JP3336172B2 - 磁気特性の優れる一方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性の優れる一方向性けい素鋼板の製造方法

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JP3336172B2 JP28638795A JP28638795A JP3336172B2 JP 3336172 B2 JP3336172 B2 JP 3336172B2 JP 28638795 A JP28638795 A JP 28638795A JP 28638795 A JP28638795 A JP 28638795A JP 3336172 B2 JP3336172 B2 JP 3336172B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、圧延方向に安定
して優れる磁気特性が得られる一方向性けい素鋼板の製
造方法を提案するものである。
【0002】方向性けい素鋼板は主として変圧器その他
の電気機器類の鉄心材料として使用され、磁束密度およ
び鉄損等の磁気特性に優れることが基本的に重要であ
る。方向性けい素鋼板の製造において特に重要なこと
は、いわゆる仕上げ焼鈍工程で1次再結晶粒を{11
0}<001>方位の結晶粒に2次再結晶させることで
ある。
【0003】このような2次再結晶の生成を効果的に促
進させるためには、まず1次再結晶粒の成長を抑制する
インヒビターと呼ばれる分散相を、均一かつ適正なサイ
ズに分散させることが重要である。かかるインヒビター
として代表的なものはMnS 、MnSe、AlN およびVNのよう
な硫化物や窒化物等で、鋼中への溶解度が極めて小さい
物質が用いられている。なお、Sb、Sn、As、Pb、Ce、Cu
およびMo等の粒界偏析型成分もインヒビターとして有利
に利用されている。このため従来から、熱間圧延間前に
スラブを高温加熱してインヒビター成分を完全に固溶さ
せる方法がとられ、熱間圧延工程以降、2次再結晶まで
の工程での析出状態を制御している。
【0004】さらには、1回または2回以上の冷間圧延
および1回または2回以上の焼鈍によって得られる1次
再結晶粒組織を、板厚全体にわたって適当な大きさの結
晶粒でしかも均一な分布とすることも肝要であり、かか
る2つの条件を満足させることが極めて重要であること
は周知の通りである。
【0005】これまで、方向性珪素鋼板を製造するに
は、厚さ100 〜300 mmのスラブを1250℃以上の温度に加
熱し、インヒビター成分を完全に固溶させた後、熱延板
とし、次いでこの熱延板を1回または中間焼鈍をはさむ
2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、脱炭焼鈍
後、焼鈍分離剤を塗布してから2次再結晶および純化を
目的として最終仕上げ焼鈍を行うのが一般的である。
【0006】ところで近年、省エネルギー化の要請か
ら、より高磁束密度、低鉄損の一方向性電磁鋼板が求め
られるようになり、冷延圧下率を高めることでより高度
に先鋭化した集合組織を形成し、2次再結晶後のゴス方
位集積率を高め高磁束密度化をはかり、かつ製品板厚を
薄くすることに加えて、磁区細分化処理を施す等、さら
なる低鉄損化がはかられるようになった。また、2種以
上のインヒビターを複合して添加し、粒成長抑制力を高
めることも行われ、さらには冷間圧延工程において板温
を高めたいわゆる温間圧延も行われている。このような
技術の進歩により極めて良好な磁気特性を有する製品が
得られるようになった。
【0007】しかしながら最終仕上げ焼鈍においてさら
に安定して良好な2次再結晶組織を得るためには、熱間
圧延以降の各工程でインヒビターの析出形態を厳しく制
御することが必要となってきた。一方、磁気特性のみな
らず外観、即ち表面性状においても優れた製品が強く要
求されるようになってきており、当然のことながら極め
て良好な磁気特性の製品を得るには各工程条件の許容範
囲は著しく制限されたものとなる。
【0008】従って工業的に生産する上で優れる磁気特
性をコイルの全長、全幅にわたって安定して実現し、生
産歩留りをも確保することは容易ではなく、これらが一
方向性けい素鋼板の生産、研究開発において重要な課題
となっている。
【0009】
【従来の技術】一方向性けい素鋼板を製造する際の熱間
圧延工程において、粗圧延での温度、時間等に関して
は、これまで数多くの技術が提案開示されている。たと
えば、特開平4−124218号公報(磁気特性の優れた方向
性けい素鋼板の製造方法)、特開平4−362137号公報
(磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法)、特
開平3−115526号公報(磁気特性及び表面性状の優れた
一方向性けい素鋼板の製造方法)、特開平3−115527号
公報(磁気特性及び表面性状の優れた一方向性けい素鋼
板の製造方法)、特開平3−10020 号公報(磁気特性及
び表面性状の優れた方向性珪素鋼板の製造方法)、特開
平2−159319号公報(表面性状および磁気特性に優れた
方向性けい素鋼板の製造方法)、特開平2−182832号公
報(磁気特性及び表面性状の優れた方向性珪素鋼板の製
造方法)、特開昭63−100128号公報(磁気特性と表面性
状の良好な方向性珪素鋼板の製造方法)、特開昭62−71
03号公報(磁気特性の優れた一方向性珪素鋼板の製造方
法)および特開昭59−193216号公報(方向性珪素鋼板の
製造方法)等に記載のものが知られている。
【0010】これらの開示例において、特開平4−1242
18号公報および特開平4−362137号公報には圧延材の厚
さ中心から2/5層および表層から1/5層の温度と圧
下率を制御することにより厚さ方向にインヒビターの粒
径分布を制御する方法が開示されている。しかしながら
量産設備を用いての生産を行うに際し、圧延材の表面温
度以外はオンライン測定が容易でなく、内部温度を制御
因子として用いるのは生産効率、生産コストの観点から
実操業上は現実的ではない。
【0011】上記に対し、オンライン測定の可能な表面
温度を用いた手法としては、特開平3−115526号公報、
特開平3−115527号公報、特開平3−10020 号公報、特
開平2−159319号公報および特開平2−182832号公報等
がある。これらの方法にしたがって熱間圧延を行った場
合には、表層近傍は粗圧延時に再結晶の進行が顕著とな
り組織の微細化が進むため、確かに粒界割れ等も発生し
にくく表面性状は改善される。しかし中心付近では粗圧
延後の粗大粒に起因するバンド組織が見られ、これが2
次再結晶不良の原因となることが避けられなかった。
【0012】また、特開昭63−100128号公報には誘導加
熱によるスラブ加熱温度と加熱炉抽出から粗圧延開始ま
での時間を制御することにより表面性状の良好な方向性
珪素鋼板を製造する方法が開示されている。しかしなが
ら、この方法の効果は表面近傍の粒界割れの防止に限ら
れ、板厚中心に未再結晶部を多く残し、熱延板組織の観
点からは決して良好なものとはいえず、実際に細粒によ
る2次再結晶不良の発生は防止できなかった。
【0013】そのほか特開昭62−7103号公報に示される
スラブ加熱時のスケールの生成による焼き減り量により
粗圧延前温度を制御する方法、特開昭59−193216号公報
に示されるスラブを長手方向にテーパー加熱する方法等
も、実操業上の制御が困難であるばかりか、製品特性の
向上しろも少なく、むしろ制御が困難であることから特
性のばらつきを増してしまうという問題があった。
【0014】このように、上記のいずれの手法も製品板
に細粒組織として発生する2次再結晶不良部をなく良好
な磁気特性の製品を安定して製造するには十分とはいえ
なかった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、熱延板で
の組織を改善して製品の2次再結晶不良を低減し、高磁
束密度でかつ低鉄損の優れる磁気特性が安定して得られ
る一方向性けい素鋼板の製造方法を提案することを目的
とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】発明者らは、方向性けい
素鋼板の途中工程材である熱延板組織と製品特性との関
係を詳細に調査した結果、熱延板においてその中心付近
に圧延方向に延びた未再結晶粒を多く含むバンド組織が
存在した場合には製品での磁気特性が悪く、このときの
製品板は、ゴスまたはそれに近い方位の正常な2次再結
晶が見られず、粒径数mm以下の細粒組織(2次再結晶不
良組織)になっていることを知見し、このような2次再
結晶不良を防止するためには熱延板でのバンド組織をな
くすことが重要であるとの考えに至った。
【0017】このバンド組織は、仕上げ熱間圧延前の粗
大粒が仕上げ熱間圧延で再結晶せずに引き延ばされた部
分である。よって、この発明は、スラブ加熱で粗大化し
た結晶を粗熱間圧延で十分に再結晶させることにより問
題を解決するという指針のもとに実験を重ねた結果、達
成したものである。
【0018】すなわち、この発明の要旨とするところは
以下の通りである。 C:0.02wt% 以上、0.10wt% 以下およびSi:2.0 wt
% 以上、5.5 wt% 以下を含有するけい素鋼スラブを加熱
後、熱間圧延し、ついで熱延板焼鈍を施したのち、1回
または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行って最終
板厚に圧延し、その後、脱炭焼鈍を施したのち、鋼板表
面に焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼鈍を施す一
連の工程によって一方向性けい素鋼板を製造するにあた
り、上記スラブを誘導加熱により1350℃以上の温度に加
熱し、そのスラブ加熱終了から累積圧下率75%以上の
粗圧延終了までの時間t(秒)につき、下記式(1)を
満たす範囲に調整することを特徴とする一方向性けい素
鋼板の製造方法(第1発明)。 〔記〕 t(秒)≦a×SRT /1400(℃・mm/秒) ここで a:誘導加熱時のスラブ厚さ(mm) SRT :誘導加熱炉からの抽出時スラブ温度(℃)
【0019】 熱延板断面において、圧延方向に引き
延ばされた未再結晶粒を含むバンド組織の占める割合が
10%以下であることを特徴とする第1発明に記載の一方
向性けい素鋼板の製造方法(第2発明)。
【0020】ここで、熱延板断面でのバンド組織とは、
図1に示すa部の組織のことをいい、熱間圧延終了後、
再結晶しなかったため、ほとんどが、圧延方向に長く引
き伸ばされた未再結晶の変形粒で構成されている。な
お、図1は、熱延板に形成されたバンド組織を示す金属
組織写真である。
【0021】
【発明の実施の形態】まず、この発明を、この発明の基
礎となった実験例をもとに説明する。
【0022】実験1 表1に示す成分組成になる鋼を180 t転炉および真空脱
ガス装置により溶製し、連続鋳造により厚さ:220 mm、
幅:1000mmのスラブとした。
【0023】
【表1】
【0024】これらのスラブをガス燃焼炉で加熱し、予
備圧延で厚さ:200 mmのスラブとしたのち、さらに誘導
加熱炉にて、1300℃、1350℃、1400℃および1450℃の各
温度にそれぞれ加熱してインヒビター成分の溶体化後、
粗圧延で板厚:45mmのシートバーとし、引き続き仕上げ
圧延を行いそれぞれ板厚:2.4 mmの熱延板とした。かく
して得られた各熱延板について、断面組織を観察し、圧
延方向に延びた粗大粒からなる未再結晶粒を含むバンド
組織の厚みの板厚に対する割合(以下単にバンド組織の
占める割合という)を調査した。
【0025】スラブ加熱温度(誘導加熱炉からの抽出時
スラブ温度)SRT(℃)をパラメーターとする熱延板
のバンド組織の占める割合と加熱終了から粗圧延終了ま
での時間t(秒)との関係のグラフを図2に示す。
【0026】図2から明らかなように、バンド組織の占
める割合は加熱終了から粗圧延終了までの時間tがある
値を超すと急激に増大し、その値はスラブ加熱温度SR
Tが低いほど短くなる。またスラブ加熱温度が1350℃を
下まわると時間tを短くしてもバンド組織が多量に残っ
てしまうことが分る。
【0027】実験2 上記実験1の結果をもとにスラブ厚の影響を評価する実
験を行った。表2に示す成分組成になる鋼を180 t転炉
および真空脱ガス装置により溶製し連続鋳造により厚
さ:260 mm、幅:1000mmのスラブとした。
【0028】
【表2】
【0029】これらのスラブをガス焼鈍炉で加熱し、予
備圧延でそれぞれ厚さ:180 mm、20mm、220 mmおよび25
0 mmのスラブとしたのち、さらに誘導加熱炉にて、1350
℃、1380℃、1400℃、1420℃および1450℃の各温度にそ
れぞれ加熱してインヒビター成分の溶体化後、粗圧延で
板厚:40mmのシートバーとし、引き続き仕上げ圧延を行
いそれぞれ板厚:2.6 mmの熱延板とした。かくして得ら
れた各熱延板について、実験1と同様に断面組織を観察
しバンド組織の占める割合を調査した。
【0030】熱延板のバンド組織の占める割合とスラブ
加熱温度SRTおよび加熱終了から粗圧延終了までの時
間tとの関係のグラフを、スラブ厚さごとにそれぞれ図
3、図4、図5および図6に示す。
【0031】これらの図3〜6から明らかなように、熱
延板にバンド組織をできるだけ残さないようにするため
には、加熱時のスラブ厚さが薄いほど、また加熱温度が
低いほど加熱終了から粗圧延終了までの時間tは短くす
ることが重要になる。
【0032】上記実験1および実験2の結果より、熱延
板のバンド組織の占める割合を5%以下とするためのス
ラブ加熱終了から粗圧延終了までの時間t(秒)は、誘
導加熱時のスラブ厚さ(mm)および誘導加熱炉からの抽
出時スラブ温度(℃)を用いて次式であらわすことがで
きる。 t(秒)≦a(mm)×SRT (℃)/1400(℃・mm/秒)
【0033】実験3 表3に示す成分組成になる鋼を180 t転炉および真空脱
ガス装置により溶製し、連続鋳造により厚さ:260 mm、
幅:1000mmのスラブとした。
【0034】
【表3】
【0035】これらのスラブをガス燃焼炉で加熱し、予
備圧延により厚さ:180 mm、200 mm、220 mmおよび250
mmのスラブとしたのち、さらに1370℃の温度にそれぞれ
誘導加熱炉およびガス燃焼炉を用いて加熱しインヒビタ
ー成分の溶体化後、粗圧延で30〜70mmの範囲で5種類の
厚さのシートバーとし、引き続いて仕上げ圧延を行いそ
れぞれ板厚:2.6 mmの熱延板とした。このとき、加熱終
了から粗圧延終了までの時間tは150 秒間とした。ま
た、スラブ厚さおよびシートバー厚さと粗圧延の累積圧
下率等を表4にまとめて示す。
【0036】
【表4】
【0037】かくして得られた各熱延板について、実験
1と同様に断面組織を観察しバンド組織の占める割合を
調査した。熱延板のバンド組織の占める割合と粗圧延で
の累積圧下率との関係のグラフを図7に示す。
【0038】図7より明らかなように、バンド組織をで
きるだけ残さないようにするためには、スラブ加熱には
誘導加熱を用いること、粗圧延での累積圧下率は75%以
上とすることがよいことが分る。
【0039】以上の実験結果より、熱延板組織にバンド
組織をできるだけ残さないようにするための熱間圧延条
件は、スラブを1350℃以上の温度に誘導加熱し、加熱終
了から累積圧下率75%以上の粗圧延終了までの時間t
(秒)を、 t≦a×SRT /1400(℃・mm/秒) ---(1) ここで a:誘導加熱時のスラブ厚さ(mm) SRT :誘導加熱炉からの抽出時スラブ温度(℃) とするとよいことが明らかとなった。
【0040】このように、加熱温度終了から75%以上の
累積圧下率の粗圧延終了までの時間やスラブ厚さおよび
スラブ加熱温度によってかかる効果の得られる理由につ
いては必ずしも明らかでないが、およそ以下のように考
えられる。
【0041】前記したように、粒径数mm以下の細粒によ
って構成された仕上げ焼鈍後の2次再結晶不良は熱延板
のバンド組織に起因し、これは粗圧延後のシートバーの
粗大粒が仕上げ圧延で再結晶されずに残ったものであ
る。板厚表層付近は仕上げ圧延のせん断歪みが大きく容
易に再結晶できるため、通常、バンド組織は熱延板の板
厚中心付近に見られる。なお、仕上げ圧延で多少の再結
晶は期待できるが、インヒビター強化に伴う高温スラブ
加熱で粗大化した結晶粒を仕上げ圧延で完全に破壊する
ことは極めて困難である。
【0042】ところでこの発明が対象とするようなSi含
有量の多い鋼は高温においてもほとんどがα相であり
(部分的にγ相も生成するがその比率は小さい)、熱間
変形後の再結晶は高温かつ歪み量が大きいほど進行する
ことが知られている。
【0043】ここで問題となるのはバンド組織の残りや
すい板厚中心部の温度であるが、図8に示すように、ス
ラブ厚さの厚い場合には表面温度と内部温度は異なる時
間依存性を持つ。またスラブ厚みに対しても表面温度は
輻射による抜熱が支配的であるためスラブ厚によってあ
まり変化しないのに対して、中心の温度はスラブ厚によ
って温度降下速度が変わる。そして珪素鋼は普通鋼に比
べて熱伝導率が小さいため、この傾向は更に顕著であ
る。
【0044】このため実際にオンラインで測定可能な表
面温度を指標として中心温度を管理することは極めて困
難である。図8からもわかるように中心温度は板厚に依
存する直線的な降下をするため、むしろ加熱終了からの
時間とスラブ厚によって管理することで良好な条件での
粗圧延が可能となったと考えられる。ここで、図8はス
ラブ厚さをパラメーターとする加熱終了からの空冷によ
る時間経過にともなうスラブ表面および中心の温度変化
を示すグラフである。
【0045】また、粗圧延の累積圧下率が75%未満の場
合には必要な歪み量が得られず仕上げ圧延前に粗大未再
結晶粒が残っていたためバンド組織の低減効果が得られ
なかったものと考えられる。
【0046】さらに、通常用いられるガス燃焼炉では雰
囲気加熱であり、スラブの表層温度が最も高く、内部の
温度が低いのに対して、誘導加熱ではスラブ自体が発熱
体であり安定して内部まで加熱が可能となるため、この
発明のように材料の中心温度を問題にする場合には好都
合であり、安定してバンド組織の低減効果が得られたも
のと考えられる。
【0047】つぎに、この発明の対象とするけい素鋼素
材の好適成分組成範囲について以下に述べる。
【0048】C:0.01〜0.10wt% (以下、%とする) Cは、熱間圧延、冷間圧延中の組織の均一微細化のみな
らず、ゴス方位の発達に有用な成分であり、少なくとも
0.01%は含有させることが好ましい。しかしながら、0.
10%を超えて含有させた場合には脱炭が困難となり、か
えってゴス方位に乱れが生じるので、その含有量の上限
は0.10%とすることが好ましい。
【0049】Si:2.0 〜5.5 % Siは、鋼板の比抵抗を高め鉄損の低減に有効に寄与する
が、含有量が5.5 %を超えると冷間圧延性が損なわれ、
一方2.0 %に満たないと比抵抗が低下するだけでなく、
2次再結晶、純化のために行われる最後仕上げ焼鈍中に
α−γ変態によって結晶方位のランダム化を生じ、十分
な鉄損低減効果が得られなくなる。したがって、その含
有量は2.0 〜5.5 %の範囲とすることが好ましい。
【0050】Mn:0.02〜0.12% Mnは、熱間脆化を防止するためには少なくとも0.02%は
含有させることが好ましいが、あまり多く含有させると
磁気特性を劣化させるので、含有量の上限は0.12%とす
ることがよい。
【0051】インヒビターとしてMnS, MnSe を用いる場
合S,Seのうちから選ばれる少なくとも1種:0.005 〜
0.06% S,Seは、方向性けい素鋼板の2次再結晶を制御するイ
ンヒビター形成成分として重要な成分である。抑制力の
観点からは、少なくとも0.005 %は含有させることが好
ましいが、0.06%を超えて含有させるとその効果が損な
われる。したがって、それらの含有量はそれぞれ0.005
〜0.06%の範囲とすることが好ましい。
【0052】インヒビターとしてAlN を用いる場合 Al:0.005 〜0.10%、N:0.004 〜0.015 % AlおよびNの含有量の範囲についても、MnS, MnSe の場
合と同様の理由により、上記の範囲とすることがよい。
【0053】なお、インヒビターとしては、上記したMn
S, MnSe およびAlN のうちから選ばれる1種または2種
以上を併用して用いることができる。また、インヒビタ
ー成分としては、上記したS,SeおよびAlのほか、Cu,
Sn,Sb, Mo, TiおよびBi等も有利に作用するので、それ
ぞれ小量併せ含有させることもできる。それらの成分の
含有量の好適範囲はそれぞれ、Cu, Sn:0.01〜0.15%、
Sb, Mo, Ti, Bi:0.005 〜0.1 %であり、これらの各イ
ンヒビター成分についても、1種もしくはそれ以上の複
合使用が可能である。
【0054】ついで、この発明の製造条件について以下
に述べる。上記好適成分組成に調整した溶鋼を連続鋳造
または造塊−分塊法により、所定厚さのスラブとしたの
ち、インヒビター成分であるS,SeやAlを完全に固溶す
るスラブ加熱を施す。そのスラブ加熱後、熱間圧延し、
1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により、
最終製品板厚とする。この鋼板に脱炭焼鈍を施したの
ち、鋼板表面にMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し
てから、2次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕
上げ焼鈍を施し一方向性けい素鋼板とする。なお、その
後に、りん酸塩系の上塗りコーティングを施すことは有
効である。
【0055】さて、上記工程において、この発明では前
記したように、良好な2次再結晶を得るのに不都合な、
熱延板でのバンド組織を減少させるため、誘導加熱によ
りスラブを1350℃以上に加熱し、加熱終了から累積圧下
率75%以上の粗圧延終了までの時間t(秒)を前記
(1)式を満たす範囲に調整することを必須とする。か
くして、安定して良好な磁気特性を有する一方向性けい
素鋼板が製造できることになる。
【0056】
【実施例】表5に示す成分組成になる鋼を180 t転炉お
よび真空脱ガス装置により溶製し、連続鋳造により厚
さ:220 mm、幅:1100mmのスラブとした。
【0057】
【表5】
【0058】これらのスラブをガス燃焼炉で加熱後、1
部は予備圧延なしで、また1部は予備圧延で厚さ:180
mmとしたのち、それぞれ誘導加熱炉で1420℃および1400
℃の温度に加熱するインヒビター成分の溶体化処理につ
づいて、粗圧延により厚さ:40mmおよび50mmのシートバ
ーにそれぞれ圧延し、引き続き仕上げ圧延で板厚:2.2
mmの熱延板とした。これらの各熱延板については、断面
組織を観察しバンド組織の占める割合を調査した。
【0059】さらにこれらの熱延板は熱延板焼鈍後、中
間焼鈍を挟む2回の冷間圧延により板厚:0.23mmの最終
板厚に圧延した。その後、湿水素雰囲気中で850 ℃・2
分間の脱炭焼鈍を施したのち、MgO を主成分とする焼鈍
分離剤を塗布してから水素雰囲気中で1200℃・10時間の
最終仕上げ焼鈍を施した。かくして得られた各製品の2
次再結晶不良率を超音波結晶粒測定法によるオンライン
計測器により調査するとともに、製品より抽出したサン
プルの磁気特性を調査した。
【0060】これらの製造条件および調査結果を表6に
まとめて示す。
【0061】
【表6】
【0062】表6から明らかなように、この発明の適合
例は熱延板でのバンド組織の占める割合が少なく、2次
再結晶不良率も低く、よって磁束密度、鉄損ともに良好
な値を示している。上記の結果は、この発明にしたがっ
てスラブ加熱−熱間圧延を行うことで2次再結晶不良率
が低く磁気特性に優れる一方向性けい素鋼板の製造がで
きることを示している。
【0063】
【発明の効果】この発明は、一方向性けい素鋼板の製造
にあたり、スラブを1350℃以上の温度に誘導加熱し、加
熱終了から累積圧下率75%以上の粗圧延終了までの時間
を調整することにより、熱延板の組織を改善するもので
あり、この発明によれば、2次再結晶不良率を低減で
き、高磁束密度でかつ低鉄損の磁気特性に優れる一方向
性けい素鋼板を安定し製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱延板に形成されたバンド組織を示す金属組織
写真である。
【図2】スラブ加熱温度をパラメーターとする熱延板の
バンド組織の占める割合と加熱終了から粗圧延終了まで
の時間との関係のグラフである。
【図3】熱延板のバンド組織の占める割合とスラブ加熱
温度および加熱終了から粗圧延終了までの時間との関係
のグラフである。(スラブ厚さ:180 mm)
【図4】熱延板のバンド組織の占める割合とスラブ加熱
温度および加熱終了から粗圧延終了までの時間との関係
のグラフである。(スラブ厚さ:200 mm)
【図5】熱延板のバンド組織の占める割合とスラブ加熱
温度および加熱終了から粗圧延終了までの時間との関係
のグラフである。(スラブ厚さ:220 mm)
【図6】熱延板のバンド組織の占める割合とスラブ加熱
温度および加熱終了から粗圧延終了までの時間との関係
のグラフである。(スラブ厚さ:250 mm)
【図7】熱延板のバンド組織の占める割合と粗圧延での
累積圧下率との関係のグラフである。
【図8】スラブ厚さをパラメーターとする加熱終了から
の空冷による時間経過にともなうスラブ表面および中心
の温度変化を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−162725(JP,A) 特開 平3−115525(JP,A) 特開 平7−118747(JP,A) 特開 平7−138641(JP,A) 特開 昭63−100128(JP,A) 特開 平5−50106(JP,A) 特開 平4−124218(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.02wt% 以上、0.10wt% 以下および
    Si:2.0 wt% 以上、5.5 wt% 以下を含有するけい素鋼ス
    ラブを加熱後、熱間圧延し、ついで熱延板焼鈍を施した
    のち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を
    行って最終板厚に圧延し、その後、脱炭焼鈍を施したの
    ち、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼
    鈍を施す一連の工程によって一方向性けい素鋼板を製造
    するにあたり、 上記スラブを誘導加熱により1350℃以上の温度に加熱
    し、そのスラブ加熱終了から累積圧下率75%以上の粗
    圧延終了までの時間t(秒)につき、下記式(1)を満
    たす範囲に調整することを特徴とする一方向性けい素鋼
    板の製造方法。 〔記〕 t(秒)≦a×SRT /1400(℃・mm/秒) ここで a:誘導加熱時のスラブ厚さ(mm) SRT :誘導加熱炉からの抽出時スラブ温度(℃)。
  2. 【請求項2】 熱延板断面において、圧延方向に引き延
    ばされた未再結晶粒を含むバンド組織の占める割合が10
    %以下であることを特徴とする請求項1に記載の一方向
    性けい素鋼板の製造方法。
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