JP4351465B2 - 穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建材、家電製品、自動車などに適する、穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっきおよび溶融合金化亜鉛めっき高強度鋼板とその製造方法に関する。本発明における亜鉛めっきとは、通常の溶融亜鉛めっきのみならず、合金化溶融亜鉛めっきも含む。めっき層には、純亜鉛の他、Fe、Al、Mg、Cr、などを含有しても構わない。
【0002】
【従来の技術】
近年、特に自動車車体において燃費向上や耐久性向上の観点を目的とした加工性の良い高強度鋼板の需要が高まっている。加えて、衝突安全性やキャビンスペースの拡大のニーズから引張り強度にして780MPa級クラス以上の鋼板が、一部レインフォースなどの部材に使用されつつある。
【0003】
このような高強度材を用いて部材を組みあげる時には、延性、曲げ性、穴拡げ性などが重要となるが、引張り強度で590MPa程度までの高強度鋼板において、これらに対する対策が講じられている。
【0004】
たとえば、穴拡げ性については、技術文献1にあるように、主相をベイナイトとして穴拡げ性を向上させ、さらには張り出し成形性についても、第2相に残留オーステナイトを生成させることで現行の残留オーステナイト鋼並の張り出し性を示すことが開示されている。さらには、マルテンサイト変態開始温度(Ms温度)以下でオーステンパ処理をすることで体積率2〜3%の残留オーステナイトを生成させると、引張り強度×穴拡げ率が最大となることも示されている。しかし、これらは、590MPa程度の鋼板におけるものであり、900MPaを超えたものについては単純に成り立たない。
【0005】
また、高強度材の高延性化を図るために、複合組織を積極的に活用することが一般的である。しかし、第2相にマルテンサイトや残留オーステナイトを活用した場合に、穴拡げ性が著しく低下してしまうという問題がある(例えば、技術文献2)。また、本文献中には、主相をフェライト、第2相をマルテンサイトととし、両者の硬度差を減少させることで穴拡げ率が向上することが開示されているが、穴拡げ率で70%未満と、著しく改善されているわけではない。
【0006】
また、引っ張り強度900MPa以上の強度で、溶融亜鉛メッキを施したものとして、いくつかの開示例がある。これらを、以下にあげる。
【0007】
1) 特許文献1及び特許文献2においては、高い強度を得られる技術が開示されているが、複合組織が主体であるために、相間の硬度差が出てしまい、穴拡げ率が30%以下と低くなっている。
【0008】
2) 特許文献3においては、C濃度を0.1〜0.2%、Mn濃度を2〜3%とすることで、オーステナイト相を安定化させ、めっきラインで熱処理後、480℃〜560℃で低温保持することでオーステナイト相を残すことによって強度と加工性を得る方法が開示されている。しかしながら、残留オーステナイト相があるため、不均一な複合組織になりやすく、穴拡げ率は向上しない。
【0009】
3) 特許文献4においては、C0.05%、Si0.55%、Mn1.59%に、Mo,Ti,Cr,Nb,B、V等を微量に添加し、93%の穴拡げ率を得ているが,Mnが低いため、熱処理時の加熱温度が低い場合や、熱処理後の冷却速度が低い場合等に不均一複合組織になってしまい、安定的に高い穴拡げ性を得ることが困難である。
【0010】
4) 特許文献5においては、C0.16%、Mn2.3%、Ti0.01%にNb,Bを微量に添加した例が開示されており、強度が1180MPa程度を得ているが、複合組織を基本としたものであるため、相間の硬度差のためにその穴拡げ率は、40%以下にとどまっている。
【0011】
従って、引っ張り強度において900MPa以上の強度を持ち、穴拡げ率において45%以上の値を持つ、穴拡げ性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板は、存在しない。
【0012】
【非特許文献1】
CAMP−ISIJ vol.13(2000)p.395
【非特許文献2】
CAMP−ISIJ,vol.13(2000),p.391
【特許文献1】
特許第2607906号公報
【特許文献2】
特許第2862187号公報
【特許文献3】
特開平1−198459号公報
【特許文献4】
特開2001−355043号公報
【特許文献5】
特許第3037767号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような問題の原因の一つに、連続溶融亜鉛めっき工程における冷却能力が挙げられる。即ち、同工程においては、一般に鋼板が最高温度に到達した後、0.1℃/s〜20℃/sという、比較的低い冷却速度が採用されているため、組織が不均一になりやすい。その結果穴拡げ性が劣化することになる。さらに、合金化溶融亜鉛めっきを施したような鋼板においては、溶融亜鉛めっき槽に鋼板を浸漬した後に連続的に熱処理を施し、合金化させ、その後連続的に巻き取ることとなるが、この合金化のための熱処理過程において、それまでに作りこまれた鋼板中の組織において、鉄中に過飽和に固溶した炭素が鉄炭化物として析出し、鋼板中に微細に析出させた炭化鉄が粗大化するなどの現象が起こり、組織が変質してしまう。それに伴い、穴拡げ性が著しく劣化してしまうのである。
【0014】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決し、引張り強度が900MPa以上で優れた穴拡げ性を有する溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき高強度鋼板、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々検討を行った結果、化学成分を限定することで、引張り強度が900MPa以上で優れた穴拡げ性を有する溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができることを発見した。本鋼板は、〔(穴拡げ試験後の穴の内径/穴拡げ試験前の穴径)−1〕×100で定義される穴拡げ率が45%以上を有し、耐食性に優れることはもちろん、溶接熱影響部の軟化を抑制して溶接部の疲労耐久性にも優れる。
【0016】
本発明は、上記知見に基づいて完成されたもので、その要旨とするところは以下の通りである。
【0017】
(1)質量%で、
C :0.03〜0.12%、
Si:0.001〜0.8%、
Mn:2.3〜3.3%、
P:0.001〜0.1%、
S:0.0001〜0.01%、
Al:0.001〜0.2%
Mo:0.11〜1.0%、
Ti:0.005〜0.3%
を含有し、残部をFeおよび不可避的不純物とし、下記(7)式によって求められるマルテンサイト変態開始温度Ms(℃)が440℃未満であり、引張強度が900MPa以上であり、且つ穴拡げ率λ(%)と引張強度TS(MPa)の積が5×104(MPa%)以上であり、マルテンサイト単相組織からなることを特徴とする穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。
Ms(℃)=561−474×[C%]−33×[Mn%]−17×[Ni%]−17×[Cr%]−21×[Mo%]……(7)式
【0018】
(2) さらに、質量%で、
Ni:0.01〜2.0%、
Cu:0.001〜2.0%、
の1種または2種を含有することを特徴とする(1)に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。
【0019】
(3) さらに、質量%で、
B:0.0001〜0.01%、
Nb:0.003〜0.3%、
の1種または2種を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。
【0020】
(4) さらに、質量%で、
Cr:0.01〜2.0%
Co:0.01〜1%、
W :0.01〜0.3%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。
【0021】
(5) さらに、質量%で、
Zr、Hf、Ta、Vの1種または2種以上を合計で0.001〜1%含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。
【0022】
(6) さらに、質量%で、Ca、Mg、Remの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。
【0023】
(7)炭素含有量と引張り強度TS(MPa)及びビッカース硬さHR(Hv)との間に下記(1)式及び(2)式の関係が成り立つことを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。
HR(Hv)≧200+982×[C%]……(1)式
TS(MPa)≧660+3206×[C%]……(2)式
(8)Moの含有量と、Tiの含有量とが、
Mo(質量%)+10×Ti(質量%)≧0.3
を満足することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。
【0024】
(9)前記(1)〜(8)の何れか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、(1)〜(6)、(8)のいずれか1項に記載の成分からなる鋳造スラブを直接または一旦1000℃以下まで冷却した後に再度加熱し、熱延後巻取った熱延鋼板を酸洗後冷延し、その後雰囲気を酸素濃度が50ppm以下、露点を−20℃以下とし、最高到達温度をAc3(℃)以上1100℃以下とする熱処理をした後に、0.1〜20℃/秒の冷却速度で亜鉛めっき浴温度−20℃〜亜鉛めっき浴温度+50℃の温度域に冷却し、引き続いて同温度域でめっき浸漬を含めて1秒〜1000秒保持を行うことを特徴とする穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板の製造方法。
【0025】
(10)(9)に記載の保持後、合金化処理を450℃〜580℃にて行うことを特徴とする穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板の製造方法。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
先ず、本発明における鋼板成分の好適な範囲の限定理由について述べる。
【0028】
C:0.03〜0.12%
良好な強度−穴拡げ性バランスを確保する目的で添加する元素である。素地の微細均一化についても影響を与える。強度を確保するために0.03質量%(以下、同じ)以上を必要とする。0.12%を越えると、穴拡げ性が低下するのでこれを上限とする。更に、溶接部の強度が劣化しやすくなる。0.04〜0.10%がより好ましい範囲である。
【0029】
Si:0.001〜0.8%
Siは、強度延性バランスを劣化させる比較的粗大な炭化物の生成を抑制する目的で添加する元素であるがめっき性を著しく劣化させるので上限を0.8%とする。また、過剰添加は溶接性に悪影響を及ぼす。表面性状の観点から0.6%を上限とするのが好ましい。一方で、極低Si化は製造コストの高騰を招くことから、めっき性を大きくは悪化させない0.001%以上の添加とすることが望ましい。
【0030】
Mn:2.3〜3.3%
Mnは、本発明にとって重要である。即ち、前述した溶融亜鉛めっきラインにおける比較的遅い冷却速度に対してMnを所定の範囲に限定することが穴拡げ性の観点で極めて重要であることを見出した。フェライト変態及びベイナイト変態を抑制して、面積率最大の相である主相をマルテンサイト相とすることで均一組織を得る。さらに、強度低下と穴拡げ性劣化の1つの原因である炭化物析出や、パーライト生成を抑制するため2.3質量%以上とする。好ましくは、2.5%超を下限とする。一方、過剰添加は、偏析などによって延性や穴拡げ性の著しい低下を招くために3.3質量%を上限とした。
【0031】
P:0.001〜0.1%
Pは、強化元素である。また、低P化は穴拡げ性を向上させるが、極低化は経済的にも不利であることから0.001質量%を下限とした。また、多量添加は、溶接性や鋳造時や熱延時の製造性、さらには穴拡げ性にも悪影響を及ぼすため、0.1%を上限とした。
【0032】
S:0.0001〜0.01%
Sは、低S化は穴拡げ性向上に有効である。一方、極低S化は経済的に不利であることから、0.0001質量%を下限とし、また、0.01質量%を上限としたのは、これを超える量の添加では、鋼板の穴拡げ性に悪影響を及ぼすためである。より好ましくは、0.003%を上限とする。
【0033】
Al:0.001〜0.2%
Alは、脱酸元素として有効である。このため、0.001質量%を下限とした。一方過剰添加は穴拡げ性、溶接性およびめっき濡れ性を損なうため0.2%を上限とした。好ましくは、0.005〜0.08%の範囲である。
【0034】
Mo:0.11〜1%
Ti:0.005〜0.3%
Mo、Tiは、本発明にとって極めて重要である。即ち、MoとTiを複合添加し、かつMn量を上述のように2.3%以上とすることで初めて良好な穴拡げ性が得られる。Moの添加量は、0.11%以上にてその効果が得られる。しかしながら、1%を越えるとコストの上昇が問題となるため、上限は、1.0%とする。Moは、その他に、焼入れ性を向上させ、かつ、溶接時の熱影響部において軟化を防止する効果も有する。
【0035】
Tiも上述の観点からその下限を0.005質量%とする。また、過剰添加は、延性と穴拡げ性の劣化を招くことから、上限を0.3%とする。
【0036】
Ti及びMoは、基本的に強度−穴拡げ性バランスを劣化させる炭化物やパーライトの生成を抑制する。また、フェライト変態及びベイナイト変態を抑制して、主相をマルテンサイトにするのに有効であり、良好な強度−穴拡げ性およびめっき材の溶接性や溶接後の疲労耐久性の極めて良好なバランスを得るために有効である。しかし、Tiだけを添加してもその効果は、本発明の目的に対して充分ではなく、上記の通り、MnとMoと同時に添加することが必須である。より好ましくは、Mo:0.20以上、Ti:0.015以上とする。MoとTiの複合添加の効果をより助長するために、Mo(質量%)+10×Ti(質量%)≧0.3%とすることが望ましい。
【0037】
さらに、本発明が対象とする鋼は、強度−穴拡げ性バランスに悪影響を与えずにめっき性を向上させることを目的として、Cu,Niを添加することができる。Niは、めっき性向上以外には焼き入れ性の向上の目的もあり、0.01質量%以上とし、2質量%を超えると、加工性に悪影響を及ぼすため、これを上限とした。
【0038】
Cuは、めっき性向上以外には強度の向上の目的もあり、0.001質量%以上の添加とし、2質量%を超えると、加工性および製造性に悪影響を及ぼす。
【0039】
特にSi量が、0.3%以上添加されている場合には、Niを0.2%以上、Cuを0.1%以上とすることがめっき性と合金化反応性の観点から望ましい。
【0040】
さらに、本発明が対象とする鋼は、強度−穴拡げ性バランスのさらなる向上を目的として、Nb,Bを添加することができる。
【0041】
Nbは、微細な炭化物、窒化物または炭窒化物を形成して、鋼板の強化に極めて有効である。また、フェライト変態及びベイナイト変態を遅滞させ、マルテンサイトの生成を助長する。さらには、溶接熱影響部の軟化抑制にも効果的であることから、0.003質量%以上の添加とし、一方で、過剰添加は、延性や熱間加工性を劣化させることから、上限として0.3質量%とした。
【0042】
Bは、0.0001質量%以上の添加で粒界の強化や鋼材の高強度化に有効であるが、その添加量が0.01質量%を超えるとその効果が飽和するばかりでなく、Nbと同様に熱間加工性が低下するため、上限を0.01質量%とした。
【0043】
また、マルテンサイト相の体積率を増加させるためには、上述のTi及びMoに加えて、0.01%以上のNbと0.0006%以上のBを同時に添加することが好ましい。
【0044】
さらには、Cr、Co、Wの1種または2種以上を含有できる。
【0045】
Crは、強化および炭化物生成の抑制とマルテンサイト生成の目的から添加する元素で、0.01%以上とし、2%を超える量の添加では、加工性やめっき性に悪影響を及ぼすため、これを上限とした。
【0046】
Coは、ベイナイト変態制御による強度−穴拡げ性の良好なバランスのため、0.01質量%以上の添加とした。一方、添加の上限は特に設けないが、高価な元素であるため多量添加は経済性を損なうため、1質量%以下にすることが望ましい。
【0047】
Wは、0.01質量%以上で強化効果が現れ、0.3質量%を上限としたのは、これを超えると、加工性に悪影響を及ぼすためである。
【0048】
さらに、本発明が対象とする鋼は、強度と穴拡げ性とのバランスのさらなる向上を目的として強炭化物形成元素であるZr、Hf、Ta、Vの1種または2種以上を合計で0.001質量%以上添加としてもよい。一方で、延性や熱間加工性の劣化を招くことから、1種または2種以上の合計添加量の上限として1質量%とした。
【0049】
Ca、Mg、Remは、適量添加により介在物制御、特に微細分散化に寄与することから、1種又は2種以上の合計で0.0001%以上とし、一方で過剰添加は鋳造性や熱間加工性などの製造性および鋼板製品の延性を低下させるため0.5質量%を上限とした。Remとして、Ceを用いる場合、介在物微細分散化に対する効果は、特に顕著なものがある。
【0050】
不可避的不純物として、例えばNやSnなどがあるがこれら元素を合計で0.2質量%以下の範囲で含有しても本発明の効果を損なうものではない。
【0051】
次に、本鋼板の好ましい組織について述べる。
【0052】
900MPa以上の引張り強度と、優れた穴拡げ性を両立させるためには、マルテンサイトの単一組織が適している。単一組織とは、95%超の体積率のマルテンサイトを母相とする組織である。99%超であることがより好ましい。
【0053】
ここで、マルテンサイト単相組織であるとは、その炭素含有量と引張り強度TS(MPa)及びビッカース硬さHR(Hv)との間に次の関係式
HR(Hv)≧200+982×[C%]……(1)式
TS(MPa)≧660+3206×[C%]……(2)式
が成り立ち、且つ引張り強度TSと穴拡げ率λの間に
TSxλ≧5×104[MPa%]……(3)式
が成り立つ場合をいう。ここで、(1)式及び(2)式は、マルテンサイト鋼板におけるビッカース硬さと、炭素含有量の間の関係より求められるものである。
【0054】
好ましくは、以下に規定する(4)式、(5)式、(6)式で求められる。
HR(Hv)≧205+995×[C%]……(4)式
TS(MPa)≧670+3220×[C%]……(5)式
TS×λ(MPa%)≧5.5×104……(6)式
ビッカース硬さは、荷重10gf〜1kgfで測定した値と定義する。
【0055】
また、その組織は、鋼板の加熱処理後の降温時にMs温度以下で変態開始することによって生成した組織と定義する。ここで、Ms温度は、前出“The Physical Metallurgy of Steels”:W.C.Leslie著 McGraw−Hill Book Company p215に掲載される以下の(7)式で見積もることができる。
Ms(℃)=561−474×[C%]−33×[Mn%]−17×[Ni%]−17×[Cr%]−21×[Mo%]……(7)式
このような変態は、板状の試料を用いて、実際の製造工程と同一の熱処理を加え、その間の熱膨張率の変化を測定することによって確認できる。変態が生じることによって熱膨張率が変化するために、熱膨張に変化が生じ、容易に変態を確認することができる。(例えば”鉄鋼材料の科学”谷野 満、鈴木 茂著、内田老鶴圃 p87)鋼板において生じる変態には、フェライト変態、ベイナイト変態、マルテンサイト変態などがあり、フェライト変態、ベイナイト変態は、マルテンサイト変態よりも高い温度で始まる。
【0056】
従って、通常の鋼板においては冷却過程において、これらの変態が順次生じるため、フェライト、ベイナイト、マルテンサイト、或いはさらに変態せずに残留したオーステナイトの複合した組織となり、各々の組織の硬度が異なるため、そのような組織では、穴拡げ性が悪化する。これらの変態組織のうち、単一の変態のみを生じさせることができれば、硬度差の無い均一な変態組織を得ることができ、穴拡げ性のよい鋼板を得ることができる。しかしながら、高い温度で生じるフェライト変態、ベイナイト変態のみを生じさせることは困難である。何故なら、これらの変態が完全に終了する前に、温度が下がり、マルテンサイト変態が生じ始めてしまうためである。このような現象は、加熱、冷却のスケジュールに変更を加えることで回避できるが、それは、煩雑であり、生産効率の低下、ひいては生産コストの上昇を招く。
【0057】
従って、鋼板の冷却過程において高い温度で生じるフェライト変態、ベイナイト変態を完全に抑制し、最終的にマルテンサイト変態を起こすことによって、硬度差の無い均一な単一マルテンサイト組織をえることができるのである。このような組織は、本発明になる鋼板の特徴であり、900MPa以上の高い強度と45%以上の高い穴拡げ率を持つのである。
【0058】
また、合金化溶融亜鉛めっき工程においては、溶融亜鉛めっき槽浸漬後、合金化のため昇温する。従ってこのマルテンサイト変態温度、即ちMs温度は、溶融亜鉛めっき槽温度より低いことが必要となる。何故なら、Ms点が溶融亜鉛めっき槽温度より高ければ、めっき槽浸漬以前にマルテンサイト変態が開始し、終了する前に合金化工程にて昇温することとなり、そのときにマルテンサイト変態の進行が停止してしまい、合金化後の冷却時において、マルテンサイト変態が再度進行しても、このような緩慢な変態によっては、均一な組織を得ることはできない。本発明になる鋼板の製造方法において、合金化処理は、後述のように450℃〜580℃で行われるから、このMs温度は440℃未満であることが望ましい。
【0059】
このような組織を有する穴拡げ性に優れた高強度鋼板および製造方法について以下に説明する。
【0060】
熱延後冷延・熱処理して本発明の鋼板を製造する場合には、所定の成分に調整されたスラブを直接もしくは一旦1000℃以下に冷却した後再加熱して熱延を行う。鋳造ままの鋼片をそのまま加熱して熱延することは加熱原単位の減少になり好ましく、また鋼片を1000℃以下まで冷却すると最終製品の延性の観点から好ましい。
【0061】
このときの再加熱温度は1100℃以上1300℃以下とすることが望ましい。再加熱温度が高温になると粗粒化や厚い酸化スケールが形成され、一方、低温加熱では圧延時の変形抵抗が高くなってしまう。
【0062】
また、熱延完了温度は鋼の化学成分によって決まるAr3変態温度以上で行うのが一般的であるが、Ar3−100℃程度の温度までであれば最終的な鋼板の特性を劣化させない。また、冷却後の巻取温度は鋼の化学成分によって決まるベイナイト変態開始温度以上とすることで、冷延時の荷重を必要以上に高めることがさけられるが、冷延の全圧下率が小さい場合にはこの限りでなく、鋼のベイナイト変態温度以下で巻き取られても最終的な鋼板の特性を劣化させない。
【0063】
また熱延後は、高圧デスケーリング装置や酸洗することなどで表面スケール削除を行うと製品での表面清浄がよくなり、めっきを施す際に有利である。その後、冷延後熱処理し、溶融亜鉛めっきを施すことで最終製品とする。また、後処理として更に電気めっきを施してもよい。また、冷延の全圧下率は、最終板厚と冷延荷重の関係から設定されるが、30%以上であれば再結晶させるには十分で、最終的な鋼板の特性を劣化させない。
【0064】
冷延後加熱する際に、最高到達温度が鋼の化学成分によって決まる温度Ac3温度以上である必要がある。Ac3温度については、前出”The physical Metallurgy”257掲載の以下の(8)式で求めることができる。
【0065】
Ac3=910−203×(C%)1/2−15.2×Ni%
+44.7×Si%+104×V%+31.5×Mo%
−30×Mn%−11×Cr%+400×Al%、−400×Ti%……(8)式
最高到達温度がAc3温度に等しいか、Ac3温度よりもわずかに高い場合、オーステナイト相への変態が完全に終了しないうちに鋼板温度がAc3以下の温度に低下してしまう場合がある。この場合、未変態のフェライトが残ってしまい、冷却後の最終鋼板の組織が均一なものにならず、穴拡げ性に劣ったものとなってしまう。従って、最高到達温度の下限は、Ac3温度、好ましくはAc3温度+10℃である。また、最高到達温度が高温となるほど結晶粒の粗大化や表面酸化が促進されるうえ、製造コストの上昇をまねくために、最高到達温度の上限を1100℃とした。Ac3+100(℃)がより好ましい上限である。この温度域での熱処理時間は鋼板の温度均一化とオーステナイトの確保のために1秒以上が必要である。しかし、10分超では、粒界酸化相生成が促進されるうえ、コストの上昇を招くので1秒〜10分とすることが好ましい。ここで、加熱時の雰囲気が酸素濃度が50ppm以下で露点が−20℃以下とした。酸素濃度が50ppmを超えたり、露点が−20℃を超えると、鋼板のめっき性、特に濡れ性が劣化し、不めっきの原因となる。
【0066】
その後の冷却はオーステナイト相からフェライト相への変態を抑制し、更にベイナイト相への変態をも抑制し、マルテンサイト相を生成させるのに重要である。この冷却速度を0.1℃/秒未満にすることは、フェライトやパーライトの生成を促進して強度低下を招く懸念があることから、冷却速度の下限を0.1℃/秒とした。一方、冷却速度の上限は高いほうが有利であるが、連続溶融亜鉛めっきライン通板時の緩冷却によっても高い穴拡げ性を確保するのが本発明の目的であるため、あえて上限を20℃/秒とした。本発明鋼板は、10℃/秒以下の領域の冷却速度、即ち、従来の鋼板においては強度、及びその穴拡げ性を安定的に確保しにくい冷却速度条件下でも、その目標とする900MPa以上の強度及び45%以上の穴拡げ性を充分に安定的に確保できるのである。更に、この冷却過程において、0.1℃/秒〜20℃/秒の範囲で単一の冷却速度で目標とする温度まで冷却するのみならず、前記範囲内の冷却速度を複数個組み合わせることにより段階的に冷却速度を変えて目標とする温度まで冷却してもよい。
【0067】
冷却がめっき浴温度−20℃未満まで行われると、めっき浴浸入時の抜熱が大きいことなどの操業上の問題がある。また、冷却停止温度がめっき浴+50℃を超えると、操業上の問題に加え、その後の保持時に炭化物が生成してしまい、強度低下を招くため、これを上限とした。この温度域での停留時間が長時間になると生産性上好ましくないうえ、炭化物が生成してしまうことから1000秒以内とすることが望ましい。また、めっき濡れ性を確保するため1秒以上保持し、好ましくは15秒から10分保持する。
【0068】
また、合金化処理を行う場合には、450℃以上580℃以下とした。合金化処理温度が450℃未満であると合金化の進行が遅く、生産性が悪い。また、580℃を超えると炭化物析出を伴い、材質劣化する。
【0069】
本発明で得られる鋼板の引っ張り強度は、900Ma以上である。好ましくは、980MPa以上である。上限はとくに限定しないが、1600MPa以上とするのは困難である。穴拡げ率λ(%)は好ましくは45%以上で、より好ましくは60%以上とする。200%以上とすることは困難なのでこれが実質的な上限である。穴広げ率は鉄鋼連盟規格JFF T1001−1999に示される手法に従って測定した値と定義する。
【0070】
また、本発明の鋼は、溶接性にも優れている。溶接方法については、通常行われる溶接方法、たとえばアーク、スポット、TIG、MIG、マッシュおよびレーザー等の溶接方法に適合する。
【0071】
【実施例】
本発明になる鋼板について、ミクロ組織観察、鉄鋼連盟規定の穴拡げ試験、JISに準拠した引張り試験を行った。
【0072】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0073】
(実施例1)
表1、表2(表1のつづき)に示すような組成の鋳造スラブを一端室温まで冷却した後、1200℃に加熱し、Ar3変態温度以上である880℃〜910℃で熱延を完了し、冷却後各鋼の化学成分で決まるベイナイト変態開始温度以上である550℃で巻き取った厚さ2.5mmの鋼帯を酸洗後、冷延して1.2mm厚の鋼板とした。
【0074】
その後、Ac3変態温度を各鋼の成分(質量%)から前出の(8)式より求めた。
【0075】
Ac3変態温度から最高到達温度を決めた。一部比較鋼を除き、条件を満たす温度として870℃を選択し、各鋼とも最高到達温度は、870℃一定とした。昇温、冷却過程は、以下のように行った。即ち、昇温速度10℃/sで(最高到達温度−110)(℃)、即ちここでは、760℃まで昇温し、次に昇温速度2℃/秒で最高到達温度の870℃まで昇温したのち、0.2℃/秒の冷却速度で(最高到達温度−20)(℃)である温度、即ちここでは、850℃まで冷却し、更に650℃までを2℃/秒で冷却し、その後冷却速度を10℃/秒として500℃まで冷却し、引き続き、冷却速度を2℃/秒として460℃まで冷却した。引き続き460℃の溶融亜鉛めっき槽に浸漬し、460℃で10秒保持した。その後3℃/秒の昇温速度で500℃まで加熱し、500℃で30秒保持して合金化処理を施した後、冷却した。
【0076】
これらの鋼板からJIS5号引張り試験片を採取して、機械的性質を測定した。さらに、鉄鋼連盟規格に準拠して穴拡げ試験を行い、穴拡げ率λを求めた。各鋼の機械的性質及び穴拡げ率を表3に示す。また、ここで、前出の(2)式に関して、
F=TS(MPa)−659.54−3206.2×[C%]
を計算し、掲載した。F≧0であれば(2)式を満たし、F<0であれば満たさない事がわかる。また、TS×λも掲載した。
【0077】
本発明の要綱を満たす発明鋼は、穴拡げ率λ(45%以上)、強度(引張り強度で900MPa以上)のバランスに優れていることがわかる。本発明鋼において、めっきの密着性などで特に問題は無く、めっき性は良好であるが、Ni及びCuが添加されている鋼種AB及びACにおいては、めっき外観の仕上がりが更に良好であることが分かった。即ち、これらの添加によって更にめっきの密着性等が向上し、めっき性がより良好になっていることが分かる。
【0078】
また、比較例である鋼種Qにおいては、Mo,Tiが添加されておらず、他の元素組成は、本発明の範囲であり、穴拡げ性において劣っていることが分かる。即ち本発明におけるMo,Tiの効果を示す例である。鋼種T及びUは、本発明鋼であり、強度、穴拡げ性ともに良好であるが、穴拡げ性が他の発明鋼に比較してやや劣る。
【0079】
鋼種T及び鋼種Uにおいては、Mo(質量%)+10×Ti(質量%)が各々0.23(%)、0.21(%)である。この二鋼種以外の本発明になる鋼において、この量はすべて0.3(%)以上であり、発明実施の形態の項で述べたようにMo(質量%)+10xTi(質量%)≧0.3(%)が望ましいことが分かる。また、鋼種J及びKは、発明鋼であり、各々穴広げ率が76%、71%と充分な穴拡げ性を示すが、鋼種T及びUを除く本発明鋼と比較するとやや劣っている。これは、鋼種J及びKにおいて、Nb及びBが添加されていないため、冷却過程において組織に不均一性が生じやすくなっているためである。これは、実用に供するにあたって何の問題も生じせしめることはないが、Nb及びBを本発明の組成範囲内で添加することが好ましいことを示すものである。また、表1、表2(表1のつづき)に示された比較鋼において、F>0であるものがあるが、これらは、すべてEl×λの値が5×104以下である。これは、フェライト変態、ベイナイト変態が充分に抑制されず、最終的にフェライト相、ベイナイト相、マルテンサイト相の複合組織となってしまったものである。従って穴拡げ性に劣る。
【0080】
また、本発明の条件から外れる比較鋼は、すべて穴拡げ性が劣勢である。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
(実施例2)
表1、表2(表1のつづき)に示した鋼のうち、鋼種A及び鋼種Rについて、冷延後の熱処理条件を変化させた。即ち、実施例1における熱処理条件において、最高到達温度及び、冷却過程における(最高到達温度−20)(℃)から650℃までの冷却速度を変化させた。その他の条件は、実施例1における条件と同一とした。(但し、最高到達温度が異なるため、昇温過程において10℃/秒の加熱速度で昇温する過程の到達温度であるところの(最高到達温度−110)(℃)は異なる。)それらの鋼について機械的性質及び穴拡げ性を測定した結果を表4に示す。ここでも、実施例1と同様にF及びTS×λを計算したものを掲載する。表4に示された比較鋼において、実施例1で見たようにF>0であるものがあるが、これらは、すべてEl×λの値が5×104以下である。これは、フェライト変態、ベイナイト変態が充分に抑制されず、最終的にフェライト相、ベイナイト相、マルテンサイト相の複合組織となってしまったものである。従って穴拡げ性に劣る。
【0085】
本発明の条件を満たす発明鋼は、穴拡げ率(45%以上)、強度(引張り強度で900MPa以上)のバランスに優れていることがわかる。
【0086】
一方、本発明の条件から外れる比較鋼は、穴拡げ性が劣勢である。
【0087】
【表4】
【0088】
(実施例3)
表1、表2(表1のつづき)に示した鋼のうち、鋼種Sについて鋳造スラブをそのまま実施例1と同じ条件で加熱〜冷延まで行い、冷延後に以下のように処理を行った。即ち、昇温速度5℃/sで最高到達温度まで昇温し、90秒保持し、次に5℃/秒の冷却速度で680℃まで冷却し、その後冷却速度を変化させて460℃まで冷却した。引き続き460℃の溶融亜鉛めっき槽に浸漬し、その後3℃/秒の昇温速度で500℃まで加熱し、30秒保持して合金化処理を施した後、冷却した。以上の処理過程において、最高到達温度、及び680℃から460℃までの冷却速度を変化させた。処理終了後、機械試験及び穴拡げ性の測定を行った。結果を表5に示す。ここでも、実施例1と同様にF及びTS×λを計算したものを掲載する。本発明の条件を満たす発明鋼は、穴拡げ性(45%以上)強度(引張り強度で900MPa以上)のバランスに優れていることがわかる。
【0089】
【表5】
【0090】
【発明の効果】
本発明により、引張り強度が900MPa以上であり、穴拡げ率λ(%)と引張強度TS(MPa)の積が5×104(MPa%)以上であり、マルテンサイト単相組織からなる溶融亜鉛めっき高強度鋼板およびその製造方法を得ることができる。
Claims (10)
- 質量%で、
C :0.03〜0.12%、
Si:0.001〜0.8%、
Mn:2.3〜3.3%、
P:0.001〜0.1%、
S:0.0001〜0.01%、
Al:0.001〜0.2%
Mo:0.11〜1.0%、
Ti:0.005〜0.3%
を含有し、残部をFeおよび不可避的不純物とし、下記(7)式によって求められるマルテンサイト変態開始温度Ms(℃)が440℃未満であり、引張強度が900MPa以上であり、且つ穴拡げ率λ(%)と引張強度TS(MPa)の積が5×104(MPa%)以上であり、マルテンサイト単相組織からなることを特徴とする穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。
Ms(℃)=561−474×[C%]−33×[Mn%]−17×[Ni%]−17×[Cr%]−21×[Mo%]……(7)式 - さらに、質量%で、
Ni:0.01〜2.0%、
Cu:0.001〜2.0%、
の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。 - さらに、質量%で、
B:0.0001〜0.01%、
Nb:0.003〜0.3%、
の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。 - さらに、質量%で、
Cr:0.01〜2.0%
Co:0.01〜1%、
W :0.01〜0.3%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。 - さらに、質量%で、
Zr、Hf、Ta、Vの1種または2種以上を合計で0.001〜1%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。 - さらに、質量%で、Ca、Mg、Remの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。
- 炭素含有量と引張り強度TS(MPa)及びビッカース硬さHR(Hv)との間に下記(1)式及び(2)式の関係が成り立つことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。
HR(Hv)≧200+982×[C%]……(1)式
TS(MPa)≧660+3206×[C%]……(2)式 - Moの含有量と、Tiの含有量とが、
Mo(質量%)+10×Ti(質量%)≧0.3
を満足することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、請求項1〜6、8のいずれか1項に記載の成分からなる鋳造スラブを直接または一旦1000℃以下まで冷却した後に再度加熱し、熱延後巻取った熱延鋼板を酸洗後冷延し、その後雰囲気を酸素濃度が50ppm以下、露点を−20℃以下とし、最高到達温度をAc3(℃)以上1100℃以下とする熱処理をした後に、0.1〜20℃/秒の冷却速度で亜鉛めっき浴温度−20℃〜亜鉛めっき浴温度+50℃の温度域に冷却し、引き続いて同温度域でめっき浸漬を含めて1秒〜1000秒保持を行うことを特徴とする穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板の製造方法。
- 請求項9に記載の保持後、合金化処理を450℃〜580℃にて行うことを特徴とする穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき高強度鋼板の製造方法。
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