JP6884513B2 - ミシン - Google Patents
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Description
かかる工程からなる前立ての縫製は、シンプルな基本型の縫製であり、上記従来のミシンは、図23(D)に示す、二本の縫い目n1,n2の形成と切れ目cの形成までしか行うことができなかった。
そのため、トップステッチの形成は、別のミシン或いは手縫いを行わねばならず、前立ての縫製作業を効率的に行うことができなかった。
身頃生地及び前立て布を保持する布押さえと、
前記布押さえを前記身頃生地が置かれる平面に沿って任意に移動させる布移動機構と、
前記布押さえに保持された前記身頃生地及び前記前立て布に対して針落ちを行う針上下動機構と、
前記布押さえに保持された前記身頃生地と前記前立て布とに一定の方向に沿って切れ目を形成するメス機構と、
前記布押さえと前記布移動機構と前記針上下動機構と前記メス機構を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置が、
前記布移動機構及び前記針上下動機構を制御して、第一の縫い目と第二の縫い目とを形成し、
前記メス機構を制御して、前記第一の縫い目と第二の縫い目の間に切れ目を形成するミシンにおいて、
前記前立て布を前記第一の縫い目に沿って折り返す第一の折り返し機構と、
前記前立て布を前記第一の折り返し機構により折り返された前立て布の前記第一の縫い目と前記メス機構による切れ目の形成位置との間に形成された第一の折り返し縫い目に沿って折り返すと共に前記第二の縫い目に沿って折り返す第二の折り返し機構とを備え、
前記第二の折り返し機構は、前記前立て布に送風する送風機構を有する。
前記制御装置は、
前記布移動機構及び前記針上下動機構を制御して、前記第一の縫い目と前記第二の縫い目とを形成する第一の縫い制御と、
前記第一の折り返し機構を制御して、前記前立て布を前記第一の縫い目に沿って折り返す第一の折り返し制御と、
前記布移動機構と前記針上下動機構を制御して、前記第一の折り返し機構により折り返された前立て布の前記第一の縫い目と前記メス機構による切れ目の形成位置との間に第一の折り返し縫い目を形成する第二の縫い制御と、
前記第二の折り返し機構を制御して、前記前立て布を前記第一の折り返し縫い目に沿って折り返すと共に前記第二の縫い目に沿って折り返す第二の折り返し制御と、
前記布移動機構と前記針上下動機構を制御して、前記第二の折り返し機構により折り返された前立て布の前記第二の縫い目と前記メス機構による切れ目の形成位置との間に第二の折り返し縫い目を形成する第三の縫い制御とを順番に実行することを特徴とする。
前記前立て布を前記第二の折り返し縫い目に沿って折り返す第三の折り返し機構を備え、
前記制御装置は、
前記第三の折り返し機構を制御して、前記前立て布を前記第二の折り返し縫い目に沿って折り返す第三の折り返し制御と、
前記メス機構を制御して、前記身頃生地及び前記前立て布の前記切れ目の形成位置に切れ目を形成する切れ目形成制御とを順番に実行することを特徴とする。
前記第三の折り返し機構は、下降動作により前記前立て布を上から押さえる前立て布押さえと、当該前立て布押さえに搭載されて前記前立て布に送風する送風機構とを有することを特徴とする。
前記第一の折り返し機構は、前記メス機構による切れ目形成位置を横切って往復移動を行う前立て折り板と、当該前立て折り板の移動の駆動源となるアクチュエーターと、前記前立て折り板を前記往復移動可能に支持する支持機構とを備え、
前記前立て折り板は、往路の移動により前記前立て布を前記第一の縫い目に沿って折り返し、復路の移動により前記第二の縫い目に沿って折り返された前記前立て布を上から押さえ、
前記支持機構は、前記前立て折り板の前記往路の移動を前記復路の移動よりも低位置で移動させるカム機構を有することを特徴とする。
前記第一の折り返し機構は、前記往復移動の開始位置にある前記前立て折り板に対して、前記メス機構による切れ目形成位置を挟んで配置された補助押さえ板を備え、
前記支持機構は、
前記メス機構による切れ目形成位置を横切らない範囲で、前記補助押さえ板を前記前立て折り板に連動して往復移動させる連動機構を備えることを特徴とする。
また、本発明は、従来は別工程又は手作業で行われていたトップステッチの形成を行うことができるので、縫製作業を迅速且つ効率的に行うことが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明に係るミシンの第一の実施の形態について詳細に説明する。本実施形態では、前側の身頃生地Kに対する前立て布Nの縫着に適したミシンを説明する。
まず、身頃生地Kに前立て布Nを縫着する際の縫製工程について図1(A)〜図1(I)に基づいて説明する。
まず、前側の身頃生地Kを用意し(図1(A))、身頃生地Kの襟元に前立て布Nを重ねて配置する(図1(B))。
次に、前立て布Nの上端部から下端部近傍までの範囲に第一と第二の縫い目n1,n2を形成する(図1(C))。なお、図1(C)では第一と第二の縫い目n1,n2の下端部が近接しているように図示しているが、実際には第一縫い目n1と第二の縫い目n2とは、平行であって互いに幾分隙間をもって形成される。また、第一の縫い目n1を下側に向かって形成した後に上方に折り返して第二の縫い目n2を形成しても良い。
次に、前立て布Nの左端部を第一の縫い目n1に沿って折り返し(図1(D))、折り返された前立て布Nに対して第一の縫い目n1と第二の縫い目n2の間を通るように第一の折り返し縫い目n11を形成する(図1(E))。
さらに、前立て布Nの左端部を第一の折り返し縫い目n11に沿って折り返すと共に前立て布Nの右端部を第二の縫い目n2に沿って折り返す(図1(F))。そして、第二の縫い目n2と第一の折り返し縫い目n11との間を通るように第二の折り返し縫い目n12を形成する(図1(G))。
次に、前立て布Nの右端部を第二の折り返し縫い目n12に沿って折り返し(図1(H))、身頃生地K及び前立て布Nに対して、第一の折り返し縫い目n11と第二の折り返し縫い目n12との間となる位置に切れ目cを形成する。この切れ目cは、前立て布Nの上端部から下端部近傍までの範囲に形成される(図1(I))。
そして、前立て布Nにおける切れ目cの両側のそれぞれの部分を身頃生地Kの裏側に折り返し、前立て布Nにおける切れ目cの両側のそれぞれの部分を矩形に折り畳み、当該矩形に折り畳まれた前立て布Nのそれぞれの部分を切れ目cの両側に沿って身頃生地Kに縫い付けることにより、身頃生地Kに前立てが形成される。
なお、以下に説明するミシン10は、上述した図1(A)〜図1(I)までの各工程を実行する。
ミシン10は、図2に示すように、身頃生地K及び前立て布Nを保持する布押さえ20と、縫製時に身頃生地Kが置かれるテーブル11と、テーブル11の上面に沿って身頃生地Kを任意に移動させる布移動機構30と、布押さえ20に保持された身頃生地K及び前立て布Nに対して縫い針による針落ちを行う図示しない針上下動機構と、布押さえ20に保持された身頃生地Kと前立て布Nとに一定の方向に沿って切れ目を形成するメス機構40と、前立て布Nを折り返す第一〜第三の折り返し機構50,60,65と、布移動機構30側に支持され、縫製時及び切断時に前立て布Nを押さえる保持機構80と、上記各構成の動作制御を行う制御装置90と、上記各部を支持するミシンフレーム100とを備えている。
なお、上記ミシン10は、釜機構、糸調子装置、天秤等も備えているが、これらは周知のものと同一の構成なので説明は省略する。
図2に示すように、ミシンフレーム100は、下側に位置するベッド部101と、ベッド部101の一端部から鉛直上方に立ち上げられた立胴部102と、立胴部102から水平方向に延出されたアーム部103とを備えている。
以下の説明において、アーム部103の長手方向に沿った方向をY軸方向、縫い針が上下動を行う方向をZ軸方向とし、Y軸方向及びZ軸方向に直交する方向をX軸方向とする。また、Z軸方向は鉛直上下方向に平行であり、Y軸方向及びX軸方向はいずれも水平な方向である。
また、必要に応じて、アーム部103の先端の面部104側を前側、その反対側を後側、視線を後方に向けた状態で左手側を左側、右手側を右側として説明する。
テーブル11は、長方形の平板であって、その上面が水平となるようにベッド部101の上に取り付けられている。また、テーブル11は針上下動機構が支持する縫い針の下方に配置され、その上面に身頃生地K等の縫製対象物が置かれて縫製が行われる。従って、テーブル11の針落ち位置には、縫い針が進入する針落ち穴が形成されている。
また、テーブル11の一端部にはトグルクランプ14が設けられている。
針上下動機構は、ミシンフレーム100の内部に格納されたミシンモーター15(図10参照)と、当該ミシンモーター15を駆動源として回転する上軸と、当該上軸から得られるトルクを上下の往復運動に変換するクランク機構と、縫い針を下端部に保持してクランク機構により上下の往復運動を行う針棒とを備えている。
なお、これらの構成からなる針上下動機構は、従来から周知なのでその詳細な説明は省略する。
布押さえ20は、図3に示すように、ほぼ同じサイズの長方形状の下板21及び上板22を備えている。そして、上板22はその一端部が下板21の一端部に対してヒンジ222,222を介して回動可能に連結されており、上板22と下板21との間に身頃生地Kを挟んで保持することができる。また、上板22の他端部には下板21に対して起伏回動させるための取手223が装備されている。
また、下板21の一端部の上面には、後述するクランプ機構35が布押さえ20を着脱可能に保持するためのボス状の二つの突起212,212が固定装備されている。
そして、下板21及び上板22の短手方向の中央部には、長手方向に沿った長穴221(下板21の長穴は図示略)が板面を貫通した状態でそれぞれ形成されている。そして、下板21の長穴と上板22の長穴221は長さと幅が一致しており、上板22に下板21を重ねた状態において互いの位置が一致している。前立て布Nの縫着の際には、これらの長穴221の内側で縫い目及び切れ目の形成が行われる。
第一の折り返し機構50は、図3に示すように、前立て布Nの切れ目形成位置(長穴221)を横切るようにX軸方向に沿って往復移動を行う前立て折り板51と、前立て折り板51を往復移動可能に支持する支持機構52と、往復移動の開始位置にある前立て折り板51に対して、メス機構40による切れ目形成位置(長穴221)を挟んで配置された補助押さえ板53と、前立て折り板51を往復移動の開始位置に復帰させるコイルバネ54と、コイルバネ54に抗して前立て折り板51を移動させるアクチュエーターとしてのエアシリンダー55(図8参照)とを備えている。
なお、第一の折り返し機構50のエアシリンダー55以外の構成は全て布押さえ20の上板22に支持されており、エアシリンダー55のみが後述する布移動機構30の支持枠体32に支持されている。
前立て折り板51は、Y軸方向について長穴221と同程度の長さを有しており、前立て布Nをほぼ全長に渡って折り返すことができる。
補助押さえ板53は、Y軸方向について長穴221と同程度の長さを有しており、前立て布Nをほぼ全長に渡って押さえることができる。
この補助押さえ板53は、後述する支持機構52の第二の可動体523によりY軸回りに傾動可能に支持されており、第二の可動体523の傾動軸の中心よりも左側に偏心した位置に前立て布Nの押さえ面を有している。そして、この補助押さえ板53には、第二の可動体523の傾動軸の中心よりも左側に偏心した位置に二つのマグネット531が装備されている。
上板22は、磁性体、例えばスチールから形成されており、補助押さえ板53は、二つのマグネット531の吸引力により上板22側に傾動し、上板22上の前立て布Nに対する保持圧を付与することができるようになっている。
また、立板部522aの上端部には、上方に向かって開口した半円状の切り欠き522bが形成されている。かかる切り欠き522bには、右方に向かって突出動作が行われるエアシリンダー55のプランジャーが上から嵌合して連結可能となっている。
ボス561は、保持枠521の前面において前方に延出された丸棒状の突起であり、保持枠521の傾動の中心軸に対して左方に設けられている。前述した前立て折り板51も保持枠521の傾動の中心軸に対して左方に固定支持されているので、ボス561がカム板562から上方又は下方に押圧されると、前立て折り板51も連動して同様に上方又は下方に押圧される。
このカム板562は、上面と下面とがボス561に摺接するカム面となるカム部562aを備えており、当該カム部562aは、X軸方向に沿って延在している。このカム部562aは、前立て折り板51が往復移動の開始位置にある場合のボス561の位置よりも右方に位置している。
これにより、カム部562aの上面及び下面は、左端部から右端部に向かって低くなる傾斜状態に維持されている。
連結桿571は、左右方向に沿った長尺板状であって、左端部が第一の可動体522に固定支持されている。また、連結桿571の右端部には、下方に屈曲した板状の係止部571aを備えている。
また、前述した連結桿571の係止部571aは、第一の当接部572と第二の当接部573の間となるように配置されている。
かかる左ストッパー574により第二の可動体523の左方移動が制止されると、連動機構57により連動している第一の可動体522の左方移動も制止される。つまり、左ストッパー574は、第一の可動体522の可動範囲の左端位置も規定しているといえる。
そして、この左ストッパー574により規定された可動範囲の左端位置に第一の可動体522が位置する場合に、前立て折り板51が「往復移動の開始位置」となるように設定されている。
また、この左ストッパー574により規定された可動範囲の左端位置に第二の可動体523が位置する場合に、補助押さえ板53が長穴221の右側近傍となる「初期位置」となるように設定されている。
かかる右ストッパー575により第二の可動体523の右方移動が制止されると、連動機構57により連動している第一の可動体522の右方移動も制止される。つまり、右ストッパー575は、第一の可動体522の可動範囲の右端位置も規定しているといえる。
エアシリンダー55のプランジャーには、二つのフランジが並んで形成されており、第一の可動体522の立板部522aに形成された半円状の切り欠き522bにプランジャーを連結する際に利用される。即ち、プランジャーを半円状の切り欠き522bに嵌合させて連結した時に、立板部522aを二つのフランジで挟むことで、プランジャーの進退移動方向の動作を第一の可動体522に伝達することができる。
このように、第一の可動体522の立板部522aとエアシリンダー55のプランジャーとは、極めて容易に連結し且つ取り外すことができる構造となっている。
布移動機構30は、図2に示すように、布押さえ20を支持する土台31と、後述する各種の構成を支持する支持枠体32と、土台31を水平面に沿って移動させる駆動源としてのX軸モーター33及びY軸モーター34(図10参照)とを備えている。
また、布押さえ20を分離させる際には、エアシリンダー354,354によりクランプ部材353,353と保持する場合と逆側に回動させる。これにより、突起212,212を凹部352、352の内側に保持するものがなくなり、土台31から布押さえ20を分離させることができる。
この支持枠体32は、土台31の前端部に固定装備され、クランプ機構35に保持された布押さえ20の上方に位置する。
この支持枠体32は、X軸方向の両端部からY軸方向に沿って前方に延出された二本の腕部321,322を備えている。
そして、この支持枠体32は、一方(左側)の腕部321の前端部において、第一の折り返し機構50のエアシリンダー55を支持している。
また、他方(右側)の腕部322において、後述する第二の折り返し機構60を支持している。
さらに、二つの腕部321,322の間において、保持機構80を支持している。
保持機構80は、図8に示すように、クランプ機構35に装着された布押さえ20の長穴221の左右両側近傍において、前立て布Nを上方から押圧保持する二つの前立て押さえ板81,81と、それぞれの前立て押さえ板81,81を個別に支持する支持部材82,82と、支持部材82,82を介して前立て押さえ板81,81を個別に昇降させるエアシリンダー83,83とを備えている。
そして、長穴221の左右両側近傍において、前立て布Nを上方から押圧保持するので、縫製時に縫い針の上下動につられて前立て布Nが上下に振動することを抑制し、良好な縫製を可能とする。
なお、押さえ板81,81は、専ら、針上下動機構により針落ちが行われる場合とメス機構40により切れ目を形成する場合にのみ前立て布Nを保持し、それ以外の場合には、前立て布Nの折り返し作業の妨げとならないように、上方に退避するようエアシリンダー83,83は制御される。
そして、支持部材82,82は回動動作を行うことより、前立て押さえ板81,81を昇降させる。
第二の折り返し機構60は、図8に示すように、第一の折り返し機構50により右側に折り返された前立て布Nの端部をさらに左側に折り返す送風機構である。
この第二の折り返し機構60は、送風機構としての二つのエアー噴出ノズル61,61と各エアー噴出ノズル61,61を支持する支持体62,62とを備えている。各エアー噴出ノズル61,61は、いずれも円筒状であって、Y軸方向に沿った状態で布押さえ20の長穴221の右側に配置されている。そして、各エアー噴出ノズル61,61は、その長手方向に沿って複数のエアー吹き出し口(図示略)が設けられ、前立て布NのY軸方向における全幅に渡って左側に向かってエアーの吹き付けを行い、第一の折り返し機構50により右側に折り返された前立て布Nの端部をさらに左側に折り返すことができる。
従って、第二の折り返し機構60も支持枠体32に設けることにより、布押さえ20の着脱作業の容易化を図っている。
第三の折り返し機構65は、図2及び図9に示すように、布押さえ20の長穴221の左側で上から前立て布Nを押さえる前立て布押さえとしての押さえ枠66と(図17参照)、押さえ枠66の内側に格納された送風機構としてのエアー噴出ノズル67,67と、押さえ枠66を昇降させるエアシリンダー68と、エアシリンダー68を支持する支持ブラケット69と、を備え、支持ブラケット69は、ミシンフレーム100の面部104にネジ止めされている。
プランジャーの下端部には押さえ枠66が装備されており、エアシリンダー68の突出圧力によって前立て布Nの押さえ圧を得ている。
また、押さえ枠66の内側には、二つのエアー噴出ノズル67,67が格納されている。これらのエアー噴出ノズル67,67はいずれも円筒状であって、Y軸方向に沿った状態で押さえ枠66の内側に配置されている。そして、各エアー噴出ノズル67,67は、その長手方向に沿って複数のエアー吹き出し口(図示略)が設けられ、これらはいずれも右側に向かって吹き出しを行う(図17参照)。
メス機構40は、図2に示すように、下端部に刃を有する図示しないメスと、当該メスを上下に往復させる駆動機構とを備えている。
メスは縫い針の左方に隣接して配置され、下降時に前立て布N及び身頃生地Kに切れ目cを形成する。
駆動機構は、メス駆動モーター41(図10参照)と当該メス駆動モーター41のトルクを上下の往復運動に変換するクランク機構等の変換機構とから構成される。また、メスの駆動機構の駆動源はエアシリンダーでも良い。
そして、前立て布N及び身頃生地Kに切れ目を形成する際には、布押さえ20の長穴221がメスの下方に移動し、さらに、布押さえ20をY軸方向に沿って移動させながらメスを上下動させることにより、Y軸方向に沿った切れ目cが前立て布N及び身頃生地Kに形成される。
図10はミシン10の制御系を示したブロック図である。ミシン10の制御装置90は、縫製における動作制御を行うためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)92と、演算処理の作業領域地となるRAM(Random Access Memory)93と、縫製データなど各種データを記憶する記憶手段としての書き換え可能な不揮発性のデータメモリ94と、ROM92内のプログラムを実行するCPU91(Central Processing Unit)とを備えている。
さらに、CPU91は、図示しないインターフェイスを介して、第一の折り返し機構50のエアシリンダー55、第二の折り返し機構60のエアー噴出ノズル61、第三の折り返し機構65のエアシリンダー68、第三の折り返し機構65のエアー噴出ノズル67、クランプ機構35のエアシリンダー354、保持機構80のエアシリンダー83のそれぞれを作動させる電磁弁55a,61a,68a,67a,354a,83aを制御するための駆動回路55b,61b,68b,67b,354b,83bと接続されている。
なお、ミシン10は、第二の折り返し機構60のエアー噴出ノズル61、第三の折り返し機構65のエアー噴出ノズル67、クランプ機構35のエアシリンダー354、保持機構80のエアシリンダー83、それらの電磁弁61a,67a,354a,83a及びそれらの駆動回路61b,354b,83bは、いずれも二つずつ備えているが、図10では一つのみ図示している。
また、制御装置90には、縫製動作を進めるためのペダルスイッチ95が併設されている。
上記ミシン10による前立て縫製動作について図11〜図18の動作説明図と図19のフローチャートとに基づいて説明する。
なお、図11〜図18の動作説明図では、保持機構80及び支持枠体32の図示を省略している。
さらに、上板22上の前立て折り板51と補助押さえ板53とは、コイルバネにより、それぞれ往復移動の開始位置と初期位置とに維持されているので、補助押さえ板53をマグネット531に抗して持ち上げ、縫い目の形成予定位置が長穴221の位置に合うように前立て布Nを配置し、補助押さえ板53を下ろす。この時、前立て折り板51が前立て布Nの下側に隠れるように前立て布Nを配置する。
そして、布押さえ20の二つの突起212,212をクランプ機構35の受け板351の凹部352,352に嵌めて、第一の折り返し機構50のエアシリンダー55を第一の可動体522に連結する。
当初、第一の折り返し機構50のエアシリンダー55はプランジャーを後退させた状態にあり、支持機構52の第一の可動体522に形成された半円状の切り欠き522bにプランジャーを連結する。
次いで、ペダルスイッチ95を押下すると、CPU91は、電磁弁83a,83aを通じてエアシリンダー83,83を作動させ、前立て押さえ板81,81を下降させて長穴221の左右両側で前立て布Nの保持を行う(ステップS3)。
次いで、CPU91は、ミシンモーター15の駆動を開始すると共に、X軸モーター33,Y軸モーター34を制御して第一の縫い目n1と第二の縫い目n2とを形成する(ステップS7、図12、[第一の縫い制御])。
さらに、CPU91は、電磁弁55aを通じてエアシリンダー55を作動させ、往復移動の開始位置にある前立て折り板51を、コイルバネ54に抗して長穴221を横切る方向(右方)に移動させる。これにより、前立て布Nの左端部が第一の縫い目n1を折り目として右側に折り返される。前立て折り板51は、連動機構57により、補助押さえ板53も右側に移動させ、右ストッパー575により、それぞれの可動範囲の右端部において停止する。前立て折り板51と補助押さえ板53は、いずれも前立て布Nから右方に離れた位置で停止する(ステップS11、図13、[第一の折り返し制御])。
なお、前立て折り板51は、この右方への移動の際に、保持枠521のボス561がカム機構56のカム板562のカム部562aの下面に摺接し、下方に押し下げられた状態で移動が行われる(図5(A)及び図5(B)参照)。これにより、前立て布Nを第一の縫い目n1に沿ってしっかりと折り畳むことができる。
そして、CPU91は、ミシンモーター15、X軸モーター33及びY軸モーター34を制御して第一の折り返し縫い目n11を第一の縫い目n1とメス機構40の切れ目の形成位置(形成予定位置)との間に形成する(ステップS15、図14、[第二の縫い制御])。
さらに、CPU91は、電磁弁61aを制御して第二の折り返し機構60のエアー噴出ノズル61,61から左方へのエアーの噴出を行い、前立て布Nの左端部を第一の折り返し縫い目n11を折り目として左側に折り返すと共に、前立て布Nの右端部を第二の縫い目n2を折り目として左側に折り返す(ステップS19)。
なお、前立て折り板51は、この左方への移動の際に、保持枠521のボス561がカム機構56のカム板562のカム部562aの上面に摺接し、上方に押し上げられた状態で移動が行われる(図6(A)及び図6(B)参照)。これにより、複数回の折り返しにより積層されて厚くなった前立て布Nに対して引っ掛かりを生じることなく適度な押さえ圧で前立て布Nを押さえることができる。
そして、CPU91は、ミシンモーター15、X軸モーター33及びY軸モーター34を制御して第二の折り返し縫い目n12をメス機構40の切れ目の形成位置(形成予定位置)と第二の縫い目n2の間に形成する(ステップS25、図16、[第三の縫い制御])。
さらに、CPU91は、電磁弁55aを通じてエアシリンダー55を作動させ、往復移動の開始位置にある前立て折り板51及び補助押さえ板53を再び可動範囲の右端部まで移動させる。これにより、前立て折り板51と補助押さえ板53は、いずれも前立て布Nから右方に離れた位置で停止する(ステップS29)。
さらに、CPU91は、電磁弁67aを制御して第三の折り返し機構65のエアー噴出ノズル67,67から右方へのエアーの噴出を行い、前立て布Nの右端部を第二の折り返し縫い目n12を折り目として右側に折り返す(ステップS31、図17、[第三の折り返し制御])
そして、CPU91は、X軸モーター33及びY軸モーター34を制御して、布押さえ20をメス機構40の下方に移動させる。
さらに、メス駆動モーター41の駆動を開始すると共に、布押さえ20をY軸方向に沿って送り、第一の折り返し縫い目n11と第二の折り返し縫い目n12との間に切れ目cを形成する(ステップS35、図18,[切れ目形成制御])。
上記ミシン10は、前立て布Nを第一の縫い目n1に沿って折り返す第一の折り返し機構50と、前立て布Nを第二の縫い目n2に沿って折り返す第二の折り返し機構60とを備えているので、それぞれの折り目の近傍にトップステッチ(第一及び第二の折り返し縫い目n11,n12)を形成するような前立ての縫製が可能となり、前立ての多彩な縫製に対応することが可能となる。
また、従来は別工程又は手作業で行われていたトップステッチの形成をミシン10が行うことができるので、縫製作業を迅速且つ効率的に行うことが可能となる。
これにより、複雑な前立て布の縫製を簡易な構成により効率的に行うことが可能となる。
これにより、前立て布Nの縫製が進むにつれて折り返し等で積層されて厚みが変動する場合でも前立て折り板51を適度な高さで適度な押圧力で前立て布Nを押さえることが可能となり、良好な縫製を行うことが可能となる。
これにより、一つのエアシリンダー55(アクチュエーター)により、前立て折り板51と補助押さえ板53とを切れ目形成位置(形成予定位置)の両側に個別に配置した状態と、前立て折り板51及び補助押さえ板53の両方を切れ目形成位置(形成予定位置)の片側に退避させた状態とに切り替えることが可能となり、部品点数の低減によるミシンの製造コストの低減を図ることが可能となる。
このため、簡易な構成により前立て布Nの折り返し作業を実現することができ、また、前立て布Nから離れた位置から折り返すことができるので、第二の折り返し機構60の配置の自由度が高く、ミシン10の設計の容易化を実現することが可能となる。
さらに、エアー噴出ノズル61は機構的な動作を不要とするので、メンテナンス作業の低減や動作の信頼性の向上を図ることが可能となる。
また、第三の折り返し機構65の全体構成を上方に退避させることができるので、第三の折り返し機構65の配置の自由度をさらに高めることが可能となる。
また、縫い針の周囲の機構によって傷つけることを回避し、身頃生地Kや前立て布Nを保護することが可能となる。
また、同様に、第二の折り返し機構60は、布押さえ20ではなく、支持枠体32を介して土台31が支持するので、布押さえ20の着脱に伴う第二の折り返し機構60のエアー噴出ノズル61とエアーホースとの着脱作業を不要とし、作業性の向上を図ることが可能となる。
また、第三の折り返し機構65も、ミシンフレーム100の面部104に装備されているので、エアシリンダー68及びエアー噴出ノズル67とエアーホースとの着脱作業を不要とし、作業性の向上を図ることが可能となる。
図20及び図21により第二の実施形態であるミシン10Bについて説明する。このミシン10Bについて、前述したミシン10と同一の構成については説明を省略し、ミシン10と異なる点について重点的に説明する。
ガイドロッド117は、その先端がステー115に固定されている。これにより、ステー115は、ロッド114の軸線で回転することなく支持される。ステー115には、支持ブロック118がねじ止め固定されており、この支持ブロック118には、段押さえ部材121が着脱可能に設けられている。
この段押さえ部材121は、前立て布Nの折り返し段部dをガイドしながら前立て布Nを押えるものである。ガイド板部124は、折り返された前立て布Nから外れた折り返し段部dの隣接位置で折り返し段部dに沿って配置される。また、押さえ板部125は、折り返された前立て布N上の折り返し段部dの隣接位置に配置され、前立て布Nを上方から押し付ける。ガイド板部124と押さえ板部125との間には、隙間Gが設けられており、この隙間Gに、縫い針12及びこの縫い針12を囲うように設けられた筒状の布押さえ12aが配置される(図20参照)。
また、段押さえ機構110は、段押さえ部材121を着脱して変更することで、コバ幅Wの変更や前立て布Nの厚み等に対応できるようになっている。
CPU91は、第一の縫い目n1と第二の縫い目n2とを形成する第一の縫い制御(図19におけるステップS7)を実行し、さらに、前立て布Nの左端部を、第一の縫い目n1を折り目として右側に折り返す第一の折り返し制御(図19におけるステップS9,S11)を実行した後、段押さえ機構110を用いた第二の縫い制御(図19におけるステップS13,S15)を実行する。
なお、ミシン10又はミシン10Bにおいて、縫製の各工程の順番は適宜変更可能である。
例えば、切れ目cの形成は縫い目n1,n2の形成前に行っても良い。また、切れ目cの形成は、縫い目n1,n2の形成後であって、縫い目n1に沿って前立て布Nを折り返す前に行っても良い。
12 縫い針
15 ミシンモーター
21 下板
22 上板
30 布移動機構
33 X軸モーター
34 Y軸モーター
40 メス機構
50 第一の折り返し機構
51 前立て折り板
52 支持機構
53 補助押さえ板
54 コイルバネ
55 エアシリンダー(アクチュエーター)
56 カム機構
57 連動機構
60 第二の折り返し機構
61 エアー噴出ノズル(送風機構)
65 第三の折り返し機構
66 押さえ枠(前立て布押さえ)
67 エアー噴出ノズル(送風機構)
68 エアシリンダー(アクチュエーター)
80 保持機構
90 制御装置
221 長穴
561 ボス
562 カム板
562a カム部
571 連結桿
571a 係止部
572 当接部
573 当接部
574 左ストッパー
575 右ストッパー
c 切れ目
K 身頃生地
N 布
n1 第一の縫い目
n11 第一の折り返し縫い目
n12 第二の折り返し縫い目
n2 第二の縫い目
Claims (5)
- 身頃生地及び前立て布を保持する布押さえと、
前記布押さえを前記身頃生地が置かれる平面に沿って任意に移動させる布移動機構と、
前記布押さえに保持された前記身頃生地及び前記前立て布に対して針落ちを行う針上下動機構と、
前記布押さえに保持された前記身頃生地と前記前立て布とに一定の方向に沿って切れ目を形成するメス機構と、
前記布押さえと前記布移動機構と前記針上下動機構と前記メス機構を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置が、
前記布移動機構及び前記針上下動機構を制御して、第一の縫い目と第二の縫い目とを形成し、
前記メス機構を制御して、前記第一の縫い目と第二の縫い目の間に切れ目を形成するミシンにおいて、
前記前立て布を前記第一の縫い目に沿って折り返す第一の折り返し機構と、
前記前立て布を前記第一の折り返し機構により折り返された前立て布の前記第一の縫い目と前記メス機構による切れ目の形成位置との間に形成された第一の折り返し縫い目に沿って折り返すと共に前記第二の縫い目に沿って折り返す第二の折り返し機構とを備え、
前記第二の折り返し機構は、前記前立て布に送風する送風機構を有し、
前記制御装置は、
前記布移動機構及び前記針上下動機構を制御して、前記第一の縫い目と前記第二の縫い目とを形成する第一の縫い制御と、
前記第一の折り返し機構を制御して、前記前立て布を前記第一の縫い目に沿って折り返す第一の折り返し制御と、
前記布移動機構と前記針上下動機構を制御して、前記第一の折り返し機構により折り返された前立て布の前記第一の縫い目と前記メス機構による切れ目の形成位置との間に第一の折り返し縫い目を形成する第二の縫い制御と、
前記第二の折り返し機構を制御して、前記前立て布を前記第一の折り返し縫い目に沿って折り返すと共に前記第二の縫い目に沿って折り返す第二の折り返し制御と、
前記布移動機構と前記針上下動機構を制御して、前記第二の折り返し機構により折り返された前立て布の前記第二の縫い目と前記メス機構による切れ目の形成位置との間に第二の折り返し縫い目を形成する第三の縫い制御とを順番に実行することを特徴とするミシン。 - 前記前立て布を前記第二の折り返し縫い目に沿って折り返す第三の折り返し機構を備え、
前記制御装置は、
前記第三の折り返し機構を制御して、前記前立て布を前記第二の折り返し縫い目に沿って折り返す第三の折り返し制御と、
前記メス機構を制御して、前記身頃生地及び前記前立て布の前記切れ目の形成位置に切れ目を形成する切れ目形成制御とを順番に実行することを特徴とする請求項1記載のミシン。 - 前記第三の折り返し機構は、下降動作により前記前立て布を上から押さえる前立て布押さえと、当該前立て布押さえに搭載されて前記前立て布に送風する送風機構とを有することを特徴とする請求項2記載のミシン。
- 前記第一の折り返し機構は、前記メス機構による切れ目形成位置を横切って往復移動を行う前立て折り板と、当該前立て折り板の移動の駆動源となるアクチュエーターと、前記前立て折り板を前記往復移動可能に支持する支持機構とを備え、
前記前立て折り板は、往路の移動により前記前立て布を前記第一の縫い目に沿って折り返し、復路の移動により前記第二の縫い目に沿って折り返された前記前立て布を上から押さえ、
前記支持機構は、前記前立て折り板の前記往路の移動を前記復路の移動よりも低位置で移動させるカム機構を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のミシン。 - 前記第一の折り返し機構は、前記往復移動の開始位置にある前記前立て折り板に対して、前記メス機構による切れ目形成位置を挟んで配置された補助押さえ板を備え、
前記支持機構は、
前記メス機構による切れ目形成位置を横切らない範囲で、前記補助押さえ板を前記前立て折り板に連動して往復移動させる連動機構を備えることを特徴とする請求項4記載のミシン。
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