JP3697573B2 - コイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板の製造方法。 - Google Patents

コイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板の製造方法。 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に自動車用途に好適な熱延鋼板であって、残留オーステナイトを含有するコイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用の構造部材に対しては、軽量化や衝突安全性向上のための高強度化の要望が強く、このため高張力鋼板の適用が拡大しつつある。しかしながら、高張力鋼板は軟質鋼板に比べ加工性に劣るため、厳しい加工性の要求される部材への適用は困難である。そこで、厳しい加工に耐える高張力鋼板として、残留オーステナイトの変形時のTRIP(変態誘起塑性)現象を利用して延性を高める、いわゆる残留オーステナイト鋼が注目されるようになった。
ところが、残留オーステナイト高強度熱延鋼板を実際に製造すると、コイルの全長、全幅に亘って材質が大きく変動するという問題がある。この材質変動は、製造時のランナウト上での長手方向、幅方向の温度変動によって生じると考えられる。
【0003】
このような材質の変動を回避するために、特開平6−228652号公報や特開平6−228653号公報には、ランナウト冷却中の鋼帯の上面からの冷却能と下面からの冷却能の比を制御することで、ランナウト上における鋼板の長手方向の温度のバラツキを抑制する方法が開示されている。
しかし、この技術では強度や伸びの下限値を満足し、歩留まりを向上させることはできるものの、鋼板内の材質の変動自体は低減されず、コイルの前後端で同じ部品をプレスしても、スプリングバック量の違い等により成形性が安定しないのが現状である。さらには、伸びフランジ性のバラツキは抑制できない。
【0004】
また、特開平6−306537号公報には、ランナウト上の冷却において、鋼板幅方向両端部の注水量を低減し、幅方向の温度偏差を抑える方法が開示されている。しかし、この技術では、材質変動のうち強度−延性バランス(引張強さ×全伸び)≧20000(MPa・%)を確保し、強度のバラツキの範囲を50MPa以内に抑えることができるものの、伸びについてはバラツキを十分に低減することができず、プレス後に割れが生じる場合がある。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
このように従来では、コイルの全長及び全幅に亘っての材質変動が低減された残留オーステナイト鋼板を製造できる技術は見当たらない。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、コイルの全長及び全幅に亘って材質が均一であり、コイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
鋼板長手方向及び幅方向での材質変動は、ランナウトテーブル上から熱延巻取り後にかけて、オーステナイト中にCが十分濃縮する前に生成するベイナイト及びマルテンサイト量が変化するために起こる。このベイナイト及びマルテンサイトの生成期間が長いほど、これらの相の生成量に対する温度変動の影響が大きい。このような問題に対して本発明者らは鋭意研究を重ね、Cがオーステナイトに十分濃縮するまでベイナイト及びマルテンサイトの変態を抑制し、ベイサイト及びマルテンサイトの生成期間を短縮する作用を有する添加元素として、Moが極めて有効であることを見出した。さらに、Crを複合添加した場合に、Mo添加の効果がより一層促進されることも同時に見出した。
【0007】
また、このMo添加鋼またはMo−Cr複合添加鋼を熱間圧延する際に、圧延後直ちに50℃/秒以上の冷却速度でMo量、Cr量、Mn量により決まる温度範囲まで冷却し、3〜15秒放冷後、再び15℃/秒〜100℃/秒の冷却速度で巻取温度まで冷却することにより、オーステナイトのベイナイト及びマルテンサイトへの変態が抑制され、放冷中にCのオーステナイトへの濃化が迅速に行われることで材質安定化効果が顕著となることが判った。
【0008】
以下、これらの点を実験結果に基づき説明する。
C≒0.12mass%、Si≒1.1mass%、Mn≒1.0mass%、P≒0.010mass%、S≒0.001mass%、Al≒0.040mass%、N≒0.0030mass%を含む鋼と、この鋼にMoを0.3mass%添加した鋼をそれぞれ溶製し、加熱温度1200℃、仕上温度830℃で熱間圧延を行った。仕上圧延後直ちに80℃/秒の冷却速度で700℃まで冷却後、7秒間放冷し、さらに20℃/秒の冷却速度で冷却し、470℃で巻き取った。製造された熱延鋼帯のサイズは板幅1050mm、板厚2.0mmである。得られた鋼板の長手方向中央部における幅方向のTS、El、λの変化を図1に示す。
図1によれば、Moを添加しない鋼では幅方向でTS、El、λの変動が大きいのに対し、Mo添加鋼では幅方向の材質変動が低減していることが判る。
【0009】
次に、C≒0.12mass%、Si≒1.1mass%、Mn≒1.0mass%、P≒0.010mass%、S≒0.001mass%、Al≒0.040mass%、N≒0.0030mass%、Cr≒0.2mass%を含む鋼にMoを種々の添加量で添加した鋼を溶製し、加熱温度1200℃、仕上温度840℃で熱間圧延を行った。仕上圧延後直ちに100℃/秒の冷却速度で温度T(℃)まで冷却し、5秒間放冷後、再び20℃/秒の冷却速度で冷却し、470℃で巻き取った。得られた熱延コイルの幅方向でのTSの最大値と最小値の差を、前記冷却停止温度(=中間放冷温度)T(℃)とMo量に対してプロットしたものを図2に示す。
【0010】
図2中の“○”は、幅方向のTSの最大値と最小値の差が20MPa未満、“△”は20〜80MPa、“×”は80MPa超であることを示す。同図に示されるように、Mo量[%Mo]、Cr量[%Cr]、Mn量[%Mn]に応じて、冷却停止温度(=中間放冷温度)Tを{1−([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(630−10[%Mn])℃以上、{1+([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(730−10[%Mn])℃以下の温度範囲とすることで、幅方向の材質変動を低減できることが判る。
【0011】
この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。すなわち、熱延後急冷し、フェライト+オーステナイトの2相域で放冷することでCをオーステナイト中に濃縮させる。このとき、通常用いられる焼入れ元素であるMnはAr3変態点を下げることから、Mnの増大によってこのフェライト+オーステナイトの2相域の最適放冷温度は低温側にシフトする。これに本発明の特徴であるMoを添加した場合、Moはオーステナイトをさらに安定化させることから、Mo添加量の増大に伴い冷却停止温度の下限は低下する。一方、Moはパーライト変態を抑制することから、冷却停止温度が高くても加工性を劣化させるパーライトの生成が阻害されるため、Mo添加量の増大に伴い冷却停止温度の上限は上昇する。
さらに、Crを複合添加するとMo添加による上記効果はより一層顕著なものとなる。しかし、Cr単独ではこのような効果は認められない。
【0012】
本発明は上記の知見に基づきなされたものであって、その特徴は以下のとおりである。
【0014】
1 実質的に、C:0.05〜0.18 mass %、Si:0.7〜1.5 mass %、Mn:0.6〜1.8 mass %、P:0.04 mass %以下、S:0.005 mass %以下、Al:0.01〜0.10 mass %、N:0.005 mass %以下、Mo:0.05〜1.5 mass %を含有し、残部がFeからなる成分組成を有する鋼を熱間圧延し、オーステナイト単相域で仕上圧延を終了する工程と、
仕上圧延後、直ちに50℃/秒以上の冷却速度で、(1−[%Mo]/5)×(630−10[%Mn])℃以上、(1+[%Mo]/5)×(730−10[%Mn])℃以下の温度範囲(但し、[%Mo]:鋼板中のMo含有量(mass%)、[%Mn]:鋼板中のMn含有量(mass%))まで冷却した後、3〜15秒放冷する工程と、
放冷された鋼板を引き続き15℃/秒以上100℃/秒以下の冷却速度で冷却して、350〜550℃の温度範囲で巻取る工程と、
を有することを特徴とするコイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板の製造方法。
【0015】
2 実質的に、C:0.05〜0.18 mass %、Si:0.7〜1.5 mass %、Mn:0.6〜1.8 mass %、P:0.04 mass %以下、S:0.005 mass %以下、Al:0.01〜0.10 mass %、N:0.005 mass %以下、Mo:0.05〜1.5 mass %、Cr:0.05〜1.5 mass %を含有し、残部がFeからなる成分組成を有する鋼を熱間圧延し、オーステナイト単相域で仕上圧延を終了する工程と、
仕上圧延後、直ちに50℃/秒以上の冷却速度で、{1−([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(630−10[%Mn])℃以上、{1+([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(730−10[%Mn])℃以下の温度範囲(但し、[%Mo]:鋼板中のMo含有量(mass%)、[%Mn]:鋼板中のMn含有量(mass%)、[%Cr]:鋼板中のCr含有量(mass%))まで冷却した後、3〜15秒放冷する工程と、
放冷された鋼板を引き続き15℃/秒以上100℃/秒以下の冷却速度で冷却して、350〜550℃の温度範囲で巻取る工程と、
を有することを特徴とするコイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明法における鋼の成分組成及び製造条件の詳細をその限定理とともに説明する。
まず、鋼の成分組成についての限定理由について説明する。
C:Cは強度を上昇させる元素であるとともに、オーステナイト中に濃縮してオーステナイトの安定性を高める作用を有している。しかし、0.05mass%未満では濃縮が十分に起こらず、加工性を向上させるのに十分な残留オーステナイトが得られない。一方、0.18mass%を超えるとベイナイトやマルテンサイトの硬度が上昇し、加工性が低下する。このためC量は0.05〜0.18mass%とする。
【0017】
Si:Siは、圧延後の冷却過程においてフェライトの生成を促してオーステナイト中へのCの濃化を促進するため、残留オーステナイト量を確保する上で有効な元素である。しかし、0.7mass%未満ではC濃化を十分に促進することができず、十分な残留オーステナイト量が得られない。一方、1.5mass%を超えると赤スケールの発生による表面性状の劣化が著しい。このためSi量は0.7〜1.5mass%とする。
【0018】
Mn:Mnはパーライト変態を抑制する作用を有する。しかし、0.6mass%未満ではパーライト変態を抑制することができず、鋼中のパーライト量が増大し、伸びフランジ性が確保できない。一方、1.8mass%を超えると偏析によるバンド状組織を形成し易くなり、やはり伸びフランジ性を低下させる。このためMn量は0.6〜1.8mass%とする。
P:Pが0.04mass%を超えると、Pが粒界に偏析して鋼が低延性・低靭性化する。このためP量は0.04mass%以下(0mass%の場合を含む)とする。
【0019】
S:SはMn等と結合して介在物を形成し、割れの起点となることで延性や伸びフランジ性を低下させるため、極力低減する必要がある。このためS量は0.005mass%以下(0mass%の場合を含む)とする。
Al:Alは鋼の脱酸を安定して行うために0.01mass%以上必要であるが、0.10mass%を超えるとその効果は飽和し、また鋼中の介在物量が増大するため延性が低下する。このためAl量は0.01〜0.10mass%とする。
N:Nが0.005mass%を超えると、粗大な窒化物が多量に析出して延性が低下する。このためN量は0.005mass%以下(0mass%の場合を含む)とする。
【0020】
Mo:Moは本発明において重要な働きをする元素である。Moはパーライト変態を抑制するとともに、Cがオーステナイトに十分濃縮するまでベイナイト及びマルテンサイトの変態を抑制し、ベイナイト及びマルテンサイトの生成期間を短縮する作用がある。しかし、0.05mass%未満ではパーライトの生成やベイナイト及びマルテンサイト変態を抑制できず、鋼板の熱履歴や温度変動で材質が変動してしまう。一方、1.5mass%を超えると組織が硬質化し、加工性が低下する。このためMo量は0.05〜1.5mass%とする。
Cr:Crは、Moと複合添加することによりMo添加の効果を促進する作用がある。しかし、0.05mass%未満ではCr添加の効果は認められない。一方、1.5mass%を超えると組織の硬質化を招き、加工性の低下を生じる。このためCr量は0.05〜1.5mass%とする。
【0021】
本発明で用いる鋼には、不可避的不純物などとしてB、Cu、Ni、Ca、Nb、V、Ti、REMの1種以上が含まれることがある。
しかし、Bが0.0003mass%を超えると熱間圧延時の荷重が増大して鋼板の形状が劣化するため、その上限は0.0003mass%(0mass%の場合を含む)とすることが好ましい。Cu、Niは耐腐食性を向上させる元素であるが、それぞれの成分の上限は0.1mass%(0mass%の場合を含む)とすることが好ましい。Caは介在物を増加させるため、その上限を0.002mass%(0mass%の場合を含む)とすることが好ましい。Nb、V、Ti、REMはトランプエレメントとしてリサイクル性を阻害するので、4種の合計量の上限を0.1mass%(0mass%の場合を含む)とすることが好ましい。
本発明で用いる鋼は実質的に上記成分とFeとからなり、したがって不可避的不純物等の他の元素が本発明の効果を損なわない限度で微量含まれることは妨げない。
【0022】
次に、本発明の製造条件について説明する。
本発明の製造方法は、上述した成分組成を有する鋼を熱間圧延し、オーステナイト単相域で仕上圧延を終了する工程(A)と、仕上圧延後直ちに50℃/秒以上の冷却速度で、Crを含有しない場合には(1−[%Mo]/5)×(630−10[%Mn])℃以上、(1+[%Mo]/5)×(730−10[%Mn])℃以下の温度範囲、またCrを含有する場合には{1−([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(630−10[%Mn])℃以上、{1+([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(730−10[%Mn])℃以下の温度範囲(但し、[%Mo]:鋼板中のMo含有量(mass%)、[%Mn]:鋼板中のMn含有量(mass%)、[%Cr]:鋼板中のCr含有量(mass%))まで冷却した後、3〜15秒放冷する工程(B)と、放冷された鋼板を引き続き15℃/秒以上100℃/秒以下の冷却速度で冷却した後、350〜550℃の温度範囲で巻取る工程(C)とを有する。
【0023】
以下、上記製造条件の限定理由を説明する。
工程(A):鋼スラブの熱間圧延では、オーステナイト単相域で仕上圧延を終了する。これはAr3変態点より低いフェライト+オーステナイトの2相混合域で圧延すると、層状組織が形成されて伸びフランジ性や延性が低下するからである。
【0024】
工程(B):仕上圧延後下記する中間放冷温度までの冷却過程では、伸びフランジ性や延性の観点からパーライト変態を避けることが必要であり、このパーライトノーズを回避するため、仕上圧延後中間放冷温度までの冷却速度は50℃/秒以上とする。
中間放冷温度が、Crを添加しない場合に(1−[%Mo]/5)×(630−10[%Mn])℃未満、またCrを含有する場合に{1−([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(630−10[%Mn])℃未満では、ベイナイト量やマルテンサイト量が多くなり、残留オーステナイト量が少なくなるため、TRIP(変態誘起塑性)効果が十分発揮されず加工性が劣化する。一方、中間放冷温度が、Crを添加しない場合に(1+[%Mo]/5)×(730−10[%Mn])℃超、またCrを含有する場合に{1+([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(730−10[%Mn])℃超ではパーライト変態が避けられず、加工性が劣化する。
【0025】
このため中間放冷温度は、Crを添加しない場合には(1−[%Mo]/5)×(630−10[%Mn])℃以上、(1+[%Mo]/5)×(730−10[%Mn])℃以下、また、Crを添加する場合には{1−([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(630−10[%Mn])℃以上、{1+([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(730−10[%Mn])℃以下とする。
また、中間放冷時間が3秒未満では、フェライト+オーステナイトの2相に十分分離しないため、Cをオーステナイト中に十分濃縮させることができず、残留オーステナイトが得られない。一方、15秒を超えるとフェライト粒が粗大化し、Elが劣化する。このため中間放冷時間は3〜15秒とする。
【0026】
工程(C):前記放冷後から巻取りまでの冷却速度は、伸びフランジ性や延性の観点からパーライト変態およびマルテンサイト変態を避けるため、15℃/秒〜100℃/秒とする。また、巻取温度が350℃未満では、Cが十分にオーステナイトに濃化しないため全てマルテンサイトとなり、一方、550℃を超えるとパーライト変態が起こる。このため巻取温度は350〜550℃とする。
【0027】
本発明の製造方法では、仕上温度を制御するために仕上スタンド列の入側で粗バーを加熱してもよく、このような粗バーの加熱を行っても本発明の効果は損なわれない。粗バー加熱方法については、誘導加熱、通電加熱、ガスバーナ加熱などうちのいずれの方法を用いてもよい。また、粗圧延後、一度コイルボックスに巻取り、保熱または加熱して粗バー温度を均一化した後に圧延を行ってもよいし、また、トンネル炉を用いて粗バーの加熱を行ってもよい。さらには、コイルボックスと粗バー加熱を組み合わせても何ら問題はない。
【0028】
本発明で行う熱間圧延は、通常のスラブを粗圧延後、仕上圧延を行う従来の熱間圧延でもよいし、薄スラブを鋳造後、粗圧延を省略して直ちに仕上圧延を行う熱間圧延でもよい。
また、熱間圧延は、鋳造後室温まで冷却されたスラブを再加熱して圧延する他に、鋳造したスラブを室温まで冷却することなく、そのまま又は圧延温度まで再加熱して圧延を行う、所謂直送圧延法又は熱片装入圧延法を行ってもよい。
また、粗圧延後の粗バーを接合して仕上げ圧延を行う、所謂連続圧延を行ってもよい。
また、鋼の成分調整には転炉、電気炉のいずれを用いてもよく、また原料にスクラップを用いても何ら問題はない。
また、熱間圧延後にめっき、化成処理などの表面処理を行っても本発明の効果が損なわれることはない。
【0029】
【実施例】
[実施例1]
表1に示す成分を有する鋼を溶製した。これらのうち鋼種記号A〜Gが本発明鋼、鋼種記号H〜Jが比較鋼である。これらを連続鋳造により厚さ約250mmのスラブとし、これを1200℃に加熱した後、粗圧延機により厚さ約30mmの粗バーに圧延した。その後、仕上温度820℃で仕上圧延を行い、この仕上圧延後直ちに冷却速度80℃/秒で690℃まで冷却した後、6秒間放冷し、さらに冷却速度50℃/秒で冷却し、475℃で巻き取った。このようにして表2に示す板厚2.0mmのNo.1〜No.10の熱延コイルを製造した。
【0030】
このようにして得られた熱延コイルから、長手方向および幅方向にJIS5号試験片(圧延方向)および穴拡試験片を採取し、材料特性(YP、TS、El、λ)の測定を行い、板幅方向および長手方向での特性の変動量(最大値と最小値の差)を求めた。その結果を表2に示す。
【0031】
表2によれば、本発明例の熱延鋼板(No.1〜No.7)は、いずれもコイル幅方向および長手方向での特性の変動量が小さく、コイル内材質変動が効果的に抑えられている。一方、比較例の鋼板(No.8〜No.10)では、それぞれ以下の理由によりコイル幅方向および長手方向での特性の変動量が大きく、コイル内材質変動の大きい鋼板しか得られていない。すなわち、Mo量が本発明範囲を下回る比較鋼Hから製造された比較例No.8は、ベイナイトおよびマルテンサイト変態の抑制ができず、鋼板の熱履歴や温度変動によるコイル内材質変動量が大きい。また、Cr量は本発明範囲であるが、Mo量が本発明範囲を下回る比較鋼I、比較鋼Jから製造された比較例No.9、No.10は、Cr単独含有であるためコイル内材質変動が大きい。
【0032】
【表1】
Figure 0003697573
【0033】
【表2】
Figure 0003697573
【0034】
[実施例2]
本発明条件を満足する表1の本発明鋼A、本発明鋼Fを連続鋳造により厚さ約250mmのスラブとし、1200℃に加熱した後、粗圧延機により厚さ約30mmの粗バーに圧延した。その後、表3に示す種々の熱延条件で仕上圧延−冷却−巻取を行って、板厚2.0mmのNo.11〜No.20の熱延コイルを製造した。
このようにして得られた熱延コイルから、長手方向および幅方向にJIS5号試験片(圧延方向)および穴拡試験片を採取し、材料特性(YP、TS、El、λ)の測定を行うことにより幅方向および長手方向の特性の変動量(最大値と最小値の差)を求めた。その結果を表4に示す。
【0035】
表4によれば、本発明例の熱延鋼板(本発明例No.11〜14)は、いずれもコイル幅方向および長手方向での特性の変動量が小さく、コイル内材質変動が効果的に抑えられている。一方、比較例の熱延鋼板(No.15〜20)は、コイル幅方向および長手方向での特性の変動量が大きく、コイル内材質変動の大きい鋼板しか得られおらず、また材質自体も劣っている。
【0036】
すなわち、No.15の比較例は仕上温度が低いため層状組織となり、El、λが低い。No.16の比較例は中間放冷温度が本発明範囲より低いため残留オーステナイト量が少なくなり、Elが低い。No.17の比較例は中間放冷温度が本発明範囲より高いためパーライト変態を起こし、El、λが低い。No.18の比較例は中間放冷時間が本発明範囲より短いため残留オーステナイト量が少なくなり、Elが低い。No.19の比較例は中間放冷時間が本発明範囲より長いためフェライト粒が粗大化し、Elが低い。No.20の比較例は巻取温度が本発明範囲より高いためパーライト変態が起こり、加工性が低下している。
【0037】
【表3】
Figure 0003697573
【0038】
【表4】
Figure 0003697573
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように本発明法により得られる熱延鋼板は、コイル全長及び全幅に亘って材質が均一であり、コイル内材質変動が適切に抑えられている。このため自動車用の構造部材に適用することにより、自動車の軽量化や衝突安全性の向上を図ることができる。また、本発明の製造方法によれば、このようなコイル内材質変動が小さい熱延鋼板を安定して且つ効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Mo無添加鋼とMo添加鋼からそれぞれ得られた熱延鋼板の板幅方向におけるTS、El、λの変動を示すグラフ
【図2】熱延鋼板の幅方向でのTSの最大値と最小値の差を冷却停止温度TとMo量との関係で示すグラフ

Claims (2)

  1. 実質的に、C:0.05〜0.18 mass %、Si:0.7〜1.5 mass %、Mn:0.6〜1.8 mass %、P:0.04 mass %以下、S:0.005 mass %以下、Al:0.01〜0.10 mass %、N:0.005 mass %以下、Mo:0.05〜1.5 mass %を含有し、残部がFeからなる成分組成を有する鋼を熱間圧延し、オーステナイト単相域で仕上圧延を終了する工程と、
    仕上圧延後、直ちに50℃/秒以上の冷却速度で、(1−[%Mo]/5)×(630−10[%Mn])℃以上、(1+[%Mo]/5)×(730−10[%Mn])℃以下の温度範囲(但し、[%Mo]:鋼板中のMo含有量(mass%)、[%Mn]:鋼板中のMn含有量(mass%))まで冷却した後、3〜15秒放冷する工程と、
    放冷された鋼板を引き続き15℃/秒以上100℃/秒以下の冷却速度で冷却して、350〜550℃の温度範囲で巻取る工程と、
    を有することを特徴とするコイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板の製造方法。
  2. 実質的に、C:0.05〜0.18 mass %、Si:0.7〜1.5 mass %、Mn:0.6〜1.8 mass %、P:0.04 mass %以下、S:0.005 mass %以下、Al:0.01〜0.10 mass %、N:0.005 mass %以下、Mo:0.05〜1.5 mass %、Cr:0.05〜1.5 mass %を含有し、残部がFeからなる成分組成を有する鋼を熱間圧延し、オーステナイト単相域で仕上圧延を終了する工程と、
    仕上圧延後、直ちに50℃/秒以上の冷却速度で、{1−([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(630−10[%Mn])℃以上、{1+([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(730−10[%Mn])℃以下の温度範囲(但し、[%Mo]:鋼板中のMo含有量(mass%)、[%Mn]:鋼板中のMn含有量(mass%)、[%Cr]:鋼板中のCr含有量(mass%))まで冷却した後、3〜15秒放冷する工程と、
    放冷された鋼板を引き続き15℃/秒以上100℃/秒以下の冷却速度で冷却して、350〜550℃の温度範囲で巻取る工程と、
    を有することを特徴とするコイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板の製造方法。
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