JP5059505B2 - 高強度で成形が可能なアルミニウム合金冷延板 - Google Patents

高強度で成形が可能なアルミニウム合金冷延板 Download PDF

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本発明は、高い成形性を有する高Mg含有Al−Mg系アルミニウム合金冷延板であって、特に、強度延性バランスに優れ、高強度で成形が可能なアルミニウム合金冷延板に関するものである。本発明は、冷延によって板として製造されたアルミニウム合金板であって、後述する部材や部品として使用される前のアルミニウム合金冷延板に関するものである。
周知の通り、従来から、自動車、船舶、航空機あるいは車両などの輸送機、機械、電気製品、建築、構造物、光学機器、器物の部材や部品用として、各種アルミニウム合金板(以下、アルミニウムをAlとも言う)が、合金毎の各特性に応じて汎用されている。
これらのアルミニウム合金板は、多くの場合、プレス成形などで成形されて、上記各用途の部材や部品とされる。この点、高成形性の点からは、前記Al合金のなかでも、強度・延性バランスに優れたAl−Mg系合金が有利である。
このため、従来から、Al−Mg系Al合金板に関して、成分系の検討や製造条件の最適化検討が行われている。このAl−Mg系Al合金としては、例えばJIS A 5052、5182等が代表的な合金成分系である。しかし、このAl−Mg系Al合金でも、冷延鋼板と比較すると延性に劣り、成形性に劣っている。
これに対し、Al−Mg系Al合金は、Mg含有量を増加させて6%、できれば8%を超える高Mg化させると、強度延性バランスが向上する。ただ、このように、高Mg化させたAl−Mg系Al合金は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を、均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法では、熱延中に割れやすくなる。
このため、従来から、8%を超える高Mg化させたAl−Mg系Al合金板を、双ロール式連続鋳造により製造することが、従来から知られてる。この双ロール式連続鋳造法は、回転する一対の水冷銅鋳型 (双ロール) 間に、耐火物製の給湯ノズルからアルミニウム合金溶湯を注湯して凝固させ、かつ、この双ロール間において、上記凝固させて、適度に圧下し、かつ急冷して、アルミニウム合金薄板とする方法である。この双ロール式連続鋳造法はハンター法や3C法などが知られている。
このような双ロール式連続鋳造法を用いて製造した高MgのAl−Mg系合金板の成形性向上を意図して組織を規定した例も、従来から提案されている。例えば、6 〜10% の高MgであるAl−Mg系合金板の、Al−Mg系の金属間化合物の平均サイズを10μm 以下とした、機械的性質に優れた自動車用アルミニウム合金板が提案されている (特許文献1参照) 。また、10μm 以上のAl−Mg系金属間化合物の個数を300個/mm2以下とし、平均結晶粒径が10〜70μm とした自動車ボディーシート用アルミニウム合金板なども提案されている (特許文献2参照) 。
特開平7−252571号公報 特開平8−165538号公報
ただ、このような8%を超えて高Mg化させたAl−Mg系合金板を、上記した双ロール式などの連続鋳造法で製造しても、他の5000系や6000系などの合金系と同様に、引張強度が高くなると、伸びが急激に低下する。このために、強度延性バランスにおいて、引張強度が500MPa以上で10%以上の全伸びを得ることは、これまで実質的にできなかった。
通常、Al合金板は、前記した通り、多くはプレス成形などで成形されて、上記各用途の部材や部品とされる。したがって、高Mg化させたAl−Mg系Al合金板の強度のみがいくら高くても、伸びがプレス成形可能なだけなければ、成形して上記各用途の部材や部品とすることができずに、結局、実用化(実際に使用)できない。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、例えば、引張強度が500MPa以上の高強度でも、10%以上の全伸びを得ることができる、高強度でも成形が可能な、高MgのAl−Mg系合金冷延板を提供することである。
この目的を達成するために、高強度でも成形が可能な本発明アルミニウム合金冷延板の要旨は、Mg:6.0〜15.0質量%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系アルミニウム合金冷延板であって、この冷延板の板厚方向の平均結晶粒径が30μm以下であり、かつ圧延方向の平均結晶粒径と板厚方向の平均結晶粒径との比であるアスペクト比が平均で3.0以上であり、結晶粒内のMg系析出物の平均粒径が各析出物の球相当径で換算して100nm以下であるとともに、これらMg系析出物の平均数密度が4×104 個/μm3 以下であり、圧延方向の引張強度が500MPa以上で、全伸びが10%以上であることとする。
ここで、前記アルミニウム合金冷延板が、引張強度が500MPa以上である場合の全伸びが10%以上である特性を有することが好ましい。また、前記アルミニウム合金冷延板が、等軸な再結晶組織を有するAl−Mg系アルミニウム合金板を冷間圧延、調質した冷延板であることが好ましい。また、前記アルミニウム合金冷延板が、更に、質量%で、Mn:1.0%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.3%以下、V:0.3%以下の一種または二種以上を含むことが好ましい。更に、好ましくは、前記アルミニウム合金冷延板が、質量%で、Cu:1.0%以下、Fe:1.0%以下、Si:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Zn:1.0%以下の含有することを許容する。
本発明は、高Mg化させたAl−Mg系Al合金板の、平均結晶粒径、平均アスペクト比、結晶粒内のMg系析出物を規定して、例えば、引張強度が500MPa以上、600MPa未満である場合の全伸びが10%以上であり、プレス成形が可能である特性をもたせる。
このような本発明の平均結晶粒径、平均アスペクト比、結晶粒内のMg系析出物の規定を満足させるためには、好ましくは等軸な再結晶組織を有するようなAl−Mg系Al合金板を、冷間圧延して、本発明のような冷延板とすることが必須となる。言い換えると、冷間圧延しなければ、本発明のような平均結晶粒径、平均アスペクト比、結晶粒内のMg系析出物の規定を満足できない。したがって、例えば、引張強度が500MPa以上、600MPa未満である場合の全伸びが10%以上であり、プレス成形が可能であるような特性をもたせることができない。
ここで、冷間圧延する(等軸な再結晶組織を有する)Al−Mg系Al合金板までの製造方法は特に問わない。冷間圧延する高Mg化させたAl−Mg系Al合金は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を、均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法で製造してもいい。あるいは、前記した双ロール式連続鋳造により製造しても良い。
(化学成分組成)
本発明Al合金冷延板における化学成分組成の、各合金元素の意義及びその限定理由について以下に説明する。本発明では、Al合金冷延板として、例えば、引張強度が500MPa以上、600MPa未満である場合の全伸びが10%以上である、高強度でプレス成形が可能な特性を有する。このような、高強度で、かつ、所望の強度−伸びバランスを得るためには、前提として、冷延板を、Mg:6.0〜15.0質量%を含み、残部がAlおよび不純物からなるAl−Mg系アルミニウム合金組成とする。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
また、本発明Al合金冷延板が、更に、質量%で、Mn:0.3%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.3%以下、V:0.3%以下の一種または二種以上を含むことが好ましい。
ここで、本発明Al合金冷延板が、それ以外の元素として、好ましくは、Cu:0.14%以下、Fe:0.37%以下、Si:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Zn:0.33%以下の含有を許容する。これらの元素は基本的には不純物であるが、本発明Al合金溶製時の溶解原料として、不可避的に混入される。このため、これら元素の過度の低減は、製造上不経済となるために、本発明Al合金冷延板の上記特性を阻害しない上記範囲での含有を許容する。
(Mg:6.0〜15.0%)
MgはAl合金板の強度、延性を高める重要合金元素である。Mg含有量が少な過ぎると、本発明の高強度でプレス成形が可能な特性が出ず、強度や、あるいは延性(伸び)、成形性が不足する。一方、Mg含有量が多過ぎると、製造方法や条件の制御を行なっても、Al−Mg系化合物の晶析出が多くなる。この結果、延性(伸び)、成形性が著しく低下する。また、加工硬化量が大きくなり、冷間圧延性も低下させる。したがって、Mgは6.0〜15.0%の範囲、好ましくは8%を超え14%以下の範囲とする。
(Mn:1.0%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.3%以下、V:0.3%以下の一種または二種以上)
Mn、Cr、Zr、Vなどの遷移元素は、結晶粒内にもβ相を析出させ、結晶粒内のMg系析出物の本発明規定を満足させるための好ましい元素である。即ち、β相析出環境下では、これら結晶粒内の遷移元素の遷移元素系析出物が、結晶粒内のβ相の核生成サイト(駆動力)となって、結晶粒内にもβ相を微細析出させる。これによって、高強度でプレス成形が可能な特性を発揮させる。このため、Mn:1.0%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.3%以下、V:0.3%以下の一種または二種以上を選択的に含有させる。
これらの遷移元素の効果は含有量が微量でも発揮される、言い換えると、微量でも結晶粒内に遷移元素系析出物を形成し、これらの遷移元素系析出物は微量でもβ相の核生成サイトとなる。したがって、敢えて、これら遷移元素の含有量の下限値は規定しない。ただ、通常の板の製造条件で、これらの効果を効率的に発揮させるためには、これら各元素の含有量の下限値は0.05%以上であることが好ましい。
(結晶粒組織)
本発明Al−Mg系Al合金冷延板の結晶粒組織は、例えば、引張強度が500MPa以上、600MPa未満である場合の全伸びが10%以上であり、高強度で、プレス成形が可能であるような特性をもたせるために重要となる。このために、本発明結晶粒組織は、板厚方向の平均結晶粒径が30μm以下であり、かつ圧延方向の平均結晶粒径と板厚方向の平均結晶粒径との比であるアスペクト比が平均で3.0以上とする。
(結晶粒のアスペクト比)
アルミニウム合金冷延板の結晶粒を、通常の等軸粒ではなく、平均圧延方向の平均結晶粒径と板厚方向の平均結晶粒径との比であるアスペクト比が、平均で3.0以上の、圧延方向に伸長させたものにすることによって、前記した高強度でプレス成形が可能な特性をもたせることができる。
このアスペクト比が平均で3.0未満では、通常の等軸粒と大差なくなり、伸長結晶粒の上記効果が不足するため、前記した高強度でプレス成形が可能な特性をもたせることができない。この点で、結晶粒の圧延方向への伸長は大きいほど良く、結晶粒のアスペクト比は、好ましくは4.0以上、より好ましくは6.0以上である。
結晶粒のアスペクト比は、中間焼鈍を施さない工程では、熱延板の結晶粒組織、冷間圧延率および冷間圧延温度によって決まる。この点で、結晶粒の平均アスペクト比の上限は、熱間圧延や冷間圧延など、伸長粒とするための製造工程の能力限界から決定されるが、そのレベルは20程度である。
(平均アスペクト比測定方法)
結晶粒のアスペクト比は、板厚方向中央部の上面観察(偏光観察)によって測定される。冷間圧延後で、最終焼鈍などの調質処理後の冷延板の板厚方向中央部、圧延面上面を、機械研磨、電解研磨、およびバーカー液による陽極酸化処理後、偏光観察によって行う。
上記板の板厚方向中央部を上面から、結晶粒組織を×100倍の光学顕微鏡により偏光観察したとき、結晶方位の違いによって白黒の違いがでる。この際の観察で、輪郭がはっきり観察できる、視野内の結晶粒を対象に、個々の結晶粒の圧延方向の最大長さと、板厚方向の最大長さとを各々計測して、結晶粒の圧延方向の平均最大長さ(圧延方向の平均結晶粒径)と、板厚方向の平均最大長さ(板厚方向の平均結晶粒径)をする。そして、これらの結晶粒の(圧延方向の平均結晶粒径:平均最大長さ)/(板厚方向の平均結晶粒径:平均最大長さ)をアスペクト比として計算する。なお、測定する結晶粒は100個とする。
(平均結晶粒径)
また、ここで、前記した測定において、個々の結晶粒の板厚方向の最大長さの平均値を、板厚方向の平均結晶粒径とする。この板厚方向の平均結晶粒径が30μmを超えて粗大化した場合、前記した高強度でプレス成形が可能な特性をもたせることができない。
(結晶粒内析出物)
本発明Al−Mg系Al合金冷延板では、結晶粒内のMg系析出物(Al−Mg系化合物)をナノレベルに微細に析出させて強度−伸びバランスを向上させる。結晶粒内のMg系析出物の析出状態は、塑性変形挙動に大きく影響し、これまで説明した前記他の要件と同様に、本発明Al−Mg系Al合金冷延板に、上記した高強度でプレス成形が可能であるような特性をもたせるために重要となる。したがって、より具体的には、本発明結晶粒内析出物組織は、結晶粒内のMg系析出物の平均粒径が各析出物の球相当径で換算して100nm以下であるとともに、これらMg系析出物の平均数密度が4×104 個/μm3 以下であることとする。
結晶粒内のMg系析出物が上記平均粒径規定を超えて粗大化した場合や、数密度が上記規定を超えて多くなった場合には、破壊の起点となり、また、粒界にも析出しやすくなるために、Al−Mg系Al合金冷延板の成形性が著しく劣化する。
(結晶粒内析出物の測定方法)
Al−Mg系Al合金冷延板の板厚中心部から試料を採取し、試料表面を0.05〜0.1mm機械研磨した後、電解エッチングした表面 (板厚方向でも板の長手方向でもどちらでも良い) を、20000倍のFE−TEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。板厚中心部におけるFE−TEMによる組織観察は、板厚中心部1 箇所につき、観察視野の合計面積が4μm2 以上となるように行い、これを板の長手方向に適当に距離を置いた10箇所観察する。また、各観察位置の膜厚に関しては、等厚干渉縞により求める。そして、各々観察される結晶粒内の各Mg系析出物の、球相当径で換算した粒径と、単位体積当たりの数密度とを求めて、各々平均化する。
本発明で言うMg系析出物とは、このFE−TEMにより観察された視野をX線分光装置(EDX)により分析することにより、Mgを含むことが確認された析出物(Al−Mg系化合物)であり、Mgを含まない他の析出物とは識別される。このMgを含む量は、EDXにより検出できる量 (微量) あれば良い。
(製造方法)
以下に、本発明におけるAl−Mg系Al合金冷延板の製造方法につき説明する。以上説明した、本発明の平均結晶粒径、平均アスペクト比、結晶粒内のMg系析出物の規定を満足させるためには、好ましくは等軸な再結晶組織を有するようなAl−Mg系Al合金板を、冷間圧延して、冷延板とすることが必須となる。言い換えると、冷間圧延しなければ、本発明のような平均結晶粒径、平均アスペクト比、結晶粒内のMg系析出物の規定を満足できない。
但し、冷間圧延するまでの、高Mg化させたAl−Mg系Al合金板の製造方法は特に問わない。冷間圧延するAl合金板は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を、均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法で製造してもいいし、あるいは、前記した双ロール式連続鋳造により製造しても良い。
(冷間圧延)
ただ、通常の製造方法にするにしても、双ロール式にするにしても、本発明の冷延板組織とするためには、冷延される前の板を、予め等軸な再結晶組織を有するものとすることが好ましい。これに対して、冷延される前の板が加工組織を有していた場合には、冷延の途中で板が、Mg系析出物であるβ相による割れを生じる可能性が高く、結果として、本発明の平均結晶粒径、平均アスペクト比、結晶粒内のMg系析出物の規定を満足できなくなる可能性が高くなる。
冷延される前の板を、このような予め等軸な再結晶組織とするためには、冷延前に板を、再結晶と溶体化効果とが得られる、400℃〜液相線温度の比較的高温で荒鈍(焼鈍)することが好ましい。この荒鈍を連続焼鈍によって行う場合には、好ましくは、昇温速度:1℃/s以上、保持時間:0s以上、5min以下、冷却速度:1℃/s以上の条件とする。また、この荒鈍をバッチ焼鈍によって行う場合には、好ましくは、昇温速度:200℃/hr以下、保持時間:4時間以下、冷却速度:200℃/hr以下の条件とする。昇温速度、冷却速度を規定したのは、これらの速度が遅いと、この昇温−冷却過程で、粒界にβ相が多量に析出する可能性があり、本発明の結晶粒内のMg系析出物の規定を満足できなくなる可能性が高くなるからである。
冷間圧延では、リバースやタンデムパス冷間圧延機を用いて良く、必要によりパス毎に中間焼鈍を施しても良いが、冷延率(加工率)は50%以上とする。冷延率が低いと、本発明の平均結晶粒径、平均アスペクト比、結晶粒内のMg系析出物の規定を満足できなくなる可能性が高くなる。
(最終焼鈍)
冷延後のAl合金板は、β相を出さず、かつ強度を低下させずに、結晶粒をサブグレイン化でき、伸びを改善できる回復効果を得るために、低温短時間の最終焼鈍を施す。この低温短時間の最終焼鈍は、溶体化効果が得られる400℃以上の比較的高温の通常の最終焼鈍とは異なり、焼鈍温度は250℃以下の低温とする。
この最終焼鈍を連続焼鈍によって行う場合には、好ましくは、焼鈍温度:400℃以下、昇温速度:1℃/s以上、保持時間:0s以上、5min以下、冷却速度:1℃/s以上の条件とする。また、この最終焼鈍をバッチ焼鈍によって行う場合には、好ましくは、焼鈍温度:200℃以下、昇温速度:200℃/hr以下、保持時間:4時間以下、冷却速度:200℃/hr以下の条件とする。
昇温速度、冷却速度を規定したのは、これらの速度が遅いと、この昇温−冷却過程で、粒界にβ相が多量に析出する可能性があり、本発明の結晶粒内のMg系析出物の規定を満足できなくなる可能性が高くなるからである。なお、250度℃以上では結晶粒内のMg系析出物の規定を満足できなくなる可能性が高く、高MgのAl−Mg系合金板の伸びが低下し、強度−延性バランスが低下してプレス成形性が低下する可能性が高い。さらに、通常の溶体化効果が得られる400℃以上の焼鈍では、固溶促進してMg系析出物の規定を満足するようになり、伸びが改善するが、強度が低下する。
以下に本発明の実施例を説明する。表1に示す種々の化学成分組成のAl−Mg系Al合金溶湯(発明例A〜G、比較例H、I)を、前記した双ロール連続鋳造法およびDC鋳造法により各鋳塊に鋳造した。
DC鋳造法の場合には、Al合金溶湯の注湯温度 (鋳造前の溶湯温度) を640〜700℃の温度範囲とし、表2に示す条件で、各Al合金鋳塊をバッチ式熱処理炉にて均熱処理した後、約300℃の開始温度、約350℃の終了温度で、表2に示す各板厚まで圧延する熱間圧延を行った。
双ロール連続鋳造法の場合には、Al合金溶湯の注湯温度 (鋳造前の溶湯温度) を640〜700℃の温度範囲とし、冷却速度200〜400℃/sの範囲で表2に示す各板厚のAl合金薄板鋳塊を製造した。双ロールの周速は70m/minとし、双ロール表面の潤滑は行なわなかった。
DC鋳造法による熱延板、双ロール連続鋳造法による薄板鋳塊ともに、荒鈍(焼鈍)を行った後に、冷間圧延した。荒鈍は、連続焼鈍によって行い、表2に示す各焼鈍温度で、保持時間を60sと各例とも一定にして加熱した。この際、昇温速度:50〜100℃/s、冷却速度:50〜100℃/sの範囲で行った。また、冷間圧延は、表2に示す加工率、板厚にて行い、冷間圧延中の中間焼鈍は行なわなかった。
また、これら各冷延板を、表2 に示す焼鈍条件で最終焼鈍を行った。この際、バッチ焼鈍炉では、昇温速度:40℃/hr、冷却速度:40℃/hr、表2に*で示す連続焼鈍炉(比較例17、23)では、昇温速度:50〜100℃/s、冷却速度:50〜100℃/sの条件で行った。
(板組織)
このように得られた最終焼鈍後のAl−Mg系Al合金板の長手方向( 圧延方向) に亙って、互いの間隔を100mm以上開けた任意の測定箇所、10箇所における板厚中心部から試料を採取し、前記した各測定方法により、平均結晶粒径(μm )、アスペクト比、結晶粒内のMg系析出物の平均粒径(μm )、数密度(個/μm2) を各々測定した。表3 に測定結果を示す。ここで、FE−TEMは日立製作所製電界放射型透過電子顕微鏡:HF−2000を用いた。
これにより撮影した発明例と比較例の板の組織(図面代用写真)を図1〜4に示す。図1は表3 の発明例1、図2は表3 の発明例2、図3は表3 の発明例3、図4は表3 の比較例17の各組織である。
更に、前記最終焼鈍後のAl−Mg系Al合金板の板厚中心部から試験片を採取し、各試験片の機械的性質と、強度延性バランス「引張強度(TS:MPa)×全伸び(EL:%)」(MPa%)の平均値を求めた。これらの結果も表3に示す。
(引張試験)
引張試験はJIS Z 2201にしたがって行うとともに、試験片形状はJIS 5 号試験片で行い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。また、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
表1の通り、発明例は、発明範囲内の組成を有し、表2の通り、好ましい製造条件範囲内で製造されている。このため、表3の通り、発明例は、冷延板の板厚方向の平均結晶粒径が30μm以下であり、かつ圧延方向の平均結晶粒径と板厚方向の平均結晶粒径との比であるアスペクト比が平均で3.0以上である。また、結晶粒内のMg系析出物の平均粒径が各析出物の球相当径で換算して100nm以下であるとともに、これらMg系析出物の平均数密度が4×104 個/μm3 以下である。
この結果、発明例は、アルミニウム合金冷延板として、引張強度が500MPa以上、600MPa未満である場合の全伸びが10%以上である特性を有し、強度延性バランスや成形性に優れている。
これに対して、比較例15〜23は、発明範囲内の組成を有するものの、表2の通り、好ましい製造条件の範囲外で製造されている。このため、表3の通り、比較例15〜23は、冷延板の平均結晶粒径、アスペクト比、結晶粒内のMg系析出物の平均粒径、平均数密度が発明規定範囲外となっている。この結果、比較例15〜23は、アルミニウム合金冷延板として、引張強度の割に全伸びが低く、強度延性バランスや成形性に劣っている。
比較例24〜27は、好ましい製造条件の範囲外で製造されているものの、発明範囲外の組成を有する。このため、24〜27は、冷延板の平均結晶粒径、アスペクト比、結晶粒内のMg系析出物の平均粒径、平均数密度は発明規定範囲内であるものの、アルミニウム合金冷延板として、引張強度の割に全伸びが低く、強度延性バランスや成形性に劣っている。
また、図1〜4の対比から視覚的に分かる通り、冷延板の板厚方向(図の上下方向)の平均結晶粒径が30μm以下で、かつ圧延方向(図の左右方向)の平均結晶粒径と板厚方向(図の上下方向)の平均結晶粒径との比であるアスペクト比が平均で3.0以上である図1〜3の発明例1〜3は、図の左右方向に伸長し、図の上下方向に細かい結晶粒組織となっている。これに対して、図4の比較例17は、冷延板の板厚方向の平均結晶粒径が30μmを越えて大き過ぎ、かつ前記アスペクト比が平均で3.0未満と小さすぎるために、図の上下方向と図の左右方向との長さに差がない謂わば等軸で、粗大な結晶粒組織となっている。
したがって、これらの実施例の結果から、本発明の、組成、結晶粒径、結晶粒内のMg系析出物規定や、これらを規定内とする好ましい製造条件の、強度延性バランスや成形性に対する臨界的な意義が分かる。
Figure 0005059505
Figure 0005059505
Figure 0005059505
以上説明したように、本発明によれば、引張強度が500MPa以上の高強度でも10%以上の全伸びを得ることができる、高強度でも成形が可能な、強度延性バランス、成形性が優れた高MgのAl−Mg系合金冷延板を提供することができる。この結果、自動車、船舶、航空機あるいは車両などの輸送機、機械、電気製品、建築、構造物、光学機器、器物の部材や部品などの、強度と成形性とが要求されるアルミニウム合金板用途への適用を拡大できる。
本発明Al−Mg系合金冷延板の組織を示す図面代用写真である。 本発明Al−Mg系合金冷延板の組織を示す図面代用写真である。 本発明Al−Mg系合金冷延板の組織を示す図面代用写真である。 比較例Al−Mg系合金冷延板の組織を示す図面代用写真である。

Claims (4)

  1. Mg:6.0〜15.0質量%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系アルミニウム合金冷延板であって、この冷延板の板厚方向の平均結晶粒径が30μm以下であり、かつ圧延方向の平均結晶粒径と板厚方向の平均結晶粒径との比であるアスペクト比が平均で3.0以上であり、結晶粒内のMg系析出物の平均粒径が各析出物の球相当径で換算して100nm以下であるとともに、これらMg系析出物の平均数密度が4×104 個/μm3 以下であり、圧延方向の引張強度が500MPa以上で、全伸びが10%以上であることを特徴とするアルミニウム合金冷延板。
  2. 前記アルミニウム合金冷延板が、等軸な再結晶組織を有するAl−Mg系アルミニウム合金板を冷間圧延、調質した冷延板である請求項1に記載のアルミニウム合金冷延板。
  3. 前記アルミニウム合金冷延板が、更に、質量%で、Mn:0.3%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.3%以下、V:0.3%以下の一種または二種以上を含む請求項1または2に記載のアルミニウム合金冷延板。
  4. 前記アルミニウム合金冷延板が、更に、質量%で、Cu:0.14%以下、Fe:0.37%以下、Si:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Zn:0.33%以下の含有を許容する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金冷延板。
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