JP2010095747A - 低熱膨張鋳鉄材の製造方法 - Google Patents

低熱膨張鋳鉄材の製造方法 Download PDF

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秀輝 西川
Kentaro Hirai
健太郎 平井
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Abstract

【課題】一般の鋳鉄材と同様な、良好な鋳造性や加工性を有すると共に、より一層優れた低熱膨張特性を有する鋳鉄材を容易に製造することの出来る方法を提供すること。
【解決手段】鋳造して得られた、炭素が2.5質量%以下、ニッケルが25質量%以上40質量%以下の割合で含有する鋳鉄組成を有する鋳物を、550℃〜700℃の温度で3時間以上保持した後、少なくとも200℃までは炉冷によって自然冷却することからなる焼鈍処理を行ない、次いで、そのように焼鈍処理された鋳物を、600℃〜1150℃の温度で1.5時間以上保持した後、ファン空冷、水冷又は油冷により急冷することからなる溶体化処理を行なうことにより、50〜200℃の温度範囲における熱膨張係数が4×10-6/℃以下となる低熱膨張鋳鉄材を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、低熱膨張鋳鉄材の製造方法に係り、特に、オーステナイト系の低熱膨張鋳鉄材、中でも熱膨張係数が極めて小さく、且つ鋳造性や加工性等の性能に優れた低熱膨張鋳鉄材の改良された製造方法に関するものである。
従来から、鋳鉄製品乃至は鋳鉄材は、その優れた鋳造性に加えて、切削加工の如き加工性等の特性にも優れているところから、各種産業の基礎材料として、幅広く利用されて来ている。特に、最近では、エレクトロニクス産業の発達に伴ない、それに関連した工作機械や測定機器、成形用金型、その他の製造機械類には、より高精度が要求されるようになっており、そのため、鋳鉄材にあっても、そのような要求に応えるべく、従来の材料や特質に付加して、熱膨張係数の低減化や、振動吸収能の増大化を図り、また耐熱性・耐食性を付加した材料が開発されている。
そして、その代表的なものとしては、36%Ni−Fe組成のインバー合金であり、また、その改良材のニレジストD5として知られる、ASTM−A439タイプD−5のオーステナイト鋳鉄がある。そこにおいて、インバー合金は、その熱膨張係数が1×10-6/℃と非常に低い特性を有しているのであるが、一方で、成形性や被削性が悪いという問題を内在しており、そのために、その用途には制約があった。また、ニレジストD5は、良好な鋳造性や被削性を有し、更に耐熱性や耐食性等を備えたものであるが、その熱膨張係数が約5×10-6/℃であるために、近年における一層の低熱膨張係数化の要望には、充分に応え得るものではなかったのである。
このため、特許文献1においては、オーステナイト系のNi−Fe合金又はNi−Fe−Co合金において、「%Ni+0.75(%Co)」の値を30.5〜55の特定範囲に維持すると共に、炭素と炭化物を形成するバナジウムやクロム、モリブデン等を、炭素と共に含有せしめてなる構成の、主としてオーステナイト構造を有する鋳造品が、明らかにされており、これによって、強度の増加と共に、充分な低膨張係数が維持され得るとして、20〜350℃での熱膨張係数が6.5×10-6/℃以下となることが、明らかにされている。
また、特許文献2においては、耐熱性、耐食性、耐磨耗性を有すると共に、特に熱膨張係数の低いオーステナイト鋳鉄として、C:0.8〜3.0%、Si:1.0〜3.0%、Ni:30.0〜34.0%、Co:4.0〜6.0%、Mn:2.0%以下、S:1.0%以下、P:1.5%以下、Mg:1.0%以下、残部が不純物を含むFeよりなるオーステナイト系の低熱膨張鋳鉄が、明らかにされている。そして、そこでは、4.0×10-6/℃以下(25℃〜100℃の平均値)の熱膨張係数が実現され、従来のオーステナイト鋳鉄よりも、熱膨張係数が遥かに小さくなるとされている。
さらに、特許文献3においては、室温から100℃までの温度範囲における熱膨張係数が4×10-6/℃以下である高Ni含有の低熱膨張鋳鉄であって、その鋳放し材を室温から液体窒素温度に冷却したときにオーステナイト基地組織がマルテンサイト組織に変態する面積率が15%以下であることを特徴とする低熱膨張鋳鉄が、明らかにされている。また、そのような低熱膨張鋳鉄は、Cを0.3重量%以上2.5重量%以下、Siを0.8重量%以下、Mnを1.0重量%以下、Niを25重量%以上40重量%以下、Coを9.0重量%以下、但しNiとCoとの合計量が33重量%以上43重量%以下、MgまたはCaを0.1重量%以下、希土類元素を0.2重量%以下、Nb,Ti,Zr,TaおよびHfから選択される少なくとも1種の炭化物形成元素を2.0重量%以下含有し、残部がFeおよび不純物から成るとされている。そして、それによって、特に煩雑な熱処理を施すことなく、鋳放しのままでも、Ni偏析を効果的に低減することが出来、低熱膨張性を更に改善した低熱膨張鋳鉄が、実現され得るとされている。
しかしながら、それら従来から提案されている低熱膨張鋳鉄(材)にあっては、その低熱膨張特性が今一つ充分ではなく、そのために、近年におけるより一層の低熱膨張係数化の要請に、有効に且つ充分に応えることが困難となるものであり、また希土類元素や稀少元素の添加が必要となる等、低熱膨張鋳鉄材の製造には、いくつかの問題を内在するものであった。
特開昭50−30728号公報 特公昭60−51547号公報 特開平8−269613号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景に為されたものであって、その解決課題とするところは、一般の鋳鉄材と同様な、良好な鋳造性や加工性を有すると共に、より一層優れた低熱膨張特性を有する鋳鉄材を、容易に製造することの出来る方法を提供することにある。
そして、本発明にあっては、かくの如き課題を解決するために、炭素を2.5質量%以下、ニッケルを25質量%以上40質量%以下の割合で含有する鋳鉄組成を有し、50〜200℃の温度範囲における熱膨張係数が4×10-6/℃以下である低熱膨張鋳鉄材を製造する方法にして、(a)鋳造して得られた前記鋳鉄組成の鋳物を、550℃〜700℃の温度で3時間以上保持した後、少なくとも200℃までは炉冷によって自然冷却することからなる焼鈍処理工程と、(b)該焼鈍処理された鋳物を、600℃〜1150℃の温度で1.5時間以上保持した後、ファン空冷、水冷又は油冷により急冷することからなる溶体化処理工程とを含むことを特徴とする低熱膨張鋳鉄材の製造方法を、その要旨とするものである。
なお、かかる本発明に従う低熱膨張鋳鉄材の製造方法の望ましい一つの態様によれば、前記鋳鉄組成は、炭素:0.3〜2.5質量%、けい素:0.1〜1質量%、マンガン:0.05〜1質量%、ニッケル:25〜40質量%、コバルト:3〜8質量%、マグネシウム:0.01〜0.2質量%を含んでいる。
また、本発明に従う低熱膨張鋳鉄材の製造法の他の望ましい態様によれば、前記炉冷は、200℃/時間以下の冷却速度において行なわれることとなる。
さらに、本発明にあっては、有利には、280MPa以上の耐力を有する低熱膨張鋳鉄材が製造されることとなる。
このように、本発明に従う低熱膨張鋳鉄材の製造方法にあっては、鋳造して得られる所定の鋳鉄組成の鋳物に対して、特定の焼鈍処理と溶体化処理とが、組み合わされて、施されることにより、かかる鋳鉄材としての鋳物の熱膨張係数を極めて容易に小さくすることが出来、以て、4×10-6/℃以下の熱膨張係数が、容易に実現され得ることとなったのであり、特に、2×10-6/℃以下、更には1×10-6/℃以下の熱膨張係数も、有利に実現され得ることとなる。
しかも、かかる本発明にあっては、鋳鉄組成として特殊な元素を含有せしめるものではなく、従来から低熱膨張鋳鉄材の合金成分として普通に用いられている元素の所定量を含有せしめて、構成される鋳物を用いて、低熱膨張特性が実現され得るものであるために、一般の鋳鉄材と同様な、良好な鋳造性や被削性等の加工性を有する、特性に優れた低熱膨張鋳鉄材が、有利に提供され得るのである。
従って、かかる本発明に従う製造方法によって得られた低熱膨張鋳鉄材は、高精度の精密機械・機器や、FRP成型用金型材料等の厳しい熱膨張特性が要求される用途に、有効に利用され得ることとなったのである。
ところで、本発明に従う製造方法において、目的とする低熱膨張鋳鉄材は、鉄を主成分とするものであって、これに、炭素(C)を2.5質量%以下、ニッケル(Ni)を25質量%以上40質量%以下の割合で含有する鋳鉄組成を有するものである。
そして、そのような鋳鉄組成において、Cは、低熱膨張鋳鉄組織内に黒鉛を晶出させ、鋳造性や切削加工性、振動減衰性等を付与する成分であるが、C含有量が2.5質量%を超えるようになると、熱膨張係数が増加するところから、C含有量は2.5質量%以下とする必要がある。なお、C含有量が余りにも少なくなると、充分な鋳造性や切削加工性、振動減衰性を付与することが困難となるために、C含有量は、0.3質量%以上とすることが、望ましい。中でも、低熱膨張特性を有利に実現する上において、C含有量としては、0.5〜1.5質量%の範囲が、有利に採用されることとなる。
また、ニッケル(Ni)は、本発明に従って得られる低熱膨張鋳鉄材において、インバー効果を発揮し、室温付近での熱膨張係数の低減に寄与する主たる元素であるが、このインバー効果を効果的に得る上において、Ni含有量を25〜40質量%の範囲とする必要がある。なお、このNi含有量が、多すぎても少なすぎても、鋳鉄材の熱膨張係数を増大させて、目的とする低熱膨張特性を付与することが困難となる。特に、Ni含有量としては、28〜36質量%の範囲が好適に採用されることとなる。
さらに、本発明にあっては、上記したC及びNiの他にも、従来から公知の各種の合金成分が、必要に応じて添加、含有せしめられ、鋳鉄組成が調整されることとなる。
例えば、コバルト(Co)は、Niとの相乗効果によって、鋳鉄材の熱膨張係数をより一層低減するのに寄与する元素であるが、Co含有量が多くなり過ぎると、低熱膨張性を示す温度範囲が高温側に広がる傾向が現れるものの、室温付近での熱膨張係数が大きく増加するようになるため、Coの含有量は、3〜8質量%程度の範囲内に止められることが望ましい。また、CoとNiとの相乗効果を有利に発揮せしめる上において、NiとCoとの合計含有量は、一般に、33〜43質量%程度とされる。
また、珪素(Si)は、本発明に従う低熱膨張鋳鉄材の製造に際して、鋳鉄原料の大気溶解中の酸化抑制効果を得る目的において、一般に、添加されるものであるが、このSiは、低熱膨張鋳鉄材において、その熱膨張係数を増加させる元素となるところから、その含有量は、0.1〜1質量%程度、特に0.5質量%以下に止めることが望ましい。
さらに、マンガン(Mn)は、鋳鉄の基礎成分であり、脱酸剤や強度向上、耐食性向上成分として機能するために、添加されるものであるが、その含有量が余りに多くなると、その固溶量が増える分だけ、熱膨張係数が増大するようになる。従って、このMnの含有量は、通常、0.05〜1質量%の範囲内に止めることが望ましく、特に0.5質量%以下となるように、調整される。
加えて、マグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)も、鋳鉄材の通常の含有成分であって、それらは、脱酸剤や黒鉛の球状化成分等として、添加含有せしめられるものであるが、前記したMnと同様に、熱膨張係数の増大を防止するために、Mg含有量としては、一般に、0.01〜0.2質量%とされ、特に0.1質量%以下とされることとなる。なお、Ca含有量にあっても、かかるMg含有量と同程度の割合となるように、調整されることが望ましい。
その他、本発明に従う鋳鉄材の鋳鉄組成には、その鋳造に際して、各種の不可避的不純物が、当然のことながら含有されるようになるが、それら不可避的不純物は、公知の低い含有量において含有せしめられていても、何等差し支えない。
そして、本発明においては、上述の如き鋳鉄組成を与える原料を溶解し、鋳鉄溶湯を溶製した後、MgやMg−Ni合金などを添加して、黒鉛球状化処理し、更にその後、常法に従って鋳造することにより、所定の鋳鉄組成を有する鋳物が、形成されることとなる。
次いで、そのようにして得られた鋳鉄鋳物には、本発明に従って、550℃〜700℃の温度で3時間以上保持した後、少なくとも200℃までは炉冷によって自然冷却することからなる焼鈍処理が施され、これによって、鋳造歪みの除去等が図られることとなるのである。
特に、この焼鈍処理の工程においては、鋳造された鋳物の内部応力(格子歪み)を有効に除去せしめる上において、かかる鋳物を、少なくとも550℃以上の温度において、少なくとも3時間保持する必要があるが、その焼鈍温度が700℃を超えるような高温となると、結晶粒界にCが析出するようになり、またNiの偏析が発生して、鋳物自体の特性を変化せしめるようになるところから、焼鈍温度の上限は、700℃に止める必要がある。なお、そのような温度下における鋳鉄鋳物の保持時間は、焼鈍温度との関係において考慮され、焼鈍温度が低い場合には、長い保持時間が採用され、また焼鈍温度が高いときには、保持時間は短くされることとなるが、経済的な観点から、一般に、10時間以下の保持時間が採用されることとなる。
また、そのような焼鈍処理工程において、550〜700℃の焼鈍温度で、3時間以上保持された鋳鉄鋳物は、炉内において、少なくとも200℃までは自然冷却されて、炉冷せしめられるのである。なお、この自然冷却による炉冷における冷却速度としては、一般に、200℃/時間以下、好ましくは100℃/時間以下、より好ましくは60℃/時間以下とされることとなる。また、このような炉冷処理の終了温度が200℃を超えるようになると、その後の冷却過程において、鋳物に歪みが生じ、変形する等の問題を惹起して、本発明の目的が充分に達成され得なくなる。そして、かかる炉冷操作によって、鋳物が200℃以下の温度となると、炉外に取り出され、放冷されることとなるが、その場合において、鋳物に対して積極的な冷却操作を加えることも、可能である。鋳物温度が200℃以下となると、積極的に冷却を行なっても、変形等の問題が惹起されることはないからである。
さらに、本発明にあっては、かかる焼鈍処理工程に続いて、その焼鈍処理された鋳物を600℃〜1150℃の温度で、1.5時間以上保持した後、ファン空冷、水冷又は油冷により急冷することからなる溶体化処理工程が実施され、これによりCを固溶せしめて、Niの偏析を抑え、以て、低熱膨張特性の有効な実現が図られ得るのである。
ところで、このような溶体化処理工程においては、それによるCの固溶・Niの偏析抑制を、効果的に実現する上において、少なくとも600℃以上の温度に加熱して、少なくとも1.5時間以上保持すると共に、そのような溶体化処理温度から、鋳鉄鋳物を急冷する必要がある。尤も、この溶体化のための鋳物の加熱温度が高くなり過ぎると、鋳物自体の形状が変形し、その形状精度を低下せしめる問題を惹起する他、低熱膨張特性にも悪影響をもたらすようになるために、溶体化温度の上限は、1150℃に止める必要がある。中でも、本発明の目的を有利に達成する上において、溶体化処理温度としては、700〜1000℃程度の温度が、有利に採用されることとなる。また、そのような溶体化処理温度での保持時間(溶体化時間)の上限としては、一般に、経済的な観点から、5時間程度とされる。
また、かかる溶体化処理工程において、所定の溶体化温度に加熱せしめられた鋳鉄鋳物の温度を低下させ、室温乃至は周囲温度にまで冷却せしめるには、ファン空冷、水冷又は油冷による急冷操作が採用され、これによって、より一層有効な低熱膨張特性が実現されることとなる。なお、そのような急冷操作であるファン空冷や水冷、油冷は、従来から公知の手法に従って実施され得、例えば、ファン空冷においては、ファンによって冷却空気を強制流動させたり、吹き付けたりすることによって、鋳物の冷却が行なわれ、また水冷や油冷においては、水浴や湯浴に鋳物を浸漬したり、水や油を霧状に吹き付けたりすることによって、鋳物を冷却せしめる手法が、採用されることとなる。そして、このような急冷操作によって、鋳物が室温乃至は周囲温度にまで冷却されることとなるが、その冷却速度は、基本的には、鋳物と冷却設備に異存するものの、一般に、10℃/分以上、望ましくは20℃/分以上の冷却速度において、鋳物の冷却が行なわれることとなる。
本発明においては、先に規定された所定の鋳鉄組成を有する鋳物に対して、このような特定の焼鈍処理工程と溶体化処理工程とを組み合わせて、実施することにより、鋳鉄鋳物(鋳鉄材)の低熱膨張特性のより一層の向上を図り得たのであり、以て、4×10-6/℃以下の熱膨張係数(50〜200℃の温度範囲において)が、容易に且つ有利に実現され得ることとなり、また、高強度で且つ被削性の如き加工性等の特性の向上せしめられた鋳鉄鋳物が実現されたのであり、特に、280MPa以上の耐力を有する低熱膨張鋳鉄材が有利に提供され得たのである。
以下に、本発明の実施例をいくつか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであることが、理解されるべきである。
先ず、下記表1に示される組成となるように、各鋳鉄原料を、高周波誘導溶解炉を用いて溶解し、また黒鉛球状化剤としてMg−Ni合金を添加して、2種の鋳鉄溶湯A,Bを溶製した後、1インチのYブロック試験片鋳型を用いて鋳造を行ない、目的とするテスト鋳物を得た。
Figure 2010095747
そして、この鋳造して得られた各テスト鋳物について、先ず、焼鈍処理をそれぞれ実施した。即ち、熱処理炉内において650℃の温度に加熱した後、4時間保持し、その後、炉内において約8時間の間放置して、自然冷却させる炉冷操作にて、200℃まで冷却せしめ、更にその後、炉外に取り出して放冷することにより、室温まで冷却せしめた。
次いで、この焼鈍処理の施されたテスト鋳物について、下記表2に示される各種の溶体化処理を施した。この溶体化処理においては、溶体化温度として、650℃、850℃、950℃又は1080℃が採用され、また冷却には、炉冷と水冷の何れかが採用されて、室温まで冷却せしめられた。なお、炉冷時間としては、約15時間、また水冷時間としては、約30分を採用した。
Figure 2010095747
かくして得られた各種のテスト鋳物(鋳鉄材)について、それぞれ、その機械的性質や密度、熱膨張係数を測定し、その結果を、下記表3にそれぞれ示した。なお、熱膨張試験は、微小定荷重熱膨張計(理学電機社製TMA8140S)を使用して、各テスト鋳物から採取された直径:5mm、長さ:20mmの円柱状のサンプルについて、室温から1000℃まで、5℃/分の昇温を行ない、その後、炉冷にて、室温までの降温時に、サンプルと石英との示差伸びを測定し、50℃を基準として、各温度における熱膨張係数を算出した。また、機械的性質については、インストロン万能試験機を用いた引張試験を実施し、更に硬さ測定及び密度の測定を、従来と同様にして実施して、その結果を、下記表3に示した。
Figure 2010095747
かかる表1、表2及び表3の対比から明らかなように、熱膨張係数に関して、鋳鉄材1(1%C、溶体化温度:650℃×水冷)における50℃〜200℃での熱膨張係数は、鋳放し材に比べて、1×10-6/℃程度も低くなっていることが認められるのであるが、鋳鉄材2(1%C、溶体化温度650℃×炉冷)においては、その効果は、鋳鉄材1ほど顕著ではないのである。そして、溶体化温度が850℃で、水冷に係る鋳鉄材5の場合には、更に、その低熱膨張特性が顕著となっている。そして、かかる温度付近をピークとして、溶体化温度が上がるにつれて、熱膨張係数も上昇することが、認められるのである。
また、2%Cを含む鋳鉄組成の鋳鉄Bからなる鋳鉄材にあっては、水冷材及び炉冷材共に、その熱膨張係数は、温度が上昇するにするに従って緩やかに上昇し、この現象は、溶体化温度が850℃や950℃においても同様であるが、1080℃の溶体化温度では、顕著な低熱膨張特性を発揮するものとなった。
また、熱膨張係数は、1%Cを含有する鋳鉄組成の鋳鉄Aからなる鋳鉄材の方が、2%Cを含む鋳鉄組成の鋳鉄Bからなる鋳鉄材よりも、全体的に小さく(低く)なっていることが認められる。そして、溶体化処理後の水冷材と炉冷材では、1%Cを含有する鋳鉄材の方が、溶体化処理条件の差が明確に現れているのに対して、2%Cを含む鋳鉄材では、溶体化処理条件の違いによる差異が小さくなっている。特に、950℃以下の溶体化処理後の水冷材と炉冷材では、比較的大きな差が存することが認められる。このように、低熱膨張特性が発現されるのは、自発体積ひずみが大きいためであり、C%量及び溶体化処理条件の違いと磁気特性との因果関係が存在するものと考えられている。
また、機械的性質に関しては、1%C含有鋳鉄材及び2%C含有鋳鉄材共に、溶体化処理温度の上昇に伴い、引張り強さ及び0.2%耐力共に増加するが、伸びは、低下している。応力−ひずみ線図は、溶体化温度が高くなるに従って、高応力側へ移行しているのが認められ、高強度材となっていると考えられる。そして、ビッカース硬度を測定した結果、オーステナイト基地の硬さは187〜241Hv程度となっており、鋳放し材に比べ、焼鈍材の方が、僅かながら硬度の低下がみられ、これが切削性の向上要因の一つとも考えることが出来る。更に、溶体化処理において、処理温度が高くなる程、硬さが高くなる傾向も示されている。
さらに、密度測定結果に関して、1%C含有鋳鉄材においては、溶体化処理条件の違いによる差が少なく、7.9前後である。これに対して、2%C含有鋳鉄材にあっては、溶体化処理条件の違いによる差は認められないものの、微差ではあるが、鋳放し材より下がる傾向にあることが認められる。
ところで、上記で得られた鋳鉄材について、ドリル加工性を以下の如くして評価した。即ち、上記の鋳鉄材の中から鋳鉄材1を選択すると共に、その鋳放し材(A)と公知のインバー材及びSUS304材についても加工性の評価を行なった。ドリルとしては、φ2ドリル(HSS NACHI:株式会社不二越)を用い、ドリル回転数415rpmにて深穴加工を行ない、その加工性を相対的に評価した。供試片の大きさは、20mm×20mm×150mmの立方体形状において行ない、その結果を図1に示した。
かかる図1の結果より明らかな如く、鋳鉄(組成)Aからなる鋳放し材は、インバー材と同程度の加工性を示し、φ2mmの細いドリルでは加工負荷が大きく、工具寿命から途中でドリル穴加工試験の続行を断念したのに対して、本発明に従って得られた鋳鉄(組成)Aからなる鋳鉄材1にあっては、ステンレス(SUS304)と同程度の加工性を示し、本発明に従って焼鈍処理と溶体化処理を施すことにより、その加工性が向上せしめられ得ることが確認された。
なお、上記の結果は、前記した鋳鉄組成において、Niの含有量を、25質量%或いは35質量%と変化させても、同様に得られることが認められ、またCoやMg、Mn、Siの含有量においても、先に規定された範囲内において変化させても、同様に優れた結果が得られることが確認された。
実施例で得られたドリル穴加工試験の結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 炭素を2.5質量%以下、ニッケルを25質量%以上40質量%以下の割合で含有する鋳鉄組成を有し、50〜200℃の温度範囲における熱膨張係数が4×10-6/℃以下である低熱膨張鋳鉄材を製造する方法にして、
    鋳造して得られた前記鋳鉄組成の鋳物を、550℃〜700℃の温度で3時間以上保持した後、少なくとも200℃までは炉冷によって自然冷却することからなる焼鈍処理工程と、
    該焼鈍処理された鋳物を、600℃〜1150℃の温度で1.5時間以上保持した後、ファン空冷、水冷又は油冷により急冷することからなる溶体化処理工程とを、
    含むことを特徴とする低熱膨張鋳鉄材の製造方法。
  2. 前記鋳鉄組成が、炭素:0.3〜2.5質量%、けい素:0.1〜1質量%、マンガン:0.05〜1質量%、ニッケル:25〜40質量%、コバルト:3〜8質量%、マグネシウム:0.01〜0.2質量%を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の低熱膨張鋳鉄材の製造方法。
  3. 前記炉冷が、200℃/時間以下の冷却速度において行なわれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の低熱膨張鋳鉄材の製造方法。
  4. 前記低熱膨張鋳鉄材が、280MPa以上の耐力を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の低熱膨張鋳鉄材の製造方法。
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