JP2007177272A - 穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.22%、Si:0.001〜0.8%、Mn:2.0〜3.0%、P:0.001〜0.1%、S:0.0001〜0.01%、Al:0.001〜0.2%、B:0.0001〜0.01%、Ti:0.005〜0.3%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成にすると共に、ミクロ組織の構成を、未変態のフェライト相:1〜30体積%、マルテンサイト相:50体積%以上、ベイナイト相:10〜30体積%及び残留オーステナイト:5%体積以下にする。
【選択図】なし
Description
Cは、マルテンサイト相の体積分率を制御し、鋼板の強度と穴拡げ性とのバランスを良好にするために添加する。また、Cは、素地の微細均一化についても影響を与える。しかしながら、C含有量が0.05%未満の場合、十分な強度が得られない。また、C含有量が0.22%を超えると、穴拡げ性が低下すると共に溶接部の強度が劣化しやすくなる。よって、C含有量は0.05〜0.22%とする。なお、C含有量は、0.08%以上にすることが好ましく、より好ましくは、0.1〜0.16%である。
Siは、鋼板の強度と延性とのバランスを劣化させる比較的粗大な炭化物の生成を抑制する目的で添加する。しかしながら、Si含有量が0.8%を超えると、めっき性が著しく劣化すると共に、溶接性にも悪影響が出る。一方、Si含有量を0.001%未満にするような極低Si化は、製造コストの高騰を招く。よって、Si含有量は0.001〜0.8%とする。なお、Si含有量は、0.6%以下にすることが好ましく、これにより表面性状を良好にすることができる。
Mnは、フェライト変態を抑制する効果があり、Mnを適量添加することにより、体積分率が最大の相である主相をマルテンサイトにして、均一組織を得ることができる。しかしながら、Mn含有量が2.0%未満の場合、強度低下及び穴拡げ性劣化を招く炭化物の析出及びパーライトの生成を抑制する効果が得られない。一方、Mnを過剰に添加すると、具体的には、Mn含有量が3.0%を超えると、偏析等が生じ、延性及び穴拡げ性が著しく低下する。よって、Mn含有量は2.0〜3.0%とする。なお、Mn含有量は、2.3%以上にすることが好ましく、2.4%以上にすることがより好ましい。
Pは、鋼板を高強度化する強化元素である。しかしながら、P含有量が0.1%を超える程の多量添加は、溶接性、鋳造時及び熱延時の製造性、並びに穴拡げ性に悪影響を及ぼす。一方、P含有量を低減すると、穴拡げ性が向上するが、P含有量を0.001%未満にするような極低P化は、経済的にも不利である。よって、P含有量は0.001〜0.1%とする。
Sは、不可避的不純物であり、S含有量が0.01%を超えると、穴拡げ性が劣化する。一方、S含有量を低減する低S化は、穴拡げ性向上に有効であるが、S含有量を0.0001%未満にするような極低S化は経済的に不利である。よって、S含有量は0.0001〜0.01%とする。なお、S含有量は、0.003%以下とすることが好ましい。
Alは、脱酸元素として有効な元素である。しかしながら、Al含有量が0.001質量%未満では、その効果が得られない。一方、Alを過剰に添加すると、具体的には、Al含有量が0.2%を超えると、穴拡げ性、溶接性及びめっき濡れ性が損なわれる。よって、Al含有量は0.001〜0.2%とする。なお、Al含有量は、0.005〜0.08%の範囲にすることが望ましい。
B及びTiは、本発明の高強度冷延薄鋼板にとって極めて重要な元素である。具体的には、Bは、粒界の強化及び鋼材の高強度化に有効な元素であると共に、焼入れ性を向上させてベイナイト相等の生成を強く抑制し、マルテンサイト単一相の生成に寄与する元素でもある。また、Tiは、鋼中に不可避的に存在するNとBとが結合することによりBの添加効果が失われて、焼入れ性が低下することを防止する効果がある。更に、Tiには、主相をマルテンサイトとし、フェライト変態を抑制する効果もある。そこで、本発明においては、B及びTiを複合添加し、更に前述したようにMn含有量を2.0%以上とすることにより、穴拡げ性を良好にしている。
冷間圧延後の焼鈍温度がAc3変態温度未満である場合は、必然的に未変態フェライトを含むこととなる。フェライト相は、基本的に鋼板の引張強度の低下をもたらすが、本願発明者は、本発明の鋼板に含まれる未変態フェライトは、通常の鋼板の未変態フェライトに比べて硬く、鋼板の強度を大きく低下させないことを見出した。また、フェライト相には、延性が改善される効果もある。しかしながら、未変態フェライト相が多すぎると、具体的には、未変態フェライト相が30体積%を超えて含まれていると、引張強度が低下すると共に、硬度の均一性も低下し、穴拡げ性が低下する。一方、焼鈍温度をAc3変態温度以上にすることで、未変態フェライト相の体積分率を0%にすることができるが、後述するように、本発明においては、焼鈍温度をAc3変態温度未満としているため、未変態フェライト相を1%未満にすることは困難である。よって、未変態フェライト相の体積分率は、1〜30体積%とする。なお、未変態フェライト相は3体積%以上含まれていることが好ましい。
マルテンサイト相は、硬度が高く、鋼板の引張強度を担保するために必要な相である。基本的に、マルテンサイト相が多い程、引張強度は高くなる。このため、マルテンサイト相の割合が50%未満の場合、十分な引張強度が得られない。よって、マルテンサイト相の体積分率は50体積%以上とする。なお、マルテンサイト相の体積分率の上限は、未変態フェライト相及びベイナイト相の体積分率によって決まるが、82体積%以下とすることが好ましい。
ベイナイト相の硬度は、フェライト相よりも高く、マルテンサイト相よりも低い。また、本実施形態の高強度冷延薄鋼板においては、ベイナイト相は、焼鈍後に行う時効処理時に生成する。この時効処理によってマルテンサイト相中の転位をある程度除去し、靭性を向上させる効果があるが、ベイナイト相が出現することによってその効果が増幅され、穴拡げ性が向上する。しかしながら、ベイナイト相の割合があまりに多いと、具体的には、ベイナイト相を30体積%以上含んでいると、引張強度が低下する。一方、ベイナイト相は、時効処理により生成するため、その体積分率を10体積%未満とすることは困難である。よって、ベイナイト相の体積分率は、10〜30体積%とする。なお、ベイナイト相の体積分率は、15体積%以上とすることが好ましい。
本実施形態の高強度冷延薄鋼板において、残留オーステナイト相に重要な役割はない。しかしながら、焼鈍熱処理時の変態によって生成したオーステナイト相は、その後の冷却過程におけるマルテンサイト変態において、全て残留する。そして、その後の時効処理においてベイナイトに変態するが、全てが変態するのではなく、その一部が不可避的に残留する。この残留オーステナイトの量があまりにも多いと、具体的には、残留オーステナイトが5体積%を超えると、組織の均一性が低下し、穴拡げ性が低下する。よって、残留オーステナイトの体積分率は5体積%以下とする。なお、残留オーステナイトの体積分率は、3体積%以下であることが好ましい。
Claims (12)
- 質量%で、
C:0.05〜0.22%、
Si:0.001〜0.8%、
Mn:2.0〜3.0%、
P:0.001〜0.1%、
S:0.0001〜0.01%、
Al:0.001〜0.2%、
B:0.0001〜0.01%、
Ti:0.005〜0.3%を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、
ミクロ組織が、未変態のフェライト相:1〜30体積%、マルテンサイト相:50体積%以上、ベイナイト相:10〜30体積%、及び残留オーステナイト:5体積%以下からなり、
引張強度が1100MPa以上であり、
かつ穴拡げ率が40%以上であることを特徴とする穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板。 - 質量%で、
C:0.05〜0.22%、
Si:0.001〜0.8%、
Mn:1.5〜3.0%、
P:0.001〜0.1%、
S:0.0001〜0.01%、
Al:0.001〜0.2%、
B:0.0001〜0.01%、
Ti:0.005〜0.3%を含有すると共に、
Crを含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなり、
Mn含有量(%)を[Mn]、Cr含有量(%)を[Cr]としたとき、下記数式(A)を満たす組成を有し、
ミクロ組織が、未変態のフェライト相:1〜30体積%、マルテンサイト相:50体積%以上、ベイナイト相:10〜30体積%、及び残留オーステナイト:5体積%以下からなり、
引張強度が1100MPa以上であり、
かつ穴拡げ率が40%以上であることを特徴とする穴拡げ性に優れた高強度冷延薄板鋼板。
- 更に、質量%で、
Mo:0.11〜1.0%及びNb:0.003〜0.3%からなる群から選択された1種又は2種の元素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板。 - 更に、質量%で、
Co:0.01〜1%及びW:0.01〜0.3%からなる群から選択された1種又は2種の元素を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板。 - 更に、質量%で、
Zr、Hf、Ta及びVからなる群から選択された1種又は2種以上の元素を合計で0.001〜1%含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板。 - 更に、質量%で、
Ca、Mg及びRemからなる群から選択された1種又は2種以上の元素を合計で0.0001〜0.5%含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板。 - 質量%で、C:0.05〜0.22%、Si:0.001〜0.8%、Mn:2.0〜3.0%、P:0.001〜0.1%、S:0.0001〜0.01%、Al:0.001〜0.2%、B:0.0001〜0.01%、Ti:0.005〜0.3%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成の鋳造スラブを、直接又は一旦1000℃以下まで冷却した後で再度加熱して熱間圧延し、熱延コイルを得る工程と、
前記熱延コイルを巻取り、酸洗した後、冷間圧延して冷延鋼板を得る工程と、
前記冷延鋼板を、最高到達温度を(Ac3変態温度−30℃)以上でかつAc3変態温度未満の範囲にして熱処理した後、0.1〜20℃/秒の冷却速度で680〜780℃の第1の温度域まで冷却し、引き続き40〜70℃/秒の冷却速度で250〜350℃の第2の温度域まで冷却した後、この第2の温度域で10〜500秒間保持する工程と、を有することを特徴とする穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法。 - 質量%で、C:0.05〜0.22%、Si:0.001〜0.8%、Mn:1.5〜3.0%、P:0.001〜0.1%、S:0.0001〜0.01%、Al:0.001〜0.2%、B:0.0001〜0.01%、Ti:0.005〜0.3%を含有すると共に、Crを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、Mn含有量(%)を[Mn]、Cr含有量(%)を[Cr]としたとき、下記数式(A)を満たす組成の鋳造スラブを、直接又は一旦1000℃以下まで冷却した後で再度加熱して熱間圧延し、熱延コイルを得る工程と、
前記熱延コイルを巻取り、酸洗した後、冷間圧延して冷延鋼板を得る工程と、
前記冷延鋼板を、最高到達温度を(Ac3変態温度−30℃)以上でかつAc3変態温度未満の範囲にして熱処理した後、0.1〜20℃/秒の冷却速度で680〜780℃の第1の温度域まで冷却し、引き続き40〜70℃/秒の冷却速度で250〜350℃の第2の温度域まで冷却した後、この第2の温度域で10〜500秒間保持する工程と、を有することを特徴とする穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法。
- 前記鋳造スラブは、更に、質量%で、Mo:0.11〜1.0%及びNb:0.003〜0.3%からなる群から選択された1種又は2種の元素を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法。
- 前記鋳造スラブは、更に、質量%で、Co:0.01〜1%及びW:0.01〜0.3%からなる群から選択された1種又は2種の元素を含有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法。
- 前記鋳造スラブは、更に、質量%で、Zr、Hf、Ta及びVからなる群から選択された1種又は2種以上の元素を合計で0.001〜1%含有することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法。
- 前記鋳造スラブは、更に、質量%で、Ca、Mg、Remからなる群から選択された1種又は2種以上の元素を合計で0.0001〜0.5%含有することを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法。
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