以下、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、以下に述べる各実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更できることは言うまでもない。
[複合機10の概略構成]
図1に示されるように、複合機10は、プリンタ部11を下部に備え、スキャナ部12を上部に備えて構成された多機能装置(MFD:Multi Function Device)である。複合機10は、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を有する。なお、本発明に係る画像記録装置は複合機10に限定されるものではなく、例えば、スキャナ部12がなく、プリント機能のみを有するプリンタとして本発明が実現されてもよい。
複合機10の上部においてスキャナ部12が構成されている。スキャナ部12は、フラットベッドスキャナ(FBS:Flat Bed Scanner)及び自動原稿搬送装置(ADF:Automatic Document Feeder)として構成されているが、本発明においてスキャナ部12は任意の構成であるので、本明細書においては、その詳細な説明が省略される。
複合機10の正面上部には、操作パネル14が設けられている。操作パネル14は、プリンタ部11やスキャナ部12に所望の動作をさせるために、コマンドなどを入力するための装置である。操作パネル14は、各種情報を表示する液晶ディスプレイ、ユーザが情報を入力する入力キー等から構成される。複合機10は、この操作パネル14からの操作入力に基づいて動作する。また、複合機10は、例えばLANを介して通信可能に接続されたコンピュータ等から送信される情報に基づいても動作する。
[プリンタ部11]
以下、プリンタ部11の構成が詳細に説明される。
図1に示されるように、複合機10には、その正面側に開口13が形成されている。開口13の内部に、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が配置されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、排紙トレイ21を給紙トレイ20の上側として上下二段に設けられている。
給紙トレイ20は、上側が開口された矩形の箱形状である。この給紙トレイ20の内部空間に、複数枚のシートが積層状態で載置される。給紙トレイ20の大きさは、プリンタ部11において記録可能な最大サイズのシートに合わせて設定されている。図2に示されるように、給紙トレイ20は、第1トレイ16及び第2トレイ17を有する。第1トレイ16及び第2トレイ17は、第2トレイ17を上側にして上下二段に配置されている。第2トレイ17は、第1トレイ16に対して給紙向き104へスライド可能である。
給紙トレイ20において、給紙向き104の奥側には、傾斜ガイド板22が設けられている。傾斜ガイド板22は、その上端側が給紙向き104へ傾斜されている。この傾斜ガイド板22に沿って、給紙トレイ20に載置されたシートが斜め上方へ給送される。図2に示されるように、第2トレイ17が傾斜ガイド板22に当接するまで給紙向き104へスライドされているときは、第2トレイ17にセットされたシートが給送される。第2トレイ17が給紙向き104と反対向きにスライドされて傾斜ガイド板22から離間されているときは、第1トレイ16にセットされたシートが給送される。
図2に示されるように、給紙トレイ20の上側の開口には、その開口の一部を覆うようにして、排紙トレイ21が配設されている。排紙トレイ21は、装置正面側の端が上側へ持ち上げられるようにして、給紙トレイ20に対して回動可能である。排紙トレイ21が上側へ持ち上げられることにより、給紙トレイ20の開口のうち装置手前側が開放されるので、その開放された開口からシートが給紙トレイ20内へ挿入される。
排紙トレイ21における装置奥側の端には、ガイド面35が形成されている。このガイド面35は、後述される第2搬送路29から搬送されたシートを給紙トレイ20へ案内する。
図2に示されるように、給紙トレイ20に対向されて給紙ローラ25が配置されている。給紙ローラ25は、アーム26の先端側に回転可能に支持されている。給紙ローラ25は、ASFモータ69(図6参照)から駆動伝達されて回転される。給紙ローラ25が給紙トレイ20上のシートに当接して回転することにより、給紙トレイ20から第1搬送路23へシートが給送される。
プリンタ部11のフレームには軸28が設けられている。軸28は、プリンタ部11の幅方向102に沿って延出されている。この軸28にアーム26が回動可能に支持されている。このアーム26の回動によって、給紙ローラ25が給紙トレイ20に対して接離する方向へ移動される。アーム26は、自重やバネ付勢によって、給紙ローラ25が給紙トレイ20へ近づく方向へ回動されている。
図2に示されるように、給紙トレイ20の奥部から上方へ向かってUターンするように第1搬送路23が設けられている。第1搬送路23は、シートが搬送される経路である。第1搬送路23は、給紙トレイ20の奥部から上方へ向かって延び、さらに、複合機10の正面側(図2における右側)へ曲がって正面側へと延び、記録部24を通過して排紙トレイ21へ至っている。給紙トレイ20に載置されたシートは、第1搬送路23に沿って下方から上方へUターンするように案内されて記録部24に至り、記録部24によって画像が記録されたシートが排紙トレイ21へ排出される。
第1搬送路23は、記録部24等が配設されている箇所以外では、外側ガイド面と内側ガイド面とによって区画形成されている。例えば、複合機10の背面側の第1搬送路23の湾曲部分は、外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とが所定の間隔で対向配置されることにより形成されている。この場合、外側ガイド部材18が湾曲外側のガイド面を構成し、内側ガイド部材19が湾曲内側のガイド面を構成する。外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19は、複合機10の筐体やフレームなどに固定されている。
第1搬送路23において、記録部24より搬送向き下流側の分岐位置27に、第2搬送路29が連結されている。第2搬送路29は、分岐位置27から給紙トレイ20へ向けて斜め下方へ延びている。第2搬送路29には、記録部24によって片面に画像記録が行われたシートが搬送される。このようなシートの搬送は、両面に画像を記録する両面記録がプリンタ部11に指示されたときに行われる。第2搬送路29へ搬送されたシートは、給紙トレイ20を通過して、再び第1搬送路23へ進入する。そして、記録部24によって他方の面に画像記録が行われる。
[記録部24]
記録部24は、第1搬送路23においてシートが記録向き105へ搬送される過程において、シートに画像を記録するものである。図2及び図3に示されるように、記録部24は、インクジェット方式で画像記録を行う。記録部24は、主として記録ヘッド42、プラテン43及びキャリッジ44によって構成されている。
キャリッジ44は、記録向き105と直交する水平方向を長手方向とする一対のガイドレール45,46に案内されて、移動方向106へ往復動される。一対のガイドレール45,46は、記録向き105へ隔てられて配置されており、この一対のガイドレール45,46間に架け渡すようにして、キャリッジ44が載置されている。ガイドレール46には、ベルト駆動機構47が設けられている。このベルト駆動機構47によって、モータの駆動力がキャリッジ44へ伝達され、キャリッジ44が移動方向106へ往復動される。
記録ヘッド42は、キャリッジ44に搭載されてキャリッジ44と共に移動方向へ往復動される。記録ヘッド42は、キャリッジ44の下面として露出されている。記録ヘッド42の下面には、微細なインク滴を吐出するための複数のノズルが形成されている。このノズルの開口が下面に露出されて吐出口を形成している。記録ヘッド42内において、ノズルより上流側に圧電素子やキャビティが形成されている。この圧電素子は所定の電圧が印加されることにより変形し、キャビティの容積を縮小する。このキャビティの容量の変化によって、キャビティ内のインクがノズルからインク滴として吐出される。
プラテン43は、キャリッジ44の下側において、記録ヘッド42と所定の間隙を形成して配置されている。つまり、記録ヘッド42とプラテン43とは、上下方向101に対向されている。記録ヘッド42からプラテン43の上面までの間隙はヘッドギャップとも称され、この間隙を、記録ヘッド42から吐出されたインク滴がプラテン43へ向かって移動する。プラテン43は、画像記録されるシートを下方から支持する。つまり、プラテン43の上面に搬送されて支持されているシートに対して、記録ヘッド42から選択的にインク滴が吐出され、そのインク滴がシートに着弾して画像が形成される。
[パージ機構48]
図3に示されるように、プラテン43における幅方向の両側のうち、一方にはパージ機構48が配設され、他方には廃インクトレイ49が配設されている。パージ機構48は、記録ヘッド42のノズルから気泡や異物を吸引除去するものである。パージ機構48は、記録ヘッド42のノズルを覆うノズルキャップ50と、記録ヘッド42の排気口を覆う排気キャップ51とを有する。ノズルキャップ50及び排気キャップ51は、後述されるリフトカム111によって上下動されて記録ヘッド42と接離する。ノズルキャップ50が、本発明におけるキャップに相当する。また、ノズルキャップ50が記録ヘッド42のノズルを覆う姿勢が本発明において第1姿勢と称され、ノズルキャップ50が記録ヘッド42から離間された姿勢が本発明において第2姿勢と称される。
図3には現されていないが、パージ機構48は、さらに吸引ポンプを有する。吸引ポンプは、ノズルキャップ50及び排気キャップ51と接続されており、吸引ポンプが動作されることによって、ノズルキャップ50及び排気キャップ51の内部が負圧にされる。ノズルキャップ50及び排気キャップ51が記録ヘッド42と接触してノズル及び排気口をそれぞれ覆った状態において吸引ポンプが作動されると、記録ヘッド42から気泡や異物が吸引除去される。
廃インクトレイ49は、フラッシングと呼ばれる記録ヘッド42からのインクの空吐出を受けるためのものである。廃インクトレイ49内にはフェルトやスポンジ等のインク吸収材が敷設されており、フラッシングされたインクは、このインク吸収材に吸収されて保持される。このようにパージ機構48及び廃インクトレイ49が用いられて、記録ヘッド42内の気泡や混色インクの除去、乾燥防止などのメインテナンスが行われる。
各図には示されていないが、プリンタ部11には、カートリッジ装着部が設けられ、各種インクを貯蔵するインクカートリッジが装着される。カートリッジ装着部からキャリッジ44へは、各色インクに対応した複数本のインクチューブ41が引き回されている。キャリッジ44に搭載された記録ヘッド42には、各インクチューブ41を通じて、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジから各色インクが供給される。インクチューブ41は、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ44の往復動に追従して撓む可撓性を有する。
[搬送機構]
第1搬送路23における記録部24より記録向き105の上流側には、搬送ローラ60及びピンチローラ61が設けられている。搬送ローラ60とピンチローラ61とは、搬送ローラ60を上側にして対向配置されている。搬送ローラ60及びピンチローラ61は、第1搬送路23を通過するシートを狭持して記録部24へ向けて搬送する。
記録部24と第1搬送路23の分岐位置27との間には、排紙ローラ62及び拍車63が設けられている。排紙ローラ62及び拍車63は、記録済みの記録用紙を狭持して分岐位置27へ搬送する。
第2搬送路29には、搬送ローラ64及びピンチローラ65が設けられている。搬送ローラ64及びピンチローラ65は、第2搬送路29を通過するシートを狭持して、給紙トレイ20へ向けて搬送する。
搬送ローラ60、排紙ローラ62及び搬送ローラ64は、LFモータ99(図11参照)から駆動伝達されて回転される。また、搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、画像記録時に間欠駆動される。搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が間欠されている間に、キャリッジ44が往復動されて記録ヘッド42のノズルからインク滴が選択的に吐出される。このような搬送ローラ60及び排紙ローラ62の間欠駆動とキャリッジ44の往復動が繰り返されることによって、シートが所定の改行幅で搬送されながら画像記録がなされる。
[経路切換部30]
図2に示されるように、経路切換部30は、第1搬送路23における分岐位置27に設けられている。経路切換部30は、スイッチバックローラ31、ピンチローラ32、及び補助ローラ33を有する。ピンチローラ32及び補助ローラ33は、フレーム34に取り付けられている。フレーム34は、複合機10の幅方向102を長手方向とする長尺部材である。
フレーム34には、複数のピンチローラ32及び補助ローラ33が、その長手方向(幅方向102)に所定間隔で配置されている。各ピンチローラ32及び補助ローラ33は、フレーム34の長手方向(幅方向102)を軸方向として回転自在である。ピンチローラ32及び補助ローラ33は、シートの記録面に当接するので、拍車形状に形成されている。補助ローラ33は、ピンチローラ32よりも第1搬送向き107の上流側に配置されている。各ピンチローラ32は、スイッチバックローラ31に対して接離可能に支持されており、不図示のコイルバネによってスイッチバックローラ31へ向かって付勢されている。したがって、スイッチバックローラ31とピンチローラ32との間にシートが進入すると、ピンチローラ32は、コイルバネの付勢力に抗してスイッチバックローラ31から離れる方向へ移動して、シートをスイッチバックローラ31に圧接させるようにして、そのシートをスイッチバックローラ31との間に挟み込む。
スイッチバックローラ31は、LFモータ99を駆動源として正転及び逆転の双方向へ回転される。図には示されていないが、スイッチバックローラ31は、ギヤやベルトなどにより構成される駆動伝達機構を介してモータと連結されている。
前述されたフレーム34は、スイッチバックローラ31の軸53を中心として、ピンチローラ32及び補助ローラ33と共に回動可能である。フレーム34の回動は、ASFモータ69からの駆動伝達によって実現される。フレーム34は、スイッチバックローラ31が正転(図3における時計周り方向の回転)されるときに、ピンチローラ32及び補助ローラ33を第1搬送向き107に沿った方向へ並列させる。したがって、記録部24を通過したシートは、第1搬送向き107に沿って排紙トレイ21へ向かって搬送される。
他方、フレーム34は、スイッチバックローラ31が逆転(図3における反時計周り方向の回転)されるときに、補助ローラ33側を下方へ降下させて、ピンチローラ32及び補助ローラ33を第2搬送向き108に沿った方向へ並列させる。したがって、排紙トレイ21側から記録部24へ向かって第1搬送向き107と逆向きへ搬送されるシートは、その端部が補助ローラ33により下方へ押さえつけられて、分岐位置27から第2搬送路29へ進入する。
[駆動切換機構70]
以下、ASFモータ69から給紙ローラ25、パージ機構48、経路切換部30への駆動伝達を切り換える駆動切換機構70について説明する。駆動切換機構70は、ガイドレール45におけるパージ機構48側の端部に配置されている。駆動切換機構70は、LFモータ99とASFモータ69との2つのモータから独立に出力される2系統の駆動を、各駆動部へそれぞれ択一的に伝達するものである。
各図には現れていないが、LFモータ99は、廃インクトレイ49側に配置されており、その出力が搬送ローラ60へ入力される。搬送ローラ60は、幅方向102に延出されており、この搬送ローラ60の回転がパージ機構48側から取り出されて、図4及び図5に示される第1切換ギヤ71へ出力される。第1切換ギヤ71は、後述されるように第2切換ギヤ72と同様にスライドされるが、そのスライド範囲において、第1切換ギヤ71には常に搬送ローラ60の回転が出力される。本発明においては、第1切換ギヤ71をによる駆動伝達機構は直接に関係しないので、ここではLFモータ99からの駆動伝達についての説明が省略される。
図4及び図5に示されるように、ASFモータ69は、駆動切換機構70付近に配置されている。ASFモータ69の回転は、その出力軸59(図9参照)から伝達ギヤ67,68を介して第2切換ギヤ72へ伝達される。伝達ギヤ67の厚みは、第2切換ギヤ72のスライド範囲に対して十分に厚いので、第2切換ギヤ72のスライド範囲において、第2切換ギヤ72と伝達ギヤ67とは常に噛合されている。第2切換ギヤ72の軸線は、伝達ギヤ67の軸線と平行であり、第2切換ギヤ72は伝達ギヤ67に対して平行にスライドされる。
第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、1本の支軸73に軸支されて、その軸線方向にスライド可能である。第1切換ギヤ71は、装置の外側(図4における右側)に配置されており、第2切換ギヤ72は装置の内側(図4における左側)に配置されている。支軸73は、フレームにより水平方向に支持されている。支軸73の軸線方向は、キャリッジ44の移動方向106と平行である。支軸73に対して第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72がスライドされることにより、第2切換ギヤ72と後述される第1伝達ギヤ91又は第2伝達ギヤ92との噛合が選択される。
図4及び図5に示されるように、支軸73には、第1切換ギヤ71よりキャリッジ44の移動方向106外側(図4における右側)に、入力レバー74及び当接部材75がそれぞれスライド移動可能に設けられている。
入力レバー74は、支軸73に外嵌される円筒軸76と、円筒軸76から径方向へ突出されたレバー77とを有する。レバー77は、往復動するキャリッジ44じ当接可能なように、キャリッジ44側へ延出された棒状の部材である。円筒軸76は、支軸73に外嵌されており、支軸73の軸線方向にスライド自在であって、また支軸73周りに回転自在である。
当接部材75は、入力レバー74の円筒軸76に外嵌される円筒軸79と、円筒軸79から径方向へ突出されたスライドガイド80とを有する。円筒軸79は、入力レバー74の円筒軸76に外嵌されて、円筒軸76の軸線方向にスライド自在であり、且つ円筒軸76周りに回転自在である。各図には現れていないが、円筒軸79の入力レバー74側の端部には、端面から軸線回りを螺旋状に進むガイド面が、円筒軸79の一部が切り欠かれるようにして形成されている。ガイド面は、スライドガイド80に対応する範囲に形成されている。このガイド面によって、入力レバー74のレバー77が、後述される第1ガイド位置88及び第2ガイド位置89側へ案内される。
スライドガイド80には、貫通孔78が形成されており、この貫通孔78に不図示のガイド部材が挿通されることによって、当接部材75が入力レバー74の円筒軸76周りに回転することが制限される。これにより、当接部材75は、入力レバー74の円筒軸76に対して所定の回転姿勢を維持して軸線方向にスライドされる。
当接部材75は、前述されたガイド面を入力レバー74の円筒軸76に当接させている。当接部材75は、支軸73の軸線方向に伸縮するコイルバネ66により入力レバー74側へ付勢されている。各図には現れていないが、第2切換ギヤ72は、支軸73の軸線方向に伸縮する別のコイルバネにより入力レバー74側へ付勢されている。つまり、第2切換ギヤ72と当接部材75とは、相反する方向へ付勢する2つのコイルバネ66により、第1切換ギヤ71及び入力レバー74を介在させて互いに近づく方向へ付勢されている。これにより、第2切換ギヤ72、第1切換ギヤ71、入力レバー74及び当接部材75は、支軸73において相互に当接されて一体となる。2つのコイルバネ66によって相互に当接された第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、一体となった状態において独立して回転可能である。
当接部材75を付勢するコイルバネ66の付勢力は、第2切換ギヤ72を付勢するコイルバネの付勢力より大きい。したがって、第2切換ギヤ72、第1切換ギヤ71、入力レバー74及び当接部材75は、外力が付与されなければ、支軸73を矢印109へ向かってスライドする。
図4及び図5に示されるように、支軸73の上側には、レバーガイド83が設けられている。レバーガイド83は、ガイドレール45のパージ機構48側に形成された孔に嵌め込まれてガイドレール45に固定されている。レバーガイド83は、内側に所定形状のガイド孔86が形成された略平板状の部材である。ガイド孔86には、入力レバー74のレバー77が挿入されており、レバー77はガイド孔86と通じてガイドレール45の下側から上側へ突出される。
前述されたコイルバネ66の付勢力の関係から、ガイド孔86に挿入されたレバー77は、外力が付与されなければ、図4に示されるように、矢印109側の端に維持される。また、前述された当接部材75の円筒軸79のガイド面によって、第1ガイド位置88側に維持される。図4に示されるレバー77の位置が、レバーガイド83における第1ガイド位置88である。また、第1ガイド位置88から装置外側へ離れた箇所に第2ガイド位置89が形成されている。各ガイド位置88,89は、入力レバー74のレバー77と係合して、レバー77を矢印109に対して保持可能な形状である。
図4及び図5に示されるように、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72の下方には、支軸73と平行に支軸90が配置されている。この支軸90には、第1伝達ギヤ91及び第2伝達ギヤ92が支持されている。なお、支軸90には、第1切換ギヤ71と噛離可能な伝達ギヤも支持されているが、これらの伝達ギヤは、本発明においては任意の構成なので、ここでは詳細な説明が省略される。
第1伝達ギヤ91及び第2伝達ギヤ92は第2切換ギヤ72と噛離可能である。第1伝達ギヤ91及び第2伝達ギヤ92は、その厚みが異なるが、外径は同じである。支軸90において、第1伝達ギヤ91及び第2伝達ギヤ92は、第1伝達ギヤ91を装置の外側(図4における右側)として並べられている。
[第1伝達ギヤ91からリフトカム111への駆動伝達]
第1伝達ギヤ91は、経路切換部30及びリフトカム111へ駆動伝達を行う。リフトカム111が、本発明における回転カムに相当する。経路切換部30が、本発明における第1駆動モジュールに相当する。
図6及び図7に示されるように、支軸90にはリフトカム111が支持されている。このリフトカム111は、第1伝達ギヤ91と同じ程度の外径をなす円盤形状のカムであり、その側面にカム溝112が形成されている。各図には詳細に現れていないが、リフトカム111は、第1伝達ギヤ91と係合されており、第1伝達ギヤ91と一体に回転される。したがって、第1伝達ギヤ91が支軸90周りに正逆転すると、リフトカム111も支軸90周りに正逆転する。
リフトカム111のカム溝112には、リフトアーム113の一端側が係入されている。このリフトアーム113は、支軸114に支持されて支軸114周りに回転可能なアーム形状をなしている。したがって、カム溝112に係入されたリフトアーム113の一端側が、リフトカム111の正逆転によって変動すると、その変動によって、リフトアーム113が支軸114周りに回転される。
リフトアーム113の他端にはキャップホルダ115が回動可能に連結されている。キャップホルダ115は、前述されたノズルキャップ50及び排気キャップ51を一体に支持するものである。キャップホルダ115は、上側が開口された箱形状をなしている。キャップホルダ115に支持されたノズルキャップ50及び排気キャップ51は、キャップホルダ115の上側の開口から露出されている。キャップホルダ115は、不図示のガイドに案内されて上下方向101へスライド可能である。前述されたように、リフトアーム113の一端側が、リフトカム111の正逆転によって変動してリフトアーム113が支軸114周りに回転されると、そのリフトアーム113の回転に伴って、キャップホルダ115が上下方向101へスライドされる。このキャップホルダ115のスライドによって、前述されたように、ノズルキャップ50及び排気キャップ51が、第1姿勢と第2姿勢とに姿勢変化される。
図8に示されるように、リフトカム111には、小径部116が設けられている。この小径部116には、径方向外側へ向かって突出する突部117,118,119が設けられている。これら突部117,118,119は、小径部116の回転に対して位相が異なる位置に配置されており、各突部117,118,119の間は、小径部116の所定の回転角度だけ離間されている。
リフトカム111の近傍には、小径部116に対応して、カムスイッチ120が配置されている。カムスイッチ120は、所定の方向へ回動可能な入力レバー121を有する。カムスイッチ120は、入力レバー121の回動位置によってオン又はオフの電気信号を出力する。カムスイッチ120の入力レバー121は、小径部116へ向かって突出されており、バネ付勢によって一定の回動位置に保持されている。また、入力レバー121は、突部117,118,119と当接可能に配置されている。
図8(A)に示されるように、入力レバー121が突部117,118,119と当接しないときには、入力レバー121は一定の回動位置に保持される。このとき、カムスイッチ120はオフの電気信号を出力する。図8(B)に示されるように、入力レバー121が突部117,118,119のいずれかと当接すると、入力レバー121は、一定の回動位置から回動される。この回動によって、カムスイッチ120はオンの電気信号を出力する。
図8に示されるように、突部117,118,119が所定の間隔で配置されることによって、各突部117,118,119がカムスイッチ120をオン又はオフするタイミングに周期性が生ずる。このカムスイッチ120の出力(オン/オフ)の周期によって、リフトカム111の原点(回転位置)が把握される。
[第1伝達ギヤ91から経路切換部30への駆動伝達]
図9に示されるように、第1伝達ギヤ91には、直列して複数の伝達ギヤ列130が連結されている。この伝達ギヤ列130におけるギヤの個数やギヤ比などは、第1伝達ギヤ91と経路切換部30との配置などに応じて適宜設定されるものである。伝達ギヤ列130は、第1伝達ギヤ91の回転を、経路切換部30の伝達ギヤ131へ伝達する。この伝達ギヤ131は、前述されたフレーム34の回転軸に駆動を出力するものであり、伝達ギヤ131が1回転すると、フレーム34が、分岐位置27において経路を切り換えるように1往復だけ回動される。
伝達ギヤ列130において、伝達ギヤ131と噛合されるギヤは遊星ギヤ132である。この遊星ギヤ132は、スイングアーム133に支持されている。スイングアーム133は、太陽ギヤ134の軸に回動自在に支持されている。また、遊星ギヤ132は、太陽ギヤ134と噛合されている。
図9に示されるように、ASFモータ69の出力軸59が時計回り方向(以下、「CW方向」とも称される。)に回転されると、遊星ギヤ132は、太陽ギヤ134周りを時計回り方向へ回転して伝達ギヤ131と噛合する。これにより、ASFモータ69のCW方向の回転が、伝達ギヤ列130を介して経路切換部30の伝達ギヤ131に伝達される。
図10に示されるように、ASFモータ69の出力軸59が反時計回り方向(以下、「CCW方向」とも称される。)に回転されると、遊星ギヤ132は、太陽ギヤ134周りを反時計回り方向へ回転して伝達ギヤ131から離脱する。スイングアーム133は、リブ135と当接することによって、遊星ギヤ132がいずれのギヤとも噛合しない位置に保持される。これにより、ASFモータ69のCCW方向の回転は、経路切換部30の伝達ギヤ131には伝達されない。
[第2伝達ギヤ92から給紙ローラ25への駆動伝達]
第2伝達ギヤ92は、給紙ローラ25へ駆動伝達を行う。給紙ローラ25が、本発明における第2駆動モジュールに相当する。図4及び図5に示されるように、第2伝達ギヤ92には、直列して伝達ギヤ93,94,95が連結されている。伝達ギヤ95には出力軸96が設けられており、この出力軸96の回転は、前述されたアーム26を支持する軸28に出力される。軸28の回転は、アーム26の延出方向に沿って直列に配置されたギヤ列によって給紙ローラ25へ伝達される。このようにして、第2伝達ギヤ92の回転が給紙ローラ25へ伝達される。
[制御部100]
制御部100は、ASFモータ69を制御するものである。制御部100は、複合機10の動作を統括制御する主制御部とは別の構成とされていてもよいが、この主制御部に制御部100が組み込まれた構成であってもかまわない。なお、キャリッジ44を駆動するCRモータも制御部100によって駆動制御されるものであるが、CRモータの制御は本発明に直接関係しないので、ここではCRモータの動作に関する説明が省略される。
図11に示されるように、制御部100は、主として、CPU141、ROM142、RAM143、ASIC144、及び駆動回路145,146を備え、これら各部がバス147によって通信可能に接続されている。
ROM142には、ASFモータ69及びLFモータ99の回転駆動を制御するためのプログラムが格納されている。詳細には、カムスイッチ120、ロータリーエンコーダ148,149やその他のセンサの検知信号に基づいて、ASFモータ69やLFモータ99の回転方向の切り換えを制御したり、ASFモータ69やLFモータ99の回転量を制御したりする各プログラムがROM142に格納されている。
RAM143は、CPU141が前述された各プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。
ASIC144は、CPU141からの指令に従い、ASFモータ69やLFモータ99に通電するPWM信号等を生成して、そのPWM信号を駆動回路145,146に付与する。駆動回路145を介して駆動信号がASFモータ69に通電されることにより、制御部100によるASFモータ69の回転制御が行われる。また、駆動回路146を介して駆動信号がLFモータ99に通電されることにより、制御部100によるLFモータ99の回転制御が行われる。
駆動回路145は、ASFモータ69を駆動させるものである。駆動回路145は、ASIC144からの出力信号を受けて、ASFモータ69をCW方向或いはCCW方向へ回転させるための電気信号を形成する。その電気信号を受けてASFモータ69が所定の回転方向へ回転する。ASFモータ69の回転は、前述された駆動切換機構70を介して給紙ローラ25、リフトカム111及び経路切換部30へそれぞれ伝達される。ASFモータ69の回転のうちCCW方向が、本明細書において第1回転方向と称され、CW方向が、本明細書において第2回転方向と称される。なお、第1回転方向と第2回転方向とは相対的な概念であるから、これらが入れ替わってもよいことは言うまでもない。
駆動回路146は、搬送ローラ60に接続されたLFモータ99を駆動させるものである。駆動回路146は、ASIC144からの出力信号を受けて、LFモータ99を所定の回転方向へ回転させるための電気信号を形成する。その電気信号を受けてLFモータ99が所定の回転方向へ回転する。LFモータ99の回転は、LFモータ99から搬送ローラ60に至る伝達経路に設けられたギヤなどの駆動伝達機構を介して搬送ローラ60、排紙ローラ62及びスイッチバックローラ31へ伝達される。
ASIC144には、ロータリーエンコーダ148,149が接続されている。ロータリーエンコーダ148は、ASFモータ69の回転量を検知するためのものであり、ASFモータ69に取り付けられている。ロータリーエンコーダ149は、搬送ローラ60の回転量を検知するためのものであり、搬送ローラ60に取り付けられている。ロータリーエンコーダ148,149は、回転軸と同軸に設けられたエンコーダディスクと光学センサとからなる周知の回転量検知手段である。回転軸とともにエンコーダディスクが回転すると、光学センサから電気的なパルス信号が発信される。ロータリーエンコーダ148,149によって検知された信号は、ASIC144からバス147を経てCPU141に送られる。CPU141は、この検知信号に基づいてASFモータ69及びLFモータ99の回転量を検知する。
[駆動切換機構70における駆動切換]
以下、駆動切換機構70による第2切換ギヤ72と第1伝達ギヤ91又は第2伝達ギヤ92との噛合の切り換えについて説明する。
図4に示されるように、レバー77が第1ガイド位置88にあると、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、第1駆動伝達位置に位置する。この第1駆動伝達位置においては、第2切換ギヤ72は、第2伝達ギヤ92と噛合して、ASFモータ69の回転を給紙ローラ25へ伝達する。なお、第1切換ギヤ71と第2切換ギヤ72とは、独立した2つのASFモータ69とLFモータ99との出力をそれぞれ受けて回転されるので、第1駆動伝達位置においては、給紙トレイ20からの給紙と、第1搬送路23及び第2搬送路29における用紙搬送とが独立して制御される。
キャリッジ44が当接して移動されることによって、レバー77が矢印109と反対向きへ移動されると、図5に示されるように、レバー77が第2ガイド位置89へ入り込む。これにより、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、第2駆動伝達位置へスライド移動する。第2切換ギヤ72は、第1駆動伝達位置から第2駆動伝達位置への移動によって、第2伝達ギヤ92から離脱すると共に、第1伝達ギヤ91と噛合する。この過程において、ASFモータ69が、それまでの回転方向に対して逆回転方向へ若干回転されることによって、第2切換ギヤ72と第2伝達ギヤ92との面圧が解除される。
そして、第2切換ギヤ72と第1伝達ギヤ91との位相を合わせるために、ASFモータ69が、CW方向又はCCW方向へ交互に回転方向が切り換えられながら若干量だけ回転される。これにより、第2切換ギヤ72は若干量の正転と逆転と繰り返し、この繰り返しの間に、第1伝達ギヤ91との位相が合致して、第2切換ギヤ72が第2伝達ギヤ92から離脱すると共に第1伝達ギヤ91と噛合する。前述されたように、第1伝達ギヤ91は、ASFモータ69の回転をリフトカム111及び経路切換機部30へ伝達する。
[ノズルキャップ50の駆動]
以下、ノズルキャップ50の駆動制御が説明される。前述されたように、ノズルキャップ50は、排気キャップ51とともにキャップホルダ115の上下方向101への移動によって第1姿勢と第2姿勢とに姿勢変化する。このキャップホルダ115の移動は、ASFモータ69の回転がリフトカム111へ伝達されることによって実現される。したがって、ノズルキャップ50を姿勢変化させる際には、経路切換部30において、レバー77が第2ガイド位置89に位置されて、第2切換ギヤ72が第2駆動伝達位置に位置される。
リフトカム111の原点位置を検出するために、イニシャライズが行われる。このイニシャライズのためのASFモータ69の制御が、本発明における第1制御に相当する。イニシャライズは、例えば、複合機10の電源が入れられたタイミングなどの所定のタイミングでなされる。イニシャライズは、ASFモータ69をCCW方向へ連続して回転させて、カムスイッチ120の出力をモニタすることにより行われる。
前述されたように、カムスイッチ120の出力は、入力レバー121が、リフトカム111の突部117,118,119によって回動されることで変化される。このカムスイッチ120の出力の変化と、ノズルキャップ50の姿勢変化との関係が図12に示される。
図12に示されるように、リフトカム111が一定の速度で回転されると、カムスイッチ120は、各突部117,118,119との当接の有無によってオン信号又はオフ信号を出力する。突部117と突部118、119との間においてカムスイッチ120からオフ出力が維持される時間T1,T2は、突部118と突部119との間においてカムスイッチ120からオフ出力が維持される時間T3より長い(T1=T2>T3)。そして、カムスイッチ120の入力レバー121が、突部118と突部119との間に位置するときに、ノズルキャップ50が第2姿勢、すなわち記録ヘッド42と接触しない最下位置に位置された姿勢となる。したがって、制御部100は、カムスイッチ120の出力においてオフ信号が維持される時間Tをカウントして、同じ長さの時間T、つまりT1,T2が連続した後のオフ信号の出力開始から、所定の回転量(エンコーダ量)だけASFモータ69を回転させてから、ASFモータ69を停止させる。これにより、リフトカム111は、ノズルキャップ50が第2姿勢となる初期位置Iで停止される。この初期位置Iが、リフトカム111の原点として把握される。
なお、前述されたイニシャライズは、ASFモータ69がCW方向又はCCW方向のいずれに回転されても行うことができるが、ASFモータ69がCW方向へ回転されると、経路切換部30においてフレーム34が回動するので、ASFモータ69がCCW方向へ回転されることによってイニシャライズがなされる。
前述されたイニシャライズがなされてリフトカム111が初期位置Iで停止された後、パージ動作やキャッピング動作の際に、ASFモータ69がCCW方向へ回転される。ASFモータ69がCCW方向へ回転されると、カムスイッチ120の出力が、オフ信号からオン信号に変化した後、再びオン信号が出力されると、ノズルキャップ50が第1姿勢、すなわち、記録ヘッド42に接触する姿勢となるので、ASFモータ69が停止される。なお、リフトカム111の回転に先立って、キャリッジ44は、ノズルキャップ50の直上へ移動されている。これにより、記録ヘッド42がノズルキャップ50で覆われる。
パージ動作やキャッピング動作を終了させるときには、ASFモータ69が再びCCW方向へ回転される。ASFモータ69がCCW方向へ回転されると、カムスイッチ120の出力が、オン信号からオフ信号へ変化した後、さらにオン信号、オフ信号に変化すると、ノズルキャップ50が第2姿勢となるので、そのオフ信号から所定の回転量だけASFモータ69が回転されて停止される。これにより、リフトカム111が初期位置Iで停止される。
[経路切換部30の駆動]
以下、経路切換部30の駆動制御が説明される。前述されたように、ASFモータ69がCW方向へ回転されることによって、ASFモータ69から経路切換部30へ駆動伝達されてフレーム34が回動される。この経路切換部30の駆動制御が、本発明における第2制御に相当する。
図13に示されるように、制御部100は、第1搬送路23を搬送されて片面に画像記録が行われたシートの後端が、分岐位置27に到達すると、ASFモータ69をCW方向へ所定量だけ回転させる(S1)。これにより、フレーム34が回動されて、ピンチローラ32及び補助ローラ33が第2搬送向き108に沿った方向となり、シートの後端が第2搬送路29へ押し込まれる(S2)。
その後、LFモータ99が逆転されてスイッチバックローラ31が逆転されると、片面に画像記録されたシートが、後端と先端とを逆転させて第2搬送路29へ進入する。第2搬送路29から第1搬送路23へシートが搬送されて、他方の面に画像記録が行われたシートの先端(片面記録後の後端)が分岐位置27に到達する前に、制御部100は、ASFモータ69をCW方向へ所定量だけ回転させる。これにより、フレーム34が回動されて、ピンチローラ32及び補助ローラ33が第1搬送向き107に沿った方向となる(S2)。したがって、両面に画像記録がされたシートは、分岐位置27を通過してスイッチバックローラ31へ到達し、スイッチバックローラ31及びピンチローラ32によって排紙トレイ21へ排出される。
前述されたASFモータ69のCW方向の回転は、リフトカム111にも伝達されるので、両面記録が終了した後に、リフトカム111が初期位置Iから回転された状態となる。制御部100は、前述されたASFモータ69のCW方向の回転量を、ロータリーエンコーダ148のエンコーダ量によって把握し、その回転量と同じ回転量だけASFモータ69をCCW方向へ回転させる(S3)。これにより、リフトカム111が初期位置Iに復帰される。なお、このASFモータ69のCCW方向への回転は、経路切換部30へは伝達されない。これにより、経路切換部30の駆動、すなわち第2制御が終了される。
制御部100は、前述された経路切換部30の駆動において、カムスイッチ120の出力をモニタする。前述されたようにASFモータ69がCW方向へ回転されると、リフトカム111が初期位置Iから回転されるので、その回転によって、カムスイッチ120の出力が変化する。制御部100は、ASFモータ69がCW方向へ回転されて、経路切換部30が一連の動作を終了するまでにカムスイッチ120から出力された信号の変化を記憶し、ASFモータ69がCCW方向へ回転されて、リフトカム111が初期位置Iへ戻される際に、カムスイッチ120から出力された信号の変化と比較する。その比較結果が合致していれば、リフトカム111が初期位置Iに復帰したと判断し、合致しなければ、リフトカム111が初期位置Iに復帰していないと判断する(S4)。
また、簡易的な判断手法として、初期位置Iにおいては、カムスイッチ120からオフ信号が出力されるので、カムスイッチ120からオフ信号が出力されていれば、リフトカム111が初期位置Iに復帰したと判断し、カムスイッチ120からオン信号が出力されていれば、リフトカム111が初期位置Iに復帰していないと判断してもよい。
前述されたように、ASFモータ69から経路切換部30までの駆動伝達機構においては、遊星ギヤ132が存在し、また、多くのギヤ列130などによるバックラッシが存在するので、ASFモータ69の回転量がロータリーエンコーダ148によって監視されていても、ASFモータ69の回転と停止との繰り返しや回転切換などによって、ASFモータ69を、CW方向への回転量と同じ回転量だけCCW方向へ回転させたとしても、リフトカム111が完全に同じ位置、つまり初期位置Iに復帰しないことがある。
また、仮にリフトカム111が初期位置I付近まで復帰しても、カムスイッチ120は同じオフ信号を出力するので、初期位置Iに対する軽微なズレを把握できない。このような軽微なズレが累積されると、いずれかのタイミングで、ノズルキャップ50が記録ヘッド42又はキャリッジ44と接触する高さH(図12参照)まで上昇する。そして、キャリッジ44の移動によって、記録ヘッド42又はキャリッジ44がノズルキャップ50と衝突し得る。
図12に示されるように、カムスイッチ120は、リフトカム111が初期位置Iまで回転される前に、オン信号からオフ信号へ必ず出力変化するので、このオン信号からオフ信号への出力変化が無ければ、リフトカム111が初期位置Iへ復帰していないと判断できる。また、初期位置Iから次のオン信号が出力されるタイミングは、ノズルキャップ50が高さHまで上昇する前である。したがって、カムスイッチ120の信号をモニタすることによって、リフトカム111が初期位置Iに復帰しているかを判断でき、その判断は、ノズルキャップ50が高さHまで上昇される前になされる。
制御部100は、リフトカム111が初期位置Iに復帰したと判断したときは、イニシャライズ(S5)を行わずに動作を終了する。一方、リフトカム111が初期位置Iに復帰しなかったと判断したときは、イニシャライズを行う(S5)。このイニシャライズは、前述されたノズルキャップ50の駆動におけるイニシャライズと同様なので、詳細な説明が省略される。このイニシャライズによって、リフトカム111が初期位置Iに復帰されるので、その後にキャリッジ44が移動されても、記録ヘッド42又はキャリッジ44とノズルキャップ50及び排気キャップ51とが衝突することがない。このような制御部100によるリフトカム111が初期位置Iに復帰したか否かの判断(S4)及びイニシャライズ(S5)が、本発明における第3制御に相当する。
前述された第3制御(S4,S5)は、駆動切換機構70による駆動切換においてなされてもよい。前述されたように、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72がスライド移動される際に、面圧の解除や位相を合わせるために、ASFモータ69が、CW方向又はCCW方向へ回転方向が切り換えられながら若干量だけ回転される。これにより、前述と同様に、リフトカム111が初期位置Iから軽微なズレが生じ得るので、この軽微なズレが累積されると、いずれかのタイミングで、記録ヘッド42又はキャリッジ44がノズルキャップ50と衝突し得る。
図12に示されるように、カムスイッチ120は、リフトカム111が初期位置Iから位置ズレして、ノズルキャップ50が高さHまで上昇する前に、オフ信号からオン信号へ必ず出力変化する。駆動切換機構70の起動切換におけるASFモータ69の若干量の回転では、通常は、カムスイッチ120がオフ信号からオン信号へ変化するまで回転されないので、制御部100は、カムスイッチ120の出力をモニタして、オフ信号からオン信号へ出力変化すれば、前述されたイニシャライズ(S5)を行う。
[本実施形態による作用効果]
前述されたように、制御部100は、経路切換部30の動作又は駆動切換機構70の動作においてカムスイッチ120の出力をモニタして、カムスイッチ120の出力変化に基づいてリフトカム111が初期位置Iにあるかを判断してイニシャライズを行い、その判断がノズルキャップ50が高さHまで上昇する前に行われるので、経路切換部30の動作又は駆動切換機構70の動作においてリフトカム111が初期位置Iから位置ズレしてノズルキャップ50が上昇されても、ノズルキャップ50が記録ヘッド42やキャリッジ44と衝突することが防止される。また、経路切換部30や駆動切換機構70が動作される毎にリフトカム111がイニシャライズされる必要がないので、経路切換部30及び駆動切換機構70の動作の高速化が実現され得る。