JP2014114468A - Fe−Al合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】Al含有量が6〜12重量%であるFe−Al合金であって、Al濃度のゆらぎを有する優れたFe−Al合金、及び当該Fe−Al合金の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明のFe−Al合金は、Al含有量6〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなり、Al濃度のゆらぎを有する。このFe−Al合金は、熱間加工により塑性加工する塑性加工工程、塑性加工した合金を冷間圧延加工する冷間圧延工程、冷間圧延加工後の合金を磁気変帯点以上であって、1000℃以下の温度で焼鈍する焼鈍処理工程、焼鈍後に550℃まで炉冷する炉冷工程、及び炉冷工程の後、常温まで空冷する空冷工程を経て製造される。
【選択図】図1

Description

本発明はAl濃度の“ゆらぎ“、すなわち合金中に金属間化合物が生成される過程において生じる濃度の不均一な状態を有する新規なFe−Al合金に関し、特にAl含有量が6〜12重量%のものに関する。
従来、制振性や加工性を備えた金属として、Fe−Cr−Al合金、Mn−Cu合金、Cu合金、Mg合金等が知られており、様々な用途に使用されている。これらの合金のなかでも、Al含有量が6〜10重量%であり、かつ平均結晶粒径が300〜700μmであるFe−Al合金は、優れた制振性を有しており、制振合金として有用であることが分かっている(例えば、特許文献1参照)。当該Fe−Al合金は、塑性加工及び焼鈍処理を行った後に、所定の冷却速度で冷却することにより製造されている。
特開2001−59139号公報
しかしながら、Al含有量が12重量%程度以下であるFe−Al合金の製造方法については、上記以外の方法は殆ど知られていない。また、Al含有量が12重量%程度以下であるFe−Al合金において、その有用な特性を一層向上させ、より実用的価値が高いものにするために、いかなる技術的手段を採用すれば良いかについても一切知られていない。
そこで、本発明は、Al含有量が6〜12重量%であるFe−Al合金であって、優れた制振性を示す、Al濃度のゆらぎを有するFe−Al合金、及び当該Fe−Al合金の製造方法の提供を目的とした。
ここで、本発明者が鋭意検討したところ、Al含有量が14重量%以上のFe−Al合金は、脆くて強度面において実用性に欠けるとの問題があることが判明した。また、Fe−Al合金については、Al濃度のゆらぎを有する構造、すなわちAl濃度が不均一な構造とすることにより制振性を向上効果が高まるとの知見に至った。
ここで、“ゆらぎ“とは、合金中に化合物が生成される過程において生成される濃度の不均一な状態のことである。Fe−Al合金では、熱処理でFeAlが生成されるが、前段階でAl濃度の不均一な状態ができる、この変態過程で生ずるAlの濃度の不均一な状態を“ゆらぎ“という。
かかる知見に基づき提供される本発明は、Al含有量6〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなり、Al濃度のゆらぎを有することを特徴とするFe−Al合金である。
本発明のFe−Al合金は、熱処理により、合金中にFeAl相が生成される前段階の、Al濃度のゆらぎを有する。すなわち、本発明のFe−Al合金は、Al濃度が部位によって不均一とされていることから、外部から入力された振動エネルギーを吸収し、減衰させることができる。また、本発明のFe−Al合金は、Al含有量が6〜12重量%の範囲内であり、このことにより強度面においても優れた特性を示す。すなわち、Alが12%以上になると、凝固過程で熱歪が発生して割れが起こる。また結晶粒界に金属間化合物が生成して800℃以上での熱間加工性が悪くなり、脆くなる。Alが6%以下では、脆性は改善できるものの、Al濃度の不均一なゆらぎが生成できない。かかる知見に基づき、本発明においては、Al含有量を6〜12重量%の範囲内としている。従って、本発明によれば、制振性及び強度面の双方において優れた特性を示すFe−Al合金を提供できる。
上述した本発明のFe−Al合金は、下記工程を経て製造することが可能である。
(1) Al含有量6〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなる合金を熱間加工により塑性加工する塑性加工工程。
(2) 塑性加工した合金を冷間圧延加工する冷間圧延工程。
(3) 冷間圧延加工後の合金を磁気変帯点を超え、1000℃以下の温度で焼鈍する焼鈍処理工程
(4) 焼鈍後に550℃〜600℃の温度まで炉冷する炉冷工程。
(5) 炉冷工程の後、常温まで空冷する空冷工程。
本発明のFe−Al合金は、上記(1),(2)のように塑性加工工程、及び冷間圧延工程を経て得られたFe−Al合金を、さらに結晶構造が変わる温度帯(磁気変帯点)を越え、1000℃以下の温度帯まで加熱する焼鈍工程(工程(3))と、焼鈍後に550℃〜600℃の温度まで炉冷する工程(工程(4))を設けている。これらの工程を経ることにより、先の工程においてFe−Al合金に加えられていた歪みが解消されると共に、Fe−Al合金をなす原子が動きやすくなった状態になる。この状態において、工程(5)の空冷工程によりFe−Al合金を550℃〜600℃の温度から常温まで空冷することにより、不完全な規則相が混在した結晶構造となり、FeAl相が生成される前段階のAl濃度のゆらぎを有するFe−Al合金が形成される。このようにして形成された本発明のFe−Al合金は、制振性及び強度面の双方において優れた特性を示す。
上述した本発明のFe−Al合金は、前記工程(4),(5)に代えて、下記工程(6)を経て製造されるものであっても良い。
(6) 焼鈍処理工程の後、常温まで空冷する空冷工程。
本発明のように、工程(3)においてFe−Al合金に焼鈍処理を施した後、工程(6)において空冷することとした場合、工程(3)までの工程を経ることによりFe−Al合金に加えられていた歪みが解消されると共に、Fe−Al合金をなす原子が動きやすくなった状態になる。この状態において、工程(6)の空冷工程によりFe−Al合金を常温まで空冷することにより、不完全な規則相が混在した結晶構造となり、Al濃度のゆらぎを有するFe−Al合金が形成される。このように工程(4),(5)に代えて工程(6)による処理を施して得られた本発明のFe−Al合金についても、上述した(4),(5)を経て得られたFe−Al合金に匹敵する制振性及び強度を有する。また、工程(4)に係る炉冷工程を必要としないため、その分だけ製造が容易となる。
また、本発明のFe−Al合金の製造方法は、下記工程を含むものである。
(1) Al含有量6〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなる合金を熱間加工により塑性加工する塑性加工工程。
(2) 塑性加工した合金を冷間圧延加工する冷間圧延工程。
(3) 冷間圧延加工後の合金を磁気変帯点を超え、1000℃以下の温度で焼鈍する焼鈍処理工程。
(4) 焼鈍後に550℃〜600℃の温度まで炉冷する炉冷工程。
(5) 炉冷工程の後、常温まで空冷する空冷工程。
本発明のFe−Al合金の製造方法では、塑性加工工程(工程(1))、及び冷間圧延工程(工程(2))を経て得られたFe−Al合金を、結晶構造が変わる温度帯(磁気変帯点)を越え、1000℃以下の温度帯で焼鈍し(工程(3))、550℃〜600℃の温度まで炉冷する(工程(4))。これらの工程を経ることにより、Fe−Al合金に加えられていた歪みが解消されると共に、Fe−Al合金をなす原子が動きやすくなった状態において空冷工程(工程(5))に移行することができる。工程(5)の空冷工程でFe−Al合金を550℃〜600℃の温度から常温まで空冷すると、Fe−Al合金は、合金中にFeAl相が生成される前段階の、Al濃度のゆらぎができる。これにより、制振性及び強度面の双方において優れた特性を示すFe−Al合金が形成される。
上述した本発明のFe−Al合金の製造方法は、前記工程(4),(5)に代えて、下記工程(6)を含むことを特徴とするものであっても良い。
(6) 焼鈍処理工程の後、常温まで空冷する空冷工程。
本発明のFe−Al合金の製造方法のように、工程(3)においてFe−Al合金に焼鈍処理を施した後、工程(6)において空冷することとした場合についても、工程(3)までの工程を経ることによりFe−Al合金に加えられていた歪みが解消される。また、Fe−Al合金をなす原子が動きやすくなった状態になる。本発明の製造方法においては、このような状態において工程(6)においてFe−Al合金を常温まで空冷することとしている。これにより、不完全な規則相が混在した結晶構造となり、Al濃度のゆらぎを有するFe−Al合金が形成される。このように工程(4),(5)に代えて工程(6)による処理を施す本発明のFe−Al合金の製造方法によっても、上述した(4),(5)を経て得られたものに匹敵する制振性及び強度を有するFe−Al合金を製造することが可能となる。
本発明によれば、Al含有量が6〜12重量%であるFe−Al合金であって、優れた制振性を示すFeAl相が生成される前段階の、Al濃度のゆらぎを有するFe−Al合金、及び当該Fe−Al合金の製造方法を提供することができる。
本発明のFe−Al合金に係るX線回折像である。 図1に示したX線回折像の要部を拡大した拡大図である。 Fe−Al系化合物の結晶構造を示した図である。 (a)は本発明のFe−Al合金に係る電子回折像、(b)はA方向プロファイル、(c)はB方向プロファイルである。
≪本発明のFe−Al合金の組成・構造について≫
以下、本発明の一実施形態に係るFe−Al合金について詳細に説明する。本実施形態のFe−Al合金は、Al含有量6〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物(SiO0.1重量%以下;Mn0.1重量%以下、;その他C、N、S、Oなど併せて0.1重量%以下)からなるものである。Al含有量は、6〜12重量%の範囲内であればよいが、好ましくは7〜10重量%であり、さらに好ましくは7.5〜8.5重量%である。
本実施形態のFe−Al合金は、Al含有量が6〜12重量%の範囲内でありつつ、Fe3Al相が生成される前段階の、Al濃度のゆらぎを有する点において特徴的である。すなわち、本実施形態のFe−Al合金は、原子が局所的に規則配列された部位が散在した構造とされており、これに起因してAl濃度のゆらぎ(Al濃度の不均衡)が生じている。このような構造を有することにより、本実施形態のFe−Al合金は、外部から入力された振動エネルギーをAl濃度のゆらぎが形成された部位において吸収し、減衰させることができる。従って、本実施形態のFe−Al合金は、制振性の面において優れた特性を示す。
また、本実施形態のFe−Al合金は、Al含有量が6〜12重量%の範囲内であり、制振性の高さに加えて、強度面においても優れた特性を示す。すなわち、Al含有量が12%以上になると、凝固過程で熱割れが発生する。また結晶粒界に金属間化合物が生成して800℃以上での熱間加工性が低下して脆くなる。一方、Al含有量が6%以下である場合には、前述したような脆性は改善できるものの、ゆらぎが生成しない。そのため、Al含有量を6%以下まで低減させると、外部から入力された振動エネルギーをAl濃度のゆらぎが形成された部位において吸収して減衰させる機能(制振機能)が損なわれてしまう。本実施形態のFe−Al合金は、Al含有量が6〜12重量%の範囲内であるため、高強度であり、かつ制振性の面においても優れている。
≪本発明のFe−Al合金の製造方法について≫
続いて、本実施形態のFe−Al合金の製造方法について説明する。本実施形態のFe−Al合金の製造方法は、下記の工程(1)〜(5)を経て実施される。
[工程(1):塑性加工工程]
先ず、Al含有量6〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなる合金を塑性加工する。具体的には、まず、Fe−Al合金中のAl含有量が所定値となる割合に予め調整したAlとFe素材とを、窒素及び酸素の侵入を防止するために、0.1〜0.01Pa程度の減圧下で溶融した後、鋳型に流し込んで、Fe−Al合金鋳塊を得る。その後、得られた合金鋳塊を圧延、鍛造などの塑性加工(熱間加工)と機械加工により、所定の形状に仕上げる。
工程(1)においては、必要に応じて塑性加工後の合金を焼鈍処理に供してもよい。塑性加工後に焼鈍処理することにより、加工性、制振性、高強度等の合金性能を高めることができる。塑性加工後に焼鈍処理を行う場合、その焼鈍条件については特に制限されないが、具体的には、得られた塑性加工後の合金を700〜1000℃程度の温度に30分〜2時間程度保持する条件が例示される。焼鈍処理時の温度及び時間は、合金の組成、塑性加工条件等を考慮して、上記の範囲から適宜選択すればよい。
[工程(2):冷間圧延工程]
続いて、上記工程(1)において塑性加工した合金に対して冷間圧延加工を行う。なお、塑性加工後に焼鈍処理を行っている場合には、当該冷間圧延加工は、合金を下記冷間圧延温度にまで冷却した後に実施される。
工程(2)の冷間圧延加工時の温度条件としては、合金の再結晶温度以下であれば特に制限されないが、通常、常温で行うことができる。また、冷間圧延加工における圧延加工条件は、特に制限されないが、断面減少率が通常5%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは20〜95%となるような加工条件であることが望ましい。なお、本工程では、1回の冷間圧延加工により上記断面減少率に加工してもよく、また2回以上の冷間圧延加工を行うことにより上記断面減少率に加工してもよい。なお、ここで、「断面減少率」とは、圧延加工前の合金の断面積に対して圧延加工後に減少した断面積の割合(%)であり、下記の(数式1)により算出することができる。
断面減少率[%]={1−(加工後の合金の断面積)/(加工前の合金の断面積)}×100 ・・・ (数式1)
[工程(3):焼鈍処理工程]
次いで、冷間圧延加工した合金に対して焼鈍処理を行う。具体的には、冷間圧延加工を施した合金を磁気変帯点(687℃)以上であって、1000℃(好ましくは850℃)以下の温度に30分〜2時間程度保持して、焼鈍処理する。焼鈍処理時の温度及び時間は、合金の組成、塑性加工条件等を考慮して、上記の範囲から適宜選択すればよい。
[工程(4):炉冷工程]
上述した焼鈍処理工程において焼鈍されたFe−Al合金は、炉冷工程において550℃〜600℃の温度まで炉冷される。炉冷工程における合金の冷却速度については、特に制限されず、焼鈍処理温度や合金の内部歪みの程度等に応じて適宜設定することができる。得られるFe−Al合金に、強度や制振性等においてより一層優れた特性を備えさせるという観点から、当該焼鈍処理後の合金の冷却は、550℃〜600℃の温度までの温度域における冷却速度を10℃/分以下(好ましくは1〜5℃/分程度)とすることが望ましい。このような炉冷工程を設けることにより、Al濃度のゆらぎ(Al濃度不均衡)を一層増大させることができる。
[工程(5):空冷工程]
上述した炉冷工程において冷却されたFe−Al合金は、550℃〜600℃の温度から常温の範囲内においては、空冷により冷却される。空冷工程における冷却速度は、送風量を増減する等して調整することができる。また、空冷工程における冷却速度は、外気温等を考慮して適宜変更することとしても良い。
≪本発明のFe−Al合金の特性について≫
続いて、本発明のFe−Al合金の特性について説明する。上記の製造方法により製造されるFe−Al合金は、高い強度を有し、加工性、絶縁性、透磁性、制振性等の特性の点で優れており、種々の分野で応用することができる。本発明のFe−Al合金は、例えば、その優れた加工性に基づいて、自動車用の高強度材料として有用である。また、本発明のFe−Al合金は、例えば、その優れた絶縁性に基づいて、モーターのコア材料等に使用される絶縁合金として有用である。さらに、本発明のFe−Al合金は、例えば、その優れた透磁性に基づいて、各種の電磁材料等に使用される透磁性合金として有用である。また本発明のFe−Al合金は、熱しやすく冷めにくいという特性を備えており、IH用の調理器具としても有用である。本発明のFe−Al合金は、例えば、その優れた制振性に基づいて、自動車の車体材料、軸受け、金型用プレスのシム、工具材、DVDの筐体、スピーカ部品、精密機器用部材、工具材、制振ブッシュ、スポーツ用具(例えば、テニスのラケットのグリップ等)等に使用される制振合金として有用である。
本発明のFe−Al合金は、上記のような特性を有しており、従来報告されているAl含有量12重量%以下のFe−Al合金とは異なる特性を有している。具体的には、冷間圧延加工の後に焼鈍処理、及び炉冷処理を行い、さらにその後に空冷処理を行うことにより、合金中にFe3Al生成前のAl濃度のゆらぎ(Al濃度不均衡)が生じた状態になっている。このようなAl濃度のゆらぎを有することにより、Fe−Al合金は、従来のAl含有量12重量%以下のFe−Al合金とは異なる特性を具備していると類推される。
また、上記の製造方法により得られるFe−Al合金は、結晶粒子の平均粒径が250μm以下であり、従来のFe−Al合金に比べて、結晶粒子径が小さい組織構造を有している。本発明のFe−Al合金の平均結晶粒子径は、1〜100μmの範囲内であることが好ましく、10〜40μmの範囲内であることがさらに好ましい。このような平均粒子径が小さい結晶粒子の組織構造を有することによって、Fe−Al合金の強度が高まり、加工性、絶縁性、透磁性、制振性等の特性が一層良好になる。なお、本発明において、Fe−Al合金の平均結晶粒径とは、JIS G0551に規定されている「鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法」に従って測定される値を指す。
本発明のFe−Al合金の結晶粒子径は、上記の製造方法を構成する工程(2)〜(5)の各工程の実施条件を適宜変更することに調整できる。具体的には、冷間圧延工程における断面減少率を大きくする程、Fe−Al合金の結晶粒子の平均粒径が小さくなる。また、焼鈍工程における焼鈍温度を高める程、Fe−Al合金の結晶粒子の平均粒径が大きくなる。
≪変形例に係る本発明のFe−Al合金の製造方法について≫
続いて、上述した本実施形態のFe−Al合金の製造方法の変形例について説明する。変形例に係るFe−Al合金の製造方法は、上記工程(1)〜(3)を実施した後、工程(4)、(5)に代えて下記工程(6)を実施するものである。すなわち、変形例に係るFe−Al合金の製造方法においては、工程(1)、工程(2)、工程(3)、及び工程(6)の4工程を経てFe−Al合金を製造する。換言すれば、変形例に係るFe−Al合金の製造方法においては、上記工程(4)の焼鈍処理工程を省略し、工程(5)に代えて空冷の開始温度を焼鈍処理工程における焼鈍温度とした工程(工程(6))を設けたものと言える。以下、工程(6)について説明する。
[工程(6):空冷工程]
工程(6)においては、上述した工程(3)の焼鈍処理工程において焼鈍処理されたFe−Al合金を焼鈍処理温度、すなわち磁気変帯点(687℃)以上であって、1000℃(好ましくは850℃)以下の温度から空冷により冷却される。工程(6)における冷却速度は、上記工程(5)の場合と同様に送風量を増減する等して調整することができる。また、工程(6)における冷却速度は、外気温等を考慮して適宜変更することとしても良い。
≪変形例に係る本発明の製造方法により製造されたFe−Al合金の特性について≫
本変形例に係るFe−Al合金の製造方法のように、工程(3)の焼鈍処理工程の後に常温まで空冷したものについても、従来報告されているAl含有量12重量%以下のFe−Al合金とは異なる特性を有している。具体的には、冷間圧延加工の後に焼鈍処理を行い、さらにその後に空冷処理を行うことにより、合金中にFeAl生成前のAl濃度のゆらぎ(Al濃度不均衡)が生じた状態になっている。このようなAl濃度のゆらぎを有することにより、制振性の面において優れた特性を示す。
上記の製造方法により製造されるFe−Al合金についても、高強度かつ制振性の面においても優れた性能を示す。加えて、加工性、絶縁性、透磁性等の特性においても優れており、種々の分野で応用することができる。本発明のFe−Al合金は、自動車用の高強度材料、モーターのコア材料等に使用される絶縁合金、各種の電磁材料等に使用される透磁性合金、IH用の調理器具、自動車の車体材料、軸受け、金型用プレスのシム、工具材、DVDの筐体、スピーカ部品、精密機器用部材、工具材、制振ブッシュ、スポーツ用具(例えば、テニスのラケットのグリップ等)等、様々な用途において利用することができる。
また、変形例に係る製造方法により得られるFe−Al合金についても、結晶粒子の平均粒径が250μm以下であり、従来のFe−Al合金に比べて、結晶粒子径が小さい組織構造を有している。このFe−Al合金の平均結晶粒子径は、1〜100μmの範囲内であることが好ましく、10〜40μmの範囲内であることがさらに好ましい。このような平均粒子径が小さい結晶粒子の組織構造を有することによって、Fe−Al合金の強度が高まり、加工性、絶縁性、透磁性、制振性等の特性が一層良好になる。
本発明のFe−Al合金の結晶粒子径は、上記の製造方法を構成する各工程の実施条件を適宜変更することに調整できる。具体的には、冷間圧延工程における断面減少率を大きくする程、Fe−Al合金の結晶粒子の平均粒径が小さくなる。また、焼鈍工程における焼鈍温度を高める程、Fe−Al合金の結晶粒子の平均粒径が大きくなる。
≪本発明のFe−Al合金の結晶構造解析等の結果について≫
Al濃度の不均一な、いわゆる「ゆらぎ」の存在を明確にするには、熱処理によって「ゆらぎ」が起こっていること、及び「ゆらぎ」からFeAlに変態していることの確認が必要である。かかる知見の下、構造解析のためのX線による結晶構造解析、及びミラー指数の解析のためのTEM観察を行った。以下、それぞれの結果について説明する。
先ず、上記の製造方法により作成したFe−Al合金について結晶構造解析を行った結果について説明する。なお、本結晶構造解析においては、測定装置として「Smart Lab Guidance」(株式会社 リガク製)を用い、簡易広角集中法によりX線回折測定を行った。
上述した方法により本発明のFe−Al合金についてX線回折測定したところ、図1及び図2に示すようなX線回折像が得られた。このX線回折像を解析したところ、Fe3Al、FeAl、及びα−Feのピークが確認された。また、これに加えて、図1中に丸印を付して示すように、Fe3Al、FeAl、及びα−Feとは異なるミラー指数を有するピークが確認された。このピークは、Fe3Alの(220)面近傍に発現している。また、Fe13Al3は、Fe3Alと組成比が近いことから、結晶構造についてもFe3Alと近似している。これらの観点から、図1及び図2において丸印を付したピークは、Fe13Al3によるものであると考えられる。
また、図4に示す本発明のFe−Al合金に係る<001>入射の電子回折像により、Fe3Alの生成が確認された。
上述したように、本発明のFe−Al合金は、α−FeやFeAlだけでなく、Fe3AlやFe13Al3が混在したものである。また、α−Fe、FeAl、Fe3Al、及びFe13Al3においてAlの配列が相違している。そのため、本発明のFe−Al合金は、Al濃度が不均一、すなわちAl濃度のゆらぎを有することがわかる。
なお、上述した変形例に係る本発明のFe−Al合金の製造方法により製造したFe−Al合金についてのX線回折像及び電子回折像も同様のものであった。従って、変形例に係る製造方法によって製造されたFe−Al合金についても、α−FeやFeAlだけでなく、FeAlやFe13Al3が混在したものであり、Al濃度が不均一、すなわちAl濃度のゆらぎを有するものであった。
≪空冷工程の開始温度が制振性に与える影響について≫
上述した製造方法において、空冷工程の開始温度が制振性に与える影響について検討した実験結果について説明する。本実験例においては、サンプルA,B,Cからなる3種類のFe−Al合金を製造した。サンプルAは、上記変形例に係るFe−Al合金の製造方法により製造したサンプルである。サンプルAは、工程(6)における空冷開始温度を750℃として製造された。サンプルB及びサンプルCは、上記Fe−Al合金の製造方法(工程(1)〜工程(5))により製造された。サンプルBは、工程(5)における空冷開始温度を600℃として空冷することにより製造された。また、サンプルCは、工程(5)において空冷開始温度を300℃として空冷することにより製造された。サンプルA,B,Cは、それぞれ短冊状(1t×20×300)に成形した。制振性能に関する試験は、共振法により行なった。
上述したサンプルA,B,Cについて、ひずみ振幅[%]と、損失係数ηとの関係を調べた。その結果を下記表1に示す。
上記表1に示すように、上記工程(1)〜(5)の製造工程に則り、空冷開始温度を600℃として空冷工程を開始したサンプルBは、ひずみ振幅の条件によらず損失係数ηが高い値を示した。また、上記工程(1),(2),(3)及び(6)の製造工程を経て作成された空冷開始温度が750℃であるサンプルAについても、損失係数ηがサンプルBに匹敵する程度に高い値を示した。一方、空冷開始温度が300℃であるサンプルCについては、ひずみ振幅の条件によらず他のサンプルA,Bに比べて損失係数ηが低かった。このように、本発明の製造条件に合致した空冷開始温度から空冷を開始することにより、制振性を向上させうることが判明した。
本発明によれば、Al含有量を6〜12重量%にしつつ、Al濃度のゆらぎを有するFe−Al合金を提供することができる。これにより、制振性及び強度面の双方の観点から実用性に優れたFe−Al合金を提供でき、例えば自動車の車体材料、軸受け、金型用プレスのシム、工具材、DVDの筐体、スピーカ部品、精密機器用部材、工具材、制振ブッシュ、スポーツ用具(例えば、テニスのラケットのグリップ等)等のような制振性が求められる多岐の分野において有効利用可能である。

Claims (5)

  1. Al含有量6〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
    Al濃度のゆらぎを有することを特徴とするFe−Al合金。
  2. 下記工程を経て製造されることを特徴とする請求項1に記載のFe−Al合金。
    (1) Al含有量6〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなる合金を熱間加工により塑性加工する塑性加工工程。
    (2) 塑性加工した合金を冷間圧延加工する冷間圧延工程。
    (3) 冷間圧延加工後の合金を磁気変帯点以上であって、1000℃以下の温度で焼鈍する焼鈍処理工程。
    (4) 焼鈍後に550℃まで炉冷する炉冷工程。
    (5) 炉冷工程の後、常温まで空冷する空冷工程。
  3. 前記工程(4),(5)に代えて、下記工程(6)を経て製造されることを特徴とする請求項2に記載のFe−Al合金。
    (6) 焼鈍処理工程の後、常温まで空冷する空冷工程。
  4. 下記工程を含むFe−Al合金の製造方法。
    (1) Al含有量6〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなる合金を熱間加工により塑性加工する塑性加工工程。
    (2) 塑性加工した合金を冷間圧延加工する冷間圧延工程。
    (3) 冷間圧延加工後の合金を磁気変帯点以上であって、1000℃以下の温度で焼鈍する焼鈍処理工程。
    (4) 焼鈍後に550℃まで炉冷する炉冷工程。
    (5) 炉冷工程の後、常温まで空冷する空冷工程。
  5. 前記工程(4),(5)に代えて、下記工程(6)を含むことを特徴とする請求項4に記載のFe−Al合金の製造方法。
    (6) 焼鈍処理工程の後、常温まで空冷する空冷工程。
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