JP5068573B2 - 高級無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、無方向性電磁鋼板の高級グレードの製造に関して、熱延板焼鈍を省略して、優れた磁気特性が得られる製造方法を提供するものである。
通常、無方向性電磁鋼板の高級グレード(JIS 50A470以上)は、スラブをスラブ加熱し、熱延して熱延板とし、これを熱延板焼鈍する。熱延板焼鈍は、いわゆるリジングの発生防止と、製品磁気特性の改善のため行い、その後、酸洗、冷延、仕上焼鈍、そして必要に応じてコーティングし、製品とする。しかし、この熱延板焼鈍を採用することにより、製造コストの上昇のみならず、製造工程の延長に伴う納期管理、工程管理の煩雑さを避けることができなかった。
そこで、この熱延板焼鈍を省略する方法として、特許文献1には、特定成分を含有する無方向性電磁鋼スラブをスラブ加熱し、熱間圧延するに際して、仕上温度を少なくとも1000℃以上とすると共に熱間仕上圧延後1秒〜7秒間無注水とし、しかる後、注水冷却して700℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする高級無方向性電磁鋼板用熱延板の製造方法が提案されている。この方法の要旨とするところは、S、Nの含有量を低減し、熱間仕上温度を1000℃以上とし、無注水時間をとることにより、熱延板の金属組織を従来法では加工組織であったものを、再結晶を促進した組織に変え、熱延板焼鈍材並に磁気特性を向上することにある。
特許文献2には、特定成分を含有し、更に、REM、Mg、Caの1種または2種以上を各々の含有量で0.0005%〜0.020%を含有する無方向性電磁鋼スラブを熱間圧延するに際して、仕上温度を950℃以上とすると共に熱間仕上圧延後1秒〜7秒間無注水とし、しかる後、注水冷却して700℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする高級無方向性電磁鋼板の製造方法が提案されている。
特許文献3には、特定成分を含有し、更に、REMを0.0005%〜0.010%を含有する無方向性電磁鋼スラブを熱間圧延するに際して、仕上温度を1000℃以上とすると共に仕上圧延完了後0.5秒以上無注水とすることを特徴とする高級無方向性電磁鋼板の製造方法が提案されている。
特許文献4には、特定成分を含有する無方向性電磁鋼スラブを熱間圧延するに際して、粗圧延機に隣接して設置した雰囲気制御型電気式加熱炉を使用して、1150℃以下で加熱し、直ちに粗圧延〜仕上を実施し、仕上圧延機出口温度を950℃以上で処理を行い、仕上圧延後1〜7秒無注水とし、しかる後注水冷却して700℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする高級無方向性電磁鋼板の製造方法が提案されている。
特公昭62−61644号公報 特開2004−169141号公報 特開2006−131963号公報 特開平5−171279号公報
特許文献1によれば、仕上温度を安定して1000℃以上確保するには、スラブ加熱温度を1200℃程度以上に高めにせざるを得ない。そのためS:0.0015%以下、N 0.0020%以下として、S、Nの固溶量を予め少なくしているのであるが、それでもスラブ加熱の高温化によりS、Nの固溶量が増え、少量といえども生成する微細析出物により得られる磁気特性は満足できるものでは無かった。また、スラブ加熱は一般的にウォーキングビーム式ガス加熱炉で行われるが、高温加熱によりスラブがたわみ、粗圧延時にかみ込み不良が発生しやすくなるという問題や、高温加熱では表面疵が多いという問題もあった。
特許文献2、3は、REM添加により、SをREM硫化物やREM−O−Sとして粗大に晶出、析出させ無害化するが、得られる磁気特性は満足できるものではなかった。
特許文献4は、粗圧延機に隣接した雰囲気制御型電気式加熱炉を使用して、1150℃以下でスラブ加熱することにより、Sの固溶を抑え、製品のリジングを防止しているが、得られる磁気特性は満足できるものではなかった。
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、熱延板焼鈍を省略して、製品のリジングなく、良好な磁気特性を得られる製造方法を提供し、更に、粗圧延時のかみ込み不良や表面疵の発生率の少ない製造方法を提供するものである。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1) 質量%で、C:0.008%以下、Si:1.5〜3.5%、Al:0.2〜3.0%、1.9%≦(%Si+%Al)、Mn:0.02〜1.0%、S:0.0015%以下、N:0.0020%以下、Ti:0.008%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物の組成よりなるスラブをスラブ加熱し、熱延し、熱延板を焼鈍することなく冷延し、仕上焼鈍を行うことにより無方向性電磁鋼板を製造する方法において、前記スラブは、さらに、REM、Caの1種または2種を各々の含有量で0.0005〜0.03%質量含み、仕上後面温度を1050℃以上で熱間仕上圧延すると共に熱間仕上圧延後1.5秒〜4秒間無注水とし、しかる後、注水冷却して700℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
(2) 1230℃〜1320℃の温度範囲のスラブ加熱を雰囲気制御型電気加熱炉で行うことを特徴とする(1)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
(3) 1230〜1320℃の温度範囲のスラブ加熱の前に、スラブを5〜40%の圧下率で圧延することを特徴とする(1)または(2)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、熱延板焼鈍を省略して、製品のリジングなく、良好な磁気特性を得られ、粗圧延のかみ込み不良、表面疵の発生率の少ない高級無方向性電磁鋼板の製造を可能とするものである。
以下、本発明の詳細について説明する。なお、以下の記載で元素の含有量の%は質量%を意味する。
本発明者らは、熱延板焼鈍を省略して良好な磁気特性を得られる高級無方向性電磁鋼板の製造方法を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、REM、Caの1種または2種を添加したスラブを用い、熱延仕上温度を1050℃以上とすることが非常に有効であることを見出した。
図1は、本発明者が行なった実験結果の一例である。C:0.0017%、Si:2.0%、Al:0.3%、Mn:0.23%、S:0.0009%、N:0.0012%、Ti:0.0015%を含み、REMなしの連続鋳造スラブと、さらにREMを0.0041%含む連続鋳造スラブを、ガス加熱炉で1250℃にスラブ加熱し、種々の仕上温度で2.5mm厚に熱延し、仕上圧延後3秒無注水とし、その後注水して600℃で巻き取った。その後、酸洗し、0.50mmに冷延し、880℃×60秒の仕上焼鈍を行い、磁気特性を測定した。この時の熱延仕上温度と磁束密度B50の関係を図1に示す。REMを添加し、仕上温度が1050℃以上の場合に、特に高いB50を得られることが分かる。また、REM 0.0041%ではリジングが発生していなかったが、REMなしでは2〜5μmの高さのリジングが発生していた。
次に、C:0.0012%、Si:2.0%、Al:0.3%、Mn:0.21%、S:0.0007%、N:0.0013%、Ti:0.0011%含み、REMなしとさらにREM0.0040%を含む連続鋳造スラブを、ガス加熱炉で1250℃に加熱し、1070℃の仕上温度で2.5mm厚に熱延し、種々の時間無注水とし、その後注水して600℃で巻き取った。その後、酸洗し0.50mmに冷延し、880℃×60秒の仕上焼鈍を行い、磁気特性を測定した。この時の無注水時間と磁束密度B50、リジング高さの関係を図2、3に示す。REMを添加し、無注水時間が1.5秒以上であると、特に高いB50で、かつ、リジングの発生もないことが分かる。
ところで、工場での熱延板の製造方法は、所定の成分を含有した溶鋼を250mm厚程度のスラブに連続鋳造し、所定の長さに切断し、その後、熱延のスラブ加熱炉で加熱し、30〜70mm厚程度に粗圧延し、2〜3mm程度に仕上圧延し、注水ゾーンで注水されコイラーで巻き取られるというものである。加熱炉からスラブを抽出し、仕上圧延までの間の温度降下は避けることができず、仕上温度1050℃を確保しようとすると、一般には1230℃以上にスラブ加熱する必要があった。
そこで、スラブ加熱の影響を検討した。C:0.0008%、Si:2.0%、Al:0.3%、Mn:0.24%、S:0.0007%、N:0.0012%、Ti:0.0017%含み、REMなしとさらにREM0.0040%を含む連続鋳造スラブを、種々の温度でガス加熱炉でスラブ加熱し、1080℃の仕上温度で2.5mm厚に熱延し、2秒無注水とし、その後注水して600℃で巻き取った。その後、酸洗し0.50mmに冷延し、880℃×60秒の仕上焼鈍を行い、磁気特性を測定した。このときのスラブ加熱温度と磁束密度B50、リジング高さの関係を図4、5に示す。REMを添加し、スラブ加熱が1230〜1320℃であると、特に高いB50で、かつ、リジングの発生もないことが分かる。
なお、本発明者らは、Caについても同様に実験し、同様な効果を得られることを確認した。
REM、Caを添加すると良好な磁気特性を得られ、リジングを抑制できるのは、REM、CaはSをREM−O−SまたはCaSとして粗大に晶出、析出し、固溶温度が高いためスラブ加熱温度を高くしてもSが固溶せず、また、TiN、AlNを粗大に複合析出させるためと考えられる。微細な介在物、析出物が著しく少なくなり、1050℃以上の仕上温度で熱延仕上圧延後1.5秒〜4秒の無注水の間に再結晶、正常粒成長が十分進むものと考えられる。
以下に本発明の限定理由を説明する。以下の成分は、鋼中に含まれる量である。
Cは、熱間圧延中にオーステナイト、フェライト2相域とさせないことと、0.008%を超えると磁気時効により製品の磁気特性を劣化させるので、0.008%以下(0を含む)とした。
Si:1.5%〜3.5%、Al:0.2%〜3.0%、1.9%≦(%Si+%Al):Cが0.008%以下で、1.9%≦(%Si+%Al)であればオーステナイト、フェライト2相域とならずフェライト1相となるため1.9%≦(%Si+%Al)とした。Si、Alは電気抵抗を上げ、渦電流損失を下げるため、下限は各々1.5%、0.2%とした。Si、Alを各々3.5%、3.0%を超えて添加すると加工性が著しく劣化する。
Mnは、熱延性を良くするために0.02%以上添加する。上限の1.0%は経済的理由によるものである。
Sは、微細な硫化物あるいは酸硫化物をつくり、1次再結晶温度を高める有害な作用を演ずるため、0.0015%以下とした。
Nは、TiN、AlNの析出を最小限にし、結晶粒成長の抑制を回避するため0.0020%以下とする。
Tiは、微細なTiN、TiCをつくり、結晶粒成長を抑制するので、それを回避するため0.008%以下(0を含む)とする。
REM、Caは、1種または2種を各々の含有量で0.0005%以上含有すると、前述の実験例や後述する実施例に示されるように磁束密度を高くでき、リジングの発生を抑制できる。上限を0.03%とするのは0.03%超では効果が飽和するためである。ここで、REMとは、ランタンからルテシウムまでの15元素にスカンジウムとイットリウムを加えた合計17元素の総称であるが、そのうちの1種だけを用いても、あるいは2種以上の元素を組み合わせて用いても本発明の範囲内であれば、上記効果は発揮される。REMとCaは1種でも良いし、2種以上組み合わせても良い。
スラブ加熱は1230〜1320℃とする。1230℃未満では、熱延仕上温度の1050℃以上を確保できず、1320℃を超えるとスラブ加熱でTiN、AlNが固溶し、続く熱延で微細に析出し、仕上焼鈍での粒成長性が悪く、良好な磁気特性を得られず、リジングを抑制できない。
1230〜1320℃の温度範囲のスラブ加熱は雰囲気制御型電気式加熱炉で行うと、スラブがたわまず粗圧延のかみ込み不良が起きず、また、表面疵も非常に少ない。1230℃未満はガス加熱炉でもよいし、雰囲気制御型電気式加熱炉でも良い。雰囲気制御型電気式加熱炉には誘導加熱炉、通電加熱炉などがある。
1230℃以上のスラブ加熱の前に、5〜40%の圧下率でスラブを圧延し、1230℃以上を雰囲気制御型電気式加熱炉でスラブ加熱すると、連続鋳造スラブの柱状晶が圧延により破砕され、磁気特性が改善する。よって、スラブ加熱の前の圧延の圧下率を5%以上40%以下とした。
仕上温度を1050℃以上と限定した理由は、1050℃以上とすると良好な磁気特性を得られるからである。
熱間圧延後の無注水時間は、1050℃以上の仕上温度で熱延した場合、再結晶、正常粒成長を十分行わせるために少なくとも1.5秒は要し、これ未満では高い磁束密度を得られないため、下限は1.5秒とし、上限の4秒は、無注水時間が4秒を超えると、その分注水時間が短縮され、1050℃以上の仕上温度では、700℃以下で巻き取ることが工業的に困難となるためである。
巻き取り温度は、700℃を越えると酸洗性が悪化するため700℃以下とした。好ましくは650℃以下である。下限は、好ましくは、500℃以上である。それ未満では巻姿が悪化する。
C:0.0013%、Si:2.2%、Mn:0.19%、Sol.Al:0.3%、S:0.0007%、N:0.0009%、Ti:0.0007%、REM及びCaを種々含有する無方向性電磁鋼板用スラブを1250℃でスラブ加熱し、熱間仕上温度を種々変更して熱間圧延し、熱間圧延後の無注水時間を2.5秒とし、巻き取り温度は640℃、熱延板板厚は2.5mmとした。続いて酸洗し、0.50mmに冷延し、880℃×60秒で連続焼鈍し、絶縁皮膜を塗布して製品とした。この時の、REM、Ca含有量、熱間仕上温度と磁気特性、リジング高さの関係を表1に示す。本発明範囲では、良好な磁気特性を得られ、リジングが発生しないことが分かる。
Figure 0005068573
C:0.0010%、Si:2.1%、Mn:0.22%、ol.Al:0.3%、S:0.0008%、N:0.0010%、Ti:0.0006%、REM:0.0039%(元素数2)を含有する無方向性電磁鋼板用スラブを1250℃でスラブ加熱し、1083℃の仕上温度で熱間圧延し、熱間圧延後の無注水時間を種々変更し、巻き取り温度は600℃、熱延板板厚は2.5mmとした。続いて酸洗し、0.50mmに冷延し、880℃×60秒で連続焼鈍し、絶縁皮膜を塗布して製品とした。この時の、無注水時間と磁気特性、リジング高さの関係を表2に示す。本発明範囲では、良好な磁気特性を得られ、リジングが発生しないことが分かる。
Figure 0005068573
C:0.0009%、Si:2.8%、Mn:0.21%、Sol.Al:0.3%、S:0.0011%、N:0.0012%、Ti:0.0010%、Ca:0.0033%を含有する無方向性電磁鋼板用スラブを1290℃でスラブ加熱し、1085℃の仕上温度で熱間圧延し、熱間圧延後の無注水時間を3秒とし、巻き取り温度は630℃、熱延板板厚は2.0mmとした。続いて酸洗し、0.35mmに冷延し、980℃×60秒で連続焼鈍し、絶縁皮膜を塗布して製品とした。この時、1230℃未満のスラブ加熱方式、1230℃以上のスラブ加熱の前のスラブ圧延有無と圧下率、1230℃以上のスラブ加熱方式を種々変更した。表3には磁気特性、粗圧延かみ込み不良発生率、表面疵発生率を示す。リジングは全ての条件で発生しなかった。1230℃以上の温度範囲を誘導加熱炉、通電加熱炉でスラブ加熱すると、粗圧延かみ込み不良発生率、表面疵発生率を抑制でき、1230℃以上のスラブ加熱の前に5〜40%のスラブ圧延を施すと磁気特性が更に改善することが分かる。
Figure 0005068573
熱延仕上温度と磁束密度B50の関係図である。 無注水時間と磁束密度B50の関係図である。 無注水時間とリジング高さの関係図である。 スラブ加熱温度と磁束密度B50の関係図である。 スラブ加熱温度とリジング高さの関係図である。

Claims (3)

  1. 質量%で,C:0.008%以下,Si:1.5〜3.5%、Al:0.2〜3.0%、1.9%≦(%Si+%Al),Mn:0.02〜1.0%、S:0.0015%以下、N:0.0020%以下、Ti:0.008%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物の組成よりなるスラブをスラブ加熱し、熱延し、熱延板を焼鈍することなく冷延し、仕上焼鈍を行うことにより無方向性電磁鋼板を製造する方法において、前記スラブは、さらに、REM、Caの1種または2種を各々の含有量で0.0005〜0.03質量%含み、スラブ加熱を1230〜1320℃とし、仕上温度を1050℃以上で熱間仕上圧延すると共に熱間仕上圧延後1.5秒〜4秒間無注水とし、しかる後、注水冷却して700℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 1230℃〜1320℃の温度範囲のスラブ加熱を雰囲気制御型電気加熱炉で行うことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 1230〜1320℃の温度範囲のスラブ加熱の前に、スラブを5〜40%の圧下率で圧延することを特徴とする請求項1または2に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
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