以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
<全体構成>
まず、図1を用いて、第1実施形態に係る溶接リングの仮付け装置について説明する。同図は、溶接リングの仮付け装置1の正面図である。
溶接リングの仮付け装置1は、吸着ノズル100と、溶接ローラユニット120と、電極側移動機構140と、ノズル側移動機構160と、溶接電極付勢装置170と、吸着ノズル付勢装置180と、を備えて構成される。
また、吸着ノズル100、溶接ローラユニット120、電極側移動機構140、ノズル側移動機構160、溶接電極付勢装置170、吸着ノズル付勢装置180は、ヘッド可動装置200に支持されている。ヘッド可動装置200は、水平移動体300上に配設された2つの直動モータ220(シャフトモータと言うこともある)の摺動部材222に固定され、Z軸方向(吸着方向又は吸着方向と反対方向)への移動が可能になっている。なお、ヘッド可動装置200のZ軸方向への移動は、直動モータ220によるものに限定されるものではない。例えば、ねじ軸とナットによるボールねじ機構を用いても好ましい。この場合、モータに接続されて回転可能なネジ軸をZ軸方向に配設し、そのねじ軸上をヘッド可動装置200が固定されたナットが螺合しながら移動することにより、ヘッド可動装置200をZ軸方向に移動することが可能となる。
水平移動体300は、直動モータ320の摺動部材322に固定され、X軸方向(同図の左右方向)への移動が可能になっている。また、水平移動体300は、壁部400に配設されたガイドレール324(本実施形態では、直動モータ320と略平行に2列に配設されている)と摺動可能に係合され、X軸方向への移動が滑らかに行われるようになっている。なお、水平移動体300のX軸方向への移動は、直動モータ320によるものに限定されるものではなく、ヘッド可動装置200で説明したようにボールねじ機構により移動するようにしても好ましい。
溶接リング30は、キャリア500上にマトリクス状に整列配置されている。キャリア500は、2つの直動モータ520によりY軸方向に移動可能となっている。したがって、キャリア500はY軸方向に移動し、水平移動体300はX軸方向に移動することによって、吸着ノズル100は、キャリア500上でマトリクス状に配置されている各溶接リング30の真上まで移動することが可能となっている。そして、ヘッド可動装置200を先端側である吸着方向(溶接リング30に接近させる方向)に移動することにより、吸着ノズル100はキャリア500上に載置された溶接リング30を吸着できる位置まで移動することができる。
キャリア550上には、複数のセラミック容器20がマトリクス状に連続形成されているセラミック基板18が載置されている。キャリア550は、2つの直動モータ570によりY軸方向に移動可能となっている。したがって、前述と同様にキャリア550はY軸方向に移動し、水平移動体300はX軸方向に移動することによって、吸着ノズル100は、キャリア550上に整列配置されている各セラミック容器20の真上まで移動することが可能となっている。そして、ヘッド可動装置200を先端側である吸着方向(セラミック容器20に接近させる方向)に移動することにより、吸着ノズル100は吸着保持した溶接リング30を目的とするセラミック容器20に載置できる。
また、キャリア550には交換テーブル600が並設されている。この交換テーブル600上には、保持台620と、その保持台620に保持された交換用の溶接ローラユニット120が配置されている。溶接リングの仮付け装置1は、溶接リングの仮付け装置1の溶接ローラユニット120をX軸方向に移動させると共に、交換用の溶接ローラユニット120が配置されている交換テーブル600をY軸方向に移動させることで、交換テーブル600上の任意の保持台620の上において、溶接ローラユニット120を開放したり、新たな交換用溶接ローラユニット120を保持したりすることが可能となっている(詳細は後述)。これにより、溶接リングの仮付け装置1は、摩耗等によって交換頻度の高い溶接ローラユニット120を自動交換することが可能となっている。
なお、キャリア500とキャリア550の間にはカメラ40が配設され、溶接リング30を吸着した吸着ノズル100は、このカメラ40の撮影範囲を通ってキャリア500からキャリア550に移動する。したがって、カメラ40は、吸着ノズル100に吸着された状態の溶接リング30の座標情報(位置情報と言うこともある)を取得すると共に、その座標情報を溶接リングの仮付け装置1の制御部(図示省略)に送信する。制御部は、受信した座標情報に基づいて、吸着ノズル100をキャリア550に載置された目的とするセラミック容器20の位置まで移動するように制御する。
図2(図1のII−II矢視断面)に示されるように、吸着ノズル100(詳細は後述)は、後端側(吸着方向と反対側、以下本明細書において同様の意味とする)において空気継手部材110と嵌合して固定されている。空気継手部材110は、ノズル側移動機構160に保持されている。
ノズル側移動機構160は、基台161と、ガイドレール162から構成され、基台161は、ヘッド可動装置200上に固定されている。ガイドレール162は、基台161上でZ軸方向に配設されている。空気継手部材110は、このガイドレール162に摺動可能に係合し、ガイドレール162に沿ってZ軸方向に移動できるようになっている。
また、空気継手部材110は、後端側において圧縮バネである吸着ノズル付勢装置180の端部と結合されている。吸着ノズル付勢装置180の他方の端部は、ノズル側移動機構160の基台161の側壁に固定されている。したがって、吸着ノズル100は、吸着ノズル付勢装置180によって吸着方向(本明細書では、先端側と言うこともある)に押し付けられる(付勢される)ようになっている。なお、この吸着ノズル付勢装置180は、付勢している吸着ノズル100がセラミック容器20に当接した場合、付勢作用により、吸着ノズル100が受ける衝撃力を緩和する機能も備えている。
本実施形態では、吸着ノズル付勢装置180は圧縮バネを用いたが、吸着ノズル100を吸着方向に付勢でき、且つ吸着ノズル100に後端側への反力が作用した場合に、一定のダンパー作用を有するものであればこれに限定されるものではない。例えば、圧縮バネの代わりに空気シリンダを用いても好ましい。この場合は、空気シリンダは付勢作用とダンパー作用の両方を兼ね備えている。
図2を用いて、この吸着ノズル100の動作を説明する。まず、溶接リング30が載置されているキャリア500をY軸方向へ移動、及び溶接リングの仮付け装置1をX軸方向へ移動させ、吸着ノズル100を任意の溶接リング30の真上まで移動させる(同図(a)参照)。
同図(b)に示されるように、ヘッド可動装置200を吸着方向に移動し、吸着ノズル100が溶接リング30を吸着できる高さまで移動させる。その後、吸着ノズル100は、負圧発生装置(図示省略)により発生した負圧により溶接リング30を吸着する。この際、吸着ノズル100が溶接リング30と僅かに当接し、吸着時に溶接リング30が位置ズレしないように軽く抑えることが好ましい。なお、吸着ノズル100が溶接リング30に当接すると、吸着ノズル100と嵌合した空気継手部材110がガイドレール162に沿って吸着方向と反対側へ移動するので、吸着ノズル100が溶接リング30へ当接する際の衝突力を緩和することができる。また、空気継手部材110は、吸着ノズル付勢装置180によって常に吸着方向へ付勢されている。したがって、空気継手部材110に嵌合している吸着ノズル100は、当接時に溶接リング30に大きな衝撃を加えることなく、常に安定した状態で当接することができるようになっている。
また、詳細は後述するが、吸着ノズル100は、真空ポンプなどの負圧発生装置(図示省略)と接続された負圧発生孔104を有し、溶接リング30を吸着保持することができるようになっている。
次に、図3に示されるように、溶接ローラユニット120は、溶接電極である溶接ローラ122をハウジング124に回転可能に保持したものである。
溶接ローラユニット120のハウジング124の外周面には、周方向に沿って位置決め溝124aが形成されている。そして、溶接ローラ保持装置146には、位置決め突起146Eが突設されている。この位置決め突起146Eをハウジング124の位置決め溝124aに係合させることで、溶接ローラユニット120のX軸方向の位置決めが行われる(同図(a)参照)。
また、溶接ローラ122における、溶接リング30と当接する当接面122aは、溶接リング30と略平行な平面になっていて、当接面122aにおける吸着ノズル100の反対側には、吸着ノズル100と離反する方向に向かって、吸着方向と反対方向に進む傾斜面122bが連続している。したがって、溶接ローラ122は、マトリクス状に連続形成されたセラミック容器20に溶接リング30を溶接する際、隣接する溶接リング30A、30Bへの接触を傾斜面122bにより避けることができる形状となっている。なお、図3(b)に示されるように、溶接リング30との当接面122aは、本実施形態のように溶接リング30に平行な平面に限定されるものではなく、吸着ノズル100側に向かって吸着方向に進む傾斜面としても好ましい。
図4(図1のIV−IV矢視断面)に示されるように、電極側移動機構140は、直動モータ144と、基台141と、ガイドレール142と、溶接ローラ保持装置146から構成されている。
直動モータ144は、ヘッド可動装置200上のX軸方向(水平方向)に2つ配設されている。この直動モータ144は、いわゆるリニアモータである。具体的には、ガイド軸144A側には永久磁石が配置されており、軸方向にN極とS極が交互に連続形成されている。摺動部材144B側は、ガイド軸144Aと同軸にコイル(図示省略)が巻かれた構造になっている。この摺動部材144Bのコイルに流す電流の方向を所定の周期で連続的に変えることにより、摺動部材144Bがガイド軸144Aに形成されたN極又はS極に引っ張られる。したがって、摺動部材144Bは、ガイド軸144Aの軸方向に沿って移動することとなる。
基台141は摺動部材144Bに固定され、この摺動部材144Bと共に直動モータ144のガイド軸144Aに沿って移動する。したがって、吸着ノズル100の両外側に設けられた電極側移動機構140は、一対の吸着ノズル100との相対距離を狭めたり広げたりすることができる。これにより、一対の溶接ローラ122間の幅は、溶接対象となる溶接リング30の幅に合わせて変えることができる。
ガイドレール142は、基台141上のZ軸方向(吸着方向)に配設され、溶接ローラ保持装置146(詳細は後述)の基台146Aに設けられた摺動テーブル142Aと摺動可能に係合する。この結果、溶接ローラ保持装置146は、ガイドレール142上をZ軸方向に移動可能となっている。
溶接ローラ保持装置146は、基台146Aと、基台146Aの上に設けられた固定部材146B及び開閉部材146Cとからなり、固定部材146B及び開閉部材146Cで溶接ローラユニット120のハウジング124を挟持するように構成されている。
開閉部材146Cは、回動ピン146Dを介して固定部材146Bの背面に回動可能に配設されている。また、開閉部材146Cは、バネ等の付勢手段(図示省略)によって溶接ローラユニット120を挟持する方向(閉じる方向)に付勢されている。すなわち、溶接ローラ保持装置146は、付勢手段による付勢力によって溶接ローラユニット120を挟持する構造となっている。
開閉部材146Cは、上方に向けて突設されたレバー147を備えており、このレバー147の先端にはローラ147Aが設けられている。基台146Aに固定されている着脱切替部材148は、このレバー147のローラ147Aを所定の方向に向けて押圧することで、付勢手段の付勢力に抗して開閉部材146Cを開く方向に回動させ、溶接ローラユニット120を溶接ローラ保持装置146から解放するように構成されている。
具体的に着脱切替部材148は、スリーブ148A内の空気圧を上げることによりピストンロッド148Bを軸方向に移動させることができる空気圧シリンダである。この着脱切替部材148のピストンロッド148Bを伸ばすことにより、ピストンロッド148Bは、ローラ147Aを所定の方向に押圧する。ローラ147Aが押圧されると、開閉部材146Cは、同図(b)に示されるように、回動ピン146Dを中心に回転(溶接ローラユニット120を解放する方向に回転)する。また、ピストンロッド148Bを縮める方向に移動すると、押下されていたローラ147Aは解放され、開閉部材146Cが、付勢手段により回動ピン146Dを中心に、溶接ローラユニット120を挟持する方向に回転する。したがって、溶接ローラ保持装置146は、着脱切替部材148のピストンロッド148Bの伸縮によって、溶接ローラユニット120の着脱を容易に行うことができる。
溶接電極付勢装置170は、本実施形態では圧縮ばねであり、電極側移動機構140における基台141と溶接ローラ保持装置146の間に設けられている。したがって、溶接電極付勢装置170は、溶接ローラユニット120を吸着方向に押し付ける(付勢する)ように作用する。また、溶接電極付勢部材170は、錘(図示省略)を備え、溶接ローラユニット120を溶接リング30方向に付勢するようにしても好ましい。具体的には、錘は溶接電極付勢装置170の端部(基台141側)に設けられ、溶接ローラユニット120を吸着方向(溶接リング30方向)に付勢するように構成することが好ましい。この場合、溶接ローラユニット120は、圧縮ばねである溶接電極付勢装置170により鉛直方向(溶接リング30方向)に付勢されるとともに、錘によって付勢する力を補助することができる。したがって、通常、溶接リング30やリッド10の厚さや材質によって、溶接電極付勢装置170(圧縮ばね)を交換して溶接リング30(リッド10)に溶接ローラ122を押し付ける力を変える必要があるが、錘を変更するだけで容易に押し付け力を調整することができる。
なお、本実施形態では、溶接電極付勢装置170は圧縮ばねを用いたが、溶接ローラ保持装置146を吸着方向に付勢でき、且つ溶接ローラ122が溶接対象となる溶接リング30に当接して後端側に反力が作用した場合に、一定のダンパー作用を有するものであればこれに限定されるものではない。例えば、圧縮バネの代わりに空気シリンダを用いても好ましい。この場合は、空気シリンダは付勢作用とダンパー作用の両方を兼ね備えている。
なお、本実施形態では、水平移動体300、ヘッド可動装置200及び電極側移動機構140の移動手段として、直動モータ320、220及び144を用いる構造としているが、直動機構であれば好ましく、本実施形態の直動モータに限定されるものではない。例えば、モータにより回転可能なネジ軸と、そのネジ軸に螺合しながら直動するナットを用いたボールねじ機構等を用いても好ましい。
<吸着ノズル>
次に、図5を用いて、吸着ノズル100について説明する。同図(a)は、吸着ノズル100を吸着方向側から見た概略斜視図であり、同図(b)は、吸着ノズル100を吸着方向と反対側(同図(a)の矢印A方向)から見た概略斜視図である。
吸着ノズル100は、第1ノズル構成板101と、第2ノズル構成板102の2枚の板部材から構成される。第1ノズル構成板101と第2ノズル構成板102は、相互に対向した状態で固定される。従って、吸着ノズル100全体も平板形状となっており、その板厚の略真ん中で、第1ノズル構成板101と第2ノズル構成板102に分離可能とされる。
この第1ノズル構成板101は、先端面103と連続するようにして負圧発生溝104aが形成される(図6参照)。第2ノズル構成板102にも同様に、負圧発生溝104bが形成される(図6参照)。この負圧発生溝104aと負圧発生溝104bは、対向する位置に配置されている。第1ノズル構成板101と、第2ノズル構成板102を当接させて一体化することで、負圧発生溝104aと負圧発生溝104bが対向し、両者により負圧発生孔104が形成される。吸着ノズル100は、この負圧発生孔104により、部品を吸着保持することができる。
また、吸着ノズル100は、先端面103と反対(負圧発生孔104の後端)側に負圧供給開口105が設けられている。負圧供給開口105は、第1ノズル構成板101と、第2ノズル構成板102を当接させて一体化することで負圧発生孔104の後端側に形成される。詳細は後述するが、この負圧供給開口105は、空気継手部材110を介して負圧発生装置(図示省略)に接続される。したがって、この負圧供給開口105と連通する負圧発生孔104は、負圧発生装置(図示省略)により発生した負圧を導いて先端面103側に負圧を発生させることができ、溶接リング30などの電子部品を吸引する。
なお、負圧発生孔104の断面形状や数量は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、負圧発生孔104をスリット状の角孔に形成しても好ましい。
また、ここでは第1ノズル構成板101と第2ノズル構成板102の双方に負圧発生溝104a、104bを形成する場合を示したが、一方だけ有していれば本発明の目的を達成できる。例えば、第2ノズル構成板102の当接面には負圧発生溝104bを形成せずに、平面状態にしておいても好ましい。
図6は、第1ノズル構成板101並びに第2ノズル構成板102の部品図である。なお、図中の斜線部分は、相手側のノズル構成板と当接する領域を示している。
第1ノズル構成板101は、略長方形となる板部材であり、長手方向の一方の端面が先端面103となり、その先端面103と反対(吸着ノズル100の後端)側は、横幅が中心方向に1段細くなった細幅部101bが形成されている。また相手側のノズル構成板と当接する面側には、負圧発生溝104aが形成されている。
負圧発生溝104aは、吸着側溝106aと導入側溝107aを備えて構成されている。吸着側溝107aは、第1ノズル構成板101の吸着方向に2本並行に配置されており、先端面103と連通するようになっている。なお、この2本の吸着側溝106aの間隔は、溶接リング30の対辺の距離と一致するように設定されている。一方、導入側溝107aは、第1ノズル構成板101の中央から後端(細幅部101b)側にかけて延在しており、吸着側溝106aに連通して設けられる。吸着側溝106aの溝幅は、極めて細く、後述する溶接リングの直径より小さく設定されている。一方、導入側溝107aの溝幅は、吸着側溝106aよりも大きく設定されており、具体的には、2倍以上、望ましくは5倍以上に設定されている。
負圧発生装置(図示省略)に接続された負圧供給開口105から導入された負圧は、導入側溝107aを介して吸着側溝106aに導入される。したがって、吸着ノズル100は、吸着側溝106aの先端に設けられている先端面103に負圧が発生し、溶接リング30を吸着することができる。
なお、第2ノズル構成板102は、第1ノズル構成板101と同様に、負圧発生溝104bが第1ノズル構成板101の負圧発生溝104aと対向する位置に形成されている。負圧発生溝104bは、吸着側溝106bと、導入側溝107bを備えて構成されている。また、第2ノズル構成板102の先端には溶接リング30を所定の面状態で保持する先端面103が形成されている。なお、本実施形態では、第2ノズル構成板102には、第1ノズル構成板101の細幅部101bに対応する部分はなく、第2ノズル構成板102の後端側は、導入側溝107bが第2ノズル構成板102の後方外縁まで設けられている。
したがって、この第1ノズル構成板101と第2ノズル構成板102を相互に対向させて当接することによって、一対の吸着側溝106a、106bによって吸着側孔106が、一対の導入側溝107a、107bによって導入側孔107が形成される(図5(a)参照)。また前述したように、この吸着側孔106と導入側孔107によって、負圧発生孔104が構成される。吸着側孔106は、負圧の印加面積をできる限り絞り込んで、溶接リング等の線状の部材を吸引する機能を有する。一方、導入側孔107は、負圧を導入するための流路を拡張して気流の損失を低減し、素早く負圧を導入する機能を有する。また、導入側孔107は、吸着側孔106が異物等を誤って吸い込んだ場合に、導入側孔107まで吸い込むことで、負圧発生孔104が詰まることを防止する。
なお、導入側溝107a、107bは、溝部の体積(負圧導入穴107の体積)が大きいほど、負圧による真空度を向上することが出来る。つまり、導入側溝107a、107bの溝幅Lを広げるか、または溝深さを深くすることが望ましい。しかし、特に後述するような溶接ヘッド等に吸着ノズル100を用いる場合、その板圧は、電子部品の小型化が進むにつれ薄くする必要があり、溝深さを深くするには限界がある。したがって、本実施形態の場合、溝幅Lを広くすることが望ましい。
また、吸着側溝106a、106bは、溝幅Mに対して溝長さPが所定の値以上になると、空気の流れ抵抗が増大するので、先端面103に負圧を印加するのに要する時間が長くなってしまうという問題がある。したがって、吸着側溝106a、106bの溝長さPは、溝幅Mに対して短くしておくことが好ましく、具体的には、P<5×Mになるように形成されていることが望ましい。
<溶接リングの溶接方法>
次に、図7〜10を用いて、溶接リング仮付け装置1による溶接リング30の仮付け方法について説明する。図7は、溶接リングの仮付け装置1の初期状態の一例を示す正面図であり、図8は、吸着ノズル100により溶接リング30を吸着する状態を示す溶接リング仮付け装置1の正面図であり、図9は、吸着ノズル100により溶接リング30をセラミック容器20に載置する状態を示す溶接リングの仮付け装置1の正面図であり、図10は、溶接ローラ122により溶接リング30をセラミック容器20に仮付けする状態を示す溶接リング仮付け装置1の正面図である。
図7に示されるように、溶接リングの仮付け装置1は、直動モータ320によりX軸方向の任意の位置まで移動される。また、キャリア500上に整列配置された溶接リング30は、直動モータ520によりY軸方向の任意の位置に移動される。この溶接リングの仮付け装置1のX軸方向への移動及び溶接リング30が載置されているキャリア500のY軸方向への移動によって、吸着ノズル100は、任意の溶接リング30の真上まで移動可能となっている。
<前出行程>
次に、図8に示されるように、吸着ノズル100は、先端面103が溶接リング30と略当接する位置まで吸着方向に移動する。なお、吸着ノズル100の先端面103と溶接リング30は略当接するようにされるものに限定するものではなく、吸着ノズル100が溶接リング30を吸着できる位置関係であれば好ましい。
<吸着保持行程>
吸着ノズル100は、負圧発生装置(図示省略)により発生した負圧により溶接リング30の一方の対辺(図11に示すE、F部)を吸着保持する。
<溶接リング載置工程>
次に、溶接リングの仮付け装置1は、吸着ノズル100を後端側(吸着方向と反対側)に移動する。具体的には、直動モータ220によりヘッド可動装置200を後端側に移動させる。
その後、溶接リングの仮付け装置1は、吸着ノズル100が溶接リング30を吸着保持した状態で、溶接リング30がカメラ40の撮影範囲に入るようにX軸方向に移動する。
カメラ40は、撮影した溶接リング30の(X、Y、θ(回転角度))座標情報を画像認識により算出する。その後、カメラ40は、取得した座標情報を溶接リングの仮付け装置1の制御部(図示省略)に送信する。
溶接リングの仮付け装置1は、カメラ40から取得した座標情報に基づいて溶接リング30の位置補正をしながら、溶接リング30を所定の(溶接対象となる)セラミック容器20の真上まで移動させる。
溶接リングの仮付け装置1は、図9に示されるように、溶接リング30を吸着保持した状態で吸着方向に移動し、溶接リング30をセラミック容器20の開口部に載置する。
<電極移動行程>
ヘッド可動装置200は、吸着ノズル100を吸着方向へ更に押し込む。すると、吸着ノズル100は、ノズル側移動機構160により吸着方向と反対側(後端側)へ移動する。吸着ノズル100が、ノズル側移動機構160により後端側へ移動すると、吸着ノズル100の両側に配設された溶接ローラ122は相対的に吸着方向に出てくることになる。吸着ノズル100を更に吸着方向に押し込むと、溶接ローラ122の電極面は溶接リング30と当接し、仮付け溶接可能な状態となる(図10参照)。
<仮付け工程>
溶接ローラ122は、電圧発生装置(図示省略)により発生した電圧により、溶接ローラ122が押圧した位置の溶接リング30の他方の対辺(図11に示す、溶接部32)とセラミック容器20の対応する位置(図11に示す、溶接部22)の接触面をジュール熱により溶解させて溶接する。なお、溶接リング30と、セラミック容器20の溶接は窒素雰囲気中で行うことが好ましい。具体的には、窒素ガスを充満させたチャンバー(室)内などの窒素雰囲気中で溶接を行うことが好ましく、他の方法としては溶接箇所にブロー装置などで窒素ガスを吹き付けて雰囲気を作った中で溶接を行っても良い。
更に、溶接リングの仮付け装置1は、負圧発生装置(図示省略)の負圧発生を停止し、負圧発生装置と負圧供給開口105の間の空気経路に接続している大気開放ポート(図示省略)を開放して吸着ノズル100の負圧を大気圧近傍まで開放して、溶接リング30の保持状態を解く。その後、ヘッド可動装置200全体が上昇して、次の溶接リング30の溶接を行う。これを繰り返すことで、全てのセラミック容器20に対して溶接リング30が仮付け溶接されることになる。このセラミック容器20を、加熱炉に投入して、溶接リング30の全周をセラミック容器20に溶着させることで、溶接リング30の搭載工程は完了する。
なお、本実施形態では、吸着ノズル100を、2枚の板部材(第1ノズル構成板101、第2ノズル構成板102)で構成したが、板部材は少なくとも2枚以上であればよく、第1ノズル構成板101と第2ノズル構成板102の間にもう一枚板部材(例えば、第3ノズル構成板)を設ける構造にしてもよい。このように、吸着孔となる溝を有する複数の板部材を組み合わせる構造とすることで、厚みが非常に薄い吸着ノズルにすることが出来る。
また、本実施形態では、溶接リング30を2か所でスポット的に仮付け溶接する溶接ローラ122としたが、溶接ローラ122はこれに限定されるものではない。例えば、溶接中に溶接ローラ122を移動させながら、溶接リング30の4辺を完全に溶接するようにしても好ましい。これにより、溶接リング30の仮付けの必要がなく、仮付け後にさらに本付け溶接を行う製造工程を省略することができ、コスト削減とタクトタイムの削減が出来る。
また、本実施形態では、溶接リング30とセラミック容器20の溶接について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、溶接リングの仮付け装置1をリッド10の仮付け溶接に用いても好ましい。具体的には、吸着ノズル100によりリッド10を吸着し、吸着ノズル100を移動させてセラミック容器20に溶着されている溶接リング30の上にリッド10を載置する。次に、溶接リングの仮付け装置1は、リッド10に溶接ローラ122を当接した状態で、電圧発生装置(図示省略)により発生させたパルス電圧を溶接ローラ122に印加することにより、溶接リング30をジュール熱で溶かし、リッド10とセラミック容器20を仮付けすることができる。
さらに、この溶接リングの仮付け装置1は、リッド10のシーム溶接に用いても好ましい。具体的には、回転自在な溶接ローラ電極とした溶接ローラ122をリッド10の縁に押しつけながら、その縁の延在方向に移動していくことで、リッド10の4辺をセラミック容器20に確実に溶接することが出来る。これにより、リッド10が極めて小さくなった場合でも、この吸着ノズル100を用いることで、一対の溶接ローラ電極122間の距離を狭めることが可能となり、リッドの供給と溶接を同時に行うことが可能となる。
また、本実施形態では、溶接リングの仮付け装置1により、溶接リング30(またはリッド10)をセラミック容器20に溶接する場合を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、微細なリング状の電子部品の搬送等に適用することが可能である。
また、本実施形態に係る吸着ノズル100は、非常に小径の負圧発生孔を形成することができるため、特に小型の電子部品を吸着するのに最適である。
したがって、本実施形態に係る溶接リングの仮付け装置1は、負圧を発生する負圧発生孔104を有し、溶接リング30の一方の対辺を吸着保持する吸着ノズル100と、吸着ノズル100の両脇に配設され、溶接リング30の他方の対辺に当接可能な溶接ローラ122を備えている。更に、溶接ローラ122を吸着方向に移動させる電極側移動機構140と、吸着ノズル100を溶接ローラ122よりも吸着方向に突出する状態まで吸着方向に移動させるノズル側移動機構160と、溶接ローラ122を吸着方向に付勢する溶接電極付勢装置170と、吸着ノズル100を吸着方向に付勢する吸着ノズル付勢装置180を備えている。したがって、溶接リングの仮付け装置1は、吸着リング30の一方の対辺を吸着保持した状態で、セラミック容器20に載置すると共に、吸着ノズル100と相対的に移動して、溶接リング30に当接する溶接ローラ122により、溶接リング30の他方の対辺を溶接することができる。
また、溶接ローラ122の溶接リング30と当接する当接面は、吸着ノズル100側に向かって吸着方向に進む傾斜面である。したがって、キャリア550上に狭い間隔で連続形成されているセラミック容器20に溶接リング30を仮付けする場合、傾斜面の吸着ノズル100側の反対側が逃げ部となり、隣り合う溶接リングを溶接することなく、目的とする溶接リング30のみを溶接することができる。
また、溶接ローラ122の溶接リング30と当接する当接面は、溶接リング30の溶接面に平行な平面であり、且つ、その当接面における吸着ノズル100の反対側には、吸着ノズル100と離反する方向に向かって吸着方向と反対方向に進む傾斜面が連続する形状となっている。したがって、キャリア550上に狭い間隔で連続形成されているセラミック容器20に溶接リング30を仮付けする場合、溶接ローラ122は、溶接リング30の当接面を面で押圧して確実にスポット溶接することができ、傾斜面の吸着ノズル100側の反対側が逃げ部となり、隣り合う溶接リングを溶接することなく、目的とする溶接リング30のみを溶接することができる。
また、溶接ローラ122は、吸着ノズル100の両外側に回転自在に配置される一対の円形電極板であり、その円形電極板は、吸着ノズル100側に向かって直径が大きくなることで、周縁に傾斜面が形成される。したがって、キャリア550上に狭い間隔で連続形成されているセラミック容器20に溶接リング30を仮付けする場合、傾斜面の吸着ノズル100側の反対側が逃げ部となり、隣り合う溶接リングを溶接することなく、目的とする溶接リング30のみを溶接することができる。
また、電極側移動機構140と、ノズル側移動機構160を同時に吸着方向に移動させる垂直移動体(ヘッド可動装置)200を備えている。したがって、ヘッド可動装置200を吸着方向に移動させることで、まず、吸着ノズル100が吸着保持している溶接リング30がセラミック容器20に当接し、その後、溶接ローラ122が溶接リング30に当接して溶接をすることができる。つまり、吸着ノズル100と溶接ローラ122に別々に駆動装置を設ける必要がなく、比較的簡単な機構とすることができ、且つ、安価にすることができる。
また、本実施形態の吸着ノズル100は、複数のノズル構成板(第1ノズル構成板101、第2ノズル構成板102)を相互に対向して当接する構造とし、その複数のノズル構成板の中の少なくとも1つのノズル構成板の当接する面に、負圧発生孔となる溝(負圧発生溝104a、104b)を形成している。つまり、吸着ノズル100は、非常に薄い板の内部に、通常のドリル加工では成形困難な小径の負圧発生孔104を形成することができる。
また、本実施形態の吸着ノズル100は、吸着方向の先端近傍に吸着側溝106a(または吸着側溝106b)が形成され、また、この吸着側溝106aと連通するように導入側溝107a(または導入側溝107b)が形成されている。さらに、この導入側溝107aの溝幅Lは、吸着側溝106aの溝幅Mよりも広くなるように形成されているので、吸着ノズル100の先端面103に対して短時間で負圧を印加することができる。
また、吸着側溝106aの溝長さPは、溝幅Mの5倍以下の長さに形成されているため、負圧の圧力を低下させることなく電子部品を吸着することができる。
また、吸着側溝106a(または吸着側溝106b)の溝幅Mは、導入側溝107a(または導入側溝107b)の溝幅Lの1/2以下に形成されているため、負圧発生装置(図示省略)による負圧を効率よく先端面103に導くと共に、負圧発生孔104の真空度を高めることができる。
また、負圧発生孔104の断面積は、吸着対象である電子部品(溶接リング30やリッド10)の吸着面積以下であるので、負圧発生孔104の全体で密着した状態で、効率よく電子部品を吸着することができる。
また、溶接ローラユニット120は、溶接ローラ122を備えており、この溶接ローラ122には、パルス状の電圧を発生する電圧発生装置(図示省略)が接続されている。したがって、溶接ローラユニット120は、一対の溶接ローラ122間に電流を流すことにより、溶接リング30とセラミック容器20をシーム溶接することができる。なお、本発明は、シーム溶接に限定されず、レーザー溶接装置や、接着剤を塗布する塗布装置、熱によって両者を固定するヒータ装置等、被吸着部材と相手側部材の固着目的に応じた各種固定機構を採用すればよい。
また、溶接リングの仮付け装置1は、吸着ノズル100を吸着方向に移動可能なノズル側移動機構160を備えている。したがって、溶接リングの仮付け装置1は、溶接リング30を吸着する場合は、吸着ノズル100を溶接ローラ122よりも溶接リング30に近接するように移動し、溶接リング30を溶接する場合は、吸着ノズル100を溶接電極120と略同一面に位置するように移動し、溶接リング30の吸着及び溶接をし易くすることができる。
また、溶接ローラ122は、吸着ノズル100の周囲で回転自在な一対の環状の電極板としている。したがって、溶接ローラ122は、電極面が古くなった場合は、回転することで新しい電極面を形成することができ、メンテナンス性を向上することができる。
また、着脱切替部材148は、固定部材146Bと開閉部材146Cで挟持される溶接ローラユニット120を着脱することができる。したがって、溶接リングの仮付け装置1は、着脱切替部材148の操作により溶接ローラユニット120を容易に交換することができる。
また、溶接リングの仮付け装置1は、負圧を発生する負圧発生装置(図示省略)と、負圧発生装置と吸着ノズル100の間に配管されている大気開放ポート(図示省略)を備えている。したがって、溶接リングの仮付け装置1は、吸着ノズル100が溶接リング30を吸着する場合は、負圧を一定にするように大気開放ポートを閉じて負圧発生装置を駆動し、溶接リング30を離反する場合は、負圧発生装置を停止して大気開放ポートを開放することで溶接リング30の吸着と、離反作業を効率的に行うとこができる。
また、溶接リングの仮付け装置1は、窒素雰囲気中で溶接リング30とセラミック容器20の溶接を行うので、安定した状態で溶接を行うことができる。
また、本発明に係る溶接リングの仮付け方法は、吸着ノズル100を吸着方向に移動させて、溶接ローラ122よりも溶接リング100に近傍に近づけるノズル前出工程と、吸着ノズル100により溶接リング30を吸着保持する吸着保持工程と、溶接リング30を吸着保持したまま搬送し、溶接リング30をセラミック容器の開口部に載置する溶接リング載置工程と、吸着ノズル100により溶接リング30がセラミック容器20の開口部に押しつけられた状態のまま、溶接ローラ122が溶接リング30と当接するように、溶接ローラ122を吸着方向に移動させる電極移動工程と、溶接ローラにより、溶接リング30とセラミック容器20とを仮付けする仮付け工程を備えている。したがって、溶接リング30の一対の対辺を吸着ノズル100で吸着した状態で、そのまま吸着ノズル100の両脇に設けられた溶接ローラ122で溶接リング30を仮付け溶接することができる。
次に図12及び13を用いて、第2実施形態に係る溶接リングの仮付け装置2について説明する。図12(a)は、溶接リングの仮付け装置2の平面図であり、図12(b)は、同溶接リングの仮付け装置2の正面図であり、図13は、図12(a)の矢視VI−VI方向から見た同溶接リングの仮付け装置2で用いられる溶接ヘッド700の正面図である。
この溶接リングの仮付け装置2は、吸着ノズルでXYテーブル上に載置されている溶接リングを吸着した後、回転テーブルに設けられた吸着ノズルを水平方向に回転させることにより、迅速に溶接リングをセラミック容器の真上まで搬送でき、仮付け位置に配設されている溶接ローラで仮付け溶接できるところに特徴がある。
溶接リングの仮付け装置2は、図12(a)及び(b)に示されるように、回転テーブル800の外周近傍に吸着ノズル100が設けられている。モータ810を有する回転テーブル800は、水平方向で反時計回り(同図のG→H→J方向)に回転可能になっており、また内設されているモータ(図示省略)により、吸着方向及び反吸着方向(同図(b)に示すZ軸方向)に移動できるようになっている。
本実施形態では、吸着ノズル100は、回転テーブル800の外周方向に約90度間隔で4個設けられているが、吸着ノズル100の配設数や位置はこれに限定されるものではなく、例えば、約45度間隔で8個、又は30度間隔で12個設けても好ましい。
XYテーブル900及びXYテーブル920は、回転テーブル800に隣接する位置で、回転テーブル800の両脇に設けられている。XYテーブル900の上面には溶接リング30が整列配置されており、XYテーブル920の上面にはシート構造のセラミック容器20が整列配置されている。
XYテーブル900は、Y軸方向に平行に設けられた2つのX軸ガイド902によりX軸方向へ移動可能になっており、また、X軸方向に平行に設けられた2つのY軸ガイド904によりY軸方向へ移動可能に構成されている。このXYテーブル900は、X軸及びY軸方向に移動することにより、XYテーブル900上の任意の位置にある溶接リング30を、回転軌道上の吸着位置(本実施形態ではG位置)にある吸着ノズル100の真下に移動することができる。
XYテーブル920は、XYテーブル900と同様に、Y軸方向に平行に設けられた2つのX軸ガイド922によりX軸方向へ移動可能になっており、X軸方向に平行に設けられた2つのY軸ガイド924によりY軸方向へ移動可能に構成されている。したがって、XYテーブル920は、X軸及びY軸方向に移動することが可能で、XYテーブル920上の任意の位置にあるセラミック容器20を、回転軌道上の仮付け位置(本実施形態ではJ位置)にある吸着ノズル100の真下まで移動することができる。
なお、吸着ノズル100は、第1実施形態で説明した吸着ノズルと同じ構成、機能であるので、同じ番号を付し、詳細な説明は省略する。
吸着ノズル100は、図12(b)に示されるように、ノズル側移動機構750に接続され、溶接リング30又はセラミック容器20に近接又は離反する方向に移動可能になっている。なお、吸着ノズル100は、圧縮ばね等のノズル付勢部材752に接続され、吸着方向(溶接リング30又はセラミック容器20方向)に付勢されている。したがって、吸着ノズル100は、溶接リング30をセラミック容器20に載置される場合、ノズル付勢部材752により、当接する際の吸着方向と反対方向に受ける衝撃力を緩和することができる。
溶接ヘッド700は、吸着ノズル100の回転軌道上で、仮付け位置(J位置)近傍に配設されている。溶接ヘッド700は、吸着ノズル100が仮付け位置(J位置)にある場合に、吸着ノズル100に吸着されている溶接リング30と、その真下にあるセラミック容器20を仮付け溶接できるようになっている。
溶接ヘッド700は、溶接ローラ122と、電極側移動機構710を備えて構成され、天井等の取付面5から鉛直方向に立設されており、吸着ノズル100が仮付け位置(J位置)に侵入する際に、溶接ローラ122を吸着ノズル100の両脇から吸着方向と反対側に退避させる。これにより、吸着ノズル100の侵入の邪魔にならないようになっている。
図13に示されるように、電極側移動機構710は、壁部711上を移動可能に構成された弾性アーム部材712を有している。
弾性アーム712は、概略くの字状の弾性部材であり、壁部711と反対側の端部で溶接ローラ122を保持し、壁部711に形成されたガイド溝714(詳細は後述)に沿って移動可能に構成されている。なお、弾性アーム712は、ある程度の弾性を有する部材であることが好ましい。つまり、この弾性アーム712は、自身で弾性を有するので、溶接ローラ122が溶接リング30に当接した場合の衝撃力を緩和し、衝撃による溶接リング30の変形を最小限に抑えることができる。なお、溶接ローラ122は、全体として弾性を有する機構で保持されていれば良く、例えば、弾性アーム712は、金属製のくの字部材で形成し、その金属製のアーム部材を圧縮ばね等の弾性体で支持するようにしても好ましい。
壁部711には、図13に示すように、第1ガイド溝714Aと第2ガイド溝714Bからなるガイド溝714が形成されている。第1ガイド溝714Aは、吸着ノズル100方向に向かって吸着方向に傾斜して設けられたガイド溝であり、第2ガイド溝714Bは、第1ガイド溝714Aに連通して設けられ、第1ガイド溝714Aの端部から、さらに吸着方向に形成されたガイド溝である。弾性アーム712が第1ガイド溝714Aの上端側にある場合、弾性アーム712に保持された一対の溶接ローラ122は、水片方向に回転移動する吸着ノズル100と接触しない位置に退避される状態となる。また、弾性アーム712が第2ガイド溝714Bにある場合、弾性アーム712に保持された一対の溶接ローラ122の隙間は、吸着ノズル100の両脇に位置し、溶接リング30をセラミック容器20に仮付けできる間隔になるように構成されている。
次に、吸着ノズル100及び溶接ヘッド700による溶接リング30の仮付け動作について説明する。
初めに、図13(a)に示されるように、溶接ローラ122は、水平方向に回転移動する吸着ノズル100と衝突しないように、第1ガイド溝714Aの上端近傍に退避された状態となっている。
次に、回転テーブル800を水平方向に回転し、溶接リング30を吸着した吸着ノズル100をH位置から仮付け位置(J位置)に移動する。移動完了後、ノズル側移動機構750により、吸着ノズル100を吸着方向に下降させる。したがって、吸着ノズル100は、溶接リング30をセラミック容器20に載置することになる。
吸着ノズル100による溶接リング30のセラミック容器20への載置が完了した後、電極側移動機構710により、溶接ローラ122は、第1ガイド溝714Aに沿って吸着ノズル100方向で、且つ吸着方向に移動する。
溶接ローラ122は、吸着ノズル100の両脇に近接し、さらに第2ガイド溝714Bに沿って吸着方向にさらに移動する。
溶接ローラ122の溶接面が吸着ノズル100の吸着面と同程度の位置まで移動すると、溶接ローラ122の電極面は溶接リング30と当接する。つまり、吸着ノズル100が溶接リング30をセラミック容器20に載置し、且つ吸着ノズル100が溶接リング30を押さえつけた状態のまま、溶接ローラ122は、吸着ノズル100が溶接リング30を吸着している吸着部(図11のE、F部参考)と異なる対辺の溶接部32(図11参考)を安定した状態で仮付けすることができる。したがって、溶接リング30は、吸着ノズル100により一対の対辺の略真ん中(図11のE、F部参照)を押圧されるとともに、溶接ローラ122により他の対辺の真ん中(図11の溶接部32参照)を押圧されるので、変形が最小限に抑えられた状態で仮付けされる。
仮付け終了後、溶接ローラ122は、電極側移動機構710により、吸着ノズル100の両脇から第1ガイド溝714Aの上端側まで退避され、その間に、溶接が終了した吸着ノズル100は水平方向に回転して仮付け位置(J位置)から移動するとともに、次のH位置にある吸着ノズル100が仮付け位置(J位置)に侵入し、上記の仮付け溶接を繰り返す。
したがって、電極側移動機構710は、溶接ローラ122を吸着方向と反対方向(第2ガイド溝714Aの上端近傍)へ移動させて、吸着ノズル100の両脇から退避させるとともに、ノズル側移動機構750は、溶接ローラ122が吸着ノズル100の両脇から退避している間に、回転テーブル800に設けられた吸着ノズル100を回転させて水平方向に移動させる構造にしている。したがって、溶接リングの仮付け装置2は、吸着ノズル100を各軸方向に移動させて溶接リング30を吸着しに行かなくても、回転テーブル800を回転するだけで、迅速に吸着ノズル100を次に吸着する溶接リング30の真上まで持っていくことができ、搬送行程を大幅に短縮することができる。
なお、説明及び図示は省略したが、吸着ノズル100の回転軌道上の吸着位置(G位置)と仮付け位置(J位置)の間(例えば、H位置)にカメラ40(図1参照)を配置することが好ましく、このカメラ40で取得した溶接リング30の位置情報に基づいて、溶接リング30を任意のセラミック容器20の真上まで移動させるようにすることが好ましい。
また、本第2実施形態においても、第1実施形態で示した溶接ローラユニット120、電極側移動機構140、溶接電極付勢装置170を備えるようにすることも勿論可能である。
また、この溶接リングの仮付け装置2は、リッド10をセラミック容器20に仮付けする場合、又はリッド10をセラミック容器20にシーム溶接する場合に用いることが好ましい。具体的に、リッド10をセラミック容器10に仮付けする場合は、本実施形態の吸着ノズル100を用いて、リッド10をセラミック容器10に載置しながら、溶接ローラ122をリッド10の縁に押しつけて仮付けする。更に、リッド10をシーム溶接する場合は、溶接ローラ122をリッド10の縁に押しつけながら、溶接ローラ122又はセラミック容器20を、リッド10の縁の延在方向に相対移動させることで、リッド10の4辺をセラミック容器20に確実に溶接することが出来る。この吸着ノズル100を用いることで、リッド10が極めて小さくなった場合でも、一対の溶接ローラ電極122間の距離を狭めることが可能となり、リッドの供給と溶接を同時に仮付け又はシーム溶接を行うことが可能となる。つまり、本明細書又は特許請求の範囲において、溶接リングという文言は、リッドに置き換えることができる。
尚、本発明の溶接リングの仮付け装置及び溶接リングの仮付け方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。