以下、本発明に係る根巻きボタン付けミシンの一実施形態を図1から図11を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る根巻きボタン付けミシンを示す概略構成図、図2は、図1の根巻きボタン付けミシンを示す斜視図である。
図1に示すように、根巻きボタン付けミシン1は、縫い針2を保持する針棒3を有する針棒機構5を備えている。
針棒機構5は、針棒上下動モータ6によって針棒3を上下動させることにより縫い針2を上下動させる針棒上下動機構と、針棒揺動モータ8によって針棒3を左右方向に揺動させることにより縫い針2を針振りさせる針棒揺動機構とを備えている。そして、この針棒機構5は、針棒3を左右方向に揺動させるとともに上下動させることにより縫い針2を針振りおよび上下動させながら、ベッド部10の内部に配設された図示しないルーパーとの協働により、縫い糸11によって布地12とボタン13の穴との間に根糸を施すボタン付け縫い、および前記根糸の周りに縫い糸11を巻き付ける根巻き縫いを行うようになっている。
また、根巻きボタン付けミシン1は、縫い針2の移動経路上においてボタン13が所定の状態となるように保持するボタン挟持機構16を備えている。
図2から図4に示すように、このボタン挟持機構16は、フレーム9の内部に配設されたベース体17を備えており、ベース体17は、前端部でボタン13を保持する第1リンク体18の後端部分を、左右方向に沿って配設された第1回動軸19を中心に回動自在に支持するようになっている。そして、この第1リンク体18は、ベース体17に支持されている部分が、針棒3の針振り方向に直交する前後方向に沿って往復移動自在とされている。また、ベース体17は、第2リンク体20の一端部を、左右方向に沿って配設された第2回動軸21を中心に回動自在に支持するようになっており、第2リンク体20の他端部は、第1リンク体18の中間部において、左右方向に沿って配設された第3回動軸22を中心に回動自在に支持されている。
また、このボタン挟持機構16は、対向配置されボタン13を挟持する一対のボタン挟持部25を、ボタン13を挟持する挟持位置および解放する解放位置に移動させるボタン挟持部開閉機構を備えており、ボタン挟持部開閉機構は、第1リンク体18に装備されている。
第1リンク体18は、先端部に両ボタン挟持部25がそれぞれ取り付けられた一対のボタン挟持アーム26を有し、両ボタン挟持アーム26は、第1リンク体18の平板状の本体プレート27における下側に、左右方向に並列して配置されている。両ボタン挟持アーム26は、それぞれ前後方向に並列配置された一対のコイルばね28により互いに常時近接する方向に付勢されており、両ボタン挟持アーム26の先端部には、それぞれ前記ボタン挟持部25が取り付けられている。これにより、両ボタン挟持部25には、常時ボタン13を挟持する方向に力が付与されている。そして、この一対のコイルばね28によるボタン13に対する挟持力は、両ボタン挟持部25が布地12との間に根糸15が施されたボタン13を挟持している際に、根糸15を介してボタン13が下方に引かれることにより、ボタン13が両ボタン挟持部25から離脱可能な程度に設定されている。
図5(a)(b)に示すように、本体プレート27における前端部分の両側縁部分には、左右方向に横長状の一対の前側長穴部29aが形成されており、本体プレート27における後端部の両側縁部分には、左右方向に横長状の一対の後側長穴部29bが両前側長穴部29aと並列配置して形成されている。そして、両ボタン挟持アーム26は、それぞれ各長穴部29a、29bに沿って移動自在に挿通されたピン31を用いて本体プレート27に装着されている。
第1リンク体18は、両ボタン挟持アーム26の間において本体プレート27の下側に前後方向に沿って往復自在に支持された移動体32を有している。移動体32の両側における前端部分は、隣位するボタン挟持アーム26にそれぞれ前側リンク体33aを介して連結され、移動体32の両側における後端部分は隣位するボタン挟持アーム26にそれぞれ後側リンク体33bを介して連結されている。両前側リンク体33aおよび両後側リンク体33bは、それぞれ平行に配置されており、それぞれ同一の長さに形成され、それらの各両端部が移動体32の両側縁部分および両ボタン挟持アーム26に回動自在に連結されている。そして、移動体32は、複動式であって出力軸36aの伸張および収縮の双方を積極的に切り替えることが可能であるアーム開閉エアシリンダ36に連結されて、前後方向への移動力を入力されるようになっている。
より具体的には、図5(a)に示すように、このアーム開閉エアシリンダ36のシリンダ内は、シリンダ内を摺動可能なピストン36pにより第1領域36fと第2領域36rとに2分されており、ピストン36pには出力軸36aが連結されている。したがって、第2領域36rの空気が排出され第1領域36fに空気が流入されると、ピストン36pが矢印R方向に移動して出力軸36aが収縮し、第1領域fの空気が排出され第2領域36rに空気が充満されるとともに、矢印R方向と反対方向にピストン36pが移動して出力軸36aが伸張する。これら各領域36f、36rに対する空気の流入および排出は、それぞれ後述する駆動制御手段91によって制御されるアーム開閉エアシリンダ用電磁弁36fe、36re(図1参照)を介して行われるようになっている。
前述の構成により、このボタン挟持部開閉機構においては、図5(a)(b)のような状態からアーム開閉エアシリンダ36によって出力軸36aが収縮して移動体32が後方(矢印R方向)に移動すると、両ボタン挟持アーム26の前後方向への移動は各長穴部29a、29bによって規制されているので、両ボタン挟持アーム26は、両前側リンク体33aおよび両後側リンク体33bを介して各長穴部29a、29bに沿って左右方向のそれぞれ離間する方向に移動するようになっている。また、アーム開閉エアシリンダ36によって出力軸36aが伸張して移動体32が前方に移動すると、両ボタン挟持アーム26が、両前側リンク体33aおよび両後側リンク体33bを介して各長穴部29a、29bに沿ってそれぞれ近接する方向に移動するようになっている。このように、ボタン挟持部開閉機構は、アーム開閉エアシリンダ36の出力軸36aを直線的に伸縮させることにより移動体32を前後方向に移動させることによって、両ボタン挟持アーム26を接離自在に移動させることができるので、これにより、両ボタン挟持アーム26を介して両ボタン挟持部25を挟持位置と解放位置とに移動させて、両ボタン挟持部25によってボタン13を挟持および解放することができるようになっている。
さらに、このボタン挟持機構16は、挟持されたボタン13を、ボタン挟持部25によりベッド部10の上面に配設された針板51に対して水平状態および垂直状態に回動させるボタン回動機構を備えている。
このボタン回動機構は、両ボタン挟持アーム26に装備されており、両ボタン挟持アーム26の中間部には、それぞれ入力リンク37の一端部が回動自在に連結され、また、両ボタン挟持部25の回動軸38には、出力リンク39の一端部が連結されている。両入力リンク37の中間部には、それぞれ入力リンク37の長手方向に沿って横長状の長穴40が形成されており、両長穴40には、それぞれ回動軸41が挿通されている。両入力リンク37の他端部には、それぞれ伝達リンク35の一端部が回動自在に連結されており、伝達リンク35の他端部は、それぞれ両出力リンク39の他端部に回動自在に連結されている。これらの両入力リンク37、両出力リンク39および両伝達リンク35は、何れもその両端部の回動軸35a、35bが左右方向に沿って配設されており、これにより、リンク機構を構成するようになっている。
また、ボタン回動機構は、両入力リンク37に回動力を付与するボタン回動シリンダ42と、ボタン13が水平状態から垂直状態に向けて回動するときにそれ以上の両出力リンク39の回動を規制する回動用ストッパ43とを備えている。
ボタン回動シリンダ42は、その出力軸42aの前端部が、それぞれ入力リンク37の長穴40に挿通された回動軸41を介して入力リンク37に連結されており、ボタン回動シリンダ42の出力軸42aを直線的に伸縮させることにより、両入力リンク37を両ボタン挟持アーム26との連結部分を中心として回動させるようになっている。そして、両入力リンク37が回動すると、両伝達リンク35を介して両出力リンク39が回動軸38との連結部分を中心として回動するようになっており、両出力リンク39の回動により、両ボタン挟持部25により挟持されたボタン13が水平状態および垂直状態となるように両ボタン挟持部25が回動するようになっている。ここで、ボタン回動シリンダ42は復動式であり、出力軸42aの突出および伸縮の双方を積極的に切り替えることが可能である。このため、ボタン回動シリンダ42の出力軸42aを収縮させると、両出力リンク39は、一方向に回動して両回動用ストッパ43に当接して止まり、この状態から両ボタン回動シリンダ42の出力軸42aを伸張させると、両出力リンク39は、逆方向に回動して両ボタン回動シリンダ42のストロークエンドにおいて停止するようになっている。
また、このボタン挟持機構16は、ボタン前後動モータ45によりベース体17を前後方向に移動させる前後動機構と、ボタン左右動モータ47により第1リンク体18を左右方向に移動させる左右動機構と、ボタン上下動モータ49により第1リンク体18の前端部を上下方向に移動させる上下動機構とを備えている。これにより、ボタン挟持機構16は、縫い針2の移動経路上において、ボタン13を所定の状態に保持するようになっている。
ベッド部10の上面に配設された針板51には、針棒3の針振り方向に沿って横長状の針孔52が形成されており、さらに、ベッド部10の内部には、図6および図7に示すような縫い糸11を切断するための糸切り機構53が備えられている。
この糸切り機構53は、連動して回動可能な一対のメス56、57を備えており、両メス56、57の切断刃56a、57aによって針板51の針孔52を介して針板51の下方に延出される縫い糸11を挟むことにより、縫い糸11を切断するようになっている。
両メス56、57のうち第1メス56は、略T字状に形成され、第1メス56における第1端部には、直線状の切断刃56aが形成されている。第1メス56における第2端部は、針板51に回動自在に連結されており、第1メス56と針板51との回動軸59は固定支点とされている。また、第1メス56の第3端部は、第1リンク体60の一端部に回動自在に連結されており、第1リンク体60の他端部は第2リンク体61のほぼ中間部分に回動自在に連結されている。第2リンク体61の一端部分は、長穴61aを介して切断エアシリンダ62に連結されており、第2リンク体61は、切断エアシリンダ62の駆動により、他端部61bを中心として回動自在とされている。また、第2リンク体61の一端部61cは、第3リンク体63の一端部に回動自在に連結され、第3リンク体63の他端部は、略三角形状の第2メス57における第1角部に回動自在に連結されている。第2メス57の第2角部57cは、針板51に回動自在に連結され、第2メス57と針板51との回動軸65は固定支点とされており、第2メス57の第3角部には、湾曲状の切断刃57aが切り欠き形成されている。これにより、この糸切り機構53においては、図7に示すように、切断エアシリンダ62の駆動によって、各リンク体60、61、63および針板51を介して第1メス56が一方向に、第2メス57が他方向にそれぞれ連動して回動し、これにより、針孔52の下方または近傍において両メス56、57の両切断刃56a、57aが縫い糸11を挟んで噛み合うようになっている。なお、固定板58は、針板51との間に、両メス56、57を挟んで両メス56、57の上下方向のずれを防止している。
また、図8および図9(a)(b)に示すように、この根巻きボタン付けミシン1は、布地12を縫い針2の近傍で折り返して保持する布保持部材としてのタング66を有する布保持機構67を備えており、この布保持機構67は、布地前後送りモータ97(図1参照)によって前後方向に移動可能とされた前後送り台98に支持されて、ベッド部10に装備されている。
ベッド部10の両側に配設された一対のタング基台68は、前後送り台98の基端部に左右方向に沿って配設された支持軸99に回動可能に軸支されるとともに、水平部68aと水平部68aの前端から下方に延出された前端部68bとを備えている。両タング基台68の前端部68bにおける下端部分の間隙には、タング支持軸69が配置されており、タング支持軸69は、前端部68bに回動可能に挿通して取り付けられている。タング支持軸69には、円弧状のタング支持アーム70が固着されており、タング支持アーム70の先端部には、タング66が固着されている。タング66は、その先端部が縫い針2の近傍に位置するように配置されており、タング支持アーム70とタング支持軸69との固着部分を中心としてタング支持軸69の軸回りに回動するようになっている。
針板51の近傍上方には、タングストッパ71が配設されており、タングストッパ71には、タング66の先端部が当接してタングストッパ71における前後方向への回動位置を規制する突出部71aが上方に突出して形成されている。タングストッパ71の下面における両端部分は、それぞれ固定台72に固着されており、両固定台72は、両タング基台68の前端部68bにおける内面に固着されている。
また、布保持機構67は、タング66を縫い針2に接離する前後方向に回動させるためのタング回動機構73を備えており、タング回動機構73におけるタング回動シリンダ75の出力軸75aは、第1リンク体77の一端部に連結されている。第1リンク体77の他端部は、第2リンク体78の一端部との連結軸76に回動自在に連結されており、第2リンク体の一端部は、連結軸76に固定され、第2リンク体78の他端部は、タング支持軸69に固定して連結されている。そして、タング回動機構73は、タング回動シリンダ75の出力軸75aを直線的に伸縮させて、両リンク体77、78を介してタング支持軸69を中心としてタング支持アーム70をタング支持軸69の軸回りに回動させることにより、タング66を前後方向に回動させるようになっている。
また、根巻きボタン付けミシン1は、タング66の先端部に保持された布地12をボタン付け縫いおよび縫い糸11の切断の際には針板51の上方近傍の下降位置に位置させ、根巻き縫いの際には下降位置より上方の上昇位置に位置させるようにタング66を上下動させるタング上下動機構(布保持上下動機構)83を備えている。
このタング上下動機構83は、図9(a)および(b)に示すように、支持軸99の近傍で前後送り台98の両側面部に固着された支持部81a、および支持部81aから下方かつタング基台68の前端部68bに向けて延出されたアーム部81bをそれぞれ有する一対の基台支持アーム81と、両基台支持アーム81の各アーム部81bの間隙に配置されるタング上下動シリンダ79とを備えている。そして、タング基台68の回動中心となる支持軸99の下方には、両端が各タング基台68に支持されたシリンダ支持軸100が左右方向に沿って配設されており、このシリンダ支持軸100には、タング上下動シリンダ79の基端部が回動自在に軸支されている。また、タング上下動シリンダ79の出力軸79aは、各基台支持アーム81のアーム部81b間に左右方向に沿って配設された連結軸80に回動可能に連結されている。要するに、タング上下動シリンダ79は、各タング基台68間および各基台支持アーム81間にそれぞれ配置されたシリンダ支持軸100および連結軸80の間に掛け渡された状態で両軸100、80によって支持されている。
したがって、このタング上下動機構83は、図9(a)に示すように、タング上下動シリンダ79の出力軸79aを伸張させることにより、支持軸99を中心としてタング基台68を矢印T1方向に回動させる。このタング基台68の回動により、タング支持アーム70およびタング支持軸69を介してタング基台68に固定されているタング66、および固定台72を介してタング基台68に固定されているタングストッパ71を一体に下降させるようになっている。また、タング上下動機構83は、図9(b)に示すように、タング上下動シリンダ79の出力軸79aを収縮させることにより、支持軸99を中心としてタング基台68を矢印T2方向に回動させ、これにともない、タング66およびタングストッパ71を一体に上昇させるようになっている。
また、根巻きボタン付けミシン1は、布地前後送りモータ97により前後送り台98を前後方向に移動させる布地前後動機構を備えている。この布地前後動機構は、上述したタング66により保持された布地12を、ボタン前後動機構により前後動されるボタン13とは独立して前後動させることができる。なお、上述した針棒機構5により布地12に対する左右の針落ちが行われるので、結果的に布地12は、針棒機構5と布地前後動機構とによって相対的に縫い針2の上下動位置に対する前後および左右方向に送られることになる。
さらに、図1に示すように、根巻きボタン付けミシン1は、この根巻きボタン付けミシン1の各機構の動作を制御する駆動制御手段91を備えており、この駆動制御手段91は、CPU92と、メモリ93とを有する演算処理装置を基本構成としている。
この駆動制御手段91は、針棒上下動モータ6および針棒揺動モータ8に接続されており、針棒上下動モータ6および針棒揺動モータ8を駆動させることにより、ボタン付け縫いの際に水平状態に保持されたボタン13に対して針棒3が上下動し、根巻き縫いの際にボタン13と布地12との間に施された根糸に対して針棒3が上下動および針振りするように針棒機構5を制御するようになっている。
また、駆動制御手段91は、ボタン回動シリンダ用電磁弁42eに接続されており、このボタン回動シリンダ用電磁弁42eを介してボタン回動シリンダ42を駆動させることにより、ボタン付け縫いの際にボタン13が水平状態となり、根巻き縫いの際にボタン13が垂直状態となるようにボタン13を回動させるようにボタン挟持機構16のボタン回動機構を制御するようになっている。さらに、駆動制御手段91は、アーム開閉エアシリンダ用電磁弁36fe、36reに接続されており、このアーム開閉エアシリンダ用電磁弁36fe、36reを介してアーム開閉エアシリンダ36を駆動させることにより、ボタン付け縫いの開始時に両ボタン挟持部25がボタン13を保持し、根巻き縫いの終了時に両ボタン挟持部25がボタン13を解放するようにボタン挟持機構16のボタン挟持部開閉機構を制御するようになっている。
さらにまた、駆動制御手段91は、切断エアシリンダ用電磁弁62eに接続されており、この切断エアシリンダ用電磁弁62eを介して切断エアシリンダ62を駆動させることにより、根巻き縫いの終了時に、両メス56、57によって根巻き縫いを行った縫い糸11を挟んで切断するように糸切り機構53を制御するようになっている。
また、駆動制御手段91は、タング上下動シリンダ用電磁弁79eに接続されており、このタング上下動シリンダ用電磁弁79eを介してタング上下動シリンダ79を駆動させることにより、ボタン付け縫いおよび糸切りの際に布保持機構67のタング66を下降位置に位置させ、根巻き縫いの際にタング66を上昇位置に位置させるようにタング上下動機構83を制御するようになっている。
また、駆動制御手段91は、根巻き縫い終了後であって、縫い糸11を切断するためにタング66によって布地12を下降位置へ移動させる際、アーム開閉エアシリンダ用電磁弁36fe、36reの双方の空気を排出させる制御を行うことにより、ボタン挟持機構16のコイルばね58とともにボタン挟持部25を挟持位置に位置させたまま、ボタン挟持部25によるボタン13の挟持力を、根糸を介してボタン13が下方に引かれることによりボタン13がボタン挟持部25から離脱可能な程度に低減させるボタン挟持力低減手段として作用するようになっている。これにより、ボタン13は、両ボタン挟持部25に弱い力を持って保持されつつ、図10に示すように、根糸に引っ張られて両ボタン挟持部25から離脱し、垂直状態から水平状態の方向に回動しながら針板51上に落下することとなる。
さらに、駆動制御手段91は、例えば、ボタン前後動モータ45、ボタン上下動モータ47、ボタン左右動モータ49、布地前後送りモータ97に接続され、ボタン挟持機構16の前後動機構、左右動機構、上下動機構および布地前後動機構を制御するとともに、タング回動シリンダ用電磁弁75eに接続されてタング回動機構73を制御するようになっている。その他、駆動制御手段91は、縫製における各種指示が入力される入力装置95や、縫製開始を指示するために用いられる操作ペダル96、その他根巻きボタン付けミシン1の各駆動部等に接続されている。
続いて、本実施形態の作用について説明する。
図11に示すように、まず、ボタン13が水平状態となるように両ボタン挟持部25の間にボタン13をセットした後(ST1)、タング66の先端部において布地12を折るようにしてセットし、タング66の先端部がボタン付け縫いを行う縫い位置に位置するとともに下降位置に位置するように、タング66を移動させる(ST2)。
続いて、駆動制御手段91は、ボタン13がセットされ、根巻きボタン付けミシン1の各部を駆動するための操作ペダル96がオンになっていると判断されると(ST3においてYes)、タング回動機構73を駆動してタング66の先端をタングストッパ71に当接させた状態を保持させるとともに、針棒機構5を駆動して針棒3を介して縫い針2を上下動させながら、ルーパーとの協働により所定の針数だけ縫い糸11を布地12に貫通させずに布地12の内部を通過させるすくい縫いを行う。これにより、根巻きボタン付けミシン1は、ボタン13の穴と布地12との間に所定の長さの根糸を施して、ボタン13を布地12に縫いつけるボタン付け縫いを行う(ST4)。ここで、本実施形態に係る根巻きボタン付けミシン1は、駆動制御手段91によって所定の針数毎にボタン13が前後左右方向に移動するようにボタン挟持機構16を駆動することにより、布地12における縫い位置が同一となるボタン付け縫いを行うことができる。
次に、駆動制御手段91は、針棒3が所定の針数上下動したことを判断すると(ST5においてYes)、針棒機構5における針棒3の上下動の駆動を停止し(ST6)、ボタン回動機構を駆動して両ボタン挟持部25によってボタン13を90度回動させて垂直状態に保持するとともに(ST7)、タング上下動機構83を駆動してタング66を上昇させることにより布地12を上昇位置に移動させる(ST8)。
この状態で、駆動制御手段91は、針棒機構5を駆動して針棒3を介して縫い針2を上下動および針振りさせることにより、ルーパーとの協働により所定の針数だけ根糸の周りに縫い糸11を巻き付ける根巻き縫いを行う(ST9)。
さらに、駆動制御手段91は、針棒3が所定の針数上下動および針振りしたことを判断すると(ST10においてYes)、ボタン挟持機構16の一対のコイルばね58と協働して両ボタン挟持部25を挟持位置に位置させたまま、両ボタン挟持部25によるボタン13の挟持力を根糸を介してボタン13が下方に引かれることによりボタン13が両ボタン挟持部25から離脱可能な程度に低減させるボタン挟持力低減手段としての動作を行う(ST11)。
ここで、ボタン挟持力低減手段の動作について説明する。上述のように復動式であるアーム開閉エアシリンダ36は、シリンダ内の第1領域36fと第2領域36rとに空気を流入および排出して出力軸36aの伸張と収縮とを制御しているので、ボタン挟持部25を挟持位置に位置させ、ボタン13が保持されたステップ10以前の状態では、第1領域36fの空気が排出され第2領域36rに空気が充満されて出力軸36aが伸張状態にある。そして、駆動制御手段91は、ST10においてYesであると判断し、アーム開閉エアシリンダ用電磁弁36reを制御して第2領域36rの空気を排出させる。その結果、アーム開閉エアシリンダ36の両領域36f、36rの空気が排出された状態となる。すると、両ボタン保持アーム26は、一対のコイルばね28によって互いに常時近接する方向に付勢されているので、ボタン挟持部25を挟持位置に位置させたままにすることができる。そして、このコイルばね28の付勢によりボタン13に加えられる挟持力が、根糸15を介してボタン13が下方に引かれることにより、ボタン13が両ボタン挟持部25から離脱可能な程度に予め設定されているので、ボタン挟持部25を挟持位置に位置させたまま、両ボタン挟持部25によるボタン13の挟持力を根糸15を介してボタン13が下方に引かれることにより、ボタン13が両ボタン挟持部25から離脱可能な程度に低減させることが可能となる。
この状態で、駆動制御手段91は、タング上下動機構83を駆動させて、タング66を下降させることにより布地12を下降位置に移動させる(ST12)。図10に示すように、この布地12の下降位置への移動により、根糸を介してボタン13が下方に引かれ、ボタン13が両ボタン挟持部25から離脱し、垂直状態から水平状態の方向に回動しながら針板51上に落下する。
そして、駆動制御手段91は、布地12が下降位置に移動したことを判断した後、糸切り機構53を駆動して両メス56、57により、針孔52を介して針板51の下方に延在する縫い糸11を挟んで両メス56、57の切断刃56a、57aにより切断する(ST13)。
このように、本実施形態によれば、根巻き縫い終了後であって、布地12が下降位置に移動する際に、両ボタン挟持部25を挟持位置に位置させたまま、両ボタン挟持部25によるボタン13の挟持力を、根糸を介してボタン13が下方に引かれることによりボタン13が両ボタン挟持部25から離脱な可能な程度に低減させる。この状態で、布地12を下降位置に移動させると、根糸を介してボタン13が下方に引かれるので、ボタン13は両ボタン挟持部25から離脱するとともに、垂直状態から水平状態の方向に回動しながら針板51上に落下することとなる。このため、ボタン13が針孔52に嵌ってしまうのを防止することができる。また、両ボタン挟持部25によりボタン13を解放する前にタング66およびタングストッパ71を下降させるので、ボタン13がタングストッパ71と針板51との間に挟まってしまうのを防止することができる。
したがって、根巻き縫い終了後であって糸切りを行う前に、ボタン13が針孔52に嵌ったりタングストッパ71と針板51との間に挟まってしまうのを確実に防止することができるので、ボタン13が損傷してしまうのを防止することができる。またこれにより、根巻き縫いに用いられた縫い糸11が糸切り機構53の切断位置からずれてしまうのを防止することができるので、両メス56、57の切断刃56a57aによって縫い糸11を挟んで確実に切断することができ、縫い糸11の切断不良の発生を防止することができる。さらに、根巻き縫い終了後であって糸切りを行う前に、ボタン13の挟持力を、根糸を介してボタン13が下方に引かれることによりボタン13が両ボタン挟持部25から離脱な可能な程度に低減させているので、ボタン13の穴と布地12との間に施された根糸が過度に突っ張ってしまうことを防止することができる。これにより、ボタン13が縫いつけられた布地12が損傷してしまうことを防止することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
例えば、上記実施の形態では、一対のコイルばね28と駆動制御手段91とにより、挟持力低減手段を構成しているが、アーム開閉エアシリンダ36に代えてソレノイドを使用するとともに、駆動制御手段91が布地12の下方位置への移動の際にこのソレノイドに流れる電流を、ボタン挟持部25を挟持位置に位置させたまま、両ボタン挟持部25によるボタン13の挟持力を根糸15を介してボタン13が下方に引かれることによりボタン13が両ボタン挟持部25から離脱可能な程度に低減させることにより、ボタン挟持部25による挟持力を低減させるようにして、挟持力低減手段を構成してもよい。