JP4341469B2 - 容器用樹脂被覆金属板 - Google Patents

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Description

本発明は、食品缶詰の缶胴及び蓋等に用いられる容器用樹脂被覆金属板に関する。
従来、食缶に用いられる金属缶用素材であるティンフリースチール(TFS)およびアルミニウム等の金属板には塗装が施されていた。この塗装を施す技術は、焼き付け工程が複雑であるばかりでなく、多大な処理時間を必要とし、さらには多量の溶剤を排出するという問題を抱えていた。これらの問題を解決するため、熱可塑性樹脂フィルムを加熱した金属板に積層する方法が、現在、数多く提案されている。
上記提案の多くは、フィルムと基材である金属板の密着性及び成形性の改善に関するものであり、例えば、特許文献1には、フィルムとして、極性基を有するフィルム(ポリエステル樹脂等)を用いることが、特許文献2には、ポリエチレン樹脂被覆金属板の加工後密着性等を確保するために、フィルム表面へのコロナ放電等の処理を行い活性化させ、フィルム表面自由エネルギーを増大させ、(38〜54)×10−3N/m(38〜54dyn/cm)の範囲に規定することが記載されている。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されている技術を食品缶詰用途に使用すると、容器から内容物を取り出す際に、内容物が容器内面に強固に付着してしまい、内容物を取り出しにくいという問題がある。この問題は、消費者の購買意欲と密接に関係するため、消費者の購買意欲を確保する上で極めて重要な問題である。にもかかわらず、特許文献1及び特許文献2では、内容物の取り出し易さの改善に対する考慮は全くなされていない。
そこで、本発明者らは、内容物取り出し性を確保すべく鋭意検討を重ねた結果、特許文献3に示すように、ポリエステル樹脂中に特定のワックス(カルナウバワックス)を添加し、樹脂表面に存在させることで、脂肪分を多く含んだ内容物(市販の挽肉・卵の混合物などの、付着性の乏しい内容物)については、良好な特性を確保することができた。
特開昭63−236640号公報、特許請求の範囲など 特開平5−200961号公報、特許請求の範囲など 特開2001−328204号公報、特許請求の範囲など
しかしながら、特許文献3に記載されている技術では、低脂肪・高蛋白な内容物については、その付着性の強さから、良好な内容物取り出し性を確保することが出来なかった。蛋白質が多くの極性基を有するため、PET分子と容易に水素結合を生じてしまうためと考えられる。今後、健康ブームの高まりとも相俟って、低脂肪な食材に対する需要はさらに高まり、当該技術の重要性も増大するものと考えられる。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、低脂肪・高蛋白な内容物についても優れた取り出し性を確保するとともに、容器加工に要求される成形性、密着性を兼ね備えた容器用樹脂被覆金属板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、容器用樹脂被覆金属板の容器成形後の容器内面側に有する樹脂層を、ポリエステルを主成分とする樹脂にオレフィン系ワックスが適量添加された樹脂層とすることで、内容物取り出し性を確保するとともに、容器加工に要求される成形性、密着性を兼ね備えた容器用樹脂被覆金属板が得られることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1) 金属板と、この金属板を容器に成形した際に、少なくとも内面となる側に形成されたポリエステル樹脂層とを有する容器用樹脂被覆金属板であって、
ア)前記ポリエステル樹脂層が、容器の内部空間に接する上層のポリエステル樹脂層と金属板に接する下層のポリエステル樹脂層とを有し、
イ)上層のポリエステル樹脂層は、オレフィン系ワックスを0.1〜5.0質量%含有し、
ウ)上層のポリエステル樹脂層は、厚み方向の平均複屈折率が0.08以上0.15以下で、かつ、下層のポリエステル樹脂層は、厚み方向の平均複屈折率が0.04以下であり、
エ)上層のポリエステル樹脂層は、厚みが0.5μm以上10μm以下、下層のポリエステル樹脂層は、厚みが5μm以上20μm以下であることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
(2) オレフィン系ワックスは、ポリエチレンワックスであることを特徴とする(1)記載の容器用樹脂被覆金属板。
(3) 下層のポリエステル樹脂は、二酸化チタンの粒子を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の容器用樹脂被覆金属板。
(4) 上層のポリエステル樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート、もしくは酸成分としてイソフタル酸を6モル%以下の比率で共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートであり、
下層のポリエステル樹脂層は、酸成分としてイソフタル酸を10モル%以上22モル%以下の比率で共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の容器用樹脂被覆金属板。
本発明によれば、金属板を容器に成形した際に少なくとも内面となる側に形成されたポリエステル樹脂層のうち、容器内部空間と接する(即ち、内容物と接する)上層の樹脂層を、オレフィン系ワックスを含有したポリエステル樹脂層とし、且つ、上層のポリエステル樹脂層の厚み及び厚み方向の平均複屈折率を限定することにより、内容物取り出し性、成形性が良好であり、さらに下層のポリエステル樹脂層厚み及び厚み方向の平均複屈折率を限定することにより、金属板との密着性が良好であり、さらにこれらの限定により、内面となる側に形成されたポリエステル樹脂層全体の耐衝撃性も良好な容器用樹脂被覆金属板を得ることができる。
そして、本発明に係る樹脂被覆金属板は、絞り加工等を行う容器用素材、特に食缶容器用素材として好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る容器用樹脂被覆金属板は、金属板と、この金属板の表面に形成されたポリエステル樹脂層とを有し、このポリエステル樹脂層は、容器に成形した際に、少なくとも内面となる側に形成されている。このポリエステル樹脂層として、ポリエステルを主成分とする樹脂が使用される。ポリエステルを主成分とする樹脂はジカルンボン酸とグリコール成分とからなるポリマーであり、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン酸ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸を用いることができる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール等が挙げられるが、中でもエチレングリコールが好ましい。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用しても良い。また、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、結晶核剤等を配合できる。
以上よりなるポリエステルは、引張強度、弾性率、衝撃強度等の機械特性に優れるとともに極性を有するため、これを主成分とすることで樹脂層の密着性、成形性を容器加工に耐え得るレベルまで向上させるとともに容器加工後の耐衝撃性を付与させることが可能となる。
さらに、容器に成形した際に内面となる側に形成されたポリエステル樹脂層は、内容物と接する上層と金属板と接する下層とを有する。内容物と接する上層の樹脂層は、オレフィン系ワックスを含有したポリエステル樹脂層である。これは、本発明において最も重要な要件である。オレフィン系ワックスは、一般的に不活性であり反応性に乏しいため、食品などの内容物と密着しがたいという特徴がある。ポリエステル樹脂中にオレフィン系ワックスを適正量添加することで、樹脂表面にオレフィン系ワックスを存在させることが可能となり、これにより、樹脂層表面がオレフィン系ワックスによって不活性化され、内容物が密着し難くなり、内容物取り出し性を飛躍的に向上させることが可能となる。
添加するオレフィン系ワックスとしては、オレフィン類の単独重合体や共重合体、オレフィン類と他の共重合可能な単量体、例えば、ビニル系単量体との共重合体およびこれらの変性重合体などを例示することができる。具体的には、ポリエチレン(高密度、低密度低分子量、高分子量など)、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリ4-メチレンペンテン-1、アイオノマー樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、変性ポリオレフィン(オレフィン類の単独重合体または共重合体などとマレイン酸やフマル酸などの不飽和カルボン酸や酸無水物やエステルもしくは金属塩などとの反応物など)などである。また、これらポリオレフィンは、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
上記の中でも、本発明においては、オレフィン系ワックスとして、ポリエチレンワックスを用いることが、ポリエステル樹脂との相溶性の点及び樹脂層表面を効果的に不活性化できる点から好ましい。更には、数平均分子量(Mn)1,000乃至10,000の低分子ポリエチレンワックスの使用が更に効果的であり、好ましい。
オレフィン系ワックスを含有するにあたって、その含有量は、オレフィン系ワックスが添加されたポリエステル樹脂層に対して、質量比で0.1〜5%の範囲とする。0.1%未満では樹脂表面に生成するオレフィン系ワックス量が少なく、内容物取り出し性が劣る。5%を超えると内容物取り出し性がほぼ飽和してしまい特段の効果が得られないとともに、樹脂の製造上も技術的に困難な領域であり、生産性に乏しくコスト高を招いてしまう。以上の理由から、樹脂表面をオレフィン系ワックスで十分に被覆し且つ生産性を確保するためには、オレフィン系ワックスの添加量は0.1〜5%、好ましくは1.0〜3%の範囲とする。
さらに、当該上層のポリエステル樹脂層は、厚み方向の平均複屈折率を0.08以上0.15以下とする。0.08未満であると、内容物取り出し性が不足し、一方、0.15を超えると樹脂層の一部が破断し割れを生じてしまうおそれがある。この理由の詳細は概ね以下のように推測できる。
一般に、二軸延伸法により製膜されたポリエステルフィルムにはフィルム面の方向に配向した配向結晶が存在し、その存在量はフィルムの複屈折率を指標として定量化できる。ポリエステル樹脂層内のオレフィン系ワックスは、ポリエステル樹脂層の非晶領域にのみ存在し、結晶構造を形成した領域内には存在できない。したがって、ポリエステル樹脂層の結晶量が増すと、ポリエステル樹脂内に存在できるオレフィン系ワックス量が少なくなり、系外に押し出される形で、ポリエステル樹脂の表面に析出し、表面の不活性化が進むことになる。したがって、配向結晶量の指標である複屈折率が0.08未満であると、ポリエステル樹脂層内にとどまるオレフィン系ワックス量が増加し、表面の不活性化が不十分となり、内容物取り出し性が不足するものと考えられる。また、容器加工後の耐衝撃性についても、ポリエステル樹脂層の配向結晶量が増すとともに良好となるため、0.08以上であることが望ましい。一方、上層ポリエステル樹脂層の厚み方向の平均複屈折率が0.15超となると、柔軟性に富む非晶領域が少なくなるため、加工性が不足する。容器成形の際の加工に耐えられず、樹脂層の一部が破断し割れを生じてしまう。よって、上層ポリエステル樹脂層の、厚み方向の平均複屈折率は0.08以上0.15以下の範囲でなければならない。
また、下層ポリエステル樹脂層の平均複屈折率は、0.04以下とする。この理由は以下のとおりである。
樹脂被覆金属板の製造は、樹脂を熱せられた金属板に接触させ圧着することで金属板界面の樹脂を溶融させ、金属板に濡れさせることで接着を行うのが通常である。従って、フィルムと金属板との密着性を確保するためには樹脂が溶融していることが必要であり、融着後の金属板と接する部分のフィルム複屈折率は、配向結晶が融解するため低下することとなる。本発明に規定するようにこの部分のフィルム複屈折率が0.04以下であれば、熱融着時の樹脂の溶融濡れが十分であったことを示すものであり、すなわち優れた密着性を確保することが可能となる。0.04超となると、密着性が低下し、食品缶詰に施される高温・長時間のレトルト殺菌処理後に、缶蓋との巻き締め部等で樹脂層が剥離するおそれがある。
このようなポリエステル樹脂の複屈折率は、以下の測定手法にて求められる。
ラミネート金属板の金属板を除去した後に、偏光顕微鏡を用いて樹脂フィルムの断面方向のレタデーションを測定し、樹脂フィルムの断面方向の複屈折率を求める。フィルムに入射した直線偏光は、二つの主屈折率方向の直線偏光に分解される。この時、高屈折率方向の光の振動が低屈折率方向よりも遅くなり、そのためフィルム層を抜けた時点で位相差を生じる。この位相差をレタデーションRと呼び、複屈折率△nとの関係は、式(1)で定義される。
△n=R/d…(1)
但し、d:フィルム層の厚み
次に、レタデーションの測定方法について説明する。単色光を、偏光板を通過させることで直線偏光とし、この光をサンプル(フィルム)に入射する。入射された光は上記のように、レタデーションを生じるため、フィルム層を透過後、楕円偏光となる。この楕円偏光はセナルモン型コンペンセーターを通過させることにより、最初の直線偏光の振動方向に対してθの角度をもった直線偏光となる。このθを、偏光板を回転させて測定する。レタデーションRとθの関係は式(2)で定義される。
R=λ・θ/180 …(2)
但し、λ:単色光の波長
よって複屈折率△nは、式(1)、(2)から導き出される式(3)で定義される。
△n=(θ・λ/180)/d…(3)
本発明容器用樹脂被覆金属板の樹脂層(容器に成形したときに内側となる側の樹脂層)の構成は、容器の内部空間(即ち、容器の内容物)に接する上層と金属板に接する下層との2層を有する構造のポリエステル樹脂層であって、内容物と接する上層の樹脂層の厚みが0.5μm〜10μm、金属板に下層の樹脂層の厚みが5μm〜20μmである必要がある。
上層の厚みが、0.5μm未満であると、高配向領域が不足するため耐衝撃性が劣化してしまう。10μm超となると、高配向領域が過度となるため成形性が不足する。容器成形の際の加工に耐えられず、樹脂層の一部が破断し割れを生じてしまう。
一方、下層の厚みが5μm未満であると、密着性が乏しくなり不適である。逆に20μm超となると、密着性が飽和して更なる特性向上が望めないため、コストアップのみを招く結果となり不適である。
また、ポリエステル樹脂層の組成としては、上層が、ポリエチレンテレフタレート、もしくは酸成分としてイソフタル酸を6モル%以下の比率で共重合化した共重合ポリエチレンテレフタレートであり、下層が、酸成分としてイソフタル酸を10モル%以上22モル%以下の比率で共重合化した共重合ポリエチレンテレフタレートであることが望ましい。
上層のポリエステル樹脂層のイソフタル酸共重合比率が6モル%超の場合、樹脂層の融点が低下するため熱で溶けやすく、そのため金属板上に樹脂層を熱融着にて形成する際に本発明で規定する配向状態を実現することが困難となる。一方、下層のポリエステル樹脂層のイソフタル酸共重合比率が10モル%未満では、樹脂の融点が高いため熱で溶け難くなる。金属板上への樹脂層形成の際に、前記上層の配向状態を本発明の規定範囲内にコントロールしようとすると、金属板上での溶融濡れが不十分となり密着性が劣化する懸念がある。また、イソフタル酸共重合比率が増すにつれ、樹脂コストも上昇するため、下層のイソフタル酸共重合比率は22モル%以下に抑えることが望ましい。
また、ポリエステル樹脂層に着色顔料を添加することで、下地の金属板を隠蔽し、樹脂独自の多様な色調を付与できる。また、隠蔽性を完全とせず下地の金属光沢を利用した光輝色の付与も可能であり、優れた意匠性を得ることができる。更に樹脂層表面への印刷と異なり、樹脂内に直接顔料を添加して着色しているため、容器成形工程においても色調が脱落する問題もなく、良好な外観を保持できる。
添加する顔料としては、容器成形後に優れた意匠性を発揮できることが必要であり、係る観点からは、二酸化チタンなどの無機系顔料や有機顔料を使用できる。これらは着色力が強く、展延性にも富むため、容器成形後も良好な意匠性を確保できるので好適である。
特に、本発明で規定する容器成形後に容器内面側となる樹脂層の場合は、二酸化チタンの使用が望ましい。容器開封後、内容物の色が映えると共に、清潔感を付与できるためである。なお、これら顔料は、着色力・展延性に富み、FDAに認可された安全衛生物質であるため、その点からも好ましい。
本発明で規定するポリエステル樹脂層は、2層を有する構造であるので、顔料はそのうちの少なくとも1つの層に添加すればよく、下層のみに添加することが望ましい。二酸化チタンを含有させることで、樹脂層が若干脆くなるため、上層に適用した場合、容器成形時に金型と擦れる際に樹脂が削られるおそれがあるためである。
なお、顔料の添加量については特に規定するものではないが、一般的に、樹脂層に対して、質量比で、30%以上の含有量となると、隠蔽性については飽和するとともに経済的にも不利であるため、30%未満の範囲とすることが望ましい。なお、前記顔料の添加量は、顔料を添加した樹脂層(下層に添加した場合は下層)に対する割合である。
次に製造方法について説明する。
まず、複層を含む樹脂層(フィルム)の製造方法について説明する。特に限定しないが、例えば、各ポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥した後、単独及び/または各々を公知の溶融積層押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加等の方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し未延伸シートを得る。
この未延伸シートをフィルムの長手方向及び幅方向に延伸することにより二軸延伸フィルムを得る。延伸倍率は目的とするフィルムの配向度、強度、弾性率等に応じて任意に設定することができるが、好ましくはフィルムの品質の点でテンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同じに延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。
次に、前記フィルムを金属板にラミネートして樹脂被覆金属板を製造する方法について述べる。本発明では、例えば、金属板をフィルムの融点を超える温度で加熱し、その両面に樹脂フィルムを圧着ロール(以後ラミネートロールと称す)を用いて接触させ熱融着させる方法を用いことができる。
ラミネート条件については、本発明に規定する樹脂層が得られるように適宜設定される。例えば、ラミネート開始時の温度を220℃以上とし、ラミネート時にフィルムの受ける温度履歴として、フィルムの融点以上の温度で接している時間を1〜20msecの範囲とすることが好適である。このようなラミネート条件を達成するためには、高速でのラミネートに加え接着中の冷却も必要である。ラミネート時の加圧は特に規定するものではないが、面圧として9.8〜294N(1〜30kgf/cm)が好ましい。この値が低すぎると、樹脂界面の到達する温度が融点以上であっても時間が短時間であるため溶融が不十分であり、十分な密着性を得難い。また、加圧が大きいとラミネート金属板の性能上は不都合がないものの、ラミネートロールにかかる力が大きく設備的な強度が必要となり装置の大型化を招くため不経済である。
金属板としては、缶用等容器用材料として広く使用されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることができ、特に下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(いわゆるTFS)等が最適である。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量についても、特に限定されないが、加工後密着性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m、クロム水酸化物層は10〜30mg/mの範囲とすることが望ましい。
また、本発明では、樹脂層をフィルムに成形して金属板に被覆するのを原則とするが、樹脂層の規定が本発明の範囲内であれば、樹脂層をフィルムに成形せずに、樹脂層を溶融し、金属板表面に被覆する溶融押出しラミネーションを適用することも可能である。
以下、本発明の実施例について説明する。
厚さ0.18mm・幅977mmの冷間圧延、焼鈍、調質圧延を施した鋼板を、脱脂、酸洗後、クロムめっきを行い、クロムめっき鋼板(TFS)を製造した。クロムめっきは、CrO、F、SO 2−を含むクロムめっき浴でクロムめっき、中間リンス後、CrO、Fを含む化成処理液で電解した。その際、電解条件(電流密度・電気量等)を調整して金属クロム付着量とクロム水酸化物付着量を、Cr換算でそれぞれ120mg/m、15mg/mに調整した。
次いで、図1に示す金属帯のラミネート装置を用い、前記で得たクロムめっき鋼板1を金属帯加熱装置2で加熱し、ラミネートロール3で前記クロムめっき鋼帯1の一方の面に、容器成形後に容器内面側になる樹脂フィルムとして、表1に示す各種フィルム4a、他方の面に、容器成形後に容器外面側となる樹脂フィルムとして各種フィルム4bをラミネート(熱融着)し樹脂被覆金属板を製造した。
ラミネートロール3は内部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フィルム接着中の冷却を行った。樹脂フィルムを金属板にラミネートする際に、金属板に接する界面のフィルム温度がフィルムの融点以上になる時間を1〜20msecの範囲内にした。
以上の方法で得られた樹脂被覆金属板及び金属板上に有するフィルム(樹脂層)の特性は、下記の(1)〜(5)の方法によりそれぞれ測定、評価した。得られた結果を表2に示す。
(1)ポリエステル樹脂の複屈折率
実施の形態に記載した方法で、ラミネート金属板の金属板を除去した後、偏光顕微鏡を用いて容器内面側の樹脂フィルムについて、その断面方向のレタデーションを測定した。フィルムの厚み方向に1μmピッチで測定を繰り返し、厚み方向の複屈折率分布を求めた。上層、下層の平均複屈折率は各々の樹脂層における測定値の平均値として計算した。
(2)内容物取り出し性
絞り成形機を用いて、ラミネート金属板を、絞り工程で、ブランク径:100mm、絞り比(成形前径/成形後径):1.88でカップ成形した。続いて、このカップ内に、高たんぱく・低脂肪の内容物(赤み100%の牛ひき肉にオートミールを加え均一混合させた付着性の高いもの)を充填し、蓋を巻締め後、レトルト処理(130℃×90分間)を行った。その後、蓋を取り外し、カップを逆さまにして内容物を取り出したときにカップ内側に残存する内容物の程度を観察し、さらに手で2、3回手で振って内容物を取り出した後にカップ内側に残存する内容物の程度を観察することにより、内容物の取り出し易さの程度を評価した。
(評点について)
◎:カップをさかさまにしただけで(手で振ることなく)内容物が取り出せ、取り出し後のカップ内面に付着物が無い状態のもの。
○:カップをさかさまにしただけではカップ内側に内容物が残存するが、手で2、3回振るとカップ内面に付着物が無い状態になるもの。
×:手で2、3回振っても内容物の取り出しが困難なもの。
(3)成形性
ラミネート金属板にワックス塗布後、直径179mmの円板を打ち抜き、絞り比1.80で浅絞り缶を得た。次いで、この絞りカップに対し、絞り比2.20及び2.90で再絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施して深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、フィルムの損傷程度を目視観察した。
(評点について)
◎:成形後フィルムに損傷なく、フィルム白化も認められない。
○:成形可能であるが、フィルム白化が認められる。
×:缶が破胴し、成形不可能。
(4)密着性
上記(3)で成形可能であった缶に対し、缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm×長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムを一部剥離し、引張試験機で剥離した部分のフィルムを、フィルムが剥離されたクロムめっき鋼板とは反対方向(角度:180°)に開き、引張速度30mm/minでピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。なお、密着力測定対象面は、缶内面側とした。
(評点について)
◎:1.47N/15mm以上(0.15kgf/15mm以上)。
○:0.98N/15mm以上、1.47N/15mm未満(0.10kgf/15mm以上、0.15kgf/15mm未満)。
×:0.98N/15mm未満(0.10kgf/15mm未満)。
(5)耐衝撃性
上記(3)で成形可能であった缶に対し、缶内に常温の水道水を満たした後、蓋を巻き閉めて密閉した。各試験について10缶ずつを高さ1.25mから塩ビタイル床面へ落とした後、蓋及び缶内の水道水を除去し、缶上端部のフィルムを1箇所削って鋼板表面を露出させた。その後、缶内に5%の食塩水を満たし、これに白金電極を浸漬させ(浸漬させた位置は、缶の中心部)陰極とし、缶の上端部(鋼板露出部分)を陽極とした。続いて、白金電極と缶に6Vの電圧をかけて3秒後の電流値を読み取り、10缶測定後の平均値を求めた。
(評点について)
◎:0.01mA未満。
○:0.01mA以上、0.1mA未満。
×:0.1mA以上。
表2より、本発明範囲の発明例は、内容物取り出し性、成形性が良好であり、さらに密着性・耐衝撃性も良好である。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、いずれかの特性が劣っている。
成形性、密着性及び耐衝撃性が要求される容器用以外、例えば家電用途としても好適である。
Figure 0004341469
Figure 0004341469
実施例1に係る容器用樹脂被覆金属板の製造装置の概要を示す図。
符号の説明
1 金属板(クロムめっき鋼板)
2 金属帯加熱装置
3 ラミネートロール
4a、4b フィルム

Claims (4)

  1. 金属板と、この金属板を容器に成形した際に、少なくとも内面となる側に形成されたポリエステル樹脂層とを有する容器用樹脂被覆金属板であって、
    ア)前記ポリエステル樹脂層が、容器の内部空間に接する上層のポリエステル樹脂層と金属板に接する下層のポリエステル樹脂層とを有し、
    イ)上層のポリエステル樹脂層は、オレフィン系ワックスを0.1〜5質量%含有し、
    ウ)上層のポリエステル樹脂層は、厚み方向の平均複屈折率が0.08以上0.15以下で、かつ、下層のポリエステル樹脂層は、厚み方向の平均複屈折率が0.04以下であり、
    エ)上層のポリエステル樹脂層は、厚みが0.5μm以上10μm以下、下層のポリエステル樹脂層は、厚みが5μm以上20μm以下であることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
  2. オレフィン系ワックスは、ポリエチレンワックスであることを特徴とする請求項1記載の容器用樹脂被覆金属板。
  3. 下層のポリエステル樹脂は、二酸化チタンの粒子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の容器用樹脂被覆金属板。
  4. 上層のポリエステル樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート、もしくは酸成分としてイソフタル酸を6モル%以下の比率で共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートであり、
    下層のポリエステル樹脂層は、酸成分としてイソフタル酸を10モル%以上22モル%以下の比率で共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の容器用樹脂被覆金属板。
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