JP2008297581A - マンガン基双晶型制振合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】経時的な制振性能の低下を防止して、長期にわたり優れた制振性能を発揮できるマンガン基双晶型制振合金を提供する。
【解決手段】Mnをベースとし、原子%で、Cuを20±5%、Niを5±3%、Feを2±1%、更にCrを0.5%以上〜1%未満含有する鋼塊2が一次加工300された素材3に、850〜925℃で4時間以上加熱された後、冷却される固溶化処理400、及び850〜950℃で1時間以上加熱された後、定速徐冷される高温焼鈍処理600が施されているマンガン基双晶型制振合金4である。
【選択図】図1
【解決手段】Mnをベースとし、原子%で、Cuを20±5%、Niを5±3%、Feを2±1%、更にCrを0.5%以上〜1%未満含有する鋼塊2が一次加工300された素材3に、850〜925℃で4時間以上加熱された後、冷却される固溶化処理400、及び850〜950℃で1時間以上加熱された後、定速徐冷される高温焼鈍処理600が施されているマンガン基双晶型制振合金4である。
【選択図】図1
Description
本発明は、マンガン基双晶型制振合金に関するものである。
マンガンをベースとする、マンガン(Mn)−銅(Cu)系マンガン基双晶型合金は、金属材料の中でも優れた減衰性能を有することが知られている(例えば特許文献1参照)。
また、Mn−Cu系合金は、800〜1100℃で加熱した後、250〜475℃の温度範囲に入るまで、0.85〜1.65℃/分で定速徐冷し、更に10℃/分以上で急冷する熱処理を行うことで、制振性能が向上することが公知である(例えば特許文献2参照)。
しかしながら、Mn−Cu系合金では、時間が経過するにつれて減衰性能が低下する、いわゆる経時劣化が生じ、長期にわたり減衰性能を維持できないという問題があった。経時劣化は、合金中に不可避的に含まれる炭素(C)成分が、双晶界面或いは結晶粒界に拡散することが原因である。この経時劣化は以下の機構によると考えられる。
合金中において、MnとCuは偏析しやすく、それぞれ、Mnリッチゾーン、Cuリッチゾーンを形成する。合金中には、Cが0.005〜0.01at%程度、不可避的に含まれる。CのCuに対する室温での固溶限は0%である。そのため、時間の経過と共に、Cuリッチゾーン中に含まれるCは、室温における拡散により、双晶界面或いは結晶粒界へ押し出されて析出する。双晶界面或いは結晶粒界に析出物が存在すると、制振性能が顕著に低下する。
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、経時的な制振性能の低下を防止して、長期にわたり優れた制振性能を発揮できるマンガン基双晶型制振合金を提供することにある。
本発明に係るマンガン基双晶型制振合金は、Mnをベースとし、原子%で、Cuを20±5%、Niを5±3%、Feを2±1%、更にCrを0.5%以上〜1%未満含有する鋼塊が一次加工された素材に、850〜925℃で4時間以上加熱された後、冷却される固溶化処理、及び850〜950℃で1時間以上加熱された後、定速徐冷される高温焼鈍処理が施されていることを要旨とする。
上記固溶化処理の雰囲気が大気雰囲気であることが好ましい、
上記高温焼鈍処理の雰囲気が水素雰囲気であることが好ましい。
上記高温焼鈍処理の定速徐冷の冷却速度が、0.85〜1.65℃/分であることが好ましい。
上記高温焼鈍処理が、定速徐冷を250〜450℃まで行い、その後急冷することが好ましい。
本発明に係るマンガン基双晶型制振合金は、Mnをベースとし、原子%で、Cuを20±5%、Niを5±3%、Feを2±1%、更にCrを0.5%以上〜1%未満含有する鋼塊が一次加工された素材に、850〜925℃で4時間以上加熱された後、冷却される固溶化処理、及び850〜950℃で1時間以上加熱された後、定速徐冷される高温焼鈍処理が施されていることにより、MnとCuのマクロ偏析や歪が低減し、双晶形成が十分行われ、高減衰性能が得られる。更に、Crを0.5%以上〜1%未満含有することにより、経時劣化を抑制して高減衰性能を長期にわたり発揮できる。
Crを0.5%以上〜1%未満含有することで、経時劣化が抑制できる理由は以下の通りである。合金中に不可避的に含まれるCは、Crと結合しCr炭化物となる。CがCr炭化物になるとCの含有量が少なくなるので、Cuリッチゾーン中に含まれるCが室温で拡散して双晶界面或いは結晶粒界へ析出することを防止できる。またCuリッチゾーン中のCr炭化物は、合金中のCと比較して室温における拡散が小さい。そのため、Cr炭化物が双晶界面或いは結晶粒界へ拡散して析出することがない。本発明マンガン基双晶型制振合金は、経時的に双晶界面或いは結晶粒界に析出物が発生することがないので、制振性能が低下するといった経時劣化が生じない。
以下、本発明の一実施形態に係るマンガン基双晶型制振合金について詳細に説明する。本発明のマンガン基双晶型制振合金は、化学組成として、Mnをベースとし、原子%で(尚、本発明で%という場合、全て原子%を意味する)、Cuを20±5%、Niを5±3%、Feを2±1%、更にCrを0.5%以上〜1%未満含有する。すなわち、Cu、Ni、Fe、Crの各成分の含有量の合計の残部は、Mnと不可避的不純物の含有量となる。
上記組成のMn−Cu−Ni−Fe系双晶型制振合金は、基本的に高減衰性能を備える。そして上記基本組成に、Crを0.5%以上〜1%未満含有することで、経時劣化を抑制し、製造直後の初期の高減衰特性を長期間にわたり発揮することができる。Crが0.5%未満では、Cの拡散を防止できず、経時劣化の抑制効果が不十分である。また、Crが1%以上では、添加量が過剰となって、Cr炭化物が拡散しやすくなって、結晶粒界へCr炭化物が析出し逆に減衰性能が低下してしまう。
また合金の組成において、Cuの含有量が25%を超えると偏析が生じ易くなり、15%未満では固溶化処理の際にγ+β相となり易くなる。またNi及びFeの含有量が、それぞれの下限値未満になると、双晶の生成が不十分になる。一方、Ni及びFeの含有量が、それぞれの上限値を超えると、双晶を生成する効果が飽和してしまい、含有量を増やしても、双晶の生成に変化がない。
本発明の制振合金は、上記の所定の組成に配合され溶解、鋳造された鋼塊が、鍛造、圧延等で棒状、板状等の素材とする一次加工が施され、この素材に固溶化処理を行った後、高温焼鈍処理等の処理が施させれることで得られる。得られた制振合金は、二次加工を施して、各種形状に加工することで製品とすることができる。以下、上記処理について説明する。
図1は制振合金を得るための処理の一例を示すフローチャートである。処理は、図1に示すように、合金1の原料を溶解する溶解工程100、溶解した原料を鋳造する鋳造200、鋼塊2を所定の形状の素材3に加工する一次加工300、素材を850〜925℃で4時間以上加熱した後冷却する固溶化処理400、スケールを処理するスケール処理500、スケールを除去した素材を再度加熱して850〜950℃で1時間以上加熱した後、定速徐冷する高温焼鈍600、及び所定の製品形状や最終製品に近い形状に機械加工等を施す二次加工700等の処理操作を順次行うことでマンガン基双晶型制振合金4が得られる。
溶解100は、原料1を上記の所定の組成に配合し高周波誘導加熱炉等において、アルゴン等の雰囲気下に溶解する。鋳造200では、この溶解した溶湯を所定の鋳型で鋳造して、鋼塊(インゴット)2を得る。
一次加工300は、熱間鍛造、熱間圧延等の熱間加工、又は冷間圧延等の冷間加工することで、上記鋼塊を棒状、板状等の所望の形状の素材3とする加工である。この素材3の形状は、合金を最終製品に加工するための半製品として、製品の形状等に応じて、適宜形状に形成される。また、一次加工において、鋳造組織の破壊、鋳造欠陥の消滅、偏析の解消等を目的とする場合には、熱間加工を施すことが好ましい。
固溶化処理400は、双晶形成及びマクロ偏析の解消のために行うものであり、素材を温度が850〜925℃(以下、固溶化温度ということもある)で4時間以上加熱保持410(以下、この加熱保持時間を固溶化時間ということもある)した後、空冷以上の冷却速度で、100℃以下になるまで冷却する処理420を行う。上記固溶化温度と固溶化時間の技術的意義について、以下に説明する。
Mn−Cu系合金を固相線温度付近の温度に加熱すると、金属組織がオーステナイト相(γ相の単一相)となる。これを冷却すると、γ相には、ナノメートルサイズのMn濃度がその平均濃度よりも高い領域(Mnリッチ領域)と、Cu濃度がその平均濃度よりも高い領域(Cuリッチ領域)とが形成され、微細な双晶が形成されマンガン基双晶型制振合金が得られる。マンガン基双晶型制振合金は微細な双晶により振動吸収効果が得られ、高い減衰性能を有するものである。
ところでマンガン基双晶型制振合金には、マクロ偏析が生じ易いという傾向がある。またマンガン基双晶型制振合金のCuリッチ領域は、減衰性能に寄与しないことが知られている。そのため、マンガン基双晶型制振合金に、マクロ偏析が生じ組織が不均一になると、減衰性能が低下し、本来の優れた制振特性が得られない虞がある。一般にマクロ偏析は、合金を固相線温度付近の温度に加熱した状態で保持し急冷を行うことで解消できる。この固溶化時間が長くなるほど、MnとCuのマクロ偏析が減少する。マクロ偏析が少なくなると、損失係数が大きくなり、制振性能が向上する。
固溶化処理400において、固溶化温度の下限は、少なくともγ相単相となる温度以上は必要である。そしてマクロ偏析を短時間で解消する点から、温度は高い方がよい。このような理由から、固溶化温度の下限は、850℃以上とした。また、固溶化温度の上限は、少なくとも合金の固相線温度以下である必要がある。Cuを20%程度含有するMn−Cu系合金の固相線温度は、約1000℃である。そして固溶化温度が高い程、短時間でマクロ偏析を低減できる。一方、固溶化温度が高すぎると、液相が生成し、一次加工の際に微細化された組織が肥大化する。このような理由から、固溶化温度の上限は925℃以下とした。
固溶化処理400において、固溶化温度を850〜925℃としたことにより、上記組成のMn−Cu−Ni−Fe系双晶型制振合金において、比較的短時間で、しかも確実に、MnとCuのマクロ偏析を解消することができる。
固溶化処理400の固溶化時間は、4時間以上である。固溶化時間が4時間未満の場合には、十分な減衰性能が得られない虞がある。また固溶化時間が長い程、マクロ偏析の解消効果が大きくなるので、より高い減衰性能を得るためには、固溶化時間が8時間以上が好ましい。また固溶化時間が長くなりすぎると、結晶粒が増大するため、上限は24時間以内とするのが好ましい。
固溶化処理400の雰囲気は、特に限定されず、アルゴン雰囲気等の不活性雰囲気、水素雰囲気等の還元雰囲気、或いは大気雰囲気等のいずれの雰囲気でもよい。大気雰囲気で固溶化処理を行うと、特定のガスを必要としないので、製造コストを低減できる。大気雰囲気で固溶化処理を行うと、制振合金素材の表面に酸化被膜が形成されるが、その後のスケール除去500や二次加工700等の処理の際に除去すれば、制振特性に悪影響を与えることはない。
固溶化処理400における素材を850〜925℃で4時間以上加熱保持410の後の冷却420は、空冷、水冷、油冷等の冷却手段を用いて行うことができる。この冷却速度は、空冷以上の冷却速度で行われる。この固溶化処理400の合金素材の冷却速度が、空冷よりも遅くなると、冷却時にαMn相が生成する虞が大きくなる。また、冷却速度が遅くなると、冷却時間が長くなり、製造に時間がかかり製造コストを上昇させる。上記したように、高い制振特性を得るためには、Mnリッチ領域とCuリッチ領域の分離をナノメートルサイズで生じさせる必要がある。αMn相が生成すると、この分離が悪くなって、制振特性が低下する。空冷以上の冷却速度であれば、αMn相が生成する虞がなく、高い制振特性が確実に得られ、製造時間が短時間で済み、製造コストを上昇させない。
スケール処理500は、固溶化処理400が終了した素材の表面に形成された合金の酸化物を除去する。具体的な酸化物の除去手段としては、旋削、研削等が挙げられる。
高温焼鈍処理600は、固溶化処理後冷却により生じた歪や、固溶化処理において解消されなかった偏析などを解消するために行うものであり、固溶化処理で冷却された合金素材を850〜950℃に加熱した状態で1時間以上この温度に加熱保持410の後、所定の冷却速度で徐冷(定速徐冷)620を行い、所定の温度以下になったら急冷630を行う。以下、高温焼鈍処理600について説明する。
高温焼鈍処理600の合金を加熱する温度(以下、焼鈍温度ということもある)は850〜950℃で行う。焼鈍温度の技術的意義は、以下の通りである。焼鈍温度は、少なくともγ相単相となる温度以上が必要である。一般に歪や偏析を解消するためには温度が高い方が短時間で済む。一方、焼鈍温度が高すぎると液相が生成する。また、焼鈍温度が高くなるほど微細化した組織が粗大化し、合金表面からMnが揮発し易くなる。このような点から、焼鈍温度の下限を850℃以上とし、焼鈍温度の上限を950℃以下とした。
高温焼鈍処理600において、焼鈍温度に加熱した状態を保持する保持時間は、上記加熱温度で1時間以上行う。保持時間が1時間未満では歪や偏析の除去や、経時劣化を抑える効果が不十分で、所定の制振性能が得られない虞がある。保持時間が長くなるほど、歪や偏析を確実に消滅させることができる。また保持時間が長くなるほど、合金中のCrとCを確実に反応させることができ、経時劣化を抑制する効果が大きくなる。そのため、保持時間は3時間以上であるのが好ましい。一方、保持時間が必要以上に長くなると、合金表面からMnが蒸発したり、生産性が低下する。そのため、保持時間の上限は8時間以内とするのが好ましい。
上記の焼鈍温度で所定の時間、加熱保持した素材を徐冷すると共に、温度勾配が冷却中を通じで一定になるように、冷却速度を調節して、250〜450℃の温度範囲となるまで、定速徐冷620を行う。定速徐冷620を行うことで、歪の残留やαMn相の生成を生じさせることなく、ナノメートルサイズの微細な双晶形成を十分行うことができ、優れた制振特性が得られる。以下、定速徐冷について説明する。
高温に保持された合金を冷却速度を制御せずに放冷して冷却すると、一般に高温域では冷却速度が速く低温になるほど冷却速度が低下する。Mn−Cu系制振合金をγ領域から徐冷する場合、冷却速度にばらつきがあると、(1)ナノメートルサイズの双晶形成が不十分となる、(2)熱膨張による歪が残留する、(3)双晶形成に寄与しないαMn相が生成しやすくなる、といった問題がある。定速徐冷することで上記問題を回避できる。
一般に定速徐冷の冷却速度が速くなるとαMn相の生成を防止できる効果が大きくなる。このような効果を十分得るために、徐冷速度は、0.85℃/分以上で行うことが好ましく、更に好ましくは1.33℃/分以上である。また、定速徐冷の冷却速度が速くなりすぎると、合金内部に歪が発生しやすくなることから、1.65℃/分以下が好ましく、更に好ましくは1.60℃/分以下である。
高温焼鈍処理600では、定速徐冷620を常温まで行っても良いが、図1に示すように、定速徐冷620を所定の温度(250〜450℃)となるまで行い、その後、常温まで急冷するのが好ましい。この定速徐冷を終了させ急冷を開始する温度(以下、定速徐冷終了温度ということもある)が低すぎると、αMn相の生成を抑制する効果が小さくなる。そのため、定速徐冷終了温度は、250℃以上が好ましく、更に好ましくは275℃以上、より好ましくは300℃以上とすることで、αMn相の生成を効果的に抑制することができる。
一方、定速徐冷終了温度が高くなりすぎると、残留歪が大きくなり、制振特性が低下することから、定速徐冷終了温度は450℃以下が好ましく、更に好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下とすることで、残留歪を小さくし、十分な制振特性を確実に得ることができる。
上記定速徐冷終了温度まで定速徐冷した後に急冷することで、αMn相の生成を効果的に防止し制振性能を向上させることができる。急冷の冷却速度が大きくなるほど、αMn相の生成を防止できる効果が大きくなることから、急冷の冷却速度は10℃/分以上が好ましく、更に好ましくは、20℃/分以上である。
定速徐冷及び急冷の冷却手段は、熱風や冷風を用いる送風冷却、水冷、油冷等の手段を用いることができる。定速徐冷の冷却手段は、送風冷却が好ましい。また急冷の冷却手段は、水冷、油冷が好ましい。
高温焼鈍処理600の加熱及び定速徐冷の処理は、大気雰囲気、不活性雰囲気又は還元雰囲気の任意の雰囲気で行うことができるが、合金の表面に酸化被膜が形成されるのを防止する点から、不活性雰囲気又は還元雰囲気で行うことが好ましい。不活性雰囲気としては、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気が挙げられる。また、還元雰囲気としては、水素雰囲気が挙げられる。
高温焼鈍処理が施されて、高減衰特性を維持しつつ、経時劣化を抑制した高特性制振合金が得られる。この素材は、そのまま最終製品として利用することもできるが、二次加工700で、機械加工を行い、加工品として最終製品とすることもできる。具体的な最終製品としては、制振性が要求される機器のネジ、ボルト、ナット、リング、ワッシャー、インシュレーター、台座、バネ、バイトホルダ、軸受等の各種部品、各種筐体等が挙げられる。各種部品には、異形の部品、機構部品等も含まれる。これらの各種部品の形状としては、板、テープ、箔、円筒等が挙げられる。二次加工の機械加工は、曲げ加工、切削加工、塑性加工、旋盤加工、穴開け加工、研磨加工等が挙げられる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示す。
実施例1〜3、比較例1〜4
表1に示す組成A〜Gを有する各合金を高周波誘導加熱炉を用いてアルゴン雰囲気下に溶解し、鋳造して150kgの鋼塊(φ170〜φ190×230L)を得た。表1に示すように、実施例1〜3はCrの含有量を0.5〜0.98%まで変えた合金であり、比較例1はCrを含有せず、比較例2〜4はCrを含有するがその含有量が本願発明の範囲を外れる組成を有する合金である。
実施例1〜3、比較例1〜4
表1に示す組成A〜Gを有する各合金を高周波誘導加熱炉を用いてアルゴン雰囲気下に溶解し、鋳造して150kgの鋼塊(φ170〜φ190×230L)を得た。表1に示すように、実施例1〜3はCrの含有量を0.5〜0.98%まで変えた合金であり、比較例1はCrを含有せず、比較例2〜4はCrを含有するがその含有量が本願発明の範囲を外れる組成を有する合金である。
次に、得られた鋼塊を熱間鍛造(850℃)して直径50mmの丸棒状の素材を得た。更にこの棒状の素材をオーステナイト状態で長時間保持し固溶化処理を行った。固溶化処理は、大気中で、素材を900℃として加熱して、8時間加熱保持した後、水冷した。
次に冷却された素材に高温焼鈍処理を施した。高温焼鈍処理は、水素雰囲気下で、素材を900℃まで加熱して3時間保持した後、冷却速度1.5℃/分で300℃になるまで定速徐冷を行った。そして定速徐冷されて素材が300℃に到達した後、100℃以下まで水冷を行ってマンガン基双晶型制振合金を得た。
次に得られたマンガン基双晶型制振合金から、厚さ1mm×幅10mm×長さ160mmの薄板状の試験片を切り出し、中央加振法にて減衰特性を評価した。減衰特性の試験は、試験片を製造後4ヶ月経過後の損失係数の測定と、4ヶ月経過後の損失係数の経時劣化率により行った。損失係数は、JIS G0602の試験方法に準拠して、中央加振法により最大歪振幅1×10−3時の値を測定した。4ヶ月経過後の損失係数の経時劣化率Δ(%)は、下記(1)式に示すように初期(製造後7日経過後)の試験片の損失係数δ1に対する、4ヶ月経過後の試験片の損失係数δ2の減少率である。
経時劣化率Δ(%)=(δ1−δ2)/δ1×100・・・・(1)
経時劣化率Δ(%)=(δ1−δ2)/δ1×100・・・・(1)
マンガン基双晶型制振合金における制振特性の評価は、4ヶ月経過後の損失係数が、0.15以上を有してしれば、十分な減衰特性を発揮できると判断し、また経時劣化率が30%以下であれば、経時劣化を十分抑制できると判断した。
実施例1〜3は、いずれも4ヶ月経過後の損失係数が0.15以上であり、経時劣化率が30%以下であった。これに対し、比較例1〜3は、4ヶ月経過後の損失係数が0.15未満であり、4ヶ月経過後の経時劣化率が30%以上であった。また比較例4は、4ヶ月経過後の損失係数が0.15以上であるが、4ヶ月経過後の経時劣化率が30%以上であった。表1に示すように、Crを0.5%以上〜1%未満含有することで、経時劣化を抑制することができる。
実施例4〜7
合金の組成を実施例1と同様に組成Aとし、高温焼鈍処理の焼鈍温度を表2に示すように、850℃(実施例4)、875℃(実施例5)、925℃(実施例6)、950℃(実施例7)とした以外は実施例1と同様の組成、処理条件にてマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表2に示す。
合金の組成を実施例1と同様に組成Aとし、高温焼鈍処理の焼鈍温度を表2に示すように、850℃(実施例4)、875℃(実施例5)、925℃(実施例6)、950℃(実施例7)とした以外は実施例1と同様の組成、処理条件にてマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表2に示す。
実施例8〜11
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、高温焼鈍処理の焼鈍温度を表2に示すように、850℃(実施例8)、875℃(実施例9)、925℃(実施例10)、950℃(実施例11)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表2に示す。
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、高温焼鈍処理の焼鈍温度を表2に示すように、850℃(実施例8)、875℃(実施例9)、925℃(実施例10)、950℃(実施例11)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表2に示す。
実施例12〜15
合金の組成を実施例3と同様に組成Cとし、高温焼鈍処理の焼鈍温度を表2に示すように、850℃(実施例12)、875℃(実施例13)、925℃(実施例14)、950℃(実施例15)とした以外は、実施例3と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表2に示す。
合金の組成を実施例3と同様に組成Cとし、高温焼鈍処理の焼鈍温度を表2に示すように、850℃(実施例12)、875℃(実施例13)、925℃(実施例14)、950℃(実施例15)とした以外は、実施例3と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表2に示す。
比較例5〜6
合金の組成を実施例2、8〜11と同様に組成Bとし、高温焼鈍処理の焼鈍温度を表2に示すように、820℃(比較例5)、970℃(比較例6)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表2に示す。表2に示すように、焼鈍温度を850℃〜950℃とすることで、損失係数、経時劣化率をともに満足する制振合金を得ることができる。
合金の組成を実施例2、8〜11と同様に組成Bとし、高温焼鈍処理の焼鈍温度を表2に示すように、820℃(比較例5)、970℃(比較例6)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表2に示す。表2に示すように、焼鈍温度を850℃〜950℃とすることで、損失係数、経時劣化率をともに満足する制振合金を得ることができる。
実施例16〜19
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、固溶化処理の固溶化温度を850℃とし、高温焼鈍の加熱保持温度を875℃(実施例16)、900℃(実施例17)、925℃(実施例18)、950℃(実施例19)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表3に示す。
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、固溶化処理の固溶化温度を850℃とし、高温焼鈍の加熱保持温度を875℃(実施例16)、900℃(実施例17)、925℃(実施例18)、950℃(実施例19)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表3に示す。
実施例20〜23
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、固溶化処理の固溶化温度を925℃とし、高温焼鈍の加熱保持温度を875℃(実施例20)、900℃(実施例21)、925℃(実施例22)、950℃(実施例23)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表3に示す。表3に示すように、固溶化温度を850℃〜925℃とすることで、損失係数、経時劣化率をともに満足する制振合金を得ることができる。
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、固溶化処理の固溶化温度を925℃とし、高温焼鈍の加熱保持温度を875℃(実施例20)、900℃(実施例21)、925℃(実施例22)、950℃(実施例23)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表3に示す。表3に示すように、固溶化温度を850℃〜925℃とすることで、損失係数、経時劣化率をともに満足する制振合金を得ることができる。
実施例24〜26
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、固溶化処理の加熱保持時間を4時間(実施例24)、16時間(実施例25)、24時間(実施例26)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表4に示す。
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、固溶化処理の加熱保持時間を4時間(実施例24)、16時間(実施例25)、24時間(実施例26)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表4に示す。
実施例27〜29
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、高温焼鈍処理の加熱保持時間を1時間(実施例27)、5時間(実施例28)、10時間(実施例29)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表4に示す。
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、高温焼鈍処理の加熱保持時間を1時間(実施例27)、5時間(実施例28)、10時間(実施例29)とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表4に示す。
比較例7
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、固溶化処理の加熱保持時間を1時間とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表4に示す。
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、固溶化処理の加熱保持時間を1時間とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表4に示す。
比較例8
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、高温焼鈍処理の加熱保持時間を0.5時間とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表4に示す。表4に示すように、固溶化処理の加熱時間を4時間以上とし、高温焼鈍処理の加熱保持時間を1時間以上とすることで、損失係数、経時劣化率をともに満足する制振合金を得ることができる。
合金の組成を実施例2と同様に組成Bとし、高温焼鈍処理の加熱保持時間を0.5時間とした以外は、実施例2と同じ処理条件でマンガン基双晶型制振合金を得た。損失係数と、経時劣化率を表4に示す。表4に示すように、固溶化処理の加熱時間を4時間以上とし、高温焼鈍処理の加熱保持時間を1時間以上とすることで、損失係数、経時劣化率をともに満足する制振合金を得ることができる。
1 合金の原料
2 鋼塊
3 素材
4 マンガン基双晶型制振合金
300 一次加工
400 固溶化処理
600 高温焼鈍処理
2 鋼塊
3 素材
4 マンガン基双晶型制振合金
300 一次加工
400 固溶化処理
600 高温焼鈍処理
Claims (3)
- Mnをベースとし、原子%で、Cuを20±5%、Niを5±3%、Feを2±1%、更にCrを0.5%以上〜1%未満含有する鋼塊が一次加工された素材に、850〜925℃で4時間以上加熱された後、冷却される固溶化処理、及び850〜950℃で1時間以上加熱された後、定速徐冷される高温焼鈍処理が施されていることを特徴とするマンガン基双晶型制振合金。
- 上記高温焼鈍処理の定速徐冷の冷却速度が、0.85〜1.65℃/分であることを特徴とする請求項1記載のマンガン基双晶型制振合金。
- 上記高温焼鈍処理が、定速徐冷を250〜450℃まで行い、その後急冷することを特徴とする請求項1又は2記載のマンガン基双晶型制振合金。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007143155A JP2008297581A (ja) | 2007-05-30 | 2007-05-30 | マンガン基双晶型制振合金 |
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Publications (1)
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ID=40171361
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009174013A (ja) * | 2008-01-25 | 2009-08-06 | Daido Steel Co Ltd | Mn基双晶型制振合金、及び、制振部品又は制振製品 |
CN103556020B (zh) * | 2013-11-08 | 2015-10-28 | 上海汇智新材料科技有限公司 | 具有优良力学性能的高锰含量锰铜基高阻尼合金 |
-
2007
- 2007-05-30 JP JP2007143155A patent/JP2008297581A/ja active Pending
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