しかしながら、上記特許文献1に記載されたものは、CFRP製の車体に対する金属製の補強ビームの取り付け構造を工夫しないと、後面衝突の衝突荷重によってCFRP製の車体が破壊する可能性がある。
また上記特許文献2に記載されたものは、フロアトンネルおよびロッカ間に挟まれて前後方向に延びる凹部が車幅方向に一定の幅を有しているため、後面衝突の衝突荷重を凹部からフロアトンネルやロッカに効率的に伝達できないという問題があった。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、クラッシュレールから金属製フレームを介して入力した後面衝突の衝突荷重をCFRP製フレームに効率的に伝達して吸収することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、CFRP製の車体フロアの後部に前下方から後上方にキックアップする左右一対のCFRP製フレームを一体に形成し、前記左右一対のCFRP製フレームの後端に前後方向に延びる左右一対の金属製フレームを接続し、更に前記金属製フレームの後端に前後方向に延びる左右一対のCFRP製のクラッシュレールを接続した自動車の車体構造であって、前記金属製フレームの前面および上面は、前記CFRP製フレームの後部に形成した凹部の前面および下面にそれぞれ接合され、前記金属製フレームの前面および前記CFRP製フレームの前記凹部の前面は前下方から後上方に傾斜することを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記金属製フレームは前記CFRP製フレームの稜線を覆う張り出し部を備えることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記左右一対の金属製フレームを車幅方向に連結するクロスメンバを備えることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記車体フロアはアンダーフロアパネルおよびアッパーフロアパネルを接合した中空部材であり、前記CFRP製フレームは前記アンダーフロアパネルを下方に膨出させて構成され、前記CFRP製フレームの車幅方向両側の側壁は上下方向視で左右対称形状であり、後方から前方に向けて相互に離反する方向に湾曲しながら拡開することを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記車体フロアの後部に一体に連続するCFRP製の後部フロアを備え、前記左右一対のCFRP製フレームを前記車体フロアおよび前記後部フロアと一体に形成したことを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項6に記載された発明によれば、請求項5の構成に加えて、前記CFRP製フレームが前記車体フロアから前記後部フロアに向けてキックアップする部分の上下方向高さは、前記車体フロアに設けたフロアトンネル部の上下方向高さと略同一であることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項7に記載された発明によれば、請求項6の構成に加えて、前記フロアトンネル部の車幅方向両側の側壁の間隔は、上下方向視で前方から後方に向けて末広がりに拡開することを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項8に記載された発明によれば、請求項1〜請求項7の何れか1項の構成に加えて、前記車体フロアの車幅方向外端部の上面に前後方向に延びるサイドシルを接続し、前記車体フロアは上方に屈曲して前記サイドシルの後端を覆う屈曲部を備えることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項9に記載された発明によれば、請求項6の構成に加えて、前記車体フロアの前記フロアトンネル部に沿う中空部内に、前後方向の荷重を伝達するコアを配置したことを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項10に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記クロスメンバの車幅方向両端を前記左右一対の金属製フレームにボルトで締結したことを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項11に記載された発明によれば、請求項3または請求項10の構成に加えて、略U字状のサスペンションアーム支持メンバの車幅方向両端を前記クロスメンバの車幅方向両端に接続し、前記サスペンションアーム支持メンバの角部にサスペンションアームを接続するとともに、前記金属製フレームの下面にダンパースプリングを支持したことを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項12に記載された発明によれば、請求項1〜請求項11の何れか1項の構成に加えて、前記金属製フレームの後端に嵌合部を有する金属ジョイントを設け、前記クラッシュレールの前端を前記金属ジョイントの前記嵌合部に嵌合して固定したことを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項13に記載された発明によれば、請求項1〜請求項12の何れか1項の構成に加えて、前記クラッシュレールは複数のカーボン連続繊維層を積層した多角形断面の中空部材であり、その前端から後端に向けて断面が縮小することを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
尚、実施の形態のトンネル部側壁25bは本発明の側壁に対応し、実施の形態のCFRP製フレーム側壁74bは本発明の側壁に対応し、実施の形態の第3金属ジョイント80は本発明の金属ジョイントに対応する。
請求項1の構成によれば、CFRP製の車体フロアの後部に前下方から後上方にキックアップする左右一対のCFRP製フレームを一体に形成し、左右一対のCFRP製フレームの後端に前後方向に延びる左右一対の金属製フレームを接続したので、CFRP製フレームおよび金属製フレームよりなるリヤサイドフレーム全体を金属製とする場合に比べて軽量化を図りながら、リヤサスペンション装置等を金属製フレームに強固に支持することができる。
また金属製フレームの前面および上面は、CFRP製フレームの後部に形成した凹部の前面および下面にそれぞれ接合され、金属製フレームの前面およびCFRP製フレームの凹部の前面は前下方から後上方に傾斜するので、後面衝突の衝突荷重がクラッシュレールを介して金属製フレームに伝達されたとき、金属製フレームの傾斜した前面がCFRP製フレームの凹部の傾斜した前面に案内されて前下方に偏倚するため、衝突荷重を金属製フレームから前下方に傾斜するCFRP製フレームに確実に伝達してフロアパネルに分散し、衝突エネルギーを効率的に吸収することができる。
しかもリヤサスペンション装置等から金属製フレームに上向きの荷重が入力したとき、その上向きの荷重を金属製フレームの傾斜した前面からCFRP製フレームの凹部の傾斜した前面に効率的に伝達して吸収することができる。
また請求項2の構成によれば、金属製フレームはCFRP製フレームの稜線を覆う張り出し部を備えるので、CFRP製フレームの稜線に応力が集中するのを阻止して亀裂の発生を防止するとともに、衝突荷重をCFRP製フレームの稜線に連なる面部に伝達して分散することができる。
また請求項3の構成によれば、左右一対の金属製フレームを車幅方向に連結するクロスメンバを備えるので、後面衝突の衝突荷重により左右一対の金属製フレームが車幅方向外側に拡開するように変形するのを防止することで、金属製フレームの後端に接続されたクラッシュレールの軸方向の圧壊を促進してエネルギー吸収効果を高めることができる。
また請求項4の構成によれば、車体フロアはアンダーフロアパネルおよびアッパーフロアパネルを接合した中空部材であり、CFRP製フレームはアンダーフロアパネルを下方に膨出させて構成され、CFRP製フレームの車幅方向両側の側壁は上下方向視で左右対称形状であり、後方から前方に向けて相互に離反する方向に湾曲しながら拡開するので、後面衝突の衝突荷重が入力したときにCFRP製フレームに応力集中が発生するのを防止しながら、衝突荷重を車体フロアの後部に均一に分散して効率的に吸収することができる。
また請求項5の構成によれば、車体フロアの後部に一体に連続するCFRP製の後部フロアを備え、左右一対のCFRP製フレームを車体フロアおよび後部フロアと一体に形成したので、部品点数を更に削減するとともに製造を容易化することができる。
また請求項6の構成によれば、CFRP製フレームが車体フロアから後部フロアに向けてキックアップする部分の上下方向高さは、車体フロアに設けたフロアトンネル部の上下方向高さと略同一であるので、CFRP製フレームに入力した後面衝突の衝突荷重をフロアトンネル部に効率的に伝達して車体フロアに分散することができる。
また請求項7の構成によれば、フロアトンネル部の車幅方向両側の側壁の間隔は、上下方向視で前方から後方に向けて末広がりに拡開するので、CFRP製フレームからフロアトンネル部への荷重伝達を一層効率的に行うことができる。
また請求項8の構成によれば、車体フロアの車幅方向外端部の上面に前後方向に延びるサイドシルを接続し、車体フロアは上方に屈曲してサイドシルの後端を覆う屈曲部を備えるので、後面衝突の衝突荷重が車体フロアに入力したときに、その衝突荷重を屈曲部からサイドシルの後端に伝達して効率的に吸収することができる。
また請求項9の構成によれば、車体フロアの前記フロアトンネル部に沿う中空部内に、前後方向の荷重を伝達するコアを配置したので、車体フロアに入力した後面衝突の衝突荷重をコアを介してフロアトンネル部に効率的に伝達することができる。
また請求項10の構成によれば、クロスメンバの車幅方向両端を左右一対の金属製フレームにボルトで締結したので、金属製フレームに対するクロスメンバの組み付けが容易である。
また請求項11の構成によれば、略U字状のサスペンションアーム支持メンバの車幅方向両端をクロスメンバの車幅方向両端に接続し、サスペンションアーム支持メンバの角部にサスペンションアームを接続するとともに、金属製フレームの下面にダンパースプリングを支持したので、高強度の金属製フレームを用いてサスペンションアームおよびダンパースプリングを強固に支持することができる。
また請求項12の構成によれば、金属製フレームの後端に嵌合部を有する金属ジョイントを設け、クラッシュレールの前端を金属ジョイントの嵌合部に嵌合して固定したので、後面衝突の衝突荷重によりクラッシュレールが倒れるのを防止することで、クラッシュレールの軸方向の圧壊を促進してエネルギー吸収効果を高めることができる。
また請求項13の構成によれば、クラッシュレールは複数のカーボン連続繊維層を積層した多角形断面の中空部材であり、その前端から後端に向けて断面が縮小するので、後面衝突の衝突荷重が入力したとき、クラッシュレールは後端から前端に向かってカーボン連続繊維から樹脂が剥がれながら順次圧壊してエネルギーを吸収することができる。
以下、図1〜図11に基づいて本発明の実施の形態を説明する。尚、本明細書において前後方向、左右方向(車幅方向)および上下方向とは、運転席に着座した乗員を基準として定義される。
図1〜図4に示すように、CFRP(カーボン繊維強化樹脂)を主たる材料とする自動車の車体フレームは、車体フロア11と、車体フロア11の左右両側部に沿って前後方向に延びる左右一対のサイドシル12,12と、左右のサイドシル12,12の前端から前上方に起立する左右一対のフロントピラーロア13,13と、左右のサイドシル12,12の後端から後上方に起立する左右一対のリヤピラー14,14と、左右のサイドシル12,12の前後方向中間部から上方に起立する左右一対のセンターピラー15,15と、左右のフロントピラーロア13,13の上端から左右のセンターピラー15,15の上端を経由して左右のリヤピラー14,14の上端に延びる左右一対の上部部材16,16とを備える。そして左右のセンターピラー15,15の上端間がルーフアーチ24で接合される。
車体フロア11の前端と左右のフロントピラーロア13,13の前面とに平板状のダッシュパネルロア17が接合され、車体フロア11の後端と左右のリヤピラー14,14の後面とに平板状の後部隔壁18が接合され、 後部隔壁18の後端からリヤパーシェル19が後方に水平に延出する。車体フロア11の前端に左右一対のアルミニウム合金製の取付台座20,20が固定され、取付台座20,20の前端に左右一対のアルミニウム合金製のフロントサイドフレーム21,21の後端が固定される。
車体フロア11の後端から後方に向かって後部フロア44が一体に連続しており、車体フロア11の後部下面および後部フロア44の下面に配置された左右一対のリヤサイドフレーム22,22は、左右一対のリヤホイールハウスインナー23,23を介してリヤピラー14,14に接続される。そして後部フロア44の上方に荷室45が区画される。
図1、図2および図5に示すように、車体フロア11は、車幅方向中央部を前後方向に延びる逆U字状のフロアトンネル部11aと、フロアトンネル部11aの車幅方向両側に連続すると左右一対のフロア部11b,11bとを備える。アンダーフロアパネル25は、トンネル部上壁25aと、トンネル部上壁25aの車幅方向外端から下方に延びる左右一対のトンネル部側壁25b,25bと、トンネル部側壁25b,25bの下端から車幅方向外側に延びるフロア部下壁25c,25cとを備え、左右一対のアッパーフロアパネル26,26のフロア部上壁26a,26aは、フロア部下壁25c,25cの上面に沿うように略平坦に形成される。
車体フロア11の車幅方向外端部では、アンダーフロアパネル25のフロア部下壁25cの車幅方向外端を上向きに折り曲げた接合フランジ25dと、アッパーフロアパネル26のフロア部上壁26aの車幅方向外端を上向きに折り曲げた接合フランジ26bとが重ね合わされて接合される。車体フロア11の車幅方向外端部は、車幅方向中央部に比べて上下方向に厚くなっており、その厚くなった部分に上下一対のエネルギー吸収部材30,30が配置される。エネルギー吸収部材30,30は衝撃吸収性能に優れたPA(ポリアミド)あるいはナイロン製の波板状の部材で構成される。
エネルギー吸収部材30,30の車幅方向内側には支持壁31が接着により固定されており、支持壁31の車幅方向外面に形成した嵌合溝にエネルギー吸収部材30,30が嵌合して接着により接合される。そしてエネルギー吸収部材30,30の上面がアッパーフロアパネル26の下面に接着により接合され、エネルギー吸収部材30,30の下面がアンダーフロアパネル25の上面に接着により接合される。
支持壁31の車幅方向内側であってフロア部11bの厚さが変化する部分に、前後方向に延びるCFRP製(あるいはアルミニウム製)の荷重分散フレーム32が配置される。荷重分散フレーム32の上面および下面はそれぞれアッパーフロアパネル26の下面およびアンダーフロアパネル25の上面に接着により接合され、かつ車幅方向外面は支持壁31の車幅方向内面に接着により接合される。
荷重分散フレーム32の車幅方向内側のフロア部11bの内部に車幅方向の軸線を有する波板状のコア33が配置され、その上面および下面がそれぞれアッパーフロアパネル26の下面およびアンダーフロアパネル25の上面に接着により接合される。但し、フロアトンネル部11aの車幅方向両側に沿う部分だけは、前後方向の軸線を有する波板状のコア79が配置され、その上面および下面がそれぞれアッパーフロアパネル26の下面およびアンダーフロアパネル25の上面に接着により接合される。
サイドシル12は、外側壁46、上壁47、下壁48および内側壁49を備えて四角形状の閉断面に構成されており、その内部に複数の隔壁板36…が前後方向に所定間隔で配置される。サイドシル12の下壁48は、車体フロア11の車幅方向外端部、つまりエネルギー吸収部材30,30の上部において、アッパーフロアパネル26の上面に載置されて接着により接合されるが、車体フロア11の車幅方向外端に形成した突出部11cがサイドシル12の車幅方向外端よりも車幅方向外側に突出する。そしてサイドシル12の車幅方向外端と車体フロア11の車幅方向外端とに、CFRP製の板材よりなる断面クランク状の連結部材37の上下端部がそれぞれ接着により接合される。
図6〜図8に示すように、車体フロア11の後方に連続する後部フロア44は、車体フロア11と同様にアンダーフロアパネル25およびアッパーフロアパネル26よりなる中空構造を有する。リヤサイドフレーム22は、前側のCFRP製フレーム74と後側の金属製フレーム75とからなり、CFRP製フレーム74は車体フロア11の後部が後部フロア44に向けてキックアップする部分において、アンダーフロアパネル25の一部を下向きに膨出させるとともに、その上面をアッパーフロアパネル26で覆うことで中空閉断面に構成される。一方、アルミニウム合金の鋳造材よりなる金属製フレーム75は、後部フロア44の後半部の下面を構成するアンダーフロアパネル25に接合され、CFRP製フレーム74の後方に直列に接続される。
金属製フレーム75は、上向きに開放するコ字状断面の上壁75aと、帯状の下壁75bと、上壁75aおよび下壁75bを接続する垂直壁75cと、上壁75a、下壁75bおよび垂直壁75cを接続する補強リブ75d…とを備えており、下壁75bの後部にはダンパースプリング78の上端を支持するダンパースプリング支持部75eが設けられる。そしてダンパースプリング支持部75eの直上に位置する補強リブ75dに車幅方向に延びる脆弱部としての溝75fが形成される。
後部フロア44の下面においてCFRP製フレーム74はL字状の凹部74aを有しており、その凹部74aに金属製フレーム75が嵌合して接着により接合される。このとき、上向きに開放するコ字状断面の上壁75aがCFRP製フレーム74の凹部74aに下方から嵌合することで、CFRP製フレーム74に金属製フレーム75が強固に接着される。金属製フレーム75は、CFRP製フレーム74の凹部74aに嵌合する部分にフランジ状の張り出し部75gを備えており、この張り出し部75gでCFRP製フレーム74の稜線が覆われる(図8参照)。相互に当接して接着される金属製フレーム75の前面およびCFRP製フレーム74の凹部74aの前面は、角度θで前下方から後上方に傾斜している(図7参照)。
図6に示すように、車体フロア11のアンダーフロアパネル25およびアッパーフロアパネル26の接合フランジ25d,26bは、サイドシル12の後端で上下方向高さが高くなって車幅方向内側に回り込むことで、上方に屈曲してサイドシル12の後端を後方から覆う屈曲部11kを構成する。
図4(B)に示すように、車体フロア11のフロアトンネル部11aの左右のトンネル部側壁25b,25bの後部における幅W1は、前側から後側に向かって車幅方向外側に滑らかに湾曲しながら末広がりに拡開している。またフロアトンネル部11aの拡開部を車幅方向両側から挟む左右のCFRP製フレーム74の左右のCFRP製フレーム側壁74b,74bの前部における幅W2は、後側から前側に向かって車幅方向外側に滑らかに湾曲しながら末広がりに拡開している。
また図7に示すように、フロアトンネル部11aの上下方向高さHは、その後方に位置するCFRP製フレーム74の上下方向高さHと略一致しており、かつフロアトンネル部11aおよびCFRP製フレーム74の位置は前後方向に見たときに相互に重なり合っている。
図6に示すように、リヤホイールハウスインナー23は水平な段部23aを備えており、段部23aの下面にアルミニウム合金製のヒューズ部材59がボルト60…およびナット61…で固定される。ヒューズ部材59は、一定断面の押し出し材の一部を切除することで製造される。ヒューズ部材59にはリヤサスペンション装置のリヤダンパー62の上端が支持される。
図9〜図11に示すように、金属製フレーム75の後端に第3金属ジョイント80を介してCFRP製のクラッシュレール81の前端が接続される。クラッシュレール81は八角形状の閉断面を有する筒状の部材であり、前端から後端に向けて断面積が縮小するようにテーパーしている。第3金属ジョイント80は、金属製フレーム75の後端にボルト86…で固定される取付フランジ80aと、取付フランジ80aから後方に突出する八角筒状の嵌合部80bとを備え、嵌合部80bにクラッシュレール81の前端が嵌合して接着により固定される。また第1金属ジョイント87の取付フランジ87aの下部からの八角筒状の下部嵌合部87bが前方に突出しており、この下部嵌合部87bにクラッシュレール81の後端が嵌合して接着により固定される。
リヤピラー14の上端を後方に延長した延長部14aの後端に、第2金属ジョイント88のコ字状の嵌合部88aが後方から嵌合して接着により固定される。また第1金属ジョイント87の取付フランジ87aの上部から2枚の平行な壁部よりなる上部嵌合部87cが前方に突出する。四角形断面の金属管を側面視でL字状に屈曲させた姿勢規制部材89の前端に取付フランジ89aが溶接されており、この取付フランジ89aが第2金属ジョイント88の後面にボルト90…で固定される。また姿勢規制部材89の下端が第1金属ジョイント87の上部嵌合部87cにボルト91,91で固定される。
左右一対のクラッシュレール81,81の後端に設けた第1金属ジョイント87,87の取付フランジ87a,87aに、CFRP製のバンパービーム92の車幅方向両端部が接続される。そして左右一対のクラッシュレール81,81の前端の車幅方向内面間が、車幅方向に延びる板状の連結部材96で接続される。連結部材96がクラッシュレール81,81に接続される車幅方向両端には三角形の筋交い部96a,96aが設けられており、これらの筋交い部96a,96aはクラッシュレール81,81の車幅方向への倒れを抑制するように機能する。
左右一対の金属製フレーム75,75の車幅方向内面に第4金属ジョイント97,97を介してクロスメンバ98の車幅方向両端部が接続される。第4金属ジョイント97は、金属製フレーム75にボルト99…で固定される取付フランジ97aと、取付フランジ97aから車幅方向内側に突出する四角筒状の嵌合部97bとを備え、四角断面の直線状中空部材からなるクロスメンバ98の車幅方向端部が嵌合部97bに嵌合して接着により固定される。更に、略U字状に屈曲するサスペンションアーム支持メンバ100の車幅方向両端部が、クロスメンバ98の車幅方向両端部近傍の下面に溶接される。従って、左右一対の金属製フレーム75,75は、クロスメンバ98およびサスペンションアーム支持メンバ100によって車幅方向に連結されることになる。
略U字状に屈曲するサスペンションアーム支持メンバ100の二つの屈曲部にブラケット77,77が溶接されており、これらのブラケット77,77に後輪のサスペンションアーム76,76の車幅方向内端が枢支される。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
リヤサイドフレーム22を、リヤサスペンションのサスペンションアーム76やダンパースプリング78から大きな荷重が入力する金属製フレーム75と、それ以外のCFRP製フレーム74とに分割したことにより、リヤサイドフレーム22全体を金属製とする場合に比べて重量を軽減し、強度および軽量化を両立することができる。
後輪の上下動に伴ってダンパースプリング78から金属製フレーム75の下壁75bのダンパースプリング支持部75eに所定値以上の荷重が入力すると、そのダンパースプリング支持部75eの上方の補強リブ75dに形成した脆弱部である溝75fから金属製フレーム75が塑性変形することで(図7右上円内参照)、金属製フレーム75を支持するCFRP製フレーム74や後部フロア44の破壊を防止することができる。また金属製フレーム75の前面とCFRP製フレーム74の凹部74aの前面とは前下方から後上方に角度θ傾斜しているため、サスペンションアーム76やダンパースプリング78から金属製フレーム75に入力した荷重を前記傾斜面を介してCFRP製フレーム74に伝達し、効率的に吸収することができる。
また金属製フレーム75はアルミニウム合金の鋳物製であり、CFRP製フレーム74の凹部74aの下面に下方から嵌合するコ字状断面の上壁75aと、帯状の下壁75bと、上壁75aおよび下壁75bを接続する垂直壁75cと、上壁75a、下壁75bおよび垂直壁75cを接続する補強リブ75d…とを備えるので、金属製フレーム75を軽量化しながら強度を確保することができるだけでなく、CFRP製フレーム74および金属製フレーム75を強固に結合することができる。
また金属製フレーム75の脆弱部を補強リブ75dに形成した車幅方向の溝75fで構成したので、通常時には金属製フレーム75の強度を確保しながら、ダンパースプリング78から過剰な荷重が入力したときには補強リブ75dの溝75fから金属製フレーム75の塑性変形を誘発することができる。
また後輪の上下動に伴ってリヤサスペンションのリヤダンパー62(図6参照)を介してリヤホイールハウスインナー23の段部23aに荷重が伝達されるが、リヤダンパー62とリヤホイールハウスインナー23の段部23aとの間にアルミニウム合金製のヒューズ部材59が配置されており、リヤダンパー62から所定値以上の荷重が入力するとヒューズ部材59が上下方向に潰れるように塑性変形することで、リヤホイールハウスインナー23や、それに接続するリヤピラー14やリヤパーシェル19の破壊を防止することができ、しかもヒューズ部材59だけを金属部材として重量の増加を最小限に抑えることができる。
さて後面衝突の衝突荷重がバンパービーム92に入力すると、その衝突荷重は左右一対のクラッシュレール81,81を介してリヤサイドフレーム22,22の金属製フレーム75,75に伝達され、そこから車体各部に分散されて吸収される。その際にCFRP製のクラッシュレール81,81は後端側から前端側に順次圧壊して衝突エネルギーを吸収するが、衝突荷重の入力方向が前後方向に対して傾斜していると、クラッシュレール81,81が傾いて軸方向にスムーズに圧壊せず、衝突エネルギーの吸収効果が有効に発揮されない可能性がある。
しかしながら、本実施の形態によれば、リヤピラー14の延長部14aから後方に延びて下側に湾曲する延性を有する金属製の姿勢規制部材89の下端をクラッシュレール81の後端に接続したので、姿勢規制部材89が中間の屈曲部で折れ曲がりながらクラッシュレール81の上下方向の傾きを抑制することで、クラッシュレール81の軸方向の圧壊を促進して衝突エネルギーの吸収効果を高めることができる。
またクラッシュレール81の閉断面は左右対称な多角形状であるので、クラッシュレール81の稜線の数を増加させて荷重伝達部位を増加するとともに、クラッシュレール81の左右方向一方あるいは上下方向一方への傾きを防止し、軸方向の圧壊荷重を増加させて衝突エネルギーの吸収効果を高めることができる。また軽量化のためにクラッシュレール81の肉厚(板厚)を薄くしても、多角形状として辺の数を増加させて必要な板厚比を確保することで座屈を抑制することができ、軸方向の圧壊荷重を増加させて衝突エネルギーの吸収効果を高めることができる。
また左右一対のクラッシュレール81,81の前端間を筋交い部96a,96aを有する連結部材96で連結したので、後面衝突の衝突荷重が入力したときに左右一対のクラッシュレール81,81が水平面内で傾くのを防止し、クラッシュレール81,81の軸方向の圧壊を促進して衝突エネルギーの吸収性能を高めることができる。
またクラッシュレール81は複数のカーボン連続繊維層を積層した多角形断面の中空部材であり、その前端から後端に向けて断面が縮小するので、後面衝突の衝突荷重が入力したとき、クラッシュレール81は後端から前端に向かってカーボン連続繊維から樹脂が剥がれながら順次圧壊してエネルギーを吸収する。
またクラッシュレール81の前端は第3金属ジョイント80を介して金属製フレーム75の後端に接続されるが、第3金属ジョイント80はクラッシュレール81の前端を取り囲むように嵌合する嵌合部80bを備えるので(図11参照)、クラッシュレール81に衝突荷重が入力したとき、第3金属ジョイント80でクラッシュレール81の倒れを防止して衝突エネルギーの吸収効果を高めるとともに、衝突荷重をクラッシュレール81から金属製フレーム75に効果的に伝達して吸収することができる。
ところで、金属製フレーム75の前端は、前下方から後上方にキックアップするCFRP製フレーム74の後端に接続されるため、後面衝突の衝突荷重で金属製フレーム75の前端がCFRP製フレーム74の後端に対して前上方にずれてしまうと、金属製フレーム75は前下方に傾斜するCFRP製フレーム74に衝突荷重を効果的に伝達できなくなり、衝突エネルギーの吸収効果が大幅に損なわれる懸念がある。
しかしながら、本実施の形態によれば、相互に当接する金属製フレーム75の前面およびCFRP製フレーム74の凹部74aの前面は、角度θで前下方から後上方に傾斜しているため(図7参照)、金属製フレーム75は衝突荷重により前上方に移動することなく、CFRP製フレーム74のキックアップ部の傾斜方向と平行な前下方に移動し、金属製フレーム75からCFRP製フレーム74への荷重伝達が支障なく達成される。
また金属製フレーム75はCFRP製フレーム74の稜線を覆う張り出し部75gを備えるので、CFRP製フレーム74の稜線に応力が集中するのを阻止して亀裂の発生を防止するとともに、衝突荷重をCFRP製フレーム74の稜線に連なる面部に伝達して分散することができる。
また左右一対の金属製フレーム75,75はクロスメンバ98により車幅方向に連結されるので、後面衝突の衝突荷重により左右一対の金属製フレーム75,75が車幅方向外側に拡開するように変形するのを防止することで、金属製フレーム75,75の後端に接続されたクラッシュレール81,81の軸方向の圧壊を促進してエネルギー吸収効果を高めることができる。
このとき、クロスメンバ98の車幅方向両端を前記左右一対の金属製フレーム75,75にボルト99…で締結したので、金属製フレーム75,75に対するクロスメンバ98の組み付けが容易になる。
また略U字状のサスペンションアーム支持メンバ100の車幅方向両端をクロスメンバ98の車幅方向両端に接続し、サスペンションアーム支持メンバ100の角部にサスペンションアーム76を接続するとともに、金属製フレーム75の下面にダンパースプリング78を支持したので、高強度の金属製フレーム75を用いてサスペンションアーム76およびダンパースプリング78を強固に支持することができる。
またバンパービーム92に入力した後面衝突の衝突荷重がバンパービーム12からクラッシュレール81および金属製フレーム75を介してCFRP製フレーム74に伝達されるとき、CFRP製フレーム74は後部フロア44および車体フロア11と一体に形成されているため、部品点数を削減して車体の軽量化を図りながら、CFRP製フレーム74を含む後部フロア44および車体フロア11の強度を高めることができる。
しかもCFRP製の車体フロア11の後部に一体に形成されるCFRP製フレーム74の左右のCFRP製フレーム側壁74b,74bの間隔W2は、上下方向視で後方から前方に向けて滑らかに湾曲しながら左右対称に末広がりに拡開するので(図4(B)参照)、CFRP製フレーム74に入力した後面衝突の衝突荷重を車体フロア11の後部に均一に分散して効率的に吸収することができるだけでなく、フロアトンネル部11a左右のトンネル部側壁25b,25bの間隔W1は、上下方向視で前方から後方に向けて滑らかに湾曲しながら左右対称に末広がりに拡開するので(図4(B)参照)、CFRP製フレーム74からフロアトンネル部11aへの荷重伝達を一層効率的に行うことができる。
更に、前方から後方に向けてキックアップするCFRP製フレーム74の上下方向高Hさは、車体フロア11に設けたフロアトンネル部11aの上下方向高さHと略同一であるので(図7参照)、CFRP製フレーム74に入力した後面衝突の衝突荷重をフロアトンネル部11aに効率的に伝達して車体フロア11に分散することができる。しかも車体フロア11の内部には、フロアトンネル部11aの車幅方向両側に沿って前後方向の軸線を有する波板よりなるコア79が配置され(図5参照)、またサイドシル12の車幅方向内側に沿って前後方向に延びる荷重分散フレーム32が配置されるので(図5参照)、車体フロアに入力した後面衝突の衝突荷重をコア79を介してフロアトンネル部11aに伝達するとともに、荷重分散フレーム32を介してサイドシル12に伝達し、効率的に吸収することができる。
また車体フロア11の車幅方向外端部の上面に前後方向に延びるサイドシル12が接続されており、車体フロア11は上方に屈曲してサイドシル12の後端を覆う屈曲部11kを備えるので(図6参照)、後面衝突の衝突荷重が車体フロア11に入力したときに、その衝突荷重を屈曲部11kからサイドシル12の後端に伝達して効率的に吸収することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施の形態では車体フロア11および後部フロア44を一部材として構成しているが、それらを別部材で構成して一体に接合しても良い。