JP3807328B2 - 制振合金およびその製造方法ならびにこれを用いた制振部品など - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、安定した制振特性を有するMn基制振合金およびその製造方法ならびに上記合金を用いた制振部品などに関する。
【0002】
【従来の技術】
加工性や成形性などに優れ且つ振動や騒音対策に有効な双晶型のMn基制振合金が知られている(特許第2,849,698号公報参照)。
ところで、上記Mn基制振合金は、鉄基合金に比較して、融点(1244℃)が低く蒸気圧が高いMnを61〜80wt%含有している。
このため、上記Mn基制振合金を、鉄基合金に用いられる通常の溶解方法により溶解しようとすると、以下のような問題点があった。
【0003】
(1)溶解する雰囲気における酸素分圧(PO)が大きい場合、Mnは酸素との親和力が大きいため、酸化反応(Mn+O→MnO)により、酸化物(MnO)を多量に生成する。かかる酸化物は上記Mn基制振合金における双晶組織の成長を阻害するため、かかる制振合金の制振特性が低下する。
(2)溶解する雰囲気圧力が低い(即ち、高真空度)場合、Mnの蒸気圧が高いことにより、溶解中においてかかるMnの蒸発量が多くなるため、Mnの含有量を所定の範囲に安定させることが困難となる。
(3)上記Mn基制振合金を1500℃以上の温度で溶解した場合、蒸気圧の高いMnの蒸発量が多くなるため、やはりMnの含有量が安定化しない。
(4)溶解時に生成する酸化物(MnO)は、低融点の共晶組織を生成し易いため、溶解に用いる容器の耐火物を損傷してその寿命を著しく低下させたり、局部溶損による溶湯漏れ事故を招くおそれがある。
【0004】
【発明が解決すべき課題】
本発明は、以上に説明した従来の技術における問題点を解決し、安定した制振特性を有するMn基制振合金およびこれを確実に得られる製造方法ならびに当該制振合金を用いた制振部品や制振製品を提供する、ことを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、発明者らの鋭意研究および調査の結果により得られたもので、溶解時の諸条件を規定すると共に、Mn基制振合金における不純物を低減する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の制振合金(請求項1)は、Cu:16.9〜27.7mass%、Ni:2.1〜8.2mass%、Fe:1.0〜2.9mass%、C:0.05mass%以下、O:0.06mass%以下、N:0.06mass%以下、その他がMnおよび不可避的不純物からなり、Mnの蒸発によるC、O、Nの相対濃度アップを防止してなる、ことを特徴とする。
【0006】
これによれば、Cu、Ni、およびFeを所定の範囲とし、且つC、O、およびNを制限したため、Mnの蒸発によるC、O、Nの相対濃度アップが防止されていると共に、酸素汚染による酸素量の増加なども防止できる。この結果、合金中の非金属介在物(炭化物、酸化物、窒化物)の生成量を減らし且つ清浄な合金組成となるため、熱処理時における双晶組織の生成を促進し、応力負荷時における双晶の運動の阻害要因を低減することにより、制振特性の向上を図ることが可能となる。
従って、歪みが大きい領域まで制振特性を発揮できると共に、機械的強度が安定するため、成形加工性および溶接性に優れた非磁性の制振部品や制振製品を容易に提供することが可能となる。
【0007】
ここで、上記制振合金における各成分の範囲について説明する。
Cuを16.9〜27.7mass%としたのは、16.9mass%未満では双晶が生成せず、27.7mass%超ではその偏析が大きくなり、所要の制振特性が得られないためであり、より好ましい範囲は、19.7〜25.0mass%である。
Niを2.1〜8.2mass%としたのは、MnおよびCuに次ぐ第3元素として添加することにより、所要の制振特性が得られるが、2.1mass%未満では双晶の生成に寄与せず、8.2mass%超では双晶生成の効果が飽和するためである。
Feを1.0〜2.9mass%としたのは、Mn、Cu、およびNiに続く第4元素として添加すると、所要の制振特性が得られるが、1.0mass%未満では双晶の生成に寄与せず、2.9mass%超では双晶生成の効果が飽和するためである。
C:0.05mass%以下およびN:0.06mass%以下としたのは、これらよりも多くすると、Mnの蒸発によりC、Nの相対濃度がアップするため、所要の制振特性が得られなくなるためである。
Oを0.06mass%以下としたのは、これよりも多くなると、上記制振合金において、酸素汚染によるMnOおよび酸素量の増加が生じるためである。
【0008】
一方、本発明の制振合金の製造方法(請求項2)は、酸素分圧が1013.25Pa(0.01atm)以下で且つ全圧力が66661Pa以上の不活性雰囲気下において、Cu:16.9〜27.7mass%、Ni:2.1〜8.2mass%、Fe:1.0〜2.9mass%、その他がMnおよび不可避的不純物からなる制振合金用の原料を、当該合金の融点(960〜1140℃)+50℃〜1480℃の範囲で溶解する溶解工程を、含む、ことを特徴とする。
これによれば、溶解雰囲気の酸素分圧を抑えて酸化物(MnO)の生成を抑制できるため、双晶組織の成長を促進でき、且つかかる雰囲気を形成する不活性ガスの圧力を上記圧力範囲としたため、Mnの蒸発を防ぎ且つその成分範囲を安定化することができる。しかも、溶解時の加熱温度を当該制振合金の融点よりも50℃高い温度乃至1480℃の範囲としたため、Mnの蒸発を抑制し且つその成分範囲を安定にすることができる。従って、前述したC、O、Nを抑制した制振合金を確実に溶製することができる。
【0009】
尚、上記不活性ガスには、アルゴンや窒素など、あるいはこれらの混合ガスが含まれる。また、上記真空度の66661Paは、500torrに相当する。更に、溶解温度の下限値を当該合金の融点(960〜1140℃)+50℃としたのは、上記組成の合金の融点を超えて操業可能な溶解を行うためである。
一方、溶解温度の上限値を1480℃としたのは、Mnの蒸発を抑制すると共に、MnOとAlとの共晶物の生成を予防するためである。より好ましい溶解温度の範囲は、1200〜1300℃である。更に、上記製造方法は、上記溶解工程の後に、例えば熱間または冷間鍛造→圧延→機械加工→熱処理などの各種の工程が含まれ得る。
【0010】
また、本発明には、前記溶解工程において、前記制振合金用の原料は、耐火物としてMgO−Alを含む容器に装入され且つ溶解される、制振合金の製造方法(請求項3)も含まれる。これによれば、MnOと反応しにくく、化学的に安定で、且つ耐熱衝撃性および耐食性に優れたスピネル(AB)型の耐火物(MgO−Al)の容器を用いるため、その損耗や局部的溶損を防ぎ、安定した溶解を確実に行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明の制振部品または制振製品(請求項4)は、Cu:16.9〜27.7mass%、Ni:2.1〜8.2mass%、Fe:1.0〜2.9mass%、C:0.05mass%以下、O:0.06mass%以下、N:0.06mass%以下、その他がMnおよび不可避的不純物からなり、Mnの蒸発によるC、O、Nの相対濃度アップを防止してなる制振合金を、所要の形状に成形した、ことを特徴とする。
これによれば、上記制振合金を振動部分に適用した部品や製品においては、周波数依存性が少なく且つ歪みが大きい領域まで制振特性を発揮できる制振部品または制振製品となる。
尚、上記制振合金を所要の形状に成形するには、例えば溶製された制振合金を、鋳造、熱間鍛造、または熱間圧延し、更に冷間鍛造または冷間圧延したり、プレス加工や切削加工などを施す公知の金属加工プロセスやその組合せが用いられる。そして、これらの成形工程の後で熱処理を施すことが望ましい。
【0012】
更に、本発明には、前記制振部品は、機械要素、機械加工用工具、金属加工装置のベースまたはケーシング、スペーサ、ライナー、パイプ、放熱板、バルブ、エンジン部品、電子部品、スポーツ用品の部品、あるいは、ダクトや配管の留め具の何れかである、制振部品(請求項5)も含まれる。
これによれば、前記制振特性を発揮できる制振部品を確実に提供可能となる。
尚、上記機械要素には、ボルト、ナット、ネジ、座金、軸受、バネ、回転軸、チェーンなど、機械加工用工具には、カッター、バイト、シャンク、ハンマーなど、金属加工装置には、旋盤、フライス盤、ボール盤、NC制御加工盤、マシニングセンターなど、電子部品には、プリント基板、コンデンサ、トランジスタ、ICチップ、トランス、モーター部品など、エンジン部品には、ピストンリング、ピストンロッド、燃料バルブなど、スポーツ用品の部品には、ゴルフクラブヘッド、パターヘッド、テニスやバトミントン用のラケット枠など、が含まれる。
【0013】
加えて、本発明には、前記制振製品は、搬送装置、音響/映像機器(音響機器と映像機器の少なくとも一方からなる機器を含む)、医療機器、精密測定機器、センサー、輸送機器、家庭用電気機器、産業用機器、空調機器、コンピュータ、プリンタ、複写機、開口部用建材、開閉機器、スポーツ用品、または、文房具の何れかである、制振製品(請求項6)も含まれる。これによれば、前記制振特性を発揮できる制振製品を確実に提供可能となる。
尚、上記搬送装置には、各種のコンベア、エスカレータ、エレベータ、ホイスト、クレーンなど、音響・映像機器には、アンプ、チューナ、レコード・DVD・またはMDなど各種のプレーヤ、オーディオデッキ、ビデオデッキ、スピーカ、マイクロホン、ヘッドホン、各種テレビ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話機などが含まれる。
【0014】
また、上記医療機器には、各種検査装置、各種手術支援機器、歯科用治療機器など、輸送機器には、自動車や電車などの車両、船舶、航空機、これらのエンジンや駆動源まわりの製品(パワーステアリング、コラム装置、燃料噴射制御装置、シリンダブロックなど)、家庭用電気機器には、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、オーブン、掃除機、食器洗い機、扇風機、生ゴミ処理機など、が含まれる。
更に、上記産業用機器には、各種ポンプ、モータ、コンプレッサ、フォークリフトやその爪、チェーンソーなど、空調機器には、エアコン、屋外熱交換器、熱媒体ダクトなど、コンピュータには、ハードディスクなどの各種のドライブ装置など、開口部用建材には、自動ドアや回転ドアなど、開閉機器には、室内や車両のカーテン開閉機器など、スポーツ用品には、野球用バット、テニスやバドミントンのラケット、ホッケー用スティク、ボート用オール、スキー用ストック、サッカーやホッケーのゴールなどが含まれる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明の制振合金を得るための製造方法における溶解工程を示す。
予め、制振合金用の原料を用意する。この原料は、Cu:16.9〜27.7mass%、Ni:2.1〜8.2mass%、Fe:1.0〜2.9mass%、その他がMnおよび不可避的不純物からなる。
尚、以下において、「mass%」は、便宜上「wt%」として表す
【0016】
一方、図1に示すような溶解装置(減圧誘導加熱炉)1を用意する。溶解装置1は、図示のように、垂直断面がほぼ楕円形を呈する気密性で金属製の本体2およびその上に載置する蓋3と、上記本体2内に収容された容器6と、を備えている。蓋3の頂部には、図示しない真空ポンプなどに接続される給・排気管5が接続される。容器6は、図1に示すように、平面視が円形で且つ円柱形の収容部7を有する。かかる容器6は、少なくとも収容部7の表層付近がスピネル(AB)型である耐火物(MgO−Al)を含む耐火物から形成される。また、容器6の外周側には、一定の間隔を置いて、高周波誘導コイル8が螺旋状に巻き付けられている。尚、かかるコイル8は、図示しない高周波電源に接続されている。
【0017】
先ず、前記原料を容器6の収容部7内に装入した後、蓋3を本体2の上部に載置して溶解装置1の内部4を密閉し且つ減圧する。次に、内部4にアルゴンガスなどを供給して、この内部4を酸素分圧が1013.25Pa(0.01atm)以下で且つ全圧力が66661Pa(500torrに相当)以上の不活性雰囲気下とする。次いで、高周波誘導コイル8に所定の高周波電流を通電して、収容部7の原料を誘導加熱すると、かかる原料は、その融点を越えて加熱され、溶解して溶湯Mとなる。かかる溶湯Mの状態で、当該合金の融点(960〜1140℃)+50℃〜1480℃の温度範囲に所定時間にわたり保持する。
【0018】
この間において、容器6を含む溶解装置1の内部4は、酸素分圧が1013.25Pa以下で且つ全圧力が66661Pa以上の不活性雰囲気に維持されている。このため、Mnの酸化物(MnO)の生成を抑え、且つMnの蒸発を抑制することができる。また、溶解時の温度を当該制振合金の融点(960〜1140℃)+50℃〜1480℃の範囲としたため、1500℃付近におけるMnOとAlとの共晶組織の生成を防止することができる。更に、容器6は、かかる溶湯に接触する収容部7の表層付近がスピネル型の耐火物(MgO−Al)であるため、MnOと反応しにくく、収容部7の表面が急激に損耗したり、局部溶損による漏湯事故を防いで、安定した溶解を行うことができる。
【0019】
以上の溶解工程を経ることにより、Cu:16.9〜27.7wt%、Ni:2.1〜8.2wt%、Fe:1.0〜2.9wt%、C:0.05wt%以下、O:0.06wt%以下、N:0.06wt%以下、その他がMnおよび不可避的不純物からなり、双晶組織を生成し易くなって、歪みが大きい領域まで制振特性を発揮し得ると共に、機械的強度も向上するため、加工成形性や溶接性に優れ且つ非磁性である本発明の制振合金が得られる。この制振合金の溶湯を常法に沿って、所定の鋳型でインゴットとし、熱間鍛造または熱間圧延し、更に冷間鍛造、冷間圧延、プレス、または押出成形などを行い、更には所要の切削、曲げ、絞り、圧縮加工などを施すことにより、所要の形状および寸法を有する前記の多様な制振部品や制振製品を得ることができる。
【0020】
【実施例】
ここで、本発明の具体的な実施例を、比較例と対比して説明する。
Cu:22.4wt%、Ni:5.2wt%、Fe:2.0wt%、その他がMnおよび不可避的不純物からなるMn基合金用の原料を用意した。これを前記溶解装置1とアルゴンガスとを用いて、表1に示す溶解条件で個別に5kgずつ溶解することにより、実施例1〜4の制振合金を得た。
また、上記と同じ原料を、溶解装置1などを用いて、表1に示す溶解条件で同じ重量ごとにほぼ同様の時間で溶解し、比較例1〜5の制振合金を得た。溶製された各例の制振合金におけるC、O、Nの含有量も併せて表1中に示した。
【0021】
【表1】
Figure 0003807328
【0022】
各例の制振合金のインゴットに鍛造→圧延→機械加工→熱処理を施して、JISに規定する形状に成形した引張試験片を個別に得た。これらに対し、JIS:Z2241に従って、個別に引張試験を行った。
また、制振特性(制振減衰能)は、その評価方法の1つである対数減衰率(δ)を、各例の上記試験片とは別に作製した厚さ1mm×幅10mm×長さ160mmの薄板試料を用いて、中央加振法により室温で測定した。
上記引張試験により得られた各例における引張強さ(σ/MPa)、および上記中央加振法による対数減衰率(δ)を、表2に示した。
尚、対数減衰率は、振幅歪みが5×10−4における値である。
【0023】
【表2】
Figure 0003807328
【0024】
表2によれば、実施例1〜4は、優れた制振特性および500MPa以上の引張強さを有することが判明した。
一方、比較例1は、溶解時の酸素分圧が高いため、MnOが多く生成し、且つ酸素汚染により酸素量も増加していた。この結果、制振特性がやや低下し且つ引張強さも低くなった。また、比較例2は、低い圧力(高い真空度)下で溶解したため、Mnの蒸発量が増え、それによってC、O、Nの含有量も全て増加した。この結果、制振特性と引張強さとの双方が低下した。
【0025】
更に、比較例3は、溶解温度が高過ぎたため、Mnの蒸発量が増えたことによりC、O、Nの含有量も増加した。この結果、比較例2と同様の結果となった。
加えて、比較例4,5は、溶解装置1でそれぞれ用いた容器6の耐火物を、マグネシア(MgO)またはアルミナ(Al)のみとしたため、これらの耐火物が溶損した。この結果、耐火物中の酸素とMnとが酸化物を生成し、酸素汚染による酸素量が増加したため、制振特性がやや低下し且つ引張強さも低下した。
以上の結果から、本発明による制振合金およびその溶解工程を含む製造方法の作用が確認され且つそれらの効果が裏付けられた。
【0026】
本発明は、以上に説明した形態および各実施例に限定されるものではない。
本発明の制振合金は、前記の成形工程の後で、熱処理を施すことで、優れた制振特性を顕在化させた制振部品や制振製品とすることができる。
また、本発明の制振合金から所要の形状に成形された本発明の制振部品または制振製品は、非磁性でもあるため、その近傍に制御用電子回路や磁気センサが用いられても、これらに悪影響を及ぼすことがなく誤動作を招くおそれもない。
更に、本発明の製造方法には、前記溶解装置(減圧誘導加熱炉)1に限らず、真空(減圧)アーク加熱炉、または溶湯と耐火物とが接触しない真空(減圧)浮揚溶解炉や真空(減圧)半浮揚溶解炉を用いて、前記溶解工程を行うことも可能である。
また、前記制振製品の文房具には、ケースや内部品に制振合金を用いたシャープペンシルやボールペン、またはペン先をも制振合金とした万年筆も含まれる。尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0027】
【発明の効果】
以上に説明した本発明の制振合金(請求項1)によれば、Cu、Ni、およびFeを所定の範囲とし且つC、O、およびNを制限したため、Mnの蒸発によるC、O、Nの相対濃度アップが防止されていると共に、酸素汚染を防止できる。このため、合金中の非金属介在物(炭化物、酸化物、窒化物)の生成量を減らし且つ清浄な合金組成となるので、熱処理により双晶組織の生成を促進できると共に、応力負荷時における双晶の運動の阻害要因を低減できることにより、制振特性の向上が図れる。従って、各種の振動を確実に吸収することが可能となる。
【0028】
一方、本発明の制振合金の製造方法(請求項2)によれば、溶解雰囲気の酸素分圧を抑えて、酸化物の生成を抑制して双晶組織の成長を促すと共に、かかる雰囲気を形成する不活性ガスの圧力を前記圧力範囲として、Mnの蒸発を防ぎ、その成分範囲を安定化することができる。しかも、溶解時の加熱温度を前記範囲としたため、Mnの蒸発を抑制して、その成分範囲を安定にすることができる。従って、C、O、Nを抑制し且つ優れた制振特性の制振合金を確実に溶製できる。
【0029】
また、請求項3の制振合金の製造方法によれば、MnOと反応しにくく、化学的に安定で且つ耐熱衝撃性や耐食性に優れたスピネル型の耐火物(MgO−Al)の容器を用いるため、その損耗や局部的溶損を防ぎ、安定した溶解を確実に行うことができる。
更に、本発明の制振部品や制振製品(請求項4)によれば、振動部分に適用される部品や製品を、双晶組織の運動により、歪みが大きい領域まで制振特性を発揮できる制振部品または制振製品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造法における溶解工程を示す概略図。
【符号の説明】
6…容器
7…収容部(耐火物)

Claims (6)

  1. Cu:16.9〜27.7mass%、Ni:2.1〜8.2mass%、Fe:1.0〜2.9mass%、C:0.05mass%以下、O:0.06mass%以下、N:0.06mass%以下、その他がMnおよび不可避的不純物からなり、Mnの蒸発によるC、O、Nの相対濃度アップを防止してなる、
    ことを特徴とする制振合金。
  2. 酸素分圧が1013.25Pa以下で且つ全圧力が66661Pa以上の不活性雰囲気下において、
    Cu:16.9〜27.7mass%、Ni:2.1〜8.2mass%、Fe:1.0〜2.9mass%、その他がMnおよび不可避的不純物からなる制振合金用の原料を、当該合金の融点+50℃〜1480℃の範囲で溶解する溶解工程を、含む、
    ことを特徴とする制振合金の製造方法。
  3. 前記溶解工程において、前記制振合金用の原料は、耐火物としてMgO−Alを含む容器に装入され且つ溶解される、
    ことを特徴とする請求項2に記載の制振合金の製造方法。
  4. Cu:16.9〜27.7mass%、Ni:2.1〜8.2mass%、Fe:1.0〜2.9mass%、C:0.05mass%以下、O:0.06mass%以下、N:0.06mass%以下、その他がMnおよび不可避的不純物からなり、Mnの蒸発によるC、O、Nの相対濃度アップを防止してなる制振合金を、所要の形状に成形した、
    ことを特徴とする制振部品または制振製品。
  5. 前記制振部品は、機械要素、機械加工用工具、金属加工装置のベースまたはケーシング、スペーサ、ライナー、パイプ、放熱板、バルブ、エンジン部品、電子部品、スポーツ用品の部品、あるいは、ダクトや配管の留め具の何れかである、ことを特徴とする請求項4に記載の制振部品。
  6. 前記制振製品は、搬送装置、音響/映像機器、医療機器、精密測定機器、センサー、輸送機器、家庭用電気機器、産業用機器、空調機器、コンピュータ、プリンタ、複写機、開口部用建材、開閉機器、スポーツ用品、または、文房具の何れかである、ことを特徴とする請求項4に記載の制振製品。
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