JP3831137B2 - 延性と伸びフランジ性に優れた高強度鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車部材の素材鋼板として使用される高強度鋼板に関するものであり、殊に延性(伸び)と伸びフランジ性の両特性に優れた高強度鋼板を製造する為の有用な方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の安全性向上や燃費向上の観点から、自動車用鋼板の高強度と薄肉化が広く進められている。こうした自動車部材の素材として使用される鋼板は、プレス成形によって所定の部品形状に加工されるのであるが、通常は、高強度化によって成形性が劣化するので、成形性にも優れた各種の鋼板の開発が進められている。
【0003】
ところで、プレス成形には様々な加工様式があり、求められる加工特性は適用される部材の種類によって異なるのであるが、高強度熱延鋼板として要求される成形性の指標となるのは、伸び(El)と伸びフランジ性(λ)が最も重要な要件である。
【0004】
上記要求特性のうち、伸びに優れた鋼板としては、近年では残留オーステナイトが成形時にマルテンサイトに変態することによって高い延性を示す変態誘起塑性(以下、「TRIP」と略記することがある)を利用した技術が知られている。こうした技術として、例えば特開平7−252592号が提案されており、この技術においては、強度−伸びバランス(TS×El)で20000N/mm2 ・%以上が達成されている。
【0005】
一方、或る程度以上の伸び(延性)と伸びフランジ性および低降伏比特性を兼ね備えた鋼板としては、例えば特開昭57−70357号に開示されている様に、フェライト−ベイナイト−マルテンサイトの3相からなる、いわゆるTri−phase鋼板が開発されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、残留オーステナイトのTRIP現象を利用した鋼板では、強度−伸びバランスは比較的良好であるが、伸びフランジ性に関しては、穴広げ率(λ)で0.4程度であり、ユーザーが要求するレベルには至っていない。また、降伏比も比較的高いので、形状凍結性に劣り、形状凍結性が求められる場合には、適しているとは言えない。
【0007】
一方、Tri−phase鋼板は、伸びフランジ性および低降伏比特性に関しては、残留オーステナイトを含有した鋼板と比較して優れていると言えるが、逆に強度−伸びバランスが十分とは言えない。
【0008】
尚、残留オーステナイトを或る程度含有し、且つ伸びフランジ性を改善する技術として、鋼材にAlを0.10%以上含有させることも提案されているが(例えば、特開平5−105986号)、Alを多量に含有させると、介在物に起因して表面欠陥や延性の劣化が問題となって歩留りが低下し、生産性に劣る場合がある。
【0009】
本発明は、こうした状況の下でなされたものであって、その目的は、延性と伸びフランジ性の両特性に優れた高強度鋼板を製造する為の方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明方法とは、C:0.05〜0.15%、Si:0.5〜2%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.005〜0.1%、Cr0.01〜1%を夫々含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、該不可避不純物中のP:0.05%以下(0%を含む)およびS:0.05%以下(0%を含む)に夫々抑制してなる鋼材を、1170℃を超える温度に加熱した後850℃以上の温度で仕上げ圧延を行ない、冷却速度30℃/秒以上で750〜650℃の温度範囲まで冷却し、その後3〜10秒空冷し、更に冷却速度30℃/秒以上で冷却を行ない、350〜500℃の温度範囲にて巻き取ることによって、鋼板中の残留オーステナイトを3〜7体積%とすると共に、フェライト粒径を5μm超、30μm以下とする点に要旨を有するものである。
【0011】
本発明の上記目的は、上記のような化学成分組成を有する鋼材を、1170℃を超える温度に加熱した後850℃以上の温度で仕上げ圧延を行ない、冷却速度30℃/秒以上で750〜650℃の温度範囲まで冷却し、その後3〜10秒空冷し、更に冷却速度30℃/秒以上で400〜520℃の温度範囲まで冷却を行ない、その後冷却速度15℃/秒以下で冷却を行ない、350〜450℃の温度範囲にて巻き取ることによって、鋼板中の残留オーステナイトを3〜7体積%とすると共に、フェライト粒径を5μm超、30μm以下とする様な構成を採用することによっても達成される。
【0013】
また用いる鋼材は、更に、Ca:0.01%以下(0%を含まない)および希土類元素:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される元素の1種以上を含有するものが好ましいものとして挙げられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、様々な角度から検討した。その結果、まず次の様な知見が得られた。これまでの技術では、残留オーステナイトの持つ加工誘起変態機構を積極的に利用して伸びを向上させ、加工性の改善を図るものであった。つまり、オーステナイト粒を微細化することによってフェライトの微細化を図り、このフェライト微細化によってフェライト/オーステナイト界面を増加させて未変態オーステナイトへのC濃縮を促進し、残留オーステナイトを大量に確保することが積極的に行なわれていたのである。しかしながら、過度のC濃縮は残留オーステナイト相をいたずらに増加させることになり、これでは加工誘起変態による伸びは高くなるが、高硬度のマルテンサイト相の増加につながり、これが伸びフランジ性を劣化させる原因になっていたものと考えられた。
【0015】
そこで本発明者らは、上記の様な従来技術の問題に鑑み、良好な伸び(延性)を確保しつつ伸びフランジ性をも劣化させないという観点から、更に鋭意研究を進めた。その結果、残留オーステナイト量を或る程度まで制限し、加工後にマルテンサイトに変態する組織量を低減させて伸びフランジ性を向上させ、且つ残留オーステナイトの低減により不足する伸びはフェライト大きくしてやるようにすれば、良好な延性も確保できて上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。まず本発明で規定した成分範囲限定理由について説明する。
【0016】
C:0.05〜0.15%
本発明に係る鋼板は、残留オーステナイトを或る程度制限するものであるが、延性に関しては最小限のオーステナイトを残留させる必要がある。こうした観点から、C含有量は適切な範囲に調整する必要がある。まず、C含有量が0.05%未満になると、TRIP効果によって延性を向上させる上で必要な残留オーステナイト量(例えば、3体積%以上)が確保できなくなる。
【0017】
一方、C含有量の増加は、第2相であるベイナイト相の硬度を増大させ、残留オーステナイト量の増加を招くことになる。特に、残留オーステナイトの増加は、前述した様に加工誘起変態によって、硬度の高いマルテンサイト相に変態するので、フェライト相との硬度差が大きくなって、その界面での変形が伝達しにくくなり、この界面がクラックの起点となり、成形性、特に伸びフランジ性が劣化することになる。こうした現象は、Cの含有量が0.15%を超えると顕著になるので、本発明で使用する鋼材におけるC含有量は0.15%以下とする必要がある。尚、C含有量の好ましい下限は0.08%であり、好ましい上限は0.13%である。
【0018】
Si:0.5%以上
Siは、未変態オーステナイト中にCを濃化させて、残留オーステナイトを得るのに必要な元素である。また、ベイナイト変態の際に炭化物形成を抑制してCを残留オーステナイト中へ濃化させる上でも有効な元素である。こうした効果を発揮させる為には、Siの含有量は0.5%以上とする必要がある。
【0019】
但し、Si含有量が過剰になると、残留オーステナイトの確保の効果が飽和すると共に、フェライト相を過度に固溶硬化させて延性が劣化するので、その含有量は2%以下とするのが好ましい。尚、Si含有量の好ましい下限は1.0%であり、より好ましい上限は1.8%である。
【0020】
本発明で使用する鋼材においては、MnやAl等の基本成分も含み得るものであるが、これらの好ましい範囲は下記の通りである。
【0021】
Mn:0.5〜2%
Mnはオーステナイトの安定化元素として、残留オーステナイトの生成に貢献する添加元素である。こうした効果を発揮させる為には、Mnの含有量は0.5%以上とするのが好ましい。しかしながら、Mnを過剰に含有させると、その効果は飽和し、却って溶接性を劣化させるので好ましくない。こうした観点から、その上限値は2%とするのが良い。尚、Mn含有量のより好ましい下限は0.8%であり、より好ましい上限は1.8%である。
【0022】
Al:0.005〜0.1%
Alは鋼の脱酸に必要な元素であり、こうした効果を発揮させる為には、Al含有量は0.005%以上とするのが好ましい。しかしながら、Al含有量が過剰になると、アルミナ等の介在物が増加して延性が劣化するので、0.1%以下とするのが良い。尚、Al含有量のより好ましい下限は、0.01%であり、より好ましい上限は0.08%である。
【0023】
本発明で使用する鋼板における基本的な化学成分組成は上記の通りであり、残部はFeおよび不可避不純物からなるものであるが、必要によって(1)上記不可避不純物のうち、SやPを0.05%以下に抑制したもの、(2)Cr:0.01〜1%を含有するもの、(3)Ca:0.01%以下(0%を含まない)および希土類元素(以下、「REM」と略記することがある):0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される元素の1種を含有するもの、等を使用することも好ましい。これらの元素の範囲限定理由は、下記の通りである。尚、本発明で使用する鋼板には、上記の成分以外にも鋼板の特性を阻害しない程度の微量成分も含み得るものであり、こうした鋼板も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0024】
P:0.05%以下(0%を含む)
Pは、溶接性、加工性および靱性を劣化させる不純物元素であるが、0.05%以下であれば、これらの不都合が顕著に現れるないので、使用する鋼材中のP含有量は0.05%以下に抑制することが好ましい。
【0025】
S:0.05%以下(0%を含む)
Sは、MnS等の介在物を生成して穴広げ性(伸びフランジ性)を劣化させるので、できるだけ低減することが好ましい。こうした観点から、S含有量の好ましい上限を0.05%と規定した。
【0026】
Cr:0.01〜1%
Crは、焼入れ性を高めて所望の組織を得る上で有効な元素であり、こうした効果を発揮させる為には、0.01%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Crを過剰に含有させるとその効果が飽和して不経済となるので、1%以下とすべきである。
【0027】
Ca:0.01%以下(0%を含まない)およびREM:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される元素の1種
これらの元素は、硫化物系介在物を球状化して伸びフランジ性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて大きくなるが、過剰に含有させると球状化の効果が飽和するばかりか、介在物を増加させることになるので、Caで0.01%、REMで0.05%を上限とすべきである。尚、REMとは、周期表3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、およびランタノイド系列希土類元素等の17元素の総称であり、これらの元素のいずれを使用しても良い。
【0028】
本発明は前述の如く、残留オーステナイト量を或る程度制限し、加工後にマルテンサイトに変態する組織量を低減させて伸びフランジ性を向上させ、且つ残留オーステナイトの低減により不足する伸びを、フェライト粒径を大きくしてやるようにしたものである。こうした観点からして、残留オーステナイトやフェライト粒径を適切な範囲となる様に制御することが好ましい。これらの好ましい範囲は、下記の通りである。
【0029】
残留オーステナイト:3〜7体積%
本発明では、TRIP効果によって良好な延性を確保するためには最小限のオーステナイトを残留させる必要がある。こうした観点から、残留オーステナイト量は、3体積%以上とすることが好ましい。しかしながら、前述した様に残留オーステナイト量が増加し過ぎると、加工誘起変態によって硬度の高いマルテンサイト相に変態してフェライト相との硬度差が大きくなって、その界面での変形が伝達しにくくなり、この界面がクラックの起点となり、成形性、特に伸びフランジ性が劣化することになる。こうした観点から、残留オーステナイト量は、7体積%以下とすることが好ましい。
【0030】
フェライト粒径:5μm超
本発明では前述の如く、残留オーステナイトの低減により不足する伸びを、フェライト粒径を大きくしてやることによって確保するものである。こうした観点から、フェライト粒径は5μmを超えることが好ましく、この値が5μm以下となると、残留オーステナイトの低減により不足する伸びを確保できなくなる。尚、フェライト粒径の上限については、特に限定するものではないが、残留オーステナイトをある程度残すという観点から、30μmとすることが好ましい。
【0031】
次に、本発明で規定する製造条件について説明する。本発明の製造原理は前述の如く、残留オーステナイト量を或る程度まで制限し、加工後にマルテンサイトに変態する組織量を低減させて伸びフランジ性を向上させ、且つ残留オーステナイトの低減により不足する伸びを、フェライト粒径を大きくしてやることによって確保するようにしたものである。こうした観点から、熱間加工時の加熱温度、仕上げ圧延温度、その後の冷却条件を厳密に規定する必要がある。以下、本発明の製造方法の各要件について説明する。
【0032】
本発明方法では、まず熱間圧延時の加熱温度を、1170℃を超える温度とする必要がある。これは、後の熱間圧延、巻取りの後に粒径が比較的大きな(5μmを超える粒径)のフェライト相を生成させて良好な伸び(延性)を確保する上で重要な要件である。即ち、この加熱温度が1170℃以下となると、フェライト粒径が小さくなって、残留オーステナイトの低減により不足する伸びを確保することができなくなる。この加熱温度は、1200℃以上であることが好ましい。
【0033】
次に、仕上げ圧延温度は、850℃以上とする必要がある。この仕上げ圧延温度が850℃未満となると、仕上げ圧延によって加工されて再結晶したオーステナイトが微細になって、フェライト変態時に微細なフェライトが大量に発生し、比較的大きなフェライトを生成することによる良好な伸びの確保ができなくなる。尚、この仕上げ圧延温度は、880℃以上とすることが好ましいが、あまり高くなると工業的な製造上不可能となるので、970℃以下とするのが良い。
【0034】
上記の仕上げ圧延が完了した後は、冷却速度30℃/秒以上で750〜650℃の温度範囲まで冷却(以下、これを「一次冷却」と呼ぶ)し、その後3〜10秒空冷(以下、これを「二次冷却」と呼ぶ)する必要があるが、これらの要件はいずれも、フェライトの生成を促進し、その粒成長を十分に行なって粒径が比較的大きなフェライト相を確保する為のものである。即ち、これらの要件のいずれかを欠くと、粒径が5μmを超えるフェライト相を生成させることができず、十分な伸びを発揮させることができなくなる。また、未変態オーステナイト相へC濃化を十分に進行させる為にも上記要件を満足させることが有効である。尚本発明における「空冷」とは、代表的には大気中での放冷を挙げることができる。
【0035】
上記の様な冷却を行なった後は、更に冷却速度30℃/秒以上で冷却(以下、これを「三次冷却」と呼ぶ)する必要があるが、この冷却条件は、パーライトの生成を防止する為に必要な要件である。即ち、この三次冷却における冷却速度が30℃/秒未満となると、パーライトが生成してしまい、このパーライト生成はオーステナイトの消失を招くことになる。
【0036】
本発明方法においては、最終的に350〜500℃の温度範囲にて巻取る必要がある。この巻取り温度が350℃未満となると、残留オーステナイトがマルテンサイトに変態し易くなるので、このマルテンサイト生成を抑制して必要量の残留オーステナイトを確保する上で350℃以上とする必要がある。また、巻取り温度が高くなり過ぎると、パーライトが生成すると共に、ベイナイト変態が過度に生じることになる。即ち、パーライトの生成を防止すると共に、過度のベイナイト変態を抑制して必要量の残留オーステナイトを確保する為には、巻取り温度の上限を500℃とする必要がある。
【0037】
本発明方法を実施するに当たり、前記二次冷却の後(空冷の後)、冷却速度30℃/秒以上で400〜520℃の温度範囲まで一旦冷却を行ない(三次冷却に相当)、その後冷却速度15℃/秒以下で前記巻き取り温度まで徐冷(以下、これを「四次冷却」と呼ぶ)することも有用であり、こうした冷却工程を付加することによって鋼板の特性を更に改善することができる。こうした工程を付加することによる作用は、次の通りである。
【0038】
高硬度鋼板において、優れた伸びと伸びフランジ性を確保する為には、比較的大きな粒径のフェライト相だけでなく、或る程度以上の残留オーステナイト相も確保する必要がある。上記の様な三段階の冷却だけでは、残留オーステナイト量が不足して伸びが不十分になることがある。この残留オーステナイト量を、伸びフランジ性を劣化させない範囲内で多くする為には、未変態オ−ステナイトへのC濃縮が必要であるが、その為には前記三次冷却によるフェライト変態だけでなく、ベイナイト変態も利用してC濃縮を図ることが有効である。
【0039】
フェライト変態にてC濃縮が或る程度進行した鋼組織におけるベイナイト変態のノーズ(TTT線図におけるノーズ)は、400〜500℃付近にある。そして、この温度までパーライト変態を避けて(パーライト変態が生じると、オーステナイトが消失してしまう)、30℃/秒の冷却速度で一旦冷却し、その後この温度範囲から15℃/秒以下の冷却速度で徐冷することによって、コイル巻取り前に残留オーステナイトを或る程度確保することができる。即ち、巻取り前にベイナイト変態を進行させると、ベイナイト中のCやMnがオーステナイト中に入ってオーステナイト相を安定化させ、これによって残留オーステナイトを増加させることができるのである。また、残留オーステナイトを或る程度確保することによって、巻取り後に冷却速度が速くなるコイルエッジ部での材質の劣化を防止することもできる。
【0040】
尚、上記した観点からすれば、四次冷却を実施する場合における三次冷却終点温度の上限はパーライトの生成を防ぐために520℃とした。この温度は、より好ましくはベイナイト変態のノーズ付近である500℃とするのが良い。また、四次冷却を行なう場合においての最終的な巻取り温度は、三次冷却を効果的に行ないつつ巻取り温度制御による作用を発揮させるという観点から、その上限を450℃とした。
【0041】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術後的範囲に含まれるものである。
【0042】
【実施例】
実施例1
下記表1に示す化学成分組成の鋼板を、真空溶解炉にて溶解し、厚み:30mmまで粗圧延した後、厚みが3mmになる様に熱間圧延した。その後、各種の冷却条件で冷却した後、巻取りを行なった。圧延条件(加熱温度、仕上げ圧延温度)、冷却条件および巻取り温度等を、下記表2に示す。
【0043】
【表1】
Figure 0003831137
【0044】
【表2】
Figure 0003831137
【0045】
得られた鋼板について、残留オーステナイト量(残留γ量)、フェライト粒径、引張り強さ(TS)、伸び(El)および伸びフランジ性について調査した。このとき、伸びフランジ性については、10mmφの打ち抜き穴を、バリの無い面から60°円錐ポンチで押し広げ、クラックが板厚を貫通した時点での穴径(d)と、初期穴径(d0 )との比(d/d0 )で評価し、1.6以上を○と評価した。これらの結果を、下記表3に示す。
【0046】
【表3】
Figure 0003831137
【0047】
これらの結果から、次の様に考察できる。まず、No.1〜6のものは、本発明で規定する要件の全てを満足する実施例であり、いずれも伸び:35%以上で、穴広げ性(d/d0 ):1.6以上の良好な伸びフランジ性が達成されていた。
【0048】
これに対して、No.7〜13のものは、本発明で規定する要件のいずれかを欠く比較例であり、伸びまたは伸びフランジ性のいずれかが劣っているものである。即ち、No.7のものでは、C含有量が本発明で規定する下限に満たないものであるので、残留γ量が不足して伸びが低くなっている。No.8のものでは、C含有量が本発明で規定する上限を超え、且つSi含有量が本発明で規定する下限に満たないものであるので、残留γ量が不足して伸びが低くなっている。
【0049】
No.9のものでは、C含有量が本発明で規定する上限を超えるものであるので、残留γ量が過剰に生成して伸びフランジ性が悪くなっている。No.10、11のものでは、熱間圧延時における加熱温度や仕上げ圧延温度が本発明で規定する範囲を外れているので、残留γ量が過剰に生成して伸びフランジ性が悪くなっている。また、No.12のものでは、巻取り温度が本発明で規定する範囲を外れているので、伸びが低くなっており、No.13のものでは、空冷保持時間と三次冷却速度が本発明で規定する範囲を外れるので、パーライトが生成し、伸びおよび伸びフランジ性のいずれも劣化している。
【0050】
実施例2
前記表1に示した化学成分組成の鋼板を、実施例1と同様にして、溶解、熱間圧延した。その後、各種の冷却条件で冷却した後、巻取りを行なった。得られた鋼板について、実施例1と同様にして残留オーステナイト量(残留γ量)、フェライト粒径、引張り強さ(TS)、伸び(El)および伸びフランジ性について調査した。圧延条件(加熱温度、仕上げ圧延温度)、冷却条件および巻取り温度を下記表4に、調査結果を下記表5に示す。
【0051】
【表4】
Figure 0003831137
【0052】
【表5】
Figure 0003831137
【0053】
これらの結果から、次の様に考察できる。まず、No.1〜6,10,11,16,17のものは、本発明で規定する要件の全てを満足する実施例であり、いずれも伸び:35%以上で、穴広げ性(d/d0 ):1.6以上の良好な伸びフランジ性が達成されていた。
【0054】
これに対して、No.7〜9,12〜15,18〜21のものでは、本発明で規定する要件のいずれかを欠く比較例であり、伸びまたは伸びフランジ性のいずれかが劣っているものである。即ち、No.7のものでは、C含有量が本発明で規定する下限に満たないものであるので、残留γ量が不足して伸びが低くなっている。No.8のものでは、C含有量が本発明で規定する上限を超え、且つSi含有量が本発明で規定する下限に満たないものであるので、残留γ量が不足して伸びが低くなっている。
【0055】
No.9のものでは、C含有量が本発明で規定する上限を超えるものであるので、残留γ量が過剰に生成して伸びフランジ性が悪くなっている。No.12,13のものでは、熱間圧延時における加熱温度や仕上げ圧延温度が本発明で既定する範囲を外れているので、残留γ量が過剰に生成して伸びフランジ性が悪くなっている。
【0056】
No.14のものでは、三次冷却速度が本発明で規定する範囲を外れているので、パーライトが生成し、伸びおよび伸びフランジ性のいずれも劣化している。No.15のものでは、四次冷却速度が本発明で規定する範囲を外れるので、残留γ量が不足して伸びが低くなっている。
【0057】
No.18,19のものでは、夫々一次冷却終点温度、四次冷却速度が本発明で規定する範囲を外れているので、残留γ量が不足して伸びが低くなっている。No.20,21のものでは、巻取り温度が本発明で規定する範囲を外れており、このうちNo.20では伸びフランジ性が良いが残留γ量が不足して伸びが低くなっており、No.21のものでは残留オーステナイトが存在せず、伸びおよび伸びフランジ性のいずれも劣化している。
【0058】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、伸びおよび伸びフランジ性の両特性を具備した高強度鋼板が得られた。

Claims (3)

  1. C:0.05〜0.15%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.5〜2%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.005〜0.1%、Cr0.01〜1%を夫々含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、該不可避不純物中のP:0.05%以下(0%を含む)およびS:0.05%以下(0%を含む)に夫々抑制してなる鋼材を、1170℃を超える温度に加熱した後850℃以上の温度で仕上げ圧延を行ない、冷却速度30℃/秒以上で750〜650℃の温度範囲まで冷却し、その後3〜10秒空冷し、更に冷却速度30℃/秒以上で冷却を行ない、350〜500℃の温度範囲にて巻き取ることによって、鋼板中の残留オーステナイトを3〜7体積%とすると共に、フェライト粒径を5μm超、30μm以下とすることを特徴とする延性と伸びフランジ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  2. C:0.05〜0.15%、Si:0.5〜2%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.005〜0.1%、Cr0.01〜1%を夫々含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、該不可避不純物中のP:0.05%以下(0%を含む)およびS:0.05%以下(0%を含む)に夫々抑制してなる鋼材を、1170℃を超える温度に加熱した後850℃以上の温度で仕上げ圧延を行ない、冷却速度30℃/秒以上で750〜650℃の温度範囲まで冷却し、その後3〜10秒空冷し、更に冷却速度30℃/秒以上で400〜520℃の温度範囲まで冷却を行ない、その後冷却速度15℃/秒以下で冷却を行ない、350〜450℃の温度範囲にて巻き取ることによって、鋼板中の残留オーステナイトを3〜7体積%とすると共に、フェライト粒径を5μm超、30μm以下とすることを特徴とする延性と伸びフランジ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  3. 鋼材として、更に、Ca:0.01%以下(0%を含まない)および希土類元素:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される元素の1種以上を含有するものを使用する請求項1または2に記載の製造方法。
JP01247099A 1999-01-20 1999-01-20 延性と伸びフランジ性に優れた高強度鋼板の製造方法 Expired - Lifetime JP3831137B2 (ja)

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