化銀微粒子11、2−メチルイミダゾール12、及び溶媒の混合は、撹拌ばね、ハンドミキサー等の任意の手段により行うことができる。
本実施の形態においては、硬化剤として2−メチルイミダゾールを用いたが、下記化7で表される任意のイミダゾール誘導体を用いることができる。
また、イミダゾール誘導体以外では、メルカプトトリアゾール、メラミン、イソシアヌル酸、トリアジン、バルビツール酸、パラバン酸、ウラシル、チミン等の2個以上の窒素を含む複素環化合物を用いることができる。更に、イミダゾール−銅錯体等のイミダゾール−金属錯体を用いてもよい。
Figure 0005082057
化7で表されるイミダゾール誘導体の具体例としては、下記(31)〜(38)に示すものが挙げられる。
(31)
2−メチルイミダゾール(R=Me、R=R=H)
(32)
2−ウンデシルイミダゾール(R=C1123、R=R=H)
(33)
2−ペンタデシルイミダゾール(R=C1531、R=R=H)
(34)
2−メチル−4−エチルイミダゾール(R=Me、R=Et、R=H)
(35)
2−フェニルイミダゾール(R=Ph、R=R=H)
(36)
2−フェニル−4−エチルイミダゾール(R=Ph、R=Et、R=H)
(37)
2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(R=Ph、R=Me、R=CHOH)
(38)
2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール(R=Ph、R=R=CHOH)
なお、Me、Et、及びPhは、それぞれメチル基、エチル基、及びフェニル基を表す。
また、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物、ジシアンジアミド、ノボラック等のフェノール誘導体等の化合物を硬化剤として用いてもよい。この場合、架橋反応を促進するためにイミダゾール誘導体を触媒として用いてもよい。
なお、本実施の形態においては反応性基としてエポキシ基を有する膜化合物を用いた場合について説明しているが、反応性基としてアミノ基又はイミノ基を有する膜化合物を用いる場合には、架橋反応基として2若しくは3以上のエポキシ基又は2若しくは3以上のイソシアネート基を有する硬化剤を用いる。イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
これらのイソシアネート基の添加量は、2−メチルイミダゾールの場合と同様、エポキシ化銀微粒子の5〜15重量%が好ましい。この場合、銀ペーストの製造に用いることのできる溶媒としては、キシレン等の芳香族有機溶媒が挙げられる。
また、硬化剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の2又は3以上のエポキシ基を有する化合物を用いることもできる。
(以上工程B)
工程Cでは、工程Aにおいて用いた膜化合物と同様のエポキシ基を有する第2の膜化合物を基材31に接触させ、エポキシ基を有する第2の膜化合物の単分子膜33で表面が覆われたエポキシ化基材13を製造する。
なお、基材31は、絶縁性の材質よりなるものであれば、その大きさ、形状及び厚さについて特に制限はない。
エポキシ化基材13の製造は、エポキシ基及びアルコキシシリル基(第2の表面結合基の一例)を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基と基材31の表面の水酸基との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合した反応液を基材31の表面に塗布し、室温の空気中で反応させることにより行われる。塗布は、ドクターブレード法、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の任意の方法により行うことができる。
工程Cにおいて用いることのできるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の種類、縮合触媒、助触媒の種類及びそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、及び助触媒の濃度、反応条件並びに反応時間については工程Aと同様であるので、説明を省略する。
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った過剰なアルコキシシラン化合物及び縮合触媒を除去すると、エポキシ基を有する第2の膜化合物の単分子膜33で表面が覆われたエポキシ化基材13が得られる。
洗浄溶媒としては、工程Aと同様の洗浄溶媒を用いることができる。
反応後、生成したエポキシ化基材13を溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、エポキシ化基材13の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、エポキシ化基材13の表面に共有結合により固定されていないが、エポキシ基を含んでいるため、エポキシ化基材13に対して第2の膜化合物の単分子膜33と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、工程C以降の製造工程に特に支障をきたすことはない。
なお、本実施の形態においてはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いたが、工程Aと同様、直鎖状アルキレン基の一方の末端にアミノ基を、他方の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ有するアルコキシシラン化合物を用いてもよい。
また、本実施の形態においては工程Aと同一のアルコキシシラン化合物を用いているが、異なるアルコキシシラン化合物を用いてもよい。ただし、工程Cにおいて用いる硬化剤の架橋反応基と反応して結合を形成する反応性基を有するものでなければならない。
本実施の形態においては、基材材料としてガラスを用いたが、アルミニウム等の金属、ポリカーボネート等の合成樹脂を用いることもできる。
基材材料の表面に水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する場合には、ガラスの場合と同様に、第2の膜化合物としてアルコキシシラン化合物を用いることができる。この様な基材の具体例としては、アルミニウム等の金属、セラミックス等が挙げられる。
基材材料として合成樹脂を用いる場合には、プラズマ処理等により活性水素基を有する化合物をグラフトする等の処理を行うことにより、アルコキシシラン化合物を用いることができる場合がある。
(以上工程C)
工程Dでは、エポキシ化基材13の表面に銀ペーストを塗布し、図3に示すような塗膜14を形成する。
銀ペーストの塗布には、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の任意の方法により行うことができる。
形成される塗膜14の膜厚は、銀ペーストの粘度、溶媒含量、原料として用いた銀微粒子の粒径、塗布回数等によって適宜制御することができる。
(以上工程D)
工程Eでは、塗膜14を加熱し、エポキシ化銀微粒子11及びエポキシ化基材13上のエポキシ基と2−メチルイミダゾール12との架橋反応により塗膜14を硬化させ、電極配線10を製造する。
加熱温度は、50〜200℃が好ましい。加熱温度が50℃未満だと、架橋反応の進行に長時間を要し、200℃を上回ると、塗膜14の表面で架橋反応が迅速に進行することにより、閉じ込められた溶媒が揮発しにくくなる等の理由により、均一な電極配線10が得られない。
なお、本実施の形態においてはエポキシ化基材を用いたが、工程Cを省略してエポキシ基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が被覆されていない基材を用いてもよい。
工程Eにおいて、架橋反応により形成される結合は、共有結合、イオン結合、配位結合、及び分子間力による結合のいずれであってもよいが、形成される電極配線10の強度及び銀ペーストや塗膜14の形成の容易さ等を考慮すると、塗膜14の形成後に、加熱又は光等のエネルギー線の照射により形成される共有結合が好ましい。
加熱により形成される共有結合の具体例としては、エポキシ基とアミノ基又はイミノ基との反応(化8参照)により形成されるN−CHCH(OH)結合、イソシアネート基とアミノ基(又はイミノ基)との反応(化9参照)により形成されるNH−CONH結合等が挙げられる。
Figure 0005082057
Figure 0005082057
なお、上述したように、粒径が数nm〜数十nmの銀ナノ粒子を用いる場合には、銀ナノ粒子の焼結が進行する230℃程度の低温で加熱してもよい。
また、本実施の形態においては、熱反応性のエポキシ基及びアミノ基又はイミノ基を反応性基として含む膜化合物を用いたが、下記(41)〜(54)に示した光反応性基を含む膜化合物を用いることもできる。
(41)
CH≡C−C≡C(CH15SiCl
(42)
CH≡C−C≡C(CHSi(CH(CH15SiCl
(43)
CH≡C−C≡C(CHSi(CH(CHSiCl
(44)
C≡C−C≡C(CH15SiCl
(45)
C≡C−C≡C(CHSi(CH(CH15SiCl
(46)
C≡C−C≡C(CHSi(CH(CHSiCl
(47)
(C)(CHCO(C)O(CHOSi(OCH
(48)
(C)(CHCO(C)O(CHOSi(OC
(49)
(C)(CHCO(C)O(CHOSi(OCH
(50)
(C)(CHCO(C)O(CHOSi(OC
(51)
(C)CO(CH(C)O(CHOSi(OCH
(52)
(C)CO(CH(C)O(CHOSi(OC
(53)
(C)CO(CH(C)O(CHOSi(OCH
(54)
(C)CO(CH(C)O(CHOSi(OC
なお、上記(41)〜(54)において、RC≡C−C≡C(Rは、水素又はアルキル基を表す)、(C)CO(CH(C)及び(C)(CHCO(C)は、それぞれ、ジアセチレン基、4−カルコニル(chalconyl)基(C−CO−CH=CH−C−)(化10)及び4’−カルコニル基(C−CH=CH−CO−C−)(化11)を表す。
Figure 0005082057
Figure 0005082057
これらの光反応性基は、光照射により重合(ジアセチレン基の場合)或いは二量化(カルコニル基の場合)して共有結合を形成する。
また、上記の光反応性基以外に、例えば、光二量化により共有結合を形成するシンナモイル基(C−CH=CH−COO−)等を含む膜化合物を用いることもできる。
光照射に用いることができる光源としては、紫外領域に発光スペクトルを有する任意の光源を用いることができ、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、紫外線LED等が挙げられる。
(以上工程E)
このようにして得られた電極配線10は、0.1〜0.25×10S・cm−1程度の電気伝導度を有している。これは、バルク銀の電気伝導度(約0.6×10S・cm−1)にほぼ匹敵する極限の値である。電極配線10を形成しているエポキシ化銀微粒子11は、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23でその表面が被覆されているが、その厚さは高々数nmであり、導電性には殆ど影響を与えていないと考えられる。むしろ、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜23と2−メチルイミダゾール12との結合を介して、エポキシ化銀微粒子11同士が強固に結合していることが導電性に寄与していると考えられる。
電極配線10が用いられた電子部品の一例としては、積層セラミックスコンデンサの内部電極、多層基板におけるビア導体、タッチパネルにおける透明電極等が挙げられ、電子機器としては、これらの電子部品が用いられた任意の電子機器が挙げられる。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら制限されるものではない。本実施例においては、代表例として銀微粒子を用いた電極配線の製造について説明する。
(実施例1)
(1)エポキシ化銀微粒子の製造
銀微粒子(平均粒径500nm)を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(化12、信越化学工業株式会社製)0.99重量部、及びジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これをのヘキサメチルジシロキサン−ジメチルホルムアミド混合溶媒(1:1
v/v)に溶解し、反応液を調製した。
Figure 0005082057
このようにして得られた反応液中に銀微粒子を混合し、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物及びジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去すると、膜厚が1nm程度の3−グリシジルオキシプロピルシラン化合物の単分子膜で表面が被覆されたエポキシ化銀微粒子が得られた。
(2)銀ペーストの製造
(1)で製造したエポキシ化銀微粒子と、2−メチルイミダゾール7重量部を混合し、これにイソプロピルアルコール40重量部を加えた。得られた混合物を十分混合して銀ペーストを得た。
(3)エポキシ化基材の製造
基材を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(化12)0.99重量部、及びジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これをのヘキサメチルジシロキサン−ジメチルホルムアミド混合溶媒(1:1
v/v)に溶解し、反応液を調製した。
反応液を基材板の表面に塗布し、空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物及びジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去した。
(4)塗膜の形成、及び電極配線の形成
スクリーン印刷機を用いて、(2)で製造した銀ペーストを(3)で製造したエポキシ化基材上に塗布し、膜厚3μmの塗膜を形成した。
室温下でイソプロピルアルコールを蒸発させた後、基材及びその上に形成された塗膜を170℃で30分間加熱することにより、電極配線を形成した。
得られた電極配線は、エポキシ基と2−メチルイミダゾールとの架橋反応により形成された結合を介してエポキシ化基材の表面に固定されているので、耐剥離強度及び耐久性に優れていた。
また、電極配線について電気伝導度を測定したところ、約0.22×10S・cm−1という測定値を得た。
(実施例2)
(1)アミノ化銀微粒子の製造
銀微粒子(平均粒径100nm)を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(化13、信越化学工業株式会社製)0.99重量部、及び酢酸(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これをのヘキサメチルジシロキサン−ジメチルホルムアミド混合溶媒(1:1
v/v)に溶解し、反応液を調製した。
Figure 0005082057
このようにして得られた反応液中に銀微粒子を混合し、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物及び酢酸を除去した。
(2)銀ペーストの製造
(1)で製造したアミノ化銀微粒子と、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート9重量部を混合し、これにキシレン40重量部を加えた。得られた混合物を十分混合して銀ペーストを得た。
(3)アミノ化基板の製造
基板を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(化13)0.99重量部、及び酢酸(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これをのヘキサメチルジシロキサン−ジメチルホルムアミド混合溶媒(1:1
v/v)に溶解し、反応液を調製した。
反応液を基板の表面に塗布し、空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物及び酢酸を除去した。
(4)塗膜の形成、及び電極配線の形成
スクリーン印刷機を用いて、(2)で製造した銀ペーストを(3)で製造したアミノ化基板上に銀ペーストを塗布し、膜厚1.8μmの塗膜を形成した。
室温下でキシレンを蒸発させた後、アミノ化基板及び塗膜を170℃で30分間加熱することにより、電極配線を形成した。この配線は、基板の表面と共有結合しているため、曲げ応力を加えても剥離しなかった。
本発明の一実施の形態に係る配線の断面構造を模式的に表した説明図である。 同配線の製造方法において、エポキシ化銀微粒子を製造する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の銀微粒子の断面構造、(b)はエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜が形成された銀微粒子の断面構造をそれぞれ表す。 同配線の製造方法において、銀ペーストの塗膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図である。
10:電極配線、11:エポキシ化銀微粒子、12:2−メチルイミダゾール、13:エポキシ化基材、14:塗膜、21:銀微粒子、22:水酸基、23:膜化合物の単分子膜、31:基材、33:第2の膜化合物の単分子膜

Claims (19)

  1. 分子の一端に反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が被覆されている導電性微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤とを含み、バインダー樹脂を含まないことを特徴とする導電性ペースト。
  2. 請求項1記載の導電性ペーストにおいて、前記膜化合物はSi又はSを介して前記導電性微粒子の表面に共有結合していることを特徴とする導電性ペースト。
  3. 請求項1及び2のいずれか1項に記載の導電性ペーストにおいて、前記膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることを特徴とする導電性ペースト。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペーストにおいて、前記反応性基がエポキシ基を含む官能基であり、前記硬化剤がイミダゾール化合物及びメルカプトトリアゾール化合物のいずれかであることを特徴とする導電性ペースト。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペーストにおいて、前記反応性基がアミノ基又はイミノ基であり、前記硬化剤が2以上のイソシアネート基を有する化合物であることを特徴とする導電性ペースト。
  6. 反応性基及び表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を導電性微粒子と接触させ、前記表面結合基と前記導電性微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された反応性導電性微粒子を製造する工程Aと、前記反応性導電性微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤と、溶媒とを混合する工程Bとを含むことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
  7. 請求項6記載の導電性ペーストの製造方法において、前記工程Aでは、未反応の前記膜化合物は洗浄除去され、前記反応性導電性微粒子の表面で前記膜化合物が形成する被膜は、単分子膜であることを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
  8. 請求項6及び7のいずれか1項に記載の導電性ペーストの製造方法において、前記表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程Aは、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われることを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載の導電性ペーストの製造方法において、前記表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程Aは、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われることを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
  10. 反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された導電性微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤とを含み、バインダー樹脂を含まない導電性ペーストを、前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基を有する第2の膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された基材の表面に塗布し、前記反応性基及び前記第2の反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により硬化していることを特徴とする配線。
  11. 請求項10記載の配線において、前記膜化合物及び第2の膜化合物はそれぞれSi又はSを介して前記導電性微粒子及び前記基材の表面に共有結合していることを特徴とする配線。
  12. 請求項10及び11のいずれか1項に記載の配線において、前記反応性基及び前記第2の反応性基がエポキシ基を含む官能基であり、前記硬化剤がイミダゾール化合物及びメルカプトトリアゾール化合物のいずれかであることを特徴とする配線。
  13. 請求項10及び11のいずれか1項に記載の配線において、前記反応性基及び前記第2の反応性基がアミノ基又はイミノ基であり、前記硬化剤が2以上のイソシアネート基を有する化合物であることを特徴とする配線。
  14. 請求項10〜13のいずれか1項に記載の配線において、前記膜化合物及び第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることを特徴とする配線。
  15. 反応性基及び表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を導電性微粒子と接触させ、前記表面結合基と前記導電性微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が被覆された反応性導電性微粒子を製造する工程Aと、前記反応性導電性微粒子、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する硬化剤、及び溶媒を混合して導電性ペーストを製造する工程Bと、前記架橋反応基と反応して結合を形成する第2の反応性基及び第2の表面結合基を分子の両端にそれぞれ有する第2の膜化合物を基材と接触させ、前記第2の表面結合基と前記基材の表面との間で結合を形成させ、前記第2の膜化合物で表面が被覆された反応性基材を製造する工程Cと、前記反応性基材の表面に前記導電性ペーストの塗膜を形成する工程Dと、前記塗膜を加熱して、前記反応性基と前記架橋反応基との反応、及び前記第2の反応性基と前記架橋反応基との反応により共有結合を形成させて前記塗膜を硬化させる工程Eとを含むことを特徴とする配線の製造方法。
  16. 請求項15記載の配線の製造方法において、前記表面結合基及び前記第2の表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程A及び工程Cは、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われることを特徴とする配線の製造方法。
  17. 請求項15及び16のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、前記表面結合基及び前記第2の表面結合基はアルコキシシリル基であり、前記工程A及び工程Cは、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は2以上の化合物の存在下で行われることを特徴とする配線の製造方法。
  18. 請求項10〜14のいずれか1項に記載の配線を用いた電子部品。
  19. 請求項10〜14のいずれか1項に記載の配線を用いた電子機器。
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