JP4820572B2 - 耐熱アルミニウム合金線の製造方法 - Google Patents

耐熱アルミニウム合金線の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐熱アルミニウム合金線およびその製造方法に関するものである。特に、高温において引張強さおよび導電率を要求される耐熱アルミニウム合金線およびその製造方法に関する。
耐熱性を要求される耐熱アルミニウム合金線として、アルミニウムにZrを添加した合金を用いたものが広く用いられている(特許文献1参照)。そして、電線などに用いられる合金線は高温において、引張強さや導電率を維持することが求められる。
前記Zrを添加したアルミニウム合金には、Zr化合物固溶型と析出型とがあり、特にZrを0.20重量%より多く含むZr化合物析出型が、高温においても引張強さを維持する耐熱性に優れている。これは、ある特定の大きさの析出物(Al3Zr)が合金組織における転位の移動を阻害することで、高温環境にさらされた合金の引張強さを維持するためと考えられている。しかし、合金の組織中に存在するAl3Zrなどの析出物が粗大になりすぎると、転位の移動が可能となり耐熱性が低下する。適切な大きさのAl3Zrの析出物を得るためには、鋳造時に粗大なAl3Zr
の晶出物を生成させないように、合金の溶解温度を液相線温度以上に高くし、速やかに固相線以下の温度に冷却、凝固して合金中にZrを固溶させ、しかる後、適切な加工と熱処理を実施する必要がある。しかし、溶融温度を高くすると、鋳造工程後に得られるアルミニウム合金の鋳造材は、柱状晶が発達した結晶組織を有したものとなる。これら柱状に発達した結晶組織を有する合金は、結晶の配向方向に影響を受け割れが生じやすくなる。従って、高温による鋳造は、鋳造後の合金の塑性加工性を低下させることになる。
また、ZrとAlの組織状態図は、包晶系であり、Al3Zrを生じる範囲ではZrの増加に伴い急激な液相線温度の上昇を伴う。また、一旦析出したAl3Zrは、溶体化処理により合金中に再固溶することができないので、Zrを多く含む合金の製造において、非常に厳密な熱管理が要求される。
合金線における前述のような析出物は、急冷状態とその後の熱履歴を小さくできる連続鋳造圧延方式によって、改善することができる。連続鋳造圧延方式としては、代表的には、プロペルチ方式(properzi process)が挙げられる。
特許第3198199号公報
先に述べたように、Al3Zr析出型のアルミニウム合金は、Zrの増加により液相線温度が上昇するため、合金におけるZrの量が多くなると鋳造時の温度は高くなる。一方、固相線温度は、約660℃であり、純アルミニウムと変わらない。鋳造時に粗大なAl3Zrを生成させないように鋳造を実施しようとすると、必然的に高温(概ね720+325×(Zrの含有量(重量%)-0.2)℃)から急冷する鋳造になる。従って、溶融状態から凝固するまでの温度勾配が大きくなるために、合金の組織は、柱状晶の割合が発達した組織となる。合金の組織における柱状晶の割合が大きい場合、鋳造割れや、引き続き実施される塑性加工の際に合金に割れや大きなオレンジピール(加工に伴う結晶粒の移動により、平滑な表面が結晶粒径に依存して凹凸を生じるような梨地状態)が発生しやすい。これらの欠陥は、耐熱アルミニウム合金線の収率や品質を低下させる。
なお、一般の展伸用アルミニウム合金では、合金における柱状晶の割合を抑え、等軸晶の割合を増加させるために、TiBなどを含む結晶微細化剤をアルミニウム合金に添加する。このようにすることで、結晶微細化剤であるTiの化合物を等軸晶の核として働かせて等軸晶を発生させることにより柱状晶の発生を抑制するようにしている。しかし、Zrを含むアルミニウム合金にTiBを添加すると、液相線温度以上であってもZrがTiBと反応してZrB2がTiBの周囲に形成される。そのため、Tiの化合物を含有する結晶微細化剤が等軸晶の核として働かなくなって等軸晶が形成されず、結晶微細化剤による柱状晶の形成を抑制する効果が得られにくくなる。このような現象に対する対策として、一般に、結晶微細化剤を添加する量を増加させることが挙げられる。しかし、結晶微細化剤の添加量を増加させると、さらにZrがTiBと反応してZrB2が形成されるので、合金の耐熱性に寄与するZrの割合が低下して所望の耐熱性が得られなくなる。また、過剰にTiを添加すると、Tiの導電率がAlの導電率に比較して著しく低いために、電線用途で用いられるアルミニウム合金線の導電率を著しく低下させる結果となる。
Zrを含む合金に添加する結晶微細化剤としては、TiBとは別に、Tiの酸化物、Tiの炭化物が提案されている。これらの微細化剤は、Zrを含むアルミニウム合金において、Zrと反応して化合物を生成することがないため好ましい。しかし、これらTiの酸化物、Tiの炭化物は、等軸晶を増加させる効果が一般に小さいため、鋳造組織に占める柱状晶の割合をあまり変化させない。従って、Zrを含有するアルミニウム合金に、Tiの酸化物、Tiの炭化物を添加するだけでは、合金の組織に依存する加工性等の問題がある。また、TiB以外の微細化剤は、一般に高価である。
そこで、Zrを含有するアルミニウム合金の結晶組織の微細化を実現するための技術として、例えば、前述した特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1においては、鋳造時に合金が液相線温度から固相線温度に冷却される際の液相線と固相線との間を通過する時間を制御することで、Al3Zrを晶出させ、このAl3Zrを等軸晶の核として結晶粒を微細化している。しかし、上記の方法は、温度管理を含む工程の制御が困難であり、また、合金から晶出したZrの分だけ耐熱性に寄与するZrを減少させる欠点がある。
そこで、本発明は、Tiを含有する結晶微細化剤の添加量を増加することなく塑性加工性を向上し、耐熱性や導電率の低下を低減することができる耐熱アルミニウム合金線およびその製造方法を提供する。
具体的には、次の2点を実施する。
(1)アルミニウム合金の組成を調整する。特に、合金中におけるZr,Fe,Tiの含有量を規定すると共にアルカリ土類金属元素を含有させる。
(2)上記(1)の組成を有するアルミニウム合金を溶融して鋳造を行い、続いて伸線加工や圧延加工などの塑性加工を施すと共に時効処理を行う。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の耐熱アルミニウム合金線は、Zrを0.20〜0.40重量%、Feを0.10〜0.40重量%、アルカリ土類金属元素を0.003〜0.10重量%、Tiを0.005〜0.02重量%含有し、残部がAlおよび不純物からなることを特徴とする。前記の組成により、合金線を製造する際の塑性加工性が良く、且つ所望の耐熱性および導電性を有する合金線が得られる。なお、アルミニウム合金線に含まれる不純物は、不可避的な物質を含む。
また、本発明の耐熱アルミニウム合金線の製造方法は、Zrを0.20〜0.40重量%、Feを0.10〜0.40重量%、アルカリ土類金属元素を0.003〜0.10重量%含有し、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金を溶融してアルミニウム合金の溶湯を得、前記アルミニウム合金の溶湯にTiを0.005〜0.02重量%となるように添加しながら鋳造する鋳造工程、前記鋳造工程の後に行われる塑性加工工程および時効処理工程を有することを特徴とする。
Zrは、アルミニウム合金中に0.20重量%以上含有される場合、合金の耐熱性を向上させる。前記耐熱性の向上に有効に寄与するZrの量は、0.20重量%以上0.40重量%以下である。0.20重量%未満では、Al3Zrの結晶の析出量が少ないか、または、合金組織の転位の転位を阻害するほどにAl3Zrの結晶の粒径が大きくならず、合金の耐熱性は低くなる。しかし、合金におけるZrの含有量が0.40重量%を超える場合、添加量に応じた合金の耐熱性の向上が認められない上に、導電率が低下する。より好ましくは、合金におけるZrの含有量は、0.25〜0.38重量%の範囲である。
Feは、アルカリ土類金属元素の存在下で、鋳造時にTiを含む結晶微細化剤の効果を促進するために必要である。合金における結晶粒の微細化に有効に寄与するFeの含有量は、0.10重量%以上0.40重量%以下である。合金におけるFeの含有量が0.10重量%未満だと、合金の結晶粒の微細化を促進することがない。一方、0.40重量%超だと、合金組織における粒界にFe系の晶出物が生成し、合金の塑性加工性が低下する。より好ましくは、合金におけるFeの含有量は、0.15〜0.35重量%の範囲である。
アルカリ土類金属元素は、Feの存在下で、鋳造時にTiを含む結晶微細化剤の効果を促進する。前記の効果に有効に寄与するアルカリ土類金属元素の量は0.003重量%以上0.10重量%以下である。0.003重量%未満だと結晶粒の微細化を促進することがなく、0.10重量%超だと、合金の加工性が低下する。なお、アルカリ土類金属元素の添加は、鋳物の引け巣の発生を外引けから内引けへと変化させる効果も有する。外引け時、鋳物は凝固収縮により外表面が変形する。この変形に耐えきれず、鋳物にクラック等の欠陥が生じた場合、鋳造に続く、圧延等の加工工程において、前記加工工程によるクラックの修復が困難になる。なぜなら、クラックに異物が挿入された状態(例えば、潤滑剤がクラックに入り込むなど)となるからである。一方、内引け時、凝固収縮は鋳物内部で生じる、このような場合、収縮力以上の溶湯の圧力(押し湯)を与えれば、欠陥が生じることはない。また、仮に、生じたとしても、鋳物に閉じこめられ欠陥内に異物が挿入されることがないため、続く圧延工程で欠陥の修復が可能となる。本発明の組成により、より健全な鋳物作製が可能になる。より好ましくは、合金におけるアルカリ土類金属元素の含有量は、0.005〜0.05重量%の範囲である。また、アルカリ土類金属元素の中でも、Ca、Sr、Baが特に有効である。
Tiを含む結晶微細化剤は、アルミニウム合金におけるTi含有量で0.005重量%以上0.02重量%以下添加することが好ましい。上記の量を有する結晶微細化剤は、Feとアルカリ土類金属元素の存在下で、等軸晶の核とすることができ、Zrを含む合金の組織内での等軸晶の割合を増加させ、合金の結晶粒を微細化することができる。合金におけるTi含有量が0.005重量%未満だと結晶粒の微細化が効果的に行えない。合金におけるTi含有量が0.02重量%超だと、この効果が飽和すると共に導電率の低下を招く。より好ましくは、合金におけるTiの含有量は、0.008〜0.015重量%の範囲である。Tiを含む結晶微細化剤は、Tiの酸化物、Tiの硼化物、Tiの炭化物、のいずれであっても良い。Tiの硼化物は、すでに述べたように、Zrを含有するアルミニウム合金において等軸晶割合を増加させる効果が低いが、Feおよびアルカリ土類金属元素の存在下で、鋳造組織における等軸晶割合を増加させる。一方、Tiの酸化物、Tiの炭化物は、単体の使用において鋳造組織における柱状晶を微細化するものの、柱状晶の割合をあまり変化させない(等軸晶割合があまり変化しない)。しかし、Feおよびアルカリ土類金属元素の存在下で、Tiの酸化物、Tiの炭化物は、鋳造組織における等軸晶割合を増加させる。なお、合金中には、Tiの酸化物、Tiの硼化物、Tiの炭化物に由来するTiの他に、総量が0.02重量%を超えない範囲で、Tiを含有できる。ここで単体添加のTiは、本発明の範囲内では結晶粒の微細化効果はない。すなわち、本発明では、単体添加のTiは必須ではないが、Tiの酸化物、Tiの硼化物、Tiの炭化物の熱力学的な安定を高めるとされているので、合金中に含まれていても良い。ただし、合金におけるTiの総含有量が多くなると合金線の導電率が低下するので、合金におけるTiの含有量は、0.02重量%を越えてはならない。また、アルミニウム合金に添加する際の微細化剤の好ましい形態は、Tiの化合物をアルミニウムに分散させたワイヤである。ワイヤ状に成形する理由は、後述する。
なお、上記元素を有するアルミニウム合金に、更にSiを0.05重量%以上0.3重量%以下添加することが可能である。Siは、鋳造されたアルミニウム合金の鋳造材の等軸晶割合や塑性加工性に特に寄与しないが、Al3Zrを合金線中に析出させる時効処理において、時効処理する時間を短縮することができる。合金におけるSiの含有量が0.05重量%未満であると、前記短縮の効果は少ない。ただし、合金におけるSi含有量が0.30重量%を超える場合、合金の導電率が著しく低下する。より好ましくは、合金におけるSiの含有量は、0.10〜0.20重量%の範囲である。
その他、Cu,Mgの少なくとも一方を合計で0.05重量%以上0.3重量%以下添加することも可能である。これらの元素は、合金の結晶粒微細化効果を阻害することなく、アルミニウム合金線の引張強さおよび耐熱性を向上することができる。より好ましくは、合金におけるCu,Mgの含有量は、0.20〜0.25重量%の範囲である。ただし、Cu,Mgの添加により、合金の導電率は低下する。
次に、上記の組成を有するアルミニウム合金線の製造方法に関して説明する。
Al、Zr、Fe、アルカリ土類金属元素を有するアルミニウム合金を、溶解炉において溶融し、アルミニウム合金の溶湯を得る。溶融時の温度は、前記溶湯にZrが十分に固溶する温度で、且つ冷却などの熱管理が容易な温度から適宜選択される。
上記のようにアルミニウム合金の溶融の際にTiを含む結晶微細化剤を添加しないのは、溶湯にTiB(溶湯に添加される際の一般的な化学形)など結晶微細化剤を添加した状態で鋳型に溶湯を注湯するとTiBが鋳型の底に沈降してしまうためである。このような問題を解決するために、TiBを分散させたアルミニウムをワイヤ状に成形し、アルミニウム合金の溶湯が鋳型に注湯される際に前記ワイヤを供給して、鋳型内に溶湯とワイヤとが同時に注がれるようにすることが挙げられる。このことにより、注湯時の溶湯の対流によって、TiBなどの結晶微細化剤が沈降することなく、溶湯中に均等に混合される。
上記アルミニウム合金の溶湯は、特に5℃/sec以上の冷却速度で冷却してアルミニウム合金の鋳造材へと鋳造することが好ましい。このことにより、粗大なAl3Zrの晶出が抑制された加工性に優れる鋳塊(アルミニウム合金の鋳造材)を得ることが出来る。5℃/sec未満の冷却速度で冷却すると、アルミニウム合金の鋳造材において粗大なAl3Zrの晶出が生じ、その後の塑性加工によって得られたアルミニウム合金線の耐熱性が低下する恐れがある。前記冷却速度は、冷却過程にある溶湯のどの位置においても、5℃/sec以上であることが好ましい。より好ましくは、冷却速度は8℃/sec以上、最も好ましくは、冷却速度は20℃/sec以上である。
冷却速度を5℃/sec以上として鋳造することにより、アルミニウム合金の鋳造材の単位断面積あたりの60%以上が等軸晶から形成されたものが得られる。アルミニウム合金の鋳造材の単位断面積あたりの60%以上が等軸晶で形成されていれば、引き続き実施される塑性加工工程で、割れやオレンジピールが発生しにくい。より好ましくは、100%等軸晶から形成されたものである。なお、100%等軸晶を有するアルミニウム合金の鋳造材は、本発明のFeおよびアルカリ土類金属元素の両方の含有量が高いアルミニウム合金の鋳造材において観察される。
このようにして作製したアルミニウム合金の鋳造材は、合金の鋳造材の内部まで加工しやすい組織を有し、且つ、前記合金の鋳造材中にZrが均等に固溶した状態となっている。この合金組織の状態図は、線状に塑性加工した後も維持されるため、時効処理を施すことによって合金組織中にAl3Zrが均一に析出する。従って、鋳造時に割れなどが生じることなく、安定して線材が得られる。得られた本発明の耐熱アルミニウム合金線は、150MPa以上の引張強さおよび58%IACS以上の導電率を有する。また、280℃×1h熱処理後のアルミニウム合金線の引張強さは、熱処理前のアルミニウム合金線の引張強さの90%以上を維持する(電気事業連合会 電力用規格 C242参照)。また、400℃×4hの熱処理後においても90%以上の引張強さを維持する(電気事業連合会 電力用規格 C242参照)。なお、Cu、Mgの少なくとも一方を含有する本発明アルミニウム合金線は、230MPa以上の引張強さおよび55%IACS以上の導電性を有し、230℃×1hの熱処理後においても熱処理前の引張強さの90%以上を維持する(電気事業連合会 電力用規格 C242参照)。
Al3Zrの析出のために行う時効処理は、200〜400℃×10〜350hで実施することが好ましい。200℃より温度が低いとAl3Zrの析出が非常に遅く、400℃を超えるの温度で実施するとAl3Zrが粗大に析出して、合金線の耐熱性が低下する。上記温度条件において、Al3Zrが有効な大きさに析出するために最低限必要な時間は10hである。350hより長い時効処理は、生産性が悪く、工業的に不利である。
鋳造後の塑性加工は、冷間、温間または熱間加工を任意に採用することができる。また、鋳造後のどの段階で時効処理を行ってもかまわない。本発明アルミニウム合金線の特性は、塑性加工および時効処理の順番、回数に依存するものではなく、塑性加工の後に時効処理を行っても良いし、その逆でも良い。
本発明アルミニウム合金線の最も好ましい製造方法は、鋳造工程と塑性加工工程とを連続して行うことである。この場合、鋳造は連続鋳造が好ましい。より好ましくは、ベルトとホイールを組み合わせた鋳造機とこの鋳造機に連なる圧延機を用いることが挙げられる。例えば、プロペルチ式連続鋳造圧延機が挙げられる。
本発明のアルミニウム合金線によれば、次の効果を奏することができる。
(1)微細な組織(等軸晶)を有することで塑性加工性に優れる。
(2)高温において引張強さおよび導電率が低下しにくい(耐熱性を有する)。
また、本発明のアルミニウム合金線の製造方法によれば、次の効果を奏することができる。
(1)アルミニウム合金線の製造に際して、合金の鋳造時における熱管理を比較的容易にすることができる。
(2)耐熱性および導電性の低下を招くTiを含有する結晶微細化剤を過剰に添加することなく所望の塑性加工性を有する耐熱アルミニウム合金線を得ることができる。
(3)時効処理後のアルミニウム合金線の結晶組織における、Zrの化合物の粒径および析出量を適正な範囲にすることで、所望の耐熱性を有する耐熱アルミニウム合金線を得ることができる。
本発明の実施例を以下に示す。なお、実施例に記載の表において、引張強さ、導電率および耐熱性が記載されていないものは、アルミニウム合金の鋳造材の外表面に割れが確認されたために、測定を行っていない。
<実施例1>
本実施例において、表1〜3に示す成分を有するアルミニウム合金の鋳造材における等軸晶割合および塑性加工性、ならびにアルミニウム合金線における引張強さ、導電率および耐熱性を調査した。表1は、本発明アルミニウム合金線を示す。表2は、アルカリ土類金属元素を添加しないアルミニウム合金線を比較として示す。表3は、Zr、Fe、アルカリ土類金属元素の少なくとも1種が本発明の規定外添加されたアルミニウム合金線を比較として示す。
表1〜3に示すZr、Fe、Baを含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミ合金を電気炉で黒鉛ルツボを用いて溶解し、アルミニウム合金の溶湯とした。その後、フラックスによる通常の溶湯処理を施し、鋳込み直前に合金におけるTiの含有量が表1〜3の量となるようにAl-3%Ti-1%Bワイヤを添加した。Al-3%Ti-1%Bワイヤとは、ワイヤ中にTiを3重量%、Bを1重量%含有し、残部をAlおよび他の元素により構成されるワイヤのことであり、表1〜3における数値は溶湯を鋳造して得られたアルミニウム合金の鋳造材(鋳物)におけるTiの含有量を重量%で表したものである。前記ワイヤを添加した溶湯を、十分に撹拌し、60℃に加熱した鋼製の鋳型に流し込んで、φ40mm×400mmのアルミニウム合金の鋳造材を作製し試料とした。鋳造時の冷却速度は、冷却過程にある溶湯のどの位置においても100℃/sec〜15℃/secの範囲内にあった。すなわち、溶湯全体において、冷却速度は実質的に5℃/sec以上であった。
得られた試料の横断面のマクロ組織を光学顕微鏡を用いて観察して、試料における断面積あたりの等軸晶の生成割合を測定した。その結果を表1〜3に示す。以下の表において、○は熱間加工後、外表面に割れが確認できなかった試料、×は熱間加工後、外表面に割れが生じた試料である。等軸晶割合を測定した試料は、熱間圧延加工を施した。熱間圧延加工は、熱風炉を用いて400℃で5min試料を加熱した後、オーバルラウンドの2方向圧延機を用いることによって行い、上記熱間圧延加工によって、試料をφ10mmの丸線へと加工した。熱間圧延加工により得られた試料の外表面を観察し、外表面の割れの有無を判断した。表1〜3に加工性の評価を示す。熱間圧延加工で割れが生じなかったアルミニウム合金の鋳造材は、更にφ4.6mmまで冷間伸線加工を施した。前記伸線加工に引き続いて、得られた試料を370℃×150hで時効処理し、更に、冷間でφ3.6mmまで伸線加工した。上記の工程により得られた試料(アルミニウム合金線)の引張強さ、導電率、耐熱性(280℃×1h、400℃×4h熱処理後の引張強さ)を調査した。その結果も表1〜3に示す。
Figure 0004820572
Figure 0004820572
Figure 0004820572
表1および2に示すように、本発明に規定される量のZrおよびFeを含有するアルミニウム合金にBaを添加すると、アルミニウム合金の鋳造材の塑性加工性が向上することがわかる(本発明:1〜12、比較:13〜24)。また、アルミニウム合金の鋳造材の組織における柱状晶の割合が低減し、等軸晶の割合が増加することが観察された。なお、表3に示す様に、アルミニウム合金の鋳造材におけるFeの含有量が多い場合にも、合金の鋳造材へのアルカリ土類金属元素(Ba)の添加に関係なく、合金の鋳造材の組織は等軸晶へと変化した(比較:31〜36、43〜48)。しかし、これらの試料は、その後の塑性加工工程において割れが生じた。これは、Feが多くなるとアルミニウム合金の鋳造材の組織における粒界にFe系の晶出物が生成し、加工性が低下するためである。
また、本発明の規定する組成を満足するアルミニウム合金線の引張強さ、導電率、電気事業連合会 電力用規格 C242参照の耐熱性(280℃×1h)および電気事業連合会 電力用規格 C242参照の耐熱性(400℃×4h)は、それぞれ150MPa以上、58%IACS以上、90%以上および90%以上であった。
一方、アルミニウム合金にBaを添加していないアルミニウム合金の鋳造材は、その外表面に割れを発生し、加工性が悪いことが明らかとなった(本発明;1〜12、比較;13〜24)。合金の鋳造材におけるZrの含有量が0.2重量%未満だと、引張強さが低下した(比較;49,50)。また、Zrを0.40重量%より多い量添加した場合、アルミニウム合金線の導電率が、本発明のアルミニウム合金線に比較して低かった(本発明;3,4,7,8,11,12、比較;52)。
さらに、アルミニウム合金に添加するアルカリ土類金属元素をSrまたはCaに代えて評価をしたところ、Baと同様の結果を得た(本発明:2a,6a,10a,10b)。また、Ba,Sr,Caの内の2種以上を組み合わせてアルミニウム合金に添加しても概略同等の結果を得た(本発明:2b,6b)。
また、アルミニウム合金に添加する結晶微細化剤をAl-3%Ti-1%Cワイヤに変更してもAl-3%Ti-1%Bワイヤを用いた場合と同様の結果を得た(本発明:2a,2b,6a,6b,10a,10b)。すなわち、TiCを微細化剤とした場合にも、鋳造組織における等軸晶の割合を大きくすることができる。なお、Al-3%Ti-1%Cワイヤとは、Tiを3重量%、Cを1重量%含有し、残部をAlおよび他の元素により構成されるワイヤである。これらのワイヤは、金属Ti、Tiの酸化物、Tiの硼化物、Tiの炭化物、AlとTiの化合物を含んでいた。
<実施例2>
実施例2においては、アルミニウム合金の鋳造材における等軸晶割合および塑性加工性、ならびにアルミニウム合金線における引張強さ、導電率および耐熱性に対するアルカリ土類金属元素の影響を調査した。
表1に記載の試料番号1,4,5,8,9,12のアルミニウム合金において、Ba,SrおよびCaの添加量を変更し、得られたアルミニウム合金の鋳造材および合金線の特性を調査した。表4は、本発明アルミニウム合金線を示す。また、表5は、アルカリ土類金属元素(Ba,Sr,Ca)を本発明に規定する範囲外で添加したアルミニウム合金線を比較として示す。
Figure 0004820572
Figure 0004820572
表4および5に示すように、アルミニウム合金の鋳造材におけるBaの量が0.003重量%未満だと、前記合金の鋳造材の組織における等軸晶の割合が低く、塑性加工性が悪いことが判る(比較;1d,4d,5h,8d,9h,12d)。前記合金の鋳造材の組織における等軸晶の割合を改善する効果(等軸晶割合が60%以上)は、Baの添加量が0.003重量%以上のときに認められる。さらに、0.10重量%超だと、Feの増量の場合と同様に等軸晶割合を増加する効果は得られるものの塑性加工性が悪く、割れが生じた(比較:1e,4e,5i,8e,9i,12e)。
さらに、アルミニウム合金に添加するアルカリ土類金属元素をSrまたはCaに代えて評価をしたところ、Baを添加した場合と同様の結果を得た(本発明5d,5e,5f,5g,9d)。また、Ba,Sr,Caのうちの2種以上を組み合わせてアルミニウム合金に添加しても概略同等の結果を得た(本発明:9e,9f,9g)。
また、アルミニウム合金に添加する結晶微細化剤をAl-3%Ti-1%Cワイヤに変更しても同様の結果を得た(本発明:5d,5e,5f,5g)。さらに、アルミニウム合金に添加する微細化剤をAl-3%Ti-1%BとAl-3%Ti-1%Cとの組み合わせに変更しても同様の結果を得た(本発明:9d,9e,9f,9g)。
<実施例3>
実施例3においては、アルミニウム合金の鋳造材における等軸晶割合および塑性加工性、ならびにアルミニウム合金線における引張強さ、導電率および耐熱性に対する結晶微細化剤の影響を調査した。
表1に記載の試料番号1,2,5,6,9,10のアルミニウム合金において、合金に添加するTi量を0.001、0.005、0.02、0.03重量%の4段階に変化させた。得られたアルミニウム合金の鋳造材および合金線の特性を調査した。表6に結果を示す。
Figure 0004820572
表6に示すように、アルミニウム合金の鋳造材におけるTiの量が0.005重量%未満だと、合金の鋳造材の組織における等軸晶の割合が低く、前記合金の鋳造材の塑性加工性が悪いことが判る(比較;1f,5l,6d,9l,10d)。また、アルミニウム合金に添加するTiの量が0.02重量%超だと、アルミニウム合金の鋳造材の組織における等軸晶の割合は、0.02重量%以下の場合に比較して、同等か、むしろ低下する(比較;1g,5m,6e,9m,10e)。なお、表6の試料5mおよび9mに示す組成を有するアルミニウム合金の鋳造材の外表面には、割れが発生しなかったので、引き続いて伸線加工および時効処理を施し、アルミニウム合金線を得た。しかし、これらの合金線は、本発明の合金線に比較し、引張強さ、導電率、耐熱性ともに劣っていた。導電率の低下に関しては、すでに述べたようにAlに比較して著しく導電率の低いTiを過剰に添加したためと考えられる。
<実施例4>
実施例4においては、アルミニウム合金の鋳造材における等軸晶割合および塑性加工性、ならびにアルミニウム合金線における引張強さ、導電率および耐熱性に対する鋳造時の冷却速度の影響を調査した。
表1の試料番号7の組成を有するアルミニウム合金の溶湯を、鋳型温度を40、150,260,320,450,520℃の6段階に変化させた鋳型に注湯することにより鋳造工程の冷却速度を変化させた。得られたアルミニウム合金の鋳造材の組織および塑性加工性を調査した。その結果を表7に示す。
Figure 0004820572
表7に示すように、鋳造工程の冷却速度を遅くした試料番号7jにおいて、合金の鋳造材における組織の等軸晶割合および塑性加工性が低下した。しかしながら、更に、冷却速度を遅くした場合、等軸晶の割合が増加し、加工が可能となった(参考;7k,7l)。各試料の断面を光学顕微鏡にて観察したところ、比較7jの組織において、本発明7,7h,7iにおいて観察されないAl3Zrが観察され、これらが等軸晶の凝固核となって等軸晶を形成している組織も確認された。これは、特許文献1に開示されているように、Al3Zrが結晶粒微細化剤の核として働き、合金の鋳造材の塑性加工性を改善したものと考えられる。しかし、特許文献1に開示されるような機構によりAl3Zrが等軸晶の核として働く合金線は、合金線における耐熱性に寄与するZrの割合が減少する。従って、比較7jのようなアルミニウム合金の鋳造材の特性(引張強さ、耐熱性)は、本発明のアルミニウム合金の鋳造材の特性に比較し劣っていた。
<実施例5>
実施例5においては、本発明の規定するアルミニウム合金線の引張強さ、導電率および耐熱性を満たすための時効処理時間を検討した。
表1の試料番号7の組成を有するアルミニウム合金を熱間圧延から時効処理までの伸線加工度、時効処理条件、最終φ3.6mmまでの伸線加工度を変化させて、引張強さ150MPa以上、導電率58%IACS以上、かつ、280℃×1h熱処理後の引張強さが熱処理前の引張強さの90%以上、あるいは400℃×4h熱処理後の引張強さが熱処理前の引張強さの90%以上となる条件を調査した。
上記条件を満たす時効処理温度は、200〜400℃×10〜350hであった。
本発明では、鋳造の終了段階において、Zrがアルミニウム合金の鋳造材中に十分に固溶されている。従って、アルミニウム合金の鋳造材に上記特定の熱処理を実施することで、Al3Zrを適切な大きさに析出させて、再結晶を抑制することができる。このような熱処理は、Al3Zrが大きくなり、再結晶を抑制できなくなるまでの範囲で、複数回繰り返し行っても良い。
<実施例6>
実施例6においては、耐熱アルミニウム合金線を得るための時効処理時間に対するSiの影響を調査した。
表1の試料番号6の組成を有するアルミニウム合金の溶湯に更にSiを0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4重量%添加した。この結果、表1に示すアルミニウム合金線の引張強さおよび耐熱性を得るために必要な時効処理時間を低減することができた。Si添加量が、0.05重量%未満では、前記時効処理の時間を短縮できなかった。最終的に得られるアルミニウム合金線において、Siを添加したときに所定の引張強さおよび耐熱性を得るために必要な時効処理時間は、Siを添加しないときの時効処理時間のほぼ72%であった。ただし、アルミニウム合金にSiを0.4重量%より多く入れると、アルミニウム合金線の導電率が58%IACSを下回った。なお、アルミニウム合金の鋳造材の組織状態図におけるSi添加の影響は、上述の添加量においては認められなかった。
<実施例7>
実施例7においては、本発明の規定するアルミニウム合金線の導電性、引張強さおよび耐熱性に対するプロペルチ方式の影響を調査した。
反射型5t溶解炉を用いて、0.30重量%Zr、0.2重量%Fe、0.1重量%Si、0.01重量%Srを含有するアルミニウム合金を770℃で溶解後、フラックスによる通常の溶湯処理を実施した。その後、溶解炉を傾転させて、溶湯を出湯し、Al-3%Ti-1%Cワイヤをアルミニウム合金の鋳造材におけるTiの濃度で0.008重量%となるように溶湯に連続的に添加して、プロペルチ式連続鋳造圧延機にてアルミニウム合金の鋳造材を製造した。5tの溶湯から、φ10mmのアルミニウムのワイヤロッドが4.8t確保できた。この間、圧延機に備え付けられた探傷機によりワイヤロッドの外表面に傷は確認されなかった。なお、プロペルチ式連続鋳造機の冷却速度は、溶湯のどの位置にあっても20℃/sec以上であった。
一方、比較例としてSrを添加していないこと以外は、上述の条件と同様の条件でアルミニウム合金の鋳造材を製造したところ、圧延工程において断線が多発し、線材を得られなかった。鋳造温度を710℃に下げると、アルミニウム合金にSrを添加した場合と同様に、4.8tのワイヤロッドを得ることが出来た。しかし、探傷機は、合金の鋳造材の外表面に0.1mm以上の傷を約100箇所記録した。
また、上記のプロペルチ式連続鋳造圧延機により得られた本発明の線材と低温鋳造した線材とをφ5.2mmまで伸線し、350℃×120hの熱処理を施し、更に、φ3.8mmまで伸線した。本発明アルミニウム合金線は、低温鋳造した合金線に比較して、導電率がほぼ同じであったが、一方で、引張強さ、耐熱性が優れていた。
<実施例8>
実施例8においては、アルミニウム合金線における等軸晶割合、塑性加工性、引張強さ、導電率および耐熱性に対するCuとMgの影響を調査した。
表1〜3の成分1〜52そのもの、又は類似の組成、もしくはそれらにSiを添加したものに対して、Cu量を0.01、0.05、0.2、0.3、0.6、1重量%添加した。Cuを添加した本発明アルミニウム合金線の代表的な実施例を表8に示した。また、本発明に規定した範囲外のCuを添加したアルミニウム合金線を参考として表8に示した。なお、試料は、実施例1と同様の方法で作製した。
Figure 0004820572
表8に示すように、アルミニウム合金線におけるCuの添加量が0.3重量%以下の場合、試料の等軸晶割合、塑性加工性は、実施例1の場合と同様の結果を示した。一方、Cuの添加量を0.6重量%(0.3重量%超)とした場合、全面等軸晶を有する合金の鋳造材を得た。これは、Cuの添加量の増加により微細化剤による等軸晶の形成性が高くなったためと考えられる。しかしながら、0.6重量%(0.3重量%超)のCuを添加したものでは、230MPa以上の引張強さ、55%IACS以上の導電性を有し、且つ熱処理(230℃×1h)後に熱処理前の引張強さの90%以上を維持するものはなかった(電気事業連合会 電力用規格 C242参照)。Cuの添加により、上記電力用規格を満足した試料は、Cuの添加量が0.05〜0.3重量%であった(本発明:53〜62)。
また、Cuに変えてMgを添加した場合、或いは、CuとMgを添加した場合にも、上記Cuを添加した場合と同様の結果を得た。さらに、Cuと組み合わせてアルミニウム合金線に添加するアルカリ土類金属元素は、Sr、Caいずれでも良かった。
<実施例9>
実施例9においては、Cuを添加した場合の工業的な効果を明らかにするため、実施例7と同様にプロペルチ方式の影響を調査した。
反射型5t溶解炉を用いて、0.35重量%Zr、0.2重量%Fe、0.1重量%Si、0.01重量%Sr、0.25重量%Cuを含有するアルミニウム合金を790℃で溶解後、フラックスによる通常の溶湯処理を実施した。その後、溶解炉を傾転させて、溶湯を出湯し、Al-3%Ti-1%Cワイヤをアルミニウム合金の鋳造材におけるTiの濃度で0.01重量%となるように溶湯に連続的に添加して、プロペルチ式連続鋳造圧延機にてアルミニウム合金の鋳造材を製造した。5tの溶湯から、φ10mmのアルミニウムのワイヤロッドが4.8t確保できた。この間、圧延機に備え付けられた探傷機によりワイヤロッドの外表面に傷は確認されなかった。なお、プロペルチ式連続鋳造機の冷却速度は、溶湯のどの位置にあっても20℃/sec以上であった。
一方、比較例としてSrを添加していないこと以外は、上述の条件と同様の条件でアルミニウム合金の鋳造材を製造したところ、圧延工程において断線が多発し、線材を確保できなかった。鋳造温度を730℃に下げると、アルミニウム合金にSrを添加した場合と同様に、4.8tのワイヤロッドを得ることが出来た。しかし、探傷機は、合金の鋳造材の外表面に0.1mm以上の傷を約200箇所記録した。
また、上記のプロペルチ式連続鋳造圧延機により得られた本発明の線材と低温鋳造した線材に370℃×40hの熱処理を施し、φ3.8mmまで伸線した。本発明アルミニウム合金線は、低温鋳造した合金線に比較して、導電率がほぼ同じであったが、一方で、引張強さ、耐熱性が優れていた。
本発明の耐熱アルミニウム合金線は、耐熱性および導電性の両方の特性が要求される電線(例えば、ACSR)などに好適に利用することができる。また、本発明耐熱アルミニウム合金線の製造方法は、上記のような特性を要求される耐熱アルミニウム合金線の製造に好適に利用することができる。

Claims (9)

  1. Zrを0.20〜0.40重量%、Feを0.10〜0.40重量%、アルカリ土類金属元素を0.003〜0.10重量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を溶融してアルミニウム合金の溶湯を得た後、前記アルミニウム合金の溶湯にTiを0.005〜0.02重量%となるように添加しながら鋳造する鋳造工程と、
    前記鋳造工程の後に行われる塑性加工工程および200〜400℃×10〜350時間の条件で実施する時効処理工程とを有し、
    前記鋳造工程において、冷却は5℃/sec以上で行い、
    前記鋳造工程で得られるアルミニウム合金の鋳造材は、単位断面積あたりの60%以上が等軸晶から形成されることを特徴とする耐熱アルミニウム合金線の製造方法。
  2. 前記鋳造工程で得られるアルミニウム合金の鋳造材は、単位断面積あたりの100%が等軸晶から形成されることを特徴とする請求項1に記載の耐熱アルミニウム合金線の製造方法。
  3. 前記アルミニウム合金は、さらに、Siを0.05〜0.30重量%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の耐熱アルミニウム合金線の製造方法。
  4. Tiの添加は、Tiを含む微細化剤を用いて行い、この微細化剤は、少なくともTi、Tiの酸化物、Tiの硼化物、Tiの炭化物及びAlとTiとの化合物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱アルミニウム合金線の製造方法。
  5. 前記微細化剤は、Tiの化合物をアルミニウムに分散させたワイヤ状に形成されることを特徴とする請求項4に記載の耐熱アルミニウム合金線の製造方法。
  6. アルカリ土類金属元素は、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱アルミニウム合金線の製造方法。
  7. 前記塑性加工工程は、冷間加工、温間加工または熱間加工の少なくとも1つの工程を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐熱アルミニウム合金線の製造方法。
  8. さらに、アルミニウム合金は、Cuを0.05〜0.3重量%含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐熱アルミニウム合金線の製造方法。
  9. 前記鋳造工程と塑性加工工程とが、それぞれベルトとホイールとを組み合わせた鋳造機とこの鋳造機に連なる圧延機によって実施されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐熱アルミニウム合金線の製造方法。
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