JP3832160B2 - 成形性および表面性状が優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

成形性および表面性状が優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用部品、建築用材料やガードレール、鋼製家具などの構造材や配電盤などの電気機器の素材として好適な、成形性および表面性状が優れた高強度熱延鋼板とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高強度熱延鋼板には強度の安定確保とともに高加工性が求められている。しかし、従来の高強度熱延鋼板では強度の確保のために0.1wt%以上のCが添加されており、これが第二相の生成を通じて、しばしば延性劣化の原因となっていた。また、例えばホイールディスクやシャーシなどの足廻り部品、バンパー、トラック内板などの自動車用部品、キャビネットやロッカーなどの鋼製家具、建築用材料、配電盤などの電気機器に使用される高強度熱延鋼板は、高加工性に加えて表面品質に優れていることが要求される。しかし、0.1wt%以上のC含有量ではスラブ割れが不可避であるため、従来鋼ではスラブ割れに起因する表面欠陥がしばしば問題となっていた。
【0003】
ここで、延性の向上および表面性状の向上のためにはC含有量を低減することが有効であるが、この場合C含有量の低減化による強度低下を補償する必要がある。そのためには、C量で変態組織を制御するような第二相による強化は利用できないことから、NbやTiによる析出強化を利用することになる。しかし、Nbの単独添加では540MPa以上の高強度を確保することは困難であり、したがって、少なくともTi添加が必須となる。
【0004】
低C鋼にTiを添加して強度を確保する方法として、特開平5−5156号には、Tiを添加した鋼にSiを添加してTiCの析出を促進させることで、鋼中Cを完全に固定してIF化し、低降伏比とともに高延性を実現した成形加工用高強度熱延鋼板およびその製造方法が開示されている。しかし、この技術は二次加工脆性改善を目的としてBの添加を必須としており、このため不可避的にアシキュラーフェライトが生成して局部延性が不十分となる。さらに、赤スケの原因となるSiを多量に添加するため、良好な表面性状が得られない。
【0005】
また、特開昭58−39731号には直送圧延により高強度熱延鋼板を製造する方法が開示されている。しかし、この技術ではN量については何ら規制していないため、Tiの窒化物による凝固組織の微細化が達成されない場合があり、このため圧延前のγ粒は粗大であり、熱延板が整粒となりにくいとともに、熱間延性が低く表面欠陥が発生しやすい。したがってこの技術では安定した高延性が得られないとともに、良好な表面性状も得られない。
【0006】
また、低C鋼にTiを添加した表面性状に優れる高強度熱延鋼板を得る方法として、例えば特開昭51−88420号には、Tiを0.02〜0.12wt%添加した鋼にMnを1.8〜2.5wt%添加し、さらに転炉溶製する際に吹止めC量を0.03〜0.08wt%と低く抑えることで、スリバー疵を低減した表面性状に優れる高強度熱延鋼板の製造方法が開示されている。この技術の骨子は、転炉溶製時の吹止めC量を低くし一時的にO量を高めることでAlを浮上させ、且つ多量のMnを添加することでTi酸化物の凝集粗大化を抑制し、これらによりスリバー疵の発生を抑制する点にある。しかし、1.8wt%以上という多量のMn添加は低温変態相の生成を招くため巻取温度依存性の増大が不可避であり、このため安定した高延性を確保できない。
【0007】
また、特開平07−34137号には、Cを0.05〜0.10wt%、Siを0.5〜2.0wt%、Tiを0.02〜0.08wt%添加した鋼を熱間圧延する際に、その加熱工程における均熱温度、均熱温度変動幅および均熱時間を制御することにより、熱間圧延および酸洗を経た後の鋼板に縞状スケール疵を発生させない高強度熱延鋼板の製造方法が開示されている。この技術の骨子は、鋼片の加熱温度を最もファイヤライトの発生し易い温度帯に設定して積極的にSiスケールを生成させるとともに、均熱中の温度変動幅を15℃以内、均熱時間を30〜90分に制御することで部分剥離を起こさない均一なSiスケールを鋼片の全面に安定して形成させることにある。
【0008】
しかし、鋼片の表裏両面においてSiスケールを均一に生成させるためには、加熱炉内全体の均熱温度変動幅を15℃以内という狭レンジに制御する必要がある。このため必要以上に厳密な加熱条件管理を行わない限り、部分剥離を起こさない均一なSiスケールを生成させることは困難であり、したがって、事実上縞状スケール疵の発生は避けられない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、高延性でしかも材質安定性に優れた高加工性高強度熱延鋼板とその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高延性でしかも材質安定性に優れるとともに、表面性状にも優れた高加工性高強度熱延鋼板とその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、従来よりも低いC量の鋼にTi,Mnを複合添加した熱延鋼板では、TiとMnの添加量に良好な強度−延性バランスが安定的に得られる最適範囲が存在することを見い出した。具体的には、Ti添加量の範囲に応じてTiとMnの添加量を特定の条件に規制することにより、良好な強度−延性バランスを有する高加工性高強度熱延鋼板が得られることが判った。また、このようにTiとMnの添加量を特定の条件に規制することに加えて、特にSol.Al量およびS量を低減させることにより表面性状にも優れた高強度熱延鋼板が得られることが判った。さらに、このような成分組成の鋼板を製造する際の熱間圧延工程において、粗バーを加熱また保熱することによって仕上げ圧延スタンド列入側の材料温度を特定の範囲に規制することにより、さらなる高延性が得られることを見い出した。
【0011】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
1 ]C:0.05〜0.09wt%、Si:0.05wt%以下、P:0.02wt%以下、S:0.01wt%以下、Sol.Al:0.01〜0.1wt%、N:0.001〜0.008wt%を含有し、さらに0.01〜0.16wt%のTiおよび0.6〜2.0wt%のMnを、Ti含有量の範囲に応じて下記(1)式および(2)式(但し、Ti:Ti含有量、Mn:Mn含有量)を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする成形性が優れた高強度熱延鋼板。
Ti<0.11wt%において
−2.22×Ti+1.2≧Mn≧−2.22×Ti+0.4 …(1)
Ti≧0.11wt%において
36.00×Ti−2.9≧Mn≧36.00×Ti−3.8 …(2)
【0012】
2 ]C:0.05〜0.09wt%、Si:0.05wt%以下、P:0.02wt%以下、S:0.005wt%以下、Sol.Al:0.01〜0.05wt%、N:0.001〜0.008wt%を含有し、さらに0.01〜0.16wt%のTiおよび0.6〜2.0wt%のMnを、Ti含有量の範囲に応じて下記(1)式および(2)式(但し、Ti:Ti含有量、Mn:Mn含有量)を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする成形性および表面性状が優れた高強度熱延鋼板。
Ti<0.11wt%において
−2.22×Ti+1.2≧Mn≧−2.22×Ti+0.4 …(1)
Ti≧0.11wt%において
36.00×Ti−2.9≧Mn≧36.00×Ti−3.8 …(2)
【0013】
[3] 上記[1]または[2]に記載の高強度熱延鋼板において、0.1wt%以下のNb、0.1wt%以下のV、0.1wt%以下のZr、1.0wt%以下のCr、0.01wt%以下のCa、1.0wt%以下のMo、1.0wt%以下のNi、1.0wt%以下のCuの中から選ばれる1種以上の元素を、さらに含有することを特徴とする高強度熱延鋼板。
【0014】
[4] 上記[1]、[2]または[3]に記載の成分組成を有する鋼を熱間圧延する際に、粗圧延後、粗バーを加熱または保熱して仕上げ圧延スタンド列入側での材料温度を1000℃以上1100℃以下とし、Ar以上の温度で仕上げ圧延を行った後、650℃以下で巻取ることを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細と限定理由を説明する。
まず、本発明の熱延鋼板の化学成分の限定理由について説明する。
C: 延性を劣化させる第二相を低減するために上限を0.09wt%とする。また、析出強化による鋼板の強度確保のために下限を0.05wt%とする。Si: 過剰な量を含有すると赤スケール(特に、不均一なSiスケール)の発生により表面性状の劣化を招くため、その含有量は0.05wt%以下とする。
【0016】
Ti,Mn: これらは本発明において最も重要な元素であり、強度の確保のために添加されるものであるが、上述したようにその添加量のバランスが重要である。本発明では、析出強化による鋼板の強度確保のためにTi添加量の下限を0.01wt%とする。一方、Tiを0.16wt%を超えて添加するとフェライト粒内に析出したTiCが増加し延性が劣化してしまうので、その添加量の上限を0.16wt%とする。また、Mnは過剰に添加するとAr点が低下し、また、同一温度であったとしてもγ中のTiCの溶解度が上昇するので、Ar変態後のTiの析出強化能が必要以上に増大し、延性が劣化してしまう。このため、その添加量の上限を2.0wt%とする。一方、Mn添加量の下限は0.6wt%とする。
【0017】
さらに、Ti含有量の範囲に応じて下記(1)式および(2)式(但し、Ti:Ti含有量、Mn:Mn含有量)を満足するようにTiとMnを添加した場合に優れた強度−延性バランスが得られることから、TiとMnの含有量をこの(1)式および(2)式の範囲に規定する。
Ti<0.11wt%において
−2.22×Ti+1.2≧Mn≧−2.22×Ti+0.4 … (1)
Ti≧0.11wt%において
36.00×Ti−2.9≧Mn≧36.00×Ti−3.8 … (2)
【0018】
上記Ti,Mn量の最適範囲が得られた実験結果を以下に示す。この実験では、0.05〜0.09wt%のCを含有し、且つ種々の量のTiとMnを含有する鋼を鋳造後、熱間圧延を行って板厚が約2.5mmの熱延鋼板を作製し、この熱延鋼板の板厚を両面研削により1.6mmとした後、引張試験を行った。この引張試験により得られた強度−延性バランス(引張強度×全伸び[MPa・%])とTi,Mn量との関係を図1に示す。同図によれば、上記(1)式および(2)式で規定されるTi,Mn量の範囲において強度−延性バランスが最も高くなることが判る。したがって、Ti,Mn量を適正範囲内に調整すれば、所定の強度レベルを確保しつつ、高延性を有する熱延鋼板が得られる。
【0019】
このようにTi,Mn量の適正化により優れた強度−延性バランスが得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のような理由が考えられる。すなわち、Tiは鋼中でTi析出物を形成して微細析出物となることから、Mnをあまり添加せずにTi添加で強度を確保した場合、微細析出物による粒成長抑制効果の他にTi析出物の微細分散強化量が多くなり、延性が劣化してしまう。逆に、Mnを添加し過ぎてもγ中のTiCの溶解度が上昇し、且つAr変態点の低下によりTi析出物の微細分散強化能が増大するため、延性が劣化すると考えられる。したがって、高延性を確保するためにはTi,Mn量を上記(1)式および(2)式の範囲に適正化することが必要である。
【0020】
P: 過剰な量を含有すると粒界脆化を招くので、その含有量を0.02wt%以下とする。
S: 鋼中Sは粒界で低融点物質を形成して熱間延性を低下させ、表面品質を劣化させることに加え、高温でTiと結合して析出物を形成し、強度に寄与する有効Ti量を低減させる有害元素であり、過剰な量を含有すると伸びフランジ性を劣化させるため、その含有量はできる限り低減することが望ましい。このため、その含有量は0.01wt%以下とするが、特に優れた表面性状が要求される場合は、熱間延性を低下させスラブ割れを引き起こす連続鋳造後の鋼片の降温時に析出するTiS量を低減する必要があるので、その含有量の上限を0.005wt%とする。
【0021】
Sol.Al: 脱酸剤として必要な元素であり、そのためには0.01wt%以上は必要であるが、過剰な量を含有すると延性を劣化させるので、その含有量の上限を0.1wt%とする。
また、本発明では優れた表面性状を得る上でSol.Al量の規制が重要であり、特に優れた表面性状が要求される場合はSol.Al量の上限を0.05wt%とする。Sol.Al量が0.05wt%を超えると、以下に述べるような理由により熱間延性が低下し、表面欠陥の発生率が増加する。
【0022】
従来鋼ではCが少なくとも0.1wt%程度含有されていることからスラブ割れは不可避であったが、本発明の熱延鋼板はC含有量を低減したため従来鋼のようなスラブ割れに起因する表面欠陥は減少するものと思われた。ところが、実際はC含有量を低減しただけでは表面欠陥は減少しなかった。そこで、本発明者らは表面欠陥に及ぼす合金元素の影響を調査し、その結果、Tiが多量に添加されている本発明の熱延鋼板ではSol.Al量を0.05wt%以下まで低減させることにより表面欠陥の発生率を顕著に低減できることを突き止めた。この理由は必ずしも明らかではないが、連続鋳造時の鋼片の降温時にTiSがAlを核に析出するため、Al量を低減して微細Al量を低減すればオーステナイト粒界へのTiSの多量析出による熱間延性の劣化を防止できるためと考えられる。
したがって、本発明の熱延鋼板では、上述したSi量およびS量の規制とこのSol.Al量の規制により、優れた表面性状が得られる。
【0023】
N: 本発明鋼板を直送圧延により製造する場合には、圧延前のγ粒の粗大化を防止する必要があり、圧延前のγ粒の細粒化のためには凝固時に析出する微細TiNを利用するのが有効である。しかし、微量のNでは上記のようなγ粒の粗大化抑制効果が得られないので、その含有量の下限を0.001wt%とする。また、Nが鋼中に過剰に存在するとTiNが粗大に生成し、このためγ粒の粗大化抑制効果が得られないので、その含有量の上限を0.008wt%とする。
【0024】
さらに、本発明鋼板には必要に応じて、強度確保のための添加元素として0.1wt%以下のNb、0.1wt%以下のV、0.1wt%以下のZr、延性向上のための添加元素として1.0wt%以下のCr、0.01wt%以下のCa、耐食性向上のための添加元素として1.0wt%以下のMo、1.0wt%以下のNi、1.0wt%以下のCuなどの中から選ばれる元素の1種以上を添加してもよい。
本発明鋼板は実質的に上述した各成分とFeとからなり、したがって不可避的不純物などの他の元素が本発明の効果を損なわない限度で微量含まれることは妨げない。
【0025】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造法では、上述した成分組成を有する鋼を熱間圧延する際に、粗バーの仕上げ圧延スタンド列入側の材料温度、仕上げ温度、巻取温度を以下のように規定する。
仕上げ圧延スタンド列入側の材料温度: Ti析出物を結晶粒微細化に有効に利用するためには、圧延中にTi析出物を安定して析出させる必要がある。これには粗圧延により得られた粗バーを加熱または保熱し、仕上げ圧延スタンド列入側の材料温度(粗バー温度)を1000℃以上とすることが有効である。
【0026】
従来の圧延では仕上げ圧延スタンド列入側の材料温度にバラツキがあり、特に低温で仕上げ圧延を開始した場合には圧延初期に析出物が析出を開始し、これが再結晶時に粒内に取り込まれることから微細析出物は粒成長抑制に寄与しない。これに対して、上記のように仕上げ圧延スタンド列入側の粗バー温度を一定以上とすることにより、圧延中の微細析出量を安定化させ、結晶粒のより一層の安定した微細化を図ることができ、このためさらなる高延性を図ることが可能となる。また、特に直送圧延では仕上げ圧延スタンド列入側の材料温度が低温側にバラツキを生じ易いため、粗バーの加熱または保熱は特に有効である。
【0027】
上記のような作用効果を得るためには、粗バーの加熱または保熱によって仕上げ圧延スタンド列入側の材料温度を1000℃以上とする必要があり、1000℃未満では十分な効果は得られない。
一方、この仕上げ圧延スタンド列入側の材料温度が高過ぎると圧延前のγ粒が粗大化し、またスケールが厚くなってスケール欠陥が発生するため、その上限温度を1100℃とする。
【0028】
なお、粗バーの加熱または保熱は、誘導加熱、直接通電加熱、バーナー加熱などの任意の方法で行うことができる。また、粗バーの保熱では、粗バーをコイルボックス内に巻取って保熱したり、或いは粗圧延スタンド列と仕上げ圧延スタンド列との間に設置されたトンネル炉を用いて保熱するようにしてもよい。
また、コイル長手方向での材質のバラツキを防止するため、仕上げ圧延スタンド列入側の材料温度の粗バー長手方向でのバラツキは±30℃以内とすることが望ましい。
【0029】
仕上げ温度(FT): 仕上げ圧延がフェライト域での圧延になってしまうと、粗大なα展伸粒が生成して延性が劣化してしまうため、仕上げ温度はAr点以上とする。但し、仕上げ温度が高過ぎると変態前にγ粒が再結晶して粗大化してしまうことから、仕上げ温度は900℃以下とすることが好ましい。
巻取温度(CT): 巻取温度が高過ぎると析出物の粗大化により結晶粒が粗大化してしまうことから、その上限を650℃とする。また、巻取温度が低過ぎると鋼板の形状が劣化してしまうので400℃以上とすることが好ましい。
【0030】
また、本発明の鋼板は、通常のスラブ再加熱圧延法(鋳造されたスラブを常温まで冷却した後、再加熱して圧延する方法)による製造も勿論可能であるが、直送圧延法若しくは鋳造後のスラブ温度がAr点未満とならないうちに加熱炉で再加熱して圧延する熱片再加熱圧延法により製造した場合には、析出強化として作用する元素がほとんどすべて固溶状態で圧延され、ほとんど総ての析出物が微細析出して細粒化に寄与することができるため、特に強度−延性バランスに優れた高強度熱延鋼板を安定して製造することができる。したがって、本発明の効果は、直送圧延法若しくは鋳造後のスラブ温度がAr点未満とならないうちに加熱炉で再加熱して圧延する熱片再加熱圧延法により製造される鋼板において最も顕著に発揮される。
【0031】
本発明の対象となる熱延鋼板には、黒皮熱延鋼板の他に酸洗熱延鋼板や熱延鋼板に各種めっき(例えば、亜鉛めっき、錫めっきなど)、化成処理などを施した表面処理鋼板が含まれる。
また、素材となる鋼の溶製は転炉、電気炉のいずれでもよく、また、薄スラブを使用しての製造も可能であり、その場合は粗圧延は省略することもできる。
また、粗圧延後、仕上圧延前に粗バーどうしを接合し、連続して圧延を行う、所謂連続圧延を行っても何ら問題はない。
さらに、本発明により得られる熱延鋼板は、スキンパスを施してもその効果が失われることはないが、その場合の伸長率は5%以下が好ましい。
【0032】
【実施例】
[実施例1]
表1に示される鋼種(1)〜(11)の化学成分を有する鋼を溶製してスラブに鋳造後、このスラブを冷却することなくそのまま直送圧延するか、または一旦室温まで冷却したスラブを1250℃にて3時間均熱した後、圧延を行った。この熱間圧延に際しては、仕上げ温度:880℃、巻取温度:600℃とし、板厚2.5mmの熱延鋼板を製造した。なお、この実施例では、仕上げ圧延スタンド列入側での粗バーの加熱または保熱を行うことなく、熱間圧延を実施した。このようにして製造した熱延鋼板からL方向にJIS5号引張試験片を採取して引張試験を行い、得られた各熱延鋼板の強度−延性バランスを評価した。その結果を表2に示す。
【0033】
表2によれば、本発明の成分条件を満足する鋼種(1)、(2)、(4)、(6)、(7)、(9)〜(11)を用いたNo.1、No.2、No.4、No.5、No.7〜No.9、No.11〜No.13の本発明例は、直送圧延およびスラブ再加熱圧延のいずれで製造された場合でも高延性を示し、優れた強度−延性バランスを有していることが判る。これに対して、TiおよびMnの添加量バランスが本発明の成分条件を外れた鋼種(3)、(5)、(8)を用いたNo.3、No.6、No.10の比較例は高延性を確保することができず、強度−延性バランスに劣っている。
なお、No.14の比較例は、本発明の成分条件を満足する鋼種(6)を用いたものであるが、仕上げ温度が適切でないため高延性が十分に確保できず、強度−延性バランスが低下している。
【0034】
【表1】
Figure 0003832160
【0035】
【表2】
Figure 0003832160
【0036】
[実施例2]
表1に示した本発明の成分条件を満足する鋼種(1)、(2)、(4)、(6)、(7)、(9)〜(11)の化学成分を有する鋼を溶製してスラブに鋳造後、このスラブを冷却することなくそのまま直送圧延するか、または一旦室温まで冷却したスラブを1250℃にて3時間均熱した後、圧延を行った。この熱間圧延に際しては、粗圧延後の粗バーに対して加熱または保熱を行い、仕上げ圧延スタンド列入側の粗バー温度を本発明の製造方法の範囲内である1000℃〜1100℃とした後に仕上げ圧延を行い、熱延鋼板を製造した。なお、その他の熱間圧延条件は実施例1と同様とした。
【0037】
このようにして製造した熱延鋼板からL方向にJIS5号引張試験片を採取して引張試験を行い、得られた各熱延鋼板の強度−延性バランスを評価した。その結果を表3に示す。同表によれば、本発明の製造条件である粗バーの加熱または保熱を行って仕上げ圧延スタンド列入側での粗バー温度を制御することにより、特に優れた強度−延性バランスを有する熱延鋼板を製造できることが判る。
【0038】
【表3】
Figure 0003832160
【0039】
[実施例3]
表4に示した本発明条件を満足する鋼種(12)〜(16)の化学成分を有する鋼を溶製してスラブに鋳造後、このスラブを冷却することなくそのまま直送圧延するか、または一旦室温まで冷却したスラブを1250℃にて3時間均熱した後、圧延を行った。この熱間圧延に際しては、粗圧延後の粗バーに対して加熱または保熱を行い、仕上げ圧延スタンド列入側の粗バー温度を本発明の製造方法の範囲内である1000℃〜1100℃とした後に仕上げ圧延を行い、熱延鋼板を製造した。なお、その他の熱間圧延条件は実施例1と同様とした。
【0040】
このようにして製造した熱延鋼板からL方向にJIS5号引張試験片を採取して引張試験を行い、得られた各熱延鋼板の強度−延性バランスを評価した。また、熱延鋼板を一定条件にて酸洗した後、コイルT,M,Bの各位置から長さ450mm(L方向)×幅450mmのサンプルを採取し、これらサンプル表裏面に認められるラップ状疵やスケール残り部の外周をマーキングした後、画像解析によりその面積を算出し、その値をサンプル総面積で除した値をコイルT,M,Bで平均化したものを表面疵発生率として表面性状を評価した。すなわち、この値が小さいほど表面疵発生が少なく、表面性状に優れた鋼板であることを示している。それらの結果を表5に示す。
【0041】
同表によれば、SまたはSol.Alが比較的多量に含有されている鋼種(15)、(16)を用いたNo.4、No.5の鋼板では表面疵発生率が高いが、SとSol.Alの含有量がともに少ない鋼種(12)〜(14)を用いたNo.1〜No.3の鋼板では表面疵発生率が低く、優れた表面性状を有する熱延鋼板が得られることが判る。
【0042】
【表4】
Figure 0003832160
【0043】
【表5】
Figure 0003832160
【0044】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の高強度熱延鋼板は高延性が確保され、強度−延性バランスと材質安定性に優れている。また、特にSol.Al量とS量を低減させた本発明の高強度熱延鋼板は、強度−延性バランスと材質安定性に優れるだけでなく、優れた表面性状を有している。このため本発明の高強度熱延鋼板は、自動車用部品や建築用ガードレール等の構造材として特に有用である。
また、本発明の製造方法によれば、特に優れた強度−延性バランスを有する熱延鋼板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板のMn,Tiの添加量と強度−延性バランスとの関係を示すグラフ

Claims (4)

  1. :0.05〜0.09wt%、Si:0.05wt%以下、P:0.02wt%以下、S:0.01wt%以下、Sol.Al:0.01〜0.1wt%、N:0.001〜0.008wt%を含有し、さらに0.01〜0.16wt%のTiおよび0.6〜2.0wt%のMnを、Ti含有量の範囲に応じて下記(1)式および(2)式(但し、Ti:Ti含有量、Mn:Mn含有量)を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする成形性が優れた高強度熱延鋼板。
    Ti<0.11wt%において
    −2.22×Ti+1.2≧Mn≧−2.22×Ti+0.4 …(1)
    Ti≧0.11wt%において
    36.00×Ti−2.9≧Mn≧36.00×Ti−3.8 …(2)
  2. :0.05〜0.09wt%、Si:0.05wt%以下、P:0.02wt%以下、S:0.005wt%以下、Sol.Al:0.01〜0.05wt%、N:0.001〜0.008wt%を含有し、さらに0.01〜0.16wt%のTiおよび0.6〜2.0wt%のMnを、Ti含有量の範囲に応じて下記(1)式および(2)式(但し、Ti:Ti含有量、Mn:Mn含有量)を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする成形性および表面性状が優れた高強度熱延鋼板。
    Ti<0.11wt%において
    −2.22×Ti+1.2≧Mn≧−2.22×Ti+0.4 …(1)
    Ti≧0.11wt%において
    36.00×Ti−2.9≧Mn≧36.00×Ti−3.8 …(2)
  3. 0.1wt%以下のNb、0.1wt%以下のV、0.1wt%以下のZr、1.0wt%以下のCr、0.01wt%以下のCa、1.0wt%以下のMo、1.0wt%以下のNi、1.0wt%以下のCuの中から選ばれる1種以上の元素を、さらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度熱延鋼板。
  4. 請求項1、2または3に記載の成分組成を有する鋼を熱間圧延する際に、粗圧延後、粗バーを加熱または保熱して仕上げ圧延スタンド列入側での材料温度を1000℃以上1100℃以下とし、Ar以上の温度で仕上げ圧延を行った後、650℃以下で巻取ることを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
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