JP2778891B2 - 高強度低膨張鋳鉄およびその製造方法と、それを用いた摺動部品および機械部品 - Google Patents

高強度低膨張鋳鉄およびその製造方法と、それを用いた摺動部品および機械部品

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高Ni含有の低膨張鋳鉄
に係り、低膨張性を損なうことなく強度の向上を図った
高強度低膨張鋳鉄に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から知られているように、鋳鉄は工
業の基礎材料として広く使用されている。その理由は、
鋳造性に優れ、多種多様な複雑形状品を成形することが
できると共に、切削加工が容易であり、さらに材料や溶
融に要する費用が比較的安価で、小規模な工場でも容易
に製造できる等の長所を有しているためである。
【0003】ところで、最近ではエレクトロニクス産業
や光学産業等の発展に伴って、それらに関連する工作機
械や測定機器、成形金型、その他の製造機械類には、よ
り高精度で高機能の材料が要求されるようになってきて
いる。鋳鉄においても、このような要求に応えるため
に、従来材の特質に加えて、熱膨張係数の低減化や振動
吸収能の向上、さらには耐熱性や耐蝕性を付加したもの
が開発されている。その代表的なものとして、約 36%Ni
を含有するインバー系低膨張鋳鉄や約30%Ni-5%Coを含有
するスーパーインバー系低膨張鋳鉄が知られている。イ
ンバー系合金およびスーパーインバー系合金と低膨張鋳
鉄の合金組成および特性を表1に示す。
【0004】
【表1】 表1に示したような材料は、いずれも基地組織はオース
テナイト組織であり、インバー合金やスーパーインバー
合金、および球状黒鉛鋳鉄系であっても、その引張り強
度は40〜45kgf/mm2 である。黒鉛組織が片状黒鉛や擬球
状黒鉛組織の場合にはさらに低く、25〜35kgf/mm2 程度
となる。そのため、高精度が要求される部品への適用に
おいて、たわみや変形が問題となる場合がしはしば生じ
ている。また、硬さはブリエル硬度でHB 120〜 220程度
と、鉄系合金の中でも軟質であるため、耐摩耗性が要求
されるような摺動部品への適用には限界があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、各種
機械の大型化や高精度化がさらに進展する現状におい
て、従来の低膨張鋳鉄では、機械的強度や硬度等の点で
十分に対応できない事態が生じている。例えば、近年の
半導体の集積度は目覚ましく増大しており、Siウエハの
平坦度はますます高い精度が要求されている。一方、Si
ウエハは年々大型化しており、 4〜 5インチから 8イン
チウエハの時代に入るとされている状況である。このよ
うな状況下において、Siウエハの加工には、低膨張鋳鉄
製のポリッシング定盤が使用されつつあるが、Siウエハ
の大型化に伴ってポリッシング定盤も大型化する必要が
あるため、低膨張性の他に、形状精度を維持するために
引張り強さで60kgf/cm2 以上の強度が要求されている。
【0006】また、摺動部品等への適用を考えた場合に
は、耐摩耗性を向上させるために、硬度を上げることが
望まれる。硬度は切削加工性にも影響し、切削加工性を
改善するためにも硬度の適度な向上が望まれている。
【0007】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、基本的な低膨張性を維持した上で、
強度や硬度等の向上、さらには切削加工性の向上を図っ
た高強度低膨張鋳鉄とその製造方法を提供することを目
的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段と作用】本発明の高強度低
膨張鋳鉄は、C0.5〜3.5重量%、Si2.0重量
%未満、Mn1.0重量%以下、Mg0.1重量%以
下、Ni25〜40重量%、およびCo0〜15重量%
を含み、残部が実質的にFeからなる鋳鉄であって、前
記鋳鉄の金属組織は、主相とするオーステナイト相と、
このオーステナイト相間に分散配置されたマルテンサイ
ト相とを有することを特徴としている。本発明の摺動部
品は、少なくとも摺動部分が上記した本発明の高強度低
膨張鋳鉄からなることを特徴としている。また、本発明
の機械部品は、上記した本発明の高強度低膨張鋳鉄から
なり、かつ引張り強度が60kgf/mm 以上の高強
度低膨張部を有することを特徴としている。本発明の摺
動部品および機械部品としては、例えば軸受け、軸(ス
ピンドル等)、ポリッシング定盤、軸受け部を有する各
種部品、さらに低膨張でかつ高強度が要求される各種の
機械部品等が挙げられる。
【0009】また、本発明の高強度低膨張鋳鉄の製造方
法は、C0.5〜3.5重量%、Si2.0重量%未
満、Mn1.0重量%以下、Mg0.1重量%以下、N
25〜40重量%、およびCo0〜15重量%を含
み、残部が実質的にFeからなる合金成分を溶解し、鋳
造する工程と、前記鋳造工程で得た鋳鉄、あるいは80
0℃〜1200℃の温度で溶体化熱処理を施した後に
温付近の温度まで冷却した鋳鉄を、室温付近の温度から
−40℃以下の温度まで急冷し、前記鋳鉄のオーステナ
イト基地の一部をマルテンサイト組織とする工程とを具
備することを特徴としている。
【0010】本発明の高強度低膨張鋳鉄は、ニッケル(N
i)を20〜40重量% と多量に含有させ、金属組織の主相を
オーステナイト相とすることによって、基本的な低熱膨
張性を実現していると共に、主相とするオーステナイト
相間にマルテンサイト相を分散配置することによって、
強度や硬度等の向上、さらには切削加工性の向上を図っ
たものである。
【0011】ここで、上記マルテンサイト相は、基本的
には鋳造後に室温付近の温度から-40℃以下の温度まで
急冷する、いわゆるサブゼロ処理を施すことにより出現
させるものであるが、鋳造後の凝固の際にデンドライト
組織(オーステナイト相)の間隙に、Ni量が低くなるよ
うな偏析を生じさせることによって実現可能となるもの
である。この偏析は、鋳鉄の合金組成を上述した成分お
よび範囲とすることで生じるものである。すなわち、上
記した本発明による合金組成では、炭素の存在により、
鋳造後の凝固の際にデンドライト組織の間隙に、Ni量が
低くなるような偏析が生じる。このような偏析は、 C量
を比較的多く、かつSi量を比較的少なくすることによっ
て、より容易に生じさせることができる。
【0012】そして、図3の Fe-Ni系合金の組織変態図
に示すように、Ni量が低いほどγ相からα相への変態が
起こりやすくなり、サブゼロ処理でデンドライト組織の
間隙部、すなわちNi量が低い偏析部分をマルテンサイト
組織に変態させることが可能となる。これにより、金属
組織中のデンドライト組織(オーステナイト相)は、熱
膨張係数を低くする適性範囲のNiを含有しており、かつ
サブゼロ処理を施しても影響を受けないため、低膨張性
が維持される。一方、デンドライト組織間隙の低Ni量領
域はマルテンサイト相となり、強度、硬度、ヤング率等
がオーステナイト相に比べて向上する。
【0013】このように、高Ni鋳鉄の金属組織の主相
を、低膨張性を有するオーステナイト相とすると共に、
このオーステナイト相間に強度、硬度、ヤング率等が高
いマルテンサイト相を分散配置することによって、高Ni
鋳鉄の基本的な低膨張性を維持した上で、強度や硬度等
の向上を図ることが可能となると共に、鋳鉄のねばさが
低減するため、切削加工性の向上を図ることができる。
【0014】上述したマルテンサイト相は、金属組織中
に面積比で 10%〜 70%の範囲で出現させることが好まし
い。マルテンサイト相の面積比が 10%未満では、強度や
硬度等の向上効果が十分に得られず、また 70%を超える
と熱膨張係数が増大し、低膨張鋳鉄としての基本的な特
性が損なわれる。また、マルテンサイト相は、鋳造部品
の全組織中に必ずしも出現させなければならないもので
はなく、高強度や高硬度等を必要とする部分のみに分散
形成してもよい。例えば、鋳鉄製の摺動部品を本発明の
鋳鉄で作製する場合、実際に摺動部となる部分、例えば
軸受け部のみの基地中にマルテンサイト相を出現させ、
他の部分は通常のオーステナイト基地としてもよい。
【0015】次に、本発明の高強度低膨張鋳鉄の組成限
定理由について述べる。
【0016】Niは、前述したように鋳鉄の金属組織の
主相をオーステナイト組織とし、熱膨張係数の低減に寄
与する成分である。低膨張鋳鉄は、Ni含有量を25
40重量%の範囲とした際に効果的に得られる。Ni含
有量が上記範囲を外れると、いずれも熱膨張係数が増加
する。Ni含有量のより好ましい範囲は、25〜35重
量%である。また、コバルト(Co)はNiとの相乗効
果によって、鋳鉄の熱膨張係数をより一層低下させる
が、その含有量が15重量%を超えると、熱膨張係数は
逆に増加する。Coは、必要とされる熱膨張係数に応じ
て添加するものとし、その効果は2重量%以上添加する
ことによって顕著となる。また、後述する実施例に示す
ように、Co含有量は6重量%以下とすることが好まし
い。
【0017】CおよびSiは、鋳鉄に鋳造性や切削加工性
等を付与する基礎成分であると共に、本発明においては
上述したように、 Cはマルテンサイト組織を出現させる
上で重要な成分である。それらの含有量は、 Cは 0.5〜
3.5重量% の範囲、Siは 2.0重量% 未満とする。 Cの含
有量が 0.5重量% 未満であると、十分な鋳造性を付与す
ることができないと共に、デンドライト組織(オーステ
ナイト相)の間隙にNi量が低くなるような偏析を十分に
生じさせることができず、その後にサブゼロ処理を行っ
ても、マルテンサイト相を出現させることができない。
逆に、 C含有量が 3.5重量% を超えると、熱膨張係数が
増加する。 Cのより好ましい含有量は、0.8〜 2.5重量%
の範囲である。また、Si含有量が 2.0重量% 以上とな
ると、熱膨張係数が増加すると共に、デンドライト組織
(オーステナイト相)の間隙にNi量が低くなるような偏
析を十分に生じさせることができず、同様に、マルテン
サイト相を出現させることができない。Siのより好まし
い含有量は、 1.0重量% 以下である。
【0018】また、マンガン(Mn)およびマグネシウム(M
g)は、鋳鉄の基礎成分であり、Mnは脱酸剤や耐食性向上
成分として、またMgは鋳鉄の球状黒鉛化成分や脱酸剤と
して機能する。ただし、これらの含有量があまり多い
と、熱膨張係数が増大するため、Mnの含有量は 1.0重量
% 以下、Mgの含有量は 0.1重量% 以下とする。
【0019】本発明の高強度低膨張鋳鉄は、例えば以下
のようにして製造される。
【0020】まず、上述したような元素を含有する合金
成分を溶解した後、所望形状に鋳造する。この鋳造後の
凝固の際に、前述したようなNi量が低くなるような偏析
が生じる。本発明は、炭素を含有する高Ni鋳鉄における
Niの偏析を利用するものであるが、このような偏析は鋳
造後に以下に示すような熱処理を施すことによって、よ
り一層明瞭に生じさせることができる。
【0021】すなわち、鋳造後に 800℃〜1200℃の温度
で溶体化処理を施し、その後徐冷する。この徐冷によっ
てNiの偏析が得られる。また、この溶体化処理後の徐冷
は、鋳鉄の任意の一部分のみとし、他の部分は通常の急
冷とすることもできる。このような徐冷方法を適用する
ことによって、鋳鉄の必要部分のみにマルテンサイト相
を出現させることができる。他の部分は、溶体化処理後
の急冷によって、Ni等の含有成分が均一化され、偏析が
解消される。この部分ではその後のサブゼロ処理によっ
ても、マルテンサイト相は出現しない。上記したような
部分的な徐冷は、例えば必要部分のみを加熱したり、あ
るいは断熱材で覆う等によって実施することができる。
【0022】この後、サブゼロ処理を施す。このサブゼ
ロ処理は、室温付近の温度から -40℃以下の温度まで急
冷することによって実施する。具体的には、液体窒素や
ドライアイス(-40〜-160℃)中に浸漬することにより行
う。その浸漬時間は、例えば肉厚10〜30mm程度の板材の
場合、 5〜60分程度とする。このようなサブゼロ処理に
よって、Ni量が低くなるような偏析部分に従って、マル
テンサイト相を出現させることができる。
【0023】上記したような製造方法により得られる本
発明の高強度低膨張鋳鉄は、例えば5×10-6/℃(常温
〜 100℃)以下の熱膨張係数を維持した上で、引張り強
度60kgf/mm2 以上、硬さ(ブリネル硬度で)HB 220以上
を満足させることができる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 実施例1 まず、 100kg容量の高周波電気炉を用いて、 C 1.0重量
% 、Si0.15重量% 、Mn0.03重量% 、Ni29.0重量% 、Co
6.0重量% 、Mg0.05重量% を含み、残部がFeおよび不純
物からなる合金成分を溶融した後、鋳型に注湯して鋳鉄
試料を作製した。この実施例においては、図4に示す精
密工作機のスピンドル1を鋳造した。このスピンドル1
は、直径65mmおよび70mm、長さ 350mm、重量10.7kgのも
のである。また、特性測定用の試料として、 1インチの
キールブロック用砂型にて試験片を採取した。これらス
ピンドルおよび試験片に対して、鋳造後に液体窒素に30
分間浸漬することによって、サブゼロ処理を施した。
【0025】このようにして得た試験片およびサブゼロ
処理前の試験片を用いて、サブゼロ処理前後の特性を比
較した。測定した特性は、熱膨張係数、引張り強さ、ブ
リエル硬さHB、ヤング率および耐力である。その結果、
鋳造材(サブゼロ処理前)の引張り強さは42kgf/mm2
硬さはHB 160、ヤング率は 16000kgf/mm2 、耐力は36kg
f/mm2 であったのに対し、サブゼロ処理後には引張り強
さは73kgf/mm2 、硬さはHB 360、ヤング率は 21000kgf/
mm2 、耐力は56kgf/mm2 といずれも向上した。また、熱
膨張係数はサブゼロ処理前後共に、RT〜 150℃の範囲で
約 2.5×10-6/℃であった。
【0026】また、上記サブゼロ処理前後の試験片の金
属組織を顕微鏡(倍率:100倍)にて観察した。これらの
顕微鏡写真を図1に示す。図1(a)はサブゼロ処理前
の試験片の顕微鏡写真であり、図1(b)はサブゼロ処
理後の試験片のの顕微鏡写真である。また、これらの模
式図をそれぞれ図2に示す。図1および図2から明らか
なように、サブゼロ処理前においては、球状黒鉛11の
周囲にオーステナイト相(デンドライト組織)12が存
在しており、このオーステナイト相12の間隙にNi量が
低い偏析13が生じていることが分かる。そして、サブ
ゼロ処理後においては、上記Ni量が低い偏析13によ
り、マルテンサイト相14がオーステナイト相12の間
隙に出現していることが分かる。また、上記マルテンサ
イト相14の面積比を求めたところ、約 60%であった。
【0027】さらに、サブゼロ処理前の試料において、
炭素およびニッケルの濃度分布をEPMAによって調べ
たところ、ニッケルは球状黒鉛の周囲に偏って存在し、
その間隙にはNi量が低い偏析が生じていることを確認し
た。
【0028】このように、鋳造時にNi量が低くなるよ
うな偏析を生じさせると共に、サブゼロ処理を施すこと
によって、オーステナイト基地の一部をマルテンサイト
組織にすることができる。これによって、高Ni鋳鉄の
基本的な低膨張性を維持した上で、強度、硬度、切削加
工性等の向上を図ることができる。 実施例2〜 表2に成分組成を示す各鋳鉄材料を用いて、実施例1と
同様にして、スピンドルおよび1インチキールブロック
試験片をそれぞれ作製した。熱処理条件は、表2に示す
通りである。また、各1インチキールブロック試験片を
用いて、実施例1と同様にしてそれぞれのサブゼロ処理
前後の特性を評価した。それらの結果を表3に示すが、
いずれもサブゼロ処理後に優れた鋳造性および機械加工
性が得られている。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】 実施例 100kg容量の高周波電気炉を用いて、C1.0重量
%、Si0.15重量%、Mn0.03重量%、Ni2
9.0重量%、Co6.0重量%、Mg0.05重量%
を含み、残部がFeおよび不純物からなる合金成分を溶
融した後、鋳型に注湯して鋳鉄試料を作製した。この実
施例においては、図5に示す精密機械のハウジング21
を鋳造した。このハウジング21は重量20kgのもの
で、軸受け部22とドリル加工が必要な部分23aを有
するハウジング本体23とから構成されており、特に軸
受け部22のみが耐摩耗性を必要としている。よって、
上記鋳造材に950℃×2時間の溶体化処理を施した
後、軸受け部22のみが徐冷となるようにガスバーナで
軽くあぶりながら、大気中で冷却した。この後、液体窒
素に30分間浸漬することによって、サブゼロ処理を施
した。
【0031】このようにして得たハウジング21の軸受
け部22とハウジング本体23のブリエル硬さHBを測定
したところ、ハウジング本体23の硬さはHB 260であっ
たのに対し、軸受け部22の硬さはHB 480と向上してい
た。また、軸受け部22とハウジング本体23の金属組
織を実施例1と同様に観察したところ、軸受け部22で
はマルテンサイト相が面積比で約 65%出現していたのに
対して、ハウジング本体23ではほとんどマルテンサイ
ト相は見られなかった。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の高強度低
膨張鋳鉄によれば、低膨張性を維持した上で、強度、硬
度、切削加工性等を向上させた鋳鉄が得られる。よっ
て、低熱膨張性が必要とされ、かつ形状の維持性や耐摩
耗性が要求される機械部品等に適した鋳鉄を提供するこ
とが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例で作製した鋳鉄の金属組織写
真であり、(a)はサブゼロ処理前の金属組織を、
(b)はサブゼロ処理後の金属組織を示す拡大写真であ
る。
【図2】図1による金属組織写真を模式化した図であ
る。
【図3】Fe-Ni系合金の組織変態を示す図である。
【図4】本発明の一実施例で作製したスピンドルを示す
平面図である。
【図5】本発明の他の実施例で作製した精密機械用ハウ
ジングを示す断面図である。
【符号の説明】
11……球状黒鉛 12……オーステナイト相(デンドライト組織) 13……Ni量が低い偏析 14……マルテンサイト相
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 37/00 - 37/10 C21D 5/00

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C0.5〜3.5重量%、Si2.0重
    量%未満、Mn1.0重量%以下、Mg0.1重量%以
    下、Ni25〜40重量%、およびCo0〜15重量%
    を含み、残部が実質的にFeからなる鋳鉄であって、 前記鋳鉄の金属組織は、主相とするオーステナイト相
    と、このオーステナイト相間に分散配置されたマルテン
    サイト相とを有することを特徴とする高強度低膨張鋳
    鉄。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の高強度低膨張鋳鉄におい
    て、 前記Coの含有量が0〜6重量%の範囲であることを特
    徴とする高強度低膨張鋳鉄。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の高強度低膨張鋳鉄におい
    て、 前記マルテンサイト相は、前記鋳鉄の金属組織中に面積
    比で10〜70%の範囲で存在していることを特徴とす
    る高強度低膨張鋳鉄。
  4. 【請求項4】 C0.5〜3.5重量%、Si2.0重
    量%未満、Mn1.0重量%以下、Mg0.1重量%以
    下、Ni25〜40重量%、およびCo0〜15重量%
    を含み、残部が実質的にFeからなる合金成分を溶解
    し、鋳造する工程と、 前記鋳造工程で得た鋳鉄、あるいは800℃〜1200
    ℃の温度で溶体化熱処理を施した後に室温付近の温度ま
    で冷却した鋳鉄を、室温付近の温度から−40℃以下の
    温度まで急冷し、前記鋳鉄のオーステナイト基地の一部
    をマルテンサイト組織とする工程とを具備することを特
    徴とする高強度低膨張鋳鉄の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の高強度低膨張鋳鉄の製造
    方法において、 前記溶体化熱処理後の鋳鉄の少なくとも一部を徐冷する
    ことを特徴とする高強度低膨張鋳鉄の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項4記載の高強度低膨張鋳鉄の製造
    方法において、 前記合金成分中のCo含有量は0〜6重量%の範囲であ
    るとを特徴とする高強度低膨張鋳鉄の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項4記載の高強度低膨張鋳鉄の製造
    方法において、 前記マルテンサイト相を前記鋳鉄の金属組織中に面積比
    で10〜70%の範囲で出現させることを特徴とする高
    強度低膨張鋳鉄の製造方法。
  8. 【請求項8】 少なくとも摺動部分が請求項1記載の高
    強度低膨張鋳鉄からなることを特徴とする摺動部品。
  9. 【請求項9】 請求項1記載の高強度低膨張鋳鉄からな
    り、かつ引張り強度が60kgf/mm以上の高強度
    低膨張部を有することを特徴とする機械部品。
  10. 【請求項10】 請求項4記載の高強度低膨張鋳鉄の製
    造方法において、 前記室温付近の温度から−40℃以下の温度までの急冷
    を液体窒素またはドライアイス中に浸漬することにより
    実施することを特徴とする高強度低膨張鋳鉄の製造方
    法。
  11. 【請求項11】 請求項10記載の高強度低膨張鋳鉄の
    製造方法において、 前記液体窒素またはドライアイス中への浸漬時間を5〜
    60分間とすることを特徴とする高強度低膨張鋳鉄の製
    造方法。
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