JP5063757B2 - 車体側部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車体の左右のサイドボデーをフロントフロアクロスメンバ及びルーフアーチで接合した車体側部構造に関するものである。
車体側部構造には、車両の前ドアと後ドアの間に立設しているセンタピラーを上のルーフサイドレール及び下のサイドシルに接合しているものがある。
この構造では、サイドシルは内部に設けた補強用のサイドシルリンフォースを前側部分と後側部分とに分割し、センタピラーの下端部を結合した結合部とその前後の所定範囲にサイドシルリンフォースが存在しない補強の不連続部を形成している。そして、側面衝突時に、サイドシルはサイドシルリンフォースが存在しない補強の不連続部から内側に屈曲変形し、それに伴いセンタピラーは上部のルーフサイドレールとの結合部付近を支点として振り子のように内側へ回動して、衝撃の吸収が行われる(例えば、特許文献1参照)。
しかし、従来技術(特許文献1)は、サイドシルリンフォースが存在しない補強の不連続部によって、サイドシルリンフォースの強度が部分的に小さくなるので、車両の正面衝突や後面衝突に対するサイドシルの強度が低下する。また、側面衝突に対する強度も低下する。
特許第3637141号公報
本発明は、車両の側面衝突などの衝突時の衝撃を吸収し、且つ、車体の強度を向上させた車体側部構造を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、左のサイドボデー、右のサイドボデーのサイドシルをフロントフロアクロスメンバで接合し、センタピラー同士をルーフアーチで接合している車体側部構造において、ルーフアーチ、センタピラーのセンタピラースチフナーのうち上部センタピラースチフナー、サイドシルのサイドシルスチフナー、フロントフロアクロスメンバのフロントフロアクロスメンバスチフナーは、ダイクエンチを用いて成形され、下部センタピラースチフナーは、ダイクエンチで得られる強度より強度が小さい鋼板を用いて塑性加工され、フロントフロアクロスメンバスチフナー、左右の下部センタピラースチフナー、左右の上部センタピラースチフナー、ルーフアーチを環状に配置し、フロントフロアクロスメンバを閉断面形状にフロントフロアクロスメンバスチフナーとフロントフロアクロスメンバ本体で形成して、フロントフロアクロスメンバ本体のみが、サイドシルスチフナーと閉断面形状を形成しているサイドシルインナに結合し、フロントフロアクロスメンバスチフナーは、サイドシルインナに対し乖離して空間を形成していることを特徴とする。
請求項2に係る発明では、センタピラーは、上部センタピラースチフナー及び車室へ向くセンタピラーインナで上部を閉断面形状に形成し、下部センタピラースチフナー及びセンタピラーインナで下部を閉断面形状に形成し、ルーフアーチは、センタピラーインナにコーナブラケットを介して接合していることを特徴とする。
請求項3に係る発明では、下部センタピラースチフナーは、車両側面視で、車室に配置した前部座席の乗員着座部に重なっていることを特徴とする。
請求項に係る発明は、サイドシル内に仕切り補強部材を設けたことを特徴とする。
請求項1に係る発明では、ルーフアーチ、センタピラーのセンタピラースチフナーのうち上部センタピラースチフナー、サイドシルのサイドシルスチフナー、フロントフロアクロスメンバのフロントフロアクロスメンバスチフナーは、ダイクエンチを用いて成形され、下部センタピラースチフナーは、ダイクエンチで得られる強度より強度が小さい鋼板を用いて塑性加工され、フロントフロアクロスメンバスチフナー、左右の下部センタピラースチフナー、左右の上部センタピラースチフナー、ルーフアーチを環状に配置しているので、環状の骨格のうちダイクエンチ(ホットスタンプ)によって塑性加工された部位を除いた下部センタピラースチフナーが強度の小さい鋼板(例えば、高張力鋼板)となり、サイドボデー(車両側面)に車両の外側から荷重(衝撃)が入力されると、下部センタピラースチフナーが優先的に変形して、乗員着座部(シートクッション)の下方へ向かって変形する。この変形を起点にして、連続している部位は乗員着座部(シートクッション)の下方へ向かって変形するように誘導されるという利点がある。
一方、サイドシルはサイドシルスチフナーによって、車両の正面又は後面に入力される荷重(衝撃)に対し、強度が高まるという利点がある。
このように、車体側部構造は、車両の前面(正面)、車両の後面、側方(車両側面)に入力される荷重(衝突荷重)に対する車体の強度を向上させることができる。
請求項1に係る発明では、フロントフロアクロスメンバのフロントフロアクロスメンバ本体のみが、サイドシルインナに結合し、フロントフロアクロスメンバスチフナーは、サイドシルインナに対し乖離して空間を形成しているので、車両の外側からサイドボデーに入力される荷重に対し、サイドシルインナに結合しているフロントフロアクロスメンバ本体の端部は変形しやすくなり、乗員着座部の下方へ向け下部センタピラースチフナーの変形を誘導することができる。
請求項2に係る発明では、センタピラーは、上部センタピラースチフナー及びセンタピラーインナで上部を閉断面形状に形成し、下部センタピラースチフナー及びセンタピラーインナで下部を閉断面形状に形成し、ルーフアーチは、センタピラーインナにコーナブラケットを介して接合しているので、サイドボデーに車両の外側から荷重が入力されると、閉断面形状(中空)の内方へ向かって下部センタピラースチフナーがつぶれ、この下部センタピラースチフナーが起点となり優先的に変形し始めるという利点がある。
請求項3に係る発明では、下部センタピラースチフナーは、車両側面視で、車室に配置した前部座席の乗員着座部に重なっているので、サイドボデーに車両の外側から荷重が入力されると、下部センタピラースチフナーが乗員着座部の下方へ向かって変形するという利点がある。
請求項に係る発明では、サイドシル内に仕切り補強部材を設けたので、サイドボデーに車両の外側から荷重が入力されると、荷重が仕切り補強部材に分散され、サイドシルの曲げ方向のつぶれ変形をより抑制することができる。
その結果、仕切り補強部材は荷重をほとんど減衰させないでサイドシルインナを介して、サイドシルインナに結合しているフロントフロアクロスメンバ本体の端部に伝達し、フロントフロアクロスメンバ本体の端部の圧縮変形をより確実に促進させることができる。
つまり、中空に形成したサイドシル自体の内方へ押し込まれるつぶれ変形を抑制するという利点がある。
本発明の実施例に係る車体側部構造の斜視図である。 実施例に係る車体側部構造の側面図である。 図2の3−3線断面図である。 図2の4−4線断面図である。 図1の5矢視図である。 図5の6矢視図である。 図6の7−7線断面図である。 図6の8−8線断面図である。 サイドシルにフロントフロアクロスメンバを取付けた状態を示す図である。 サイドシル内に配置した仕切り補強部材を示す図である。 図9の11−11線断面図である。 図9の12−12線断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
実施例に係る車体側部構造は、図1に示すように、車両11に採用され、車両11の車体12に設けた左のサイドボデー13と右のサイドボデー(図に示していない)を下のフロントフロアクロスメンバ15及び上のルーフアーチ16で結合した。
車体側部構造は、図3に示す車体12の中央(中心線C)を基準に左右がほぼ対称である。
右のサイドボデーは左のサイドボデー13とほぼ対称である。
車体12の左側を主体に説明していく。
車両11は、図1〜図3に示す通り、4ドアで、例えば右ハンドル車であり、左のサイドボデー13に設けた前乗降口18、後乗降口21と、車室22と、車室22に配置した前部座席24、後部座席25と、を有する。
左のサイドボデー13は、前乗降口18並びに後乗降口21の下枠をなすサイドシル27と、フロントピラー28と、上枠をなすルーフサイドレール29と、センタピラー31と、リヤピラー32と、を備える。
また、これら(サイドシル27、フロントピラー28、センタピラー31、リヤピラー32)の外面を形成するサイドパネルアウタ33(図3、図4参照)を有するが、ここでは、一部のみを二点鎖線で記載している。図1〜図12の左のサイドボデー13は、外面を形成するサイドパネルアウタ33を実線で示していない。
図中、35は車体側部構造のルーフアーチ16を含むルーフ、36はルーフパネルである。
次に、車体側部構造の主要構成を図1〜図12で説明する。
車体側部構造は、車室22の左の側壁をなす左のサイドボデー13、右の側壁をなす右のサイドボデーを配置し、これらの下端をなすサイドシル27の中央部41同士を左右に延びるフロントフロアクロスメンバ15で接合し、中央部41に立設したセンタピラー31の上端42同士を左右に延びるルーフアーチ16で接合している。
ルーフアーチ16、センタピラー31のセンタピラースチフナー43(図1)のうち上部センタピラースチフナー44、サイドシル27のサイドシルスチフナー45、フロントフロアクロスメンバ15のフロントフロアクロスメンバスチフナー46は、鋼板を加熱して金型で塑性加工すると同時に金型に接触して冷却することによって焼き入れを行うダイクエンチ(日本工業規格(JIS)参照)を用いて成形されている。
センタピラースチフナー43の残りの部位である下部センタピラースチフナー47は、ダイクエンチで得られる強度より強度が小さい鋼板を用いて冷間プレス成形されている。
そして、車室22の正面視(図3の視点)で、フロントフロアクロスメンバスチフナー46、左右の下部センタピラースチフナー47、左右の上部センタピラースチフナー44、ルーフアーチ16を環状に配置している。
ダイクエンチ(ホットスタンプともいう)は、日本工業規格(JIS)で定義されている既存の処理である。
ダイクエンチ(ホットスタンプ)は鋼板を加熱し、加熱した鋼板をプレス装置に取付けた金型で塑性加工すると同時に、金型との接触によって焼き入れ(冷却)を行う。
このダイクエンチ(ホットスタンプ)によって得られた成形品(ホットスタンプ材)は、引っ張り強さが、980MPa以上の超ハイテンである。下部センタピラースチフナー47、センタピラーインナ48、フロントフロアクロスメンバ15、サイドシルインナ54の引っ張り強さ(例えば、590MPa)に比べ、大きいものである。
センタピラー31は、上部センタピラースチフナー44及び車室22へ向くセンタピラーインナ48で上部を閉断面形状(図8参照)に形成し、下部センタピラースチフナー47及びセンタピラーインナ48で下部を閉断面形状(図4参照)に形成した。
ルーフアーチ16は、図3、図6に示す通り、センタピラーインナ48にルーフサイドレールインナ87を挟んでコーナブラケット51を介して接合している。
下部センタピラースチフナー47は、車両11側面視(図2の視点)で、車室22に配置した前部座席24の乗員着座部(シートクッション)52に重なっている。
フロントフロアクロスメンバ15を閉断面形状(図11参照)にフロントフロアクロスメンバスチフナー46とフロントフロアクロスメンバ本体53で形成して、フロントフロアクロスメンバ本体53のみが、サイドシルスチフナー45と閉断面形状(図3参照)を形成しているサイドシルインナ54に結合している(図4、図9)。
一方、フロントフロアクロスメンバスチフナー46は、サイドシルインナ54に対し距離(平均距離)E(図4)だけ乖離して空間56を形成している。
サイドシル27内に仕切り補強部材57(図4、図9、図10)を設けた。
仕切り補強部材57は、外バルクヘッド58と、内バルクヘッド61と、前バルクヘッド62と、後バルクヘッド63と、からなる。
次に、車体側部構造を詳しく説明していく。
サイドシル27は、図3、図4に示す通り、3部材からなる。
サイドパネルアウタ33のサイドシルアウタ67と、サイドシルインナ54と、ダイクエンチ(ホットスタンプ)で成形したサイドシルスチフナー45と、からなる。
サイドシルスチフナー45はサイドシル27の全長に亘って設け、サイドシルアウタ67並びにサイドシルインナ54で形成した中空(閉断面形状)の内部に中空を2分割するように設けられ中間層をなす。
サイドシルインナ54にアンダボデー68を接合している。
アンダボデー68のフロントフロアクロスメンバ15は、前述のフロントフロアクロスメンバ本体53の一端53a、他端53b(図5)のみをサイドシル27に接合している。
一端53a、他端53bはフロントフロアクロスメンバ15の一端、他端でもある。
さらに、一端53a、他端53bの距離(平均距離)Eは、つぶれ領域を示すものでもある。
さらにフロントフロアクロスメンバ本体53は、図11に示すように溝形に本体が形成され、本体に連続してフランジ71をフロントフロアクロスメンバスチフナー46に接合するよう形成している。
フロントフロアクロスメンバスチフナー46は、帯状に形成され、フランジ71に重ねて溶接部で接合した接合代部72を形成している。そして、端面73をサイドシル27に接合しないで、センタピラー31に連続するサイドシル27の中央部41から離している。
センタピラー31は、図3、図4に示す通り、主に3部材からなる。
サイドパネルアウタ33のセンタピラーアウタ75と、センタピラーインナ48と、センタピラースチフナー43と、からなる。そして、センタピラーインナ48をサイドシル27に貫通させている。
センタピラースチフナー43はセンタピラーアウタ75並びにセンタピラーインナ48で形成した中空(閉断面形状)の内部に中空を2分割するように設けられ中間層をなす。
センタピラースチフナー43は、図4、図8、図10に示す通り、断面ハット形状である。そして、図3に示す通りルーフサイドレール29からサイドシル27まで延びている。
また、センタピラースチフナー43は、2部材からなり(図1)、前述のダイクエンチ(ホットスタンプ)で成形した上部センタピラースチフナー44と、下部センタピラースチフナー47と、からなる。
下部センタピラースチフナー47は、上部センタピラースチフナー44の下端の外側に重ねて(図3、図9)接合した上端接合部78が形成され、サイドシル27の外側に接合した下端接合部81が形成されている。
一方、上部センタピラースチフナー44は、下部センタピラースチフナー47に接合した下端接合部83が形成され、ルーフサイドレール29に接合したルーフ接合部84が形成されている。
ルーフサイドレール29は、ルーフサイドレールアウタ86と、ルーフサイドレールインナ87と、を備え、これらの86、87で閉断面形状を形成している(図3、図7)。ルーフサイドレール29の長手方向の中央にはルーフアーチ16を取付けている。
ルーフアーチ16は、図1、図3、図5、図6に示すように、溝形で、一方の端部91にコーナブラケット51を締結する締結部92を形成し、他方の端部93に締結部94を形成している。
ルーフアーチ16の一方の端部91とセンタピラースチフナー43の端部43aを直線状に配置して環状骨格を形成できる。他方の端部93も同様である。
締結部92、94には、締結用の孔95をボルト96に対応する径で開けている。
なお、ルーフアーチ16は、先に述べたセンタピラー31の上端42に接合しているが、ルーフサイドレール29を主体にすると、ルーフアーチ16はルーフサイドレール29にコーナブラケット51で接合している。
コーナブラケット51は、図6に示すように、板状で、センタピラー31の上端42に面接触する一端締結部98が形成され、この一端締結部98に連ね他端締結部101がルーフアーチ16に面接触するように形成されている。
次に、仕切り補強部材57を説明する(図3、図4、図9、図10参照)。
仕切り補強部材57は、前述の外バルクヘッド58と、内バルクヘッド61と、前バルクヘッド62と、後バルクヘッド63と、からなる。
外バルクヘッド58は、ほぼコ字形で、コ字形を第1仕切部103、対向する第2仕切部104、これらに連続する接続部105とで形成している。
内バルクヘッド61は、外バルクヘッド58にセンタピラーインナ48を介して対向している。そして、コ字形を第4仕切部107、対向する第5仕切部108、これらに連続する接続部109とで形成している。
前バルクヘッド62は、サイドシル27内を仕切るように嵌合する本体111を形成している。
後バルクヘッド63は前バルクヘッド62と同様である。
次に前部座席24を説明する。
前部座席24は、既存のセパレート形のシートで、運転席用座席114と助手席用座席115を分割したものである。
助手席用座席115は図3に示す通り、乗員着座部(シートクッション)52と、このシートクッション52に取付けたシートバック116と、を有する。そして、シートクッション52をフロントフロアクロスメンバ15を含むアンダボデー68にスライド装置117で固定している。
運転席用座席114は助手席用座席115とほぼ同様である。
なお、前部座席24は運転席用座席114と助手席用座席115を一体的に形成したベンチシートでもよい。
次に、車体側部構造の作用を説明する(図1〜図12を参照)。
まず、側面衝突などの衝撃荷重に対する強度向上の機構を説明する。また、その衝撃を吸収する機構を説明する。
車体12の左のサイドボデー13を主体に説明するが、右のサイドボデーも左のサイドボデー13と同じ作用を発揮する。
なお、荷重(矢印a1、矢印a2)の入力に際しサイドパネルアウタ33を省いて説明している。
左のサイドボデー13のセンタピラー31は、外から荷重が矢印a1のように入力されると、センタピラースチフナー43に設けた、ダイクエンチで得られる強度より強度が小さい下部センタピラースチフナー47が変形の起点となり、優先して変形し始め、荷重を吸収する。
この下部センタピラースチフナー47に連続する上部センタピラースチフナー44はダイクエンチ(ホットスタンプ)によって得られた部材(ホットスタンプ材)である。この上部センタピラースチフナー44は高張力鋼製(下部センタピラースチフナー)に比べ、引っ張り強さが大きいので、曲がり難い。
下部センタピラースチフナー47の変形と同時にサイドシル27は、外からの荷重(矢印a1)を内側に交差する高張力鋼(板)製のフロントフロアクロスメンバ本体53の一端53aに伝える。
荷重が伝わると、フロントフロアクロスメンバ本体53の端部(一端53a)が変形の起点となり、変形し始め、荷重を吸収する。
このフロントフロアクロスメンバ本体53に一体的に接合するフロントフロアクロスメンバスチフナー46はダイクエンチ(ホットスタンプ)によって得られた部材(ホットスタンプ材)なので、高張力鋼製(フロントフロアクロスメンバ本体53)に比べ、引っ張り強さが大きいので曲がり難い(詳しくは、座屈、圧縮変形し難い)。従って、一端53aが積極的に変形することによって、衝撃を吸収する。
一方、上部センタピラースチフナー44は、荷重(矢印a1)が入力されると、曲がって車室22へ押し込まれるが、曲げ変形量が小さい。この上部センタピラースチフナー44はダイクエンチ(ホットスタンプ)によって得られた部材(ホットスタンプ材)なので、高張力鋼製に比べ、引っ張り強さが大きいので、曲がり難い。
また、上部センタピラースチフナー44は荷重(矢印a1)が入力されると、上に連続するルーフアーチ16に荷重を伝達する。荷重を入力されたルーフアーチ16はホットスタンプ材であり、高張力鋼製に比べ、引っ張り強さが大きいので、圧縮や座屈の変形量が小さい。
さらに、サイドシル27は、車両11の正面(前)から荷重(衝突)が矢印a2のように入力されると、ホットスタンプ材を用いたサイドシルスチフナー45によって荷重を分散するので、圧縮や座屈の変形量は小さい。サイドシルスチフナー45は高張力鋼製に比べ、引っ張り強さが大きいので、塑性変形し難い。
同時に、フロントフロアクロスメンバ15のフロントフロアクロスメンバスチフナー46によってサイドシル27は座屈し難い。
サイドシルスチフナー45は車両11の後面(後)から荷重(衝突)が入力される場合も同様に変形し難い。
このように、車体側部構造は、下部センタピラースチフナー47を除いてホットスタンプ材を環状に配置したことによって、車両11の正面、車両11の後面、車両11の側面からの荷重に対する車体12の強度を向上させることができる。
さらに詳しく説明する。
下部センタピラースチフナー47は、連続する部位(上部センタピラースチフナー44、サイドシルスチフナー45)に比べ、引っ張り強さが小さいので、荷重(矢印a1)が入力されると、前部座席24の乗員着座部(シートクッション)52へ向かって変形し始める。
そして、さらに変形し押し込まれると、乗員着座部(シートクッション)52の下方へ向かって(矢印a3の方向)変形する。
つまり、下部センタピラースチフナー47を乗員着座部(シートクッション)52の下方へ向かって変形させることができる。
フロントフロアクロスメンバ15は、図9〜図12に示す通り、荷重が矢印a1のように入力されると、サイドシルスチフナー45が内側にたわみ変形し、仕切り補強部材57を介してサイドシルインナ54からフロントフロアクロスメンバ本体53に荷重が伝達される。
サイドシルインナ54から離したフロントフロアクロスメンバスチフナー46にはサイドシルインナ54から荷重は直接伝達されない。
荷重が伝達されたフロントフロアクロスメンバ本体53は両端部(一端53a、他端53b)を除いてホットスタンプ材(フロントフロアクロスメンバスチフナー46)によって強度が向上している。
その結果、フロントフロアクロスメンバ本体53の端部(一端53a)は入力される荷重に対して変形しやすく、下部センタピラースチフナー47を乗員着座部(シートクッション)52の下方(矢印a3の方向)へ向かってより確実に変形させることができる。
サイドシル27は、荷重(矢印a1)が入力されると、図4に示す通り、サイドシルスチフナー45から仕切り補強部材57(外バルクヘッド58、内バルクヘッド61、前バルクヘッド62、後バルクヘッド63)に荷重を分散するので、サイドシルスチフナー45の内方へのつぶれは抑制される。
そして、サイドシルスチフナー45はサイドシルインナ54を介して荷重のほとんどをフロントフロアクロスメンバ15に伝達するので、フロントフロアクロスメンバ本体53の端部(一端53a)のつぶれは促進され、結果的に、中空なサイドシル27のつぶれによる変形を抑制することができる。
車体側部構造では、下部センタピラースチフナー47及びフロントフロアクロスメンバ本体53の両端部(一端53a、他端53b)に変形の起点となる形状を用いる必要がないという利点がある。言い換えると、応力集中を起こす部位を特別に形成する必要がない。例えば、脆弱な形状やノッヂ(V形状)や、孔、開口を形成する手間を省くことができ、製造が容易になる。
ホットスタンプは、980MPa以上の超ハイテンを作ることができる。この超ハイテンを自動車の部品に適用して軽量化ができるが、複雑な形状には適用が困難である。本願発明(車体側部構造)は、比較的単純な形状であるルーフアーチ、上部センタピラースチフナー等に限定して、冷間プレスの590MPa級鋼板と組合せて環状骨格を形成することによって、安価で、軽量、高強度であり、しかも、前後、側方の衝突に強い車体側部構造を得た。
本発明の車体側部構造は、自動車の車体、特に4ドア車の車体に好適である。
13…左のサイドボデー、15…フロントフロアクロスメンバ、16…ルーフアーチ、22…車室、24…前部座席、27…サイドシル、31…センタピラー、41…サイドシルの中央部、42…センタピラーの上端、43…センタピラースチフナー、44…上部センタピラースチフナー、45…サイドシルスチフナー、46…フロントフロアクロスメンバスチフナー、47…下部センタピラースチフナー、48…センタピラーインナ、51…コーナブラケット、52…乗員着座部、53…フロントフロアクロスメンバ本体、54…サイドシルインナ、56…空間、57…仕切り補強部材。

Claims (4)

  1. 車室の左の側壁をなす左のサイドボデー、右の側壁をなす右のサイドボデーを配置し、これらの下端をなすサイドシルの中央部同士を左右に延びるフロントフロアクロスメンバで接合し、前記中央部に立設したセンタピラーの上端同士を左右に延びるルーフアーチで接合している車体側部構造において、
    前記ルーフアーチ、前記センタピラーのセンタピラースチフナーのうち上部センタピラースチフナー、前記サイドシルのサイドシルスチフナー、前記フロントフロアクロスメンバのフロントフロアクロスメンバスチフナーは、鋼板を加熱して金型で塑性加工すると同時に前記金型に接触して冷却することによって焼き入れを行うダイクエンチを用いて成形され、
    前記センタピラースチフナーの残りの部位である下部センタピラースチフナーは、前記ダイクエンチで得られる強度より強度が小さい鋼板を用いて塑性加工され、
    前記車室の正面視で、前記フロントフロアクロスメンバスチフナー、前記左右の下部センタピラースチフナー、前記左右の上部センタピラースチフナー、前記ルーフアーチを環状に配置し
    前記フロントフロアクロスメンバを閉断面形状に前記フロントフロアクロスメンバスチフナーとフロントフロアクロスメンバ本体で形成して、該フロントフロアクロスメンバ本体のみが、前記サイドシルスチフナーと閉断面形状を形成しているサイドシルインナに結合し、
    前記フロントフロアクロスメンバスチフナーは、前記サイドシルインナに対し乖離して空間を形成していることを特徴とする車体側部構造。
  2. 前記センタピラーは、前記上部センタピラースチフナー及び前記車室へ向くセンタピラーインナで上部を閉断面形状に形成し、前記下部センタピラースチフナー及び前記センタピラーインナで下部を閉断面形状に形成し、
    前記ルーフアーチは、前記センタピラーインナにコーナブラケットを介して接合していることを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
  3. 前記下部センタピラースチフナーは、車両側面視で、前記車室に配置した前部座席の乗員着座部に重なっていることを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
  4. 前記サイドシル内に仕切り補強部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
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