JP2003055716A - 高加工性高強度熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

高加工性高強度熱延鋼板の製造方法

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JP2003055716A
JP2003055716A JP2001247836A JP2001247836A JP2003055716A JP 2003055716 A JP2003055716 A JP 2003055716A JP 2001247836 A JP2001247836 A JP 2001247836A JP 2001247836 A JP2001247836 A JP 2001247836A JP 2003055716 A JP2003055716 A JP 2003055716A
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temperature
austenite
hot
coil
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JP2001247836A
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Takanobu Saito
孝信 斉藤
Yoshimasa Funakawa
義正 船川
Kunikazu Tomita
邦和 冨田
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コイルの全長および全幅にわたって材質が均
一であり、コイル内材質安定性に優れた高加工性高強度
熱延鋼板の製造方法を提供すること。 【解決手段】 高加工性高強度熱延鋼板の製造方法は、
重量%で、C:0.07〜0.14%、Si:0.9〜1.4%、Mn:1.0〜1.8
%、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.01〜0.1%、N:0.0
06%以下、Ca:0.001%以下を含有し、残部が実質的にFe
からなる鋼スラブをオーステナイト単相域で仕上圧延
後、Tc(℃):450〜650℃の温度範囲で巻取り、フェライ
ト単相の、または、フェライトに加えてパーライトおよ
びベイナイトのうち1種以上を含む熱延板とした後、
{Ac+20×(650-Tc)/200}〜{Ac-20×(Tc-450)/20
0}℃の温度範囲に10秒以上保持した後、冷却速度10℃/
s以上で300〜500℃の温度範囲まで冷却し、その温度範
囲で20秒以上保持し、残留オーステナイトを3〜10%含有
する鋼板とする。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用の構造部
材に適した、残留オーステナイトを含有する高加工性高
強度熱延鋼板の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、自動車用の構造部材に対しては、
軽量化や衝突安全性向上のための高強度化の要望が強
く、高張力鋼板の適用が拡大しつつある。しかしなが
ら、高張力鋼板は、軟質鋼板に比べ加工性に劣るため、
厳しい加工性の要求される部材には高張力鋼板の適用は
困難である。そこで、厳しい加工に耐える高張力鋼板と
して、残留オーステナイトの変形時のTRIP(変態誘
起塑性)現象を利用して延性を高める、いわゆる残留オ
ーステナイト鋼が注目されるようになった。 【0003】ところが、残留オーステナイト高強度熱延
鋼板を熱延ラインで製造すると、コイルの全長、全幅に
わたって材質が大きく変動する。この材質変動は、熱延
時のランナウト上での長手方向、幅方向の温度変動によ
って生じると考えられるが、熱延ランナウト上ではコイ
ル長手方向全長や幅方向での正確な温度制御が困難なた
め、材質を安定させるのは容易ではない。 【0004】このような問題を解決するために、熱延後
に熱処理を行う技術として、特開平5−271764号
公報では、熱延条件を規定せずに、熱延後引き続き行わ
れる熱延鋼帯の熱処理条件のみを規定することにより、
材質を安定させる技術が開示されている。しかし、この
技術では、熱処理前の熱延鋼帯のミクロ組織の変動が小
さい場合は材質の高位安定化を実現することができるも
のの、再加熱温度をフェライトおよびオーステナイトの
2相域中央部に限定するため、再加熱前の熱延鋼帯のミ
クロ組織が大幅に変動した場合は、材質を安定化させる
ことが困難で、特に伸びフランジ性(λ)の長手方向、
幅方向の安定性に問題がある。 【0005】また、特開2000−087144号公報
では、熱処理前の組織をベイナイト単相と限定すること
で、材質の安定性を確保する技術が開示されている。し
かしこの技術では、熱延板組織におけるベイナイト形態
の差が熱処理後の材質均一性を劣化させるにもかかわら
ず、熱延板組織において上部ベイナイトと下部ベイナイ
トとの区別をしていないことから、熱処理後の材質安定
性への効果は十分でない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】このように、コイルの
全長、全幅にわたって材質変動を低減した残留オーステ
ナイト鋼板を製造することができる技術は未だ見出され
ていない。 【0007】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものであって、コイルの全長および全幅にわたって材
質が均一であり、コイル内材質安定性に優れた高加工性
高強度熱延鋼板の製造方法を提供することを目的とす
る。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記特開
平5−271764号公報に開示されたように熱延後に
熱処理を行う技術を用いてもなお材質変動が残る原因に
ついて検討した結果、この技術では熱処理の再加熱を2
相域温度で行う必要があるため、通常操業上の熱延条件
の変動により生じた熱延板組織の変動の影響が熱処理後
も残ることが原因であると考えた。特に板厚が薄い場合
には、熱延での温度変動幅は大きくなり、最終的な材質
変動も増大する。 【0009】本発明者らはこのような観点から上記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、熱処理前の熱延鋼
帯のミクロ組織が変動した場合でも、熱処理の条件を熱
延での巻取り温度と連動させることにより、材質が安定
することを見出した。 【0010】本発明は、上記知見に基づいてなされたも
のであって、重量%で、C:0.07〜0.14%、S
i:0.9〜1.4%、Mn:1.0〜1.8%、P:
0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.0
1〜0.1%、N:0.006%以下、Ca:0.00
1%以下を含有し、残部が実質的にFeからなる鋼スラ
ブをオーステナイト単相域で仕上圧延後、Tc(℃):
450〜650℃の温度範囲で巻取り、フェライト単相
の、または、フェライトに加えてパーライトおよびベイ
ナイトのうち1種以上を含む熱延板とした後、{Ac
+20×(650−Tc)/200}〜{Ac−20
×(Tc−450)/200}(℃)の温度範囲に10
秒以上保持した後、冷却速度10℃/s以上で300〜
500℃の温度範囲まで冷却し、その温度範囲で20秒
以上保持し、残留オーステナイトを3〜10%含有する
鋼板とすることを特徴とする高加工性高強度熱延鋼板の
製造方法を提供する。 【0011】 【発明の実施の形態】以下、本発明における熱延鋼板の
製造方法について、具体的に説明する。まず、上記本発
明に至った知見の基になる実験結果について説明する。
C≒0.11wt%、Si≒1.3wt%、Mn≒1.
2wt%、P≒0.008wt%、S≒0.001wt
%、Al≒0.030wt%、N≒0.0030wt%
を含む鋼を溶製し、加熱温度1200℃、仕上温度84
0℃で熱間圧延を行った。圧延後冷却し、巻取り温度T
c(℃)で巻取り、得られたコイルを再加熱温度T
(℃)で100秒保持後、冷却速度20℃/sで冷却
し、450℃で100秒保持した後、さらに冷却し、巻
き取った。この際、巻取り温度Tc(℃)および再加熱
温度T(℃)を種々変化させた。製造されたコイルの
サイズは板幅1050mm、板厚1.4mmである。ま
た、この鋼のAc変態点は748℃、Ac変態点は
898℃である。 【0012】得られたコイルを長手方向に30mごとに
切断し、それぞれの位置で幅方向中央部から採取したサ
ンプルについて、TSを測定してその偏差を求めた。図
1は、横軸に巻取り温度Tc(℃)をとり、縦軸に再加
熱温度T(℃)をとって、それぞれの条件で巻取りお
よび再加熱されたサンプルのTSの偏差を示したグラフ
である。図1中の“○”印はTSの偏差が±7.5MP
a未満、“△”印はTSの偏差が±7.5〜15MP
a、“×”印はTSの偏差が±15MPa超であること
を示す。図1より、巻取り温度Tcを450〜650℃
とし、再加熱温度Tを{Ac+20(650−T
c)/200}℃以上、{Ac−20(Tc−45
0)/200}℃以下の温度範囲とすることにより、巻
取り温度Tc(℃)が変動しても材質変動が低いことが
わかる。 【0013】以下、この実験結果について考察する。巻
取り温度Tcが450℃未満では、フェライトの相分率
が低下してベイナイト主体の組織となるため、熱処理の
再加熱時にオーステナイトへのC濃化が十分に起こら
ず、オーステナイトが残留しなくなる。一方、650℃
を超えると結晶粒が粗大化して熱処理の再加熱時に異常
な粗大粒となる。このため、巻取り温度Tcが450℃
未満および650℃超で材質の劣化が著しく、最終的な
材質変動が大きくなる。 【0014】巻取り温度Tcが450〜650℃の範囲
では、熱延板のミクロ組織は、巻取り温度Tcが高い場
合にはフェライトおよびパーライトであり、巻取り温度
Tcが低くなるに従ってフェライトおよびベイナイトに
変化する。また、熱延板の強度は、フェライトおよびパ
ーライト、フェライトおよびベイナイトの順に高くな
る。 【0015】一方、熱延後、熱処理により残留オーステ
ナイト鋼板を製造する基本的な方法は、再加熱を2相域
で行うことである。これは、再加熱時にミクロ組織を、
再変態したオーステナイトと未変態の組織とからなる2
相組織とするものである。 【0016】本発明者らの知見によると、最終的な材質
安定性と相関があるのは、2相域加熱の際に再変態した
オーステナイト組織と未変態組織との分率であるが、上
述したように熱延後に2相域で再加熱を行う従来技術
(特開平5−271764号公報)において材質変動が
残るのは、通常操業上の熱延条件の変動により生じた熱
延板組織の変動の影響が熱処理後も残るためと考えられ
るから、これを防止して安定した材質を得るためには、
熱延板組織を支配する巻取り温度を加味して、上記2相
域において再変態したオーステナイト組織と未変態組織
との分率を決定する必要がある。すなわち、オーステナ
イト組織と未変態組織との2相分率を支配する再加熱温
度Tを熱延での巻取り温度Tcと連動させ、熱延板の
組織に応じてオーステナイト分率を制御することによ
り、最終的な材質を安定させることができるのである。
具体的には、強度の高いベイナイト分率が高くなる低巻
取り温度の場合には、再加熱温度Tを高くすることに
より再変態するオーステナイト分率を増加させ、一方、
強度の低いパーライト分率が高くなる高巻取り温度の場
合には、再加熱温度Tを低くすることにより再変態す
るオーステナイト分率を減少させることによって、材質
変動を低減することができる。上記実験結果はこのこと
を明確に示している。 【0017】次に、鋼組成について説明する。本発明に
おける鋼組成は、重量%で、C:0.07〜0.14
%、Si:0.9〜1.4%、Mn:1.0〜1.8
%、P:0.04%以下、S:0.005%以下、A
l:0.01〜0.1%、N:0.006%以下、C
a:0.001%以下を含有する。各成分をこのように
規定した理由は以下の通りである。 【0018】C:Cは強度を上昇させる元素であるとと
もに、熱延後の熱処理工程において、オーステナイト中
に濃縮し、オーステナイトの安定性を高める作用を有し
ている。しかし、Cが0.07wt%未満ではオーステ
ナイト中への濃縮が十分に起こらず、加工性を向上させ
るのに十分な残留オーステナイトが得られない。一方、
Cが0.14wt%を超えると、熱延条件によってベイ
ナイトの硬度が変動するという熱延での温度感受性の増
大が起こり、この影響で熱処理後の材質変動が大きくな
るのみならず、熱処理工程において残留オーステナイト
量が確保されても、ベイナイトやマルテンサイトの硬質
化により加工性が低下する。したがって、C量を0.0
7〜0.14wt%とする。 【0019】Si:Siは、再加熱後の冷却において、
変態したオーステナイトからの鉄炭化物の析出を抑制す
る作用と、パーライト変態を抑制する作用とを有するた
め、残留オーステナイト量を確保する上で有効な元素で
ある。しかし、Si量が0.9wt%未満では、鉄炭化
物の析出およびパーライト変態を抑制することができな
いため、十分な残留オーステナイト量が得られない。一
方、Si量が1.4wt%を超えると赤スケールが発生
し、表面性状が著しく劣化するとともに、熱延ランナウ
ト冷却時に赤スケールが存在する部分でフィン効果によ
り冷却速度が増して局部的にミクロ組織の大きな不均一
を引き起こし、熱処理後の材質均一性が劣化する。した
がって、Si量を0.9〜1.4wt%とする。 【0020】Mn:Mnは、熱延後の熱処理工程におい
て、パーライト変態を抑制する効果を有する元素であ
る。Mn量が1.0wt%未満ではパーライト変態を抑
制することができず、鋼中のパーライト量が増大し、伸
びフランジ性が確保できない。一方、Mn量が1.8w
t%を超えると偏析によるバンド状組織を形成しやすく
なり、やはり伸びフランジ性を低下させる。したがっ
て、Mn量を1.0〜1.8wt%とする。 【0021】P:Pは、0.04wt%を超えると粒界
にPが偏析し、鋼が低延性・低靱性化する。このため、
P量を0.04wt%以下とする。 【0022】S:Sは、Mn等と結合して介在物を形成
し、割れの起点となることで延性や伸びフランジ性を低
下させるため、極力低減する必要がある。このような観
点から、本発明ではS量を0.005wt%以下とす
る。 【0023】Al:Alは、鋼の脱酸を安定して行うた
めに0.01wt%以上必要であるが、Al量が0.1
wt%を超えるとその効果は飽和し、また鋼中の介在物
量が増大するため延性が低下する。このため、Al量を
0.01〜0.1wt%とする。 【0024】N:N量が0.006wt%を超えると粗
大な窒化物が大量に析出して延性が低下するため、N量
を0.006wt%以下とする。 【0025】Ca:Caは、介在物を増加させ、熱延後
の熱処理の際に介在物が存在する周囲でオーステナイト
への再変態を阻害し、材質不均一を起こす。このため、
Caの含有量の上限を0.001wt%とする。 【0026】本発明の鋼は、残部が実質的にFeからな
るものであり、不可避的不純物や他の添加元素が本発明
の効果を損なわない程度で含まれていてもよい。 【0027】例えば、上記元素に加えて、目的に応じて
Cu,Ni,Nb,V,Ti,B,REMを添加しても
本発明の効果に変わりはない。例えば、耐腐食性を目的
とする場合にはCu,Niを添加してもよいが、これら
を添加する場合はリサイクルの観点からそれぞれの上限
を0.1wt%とする。また、強度の調整のためにはN
b,V,Ti,B,REMを添加してもよい。しかし、
Nb,V,Tiを過剰に添加すると粗大な炭化物が析出
し、延性の劣化を引き起こすので、添加する場合にはN
b,VおよびTiの合計量の上限を0.1wt%とす
る。また、Bが0.0003wt%を超えると熱間圧延
時の荷重が増大し、鋼板の形状が劣化するため、Bを添
加する場合にはその上限を0.0003wt%とする。
さらに、REMはトランプエレメントとしてリサイクル
性を阻害するので、REMを添加する場合にはREMの
合計量の上限を0.05wt%とする。 【0028】次に、組織について説明する。本発明にお
ける熱延鋼板の組織は、残留オーステナイトを体積分率
で3〜10%含む。これは、残留オーステナイトが3%
未満では残留オーステナイト鋼の特徴である高い伸びが
得られず、10%超では打ち抜き時の残留オーステナイ
トの加工誘起変態による硬化により、伸びフランジ性が
損なわれるためである。 【0029】次に、プロセス条件について説明する。本
発明における熱延鋼板の製造方法は、上記鋼組成を有す
る鋼スラブをオーステナイト単相域で仕上圧延後、Tc
(℃):450〜650℃の温度範囲で巻き取る熱間圧
延工程(以下、工程Aという。)と、{Ac+20×
(650−Tc)/200}〜{Ac−20×(Tc
−450)/200}℃の温度範囲に10秒以上保持し
た後、冷却速度10℃/s以上で300〜500℃の温
度範囲まで冷却し、その温度範囲で20秒以上保持する
熱処理工程(以下、工程Bという。)とを施すことによ
り残留オーステナイトを3〜10%含有する鋼板とす
る。各条件をこのように規定した理由は以下の通りであ
る。 【0030】まず、工程Aについて説明する。 仕上圧延温度:加熱後の鋼スラブは、オーステナイト単
相域で仕上圧延を終了する。これは、Ar変態点より
低いフェライト+オーステナイトの2相域で圧延する
と、層状組織が形成され、後述する工程Bの再加熱後も
層状組織が残り、伸びフランジ性や延性が劣化するため
である。 【0031】巻取り温度Tc:前述したように、巻取り
温度Tcが450℃未満ではベイナイト主体の組織とな
ってオーステナイトが残留しなくなり、650℃を超え
ると結晶粒が粗大化して工程Bの再加熱時に異常な粗大
粒となるため、巻取り温度Tcは450〜650℃とす
る。 【0032】以上のような条件の工程Aにより、フェラ
イト単相の、または、フェライトに加えてパーライトお
よびベイナイトのうち1種以上を含む熱延板が得られ
る。 【0033】次に、工程Bについて説明する。 再加熱:再加熱の温度は本発明において重要なプロセス
条件である。この再加熱によりミクロ組織を再変態した
オーステナイトと未変態の組織とからなる2相組織とす
るが、再加熱温度が{Ac+20×(650−Tc)
/200}(℃)未満では、熱延後の組織がオーステナ
イトに必要量まで変態しないため、最終的に残留オース
テナイトが3〜10%存在しない部分が発生し、材質変
動が大きくなる。一方、再加熱温度が{Ac−20
(Tc−450)/200)}(℃)を超えると、必要
以上にオーステナイトに再変態してフェライト分率が下
がることによりオーステナイト中のC濃度が低下してマ
ルテンサイト変態しやすくなるため、残留オーステナイ
トが3〜10%存在しない部分が生じ、材質変動が大き
くなる。また、再加熱の保持時間は、鋼板全体を均一に
加熱するためには10秒以上必要である。以上により、
再加熱の温度は{Ac+20(650−Tc)/20
0}(℃)以上、{Ac−20(Tc−450)/2
00}(℃)以下とし、保持時間は10秒以上とする。 【0034】再加熱後の冷却:再加熱後の冷却は、冷却
途中におけるパーライト変態を防止するため、冷却速度
を10℃/s以上とする。 【0035】冷却後の保持および巻取り:冷却後、30
0〜500℃の温度範囲で20秒以上保持した後、さら
に冷却し、巻取る。冷却後の保持温度が500℃を超え
るとパーライト変態が起こり、300℃未満ではオース
テナイトがマルテンサイトに変態し、いずれの場合も体
積率で3〜10%の残留オーステナイトを確保すること
が難しくなるため、保持温度は300〜500℃とす
る。また、保持時間が20秒未満の場合、ベイナイト変
態が進行せず、オーステナイトへのC濃化が不十分とな
り、残留オーステナイトを3〜10%確保することがで
きなくなるため、保持時間は20秒以上とする。このよ
うにして保持した後は、工程を効率よく運用するため、
50〜200℃まで冷却し、巻取ることが好ましい。 【0036】上記の仕上温度の制御に仕上げスタンド列
入側で粗バーを加熱しても本発明の効果に変わりはな
い。この場合の粗バー加熱方法については、誘導加熱、
通電加熱、ガスバーナー加熱等いかなる方法を用いても
よい。また、粗圧延後、一度コイルボックスに巻取り、
保熱または加熱してバー温度を均一化して圧延を行って
もよいし、トンネル炉を用いてもよい。さらには、コイ
ルボックスと粗バー加熱とを組み合わせても何ら問題は
ない。さらにまた、熱間圧延は、通常のスラブを圧延
後、仕上圧延を行う通常の熱間圧延でも、薄スラブ鋳造
後、粗圧延を省略して直ちに仕上圧延を行うものであっ
てもよい。さらにまた、熱間圧延は、通常の方法に加
え、粗圧延後に粗バーを接合して仕上圧延を行う、いわ
ゆる連続圧延を行っても何ら問題はなく、鋳造後、室温
まで冷却することなくそのまま圧延を行う直送圧延を行
ってもよい。さらにまた、鋼の成分調整には転炉、電気
炉のいずれを用いてもよく、また原料にスクラップを用
いても何ら問題はない。さらにまた、熱処理後、めっ
き、化成処理等の表面処理を行っても本発明の効果が失
われることはない。 【0037】 【実施例】[実施例1]表1に示す化学成分を有する鋼
組成の鋼種A〜Kを溶製し、連続鋳造により厚さ約25
0mmのスラブとし、1200℃に加熱した後、粗圧延
機により厚さ約30mmの粗バーに圧延した。その後、
仕上圧延を仕上温度850℃で行い、圧延後冷却し、5
00〜540℃の範囲の巻取り温度で巻き取った。これ
らのコイルを再加熱温度820℃で100秒保持後、冷
却速度40℃/sで冷却し、400℃で250秒保持し
た後、さらに冷却し、巻取って、板厚1.4mm、板幅
1050mmのNo.1〜11のコイルを製造した。 【0038】得られたNo.1〜11のコイルから、長
手方向および幅方向に分散した複数箇所においてJIS
5号試験片(圧延方向)および穴拡げ試験片を採取し、
材料特性(YP,TS,El,λ)の測定を行った。ま
た、長手方向中央部における材質特性(TS、El、
λ)の幅方向変動量(最大値と最小値との差)、およ
び、同じく幅方向中央部における材質特性の長手方向変
動量をそれぞれ求めた。表1に、コイルの中央部分にお
ける材質特性の値と、それぞれの材質特性の変動量とを
併せて示す。 【0039】 【表1】【0040】表1に示すように、鋼組成が本発明範囲を
満たす本発明例であるNo.1〜7の熱延鋼板において
は、いずれもコイル幅方向および長手方向の材質変動量
が低減されており、コイル内材質変動が効果的に抑えら
れている。これに対して、比較例であるNo.8〜11
の熱延鋼板では、いずれもコイル幅方向および長手方向
の材質変動量が大きく、コイル内材質変動の大きい鋼板
しか得られていない。すなわち、C量が本発明範囲を超
えるNo.8の鋼板では、熱延条件によってベイナイト
の硬度が変動する熱延での温度感受性の増大が発生し、
この影響で熱処理後のコイル内材質変動量が大きかっ
た。Si量が本発明範囲を超えるNo.9の鋼板では、
赤スケールの発生により部分的な材質不均一が生じ、特
に幅方向の材質変動量が大きかった。Mn量が本発明範
囲を超えるNo.10の鋼板では、偏析により不均一な
バンド状組織が生じ、特に長手方向におけるλの変動量
が大きかった。Ca量が本発明範囲を超えるNo.11
は、介在物のある部分で材料特性が劣化し、このためコ
イル内材質変動が大きかった。 【0041】[実施例2]表1に示した本発明範囲を満
たす鋼組成の鋼種CおよびEを連続鋳造して厚さ約25
0mmのスラブとし、1200℃に加熱後、粗圧延機に
より厚さ約30mmの粗バーに圧延した。その後、表3
に示す種々のプロセス条件で熱延−熱処理を行って、板
厚1.4mmのNo.12〜22のコイルを製造した。
そして、実施例1と同様に、得られたコイルから各試験
片を採取して材質特性の測定を行い、コイル幅方向およ
び長手方向の材質変動量を求めた。結果を表2に併せて
示す。 【0042】 【表2】 【0043】表2に示すように、プロセス条件が本発明
の条件を満たすNo.12〜15の熱延鋼板において
は、いずれもコイル幅方向および長手方向の材質変動量
が低減されており、コイル内材質変動が効果的に抑えら
れている。これに対して、比較例であるNo.16〜2
2の熱延鋼板では、いずれもコイル幅方向および長手方
向の材質変動量が大きく、コイル内材質変動を低減する
ことができておらず、また材質自体も劣っている。すな
わち、No.16は仕上温度が本発明範囲よりも低く層
状組織となったため、El、λが低かった。No.17
は、鋼板の巻取り温度Tcが本発明範囲よりも低くベイ
ナイト主体の組織となり、残留オーステナイト量が少な
くなったためElが低かった。No.18は、再加熱温
度Tが本発明範囲より高く、再加熱時に必要以上にオ
ーステナイトに変態した部分が存在し、特にコイル長手
方向の材質特性の変動量が大きかった。No.19は、
再加熱の保持時間が本発明範囲より短く、幅方向に均一
に加熱されず、不均一な2相組織となり、特にコイル幅
方向の材質特性の変動量が大きかった。No.20は、
再加熱後の冷却速度が本発明範囲より遅く、パーライト
変態したため加工性が低下した。No.21は、熱処理
の保持温度が本発明範囲より低く、オーステナイトがマ
ルテンサイト化したため残留オーステナイトが非常に少
なく、伸びが低下した。No.22は、熱処理の保持時
間が本発明範囲より短く、オーステナイトが残留しなか
ったため、伸びが低下した。 【0044】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の製造方法
によれば、コイル全長および全幅にわたって材質均一性
に優れた熱延鋼板を安定的かつ効率的に製造することが
できる。このため、この鋼板を自動車用の構造部材に適
用することにより、自動車の軽量化や衝突安全性の向上
を図ることができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】熱延鋼板の長手方向でのTSの偏差と、熱延の
巻取り温度Tcおよび熱処理の再加熱温度Tとの関係
を示すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 冨田 邦和 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K037 EA01 EA05 EA06 EA09 EA15 EA18 EA23 EA25 EA27 EA28 EB09 EB11 EB12 FC07 FE01 FE02 FF02 FF03 HA03 JA01 JA06

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量%で、 C :0.07〜0.14%、 Si:0.9〜1.4%、 Mn:1.0〜1.8%、 P :0.04%以下、 S :0.005%以下、 Al:0.01〜0.1%、 N :0.006%以下、 Ca:0.001%以下 を含有し、残部が実質的にFeからなる鋼スラブをオー
    ステナイト単相域で仕上圧延後、Tc(℃):450〜
    650℃の温度範囲で巻取り、フェライト単相の、また
    は、フェライトに加えてパーライトおよびベイナイトの
    うち1種以上を含む熱延板とした後、{Ac+20×
    (650−Tc)/200}〜{Ac−20×(Tc
    −450)/200}(℃)の温度範囲に10秒以上保
    持した後、冷却速度10℃/s以上で300〜500℃
    の温度範囲まで冷却し、その温度範囲で20秒以上保持
    し、残留オーステナイトを3〜10%含有する鋼板とす
    ることを特徴とする高加工性高強度熱延鋼板の製造方
    法。
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