JP5076609B2 - Mn−Cu系制振合金及びその製造方法 - Google Patents

Mn−Cu系制振合金及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Mn−Cu系制振合金及びその製造方法に関し、更に詳しくは、加工性及び制振特性に優れたMn−Cu系制振合金及びその製造方法に関する。
制振合金は、外部からの振動エネルギーを内部摩擦によって熱に変換することにより振動を吸収する合金であり、その制振機能により、複合型(例えば、片状黒鉛鋳鉄)、強磁性型(例えば、Fe−Cr合金)、転位型(例えば、Mg−Zr合金)、及び、双晶型(例えば、Mn−Cu合金)に分類される。
双晶型に分類されるMn−Cu系制振合金は、双晶の運動により振動を吸収し、高い減衰能を発揮する。この双晶は、Mn−Cu系合金をオーステナイト(γ)相領域から徐冷することによって形成される。Mn−Cu系制振合金を得るにはこの熱処理が欠かせないが、熱処理方法によって制振特性に違いが出るため、より良い制振特性を得るために種々の熱処理方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、マンガン基双晶型制振合金を800〜1100℃で加熱した後、250℃〜475℃の温度範囲に入るまで0.85〜1.65℃/分で定速徐冷し(γ相領域から定速徐冷)、更に10℃/分以上で急冷するマンガン基双晶型制振合金の熱処理方法が開示されている。
特開2005−023362
しかしながら、特許文献1に記載のMn−Cu系合金は、高周波誘導加熱炉を用いて、アルゴン雰囲気下で鋼塊(Mn:bal.、Cu:20at%、Ni:4at%、Fe:2at%)を作製し、熱間鍛造、熱間圧延及び冷間圧延を経て半製品(棒材、板材等)とし、その後で、上記熱処理(すなわち、800〜1100℃で加熱した後、250℃〜475℃の温度範囲に入るまで0.85〜1.65℃/分で定速徐冷し(γ相領域から定速徐冷)、更に10℃/分以上で急冷する熱処理)を行うものである。
このように、鋳込み後の鋼塊を熱間鍛造等の加工により半製品(棒材、板材等)とする場合、MnとCuのマクロ偏析が存在するため、加工の際、内部には不均一な応力が発生し、割れ(特に表面への)が極めて発生しやすいという問題があった。更に、鋳込み後の鋼塊は、MnとCuのマクロ偏析が大きいため、熱間鍛造等の加工による割れ発生が顕著となり、歩留まり低下の要因になるという問題もあった。また、MnとCuのマクロ偏析が大きいと、溶融開始温度が900℃〜1000℃以上に達するMn−Cu組成比(濃度比率)が局所的に存在し、必然的に熱間鍛造ができる温度範囲が狭くなり、熱間加工の際に割れが発生しやすいという問題があった。
更に、鋳込み後の鋼塊は、結晶粒が十分に微細化されておらず、強度が低く、割れ発生の原因になるという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工時における割れ発生が抑制され、良好な制振特性が得られるMn−Cu系制振合金及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係るMn−Cu系制振合金は、Mn:70〜75at%、
Cu:15〜25at%、
Ni:2〜8at%、
Fe:1〜3at%を含み、
更に、Ca:0.001〜0.007at%又はMg:0.005〜0.23at%を含み、
残部が不可避的不純物からなることを要旨とする。この場合に、更に、Al:2〜5at%を含むものでもよい。
上記課題を解決するために、本発明に係るMn−Cu系制振合金の製造方法は、
Mn:70〜75at%、
Cu:15〜25at%、
Ni:2〜8at%、
Fe:1〜3at%を含み、更に、Ca:0.001〜0.007at%又はMg:0.005〜0.23at%を含み、残部が不可避的不純物からなるMn−Cu系合金の鋼塊を800℃以上固相線温度以下の固溶化温度に加熱し、前記固溶化温度で保持した後、空冷以上の冷却速度で冷却する固溶化処理工程と、
前記固溶化処理工程の後に、前記合金を最終製品形状又はこれより大きい形状まで加工する加工工程と、
前記加工工程の後に、前記合金を800℃以上固相線温度以下の焼鈍温度に加熱し、前記焼鈍温度で0.5時間以上8時間以下保持した後、前記合金の温度が250℃〜400℃の範囲のいずれかに入るまで、0.85〜1.65℃/分で定速徐冷する高温焼鈍工程と、
前記高温焼鈍工程の後に、前記合金を10℃/分以上で冷却する急冷工程とを備えたことを要旨とする。前記固溶化処理工程は、前記固溶化温度での保持時間が8時間以上であることが望ましい。尚、前記Mn−Cu系合金は、更に、Al:2〜5at%を含むものでもよい。
本発明に係るMn−Cu系制振合金は、上記構成を備えたものであるから、鋼塊にした後の結晶粒の微細化が促進され、これにより、合金強度が高まるため、加工時における割れ発生が抑制される。また、本発明に係るMn−Cu系制振合金は、上記構成を備えたものであるから、適切な熱処理を行うことにより、Mn及びCuの偏析が低減されるため、加工時における不均一応力の発生が低減される。従って、より一層、加工時における割れ発生が抑制される。
本発明に係るMn−Cu系制振合金の製造方法によれば、所定の組成を備えたMn−Cu系合金の鋼塊が800℃以上固相線温度以下の固溶化温度に加熱され、その固溶化温度で保持された後、空冷以上の冷却速度で冷却されるため、MnとCuのマクロ偏析が低減されるとともに、結晶粒が微細化される。
従って、固溶化処理工程後の合金に熱間加工がなされても、不均一応力の発生による割れや、低強度に起因する割れの発生が抑制される。
高温焼鈍工程においては、加工された合金が800℃以上固相線温度以下の焼鈍温度に加熱され、その焼鈍温度で保持された後、合金の温度が250℃〜450℃の範囲のいずれかに入るまで、0.85〜1.65℃/分で定速徐冷されるため、αMn相の生成や熱膨張によるひずみを回避しつつ、十分な双晶が形成され、良好な制振特性が得られる。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
(組成及びその限定理由)
本発明の一実施形態に係るMn−Cu系制振合金は、γ相領域から冷却することによって形成される双晶の運動により振動を吸収する双晶型制振合金のうち、Mn−Cu−Ni−Fe系のものが好ましく、Cu:15〜25at%、Ni:2〜8at%、Fe:1〜3at%を含有し、更に、Ca:0.001〜0.007at%又はMg:0.005〜0.23at%を含有し、残部がMn及び不可避的不純物からなる。
本発明の一実施形態に係るMn−Cu系制振合金は、更に、Al:2〜5at%を含有してもよい。
(1)Cu:15〜25at%、Ni:2〜8at%及びFe:1〜3at%。
Mnをベースとして、この組成にすると後述する高温焼鈍工程を行うことにより双晶が形成され、良好な減衰特性が得られるためである。Cuを15〜25at%としたのは、成形加工性を高め、常温近傍に変態点を移動させるためである。Niを2〜8at%及びFe:1〜3at%としたのは、良好な減衰特性を得るためである。
(2)Ca:0.001〜0.007at%又はMg:0.005〜0.23at%。
Ca及びMgは、結晶粒の微細化、及び、その微細化によって強度を高めて、熱間加工時の割れを抑制するために含有させる。これらは、いずれか一方を含有させればよい。これらの効果を得るために、Caを0.001at%以上、Mgを0.005at%以上とした。一方、Ca又はMgの量が多すぎると、酸化物又は介在物が形成され加工性が悪化するとともに、特に過剰な介在物は、結晶粒界や双晶界面に析出し、双晶界面の移動が困難となり、減衰特性を劣化させる。また、Mgの場合、沸点が低いので量が多すぎるとスプラッシュが発生してしまう。そこで、これらを回避するために、Caを0.007at%以下、Mgを0.23at%以下とした。
(3)残部がMn及び不可避的不純物。
Mnは、制振材料として周知であり、本発明に係るMn−Cu系制振合金のベースである。具体的には、Mnは、70〜75at%である。
不可避的不純物には、C、O、N等がある。
(4)Al:2〜5at%
Alは、必要に応じて含有させればよく、含有させる場合には、2〜5at%含有させる。Alを2〜5at%としたのは、上記組成にAlをこの割合で添加すれば、剛性を高めつつ、良好な減衰特性が得られるためである。
(製造方法)
本発明の一実施形態に係るMn−Cu系制振合金は、鋳造工程、固溶化処理工程、加工工程、高温焼鈍工程、急冷工程を行うことにより製造される。
以下これらの各工程について説明する。
(1)鋳造工程は、Cu:15〜25at%を含み、更に、Ca:0.001〜0.007at%又はMg:0.005〜0.23at%を含み、残部がMn及び不可避的不純物からなるMn−Cu系合金を溶解・鋳造して鋼塊を得る工程である。
「Mn−Cu系合金」は、上記組成を備えたものであれば特に限定されず、後述する高温焼鈍工程においてγ相領域から冷却することによって双晶が形成されるものであればよく、更に、Ni:2〜8at%及びFe:1〜3at%を含むものや、更に、Ni:2〜8at%、Fe:1〜3at%及びAl:2〜5at%を含むものでもよい。
「鋼塊」は、所定の組成に配合され、溶解・鋳造されたものであればよく、加工の有無は問わない。
(2)固溶化処理工程は、上記(1)で得られた鋼塊を800℃以上固相線温度以下の固溶化温度に加熱し、その固溶化温度で保持した後、空冷以上の冷却速度で冷却する工程である。固溶化処理工程は、MnとCuのマクロ偏析を解消するために行う。
「固溶化温度に加熱する」のは、γ相単相となる温度にするためである。固溶化温度は、より短時間でMnとCuのマクロ偏析を解消するには高い方が好ましく、具体的には、800℃以上が好ましく、850℃以上が更に好ましく、870℃以上がより更に好ましい。一方、固溶化温度が高くなるほど結晶粒が粗大化し、固溶化温度が高すぎると液相が生成する。従って、固溶化温度は、固相線温度以下が好ましい。Cuを20±5at%程度含むMn−Cu系制振合金の固相線温度は、約1000℃であるため、具体的には、固溶化温度は、1000℃以下が好ましく、950℃以下が更に好ましく、925℃以下がより更に好ましい。
「固溶化温度で保持する」のは、MnとCuのマクロ偏析を解消するためである。また、Mg又はCaを含有させたことにより促進される結晶粒の微細化を図るためである。保持時間は、特に限定されないが、MnとCuのマクロ偏析を解消するには長い方が好ましい。MnとCuのマクロ偏析を解消するのは、(1)熱間加工時に内部に不均一な応力が発生して割れ発生の原因になったり、(2)Mn−Cu濃度比率が低融点(900℃)以下に達する個所が局所的に存在し、熱間鍛造ができる温度範囲が狭くなり、割れ発生の原因になるからである。そして、割れ発生は、歩留まり低下の要因にもなる。そこで、割れ発生を抑制するためには、固溶化温度での保持時間は、4時間以上が好ましく、8時間以上が更に好ましい。また、MnとCuのマクロ偏析を解消すれば損失係数を大きくすることができ、より高い制振特性が得られる。
「空冷以上の冷却速度で冷却する」のは、冷却速度が遅すぎると冷却時にαMn相が生成するのでこれを回避しつつ、冷却時のMnとCuのマクロ偏析を抑制するためである。
尚、「固溶化処理時の雰囲気」は、特に限定されないが、不活性雰囲気中(例えば、アルゴン雰囲気中)、還元雰囲気中(例えば、水素雰囲気中)、あるいは大気中のいずれであってもよい。大気中で固溶化処理を行うと、製造コストを低減できるという利点がある。大気中で固溶化処理を行うと、合金表面に酸化被膜が形成されるが、後述する加工工程の際に酸化被膜を除去すれば制振特性を劣化させることがない。
(3)加工工程は、上記(2)で固溶化処理された合金を最終製品形状又はこれより大きい形状まで加工する工程である。
「固溶化処理された合金を最終製品形状又はこれより大きい形状まで加工する」のは、所望の最終製品を得るために必要だからである。これにより、鋳造時における鋳造組織の破壊、鋳造欠陥の消滅、偏析の解消等の効果も得られる。この加工は、熱間鍛造又は熱間圧延等の熱間加工により行われ、合金は、最終製品又はそれより大きい所定の形状(例えば、棒材や板材)に加工される。この後、更に、冷間圧延等の冷間加工を行ってもよい。また、必要に応じて固溶化処理の際に合金表面に形成された酸化被膜の除去を行ってもよい。「最終製品形状より大きい形状」にするのは、後述する高温焼鈍工程の条件によっては、表面に酸化被膜が生成したり、寸法変化を生ずる場合があるため、精加工仕上げのための削り代を見込んでおくためである。
(4)高温焼鈍工程は、上記(3)で加工された合金を800℃以上固相線温度以下の焼鈍温度に加熱し、その焼鈍温度で保持した後、その合金の温度が250℃〜400℃の範囲のいずれかに入るまで、0.85〜1.65℃/分で定速徐冷する工程である。
「焼鈍温度に加熱し、その焼鈍温度で保持する」のは、合金をγ相状態にして、固溶化処理での冷却により生じたひずみを解消するためである。更に、固溶化処理で解消されなかったMnとCuのマクロ偏析を消滅させるためである。
従って、焼鈍温度は、800℃以上が好ましく、850℃以上が更に好ましく、870℃以上がより更に好ましい。できるだけ短時間でひずみや偏析を消滅させるには、焼鈍温度は高い方が好ましいが、焼鈍温度が高すぎると、結晶粒が粗大化し、材料が脆化する。更に温度が高い場合には、液相が生成してしまう。また、焼鈍温度が高くなるほど、合金表面からMnが揮発しやすくなる。従って、焼鈍温度は、固相線温度以下が好ましく、950℃以下が更に好ましく、925℃以下がより更に好ましい。
焼鈍温度での保持時間は、特に限定されないが、ひずみや偏析を消滅させるためには、0.5時間以上が好ましく、1時間以上が更に好ましい。一方、必要以上長く保持すると、合金表面からMnが蒸発する。従って、焼鈍温度での保持時間は、加工された合金に十分な削り代がある場合には、8時間以下が好ましく、4時間以下が更に好ましく、また、加工された合金の削り代が少ない場合には、4時間以下が好ましく、3時間以下が更に好ましい。加工された合金が最終製品形状に近くなるほど、焼鈍温度での保持時間を短くするとよい。
「その合金の温度が250℃〜400℃の範囲のいずれかに入るまで、0.85〜1.65℃/分で定速徐冷する」のは、定速で、かつ、この冷却速度でスピノーダル分解を起こす温度(400℃近傍)を通過させると、スピノーダル分解により双晶が形成され、これにより、制振特性が備えられるからである。一方、冷却速度が遅すぎると双晶形成に寄与しないαMn相が生成し、逆に、冷却速度が速すぎると双晶形成が不十分になる上、合金内部に熱膨張によるひずみが発生する。冷却速度にばらつきがあっても、同様である。従って、αMn相の生成を回避しつつ双晶を十分に形成させるには、定速徐冷速度は、0.85℃/分以上が好ましく、1.33℃/分以上が更に好ましい。また、熱膨張によるひずみを回避しつつ双晶を十分に形成させるには、定速徐冷速度は、1.65℃/分以下が好ましく、1.60℃/分以下が更に好ましい。
定速徐冷の終了温度は、特に限定されないが、スピノーダル分解により、双晶が十分に形成された後であればよく、具体的には、合金が250℃〜400℃に達するいずれかの温度である。残留ひずみを回避し十分な制振特性を得るには、定速徐冷の終了温度は、400℃以下が好ましく、350℃以下がより更に好ましい。αMn相の生成を抑制するには、定速徐冷の終了温度は、250℃以上が好ましく、275℃以上が更に好ましく、300℃以上がより更に好ましい。
尚、「焼鈍工程の雰囲気」は、特に限定されないが、不活性雰囲気(例えば、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気)、又は、還元雰囲気(例えば、水素雰囲気)が好ましい。大気中で焼鈍すると、表面に酸化被膜が形成されるので、これを回避するためである。
(5)急冷工程は、上記(4)で制振特性が備えられた合金を10℃/分以上で冷却する工程である。
「10℃/分以上で冷却する」のは、αMn相の生成を抑制するためであり、20℃/分以上で冷却するのが更に好ましい。尚、冷却方法としては、衝風冷却、水冷、油冷を用いることができ、高速冷却をする場合は、水冷及び油冷を行うとよい。
急冷工程の終了温度は、100℃以下の温度であればよく、例えば、室温であればよい。
尚、上記(4)の高温焼鈍工程、又は、上記(5)の急冷工程後を行った後の合金は、そのまま最終製品として販売・使用等しても良く、又は、精仕上げ加工(焼鈍時に生成した酸化被膜の除去、寸法変化の矯正、Mnの蒸発により生じた表面変質層の除去等)を行ってもよい。
(作用)
次に、本発明の一実施形態に係るMn−Cu系制振合金及びその製造方法の作用について説明する。
固溶化処理工程において、所定の組成からなるMn−Cu系合金の鋼塊が800℃以上固相線温度以下の固溶化温度に加熱され、その固溶化温度で保持された後、空冷以上の冷却速度で冷却されると、MnとCuのマクロ偏析が低減されるとともに、Mg又はCaを含有させたことにより、結晶粒が微細化される。
そのため、加工工程においては、合金は、割れ発生が抑制されつつ、最終製品形状又はこれより大きい形状まで加工される。この工程において割れ発生が抑制されることで、最終的に得られるMn−Cu系制振合金の割れ発生が抑制される。
次に、合金は、焼鈍温度に加熱され、その焼鈍温度で保持された後、合金の温度が250℃〜450℃の範囲のいずれかに入るまで、0.85〜1.65℃/分で定速徐冷される。従って、得られたMn−Cu系制振合金は、αMn相の生成や熱膨張によるひずみを回避しつつ、十分な双晶が形成され、高い制振特性が備えられる。
また、得られたMn−Cu系制振合金は、固溶化処理により、MnとCuのマクロ偏析が低減されているため、Cuに対する室温での固溶限が0%であるC(不可避的に含まれる)の双晶界面又は結晶粒界への析出が抑制され、これにより、制振特性の経時劣化が抑制される。
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。尚、以下の実施例及び比較例においては、実施例1のNiを2at%、8at%とした組成、実施例1のFeを1at%、3at%とした組成については実施例1と同等の性能を有するため省略した。また、実施例6のAlを2at%とした組成も、実施例6と同等の性能を有するため省略した。更に、実施例5のCuを15at%とした組成も、実施例5と同等の性能を有するため省略した。
(実施例1〜8及び比較例1〜4)
(割れについて)
実施例1〜8及び比較例1〜4について、表1に示すA〜Jの組成となるように原料を高周波誘導加熱炉に投入し、アルゴン雰囲気下で溶解・鋳造し、それぞれの組成について、150kg鋼塊(直径170mm〜直径190mm×長さ800mm)を作製した。
Figure 0005076609
次に、作製した各鋼塊に対して固溶化処理を行った(比較例2を除く)。固溶化処理は、表2に示す条件、すなわち、大気雰囲気下、900℃に加熱し、その温度で8時間(実施例3については24時間)保持した後、空冷することにより行った。
次に、得られた各鋼塊に対して熱間加工を行った。熱間加工は、850℃にて2時間加熱後、プレス鍛造することにより行った。これにより、80mm角の角片を作製した。
また、実施例1〜8及び比較例1〜4の80mm角の角片の割れ長さの計測を行った。この計測は、以下の手順で行った。80mm角の横断面より、任意の個所から15mm角(1辺は表層)を切り出し、これを顕微鏡観察用試料として調整し、鏡面研磨及び腐食後、光学顕微鏡にて表層からの割れ個所を観察した。存在する割れ個所に対して、最も長いものから5個所の長さを計測し、その平均値を「割れ長さ」と定義した。
その結果を表2に示す。実施例1〜8は、いずれも割れ長さが0.70mm以下となったのに対して、比較例1〜4は、いずれも割れ長さが0.70mmを超えた。表2では、割れ長さが0.70mm以下のものを「○」で示し、割れ長さが0.25mm以下のものを「◎」で示し、割れ長さが0.70mmを超えたものを「×」で示した。
また、図1に、実施例2及び比較例2の割れ個所を光学顕微鏡で撮影した組織写真(50倍)を示す。同図に示したように、実施例2は、比較例2に比して、結晶粒が微細化され、割れ長さが低減されていることがわかった。
Figure 0005076609
まず、固溶化処理の有無のみが異なる比較例1と2とを比較すると、固溶化処理を行った方が割れ長さが短かったことから、固溶化処理が熱間鍛造時における割れ抑制に有効であることが確認できた。その理由は、固溶化処理によって、組織が均質化され、MnとCuのマクロ偏析が低減されるためと考えられる。
次に、Caの有無が異なる実施例1,2,4と比較例1とを比較すると、Caを添加した方が割れ長さが短かったことから、Mn−Cu−Ni−Feを基本組成とする合金にCaを添加すると、熱間鍛造時における割れ抑制に有効であることがわかった。これは、Ca添加により結晶粒の微細化が促進されたためと考えられる(Caの有無が異なる実施例5と比較例3との比較(但し、これらは、Mn−Cuを基本組成とする)及びCaの有無が異なる実施例6と比較例4との比較についても同様である)。
次に、Mgの有無が異なる実施例7、8と比較例1とを比較すると、Mgを添加した方が割れ長さが短かったことから、Mn−Cu−Ni−Feを基本組成とする合金にMgを添加すると、熱間鍛造時における割れ抑制に有効であることがわかった。これは、Mg添加により結晶粒の微細化が促進されたためと考えられる。
次に、保持時間のみが異なる実施例2と実施例3とを比較すると、保持時間が長い方が割れ長さが短かった。これは、保持時間が長い方が、MnとCuのマクロ偏析が低減されることによる不均一応力の低減や、結晶粒の微細化による強度の改善が図られたためと考えられる。
(損失係数について)
次に、実施例1〜8及び比較例1〜4の80mm角の角片の中心部から厚さ20mm×幅20mm×長さ200mの角片を切り出し、各角片を水素雰囲気下、900℃に加熱し、この温度で3時間保持した後、冷却速度1.5℃/分で各角片が300℃になるまで定速徐冷(空冷)した(表3参照)。更に、各角片が100℃以下になるまで水冷により急冷した。
次に、各角片から放電加工により厚さ1mm×幅10mm×長さ160mmの角片を試験片として切り出した。切り出した試験片を用いて、「JIS G0602」に準拠した中央加振法による減衰特性を測定した。減衰特性の測定は次のようにして行った。
まず、試験片の1次共振周波数を測定し、その周波数において振幅ひずみが1×10−3となるバースト正弦波を加振した場合の振動減衰波形を測定した。次に、得られた減衰波形をフーリエ変換し、周波数分布を求め、半値幅法により、ピーク高さが半分となる範囲Δfとピーク周波数fとにより損失係数=Δf/(1.732f)を求めた。尚、加振にはEMIC社製の電磁型加振器を用い、振幅ひずみの測定には小野測器社製のCF−5200型FFTアナライザーを用いた。その結果を表3に示す。比較例2を除き、いずれも損失係数が0.12以上となり、良好な結果が得られた。表2では、損失係数が0.12以上のものを「○」で示し、損失係数が0.16以上のものを「◎」で示し、損失係数が0.11以下のものを「×」で示した。
Figure 0005076609
まず、固溶化処理の有無のみが異なる比較例1と2とを比較すると、固溶化処理を行った方が損失係数が高かったことから、固溶化処理を行っておくと、良い制振特性が得られることが確認できた。その理由は、固溶化処理で組織が均質化され、MnとCuのマクロ偏析が低減され、高温焼鈍で双晶が十分に形成されたためと考えられる。
次に、Caの有無が異なる実施例1〜2と比較例1とを比較すると損失係数に差がなかった。同様にCaの有無が異なる実施例4と比較例1とを比較すると、逆に、比較例1の方が損失係数が高かった。固溶化処理での保持時間に差がある実施例2と実施例3とを比較すると、実施例3の方が損失係数が高かった。これらのことから、Ca量を調整し、保持時間を長くすれば、損失係数が高くなり、制振特性に効果があることがわかった。
一方、Caの有無が異なる実施例5と比較例3との比較や、Mgの有無が異なる実施例7と比較例1との比較では損失係数に差がなかった。また、Caの有無が異なる実施例6と比較例4との比較や、Mgの有無が異なる実施例8と比較例1との比較では、これらの組成では、Mg又はCaを添加しても損失係数に影響を与えない(損失係数を低下させない)ことがわかった。
表2及び表3の結果を総合すると、実施例1〜8は、割れ長さ及び損失係数の両者が良好な値を示したが、比較例1〜4は、特に割れ長さの点で実施例に劣ることがわかった。このことから、Ca又はMgを含有させることにより、制振性を維持しつつ、成形加工性を高めることに効果があることがわかった。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るMn−Cu系制振合金及びその製造方法は、制振特性が要求される機器に用いられる各種の部品(例えば、ネジ、ワッシャー、インシュレータ、台座、バネ、バイトホルダー、軸受等)の材料やその製造方法として用いることができる。
加工(熱間鍛造)後の実施例2及び比較例2の顕微鏡観察用試料の組織写真(50倍)である。

Claims (5)

  1. Mn:70〜75at%、
    Cu:15〜25at%、
    Ni:2〜8at%、
    Fe:1〜3at%を含み、
    更に、Ca:0.001〜0.007at%又はMg:0.005〜0.23at%を含み、
    残部が不可避的不純物からなることを特徴とするMn−Cu系制振合金。
  2. 更に、Al:2〜5at%を含むことを特徴とする請求項に記載のMn−Cu系制振合金。
  3. Mn:70〜75at%、
    Cu:15〜25at%、
    Ni:2〜8at%、
    Fe:1〜3at%を含み、更に、Ca:0.001〜0.007at%又はMg:0.005〜0.23at%を含み、残部が不可避的不純物からなるMn−Cu系合金の鋼塊を800℃以上固相線温度以下の固溶化温度に加熱し、前記固溶化温度で保持した後、空冷以上の冷却速度で冷却する固溶化処理工程と、
    前記固溶化処理工程の後に、前記合金を最終製品形状又はこれより大きい形状まで加工する加工工程と、
    前記加工工程の後に、前記合金を800℃以上固相線温度以下の焼鈍温度に加熱し、前記焼鈍温度で0.5時間以上8時間以下保持した後、前記合金の温度が250℃〜400℃の範囲のいずれかに入るまで、0.85〜1.65℃/分で定速徐冷する高温焼鈍工程と、
    前記高温焼鈍工程の後に、前記合金を10℃/分以上で冷却する急冷工程とを備えたことを特徴とするMn−Cu系制振合金の製造方法。
  4. 前記固溶化処理工程は、前記固溶化温度での保持時間が8時間以上であることを特徴とする請求項に記載のMn−Cu系制振合金の製造方法。
  5. 前記Mn−Cu系合金は、更に、Al:2〜5at%を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載のMn−Cu系制振合金の製造方法。
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