JP5076385B2 - 容器用樹脂被覆金属板および樹脂被覆金属缶 - Google Patents
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そこで、これらの問題を解決するため、塗装鋼板に替わり、熱可塑性樹脂フィルムを加熱した金属板に積層してなる容器用樹脂被覆金属板が開発され、現在、飲料缶用素材を中心として工業的に広く用いられている。
[1]樹脂層を両面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、該金属板を容器成形した後に容器内面側になる樹脂層表面の、水との界面自由エネルギーが30mN/m以上であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
[2]樹脂層を両面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、該金属板を容器成形した後に容器内面側になる樹脂層表面の、レトルト殺菌処理後の、水との界面自由エネルギーが30mN/m以上であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
[3]前記[1]または[2]において、容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層が、ポリエステルを主成分とする樹脂層であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のうち、少なくとも一つを含むことを特徴する内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層が、0.5mass%〜40.0mass%の脂肪酸アミドを含有することを特徴とする内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
[6]前記[5]において、前記脂肪酸アミドが、エチレンビスステアリン酸アミドであることを特徴とする内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかにおいて、容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層が、複層構造の樹脂層であって、かつ、内容物と接する樹脂層表面の、水との界面自由エネルギーが30mN/m以上であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
[8]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層が、複層構造のポリエステル樹脂層であって、最上層のポリエステル樹脂層は、0.5mass%〜40.0mass%の脂肪酸アミドを含有し、かつ、内容物と接する樹脂層表面の、水との界面自由エネルギーが30mN/m以上であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
[9]前記[8]において、前記脂肪酸アミドが、エチレンビスステアリン酸アミドであることを特徴とする内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
[10]ポリエステルを主成分とする樹脂層を両面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、容器成形した後に容器内面側になる樹脂層表面の水との界面自由エネルギーが、該容器成形した後の内容物が充填される際に30mN/m以上であり、容器成形した後に容器外面側になる樹脂層表面の表面自由エネルギーが、25mN/m以上であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
[11]樹脂層を両面に有する金属板を容器成形した樹脂被覆金属缶であって、該金属板が前記[1]〜[10]のいずれかに記載の容器用樹脂被覆金属板であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる樹脂被覆金属缶。
[12]樹脂層を両面に有する金属板を容器成形した樹脂被覆金属缶であって、容器成型した後に容器内面側になる樹脂層表面の、水との界面自由エネルギーが30mN/m以上であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる樹脂被覆金属缶。
本発明の金属板としては、缶用材料として広く使用されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることができ、特に下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(いわゆるTFS)等が最適である。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、加工後密着性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m2、クロム水酸化物層は10〜30mg/m2の範囲とすることが望ましい。
そして、樹脂層と内容物との界面に生成する油膜が、内容物由来のタンパク質や細胞の樹脂層への吸着を抑止するように働き、樹脂層表面への内容物付着を抑制するものと考えられる。油膜の形成能は、樹脂層表面の水との界面エネルギーと相関するため、エネルギー値の増加に伴い、取りだし性は良好傾向となる。
以上より、容器内面側になる樹脂層表面の、水との界面自由エネルギーは30mN/m以上とし、より優れた内容物取り出し性を得るためには、水との界面エネルギーを40mN/m以上、さらに好ましくは45mN/m以上とする。
(1)の技術としては、例えば、電子密度が比較的低い(10-2〜10mmHg)低圧ガス下でおこるグロー放電プラズマ(低温プラズマ)が挙げられる。活性粒子のエネルギーが高く、寿命も長いことから、樹脂層の性質を損なわずに、表面とその近傍の深さ数1000Åの表面層のみを変化させることができる。水との界面自由エネルギーは、雰囲気のガス成分を変えることにより調整できる。例えば、4フッ化メタン雰囲気中でプラズマ処理を行なうことで、樹脂層表面の水との界面自由エネルギーを30mN/m以上に制御できる。
(2)の技術としては、親水基と疎水基をもつ界面活性剤を高分子材料に添加する処理が挙げられる。界面活性剤を表面に拡散させ、疎水基(親油基)を空気の方に向けて配列する。その結果、表面が疎水化(親油化)され、水との界面自由エネルギーが制御できる。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のうち、少なくとも一つを含むことが望ましい。例えば、脂肪族カルボン酸化合物と脂肪族アルコール化合物とのエステル化合物や、グリセリン脂肪酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、プロピレングリコール脂肪酸エステル系、非イオン性オルガノシリコーン界面活性剤などの利用が好適である。また、非極性グループを主鎖・側鎖に有するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエレン、ポリスチレンなどの適用も好適である。
(3)の技術としては、非極性もしくは極性の小さい高分子などを被覆する方法が挙げられる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂またはケイ素樹脂などを好適に使用することができるが、基材表面(樹脂層表面)との強固な密着性と容器加工に追随する加工性が求められる。
ここで、脂肪酸アミドとしては、融点が120℃以上のものが好ましく、より好ましくは130℃以上のものである。これにより、長時間のレトルト殺菌処理においても、ポリエステル樹脂表面に安定して存在することが可能となる。
このような脂肪酸アミドとしては、アルキレンビス脂肪酸アミドがあげられ、耐熱性、食品安全性の観点から、エチレンビスステアリン酸アミドが特に好適である。
本発明に用いる脂肪酸アミドの添加量は、ポリエステルを主成分とする樹脂層100重量部に対し、0.5mass%〜40.0mass%、好ましくは、5.0mass%〜30.0mass%、さらに好ましくは10.0mass%〜25.0mass%である。脂肪酸アミドの添加量が0.5mass%未満であると、樹脂層表面における疎水基の存在密度が不足し、目的とする水との界面自由エネルギーを得ることができない。一方、40.0mass%を超えると、目的とする水との界面自由エネルギーを得ることができるものの、脂肪酸アミドの表面濃化が過度となり、ポリエステル樹脂表面での固定が十分でなくなり、脱離しやすい状態となる。このような状態で、樹脂被覆金属板がコイル状に巻き取られた場合、容器成形した後の容器内面側となるポリエステル樹脂表面から脱離した脂肪酸アミドが、容器成形した後の容器外面側となるポリエステル樹脂層の表面に転写し、表面自由エネルギーを変化させてしまう。これが、印刷用のインクとの親和性を劣化させるため、容器外面の印刷不良の原因となる。また、樹脂の機械特性や熱的特性も劣化させるため、好ましくない。
以下に、本発明で好適に用いられるポリエステル樹脂層について説明する。
グリコール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられるが、中でもエチレングリコールが好ましい。
これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用しても良い。また、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、結晶核剤等を配合できる。
なお、上記において、特に、イソフタル酸は透明性、引き裂き強度が高く、かつ安全性にも優れるため好ましく、ポリエステル樹脂としては、イソフタル酸を22モル%以下の比率で共重合化した共重合ポリエチレンテレフタレートであることが特に好ましい。イソフタル酸共重合比率が22モル超となる場合は、樹脂層の耐熱性が劣化し、レトルト殺菌処理などの加熱処理に対する耐久性に欠けるため、本発明の目的を達成することが困難となる場合がある。
また、上記において、複層構造の場合は、ポリエステル樹脂層の組成として、上層がポリエチレンテレフタレート、もしくは、酸成分としてイソフタル酸を6モル%以下の比率で共重合化した共重合ポリエチレンテレフタレートであり、下層が酸成分としてイソフタル酸を10モル%以上22モル%以下の比率で共重合ポリエチレンテレフタレートであることが望ましい。上層のイソフタル酸共重合比率が6モル%超の場合、樹脂層の融点が低下するため熱で溶けやすく、そのため金属板上に樹脂層を熱融着にて形成する際に本発明で規定する配向状態を実現することが困難となる場合がある。一方、下層のイソフタル酸共重合比率が10モル%未満では、樹脂の融点が高いため熱で溶け難くなる。金属板上への樹脂層形成の際に、前記上層の配向状態を本発明の規定範囲内にコントロールしようとすると、金属板上での溶融濡れが不十分となり密着性が劣化する懸念がある。また、イソフタル酸共重合比率が増すにつれ、樹脂コストも上昇するため、下層のイソフタル酸共重合比率は22モル%以下に抑えることが望ましい。
また、複層構造とした場合、上層となるポリエステル樹脂層の厚みは、0.5以上5.0μm以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、0.5以上1.5μm以下の範囲である。
また、下層ポリエステル樹脂層の平均複屈折率は、0.06以下が好ましい。この理由は以下のとおりである。樹脂被覆金属板の製造は、樹脂を熱せられた金属板に接触させ圧着することで金属板界面の樹脂を溶融させ、金属板に濡れさせることで接着を行うのが通常である。従って、フィルムと金属板との密着性を確保するためには樹脂が溶融していることが必要であり、融着後の金属板と接する部分のフィルム複屈折率は、配向結晶が融解するため低下することとなる。本発明に規定するようにこの部分のフィルム複屈折率が0.06以下であれば、熱融着時の樹脂の溶融濡れが十分であったことを示すものであり、すなわち優れた密着性を確保することが可能となる。0.06超となると、密着性が低下し、食品缶詰に施される高温・長時間のレトルト殺菌処理後に、缶蓋との巻き締め部等で樹脂層が剥離するおそれがある。
なお、ポリエステル樹脂の複屈折率は、以下の測定手法にて求められる。
偏光顕微鏡を用いてラミネート金属板の金属板を除去した後のフィルムの断面方向のレタデーションを測定し、樹脂フィルムの断面方向の複屈折率を求める。フィルムに入射した直線偏光は、二つの主屈折率方向の直線偏光に分解される。この時、高屈折率方向の光の振動が低屈折率方向よりも遅くなり、そのためフィルム層を抜けた時点で位相差を生じる。この位相差をレタデーションRと呼び、複屈折率△nとの関係は、式(1)で定義される。
△n=R/d…(1)
但し、d:フィルム層の厚み
次に、レタデーションの測定方法について説明する。単色光を偏光板を通過させることで、直線偏光とし、この光をサンプル(フィルム)に入射する。入射された光は上記のように、レタデーションを生じるため、フィルム層を透過後、楕円偏光となる。この楕円偏光はセナルモン型コンペンセーターを通過させることにより、最初の直線偏光の振動方向に対してθの角度をもった直線偏光となる。このθを偏光板を回転させて測定する。レタデーションRとθの関係は式(2)で定義される。
R=λ・θ/180 …(2)
但し、λ:単色光の波長
よって複屈折率△nは、式(1)、(2)から導き出される式(3)で定義される。
△n=(θ・λ/180)/d…(3)
また、本発明に用いるポリエステル樹脂の分子構造は、固体分解能NMR構造解析によって求められた1、4位のベンゼン環炭素の緩和時間T1ρが150msec以上となることが望ましい。緩和時間T1ρは、分子運動性を表わすものであり、緩和時間T1ρを増加するとフィルム内の非晶部拘束力が高まる。1,4位のベンゼン環炭素の緩和時間T1ρが増加することにより、1,4位のベンゼン環炭素部位の分子整列性を制御し、結晶構造にも似た安定構造を形成し、これによって、成形時における非晶部分の結晶化を抑制できるようになる。すなわち、非晶部の運動性が低下し、結晶化のための再配向挙動が抑制されるようになる。1,4位のベンゼン環炭素の緩和時間T1ρを150msec以上とすることで、上記の優れた効果を十分に発揮できるようになり、優れた成形性、耐衝撃性が得られるようになる。このような観点から、1,4位のベンゼン環炭素の緩和時間T1ρは、より好ましくは180msec以上、さらにより好ましくは200msec以上である。
中でも、特に二酸化チタンの使用が望ましい。容器開封後、内容物の色が映えるとともに、清潔感を付与できるためである。顔料を添加する樹脂層としては、上層でないことが望ましい。二酸化チタンの添加量は、樹脂層に対して、mass%で5〜30%であることが望ましい。5%未満であると、白色度が十分でなく、良好な意匠性が確保できない場合がある。一方、30%超の含有量となると、白色度が飽和するとともに経済的にも不利であるため、30%未満とすることが望ましい。より好ましくは、10〜20%の範囲である。なお、顔料の添加量は、顔料を添加した樹脂層に対する割合である。
上記有機顔料を添加する樹脂層としては、最上層でないことが望ましい。これらの有機顔料は、レトルト殺菌処理時などの熱処理を経ても、樹脂層表面にブリードしにくいという特徴を有するが、顔料を添加した樹脂層の上に0.5μm以上の無添加層(クリア層)を設けることで、ブリードアウトを確実に抑制することが可能となる。また、有機顔料の添加量は、樹脂層に対して、mass%で0.1〜5.0%とすることが望ましい。添加量が0.1%未満であると発色が乏しい場合がある。また、5.0%を超えると、透明性が乏しくなり光輝性に欠けた色調となってしまう場合がある。
まず、金属板に被覆する複層を含む樹脂層(フィルム)の製造方法について説明する。
樹脂層(フィルム)の製造方法については特に限定はしない。例えば、各ポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥した後、単独及び/または各々を公知の溶融積層押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加等の方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し未延伸シートを得る。この未延伸シートをフィルムの長手方向及び幅方向に延伸することにより二軸延伸フィルムを得る。延伸倍率は目的とするフィルムの配向度、強度、弾性率等に応じて任意に設定することができるが、好ましくはフィルムの品質の点でテンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同じに延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。
また、ポリエステルを主成分とする樹脂層の場合は、例えばダイレクトラミネート製法により形成された無配向層樹脂層であっても良いが、ニ軸延伸フィルムを金属板上に熱優着ラミネートして形成された樹脂層であれば、耐衝撃性・耐食性が向上するため好適である。ポリエステル樹脂中に脂肪酸アミドを添加する方法としては、例えば、溶融状態のポリエステル樹脂に脂肪酸アミドを添加し、押し出し成形機で混練後に溶融押出して金属板上に樹脂皮膜を形成する方法や、脂肪酸アミドを含む塗液をポリエステルフィルムの製膜時もしくは製膜後に塗布して、最上層に脂肪酸アミドを含有したポリエステル樹脂層を形成させる方法があげられ、本発明の目的・用途には、後者の方が望ましい。なかでも、二軸配向ポリエステルフィルムの製膜時もしくは製膜後に塗布し、加熱乾燥させて塗膜を形成させる方法が好ましい。製膜時に塗布する場合は、ドラムキャスティング直後、もしくはドラムへキャスティングした後の縦延伸直後に行うことが好ましい。また、二軸配向ポリエステルフィルムへの塗布においては、グラビアロールコート法が好適であり、塗液塗布後の乾燥条件としては、80℃〜170℃で20〜180秒間、特に80℃〜120℃で60〜120秒間が好ましい。
また、複層構造の形成方法としては、ダイレクトラミネート製法により複数の樹脂層を共押し出しすることによって、金属板上に直接積層しても良いし、複層構造のポリエステルフィルムを金属板上に熱融着させる方法でもよい。
ラミネート条件については、本発明に規定する樹脂層が得られるように適宜設定される。例えば、ラミネート開始時の温度を少なくともフィルムの融点以上とし、ラミネート時にフィルムの受ける温度履歴として、フィルムの融点以上の温度で接している時間を1〜20msecの範囲とすることが好適である。このようなラミネート条件を達成するためには、高速でのラミネートに加え接着中の冷却も必要である。ラミネート時の加圧は特に規定するものではないが、面圧として9.8〜294N/cm2(1〜30kgf/cm2)が好ましい。この値が低すぎると、樹脂界面の到達する温度が融点以上であっても時間が短時間であるため溶融が不十分であり、十分な密着性を得難い。また、加圧が大きいとラミネート金属板の性能上は不都合がないものの、ラミネートロールにかかる力が大きく設備的な強度が必要となり装置の大型化を招くため不経済である。
冷間圧延、焼鈍、調質圧延を施した厚さ0.18mm・幅977mmからなる鋼板を、脱脂、酸洗後、クロムめっきを行い、クロムめっき鋼板(TFS)を製造した。クロムめっきは、CrO3、F−、SO4 2−を含むクロムめっき浴でクロムめっき、中間リンス後、CrO3、F−を含む化成処理液で電解した。その際、電解条件(電流密度・電気量等)を調整して金属クロム付着量とクロム水酸化物付着量を、Cr換算でそれぞれ120mg/m2、15mg/m2に調整した。
ラミネートロール3は内部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フィルム接着中の冷却を行った。また、樹脂フィルムを金属板にラミネートする際に、金属板に接する界面のフィルム温度がフィルムの融点以上になる時間を1〜20msecの範囲内にした。
発明例4〜6で使用した樹脂層は、表面を低温プラズマ処理している。プラズマ処理装置内に4フッ化メタンガスを充填した後、電極に高周波電力を印加することでプラズマを照射した。具体的には、プラズマ処理装置内の雰囲気を、CF4−4%O2、0.6torrとして処理時間及び印加電力を調整することで、樹脂層表面の水との界面自由エネルギーを調整した。発明例4は、印加電力100Wで1分間処理したもの、発明例5は、印加電力200Wで2秒処理したもの、発明例6は、印加電力200Wで4秒処理したもの、である。
発明例7〜9は、ポリエステル樹脂層表面に疎水性高分子をコーティングしたものである。発明例7は、ポリテトラフルオロエチレンを樹脂層表面に、厚みが0.2μmとなるように被覆したものであり、発明例8は、テトラメチルジシロキサンを樹脂層表面に、厚みが0.1μmとなるように被覆したものである。発明例9は、ヘキサメチルジシロキサンを樹脂層表面に、厚みが0.3μmとなるように被覆したものである。
樹脂被覆金属板の表面に液体を滴下したときの接触角をθ、ラミネート金属板の表面自由エネルギーの分散力成分をγsd、極性力成分をγsh、また液体の表面自由エネルギーをγl、その分散力成分をγld、その極性力成分γlhとすると、これらは次の関係を満足する。
γl(1+cosθ)/2*(γlh)1/2
=(γsd)1/2*(γld)1/2/(γlh)1/2+(γsh)1/2
そこで、表面自由エネルギーが既知(γl、γlh、γldが既知)の5つの液体(水、グリセロール、ホルムアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール)を使用し、接触角計(協和界面科学(株)製CA−D型)を用いて、レトルト殺菌処理(130℃、90分間)前後の、水の樹脂層表面に対する静的接触角を求めた(湿度:55〜65%、温度20℃)。
上記式に前記5液の各々について測定した接触角θと各々の液体のγl、γlh、γldの値を代入して、最小二乗法フィッティングで、γsd、γsh及びγsを求める。
続いて、水の表面自由エネルギーをγw、γwh、γwdとすると、樹脂層表面における水との界面自由エネルギーγ1wは、次の関係式により求められる。
γ1w=γs+γw−2*(γsd*γwd)−2*(γsh*γwh)
以上から求めた樹脂層表面における水との界面自由エネルギーの結果を上記表1に併せて示す。なお、測定に用いた5液の表面自由エネルギー値を表2に示す。
絞り成形機を用いて、ラミネート金属板を、絞り工程で、ブランク径:100mm、絞り比(成形前径/成形後径):1.88でカップ成形した。続いて、ランチョンミート用の塩漬け肉をカップ内に充填し、蓋を巻き締めた後、レトルト殺菌処理(130℃、90分間)を行なった。その後、蓋を取り外し、カップを逆さまにして内容物を取り出した時に、カップ内側に残存する内容物の程度を観察することにより、内容物の取り出し易さの程度を評価した。
(評点について)
○:カップをさかさまにしただけで(手で振ることなく)内容物が取り出せ、取り出し後のカップ内面を肉眼で観察した際、付着物が殆ど確認できない状態になるもの。
△:カップをさかさまにしただけではカップ内側に内容物が残存するが、カップを上下に振動させる(手でカップを振るなどの動作をする)と、内容物が取り出せる。取り出し後のカップ内面を肉眼で観察した際、付着物が殆ど確認できない状態になるもの。
×:カップを上下に振動させる(手でカップを振るなどの動作をする)だけでは、内容物が取り出し難い。上下に振動させるスピードを極端に増すか、もしくはスプーンなどの器具を用いて内容物を強制的に取り出した後、カップ内面を肉眼で観察した際、付着物が明らかに確認できる状態になるもの
(3)成形性
被覆金属板にワックス塗布後、直径179mmの円板を打ち抜き、絞り比1.80で浅絞り缶を得た。次いで、この絞り缶に対し、絞り比2.20で再絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施し深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、フィルムの損傷程度を目視観察した。
(評点について)
○:成形後フィルムに損傷が認められない状態
△:形可能であるが、部分的にフィルム損傷が認められる状態
×:缶が破胴し、成形不可能
得られた結果を表3に示す。
表4の「下層の樹脂層」および表5の「上層の樹脂層」「下層の樹脂層」に示す比率にて重合したポリエステル樹脂を乾燥、溶融、押し出し、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
続いて、ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂と脂肪酸アミド及びその他の添加剤を、表4の「上層の樹脂層」に示す重量比にて、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に溶解して塗液を作製した。この塗液を、容器成形した後容器内面側となるポリエステルフィルムの片側の面に、ロールコーターで塗布・乾燥し、乾燥後の樹脂層の膜厚を調整した。乾燥温度は、80〜120℃の範囲とした。
樹脂被覆金属板の容器成形した後容器内面側となる樹脂表面に液体を滴下したときの接触角をθ、ラミネート金属板の表面自由エネルギーの分散力成分をγsd、極性力成分をγsh、また液体の表面自由エネルギーをγl、その分散力成分をγld、その極性力成分γlhとすると、これらは次の関係を満足する。
γl(1+cosθ)/2*(γlh)1/2
=(γsd)1/2*(γld)1/2/(γlh)1/2+(γsh)1/2
そこで、表面自由エネルギーが既知(γl、γlh、γldが既知)の5つの液体(水、グリセロール、ホルムアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール)を使用し、接触角計(協和界面科学(株)製CA−D型)を用いて、レトルト殺菌処理(130℃、90分間)前後の、水の樹脂層表面に対する静的接触角を求めた(湿度:55〜65%、温度20℃)。
上記式に前記5液の各々について測定した接触角θと各々の液体のγl、γlh、γldの値を代入して、最小二乗法フィッティングで、γsd、γsh及びγsを求める。
続いて、水の表面自由エネルギーをγw、γwh、γwdとすると、樹脂層表面における水との界面自由エネルギーγ1wは、次の関係式により求められる。
γ1w=γs+γw−2*(γsd*γwd)−2*(γsh*γwh)
なお、樹脂被覆金属板は、予め内容物が充填される直前の状態として、測定に供した。例えば、印刷缶用途であれば、印刷後の加熱処理を施し容器成形を行った後、容器底部などの測定に適する平坦な部分を対象として、測定を行った。
以上から求めた内面側となる樹脂層表面における水との界面自由エネルギーの結果を、上記表4に示す。なお、測定に用いた5液の表面自由エネルギー値を表6に示す。
樹脂被覆金属板の容器成形した後容器外面側となる樹脂表面に液体を滴下したときの接触角をθ、ラミネート金属板の表面自由エネルギーの分散力成分をγsd、極性力成分をγsh、また液体の表面自由エネルギーをγl、その分散力成分をγld、その極性力成分γlhとすると、これらは次の関係を満足する。
γl(1+cosθ)/2*(γlh)1/2
=(γsd)1/2*(γld)1/2/(γlh)1/2+(γsh)1/2
そこで、表面自由エネルギーが既知(γl、γlh、γldが既知)の5つの液体(水、グリセロール、ホルムアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール)を使用し、接触角計(協和界面科学(株)製CA−D型)を用いて、レトルト殺菌処理(130℃、90分間)前後の、水の樹脂層表面に対する静的接触角を求めた(湿度:55〜65%、温度20℃)。
上記式に前記5液の各々について測定した接触角θと各々の液体のγl、γlh、γldの値を代入して、最小二乗法フィッティングで、γsd、γshを求め、γs(=γsd+γsh)を算出した。
以上から求めた外面側となる樹脂層表面における水との界面自由エネルギーの結果を上記表5に示す。
絞り成形機を用いて、ラミネート金属板を、絞り工程で、ブランク径:100mm、絞り比(成形前径/成形後径):1.88でカップ成形した。続いて、タンパク質含有率の高い塩漬け肉(固形分中のタンパク質比率:50%以上)をカップ内に充填し、蓋を巻き締めた後、レトルト殺菌処理(130℃、90分間)を行なった。その後、蓋を取り外し、カップを逆さまにして内容物を取り出した時に、カップ内側に残存する内容物の程度を観察することにより、内容物の取り出し易さの程度を評価した。
(評点について)
○:カップをさかさまにしただけで(手で振ることなく)内容物が取り出せ、取り出し後のカップ内面を肉眼で観察した際、付着物がほとんど確認できない状態になるもの。
△:カップをさかさまにしただけではカップ内側に内容物が残存するが、カップを上下に振動させる(手でカップを振るなどの動作をする)と、内容物が取り出せる。取り出し後のカップ内面を肉眼で観察した際、付着物がほどんど確認できない状態になるもの。
×:カップを上下に振動させる(手でカップを振るなどの動作をする)だけでは、内容物が取り出し難い。上下に振動させるスピードを極端に増すか、もしくはスプーンなどの器具を用いて内容物を強制的に取り出した後、カップ内面を肉眼で観察した際、付着物が明らかに確認できる状態になるもの。
被覆金属板にワックス塗布後、直径179mmの円板を打ち抜き、絞り比1.80で浅絞り缶を得た。次いで、この絞り缶に対し、絞り比2.20で再絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施し深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、フィルムの損傷程度を目視観察した。
(評点について)
○:成形後フィルムに損傷が認められない状態
△:成形可能であるが、部分的にフィルム損傷が認められる状態
×:缶が破胴し、成形不可能
(5)転写性
樹脂被覆金属板の、容器成形後に容器内面側となる樹脂表面と、容器成形後に容器外面側となる樹脂表面を接触させ、200kg/cm2の荷重を負荷したまま、試験環境を60℃一定に保ちながら1週間経時させる。その後、容器成形した後容器外面側となる樹脂層表面の表面自由エネルギーを測定し、試験を開始する前の表面自由エネルギーとの差を求めた(湿度:55〜65%、温度20℃)。
(評点について)
○:表面自由エネルギーの差が、5mN/m未満
△:表面自由エネルギーの差が、5mN/m以上10mN/m未満
×:表面自由エネルギーの差が、10mN/m以上
(6)印刷適性
樹脂被覆金属板の容器成形した後容器外面側となる樹脂表面に印刷用インク(東洋インキ製印刷用インキCCST39)を塗布・乾燥させ、塗膜厚1.5μmとなるよう調整した。
その後、塗装面にニチバン(株)製セロテープ(登録商標)を密着させ、一気に剥離する。10枚試験を行い、インクに剥がれた枚数を調査した。
○:0枚
△:1〜3枚
×:4枚以上
得られた結果を表7に示す。
2 金属帯加熱装置
3 ラミネートロール
4a、4b 樹脂フィルム
5 金属帯冷却装置
Claims (10)
- 樹脂層を両面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、該金属板を容器成形した後に容器内面側になる樹脂層表面の、レトルト殺菌処理後の、水との界面自由エネルギーが30mN/m以上であり、容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層がポリエステルを主成分とする少なくとも2層構造であり、さらに上層のポリエステル樹脂層の厚み方向の平均複屈折率が0.06以上0.15以下、下層ポリエステル樹脂層の厚み方向の平均複屈折率が0.06以下であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
- 容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のうち、少なくとも一つを含むことを特徴する請求項1に記載の内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
- 容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層が、0.5mass%〜40.0mass%の脂肪酸アミドを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
- 前記脂肪酸アミドが、エチレンビスステアリン酸アミドであることを特徴とする請求項3に記載の内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
- 容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層が、複層構造の樹脂層であって、かつ、内容物と接する樹脂層表面の、水との界面自由エネルギーが30mN/m以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
- 容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層が、複層構造のポリエステル樹脂層であって、最上層のポリエステル樹脂層は、0.5mass%〜40.0mass%の脂肪酸アミドを含有し、かつ、内容物と接する樹脂層表面の、水との界面自由エネルギーが30mN/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
- 前記脂肪酸アミドが、エチレンビスステアリン酸アミドであることを特徴とする請求項6に記載の内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
- ポリエステルを主成分とする少なくとも2層構造の樹脂層を両面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、容器成形した後に容器内面側になる樹脂層表面の、レトルト殺菌処理後の、水との界面自由エネルギーが、該容器成形した後の内容物が充填される際に30mN/m以上であり、容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層のうち、上層のポリエステル樹脂層の厚み方向の平均複屈折率が0.06以上0.15以下、下層ポリエステル樹脂層の厚み方向の平均複屈折率が0.06以下であり、容器成形した後に容器外面側になる樹脂層表面の表面自由エネルギーが、25mN/m以上であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
- 樹脂層を両面に有する金属板を容器成形した樹脂被覆金属缶であって、該金属板が請求項1〜8のいずれかに記載の容器用樹脂被覆金属板であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる樹脂被覆金属缶。
- 樹脂層を両面に有する金属板を容器成形した樹脂被覆金属缶であって、容器成型した後に容器内面側になる樹脂層表面の、レトルト殺菌処理後の、水との界面自由エネルギーが30mN/m以上であり、容器成形した後に容器内面側になる前記樹脂層がポリエステルを主成分とする少なくとも2層構造の樹脂層であって、上層のポリエステル樹脂層の厚み方向の平均複屈折率が0.06以上0.15以下、下層ポリエステル樹脂層の厚み方向の平均複屈折率が0.06以下であることを特徴とする内容物取り出し性に優れる樹脂被覆金属缶。
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