JP4430511B2 - 穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、建材、家電製品、自動車などに適する、穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板とその製造方法に関する。
なお、本発明において、薄鋼板とは厚さ2.2mm以下の鋼板と定義する。
近年、特に自動車車体において燃費向上や耐久性向上の観点を目的とする加工性の良い高強度鋼板の需要が高まっている。加えて、衝突安全性やキャビンスペースの拡大のニーズから引張強度にして780MPa級クラス以上の鋼板が、一部レインフォースなどの部材に使用されつつある。
このような高強度材を用いて部材を組みあげる時には、延性、曲げ性、穴拡げ性などが重要となるが、引張強度で590MPa程度までの高強度鋼板において、これらに対する対策が講じられている。
たとえば、穴拡げ性については、非特許文献1にあるように、主相をベイナイトとして穴拡げ性を向上させ、さらには張り出し成形性についても、第2相に残留オーステナイトを生成させることで現行の残留オーステナイト鋼並の張り出し性を示すことが開示されている。さらには、Ms温度以下でオーステンパ処理をすることで体積率2〜3%の残留オーステナイトを生成させると、引張り強度×穴拡げ率が最大となることも示されている。しかし、これらは、引張強度590MPa程度の鋼板におけるものであり、900MPaを超えたものについては単純に成り立たない。
また、高強度材の高延性化を図るために、複合組織を積極的に活用することが一般的である。しかし、第2相にマルテンサイトや残留オーステナイトを活用した場合に、穴拡げ性が著しく低下してしまうという問題がある(例えば、非特許文献2)。また、本文献中には、主相をフェライト、第2相をマルテンサイトとし、両者の硬度差を減少させることで穴拡げ率が向上することが開示されているが、穴拡げ率は70%未満であり、著しく改善されているわけではない。
また、引張強度900MPa以上の強度を有する鋼板の穴拡げ性について、いくつかの開示例がある。以下にその例をあげる。
(1) 特許文献1及び特許文献2においては、高い強度が得られる技術が開示されているが、複合組織であるために、相間に硬度差が生じてしまい、穴拡げ率が30%以下と低くなっている。
(2) 特許文献3においては、C濃度を0.1〜0.2%、Mn濃度を2〜3%としてオーステナイト相を安定化させ、めっきラインで熱処理後、480℃〜560℃で低温保持することによってオーステナイト相を残し、強度と加工性を得る方法が開示されている。しかしながら、残留オーステナイト相があるため、不均一な複合組織になりやすく、穴拡げ率は向上しない。
(3) 特許文献4においては、C0.05%、Si0.55%、Mn1.59%を含んだ鋼板に、Mo,Ti,Cr,Nb,B、V等を微量に添加し、93%の穴拡げ率を得ている。しかしながら、Mn濃度が低いため、熱処理時の加熱温度が低い場合や、熱処理後の冷却速度が低い場合等に不均一複合組織になってしまい、安定的に高い穴拡げ性を得ることが困難である。
(4) 特許文献5においては、C0.16%、Mn2.3%、Ti0.01%を含んだ鋼板にNb,Bを微量に添加することで、引張強度1180MPa程度を得ている。しかしながら、複合組織を基本とするものであるために相間の硬度差が生じ、そのために穴拡げ率は40%以下にとどまっている。
従って、引張強度において1100MPa以上の強度を持ち、穴拡げ率において40%以上の値を持つ、穴拡げ性に優れた冷延薄鋼板は得にくく、さらに、そのような鋼板を効率的に製造する方法は見当たらない。
CAMP-ISIJ vol.13 (2000) p.395 CAMP-ISIJ, vol.13(2000),p.391 特許第2607906号公報 特許第2862187号公報 特開平1−198459号公報 特開2001−355043号公報 特許第3037767号公報
以上のように、前述の各特許文献及び各非特許文献の内容は、主に、適当な相分率を持った複合組織を作りこむことが主眼である。このため、異なる相の間で硬度差が生じてしまい、穴拡げ率の高い鋼板を得にくい。
従って、高い穴拡げ率を得るためには、硬度差の生じない均一相(単相組織)を得ることが重要である。このような均一相は、冷延後の鋼板を、Ac変態温度より高い温度域で均一オーステナイト相とした後に急冷して、均一なマルテンサイトにすることにより得ることができる。
しかしながら、穴拡げ率の高い均一なマルテンサイト単相を得るためには、Ac+40℃以上と、高い温度まで加熱する必要があり、対象とする鋼板の成分にもよるが、860℃〜1000℃程度の高温熱処理が必要となる。このような高温熱処理は、エネルギーコストがかさみ、生産効率も低下してしまう。さらには、高温熱処理後の急冷後の到達温度も重要である。すなわち、急冷後の到達温度が200℃〜290℃程度の低温だと、強度は得られるが、炭化物の生成等のため組織の均一性が乱れて硬度差が生じてしまうので、穴拡げ率が低下するのである。また、このように急冷後の到達温度を低温にした場合、熱処理ラインにおける最高到達温度との温度差が大きくなるので、エネルギーコストがかさんで、生産効率へも悪影響を及ぼしてしまう。一方、冷却後の到達温度を上げて生産効率向上を図ると、鋼板の強度が低下してしまう。さらに、鋼板の厚さが1.6mm以上である場合、鋼板の熱容量が大きくなるため、十分な冷却速度が得られなくなる。このため、部分的に緩冷却になった箇所からはベイナイト相などが現れ易くなり、単相均一組織が得られなくなってしまう。
本発明は、引張強度が1100MPa以上であり、穴拡げ率が40%以上である高強度冷延薄鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、種々検討を行った結果、化学成分を限定することで、引張り強度が1000MPa以上で優れた穴拡げ性を有する高強度冷延薄鋼板を得ることができることを発見した。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたもので、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、
C :0.08〜0.22%
Si:0.001〜0.8%
Mn:2.0〜3.0%
P:0.001〜0.1%
S:0.0001〜0.01%
Al:0.001〜0.2%
B:0.0001〜0.01%
Ti:0.005〜0.3%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋳造スラブを、直接または一旦1000℃以下まで冷却した後に再度加熱し、熱延後、巻取った鋼板を酸洗後冷延し、その後最高到達温度をAc −20(℃)以上860℃以下とする熱処理をした後に、0.1〜20℃/sの冷却速度で680℃〜780℃の温度域に冷却し、引き続いて40℃/s〜70℃/sの冷却速度で、250℃〜350℃の温度まで冷却し、引き続いてその温度で10秒〜500秒保持することを特徴とする、引張強度が1100MPa以上であり、且つ穴拡げ率が40%以上である穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法
(2)前記鋳造スラブが、
さらに、質量%で、
Mo:0.11〜1.0%
Nb:0.003〜0.3%
の1種または2種を含有することを特徴とする(1)記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法
(3)前記鋳造スラブが、
さらに、質量%で、
Co:0.01〜1.0%
W :0.01〜0.3%
の1種または2種を含有することを特徴とする(1)又は(2)記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法
(4)前記鋳造スラブが、
さらに、質量%で、
Zr、Hf、Ta、Vの1種または2種以上を合計で0.001〜1.0%含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法
(5)前記鋳造スラブが、
さらに、質量%で、
Ca、Mg、Remの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法。
本発明により、引張強度が1100MPa以上であり、〔(穴拡げ試験後の穴の内径/穴拡げ試験前の穴径)−1〕×100(%)で定義される穴拡げ率が40%以上である高強度冷延薄鋼板の製造方法を得ることができる。
本発明の方法により製造された鋼板は、溶接熱影響部の軟化を抑制して溶接部の疲労耐久性にも優れる。
以下、本発明を詳細に説明する。
先ず、本発明における鋼板成分の好適な範囲の限定理由について述べる。
C:0.05〜0.22質量%
Cは、マルテンサイト相の分率を制御して、良好な強度−穴拡げ性バランスを確保する目的で添加する元素であり、素地の微細均一化についても影響を与える元素である。Cの含有量は、強度を確保するため0.08質量%以上を必要とする。C含有量が0.22質量%を越えると、穴拡げ性が低下したり、溶接部の強度が劣化しやすくなる虞があるので、これを上限とする好ましくは、Cの含有量は、0.1〜0.16質量%である。
Si:0.001〜0.8質量%
Siは、強度延性バランスを劣化させる比較的粗大な炭化物の生成を抑制する目的で添加する元素である。Siの過剰添加はめっき性を著しく低下させたり、溶接性に悪影響を及ぼしたりするので、Si含有量の上限を0.8質量%とする。表面性状の観点から0.6質量%を上限とするのが好ましい。一方で、極低Si化は製造コストの高騰を招くことから、0.001質量%以上の添加とする。
Mn:2.0〜3.0質量%
Mnは、フェライト変態を抑制して、面積率最大の相である主相をマルテンサイトとすることで均一組織を得る目的で添加される。さらに、強度低下と穴拡げ性劣化の1つの原因である炭化物の析出や、パーライトの生成を抑制するため2.0質量%以上、好ましくは2.3%質量以上とする。更に好ましくは、2.4質量%以上を下限とする。一方、過剰添加は、偏析などによって延性や穴拡げ性の著しい低下を招くので、3.0質量%を上限とする。
P:0.001〜0.1質量%
Pは、強化元素である。また、低P化は穴拡げ性を向上させるが、極低P化は経済的にも不利であることから0.001質量%を下限とする。また、過剰添加は、溶接性や鋳造時や熱延時の製造性、さらには穴拡げ性にも悪影響を及ぼすため、0.1質量%を上限とする。
S:0.0001〜0.01質量%
低S化は穴拡げ性向上に有効であるが、極低S化は経済的に不利であることから、0.0001質量%を下限とする。上限を0.01質量%とするのは、これを超えるSの添加は、鋼板の穴拡げ性に悪影響を及ぼすためである。より好ましくは、0.003質量%を上限とする。
Al:0.001〜0.2質量%
Alは、脱酸元素として有効である。このため、0.001質量%を下限とする。一方過剰添加は穴拡げ性、溶接性およびめっき濡れ性を損なうため0.2質量%を上限とする。好ましくは、0.005〜0.08質量%の範囲である。
B :0.0001〜0.01質量%
Ti:0.005〜0.3質量%
B、Tiは、本発明にとって極めて重要である。即ち、BとTiとを複合添加し、かつMn量を上述のように2.0質量%以上とすることで初めて良好な穴拡げ性が得られる。
Bは、0.0001質量%以上の添加で粒界の強化や鋼材の高強度化に有効である。さらに、焼入れ性を向上させ、ベイナイト相などの生成を強く抑制し、マルテンサイト単一相の生成に寄与する。これらの効果を得るためのBの含有量としては、0.0001質量%以上である。しかしながら、含有量が0.01質量%を超えると上記の効果が飽和するばかりでなく、熱間加工性が低下するため、上限を0.01質量%とする。
Tiは、鋼中に不可避的に存在するNがBと結合して、Bの効果が無くなり焼入れ性が低下することを防止する。そのような効果を得るための下限は、0.005%である。更に、フェライト変態を抑制する効果があるため、マルテンサイト主相を得るのに効果的である。過剰添加は、穴拡げ性の劣化を招くことから、上限は、0.3質量%とする。
Mo:0.11〜1.0質量%
Nb:0.003〜0.3質量%
さらに、本発明が対象とする鋼は、強度−穴拡げ性バランスのさらなる向上を目的として、Mo,Nbを添加してもよい。Moの含有量は、0.11質量%以上にてその効果が得られる。しかしながら、1.0質量%を越えるとコストの上昇が問題となるため、上限は、1.0質量%とする。Moは、その他に、焼入れ性を向上させ、かつ、溶接時の熱影響部において軟化を防止する効果も有する。
Nbは、微細な炭化物、窒化物または炭窒化物を形成して、鋼板の強化に極めて有効である。また、フェライト変態を遅滞させ、ベイナイトおよびベイニティックフェライトの生成を助長する。さらには、溶接熱影響部の軟化抑制にも効果的であることから、0.003質量%以上の添加とする。一方で、過剰添加は、延性や熱間加工性を劣化させることから、上限を0.3質量%とする。
Co:0.01〜1.0質量%
W :0.01〜0.3質量%
また、本発明に係る鋼板は、さらにCo、Wの1種または2種を含有してもよい。
Coは、ベイナイト変態制御による強度−穴拡げ性の良好なバランスを得るため、0.01質量%以上の添加とする。一方、添加の上限は特に設けないが、高価な元素であるため多量添加は経済性を損なうので、1.0質量%以下にすることが望ましい。
Wは、0.01質量%以上で強化効果が現れる。Wの含有量が0.3質量%を超えると加工性に悪影響を及ぼすため、0.3質量%を上限とする。
Zr、Hf、Ta、V:合計で0.001〜1.0質量%
さらに、本発明が対象とする鋼は、強度と穴拡げ性とのバランスのさらなる向上を目的として強炭化物形成元素であるZr、Hf、Ta、Vの1種または2種以上を合計で0.001質量%以上添加してもよい。一方で、延性や熱間加工性の劣化を招くことから、1種または2種以上の合計含有量の上限を1.0質量%とする。
Ca、Mg、Rem:0.0001〜0.5質量%
Ca、Mg、Remは、適量添加により介在物制御、特に微細分散化に寄与することから、1種又は2種以上の合計で0.0001質量%以上添加することが好ましい。一方で過剰添加は鋳造性や熱間加工性などの製造性および鋼板製品の延性を低下させるため0.5質量%を上限として添加することが好ましい。
不可避的不純物として、例えばNやSnなどがあるがこれらの元素を合計で0.2質量%以下の範囲で含有しても本発明の効果を損なうものではない。
次に、このような穴拡げ性に優れた高強度鋼板の製造方法について以下に説明する。
熱延後、冷延・熱処理して本発明の鋼板を製造する場合には、所定の成分に調整されたスラブを直接もしくは一旦1000℃以下に冷却した後再加熱して熱延を行う。鋳造ままの鋼片をそのまま加熱して熱延すれば、加熱原単位を減少させることができる。また鋼片を1000℃以下まで冷却すれば、最終製品の延性を向上させることができる。
このときの再加熱温度は1100℃以上1300℃以下とすることが望ましい。再加熱温度が高温になると、粗粒化や厚い酸化スケール形成の原因となる。一方、低温加熱では圧延時の変形抵抗が大きくなってしまう。
また、熱延完了温度は鋼の化学成分によって決まるAr3 変態温度以上で行うのが一般的であるが、Ar3 −100℃程度の温度までであれば最終的な鋼板の特性を劣化させない。
また、冷却後の巻取温度は鋼の化学成分によって決まるベイナイト変態開始温度以上とすることで、冷延時の荷重を必要以上に大きくしなくてもすむが、冷延の全圧下率が小さい場合にはこの限りでない。また、鋼のベイナイト変態開始温度以下で巻き取りを行っても最終的な鋼板の特性を劣化させない。
また熱延後は、高圧デスケーリング装置を用いて鋼板表面に水を吹きつけたり、酸洗をして表面スケールを取り除くことにより、製品の表面洗浄性が改善される。冷延の全圧下率は、最終板厚と冷延荷重の関係から設定されるが、30%以上であれば再結晶させるには十分で、最終的な鋼板の特性を劣化させない。
冷延後加熱する際に、最高到達温度が鋼の化学成分によって決まるAc 温度(例えば「鉄鋼材料学」:W.C.Leslie著、幸田成康監訳、丸善P273)未満の場合には、加熱時に得られるオーステナイト量が少ないので、最終的な鋼板において均一組織を得ることができないのが一般的である。しかしながら、本発明の鋼板においては、最高到達温度を低くすることができる。例えば、最高到達温度がAc以下の温度であっても、充分な量のオーステナイトが得られる。最高到達温度の下限は、Ac−20(℃)であり、上限は860℃である。本発明の鋼板においてAc温度が880℃を超えることは無く、この最高到達温度の上限と、下限の温度は逆転することはない。しかしながら、生産装置の安定性を考慮すればこの下限温度は800℃とするのがより好ましい。この温度域での熱処理時間は鋼板の温度均一化とオーステナイトの確保のために1秒以上が必要である。しかし、熱処理時間が10分を超えると、粒界酸化相生成が促進されるうえ、コストの上昇を招くので1秒〜10分とすることが好ましい。このように、冷延後の熱処理における最高到達温度が低くなることによってエネルギーコストが下がり、効率の高い生産が可能となる。
その後の冷却過程は、均一マルテンサイト相を得るに当たって重要である。ラインの構造上、熱処理後直ちに急速冷却するわけにはいかず、緩冷却過程が入るが、ここでは、フェライトの生成を充分に抑制することが必要である。ここでの冷却速度を0.1℃/s未満にすることはフェライトやパーライトの生成を促進して強度低下を招く懸念のためその下限値を0.1℃/sとする。また、急冷開始温度をあまり低くしないために上限値は20℃/sとする。
このような緩冷却の後、急冷過程に入る。急冷開始温度は、680℃未満であるとフェライト変態が開始され、所望の特性が得られなくなる懸念があるため、680℃を下限とする。一方、急冷開始温度は高いほうが有利であるが、最高到達温度の影響を受けるため、780℃を上限とし、好ましくは750℃以下とする。急冷時の冷却速度は、ベイナイト相の生成を抑制し、均一なマルテンサイト相を得るために重要である。40℃/s未満であるとベイナイトの生成が顕著になるため40℃/sを下限とする。一方、70℃/sを越えると、鋼板が厚い場合(例えば、厚さ1.6mmを越える場合)に冷却コストがかかるため70℃/sを上限とする。
上記の冷却後の到達温度は、そのまま過時効温度とし、その温度で保持する。過時効温度は、350℃を越えると強度の低下を招くため350℃を上限とする。一方、250℃未満であると生産効率が低下するため、250℃を下限とする。好ましくは270℃以上とする。
本発明で得られる鋼板の引張強度は、1100Ma以上である。好ましくは、1180MPa以上である。上限はとくに限定しないが、1600MPa以上とするのは困難であるのでこれを上限とすることが経済的である。穴拡げ性は40%以上で、好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上とする。200%以上とすることは困難なのでこれが実質的な上限である。
また、本発明の鋼は、溶接性にも優れている。溶接方法については、通常行われる溶接方法、たとえばアーク、スポット、TIG、MIG、マッシュおよびレーザー等の溶接方法に適合する。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
本発明に係る鋼板について、鉄鋼連盟規定の穴拡げ試験、JISに準拠した引張り試験を行った。
表1に示すような組成の鋳造スラブを一端室温まで冷却した後、1200℃に加熱し、Ar3 変態温度以上である880℃〜910℃で熱延を完了し、冷却後、各鋼の化学成分で決まるベイナイト変態開始温度以上である550℃で巻き取った厚さ4mmの鋼帯を酸洗し、その後冷延して2mm厚の鋼板とした。
その後昇温速度2.8℃/sで830℃まで昇温し、140秒保持したのち、2.7℃/sの冷却速度で700℃まで冷却し、引き続き50℃/sの冷却速度で300℃まで冷却し、その温度で150秒保持して過時効処理を施した後、冷却した。
これらの鋼板からJIS5号引張り試験片を採取して、引張試験を行った。さらに、鉄鋼連盟規格に準拠して穴拡げ試験を行い、穴拡げ率を求めた。その結果得られた機械的性質と穴拡げ性の結果を表2に示す。表2によると、本発明の鋼板では、穴拡げ性(40%以上)、強度(引張強度で900MPa以上)のバランスに優れていることがわかる。
また、比較例である鋼種S及びAGにおいては、各々B又はTiが添加されておらず、他の元素組成は、本発明の範囲であり、穴拡げ性において劣っていることが分かる。即ち本発明におけるB,Tiの効果を示している。
また、鋼種J,K,Q,Y,AB,AC,AD,及びAHは、本発明鋼であり、強度、穴拡げ性ともに良好であるが、穴拡げ性において他の発明鋼に対してやや劣る。これは、これらの鋼種においてMo及び/またはNbが添加されていないため、冷却過程において組織に不均一性が生じやすくなっているためである。これは、実用に供するにあたって何の問題も生ぜしめるものではないが、Mo及びNbを本発明の範囲内で添加することが好ましいことを示すものである。
また、本発明の条件から外れる比較鋼は、すべて穴拡げ性が劣勢である。
Figure 0004430511
Figure 0004430511

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C :0.08〜0.22%
    Si:0.001〜0.8%
    Mn:2.0〜3.0%
    P:0.001〜0.1%
    S:0.0001〜0.01%
    Al:0.001〜0.2%
    B:0.0001〜0.01%
    Ti:0.005〜0.3%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋳造スラブを、直接または一旦1000℃以下まで冷却した後に再度加熱し、熱延後、巻取った鋼板を酸洗後冷延し、その後最高到達温度をAc −20(℃)以上860℃以下とする熱処理をした後に、0.1〜20℃/sの冷却速度で680℃〜780℃の温度域に冷却し、引き続いて40℃/s〜70℃/sの冷却速度で、250℃〜350℃の温度まで冷却し、引き続いてその温度で10秒〜500秒保持することを特徴とする、引張強度が1100MPa以上であり、且つ穴拡げ率が40%以上である穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法
  2. 前記鋳造スラブが、
    さらに、質量%で、
    Mo:0.11〜1.0%
    Nb:0.003〜0.3%
    の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法
  3. 前記鋳造スラブが、
    さらに、質量%で、
    Co:0.01〜1.0%
    W :0.01〜0.3%
    の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法
  4. 前記鋳造スラブが、
    さらに、質量%で、
    Zr、Hf、Ta、Vの1種または2種以上を合計で0.001〜1.0%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法
  5. 前記鋳造スラブが、
    さらに、質量%で、
    Ca、Mg、Remの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた高強度冷延薄鋼板の製造方法。
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