JP5076720B2 - スピーカユニット組立て治具、及び組立て方法 - Google Patents

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Description

本発明は、振動系部品の前面側に磁気回路部品を組み付けた構造のスピーカユニットを組み立てる際に使用する組立て治具、及びこの治具を用いた組立て方法に関するものである。
スピーカは、磁気回路部品(ヨーク、プレート、マグネット)に振動系部品(ボイスコイル、ダンパー、振動板)を組み付けた構造のスピーカユニットを、筐体によって支持した構成を備えている。
図12は従来のコーン型のスピーカユニットの構成を示す縦断面図であり、フレーム100の背面側の規定位置に磁気回路部品101を構成するヨーク102、プレート103、マグネット104を順次組み付けると共に、フレーム100の前面側の規定位置に振動系部品111を構成するボイスコイル112、ダンパー113、コーン形状の振動板114を順次組み付けた構造を備えている。また、このようなスピーカユニットの組付けに際しては、フレーム100をベースとして磁気回路部品101、ボイスコイル112、ダンパー113、振動板114を順次取付けることで行われていた。そして各種部品の取付け位置については、フレームに各種部品の設置位置における位置決め部を設けることで、簡易な組み付け工程で正確な位置決めを可能としていた。
より具体的には、フレーム100に予め組付けられたヨーク102、マグネット104、並びにプレート103から構成される磁気回路部品101を取り付け、ヨーク102とプレート103との間に形成される環状スリットS内に薄肉円筒状のボイスコイル112の一端部を差し込んでから、ダンパー113をフレーム100のダンパー座100aに着座させて接着し、続いて振動板114をフレームの貼り台100bに載せて接着する。振動系部品111のうちダンパー113や振動板114は、夫々フレーム100の規定位置に組み付けることによって高さ位置を確定させることができる。
なお、幅が極めて狭い環状スリットS内に位置精度よく(適正なギャップクリアランスを確保しつつ)薄肉のボイスコイルの端部を差し込み固定する作業は容易ではないため、筒状のボイスコイル支持治具をボイスコイル112の内径側に嵌合させて支持した上で、この専用治具を利用してボイスコイル112を効率よく環状スリット内に差し込む作業を行っている。このボイスコイル挿着作業では、環状スリットSの位置を目視確認しながら、専用治具を所定位置に設置してボイスコイル112の先端部を環状スリット内に差し込むことができるため比較的容易であり、環状スリット内におけるボイスコイルの傾き、位置ずれを防止し易い。
次に、図13は磁気回路部品を振動系部品の前面中央部側に配置することによって薄型化を図ったタイプのスピーカユニットの構成を示す断面図である。このスピーカユニットは、フレーム100の前面側にボイスコイル112、ダンパー113、及び振動板114を順次組み付けると共に、フレーム100に固定された支柱部材115によって中心部を支持されたボイスコイル112の先端部を磁気回路部品101の背面に設けた環状スリットS内に差込み固定した構成を備えている。
このように振動系部品111の前面中央部に磁気回路部品101を配置したタイプのスピーカユニットにあっては、先に説明した従来のコーン型スピーカのようにフレームをベースとして組立てを行うことは非常に困難である。
即ち、図12のスピーカと同様の手順によって、フレーム100に対してダンパー113や振動板114を位置決めする手順を先行させて組立てる工程を実施する場合、最終工程でヨーク102、プレート103、マグネット104からなる磁気回路部品101を組み付けることになる。この場合、既にフレーム100に固定されているダンパー113や振動板114のセンター位置に接着されているボイスコイル112の先端部に磁気回路ヨーク102とプレート103間に形成されている環状スリットSを位置合わせして矢印の方向に挿入することになるが、両者をガイドする部材が無く、しかも環状スリットの位置を目視確認しながらの挿入作業にはならないために、環状スリットSとボイスコイルとの間のギャップクリアランスを均一に保つことは困難である。そして、正確なギャップクリアランスが確保できていない状態でボイスコイルを駆動すると音の歪の原因となり、更には、ボイスコイルが磁気回路や支柱部材に接触してしまうことで異音が発生したり、大振幅時には破壊に至る可能性がある。
特開平09−009388号公報、特開2003−250194公報、特開2004−247825公報には、振動系部品の前面中央部に磁気回路部品を配置したタイプのスピーカユニットが開示されているが、フレーム側に予め固定されたボイスコイルの端部に磁気回路部品側の環状スリットを正確な位置関係で挿入する方法については一切開示されていない。
特開平09−009388号公報 特開2003−250194公報 特開2004−247825公報
以上のように振動系部品の前面側中央部に磁気回路部品を組み付けた構造のスピーカユニットを組み立てる際には、ボイスコイル端部を磁気回路部品側の環状スリット内に正確な位置関係で挿入することが困難であり、正確なギャップクリアランスが確保されていない場合、スピーカユニットの駆動時にボイスコイルの擦れにより異音が発生したり、大振幅時には破壊に至る可能性がある。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、振動系部品の前面側中央部に磁気回路部品を組み付けた構造のスピーカユニットを組み立てる際に、組立て治具側に予め固定された磁気回路部品側の環状スリット内にボイスコイルの端部を正確な位置関係で挿入することを可能にして組付け精度を高めるようにしたスピーカユニット組立て治具、及び組立て方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係るスピーカユニット組立て治具は、上面中央部に磁気回路部品を保持する磁気回路部品固定部を有し、且つ該磁気回路部品固定部の外径側に環状の振動板取付面を有し、且つ該振動板取付面の外径側に張り出した環状張出し面と、を有した振動板取付治具と、前記振動板取付治具の前記環状張出し面に設けた位置決め部と係合する被位置決め部を外周上面に有すると共に前記振動板取付面に取り付けられた振動板の背面とボイスコイル支持治具とを露出させる開口部を有し、且つ該開口部の内周縁にダンパー支持部を有した環状のダンパー取付け治具と、を備え、前記ダンパー取付け治具は、分離可能な複数の分割片から構成されることを特徴とする。
振動板取付治具の上面中央部に設けた固定部によって磁気回路部品を固定して環状スリットが露出されるようにしたので、環状スリット(ギャップ)の位置を目視確認しながらボイスコイル端部を正確に挿入することが可能となる。組立て治具をガイドとして、他の部品である振動板、ダンパー等を順次正確に組み付けることが可能となり、振動板およびダンパーの高さ位置を正確化することができる。
ダンパー取付け治具は互いに分離自在な複数の分割片から構成されており、振動板取付治具に設けた位置決め部により位置決め可能であるため、ダンパーを正確に位置出ししてボイスコイルに接着することが可能となる。特に、ダンパー取付け治具が分離可能な複数の分割片から構成されているため、ダンパーとボイスコイルの接着後にダンパー取付け治具を容易に外すことができる。
請求項2の発明は、請求項1において、前記複数の分割片は、2つの半環状片であることを特徴とする。
スピーカが通常の外径を有する場合には、2つの半環状片から構成することにより、取扱性を高めることができる。一方、スピーカが大口径であるような場合、ダンパー取付け治具を3個もしくはそれ以上の分割片から構成することで各分割片を取り扱いやすい大きさとすることができ、ダンパー取付け治具を取り除く工程での作業性が向上する。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記振動板取付面は、コーン形状の前記振動板の一面を密着支持するコーン形状であることを特徴とする。
振動板は振動板取付面に密着した状態となるため、他の部品の組付け工程中に加わる外力によって振動板が浮き沈みして変形することがなくなる。
請求項4の発明は、請求項1、2又は3において、前記振動板取付治具は、前記振動板取付面と前記環状張出し面との間に、前記振動板取付面に添設された振動板の最外周縁にあるエッジロール部を受け入れる環状凹部を備えていることを特徴とする。
組立て工程中に、振動板のエッジロール部は環状凹部内に入り込んでいるので、外力から保護される。
請求項5の発明に係るスピーカユニットの組立て方法は、請求項1乃至4の何れか一項に記載のスピーカユニット組立て治具を用いてスピーカユニットを組み立てる方法であって、前記磁気回路部品固定部により保持された磁気回路部品に設けた環状スリット内に軸方向端部を嵌合する薄肉円筒状のボイスコイルの内径部に嵌合して支持すると共に該ボイスコイルを前記環状スリット内に嵌合させた状態で前記振動板取付治具中央部から突出するボイスコイル支持治具を用意する工程と、前記振動板取付治具の前記磁気回路部品固定部内に前記磁気回路部品を保持する工程と、前記ボイスコイル支持治具により内径部を支持された前記ボイスコイルの軸方向前端部を前記磁気回路部品の環状スリット内に嵌合させる工程と、前記振動板取付面に前記振動板を取り付ける工程と、前記位置決め部と被位置決め部とを整合させつつ前記ダンパー取付け治具を構成する複数の分割片を前記環状張出し面に組み付ける工程と、前記ダンパー取付け治具のダンパー支持部上にダンパー外周縁を支持させた状態で該ダンパー内周部を前記ボイスコイルと接着固定する工程と、前記ダンパー取付け治具を構成する各分割片を前記振動板取付治具から取り外す工程と、前記振動板取付治具上の前記振動板及び前記ダンパーに対して略環状のフレームを組み付け固定する工程と、前記フレームの中央開口部内に位置する前記ボイスコイル支持治具を除去してから前記フレームの中央部に対して支柱部材を組み付け、前記支柱部材と前記磁気回路部品とを固定する工程と、を備えたことを特徴とする。
請求項6の発明は、前記振動板取付治具上の前記振動板及び前記ダンパーに対して略環状のフレームを組み付け固定する工程において、前記振動板取付治具の前記環状張出し面を、前記フレームを位置決めするフレーム位置決め手段として利用することを特徴とする。
振動板取付治具をフレーム組付け時のガイド、基準とすることにより、フレーム組付け作業性、組付け精度を高めることができる。
本発明では、磁気回路部品固定部、振動板取付面、及び環状張出し面を有した振動板取付治具と、環状張出し面に設けた位置決め部と係合する被位置決め部を外周前面に有すると共に振動板取付面に取り付けられた振動板の一部を露出させる開口部を有し、且つ該開口部の内周縁にダンパー支持部を有した環状のダンパー取付け治具と、を備え、ダンパー取付け治具は、分離可能な複数の分割片から構成される。
このため、振動系部品の前面側中央部に磁気回路部品を組み付けた構造のスピーカユニットを組み立てる際に、組立て治具側に予め固定された磁気回路部品側の環状スリット内にボイスコイルの端部を正確な位置関係で挿入することを可能にして組付け精度を高めることができる。
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)は本発明の組立て治具によって組み立てられたスピーカユニットの構成を示す斜視図、(b)は分解斜視図、(c)は正面図、(d)はA−A断面図である。
スピーカユニット1は、フレーム2の前面側に振動系部品10を構成する薄肉円筒状のボイスコイル11、環状のダンパー13、及び振動板(コーン紙)14を組み付けると共に、フレーム2の開口部内に背面側から差込み固定された支柱部材30によって中心部を支持されたボイスコイル11の先端部を磁気回路部品20の背面に設けた環状スリットS内に差込み固定した構成を備えている。
磁気回路部品20は、ヨーク21、マグネット22、及びプレート23から概略構成されている。図1(d)に示すように中空で後端が開放したヨーク21は、その前面及び外周の一部をヨークカバー21aにより覆われると共に、背面側にはヨークアダプタ21bが配置されている。ヨーク21の前面とヨークカバー21aの内面との間にはプロテクタ21cを配置する。ヨークアダプタ21bの背面側にはマグネット22、プレート23が順次積層して配置される。プレート23とヨークの後端開放部内壁との間には、ボイスコイル11の一端を挿入するための環状スリットSが形成されている。
磁気回路部品20は、ボイスコイル11を磁力線が横切るように磁界を発生させる。
フレーム2の中央部開口部内には背面側から支柱部材30の支柱部31が差し込まれ、支柱部31の外周によって内周面を支持された薄肉円筒状のボイスコイル11の先端部を磁気回路部品20の背面に形成された環状スリットS内に差し込んだ状態で、全ての磁気回路部品をネジ35によって支柱部31に螺着固定している。
支柱部材30は背面板32と、その前面中央部から突出した支柱部31とから構成され、支柱部31をフレーム2の中央部開口部内に差し込んだ状態で、背面板32をネジ36によってフレーム2に螺着固定される。
ダンパー13は、振動板14を弾性的に支持する手段であり、その前面外周部を、ダンパーリング13aを介して振動板14の外周フランジ部14aの背面に添設され、フレーム2に対してネジ37によって固定される。
図示しないスピーカ端子から入力された電気信号がボイスコイル11に流れると、ボイスコイル11を前後方向(軸方向)に移動させる電磁力が発生し、この力によって振動板14が振動し、電気信号が音波に変換される。
次に、図2(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係るスピーカユニット組立て治具を構成する振動板取付治具の構成を示す斜視図、前面図、及びB−B縦断面図であり、図3(a)(b)(c)(d)及び(e)はスピーカユニット組立て治具を構成するボイスコイル支持治具の構成を示す斜視図、正面図、平面図、底面図、及びD−D縦断面図であり、図4(a)(b)(c)及び(d)は本発明のスピーカユニット組立て治具を構成するボイスコイル支持治具の構成を示す分解斜視図、前面図、C−C縦断面図、及び背面図である。
スピーカユニット組立て治具50は、振動板取付治具51と、ボイスコイル支持治具60と、ダンパー取付け治具70と、を備えている。
振動板取付治具51は、図2に示すように、底面(背面)が定置に適したフラット面となっており、底面と反対側の面(上面)に同心円状に配置された環状の凹凸部を有した円板体である。上面中央部には、磁気回路部品20を嵌合させて保持する凹状の磁気回路部品固定部52を有した突部53が突設され、突部53の上面であって磁気回路部品固定部52の外径側には環状且つテーパ状(コーン形状)の振動板取付面54を有し、更に振動板取付面54の外径側(最外周部)には環状張出し面55が連設されている。振動板取付面54は、振動板14の前面を密着支持するように構成される。環状張出し面55の上面には、環状溝、及び環状突部から成る位置決め部56が形成されている。突部53と環状張出し面55との間には環状凹部58を設け、振動板取付面54に添設された振動板14の最外周縁にあるエッジロール部14aの逃げ部として利用する。
振動板取付治具51は、硬質樹脂、セラミック等の一定以上の剛性を有した材料から構成する。
磁気回路部品固定部52は、内奥部に小径凹所52aを有し、この小径凹所52a内に磁気回路部品20の底部を嵌合支持できるように寸法設定される。磁気回路部品20を小径凹所52a内に嵌合させた際には、磁気回路部品20の端面に形成された環状スリットSが上面側を向くこととなる。
ボイスコイル支持治具60は、図3に示すように、大径部61と小径部62を有すると共に、軸方向に貫通する一本のスリット63を有した中空円筒体であり、スリット63の存在によってボイスコイル支持治具の外径寸法を弾性的に伸縮できるように構成されている。大径部61はその外面によってボイスコイル11の一端部内面を弾性的に支持することにより、ボイスコイルの他端部を大径部61から軸方向外側へ突出させるように構成されている。このボイスコイル支持治具60により支持されたボイスコイル11の他端部(軸方向前端部)を磁気回路部品固定部51内に嵌合支持された磁気回路部品20の環状スリットS内に差込むこととなる。ボイスコイルの他端部を環状スリットS内に挿入した状態では、振動板取付治具中央部からボイスコイル支持治具の小径部62が突出した状態となる。尚、ボイスコイル11は磁気回路部品20に対しては浮いた状態であり、接続されていない。そのため、この段階ではボイスコイル11はどこにも接続されていないため、ボイスコイル支持治具60を取り外すことはできない。そして、振動板取付治具51の中央部からボイスコイル支持治具の小径部62が突出した状態となることで、後述する組付け工程の最終段階(図10、図11)において、ボイスコイル支持治具を取り外す作業性を高めることができる。ボイスコイル支持治具60は、樹脂、金属等から構成される。
環状のダンパー取付け治具70は、図4に示すように、振動板取付治具51の環状張出し面55に設けた位置決め部56と係合する被位置決め部72を外周前面に有すると共に振動板取付面54に取り付けられた振動板14の一部とボイスコイル支持治具60とを露出させる開口部73を有し、開口部73の内周縁に段差状のダンパー支持部74を有する。ダンパー取付け治具70は、2つの対称形状の半環状片(分割片)71から成り、組付け、分割自在に構成されている。
なお、ダンパー取付け治具70を、3個以上の分割片から構成してもよい。このダンパー取付け治具70は、後に詳細に説明するが、ダンパーを所定位置に取付けた後に、振動板取付け治具から取り除く工程がある。例えば、スピーカが大口径であるような場合、ダンパー取付け治具70を3個もしくはそれ以上の分割片から構成することで各分割片を取り扱いやすい大きさとすることができ、ダンパー取付け治具を取り除く工程での作業性が向上する。
図5乃至図11は本発明の一実施形態に係るスピーカユニット組立て治具50を用いてスピーカユニット1を組み立てる方法を説明する図である。
まず、図5は、振動板取付治具51の磁気回路部品固定部52(小径凹所52a)内に磁気回路部品20の一端部を嵌合する磁気回路部品固定工程を示している。固定部52内に着座した磁気回路部品20の前面には環状スリットSが位置している。
次に、図6(a)(b)に示したボイスコイル挿着工程では、ボイスコイル支持治具60の大径部61に嵌着したボイスコイル11の他端部を、図5に示した磁気回路部品の環状スリットS内に差し込む。この際、作業者は、ボイスコイル支持治具60の小径部62を把持しつつ、環状スリットSの位置を目視確認しながら、環状スリットS内に治具60の端部から突出したボイスコイル11の他端部を正確に挿着することができる。このため、環状スリットSとボイスコイル端部との間のギャップクリアランスを均一に保つことができるようになり、スピーカユニットの駆動時にボイスコイルの擦れによる異音発生や、大振幅時における破壊を効果的に防止することが可能となる。
ボイスコイルの組付け後に、振動板取付治具51のテーパ状(コーン形状)の振動板取付面54に振動板14の一面が密着するように振動板14を載せて、振動板14の内周部とボイスコイル11の外周部に接着剤を塗布して接着する。このように振動板組立て治具には振動板の曲面を支持する曲面状の振動板取付面54を有しているため、振動板取付治具51に振動板14を取り付けた際に振動板に外力がかかっても沈み込みや、浮き上がることが無くなり、振動板の組付け位置を安定して確保することができる。
次に、図7(a)(b)では、振動板14を組み付けた状態にある振動板取付治具51の環状張出し面55の上面周縁に設けた位置決め部56に対して、ダンパー取付け治具70を構成する2つの半環状片71に設けた被位置決め部72が整合状態で係合するように順次組み付けてゆく。この例では、位置決め部56は環状位置決め溝から成り、この位置決め溝内に凸条部から成る被位置決め部72を嵌合させることによって、振動板取付治具51とダンパー取付け治具70との位置精度を確保しつつ両者を結合させる。
図8はダンパーを組み付けた状態を示しており、ダンパー取付け治具70のダンパー支持部74上にダンパー13の外周縁を支持させた状態でダンパー内周部をボイスコイル11の外周面と接着固定する。
図9は、ダンパー13とボイスコイル11との接着が完了した時点以降に、ダンパー取付け治具を構成する各半環状片71を振動板取付治具から取り外した状態を示している。この状態では、フレーム2の取付けが可能となっている。
図10はフレーム2をダンパー13の背面側に組み付けてネジ止めする状態を示しており、ダンパー13に予め形成されているネジ穴13bとフレーム2に形成されている取付け穴2aとを整合させた状態でネジ36を締結する。フレーム2は振動板取付治具51の環状張出し面55(フレーム位置決め手段)により組付け位置を正確に確定できるので、先に組み付けられた振動系部品に対する組付け精度を高めることができる。
図11ではフレームの中央開口部内に位置するボイスコイル支持治具60を除去してから、フレームの中央開口部内に対して支柱部材30を組み付ける。次いで、フレーム2の中央部開口部内に背面側から支柱部材30を差し込んだ状態で、磁気回路部品全体をネジ35によって支柱部31に螺着固定する。
以上のように本発明によれば、振動系部品10の前面側中央部に磁気回路部品20を組み付けた構造のスピーカユニットを組み立てる際に、磁気回路部品20を予め組立て治具50に固定してから、振動系部品10を順次組み付けてゆくようにしたので、磁気回路部品側の環状スリット内にボイスコイルの端部を正確な位置関係で挿入することが可能となり、組付け精度を高めることができる。つまり、図11に示したタイプのスピーカユニットと同様に、磁気回路部品の環状スリット内にボイスコイルを挿入して組立てる工程を実施できるので、ギャップクリアランスが正確に保たれる。
即ち、本発明では、ダンパーとボイスコイルとを接着する際に専用の治具を用いて組立てるため、作業性を高めることができる。特に、振動板取付治具51の上面中央部に設けた固定部52によって磁気回路部品20を固定して環状スリットが露出されるようにしたので、環状スリット(ギャップ)の位置を目視確認しながらボイスコイル端部を正確に挿入することが可能となる。治具をガイドとして、他の部品である振動板、ダンパー等を順次正確に組み付けることが可能となる。そして、振動板およびダンパーの高さ位置を正確化することができる。
ダンパー取付け治具70は互いに分離自在な2つの半環状片71を用いて構成されており、振動板取付治具51に設けた位置決め部56により位置決め可能であるため、ダンパー13を正確に位置出ししてボイスコイルに接着することが可能となる。特に、ダンパー取付け治具70が分離可能な2つのピースから構成されているため、ダンパーとボイスコイルの接着後にダンパー取付け治具を容易に外すことができる。
磁気回路部品20に対して振動系部品10を組み付けた後で、フレームを組み付けて各部品の位置関係を確定し、ボイスコイル支持治具を取り外してから、支柱部材を組み付けることによりスピーカユニットの組み付けが完了する。
(a)は本発明の組立て治具によって組み立てられたスピーカユニットの構成を示す斜視図、(b)は分解斜視図、(c)は正面図、(d)はA−A断面図である。 (a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係るスピーカユニット組立て治具を構成する振動板取付治具の構成を示す斜視図、前面図、及びB−B縦断面図である。 (a)(b)(c)(d)及び(e)はスピーカユニット組立て治具を構成するボイスコイル支持治具の構成を示す斜視図、正面図、平面図、底面図、及びD−D縦断面図である。 (a)(b)(c)及び(d)は本発明のスピーカユニット組立て治具を構成するダンパー取付け治具の構成を示す分解斜視図、前面図、C−C縦断面図、及び背面図である。 本発明の一実施形態に係るスピーカユニット組立て治具を用いてスピーカユニットを組み立てる方法(磁気回路部品固定工程)を説明する図である。 (a)及び(b)はボイスコイル挿着工程を示す図である。 (a)及び(b)はダンパー取付け治具を組み付ける手順を示す図である。 ダンパーを組み付けた状態を示す図である。 ダンパーとボイスコイルとの接着が完了した時点以降に、各半環状片を振動板取付治具から取り外した状態を示す図である。 フレームをダンパーの背面側に組み付けてネジ止めする状態を示す図である。 支柱部材を組み付ける手順を示す図である。 従来のコーン型のスピーカユニットの構成を示す縦断面図である。 磁気回路部品を振動系部品の前面中央部側に配置することによって薄型化を図ったタイプのスピーカユニットの構成を示す断面図である。
符号の説明
1…スピーカユニット、2…フレーム、2a…穴、10…振動系部品、11…ボイスコイル、13…ダンパー、13a…ダンパーリング、13b…ネジ穴、14…振動板、14a…エッジロール部(外周フランジ部)、20…磁気回路部品、21…ヨーク、21a…ヨークカバー、21b…ヨークアダプタ、21c…プロテクタ、22…マグネット、23…プレート、30…支柱部材、31…支柱部、32…背面板、35…ネジ、36…ネジ、37…ネジ、50…スピーカユニット組立て治具、51…磁気回路部品固定部、51…振動板取付治具、52…固定部、52…磁気回路部品固定部、52a…小径凹所、53…突部、54…振動板取付面、58…環状凹部、60…ボイスコイル支持治具、61…大径部、62…小径部、63…スリット、70…ダンパー取付け治具、71…分割片(半環状片)、73…開口部、74…ダンパー支持部。

Claims (6)

  1. 上面中央部に磁気回路部品を保持する磁気回路部品固定部を有し、且つ該磁気回路部品固定部の外径側に環状の振動板取付面を有し、且つ該振動板取付面の外径側に張り出した環状張出し面と、を有した振動板取付治具と、
    前記振動板取付治具の前記環状張出し面に設けた位置決め部と係合する被位置決め部を外周上面に有すると共に前記振動板取付面に取り付けられた振動板の背面とボイスコイル支持治具とを露出させる開口部を有し、且つ該開口部の内周縁にダンパー支持部を有した環状のダンパー取付け治具と、を備え、
    前記ダンパー取付け治具は、分離可能な複数の分割片から構成されることを特徴とするスピーカユニット組立て治具。
  2. 前記複数の分割片は、2つの半環状片であることを特徴とする請求項1に記載のスピーカユニット組立て治具。
  3. 前記振動板取付面は、コーン形状の前記振動板の一面を密着支持するコーン形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカユニット組立て治具。
  4. 前記振動板取付治具は、前記振動板取付面と前記環状張出し面との間に、前記振動板取付面に添設された振動板の最外周縁にあるエッジロール部を受け入れる環状凹部を備えていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のスピーカユニット組立て治具。
  5. 請求項1乃至4の何れか一項に記載のスピーカユニット組立て治具を用いてスピーカユニットを組み立てる方法であって、
    前記磁気回路部品固定部により保持された磁気回路部品に設けた環状スリット内に軸方向端部を嵌合する薄肉円筒状のボイスコイルの内径部に嵌合して支持すると共に該ボイスコイルを前記環状スリット内に嵌合させた状態で前記振動板取付治具中央部から突出するボイスコイル支持治具を用意する工程と、
    前記振動板取付治具の前記磁気回路部品固定部内に前記磁気回路部品を保持する工程と、
    前記ボイスコイル支持治具により内径部を支持された前記ボイスコイルの軸方向前端部を前記磁気回路部品の環状スリット内に嵌合させる工程と、
    前記振動板取付面に前記振動板を取り付ける工程と、
    前記位置決め部と被位置決め部とを整合させつつ前記ダンパー取付け治具を構成する複数の分割片を前記環状張出し面に組み付ける工程と、
    前記ダンパー取付け治具のダンパー支持部上にダンパーの外周縁を支持させた状態で該ダンパー内周部を前記ボイスコイルと接着固定する工程と、
    前記ダンパー取付け治具を構成する各分割片を前記振動板取付治具から取り外す工程と、
    前記振動板取付治具上の前記振動板及び前記ダンパーに対して略環状のフレームを組み付け固定する工程と、
    前記フレームの中央開口部内に位置する前記ボイスコイル支持治具を除去してから前記フレームの中央部に対して支柱部材を組み付け、前記支柱部材と前記磁気回路部品とを固定する工程と、
    を備えたことを特徴とするスピーカユニットの組立て方法。
  6. 前記振動板取付治具上の前記振動板及び前記ダンパーに対して略環状のフレームを組み付け固定する工程において、
    前記振動板取付治具の前記環状張出し面を、前記フレームを位置決めするフレーム位置決め手段として利用することを特徴とする請求項5に記載のスピーカユニットの組立て方法。
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