JP2000336455A - 高延性熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
高延性熱延鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
スを有する高延性高強度熱延鋼板を提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.5
〜2.0 %、Mn:0.5 〜3.0 %、Ti:0.05〜0.3 %を含む
組成と、平均粒径が2.5 μm未満のフェライトを主相と
し、平均粒径が5μm以下のベイナイトと5%以上の残
留オーステナイトを含む組織とする。
Description
係り、とくに自動車向けに好適な、極めて高い延性を有
する高強度熱延鋼板に関する。
員を保護するための安全性向上の目的から、自動車用鋼
板においては、高強度化が指向され、高強度と良好な延
性を兼備し、加工性が極めて優れた高延性高強度熱延鋼
板が熱望されている。このような鋼板は、強度−延性バ
ランスTS×Elが20000 MPa 以上を有することが要望
されている。
た鋼としては、フェライトとマルテンサイトを主体とし
た複合組織鋼(デュアルフェース鋼:DP鋼)と、フェ
ライト、ベイナイト、残留オーステナイトを有するTR
IP鋼が知られている。しかし、DP鋼はTRIP鋼に
比べ延性が低く、強度−延性バランスTS×Elが2000
0 Mpa %以下である。一方、TRIP鋼は、変形時に残
留オーステナイトがマルテンサイトに変態することで高
い延性を示す特徴を有し、TS×Elが20000Mpa %を
超えることも可能である。このように、強度−延性バラ
ンスの観点からは、TRIP鋼の方が優れている。
Si、Mnを基本成分として含有する鋼に、圧下率を80%以
上、圧延仕上温度を780 〜900 ℃とする熱間圧延を施し
たのち、熱間圧延終了温度から40℃/s未満の冷却速度で
冷却を開始し、圧延仕上温度や仕上圧延速度から決まる
所定温度で冷却を終了後、ついで冷却速度40℃/s以上で
冷却して、350 〜500 ℃で巻き取る高強度熱延鋼板の製
造方法が提案されている。この方法で製造された熱延鋼
板の強度延性バランスは20000 Mpa %以上となることが
可能であることが示されている。また、この熱延鋼板の
組織は、ポリゴナルフェライト占積率が61%以下、ポリ
ゴナルフェライト占積率とフェライト粒径との比が18以
上で、かつ残留オーステナイトを5%以上含む、フェラ
イト、ベイナイトおよび残留オーステナイトからなる複
合組織を有している。
載された技術では、熱間圧延の冷却が、所定温度まで
の40℃/s未満の緩冷却と、所定温度以降の急速冷却を必
要とすること、さらに冷却速度を変化させる所定温度
が熱間圧延時の仕上温度や圧延速度の関数となってお
り、このような所定温度に合わせて冷却速度を変更する
ことは、実操業上から困難といわざるを得ない。
されたとしても、巻取温度が350 〜500 ℃であり、巻き
取り後の放冷時における冷却速度がコイル長手方向で大
幅に異なる事態が生じる。このため、コイルの位置によ
り未変態のオーステナイト相がベイナイトに変態する速
度が異なることから、得られる残留オーステナイト量に
大幅な変動が生じることになり、製品歩留りの低下をも
たらす。
了後にオーステナイトの一部をフェライトに変態させる
必要がある。このために、熱間圧延時に大圧下圧延やオ
ーステナイト域での低温圧延が望ましく、さらに、圧延
終了後巻き取りまでの冷却中にフェライト変態のノーズ
を通過させる必要がある。そのため、冷却途中に短時間
の保持を行う、いわゆる中間徐冷冷却や、あるいはフェ
ライト変態のノーズまで徐冷したのち急冷を行う前段徐
冷却などが考えられている。また、巻き取った後に未変
態のオーステナイトの一部がベイナイト変態をするのに
ともない、固溶Cが未変態のオーステナイトに濃化して
オーステナイトの安定化を促進するために、5min 以上
の保持が必要である。しかし、60min を超えるような長
時間の保持ではベイナイト変態が進行し過ぎて製品中の
残留オーステナイトが減少する。
鋼の製造においては、種々の製造面における制約があ
り、従来技術を用いる限り、強度−延性バランスTS×
Elが20000 MPa %以上を有するTRIP型高延性高強
度鋼板を高い歩留りで製造するのは難しい。現状では最
良でも70%程度の製品歩留りに止まっている。このた
め、更なる製品歩留りの向上、製造コストの低下が要望
されていた。
て、高強度で、高い延性と、20000MPa %以上の優れた
強度−延性バランスTS×Elを有する高延性高強度熱
延鋼板を提供することを目的とする。また、本発明は、
複雑な工程を経ずに安定して、前記高延性高強度熱延鋼
板を、しかも85%を超えるような高い製品歩留りで製造
できる高強度熱延鋼板の製造方法を提供することを目的
とする。
課題を達成するため鋭意研究し、種々の実験室的検討を
加えた結果、従来技術が持つ問題点を一挙に解決し、高
い強度−延性バランスを有する高延性高強度熱延鋼板を
複雑な工程を経由せずに、安定して製造できることを見
いだした。
明する。本発明者らは、重量%で、C:0.14%、Si:1.
1 %、Mn:1.05%、S:0.001%、Al:0.035 %、Ti:
0.105 %を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる
鋼片を用い、熱間圧延条件を変えた熱間圧延により種々
の熱延鋼板を得て、組織と引張特性の関係、製造条件と
引張特性の関係を調査した。
い、加熱温度を1080℃し、粗圧延終了温度を925 ℃、仕
上圧延終了温度を830 ℃として、3mm 厚の熱延鋼板とし
た。また、仕上圧延終了から冷却開始までの時間を2se
c 以内と2sec 超で調整した。また、350 ℃までの冷却
速度を5 〜100 ℃/sの範囲で変化させ、巻取温度は350
℃とした。
する。強度−延性バランスTS×Elとフェライト粒
径、べイナイト粒径との関係を図1に示す。なお、フェ
ライト粒径、べイナイト粒径は、JIS G 0552に規定する
切断法に準拠して測定した。図1から、フェライト粒径
を2.5 μm以下かつべイナイト粒径を5μm以下とする
ことにより、TS×Elが20000 MPa 以上となることが
わかる。
ステナイト量との関係を図2に示す。なお、残留オース
テナイト量はX線回折により測定した。図2から、残留
オーステナイト量を5体積%以上とすることにより、T
S×Elが20000 MPa 以上となることがわかる。つぎ
に、製造条件と引張特性の関係を説明する。
後の冷却速度との関係を図3に示す。なお、図3には、
冷却開始までの時間が2sec 以内(0.3 〜0.8sec)と、
2sec 超で区別している。図3から、熱間圧延後の冷却
速度が20℃/ s 以上でかつ圧延後0.3 〜0.8 秒で急冷を
開始した場合に、TS×Elが20000 MPa 以上となるこ
とがわかる。
2 %、Mn:1.2 %、P:0.013 %、S:0.001 %、Al:
0.041 %を含有し、Ti:0.09%、あるいはTi無添加とし
た鋼を用い、熱間圧延条件を変えた熱間圧延により種々
の熱延鋼板を得て、製造条件と組織、引張特性との関係
を調査した。なお、熱間圧延は、実機熱間圧延設備を用
い、加熱温度を1080℃し、粗圧延終了温度を925 ℃、仕
上圧延終了温度を830 ℃として、3mm厚の熱延鋼板とし
た。また、仕上圧延終了から冷却開始までの時間を0.8s
ec、巻取温度までの冷却速度を55℃/sとし、巻取温度を
変化した。なお、熱延コイルは幅1280mm重量21トンであ
った。
ステナイト量と巻取温度との関係を図4に示す。図4
(b)に示すように、Ti無添加鋼では巻取温度400 ℃近
傍に残留オーステナイト量のピークがあるが、コイル長
手中央部と最後尾部で残留オーステナイト量のピークを
示す巻取温度が異なり、しかも残留オーステナイト量も
少ない。一方、図4(a)に示すように、Ti:0.09%添
加鋼では巻取温度380 ℃以下で残留オーステナイト量が
5 %以上となるとともにコイルの長手方向各位置におけ
る残留オーステナイト量のばらつきが小さくなる。
テナイト量の相違の原因を調査するため、Ti含有量の異
なる鋼について、Ti含有量と残留オーステナイト量の関
係をコイル長手方向中央部で調査した。なお、製造条件
は、巻取温度:350 ℃とした以外は、同様とした。残留
オーステナイト量以外にもベイナイト粒径についても測
定した。
加につれべイナイト粒径が減少し、べイナイト粒径が5
μm以下になると残留オーステナイトが5%以上となっ
ていることがわかる。このような実験結果から、強度−
延性バランスTS×Elが20000 MPa 以上を有し、かつ
材質が均一な高延性高強度鋼板を得るためには、Tiを0.
05%以上含有する組成とし、組織を、フェライト粒径が
2.5 μm以下、べイナイト粒径が5 μm以下であり、残
留オーステナイト量が5%以上含まれる組織とする必要
があることが分かった。また、これを達成するために、
熱間圧延終了後の冷却開始までの時間を短くし、かつそ
の後の冷却速度を20℃/s以上とし、380 ℃以下まで冷却
する必要があることがわかった。
れたものである。すなわち、本発明は、 (1)重量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.5 〜2.0
%、Mn:0.5 〜3.0 %、Ti:0.05〜0.3 %を含み、ある
いはさらにP:0.10%以下および/またはAl:0.10%以
下を含み、残部は実質的に鉄からなる組成と、フェライ
トを主相とし、ベイナイトと残留オーステナイトを含む
組織を有し、前記フェライトの平均粒径が2.5 μm未
満、前記ベイナイトの平均粒径が5μm以下であり、前
記残留オーステナイトが体積率で5%以上含まれること
を特徴とする超微細粒鋼を有する高延性高強度熱延鋼板
である。また、本発明では、前記組成がさらに、重量%
で、次A群〜C群 A群:Nb:0.1 %以下、V:0.1 %以下のうちの1種ま
たは2種 B群:Cu:1.0 %以下、Mo:1.0 %以下、Ni:1.0 %以
下、Cr:1.0 %以下のうちの1種または2種以上 C群:Ca:0.0005〜0.015 %、REM :0.001 〜0.05%、
B:0.0002〜0.01%のうちの1種または2種以上 のうちから選ばれた1群または2群以上を含有すること
が好ましい。 (2)重量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.5 〜2.0wt
%、Mn:0.5 〜3.0 %、Ti:0.05〜0.3wt %を含み、あ
るいはさらにP:0.10%以下および/またはAl:0.10%
以下を含み、残部は実質的に鉄からなる組成の鋼片を、
1150℃以下の温度に加熱したのち、700 〜900 ℃で圧延
を終了する熱間圧延を施し、熱間圧延終了後2秒以内に
冷却を開始し、平均冷却速度20℃/s以上で冷却し、150
〜380 ℃で巻き取ることを特徴とする高延性高強度熱延
鋼板の製造方法である。また、本発明では、前記組成が
さらに、重量%で、次A群〜C群 A群:Nb:0.1 %以下、V:0.1 %以下のうちの1種ま
たは2種 B群:Cu:1.0 %以下、Mo:1.0 %以下、Ni:1.0 %以
下、Cr:1.0 %以下のうちの1種または2種以上 C群:Ca:0.0005〜0.015 %、REM :0.001 〜0.05%、
B:0.0002〜0.01%のうちの1種または2種以上 のうちから選ばれた1群または2群以上を含有してもよ
い。
て説明する。 C:0.05〜0.25% Cは、オーステナイトに濃化して、高延性化に必要な残
留オーステナイト量を確保するのに必要な元素であり、
また、Tiと結合してTiC を形成し、Tiの効果を高める。
このためには、少なくとも0.05%以上の含有が必要であ
るが、0.25%を超えると溶接性が劣化する。このため、
Cは0.05〜0.25%に限定する。
るために、少なくとも0.5 %以上の含有が必要である
が、2.0 %を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に
見合う効果が期待できず、経済的に不利となる。このた
め、Siは0.5 〜2.0 %に限定した。なお、好ましくは0.
90%超〜2.0 %である。
るのに必要な元素であり、少なくとも0.5 %以上含有す
る。しかし、3.0 %を超える含有は、巻取り後のべイナ
イト変態が抑制され、残留オーステナイトがむしろ減少
する。このため、Mnは0.5 〜3.0 %の範囲に限定する。
熱に際し初期オーステナイト粒の粗大化を防止し、熱間
圧延後のフェライト粒、あるいはベイナイト粒の微細化
に寄与し、高延性化に必要な残留オーステナイト量を確
保する。このような効果は、0.05%以上の含有で認めら
れる。しかし、0.3 %を超えて含有すると、含有量に見
合う効果が期待できず、コストアップの一因となる。こ
のため、Tiは0.05〜0.3 %の範囲に限定した。
Tiを添加するため、Tiは低温加熱と相まって、TiC とし
て存在しオーステナイト粒の粗大化を防止する。Tiのオ
ーステナイト粒粗大化防止により、加熱時の初期オース
テナイト粒径は50μm 以下となる。このような微細な初
期オーステナイト粒が、熱間圧延により、再結晶が進行
し、さらに微細なオーステナイト粒となる。このような
状況で熱間圧延を終了すると、そのドライビングホース
の高さから速やかなフェライト変態が起こるとともに、
フェライト生成サイトの増加により未変態オーステナイ
トも微細になる。微細な未変態オーステナイトの一部
は、巻取り保持中に微細なべイナイトに変態する。その
際、固溶Cが未変態オーステナイト中に濃化し、さらに
残る未変態オーステナイトを安定化させる。これが残留
オーステナイトとなる。
べイナイトへの変態は、比較的速く進むと思われるが、
すでに変態した微細なべイナイトとフェライトの共存に
より、残留オーステナイトが安定なため、コイルの長手
方向中心部のように巻き取り後に比較的高温に長時間保
持されても、依然として高い残留オーステナイト量が確
保されるものと推定される。
〜C群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有で
きる。 A群:Nb:0.1 %以下、V:0.1 %以下のうちの1種ま
たは2種 Nb、Vは、いずれも炭窒化物形成元素であり、析出強化
を介して高強度化に有効な元素であり、所望強度に応じ
1種または2種を含有できる。しかし、いずれも0.1 %
を超える含有は、延性を劣化させるため、それぞれ0.1
%以下に限定するのが好ましい。
Ni:1.0 %以下、Cr:1.0 %以下のうちの1種または2
種以上 Cu、Mo、Ni、Crは、いずれも固溶強化ならびに組織強化
により高強度化に有効な元素であり、必要に応じ1種ま
たは2種以上を選択して含有できる。しかし、いずれ
も、1.0 %以上の含有は効果が飽和するとともに延性が
劣化するため、それぞれ1.0 %以下に限定するのが好ま
しい。
1 〜0.05%、B:0.0002〜0.01%のうちの1種または2
種以上 Ca、REM 、Bは、いずれも介在物の形態、あるいは組織
を制御し、伸びフランジ性を向上させる元素であり、必
要に応じ1種または2種以上を選択して含有できる。Ca
が0.0005%未満、REM が0.001 %未満、Bが0.0002%未
満では、このような効果が認められない。一方、Caが0.
0015%、REM が0.05%、Bが0.01%を超えると、延性が
劣化する。このため、Caは0.0005〜0.015 %、REM は0.
001 〜0.05%、Bは0.0002〜0.01%に限定するのが好ま
しい。
までの添加では耐2次加工脆化特性を劣化することなく
高強度化が可能であり、必要に応じ0.10%まで添加でき
る。 Al:0.10%以下 Alは、脱酸剤として作用し、必要に応じ0.10%以下の添
加が可能である。
実質的に鉄からなる。なお、不可避的不純物として、
S:0.020 %以下が許容できる。Sは、非金属介在物を
増加させ、延性、伸びフランジ性を劣化する元素であり
できるだけ低減するのが望ましいが、0.020 %までは許
容できる。つぎに、本発明鋼板の組織の限定理由につい
て説明する。
イナイトと残留オーステナイトを含む組織を有する。本
発明でいう主相とは、50%以上の体積率を有する相をい
う。主相であるフェライトは、2.5 μm未満の平均粒径
を有する。平均粒径が2.5μm以上では、べイナイト粒
径を5μm以下に小さくすることができない。また、下
限はとくに限定されないが、現状で到達できる粒径は0.
8 μm程度と考えられる。
トである。ベイナイトの存在は、安定な残留オーステナ
イトを得て、高い延性を均質に得るのに重要である。ベ
イナイト変態後に、Cを未変態オーステナイトに濃化さ
せるためには、5μm以下の微細なべイナイトとするこ
とが必要である。このため、ベイナイトの平均粒径を5
μm以下とした。べイナイト粒径は先に形成されるフェ
ライトの粒径の影響を強く受けるが、さらに熱間圧延条
件にも影響される。例えば、熱間仕上圧延が700 ℃未満
の低温で行われると、フェライトは微細化されるがべイ
ナイトはバンド上に粗大に伸びた組織を呈し好ましくな
い。べイナイトの粒径の下限は特に限定されないが、実
用上到達できるのはフェライト粒径と同じ0.8 μm程度
と考えられる。なお、ベイナイト量は、1〜30%(体積
%)とするのが延性の観点から好ましい。
上とする。高い延性を確保するためには残留オーステナ
イト量は5%以上とされる。残留オーステナイト量が5
%未満では、図2に示すように強度−延性バランスTS
×Elが20000 MPa 以上を確保できない。なお、残留オ
ーステナイトは、多ければ多いほど延性は向上するが、
降伏強さの低下や、安定性の低下等から、20%程度が上
限である。
ーライトが考えられるが、本発明においてはパーライト
の量は少なく限定するにおよばない。なお、マルテンサ
イト量は極めて少なく限定するには及ばないが、焼戻マ
ルテンサイトは、ベイナイトと同様の役割を果たすた
め、10wt%までの含有は許容できる。つぎに、本発明鋼
板の製造条件について説明する。
造方法でスラブとしたのち、該スラブに熱間圧延を施し
熱延鋼板とする。熱間圧延は、スラブを、一旦冷却した
のち再加熱する再加熱圧延とするか、冷却中の高温スラ
ブを加熱するDHCRプロセスとしても、直送圧延としても
よい。再加熱する場合には、TiC の溶解を防止して、初
期オーステナイト粒を微細化するため、極力低温とする
のが好ましく、1150℃以下、好ましくは1080℃以下に加
熱するのが好ましい。また、直送圧延する場合でも、11
50℃以下まで冷却したのち圧延を開始するのが好まし
い。初期オーステナイト粒の微細化により、熱延鋼板の
組織微細化と残留オーステナイトの確保が可能となる。
なお、加熱温度は、870 ℃以上とするのが圧延負荷の観
点から好ましい。加熱炉の在炉時間はとくに限定されな
いが、スラブ全体が均一に加熱される必要最小限の時間
とするのが好ましい。
で圧延を終了する熱間圧延を施される。圧延終了温度
が、700 ℃未満では、2相域圧延となり、第2相が展伸
した組織となるため、所定量の残留オーステナイトが確
保できない。一方、圧延終了温度が900 ℃を超えると熱
間圧延終了後変態開始までの間にオーステナイト粒の成
長が進み、微細なフェライトやべイナイトが生成されな
い。このため、熱間圧延の終了温度を700 〜900 ℃とす
るのが好ましい。
れないが、操業上許される範囲内で低温での圧下率を高
くするようにするのが好ましい。熱間圧延終了後、つい
で熱延鋼板は、冷却を施される。冷却は、熱間圧延終了
後2sec 以内に開始するのが好ましい。冷却速度は20℃
/s以上とするのが好ましい。なお、冷却速度の上限は、
とくに限定されないが現有設備では200 ℃/sが上限とな
る。
で微細なオーステナイト粒に歪みが蓄積されているた
め、速やかにフェライト変態が開始する。そのため、熱
間圧延終了後2秒以内に冷却を開始する必要がある。従
来技術のように、フェライトノーズを通過させるため
に、冷却中の保定や前半部を徐冷する必要はない。冷却
開始が遅れ、熱間圧延終了後2秒以上の放置がなされた
場合や、冷却速度が20℃/sより遅い場合はフェライト粒
が急激に粗大化するので好ましくない。
取られる。巻取温度は150 〜380 ℃とするのが好まし
い。本発明では、比較的低温の380 ℃以下の巻取温度で
も5%以上の高い残留オーステナイト量を確保できる。
本発明では、巻取温度が380 ℃を超えるとコイル長手方
向の位置にかかわらず、残留オーステナイト量が減少す
る。これは、微細なべイナイト組織の鋼といえども炭化
物の析出が進み、オーステナイトへの固溶Cの濃化が抑
制され、残留オーステナイト量が減少するためである。
巻取温度が、150 ℃未満では、マルテンサイトが生成す
る。このため、巻取温度は150 〜380℃とするのが好ま
しい。
溶製し、連続鋳造法でスラブとした。ついでこれらスラ
ブを1065℃に加熱したのち、熱間圧延を施した。熱間圧
延終了温度は835 ℃とした。熱間圧延終了後、0.8 秒で
冷却を開始し、55℃/sの冷却速度で345℃まで冷却し、
その温度で巻き取った。板厚は2.6mm である。
試験片を採取し、引張試験を実施した。また、コイル長
手方向の中央部より組織測定用試験片を採取し、顕微鏡
(1000倍)により、フェライト、ベイナイトの平均結晶
粒径を測定した。なお、フェライト粒径、べイナイト粒
径は、JIS G 0552に規定する切断法に準拠して測定し
た。また、残留オーステナイト量はX線回折により測定
した。
径2.5 μm以下の微細なフェライトと、平均粒径5μm
以下の微細なべイナイトと、5%以上の高い残留オース
テナイト量を有し、20000 MPa 以上のTS×Elを示
す、高延性熱延鋼板である。これに対し、本発明の範囲
を外れる比較例は、TS×Elが20000 MPa 未満の低い
延性しか示していない。 (実施例2)表1の鋼No. Bの組成を有するスラブに、
表3に示す熱間圧延条件で熱間圧延を施し、熱延鋼板と
した。これら熱延鋼板のコイル各位置(コイルの長手方
向中央部および最尾端部)から試験片を採取し、組織、
機械的性質を評価した。なお、機械的性質をコイル長手
方向に数メートル間隔で調査し、製品の歩留を調査し
た。ここで製品の歩留は、製品の歩留(=(良品になっ
た量)/(圧延量)×100 %) でもとめた。なお、良品
とは、強度- 延性バランス(TS×El)が20000 MPa
以上を有するものとした。
織、機械的性質、歩留についての結果を表4に示す。
以下の微細なフェライトと、平均粒径5μm以下の微細
なべイナイトと、5%以上の高い残留オーステナイト量
を有し、20000 MPa 以上の優れたTS×Elを示す高延
性熱延鋼板であり、ほぼコイル全長にわたりてTS×E
lが20000 MPa 以上の高延性を示し、製品歩留も91%以
上と優れている。
では、コイルの全長あるいは一部でTS×Elが20000
MPa 未満となり、製品歩留も69%以下と低い。
手方向に均質な自動車向け高延性高強度熱延鋼板が安価
に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明
の熱延鋼板は、自動車向け以外にも、成形性と強度の両
立が望まれている用途に好適であり、使途の範囲はさら
に拡大が期待できる。
ト粒径、べイナイト粒径との関係を示すグラフである。
ステナイト量との関係を示すグラフである。
後の冷却速度、冷却開始までの時間の関係を示すグラフ
である。
示すグラフであり、(a)はTi添加鋼、(b)はTi無添
加鋼の例を示す。
有量との関係を示すグラフである。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%で、 C:0.05〜0.25%、 Si:0.5 〜2.0 %、 Mn:0.5 〜3.0 %、 Ti:0.05〜0.3 % を含み、残部は実質的に鉄からなる組成と、フェライト
を主相とし、ベイナイトと残留オーステナイトを含む組
織を有し、前記フェライトの平均粒径が2.5 μm未満、
前記ベイナイトの平均粒径が5μm以下であり、前記残
留オーステナイトが体積率で5%以上含まれることを特
徴とする超微細粒鋼を有する高延性高強度熱延鋼板。 - 【請求項2】 前記組成がさらに、重量%で、下記A群
〜C群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有す
ることを特徴とする請求項1に記載の超微細粒鋼を有す
る高延性高強度熱延鋼板。 記 A群:Nb:0.1 %以下、V:0.1 %以下のうちの1種ま
たは2種 B群:Cu:1.0 %以下、Mo:1.0 %以下、Ni:1.0 %以
下、Cr:1.0 %以下のうちの1種または2種以上 C群:Ca:0.0005〜0.015 %、REM :0.001 〜0.05%、
B:0.0002〜0.01%のうちの1種または2種以上 - 【請求項3】 重量%で、 C:0.05〜0.25%、 Si:0.5 〜2.0wt %、 Mn:0.5 〜3.0 %、 Ti:0.05〜0.3wt % を含み、残部は実質的に鉄からなる組成の鋼片を、1150
℃以下の温度に加熱したのち、700 〜900 ℃で圧延を終
了する熱間圧延を施し、熱間圧延終了後2秒以内に冷却
を開始し、平均冷却速度20℃/s以上で冷却し、150 〜38
0 ℃で巻き取ることを特徴とする高延性高強度熱延鋼板
の製造方法。 - 【請求項4】 前記組成がさらに、重量%で、下記A群
〜C群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有す
ることを特徴とする請求項3に記載の高延性高強度熱延
鋼板の製造方法。 記 A群:Nb:0.1 %以下、V:0.1 %以下のうちの1種ま
たは2種 B群:Cu:1.0 %以下、Mo:1.0 %以下、Ni:1.0 %以
下、Cr:1.0 %以下のうちの1種または2種以上 C群:Ca:0.0005〜0.015 %、REM :0.001 〜0.05%、
B:0.0002〜0.01%のうちの1種または2種以上
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