JP4930393B2 - 冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車部品等に使用される、冷延鋼板の製造方法に関し、特に、440MPa以上の高い引張強度と0.85以上の高い降伏比を有する高降伏比高張力冷延鋼板の製造方法に関するものである。
自動車の車体は、燃費改善や運動性能向上の観点から、軽量化が強く要求されている。また、衝突時の安全性確保の観点から、高強度化も必要であり、部品素材として高張力鋼板が多く適用されている。特に、車体の骨格を形成する強度部品に対しては、乗員保護の観点から、衝突時の変形を最小限に抑え、かつ変形時に吸収できるエネルギーを高めることが求められており、このような部品には、降伏強度の高い高張力鋼板を素材として使用することが望ましい。
このような中で、自動車の車体部品には、主として板厚の薄い冷延鋼板が使用されている。また、強度部品では、少なくとも引張強度が440MPa以上の高張力鋼板が必要とされている。ただし、あまりに強度の高い鋼板では、部品への成形加工が困難となるため、強度部品の素材には、440MPa級以上、好ましくは540MPa級以上、より好ましくは590MPa級程度の適度な引張強度水準であり、かつ、降伏強度が高い、すなわち降伏比の高い高張力冷延鋼板が適当である。
引張強度が440MPa以上となるように冷延鋼板を高強度化するには、固溶強化に加えて組織強化を併用することが最も一般的な手法である。ただし、硬質相としてマルテンサイトを利用する場合には、鋼板の降伏比が低下しやすい。
一方、降伏比を高める効果的な強化手法としては、析出強化がある。しかし、冷延鋼板の通常の製造プロセスにおいて、再結晶焼鈍後の冷延鋼板中に微細な析出物を存在させることは難しい。熱延後の冷却過程において鋼板中に析出物が微細に析出しても、冷延後の焼鈍時の昇温過程で析出物は成長し易く、強化能の高い微細粒子のまま析出物を焼鈍後まで残存させることは困難だからである。そのため、冷延鋼板では析出強化を有効に利用することができず、降伏比の高い高張力冷延鋼板を得ることは容易ではない。
降伏比の高い高張力冷延鋼板を得る手段として、例えば、特許文献1には、NbおよびTiを添加した中炭素鋼において、鋼板組織をマルテンサイト相やベイナイト相のない非複合組織とすることにより、引張強度が45kgf/mm2以上(440MPa以上)で降伏比が80%以上の高強度高降伏比型溶融亜鉛めっき鋼板を得る技術が開示されている。
また、特許文献2には、TiあるいはNbを含有させた中炭素鋼で、鋼組織を平均粒径が1〜4μmのフェライトおよびベイナイトを80%以上含有する組織とし、フェライトおよびベイナイト粒内の析出物の粒径と個数を所定の範囲に制御した、引張強度が700MPa以上かつ降伏比が0.7以上の高強度冷延鋼板が提案されている。
さらに、特許文献3には、Ti、Nb、Mo、Bの添加量を狭い範囲で厳密に管理することにより、高降伏比かつ良延性を確保した、高降伏比高強度冷延鋼板に関する技術が記載されている。
特開平10-273754号公報 特開2005-133181号公報 特開2006-274378号公報
しかしながら、特許文献1では、微細なフェライトとパーライトの組織として、組織制御により高降伏比を得ようとしている。そのため、焼鈍後の冷却中に515〜600℃という狭い温度域に保持する必要があり、冷却条件のバラツキによってはマルテンサイトやベイナイトなどが形成される場合がある。したがって、冷却条件のバラツキによる材質への影響が大きいという問題がある。
また、特許文献2では引張強度が700MPa以上、特許文献3では引張強度が780MPa級の高張力鋼板を主たる対象としており、自動車車体の部品としては、適用可能な範囲が限定されるという問題がある。
本発明は、かかる事情に鑑み、自動車車体の強度部品にも適用可能な、440MPa以上の引張強度と0.85以上の高い降伏比を有する冷延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、上記問題点を解決するため、鋼の成分組成と鋼板の製造条件が鋼板の降伏比に及ぼす影響について、鋭意研究調査を重ねた。
その結果、所定の成分組成を有し、Nbを含有する冷延鋼板に対して、所定のオーステナイト単相域温度に保持することでNb析出物を一部分解し、その後の冷却過程において微細再析出の促進処理を施すことで、高張力冷延鋼板に高い降伏比特性を付与できることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1.0%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.10%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.02〜0.20%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1100〜1300℃の温度に再加熱し、Ar3変態点以上の仕上温度で熱間圧延し、700℃以下の温度で巻き取って熱延鋼板とし、次いで、該熱延鋼板を酸洗、冷間圧延した後に、(Ac3変態点)〜(Ac3変態点+200)℃の温度で30s以上加熱保持し、次いで、10℃/s以上の冷却速度で冷却し、500〜700℃の温度で60s以上保持した後、再度冷却することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
[2]質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1.0%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.10%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.02〜0.20%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1100〜1300℃の温度に再加熱し、Ar3変態点以上の仕上温度で熱間圧延し、700℃以下の温度で巻き取って熱延鋼板とし、次いで、該熱延鋼板を酸洗、冷間圧延した後に、(Ac3変態点)〜(Ac3変態点+200)℃の温度に30s以上加熱保持し、次いで、650〜750℃の急冷開始温度まで10〜30℃/sの冷却速度で冷却し、次いで、前記急冷開始温度から450℃以下の急冷停止温度まで30℃/sを超える冷却速度で急冷し、次いで、500〜700℃の温度に再加熱し、60s以上保持した後、再度冷却することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
[3]前記[1]または[2]に記載の成分組成として、さらに、下記式(1)を満足するようにTiを含有することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
3.5≦[Ti]/[N]≦7.0 ‥‥‥ (1)
ただし、[Ti]、[N]はそれぞれTi、Nの含有量(質量%)、
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の成分組成として、さらに、質量%で、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%の中から選ばれた1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。また、本発明において、「高降伏比高張力冷延鋼板」とは、降伏比が0.85以上であり引張強度が440MPa以上である冷延鋼板である。
本発明によれば、高い降伏比を有する高張力冷延鋼板が得られる。また、本発明では、再析出促進処理での保持時間が長いため、その他の冷却条件の制約が少なく、冷却条件のバラツキによる材質への影響の問題が回避できる。
本発明により得られる鋼板は、自動車部品素材として十分な基本的成形性を維持しつつ、高い降伏比特性を具備しているため、自動車車体の強度部品等の素材として好適に使用される。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明に用いる鋼スラブの成分組成の限定理由について説明する。
C:0.03〜0.15%
Cは、鋼の高強度化に必要な元素であり、析出強化を通じて鋼板の高降伏比化にも大きな役割を果たす。これらの所望の鋼板特性を得るためには、Cを0.03%以上含有することが必要である。ただし、Cの含有量が0.15%を超えると、鋼板の溶接性が大きく低下する。よって、Cの含有量は0.03%以上0.15%以下とする。好ましいCの含有量は0.03%以上0.10%以下であり、さらに好ましくは0.03%以上0.07%以下である。
Si:1.0%以下
Siは、固溶強化により鋼の強度を高める作用を有する元素である。しかし、Siの含有量が1.0%を超えると、鋼板の表面性状が顕著に劣化し、めっき性にも悪影響を及ぼす。そのため、Siの含有量は1.0%以下とする。なお、鋼板に溶融亜鉛めっきを施す場合には、Siの含有量は0.5%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.1%以下である。なお、本発明においては、Siは積極的に含有する必要はなく、含有しなくても(0%であっても)良い。
Mn:0.5〜2.5%
Mnは、固溶強化により鋼の強度を増す作用を有する元素であり、所望の鋼板強度を得るためには0.5%以上を含有させる。しかし、過度のMnの含有は、鋼板の成形性やめっき性を低下させるので、Mn含有量の上限は2.5%とする。好ましくは、1.5%以上2.5%以下である。
P:0.10%以下
Pは、固溶強化により鋼を高強度化する元素であり、所望の鋼板強度を確保するためには0.01%以上の含有が好ましい。一方、多量のPの添加は、鋼板の溶接性やめっき性を低下させる。よって、Pの含有量は0.10%以下とする必要がある。なお、鋼板に溶融亜鉛めっきを施す場合には、Pの含有量は0.05%以下とするのが好ましい。
S:0.01%以下
Sは、鋼中に不純物として存在する元素である。多量のSの含有は、鋼板の成形性や溶接性を低下させる。よって、Sの含有量は0.01%以下とする。
Al:0.01〜0.10%
Alは、鋼の脱酸のために添加される元素である。Alの含有量が0.01%未満では十分な脱酸効果が得られない場合がある。一方、Alの含有量が0.10%を越えると、前記脱酸効果は飽和する上、鋼中介在物の増加によって鋼板の表面欠陥や内部欠陥が増加する。よって、Alの含有量は0.01%以上0.10%以下とする。好ましくは、0.01%以上0.05%以下である。
N:0.005%以下
Nは、鋼中に不純物として存在する元素である。多量のNの含有は、鋼板の成形性を低下させる。よって、Nの含有量は0.005%以下とする。好ましくは0.003%以下である。
Nb:0.02〜0.20%
Nbは、本発明において最も重要な元素である。Nbは、炭化物や炭窒化物を形成し、鋼中に析出して鋼を析出強化し、鋼板を高強度化および高降伏比化する作用がある。また、結晶粒を微細化し、高温加熱時の結晶粒粗大化を抑制する効果も有する。このような効果を十分に得るためには、Nbを0.02%以上含有させる必要がある。一方、過度に多量のNbの含有は、鋼板の製造性を悪化させるので、Nbの含有量は0.20%以下とする。良好な製造性を保つためには、Nb含有量は0.15%以下とするのが好ましい。なお、本発明において、Nb析出物とは、Nb炭化物およびNb炭窒化物を指す。ただし、冷間圧延後の加熱保持により一部分解し、冷却過程で再析出させるには、鋼中への溶解度が小さいNb炭化物のほうが好適である。
また、本発明では、鋼スラブに下記式(1)の範囲でTiを含有させることができる。
Ti:3.5≦[Ti]/[N]≦7.0 ‥‥‥ (1)
TiはNとの親和性が強く、窒化物を形成する作用が強力な元素である。好適なNb析出物を得るために、鋼中のNを全量固定するためには、N含有量との関係式で、[Ti]/[N]≧3.5とする必要がある。一方、[Ti]/[N]>7.0となるようにTiを添加してもNの固定効果は飽和する。よって、Tiを含有する場合は上記式(1)を満足させるように含有する。Ti窒化物は高温でも安定であるため、TiによるNの析出固定には、高温加熱時の結晶粒粗大化防止効果も期待される。なお、鋼スラブがTiを含有する場合には、Nb析出物に若干のTiが固溶することもあるが、本発明の範囲内ならば特段の問題はない。
本発明に用いる鋼スラブの化学組成は、上記した成分元素の他は、残部Feおよび不可避的不純物からなる。ただし、これらの成分元素に加えて、以下の合金元素を必要に応じて含有することができる。
Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%の中から選ばれた1種または2種以上
Cr、Mo、Cu、Niは、それぞれ固溶強化により鋼の強度を増す作用を有する元素であり、鋼板強度を高めるためには、いずれの元素の場合も0.05%以上を含有させる必要がある。一方、過度の含有は、鋼板の表面性状の悪化やめっき性の低下を招き、経済的にも不利である。よって、それぞれの元素を含有する場合の各々の元素含有量は0.05%以上0.5%以下とする。また、Cr、Mo、Cu、Niのうちの2種以上を含有する場合には、それらの含有量の合計は1.0%以下とすることが好ましい。
次に、本発明の製造条件の限定理由について説明する。
本発明における冷延鋼板は、前記成分組成を有する鋼スラブを、1100〜1300℃の温度に再加熱し、Ar3変態点以上の仕上温度で熱間圧延し、700℃以下の温度で巻き取って熱延鋼板とし、次いで、該熱延鋼板を酸洗、冷間圧延した後に、(Ac3変態点)〜(Ac3変態点+200)℃の温度で30s以上加熱保持し、次いで、10℃/s以上の冷却速度で冷却し、500〜700℃の温度で60s以上保持した後、再度冷却することにより製造される。または、前記、(Ac3変態点)〜(Ac3変態点+200)℃の温度に30s以上加熱保持後、650〜750℃の急冷開始温度まで10〜30℃/sの冷却速度で冷却し、次いで、前記急冷開始温度から450℃以下の急冷停止温度まで30℃/sを超える冷却速度で急冷し、次いで、500〜700℃の温度に再加熱し、60s以上保持した後、再度冷却することにより製造される。
なお、その他の製造条件は、通常行われている公知の方法で行うことができる。詳細には以下の通りである。
本発明鋼板の素材となる鋼スラブは、前記の成分組成を有する鋼を転炉法により溶製し、連続鋳造法により鋳造してスラブとすることが、生産性ならびにスラブ品質の観点からは好ましいが、その他の手段を用いて製造しても構わない。また、必要に応じて、溶銑予備処理や脱ガス処理に代表される各種予備処理や二次精錬、表面欠陥防止のためのスラブ手入等を実施することが好ましい。
スラブ再加熱温度(SRT):1100〜1300℃
鋼スラブの再加熱温度は、1100℃以上1300℃以下の範囲とする。再加熱温度が1300℃を超えると、鋼板の表面性状の劣化を招く上、加熱に要するエネルギーの点からも好ましくない。一方、再加熱温度が1100℃未満になると、鋼スラブ中の析出物の分解が不十分となり、鋼板に必要な強度および特性を付与し難くなる。より好ましくは、1150〜1250℃である。
なお、鋼スラブの再加熱においては、常温まで冷却した冷スラブを再加熱してもよいし、鋳造後に降温中の温スラブを直接加熱炉に装入して再加熱してもよい。
仕上温度(FT):Ar3変態点以上
熱間圧延の仕上温度がAr3変態点未満の場合には、鋼板の組織が不均一となり、十分な成形性が得られなくなる。そのため、仕上温度はAr3変態点以上とする。ただし、仕上温度が(Ar3変態点+100℃)を超えると、結晶粒が粗大化しやすく、成形性や表面性状の劣化を招きやすい。したがって、仕上温度は(Ar3変態点+100℃)以下とすることが望ましい。
なお、所定の仕上温度を確保するために、エッヂヒーターあるいはバーヒーター等のシートバー加熱装置を利用してもよい。また、複数のシートバーを接合し、連続して仕上圧延を行ってもよい。
ここで、Ar3変態点は熱収縮測定による実測あるいは鋼の成分組成からの計算等により求めることができる。
巻取温度:700℃以下
熱間圧延後の巻取温度が700℃を超える場合には、巻取後の徐冷過程において鋼中析出物が粗大化してしまい、冷間圧延後の高温保持による再分解を経て冷延鋼板中に微細に再析出させることが困難になる。そのため、熱延後の巻取温度は700℃以下に限定する。巻取温度の下限は、特に限定するものではないが、鋼板の形状確保や均一冷却の観点から400℃以上とするのが好ましい。
酸洗、冷間圧延
上記により得た熱延鋼板は、常法に従い、酸洗を行い、鋼板表面に形成されているスケールを除去し、次いで、冷間圧延する。
酸洗条件は特に限定しない。通常行われている方法を用いることができる。
冷間圧延の圧下率は特に限定はしないが、結晶粒粗大化の抑制および圧延負荷の増大回避のため、30〜80%程度とするのが好ましい。
加熱(一次加熱):(Ac3変態点)〜(Ac3変態点+200)℃の範囲の温度に30s以上保持
冷延鋼板を析出強化して降伏比を高めるためには、冷間圧延後の一次加熱時に、熱延後の冷却中に析出したNb析出物を分解し、その後の冷却過程で再度微細に析出させる必要がある。そのため、冷間圧延後の一次加熱の際には、十分な量のNb析出物が分解する温度まで加熱することが必須となる。一次加熱温度がAc3変態点以上であると、鋼組織のオーステナイト単相化によるC固溶限の拡大に伴い、Nb析出物の分解が促進される。また、オーステナイト変態により、鋼中に残存する未再結晶フェライトが消滅する。よって、一次加熱温度はAc3変態点以上とする。一方、加熱温度が高すぎると、結晶粒の粗大化を招いて鋼板の成形性低下を招く。そのため、一次加熱温度の上限は(Ac3変態点+200)℃とする。
ここで、Ac3変態点は熱膨張測定による実測あるいは鋼の成分組成からの計算等により求めることができる。
また、保持温度が30s未満ではNb析出物の分解が十分に進まない場合がある。
一次加熱後の冷却速度:10℃/s以上
一次加熱温度から下記保持温度(500〜700℃)までの冷却速度が小さすぎると、冷却中の高温域でNb析出物が析出して粗大化し易く、所望の強化効果が得られない。そのため、一次加熱後の冷却速度は10℃/s以上とする。冷却速度の上限は、特に限定するものではないが、鋼板の形状確保の観点から100℃/s以下とするのが好ましい。
保持温度:500〜700℃
一次加熱時に分解したNb析出物を再度微細に析出させるためには、一次加熱後の冷却中に適切な温度域に鋼板を保持し、再析出を促進させる必要がある。この保持温度が500℃未満では、析出が十分な速度で進行しない。一方、保持温度が700℃を超える場合には、析出物が粗大化してしまい、所望の強化能を維持できない。よって、一次加熱後の保持温度は500℃以上700℃以下の範囲とする。好ましくは、550〜650℃である。
また、前記保持温度での保持時間が60s未満では、十分な析出促進効果が得られない。よって、保持時間は60s以上とする。好ましくは120s以上である。なお、保持時間が過度に長い場合には生産性の大幅な低下を招くので、保持時間は600s以下とするのが望ましい。
保持後は、再度適宜冷却する。
なお、本発明の製造方法においては、Nb析出物の再析出促進を目的として行われる一次加熱後の保持工程を、急冷後再加熱に替えることができる。急冷後再加熱の場合には、一次加熱後の冷却過程での析出挙動を制御するため、以下の方法で冷却再加熱する必要がある。
一次加熱後の冷却速度:10〜30℃/s
一次加熱温度から急冷開始温度までの冷却速度が小さすぎると、冷却中の高温域でNb析出物が析出して粗大化し易く、所望の強化効果が得られない。そのため、一次加熱後の冷却速度は10℃/s以上とする。一方、一次加熱温度から急冷開始温度までの冷却速度が30℃/sを超えると、フェライト変態の進行が遅滞し、所望の鋼板特性が得られない。よって、一次加熱後急冷開始温度までの冷却速度は10℃/s以上30℃/s以下とする。
急冷開始温度:650〜750℃
一次加熱後の急冷は、650〜750℃の範囲の温度で開始する必要がある。急冷開始温度が750℃より高いと、フェライト変態が抑制され、所望の鋼板特性が得られない。一方、急冷開始温度が650℃より低い場合には、析出物の粗大化を招きやすく、所望の強化効果が得られない。よって、一次加熱後の急冷開始温度は650℃以上750℃以下とする。
急冷開始温度から450℃以下の急冷停止温度まで冷却速度:30℃/s超え
一次加熱後の保持工程に代えて、急冷後の再加熱を実施する場合には、急冷開始温度から450℃以下の急冷停止温度まで、30℃/sを超える冷却速度で急冷する。前記温度範囲での急冷速度が30℃/s以下の場合には、析出物の粗大化を招きやすく、所望の強化効果が得難くなる。冷却速度の上限については、特に制限する必要はなく、水焼入のように非常に冷却速度の高い冷却方法を採用してもよい。急冷停止温度が450℃以下であれば、前記した析出物の粗大化は回避できる。好ましい急冷停止温度は300℃以下である。
上記急冷後再加熱を施す。
再加熱温度:500〜700℃
一次加熱時に分解したNb析出物を上記急冷後再度微細に析出させるためには、再加熱して再析出反応を促進させる必要がある。この再加熱温度が500℃未満では、析出反応が十分な速度で進行しない。一方、再加熱温度が700℃を超える場合には、析出物が粗大化してしまい所望の強化能を維持できない。よって、急冷後の再加熱温度は500℃以上700℃以下の範囲とする。好ましくは、550℃以上650℃以下である。
また、前記再加熱温度での保持時間が60s未満では、十分な析出促進効果が得られない。よって、上記再加熱温度での保持時間は60s以上とする。なお、保持時間が過度に長い場合には生産性の低下を招くので、保持時間は600s以下とするのが好ましい。
保持後は、適宜冷却する。
上記の冷延鋼板に施す熱処理工程については、連続ラインで実施すること、および冷間圧延後の再結晶焼鈍工程に兼ねて実施することが、生産性の観点から好ましい。ただし、再結晶焼鈍後に別途実施することも可能である。
上記熱処理(焼鈍)後の冷延鋼板は、溶融めっきまたは電気めっきを施して亜鉛めっき鋼板とすることもでき、亜鉛めっき鋼板としても十分な発明効果が得られる。亜鉛めっきとしては、合金化亜鉛めっきや純亜鉛めっきが挙げられる。なお、冷延鋼板に合金化溶融亜鉛めっき処理を施す場合には、上記した析出促進のための急冷後再加熱工程を合金化工程に兼ねて実施することが、生産性の観点から好ましい。熱処理後あるいはめっき処理後の鋼板には、形状矯正や表面粗度の調整のための調質圧延を加えても良い。また、本発明による鋼板は、亜鉛以外の金属めっきや種々の塗装、潤滑被覆等の各種表面処理を施すことも可能である。
表1に示す成分元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼片を、表2に示す条件で熱間圧延して板厚3mmの熱延鋼板を得た。次いで、得られた熱延鋼板を酸洗してデスケーリングした後、冷間圧延して板厚1.2mmの冷延鋼板とした。さらに、得られた冷延鋼板を、表2に示す条件で熱処理(焼鈍、冷却)した。なお、一部鋼板については、一次加熱後の急冷後に溶融亜鉛めっき処理を施し、急冷後再加熱工程を合金化工程に兼ねて、合金化溶融亜鉛めっき鋼板とした。
また、表2中のAr3変態点およびAc3変態点は、下記式により鋼の化学組成から算出して得た値である。
Ar3(℃)=Kr−203[C]1/2+44.7[Si]−15[Mn]+350[P]+200[Al]+200[Ti]−10[Cu]−15.2[Ni]−5.5[Cr]+31.5[Mo]
ただし、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[Al]、[Ti]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]は、それぞれC、Si、Mn、P、Al、Ti、Cu、Ni、Cr、Moの含有量(質量%)。
Krは、Cu、Ni、Cr、Moのいずれか1種以上を含有する場合はKr=820、
これ以外はKr=825。
Ac3(℃)=900−203[C]1/2+44.7[Si]−15[Mn]+350[P]+200[Al]+200[Ti]−10[Cu]−15.2[Ni]−5.5[Cr]+31.5[Mo]
ただし、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[Al]、[Ti]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]は、それぞれC、Si、Mn、P、Al、Ti、Cu、Ni、Cr、Moの含有量(質量%)。
このようにして得られた冷延鋼板に対して、伸長率0.5%の調質圧延を施した後、下記の要領で鋼板の引張特性を測定、評価した。
引張特性
試験方向が圧延方向と直角になるように採取した日本工業規格JIS Z 2201に規定の5号試験片を用いて、同じくJIS Z 2241に規定の方法に準拠し、引張強度(TS)、降伏応力(YS)、破断伸び(El)を測定し、降伏比(YR)を求めた。なお、ここでの降伏応力には下降伏応力あるいは0.2%耐力の値を採用した。
以上により得られた結果を条件と併せて表2に示す。
Figure 0004930393
Figure 0004930393
表2より、本発明例の各鋼板は、440MPa以上の引張強度を有し、0.85以上の高い降伏比を示している。
一方、鋼組成あるいは熱処理条件が本発明の範囲を外れる比較例の各鋼板は、降伏比が所望の水準に達しておらず、高降伏比型高張力冷延鋼板としては不適当である。
本発明による鋼板は、自動車部品を中心に、高い降伏比と高強度を必要とする各種電気機器などの部品に対して好適に使用できる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1.0%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.10%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.02〜0.20%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1100〜1300℃の温度に再加熱し、Ar3変態点以上の仕上温度で熱間圧延し、700℃以下の温度で巻き取って熱延鋼板とし、
    次いで、該熱延鋼板を酸洗、冷間圧延した後に、(Ac3変態点)〜(Ac3変態点+200)℃の温度で30s以上加熱保持し、次いで、10℃/s以上の冷却速度で冷却し、500〜700℃の温度で60s以上保持した後、再度冷却することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
  2. 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1.0%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.10%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.02〜0.20%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、1100〜1300℃の温度に再加熱し、Ar3変態点以上の仕上温度で熱間圧延し、700℃以下の温度で巻き取って熱延鋼板とし、
    次いで、該熱延鋼板を酸洗、冷間圧延した後に、(Ac3変態点)〜(Ac3変態点+200)℃の温度に30s以上加熱保持し、次いで、650〜750℃の急冷開始温度まで10〜30℃/sの冷却速度で冷却し、次いで、前記急冷開始温度から450℃以下の急冷停止温度まで30℃/sを超える冷却速度で急冷し、次いで、500〜700℃の温度に再加熱し、60s以上保持した後、再度冷却することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の成分組成として、さらに、下記式(1)を満足するようにTiを含有することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
    3.5≦[Ti]/[N]≦7.0 ‥‥‥ (1)
    ただし、[Ti]、[N]はそれぞれTi、Nの含有量(質量%)
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の成分組成として、さらに、質量%で、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%の中から選ばれた1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
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