JP2002121646A - コイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板及びその製造方法。 - Google Patents
コイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板及びその製造方法。Info
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Abstract
あり、コイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼
板を得る。 【解決手段】 Cがオーステナイトに十分濃縮するまで
ベイナイト及びマルテンサイトの変態を抑制し、ベイサ
イト及びマルテンサイトの生成期間を短縮する作用を有
する添加元素としてMoが極めて有効であること、さら
にCrを複合添加した場合にMo添加の効果がより一層
促進されることを見出しなされたもので、実質的に、
C:0.05〜0.18mass%、Si:0.7〜1.5
mass%、Mn:0.6〜1.8mass%、P:0.04ma
ss%以下、S:0.005mass%以下、Al:0.01
〜0.10mass%、N:0.005mass%以下、Mo:
0.05〜1.5mass%を含有し、必要に応じてCr:
0.05〜1.5mass%をさらに含有し、残部がFeか
らなる成分組成を有する。
Description
好適な熱延鋼板であって、残留オーステナイトを含有す
るコイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板及
びその製造方法に関するものである。
軽量化や衝突安全性向上のための高強度化の要望が強
く、このため高張力鋼板の適用が拡大しつつある。しか
しながら、高張力鋼板は軟質鋼板に比べ加工性に劣るた
め、厳しい加工性の要求される部材への適用は困難であ
る。そこで、厳しい加工に耐える高張力鋼板として、残
留オーステナイトの変形時のTRIP(変態誘起塑性)
現象を利用して延性を高める、いわゆる残留オーステナ
イト鋼が注目されるようになった。ところが、残留オー
ステナイト高強度熱延鋼板を実際に製造すると、コイル
の全長、全幅に亘って材質が大きく変動するという問題
がある。この材質変動は、製造時のランナウト上での長
手方向、幅方向の温度変動によって生じると考えられ
る。
特開平6−228652号公報や特開平6−22865
3号公報には、ランナウト冷却中の鋼帯の上面からの冷
却能と下面からの冷却能の比を制御することで、ランナ
ウト上における鋼板の長手方向の温度のバラツキを抑制
する方法が開示されている。しかし、この技術では強度
や伸びの下限値を満足し、歩留まりを向上させることは
できるものの、鋼板内の材質の変動自体は低減されず、
コイルの前後端で同じ部品をプレスしても、スプリング
バック量の違い等により成形性が安定しないのが現状で
ある。さらには、伸びフランジ性のバラツキは抑制でき
ない。
は、ランナウト上の冷却において、鋼板幅方向両端部の
注水量を低減し、幅方向の温度偏差を抑える方法が開示
されている。しかし、この技術では、材質変動のうち強
度−延性バランス(引張強さ×全伸び)≧20000
(MPa・%)を確保し、強度のバラツキの範囲を50
MPa以内に抑えることができるものの、伸びについて
はバラツキを十分に低減することができず、プレス後に
割れが生じる場合がある。
の全長及び全幅に亘っての材質変動が低減された残留オ
ーステナイト鋼板を製造できる技術は見当たらない。し
たがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を
解決し、コイルの全長及び全幅に亘って材質が均一であ
り、コイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板
及びその製造方法を提供することにある。
での材質変動は、ランナウトテーブル上から熱延巻取り
後にかけて、オーステナイト中にCが十分濃縮する前に
生成するベイナイト及びマルテンサイト量が変化するた
めに起こる。このベイナイト及びマルテンサイトの生成
期間が長いほど、これらの相の生成量に対する温度変動
の影響が大きい。このような問題に対して本発明者らは
鋭意研究を重ね、Cがオーステナイトに十分濃縮するま
でベイナイト及びマルテンサイトの変態を抑制し、ベイ
サイト及びマルテンサイトの生成期間を短縮する作用を
有する添加元素として、Moが極めて有効であることを
見出した。さらに、Crを複合添加した場合に、Mo添
加の効果がより一層促進されることも同時に見出した。
合添加鋼を熱間圧延する際に、圧延後直ちに50℃/秒
以上の冷却速度でMo量、Cr量、Mn量により決まる
温度範囲まで冷却し、3〜15秒放冷後、再び15℃/
秒〜100℃/秒の冷却速度で巻取温度まで冷却するこ
とにより、オーステナイトのベイナイト及びマルテンサ
イトへの変態が抑制され、放冷中にCのオーステナイト
への濃化が迅速に行われることで材質安定化効果が顕著
となることが判った。
する。C≒0.12mass%、Si≒1.1mass%、Mn
≒1.0mass%、P≒0.010mass%、S≒0.00
1mass%、Al≒0.040mass%、N≒0.0030
mass%を含む鋼と、この鋼にMoを0.3mass%添加し
た鋼をそれぞれ溶製し、加熱温度1200℃、仕上温度
830℃で熱間圧延を行った。仕上圧延後直ちに80℃
/秒の冷却速度で700℃まで冷却後、7秒間放冷し、
さらに20℃/秒の冷却速度で冷却し、470℃で巻き
取った。製造された熱延鋼帯のサイズは板幅1050m
m、板厚2.0mmである。得られた鋼板の長手方向中
央部における幅方向のTS、El、λの変化を図1に示
す。図1によれば、Moを添加しない鋼では幅方向でT
S、El、λの変動が大きいのに対し、Mo添加鋼では
幅方向の材質変動が低減していることが判る。
mass%、Mn≒1.0mass%、P≒0.010mass%、
S≒0.001mass%、Al≒0.040mass%、N≒
0.0030mass%、Cr≒0.2mass%を含む鋼にM
oを種々の添加量で添加した鋼を溶製し、加熱温度12
00℃、仕上温度840℃で熱間圧延を行った。仕上圧
延後直ちに100℃/秒の冷却速度で温度T1(℃)ま
で冷却し、5秒間放冷後、再び20℃/秒の冷却速度で
冷却し、470℃で巻き取った。得られた熱延コイルの
幅方向でのTSの最大値と最小値の差を、前記冷却停止
温度(=中間放冷温度)T1(℃)とMo量に対してプ
ロットしたものを図2に示す。
と最小値の差が20MPa未満、“△”は20〜80M
Pa、“×”は80MPa超であることを示す。同図に
示されるように、Mo量[%Mo]、Cr量[%C
r]、Mn量[%Mn]に応じて、冷却停止温度(=中
間放冷温度)T1を{1−([%Mo]+[%Cr]/
2)/5}×(630−10[%Mn])℃以上、{1
+([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(730−
10[%Mn])℃以下の温度範囲とすることで、幅方
向の材質変動を低減できることが判る。
下のように考えられる。すなわち、熱延後急冷し、フェ
ライト+オーステナイトの2相域で放冷することでCを
オーステナイト中に濃縮させる。このとき、通常用いら
れる焼入れ元素であるMnはAr3変態点を下げること
から、Mnの増大によってこのフェライト+オーステナ
イトの2相域の最適放冷温度は低温側にシフトする。こ
れに本発明の特徴であるMoを添加した場合、Moはオ
ーステナイトをさらに安定化させることから、Mo添加
量の増大に伴い冷却停止温度の下限は低下する。一方、
Moはパーライト変態を抑制することから、冷却停止温
度が高くても加工性を劣化させるパーライトの生成が阻
害されるため、Mo添加量の増大に伴い冷却停止温度の
上限は上昇する。さらに、Crを複合添加するとMo添
加による上記効果はより一層顕著なものとなる。しか
し、Cr単独ではこのような効果は認められない。
であって、その特徴は以下のとおりである。 [1] 実質的に、C:0.05〜0.18mass%、Si:
0.7〜1.5mass%、Mn:0.6〜1.8mass%、
P:0.04mass%以下、S:0.005mass%以下、
Al:0.01〜0.10mass%、N:0.005mass
%以下、Mo:0.05〜1.5mass%を含有し、残部
がFeからなる成分組成を有することを特徴とするコイ
ル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板。
ss%、Si:0.7〜1.5mass%、Mn:0.6〜
1.8mass%、P:0.04mass%以下、S:0.00
5mass%以下、Al:0.01〜0.10mass%、N:
0.005mass%以下、Mo:0.05〜1.5mass
%、Cr:0.05〜1.5mass%を含有し、残部がF
eからなる成分組成を有することを特徴とするコイル内
材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板。
圧延し、オーステナイト単相域で仕上圧延を終了する工
程と、仕上圧延後、直ちに50℃/秒以上の冷却速度
で、(1−[%Mo]/5)×(630−10[%M
n])℃以上、(1+[%Mo]/5)×(730−1
0[%Mn])℃以下の温度範囲(但し、[%Mo]:
鋼板中のMo含有量(mass%)、[%Mn]:鋼板中の
Mn含有量(mass%))まで冷却した後、3〜15秒放
冷する工程と、放冷された鋼板を引き続き15℃/秒以
上100℃/秒以下の冷却速度で冷却して、350〜5
50℃の温度範囲で巻取る工程と、を有することを特徴
とするコイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼
板の製造方法。
圧延し、オーステナイト単相域で仕上圧延を終了する工
程と、仕上圧延後、直ちに50℃/秒以上の冷却速度
で、{1−([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×
(630−10[%Mn])℃以上、{1+([%M
o]+[%Cr]/2)/5}×(730−10[%M
n])℃以下の温度範囲(但し、[%Mo]:鋼板中の
Mo含有量(mass%)、[%Mn]:鋼板中のMn含有
量(mass%)、[%Cr]:鋼板中のCr含有量(mass
%))まで冷却した後、3〜15秒放冷する工程と、放
冷された鋼板を引き続き15℃/秒以上100℃/秒以
下の冷却速度で冷却して、350〜550℃の温度範囲
で巻取る工程と、を有することを特徴とするコイル内材
質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板の製造方法。
成及び製造条件の詳細をその限定理とともに説明する。
まず、熱延鋼板の成分組成についての限定理由について
説明する。C:Cは強度を上昇させる元素であるととも
に、オーステナイト中に濃縮してオーステナイトの安定
性を高める作用を有している。しかし、0.05mass%
未満では濃縮が十分に起こらず、加工性を向上させるの
に十分な残留オーステナイトが得られない。一方、0.
18mass%を超えるとベイナイトやマルテンサイトの硬
度が上昇し、加工性が低下する。このためC量は0.0
5〜0.18mass%とする。
フェライトの生成を促してオーステナイト中へのCの濃
化を促進するため、残留オーステナイト量を確保する上
で有効な元素である。しかし、0.7mass%未満ではC
濃化を十分に促進することができず、十分な残留オース
テナイト量が得られない。一方、1.5mass%を超える
と赤スケールの発生による表面性状の劣化が著しい。こ
のためSi量は0.7〜1.5mass%とする。
用を有する。しかし、0.6mass%未満ではパーライト
変態を抑制することができず、鋼中のパーライト量が増
大し、伸びフランジ性が確保できない。一方、1.8ma
ss%を超えると偏析によるバンド状組織を形成し易くな
り、やはり伸びフランジ性を低下させる。このためMn
量は0.6〜1.8mass%とする。P:Pが0.04ma
ss%を超えると、Pが粒界に偏析して鋼が低延性・低靭
性化する。このためP量は0.04mass%以下(0mass
%の場合を含む)とする。
し、割れの起点となることで延性や伸びフランジ性を低
下させるため、極力低減する必要がある。このためS量
は0.005mass%以下(0mass%の場合を含む)とす
る。Al:Alは鋼の脱酸を安定して行うために0.0
1mass%以上必要であるが、0.10mass%を超えると
その効果は飽和し、また鋼中の介在物量が増大するため
延性が低下する。このためAl量は0.01〜0.10
mass%とする。N:Nが0.005mass%を超えると、
粗大な窒化物が多量に析出して延性が低下する。このた
めN量は0.005mass%以下(0mass%の場合を含
む)とする。
する元素である。Moはパーライト変態を抑制するとと
もに、Cがオーステナイトに十分濃縮するまでベイナイ
ト及びマルテンサイトの変態を抑制し、ベイナイト及び
マルテンサイトの生成期間を短縮する作用がある。しか
し、0.05mass%未満ではパーライトの生成やベイナ
イト及びマルテンサイト変態を抑制できず、鋼板の熱履
歴や温度変動で材質が変動してしまう。一方、1.5ma
ss%を超えると組織が硬質化し、加工性が低下する。こ
のためMo量は0.05〜1.5mass%とする。Cr:
Crは、Moと複合添加することによりMo添加の効果
を促進する作用がある。しかし、0.05mass%未満で
はCr添加の効果は認められない。一方、1.5mass%
を超えると組織の硬質化を招き、加工性の低下を生じ
る。このためCr量は0.05〜1.5mass%とする。
してB、Cu、Ni、Ca、Nb、V、Ti、REMの
1種以上が含まれることがある。しかし、Bが0.00
03mass%を超えると熱間圧延時の荷重が増大して鋼板
の形状が劣化するため、その上限は0.0003mass%
(0mass%の場合を含む)とすることが好ましい。C
u、Niは耐腐食性を向上させる元素であるが、それぞ
れの成分の上限は0.1mass%(0mass%の場合を含
む)とすることが好ましい。Caは介在物を増加させる
ため、その上限を0.002mass%(0mass%の場合を
含む)とすることが好ましい。Nb、V、Ti、REM
はトランプエレメントとしてリサイクル性を阻害するの
で、4種の合計量の上限を0.1mass%(0mass%の場
合を含む)とすることが好ましい。本発明の熱延鋼板は
実質的に上記成分とFeとからなり、したがって不可避
的不純物等の他の元素が本発明の効果を損なわない限度
で微量含まれることは妨げない。
る。本発明の製造方法は、上述した成分組成を有する鋼
を熱間圧延し、オーステナイト単相域で仕上圧延を終了
する工程(A)と、仕上圧延後直ちに50℃/秒以上の
冷却速度で、Crを含有しない場合には(1−[%M
o]/5)×(630−10[%Mn])℃以上、(1
+[%Mo]/5)×(730−10[%Mn])℃以
下の温度範囲、またCrを含有する場合には{1−
([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(630−1
0[%Mn])℃以上、{1+([%Mo]+[%C
r]/2)/5}×(730−10[%Mn])℃以下
の温度範囲(但し、[%Mo]:鋼板中のMo含有量
(mass%)、[%Mn]:鋼板中のMn含有量(mass
%)、[%Cr]:鋼板中のCr含有量(mass%))ま
で冷却した後、3〜15秒放冷する工程(B)と、放冷
された鋼板を引き続き15℃/秒以上100℃/秒以下
の冷却速度で冷却した後、350〜550℃の温度範囲
で巻取る工程(C)とを有する。
る。 工程(A):鋼スラブの熱間圧延では、オーステナイト
単相域で仕上圧延を終了する。これはAr3変態点より
低いフェライト+オーステナイトの2相混合域で圧延す
ると、層状組織が形成されて伸びフランジ性や延性が低
下するからである。
温度までの冷却過程では、伸びフランジ性や延性の観点
からパーライト変態を避けることが必要であり、このパ
ーライトノーズを回避するため、仕上圧延後中間放冷温
度までの冷却速度は50℃/秒以上とする。中間放冷温
度が、Crを添加しない場合に(1−[%Mo]/5)
×(630−10[%Mn])℃未満、またCrを含有
する場合に{1−([%Mo]+[%Cr]/2)/
5}×(630−10[%Mn])℃未満では、ベイナ
イト量やマルテンサイト量が多くなり、残留オーステナ
イト量が少なくなるため、TRIP(変態誘起塑性)効
果が十分発揮されず加工性が劣化する。一方、中間放冷
温度が、Crを添加しない場合に(1+[%Mo]/
5)×(730−10[%Mn])℃超、またCrを含
有する場合に{1+([%Mo]+[%Cr]/2)/
5}×(730−10[%Mn])℃超ではパーライト
変態が避けられず、加工性が劣化する。
い場合には(1−[%Mo]/5)×(630−10
[%Mn])℃以上、(1+[%Mo]/5)×(73
0−10[%Mn])℃以下、また、Crを添加する場
合には{1−([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×
(630−10[%Mn])℃以上、{1+([%M
o]+[%Cr]/2)/5}×(730−10[%M
n])℃以下とする。また、中間放冷時間が3秒未満で
は、フェライト+オーステナイトの2相に十分分離しな
いため、Cをオーステナイト中に十分濃縮させることが
できず、残留オーステナイトが得られない。一方、15
秒を超えるとフェライト粒が粗大化し、Elが劣化す
る。このため中間放冷時間は3〜15秒とする。
冷却速度は、伸びフランジ性や延性の観点からパーライ
ト変態およびマルテンサイト変態を避けるため、15℃
/秒〜100℃/秒とする。また、巻取温度が350℃
未満では、Cが十分にオーステナイトに濃化しないため
全てマルテンサイトとなり、一方、550℃を超えると
パーライト変態が起こる。このため巻取温度は350〜
550℃とする。
るために仕上スタンド列の入側で粗バーを加熱してもよ
く、このような粗バーの加熱を行っても本発明の効果は
損なわれない。粗バー加熱方法については、誘導加熱、
通電加熱、ガスバーナ加熱などうちのいずれの方法を用
いてもよい。また、粗圧延後、一度コイルボックスに巻
取り、保熱または加熱して粗バー温度を均一化した後に
圧延を行ってもよいし、また、トンネル炉を用いて粗バ
ーの加熱を行ってもよい。さらには、コイルボックスと
粗バー加熱を組み合わせても何ら問題はない。
粗圧延後、仕上圧延を行う従来の熱間圧延でもよいし、
薄スラブを鋳造後、粗圧延を省略して直ちに仕上圧延を
行う熱間圧延でもよい。また、熱間圧延は、鋳造後室温
まで冷却されたスラブを再加熱して圧延する他に、鋳造
したスラブを室温まで冷却することなく、そのまま又は
圧延温度まで再加熱して圧延を行う、所謂直送圧延法又
は熱片装入圧延法を行ってもよい。また、粗圧延後の粗
バーを接合して仕上げ圧延を行う、所謂連続圧延を行っ
てもよい。また、鋼の成分調整には転炉、電気炉のいず
れを用いてもよく、また原料にスクラップを用いても何
ら問題はない。また、熱間圧延後にめっき、化成処理な
どの表面処理を行っても本発明の効果が損なわれること
はない。
製した。これらのうち鋼種記号A〜Gが本発明鋼、鋼種
記号H〜Jが比較鋼である。これらを連続鋳造により厚
さ約250mmのスラブとし、これを1200℃に加熱
した後、粗圧延機により厚さ約30mmの粗バーに圧延
した。その後、仕上温度820℃で仕上圧延を行い、こ
の仕上圧延後直ちに冷却速度80℃/秒で690℃まで
冷却した後、6秒間放冷し、さらに冷却速度50℃/秒
で冷却し、475℃で巻き取った。このようにして表2
に示す板厚2.0mmのNo.1〜No.10の熱延コ
イルを製造した。
長手方向および幅方向にJIS5号試験片(圧延方向)
および穴拡試験片を採取し、材料特性(YP、TS、E
l、λ)の測定を行い、板幅方向および長手方向での特
性の変動量(最大値と最小値の差)を求めた。その結果
を表2に示す。
o.1〜No.7)は、いずれもコイル幅方向および長
手方向での特性の変動量が小さく、コイル内材質変動が
効果的に抑えられている。一方、比較例の鋼板(No.
8〜No.10)では、それぞれ以下の理由によりコイ
ル幅方向および長手方向での特性の変動量が大きく、コ
イル内材質変動の大きい鋼板しか得られていない。すな
わち、Mo量が本発明範囲を下回る比較鋼Hから製造さ
れた比較例No.8は、ベイナイトおよびマルテンサイ
ト変態の抑制ができず、鋼板の熱履歴や温度変動による
コイル内材質変動量が大きい。また、Cr量は本発明範
囲であるが、Mo量が本発明範囲を下回る比較鋼I、比
較鋼Jから製造された比較例No.9、No.10は、
Cr単独含有であるためコイル内材質変動が大きい。
本発明鋼A、本発明鋼Fを連続鋳造により厚さ約250
mmのスラブとし、1200℃に加熱した後、粗圧延機
により厚さ約30mmの粗バーに圧延した。その後、表
3に示す種々の熱延条件で仕上圧延−冷却−巻取を行っ
て、板厚2.0mmのNo.11〜No.20の熱延コ
イルを製造した。このようにして得られた熱延コイルか
ら、長手方向および幅方向にJIS5号試験片(圧延方
向)および穴拡試験片を採取し、材料特性(YP、T
S、El、λ)の測定を行うことにより幅方向および長
手方向の特性の変動量(最大値と最小値の差)を求め
た。その結果を表4に示す。
明例No.11〜14)は、いずれもコイル幅方向およ
び長手方向での特性の変動量が小さく、コイル内材質変
動が効果的に抑えられている。一方、比較例の熱延鋼板
(No.15〜20)は、コイル幅方向および長手方向
での特性の変動量が大きく、コイル内材質変動の大きい
鋼板しか得られおらず、また材質自体も劣っている。
が低いため層状組織となり、El、λが低い。No.1
6の比較例は中間放冷温度が本発明範囲より低いため残
留オーステナイト量が少なくなり、Elが低い。No.
17の比較例は中間放冷温度が本発明範囲より高いため
パーライト変態を起こし、El、λが低い。No.18
の比較例は中間放冷時間が本発明範囲より短いため残留
オーステナイト量が少なくなり、Elが低い。No.1
9の比較例は中間放冷時間が本発明範囲より長いためフ
ェライト粒が粗大化し、Elが低い。No.20の比較
例は巻取温度が本発明範囲より高いためパーライト変態
が起こり、加工性が低下している。
コイル全長及び全幅に亘って材質が均一であり、コイル
内材質変動が適切に抑えられている。このため自動車用
の構造部材に適用することにより、自動車の軽量化や衝
突安全性の向上を図ることができる。また、本発明の製
造方法によれば、このようなコイル内材質変動が小さい
熱延鋼板を安定して且つ効率的に製造することができ
る。
た熱延鋼板の板幅方向におけるTS、El、λの変動を
示すグラフ
差を冷却停止温度T1とMo量との関係で示すグラフ
Claims (4)
- 【請求項1】 実質的に、C:0.05〜0.18mass
%、Si:0.7〜1.5mass%、Mn:0.6〜1.
8mass%、P:0.04mass%以下、S:0.005ma
ss%以下、Al:0.01〜0.10mass%、N:0.
005mass%以下、Mo:0.05〜1.5mass%を含
有し、残部がFeからなる成分組成を有することを特徴
とするコイル内材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼
板。 - 【請求項2】 実質的に、C:0.05〜0.18mass
%、Si:0.7〜1.5mass%、Mn:0.6〜1.
8mass%、P:0.04mass%以下、S:0.005ma
ss%以下、Al:0.01〜0.10mass%、N:0.
005mass%以下、Mo:0.05〜1.5mass%、C
r:0.05〜1.5mass%を含有し、残部がFeから
なる成分組成を有することを特徴とするコイル内材質変
動の少ない高加工性高強度熱延鋼板。 - 【請求項3】 請求項1に記載の成分組成を有する鋼を
熱間圧延し、オーステナイト単相域で仕上圧延を終了す
る工程と、 仕上圧延後、直ちに50℃/秒以上の冷却速度で、(1
−[%Mo]/5)×(630−10[%Mn])℃以
上、(1+[%Mo]/5)×(730−10[%M
n])℃以下の温度範囲(但し、[%Mo]:鋼板中の
Mo含有量(mass%)、[%Mn]:鋼板中のMn含有
量(mass%))まで冷却した後、3〜15秒放冷する工
程と、 放冷された鋼板を引き続き15℃/秒以上100℃/秒
以下の冷却速度で冷却して、350〜550℃の温度範
囲で巻取る工程と、を有することを特徴とするコイル内
材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 請求項2に記載の成分組成を有する鋼を
熱間圧延し、オーステナイト単相域で仕上圧延を終了す
る工程と、 仕上圧延後、直ちに50℃/秒以上の冷却速度で、{1
−([%Mo]+[%Cr]/2)/5}×(630−
10[%Mn])℃以上、{1+([%Mo]+[%C
r]/2)/5}×(730−10[%Mn])℃以下
の温度範囲(但し、[%Mo]:鋼板中のMo含有量
(mass%)、[%Mn]:鋼板中のMn含有量(mass
%)、[%Cr]:鋼板中のCr含有量(mass%))ま
で冷却した後、3〜15秒放冷する工程と、 放冷された鋼板を引き続き15℃/秒以上100℃/秒
以下の冷却速度で冷却して、350〜550℃の温度範
囲で巻取る工程と、を有することを特徴とするコイル内
材質変動の少ない高加工性高強度熱延鋼板の製造方法。
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