JP5724613B2 - 制振合金材の製造方法と制振合金材 - Google Patents
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Description
以下に、本発明の実施の形態について具体的に説明する。先ず、本発明の制振合金材を構成する鉄合金について説明する。本発明の制振合金材は、Fe−Cr−Al−Mn系の鉄合金からなる。すなわち本発明の制振合金材は、主成分である鉄(Fe)に、添加元素としてクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、及びマンガン(Mn)を特定のバランスで配合(添加)している。
クロムは磁気特性の高い元素であり、アルミニウム及びマンガンと共存することで制振性を飛躍的に向上する。本発明の制振合金材は、鉄をベースとしてクロムを含有することで、主として磁壁(磁界の境界)の移動により振動を吸収する強磁性型の制振合金材となる。当該クロムの含有量は、鉄合金(制振合金材)の全量基準で2.0〜6.0重量%、好ましくは2.0〜4.0重量%、より好ましくは2.5〜3.5重量%とする。クロムの含有量が過少では、磁気特性の向上効果が小さく優れた制振性が得られない。一方、クロムの含有量が過多であると、例えば750℃以上に加熱しても鉄合金中にオーステナイト(γ)相が生成せずフェライト(α)相が安定化する。そのため、熱間圧延時の高温環境下においてα相が粗大化することで、加工性や延性が低下してしまう。
アルミニウムは、制振性及び軟磁気特性の向上に有効である一方、鉄合金のα相を安定化させる元素である。当該アルミニウムの含有量は、鉄合金の全量基準で3.0〜5.5重量%、好ましくは4.0〜5.0重量%とする。アルミニウムの含有量が過少では、優れた制振性が得られない。一方、アルミニウムの含有量が過多であるとα相が粗大化して延性が低下してしまい、圧延工程等において制振合金材が欠損してしまうおそれが高くなる。
マンガンは鉄合金のγ相安定化元素として知られており、室温(常温)ではα相の他にCr2FeMn化合物からなるσ相が生成され、高温ではγ相が安定化する。これにより、アルミニウムに起因するα相の粗大化を抑制しながら、鉄合金の凝固組織が微細化されて延性が向上する。このとき、凝固組織の微細化には金属組織に占めるα相とγ相tの面積比が影響する。したがって、アルミニウムの含有量が同じ鉄合金であっても、マンガンの含有量によって制振性が異なってくる。そこで、マンガンの含有量は、鉄合金の全量基準で0.5〜1.5重量%、好ましくは0.7〜1.3重量%とする。マンガンとアルミニウムとをこのようなバランスで配合していることで、優れた制振性と加工性とを両立させることができる。すなわち、マンガンの含有量が過多では、鉄合金中の磁壁を移動し難くして振動の吸収能(減衰能)が低下する。一方、マンガンの含有量が過少では、延性が低下する。
次に、上記鉄合金からなる制振合金材の製造方法について説明する。本発明の制振合金材は、造塊工程と、熱間圧延工程と、中間焼鈍工程と、二次圧延工程と、焼鈍工程とを、この順で経て製造される。
造塊工程は、鉄合金の鋳塊を得る工程である。鋳塊は、代表的にはその名のごとく公知の方法でインゴット形状に鋳造溶製することができるが、溶製以外にも反応焼結により製造することもできる。溶製であれば、緻密で安定した品質の鋳塊を安価に得られる点で好ましい。なお、酸化物等の介在によって制振性が低下し得るので、不活性ガス雰囲気又は真空雰囲気下において溶製や焼結を行うことが好ましい。
熱間圧延工程は、鋳塊(鉄合金)の再結晶温度以上に加熱した状態で圧延により塑性加工を施す工程である。具体的には、鉄合金の再結晶温度以上に予熱した状態で圧延する。その予熱温度は少なくとも750℃以上とし、好ましくは850〜1,300℃、より好ましくは1,000〜1,250℃である。予熱時間は、0.75〜1時間程度でよい。鋳塊を再結晶温度以上に加熱することでγ相が生成され、延性が向上する。また、制振合金材の室温(常温)における集合組織の配向が立方配向となることで、制振性も向上する。なお、熱間圧延工程における仕上げ温度は少なくとも750℃以上とし、好ましくは800℃以上とする。当該仕上げ温度が750℃未満となると、熱間圧延による上記作用効果が的確に得られないからである。
中間焼鈍工程は、熱間圧延工程により得られた圧延材を、二次圧延する前に時効処理する工程である。当該中間圧延工程では、圧延材(鉄合金)の再結晶温度以上に加熱した後に徐冷する。これにより、熱間圧延工程において導入された加工歪みや残留応力が開放されて除去ないし低減されることで、的確に磁壁が形成され易くなる。延いては、制振性の向上に有利となる。この意味において、中間焼鈍工程は焼きならし工程とも言える。中間焼鈍工程における焼鈍温度(加熱保持温度)は、少なくとも750℃以上とし、好ましくは850〜1300℃、より好ましくは1,000〜12500℃である。中間焼鈍工程では、このような焼鈍温度に0.5〜2時間程度保持した後に、徐冷すればよい。徐冷は、空冷でも加熱炉内における炉冷でも構わない。酸化防止には炉冷が好ましい。なお、中間焼鈍工程では、従来から一般的な焼鈍と同様に、一定速度で昇温・冷却すればよい。冷却速度としては、1〜10℃/分、好ましくは3〜6℃/分とすればよい。
二次圧延工程は、中間焼鈍工程後の圧延材を、これを構成する鉄合金の再結晶温度未満の温度範囲において圧延により塑性加工を施す工程である。このような条件を満たす二次圧延としては、従来から一般的に行われている室温にて圧延する冷間圧延の他、所定温度に加熱した状態で圧延する温間圧延も挙げられる。当該二次圧延工程を経ることで、最終的な製品(各種構造部材)の形状に近づけることができ、最終的な製品形状へのプレス加工等において製品の欠損防止やコスト削減などに有利となる。但し、冷間圧延工程では、鉄合金(制振合金材)中に加工方向に伸びるファイバー状の組織が生成し、これにより制振性が低下するおそれがある。したがって、二次圧延工程は、温間圧延とすることが好ましい。
焼鈍工程は、二次圧延工程により得られた圧延材を、これを構成する鉄合金の再結晶温度以上に加熱した後に徐冷する工程である。焼鈍工程における焼鈍温度(加熱保持温度)は、少なくとも900℃以上とし、好ましくは1,000〜1,300℃、より好ましくは1,050〜1,250℃である。焼鈍温度での保持時間は、0.5〜2時間程度でよい。これにより、それまでの処理工程において導入された加工歪や転位が除去ないし低減されて組織が軟化することで、延性や制振性が向上する。すなわち、焼鈍工程は焼きならしも兼ねている。
このような処理工程を経て得られたFe−Cr−Al−Mn系の制振合金材は、優れた制振性を有する。特に、上記配合バランスのFe−Cr−Al−Mn系の制振合金材であれば、保磁力が0.4〜0.65Oe(32〜52A/m)となり、低歪振幅域、高周波数域において優れた制振性を有する。具体的には、1×10−6〜1×10−5の低歪振幅域、1,000〜10,000Hzの高周波数域において、制振性を指標する損失係数(η)が0.03以上となる。保磁力が0.45〜0.6Oe(36〜48A/m)であれば、損失係数(η)はより高くなる。保磁力が0.57〜0.59Oe(約45〜47A/m)であれば損失係数(η)は最も高くなり、0.04を超える。
Claims (7)
- 2.0〜6.0重量%のクロムと、3.0〜5.5重量%のアルミニウムと、0.5〜1.5重量%のマンガンとを含み、残部が炭素、リン、硫黄等の不可避的不純物及び鉄からなるFe−Cr−Al−Mn系の制振合金材の製造方法であって、
鋳塊を得る造塊工程と、
該造塊工程により得られた前記鋳塊を、これの再結晶温度以上に加熱した状態で熱間圧延する熱間圧延工程と、
該熱間圧延工程により得られた圧延材を、これの再結晶温度以上に加熱した後に徐冷する中間焼鈍工程と、
該中間焼鈍工程後の圧延材を、これの再結晶温度未満の温度範囲で圧延する二次圧延工程と、
該二次圧延工程により得られた圧延材を、これの再結晶温度以上に加熱した後に徐冷する焼鈍工程と、を含み、
前記焼鈍工程では、目的とする焼鈍温度へ昇温する過程において、少なくとも1回以上600〜800℃で保持し、徐冷時には、前記圧延材のキュリー点±10℃から冷却速度を速めることを特徴とする、制振合金材の製造方法。 - 前記焼鈍工程の徐冷時には、前記焼鈍温度から前記キュリー点±10℃までは加熱炉内で炉冷し、
前記キュリー点±10℃からはガス冷却する、請求項1に記載の制振合金材の製造方法。 - 前記熱間圧延工程では、1パス当たりの最大圧下率{(加工後の厚さの変化分/加工前の厚さ)×100}を20〜40%とし、且つ最終的な合計圧下率を80〜90%とする、請求項1または請求項2に記載の鉄合金製制振合金材の製造方法。
- 前記二次圧延工程では、前記圧延材を200〜400℃に加熱した状態で温間圧延する、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の鉄合金製制振合金材の製造方法。
- 前記二次圧延工程では、1パス当たりの最大圧下率を5〜25%とし、且つ最終的な合計圧下率を10〜40%とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の鉄合金製制振合金材の製造方法。
- 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の製造方法によって製造されたFe−Cr−Al−Mn系の制振合金材であって、
保磁力が0.4〜0.65Oeであることを特徴とする、制振合金材。 - 1×10-6〜1×10-5の低歪振幅域、1,000〜10,000Hzの高周波数域において、制振性を指標する損失係数(η)が0.03以上である、請求項6に記載の制振合金材。
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