以下、適宜図面を参照して、本発明の好ましい実施形態が詳細に説明される。なお、本実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更され得る。
[図面の説明]
図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。図2は、この複合機10の内部構成を示す縦断面図である。図3は、プリンタ部11の主要構成を示す部分拡大断面図である。図4は、プリンタ部11の主要部を示す平面図である。図5は、プリンタ部11の主要部を示す斜視図である。図6は、複合機10の制御部64の構成を示すブロック図である。図7は、プラテン42及び駆動機構105の拡大斜視図である。図8は、可動支持部88の拡大斜視図である。図9は、プラテン42の底面側からみた可動支持部88の拡大斜視図である。図10は、駆動機構105の拡大斜視図である。図11は、回転板125の拡大斜視図である。図12は、回転板125の下面図である。図13は、縁なし記録が行われるときの記録用紙の搬送及び可動支持部88のスライドのタイミングを示すタイミングチャートである。図13において、横軸は時間の経過を示し、線図167及び線図173は、搬送される記録用紙の先端及び後端の位置の変位をそれぞれ示し、線図170は、可動支持部88の変位を示している。また、図13において、線図169及び線図168は、当接部材158の変位及びLFモータ71の駆動タイミングをそれぞれ示している。図14は、記録用紙の搬送時における可動支持部88の変位を(a)から(d)の順に示す図である。図14において、矢印166の方向が記録用紙の搬送方向である。なお、図14では、記録用紙が搬送ローラ60(図3参照)によりレジストされた後から記録用紙への記録が終了するまでの動作タイミングが示されており、給紙トレイ20から給送された記録用紙が搬送ローラ60に至るまでの動作は省略されている。図15は、縁なし記録における記録用紙と可動支持部88との位置関係を示す図である。図16は、クリーニングが行われるときのクリーニングシート197の搬送及び可動支持部88のスライドのタイミングを示すタイミングチャートである。図16において、横軸は時間の経過を示し、線図188及び線図192は、搬送されるクリーニングシート197の先端及び後端の位置の変位をそれぞれ示し、線図190及び線図195は、可動リブ121の変位を示している。また、図16において、線図189、191、193、194、196は、当接部材158の変位及びLFモータ71の駆動タイミングをそれぞれ示している。図17及び図18は、クリーニングにおけるクリーニングシート197と可動リブ121との位置関係を示す図である。
[複合機10の概略構成]
複合機10は、プリンタ部11及びスキャナ部12を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。複合機10のうちプリンタ部11が、本発明に係るインクジェット記録装置に相当する。したがって、複合機10においてプリンタ機能以外の機能は任意のものであり、本発明に係るインクジェット記録装置は、例えばスキャナ部12が省略された単機能のプリンタとして実施されてもよい。
複合機10のプリンタ部11は、主にコンピュータやデジタルカメラなどの外部情報機器と接続され得る。外部情報機器から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、プリンタ部11が被記録媒体としての記録用紙に画像や文書を記録する。また、複合機10にはカード形式のメモリなどの各種記憶媒体が装着され得る。この記憶媒体に記憶された画像データなどに基づいて、プリンタ部11が記録用紙に画像を記録することも可能である。
図1に示されるように、複合機10の外形は、横幅及び奥行きが高さよりも大きい幅広薄型の略直方体である。複合機10の下部がプリンタ部11である。複合機10は、正面側に開口13を有する。開口13の内側に、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に設けられている。給紙トレイ20には、複数枚の記録用紙が保持される。画像記録に際して、給紙トレイ20に保持された記録用紙がプリンタ部11の内部へ給送されて所望の画像が記録され、画像記録後の記録用紙が排紙トレイ21へ排出される。
複合機10の上部がスキャナ部12である。スキャナ部12は、いわゆるフラットベッドスキャナとして構成されているが、スキャナ部12の構成は本発明に直接関係しないので詳細な説明が省略される。
複合機10の正面上部に操作パネル15が設けられている。操作パネル15は、プリンタ部11やスキャナ部12を操作するための装置であって、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機10は、操作パネル15からの操作指示に基づいて動作する。複合機10が外部情報機器に接続されている場合には、この外部情報機器からプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機10が動作する。また、複合機10の正面の左上部にスロット部16が設けられている(図1参照)。カード形式のメモリカードは、スロット部16に装着されてデータの読み書きが可能となる。
[プリンタ部11の概略構成]
以下、プリンタ部11の概略構成が説明される。図2に示されるように、複合機10の底側に給紙トレイ20が配置されている。給紙トレイ20には、A4サイズ以下の記録用紙が保持可能である。もっとも、給紙トレイ20にスライドトレイを設けてトレイ面を拡大可能とすれば、A4サイズより大きな記録用紙を給紙トレイ20に保持させることもできる。
給紙トレイ20の奥側には分離板22が設けられている。分離板22は、その上端がプリンタ部11の背面側へ傾倒されている。分離板22によって、給紙トレイ20から重送された記録用紙が分離され、かつ分離された最上位置の記録用紙が上方へ案内される。
排紙トレイ21は、給紙トレイ20の上側に上下二段に配置されている。排紙トレイ21は、画像記録後の記録用紙を積載状態で保持する。給紙トレイ20から排紙トレイ21へは、後述される用紙搬送路23によって記録用紙が搬送可能である。画像記録は、記録用紙の搬送過程において画像記録ユニット24によって行われる。
図3に示されるように、給紙トレイ20の上側に給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ供給する。給紙ローラ25は、アーム26の先端に支持されている。給紙ローラ25は、LFモータ71(図6参照)を駆動源として、アーム26に沿って設けられた駆動伝達機構27を介して駆動されて回転される。この駆動伝達機構27は、複数のギアが相互に噛合されてなり、各ギアの回転が順次伝達されることによって、モータ71の駆動を給紙ローラ25へ伝達する。
アーム26は、その基端部が基軸28に支持されて、基軸28を回動中心軸として回転可能である。このアーム26の回転によって、給紙ローラ25が、給紙トレイ20に対して接離可能に上下動する。アーム26は、自重により又はバネなどに付勢されて下側へ弾性付勢されている。このため、アーム26は、通常において給紙トレイ20側へ回転し、給紙トレイ20が挿抜される際に給紙トレイ20により上側へ押しやられて回転する。アーム26が弾性付勢によって下側へ回転すると、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が分離板22へ送り出される。記録用紙は、その先端が分離板22に当接して上方へ案内され、用紙搬送路23へ送り込まれる。給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、この記録用紙は分離板22との当接によって制止される。
用紙搬送路23は、給紙トレイ20における分離板22の上側から、上方へUターンして装置正面側へ延びるいわゆるUターンパスとして形成されている。このUターンパスのうち、装置背面側において湾曲している部分が本明細書において湾曲部17と称される。用紙搬送路23は、画像記録ユニット24などが配設されている箇所以外は、外側ガイド面と内側ガイド面とによって区画形成されている。例えば、湾曲部17は、外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とが対向配置されて、これらが装置フレームに固定されることにより構成されている。外側ガイド部材18が外側ガイド面を構成し、内側ガイド部材19が内側ガイド面を構成している。湾曲部17には、回転コロ29が設けられている。この回転コロ29は、回転自在である。回転コロ29のローラ面は、外側ガイド面から用紙搬送路23内へ露出されている。したがって、回転コロ29が記録用紙の記録面側(記録ヘッド39と対向する面)に接触しうる。回転コロ29が記録用紙に当接しながら回転することによって、湾曲部17において記録用紙が円滑に搬送される。
[画像記録ユニット24]
図3に示されるように、画像記録ユニット24は、用紙搬送路23において湾曲部17より搬送方向の下流側に配置されている。画像記録ユニット24は、キャリッジ38と、インクジェット方式の記録ヘッド39とを備えている。記録ヘッド39は、キャリッジ38に搭載されている。キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向と直交する水平方向へ往復動する。図3には現れていないが、複合機10の内部には、記録ヘッド39とは独立してインクカートリッジが配置されている。このインクカートリッジからインクチューブ41(図4参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが記録ヘッド39に供給される。
各図には現れていないが、記録ヘッド39は、その下面に複数のノズルを有する。各ノズルは、C・M・Y・Bkの各色インクに対応して記録用紙の搬送方向にそれぞれ1列に配置されている。各ノズル内に設けられたピエゾ素子の振動によって、各ノズルから各色インクのインク滴が噴出される。キャリッジ38が往復動される間に、記録ヘッド39から各色インクが微小なインク滴として選択的に噴出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像が記録される。なお、各ノズルの搬送方向のピッチや数は、記録される画像の解像度などに応じて適宜設定される。また、カラーインクの種類数に応じて各色に対応したノズルの列数が増減される。
図4及び図5に示されるように、用紙搬送路23の上側において、一対のガイドレール43、44が配置されている。ガイドレール43、44は、記録用紙の搬送方向(図4において紙面の上側から下側に向かう方向)に所定距離が隔てられて、記録用紙の搬送方向と直交する方向(図4において左右方向)を長手方向として配置されている。ガイドレール43、44は、プリンタ部11の筐体内に設けられており、プリンタ部11を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成する。
記録用紙の搬送方向における上流側に配設されたガイドレール43は、ほぼ平板形状である。ガイドレール43における長手方向(図4において左右方向)の長さは、キャリッジ38の往復動範囲より長く設定されている。記録用紙の搬送方向における下流側に配設されたガイドレール44も、ほぼ平板形状であり、その長手方向の長さはガイドレール43の長さと同等である。また、ガイドレール44の搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。
キャリッジ38は、ガイドレール43、44を跨ぐように配置されている。つまり、キャリッジ38の搬送方向上流側の端部がガイドレール43上に載置され、キャリッジ38の搬送方向下流側の端部がガイドレール44上に載置されている。各図には現れていないが、キャリッジ38は、ガイドレール44の縁部45を、ローラ対などによって挟み込んでいる。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、かつ、ガイドレール43、44の長手方向、つまり記録用紙の搬送方向と直交する方向へ摺動可能である。この摺動に際して上記ローラ対が回転しながら縁部45に沿ってスライドする。
ガイドレール44の上面にベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、駆動プーリ47、従動プーリ48及び無端環状のタイミングベルト49を有する。駆動プーリ47及び従動プーリ48は、ガイドレール44の長手方向における両端付近にそれぞれ配置されている。タイミングベルト49は、駆動プーリ47と従動プーリ48との間に架け渡されている。タイミングベルト49の内側には複数の歯が設けられており、この歯が駆動プーリ47の歯と噛合する。駆動プーリ47は、CRモータ73(図5参照)により回転駆動される。駆動プーリ47の回転が伝達されてタイミングベルト49が周運動する。
キャリッジ38は、タイミングベルト49と連結されている。したがって、タイミングベルト49の周運動に基づいてキャリッジ38がガイドレール43、44上を往復動する。前述のように記録ヘッド39がキャリッジ38に搭載されていることから、キャリッジ38の往復動とともに、記録ヘッド39が、記録用紙の搬送方向と直交する方向へ往復動する。
図4に示されるように、リニアエンコーダ77(図6参照)のエンコーダストリップ50がガイドレール44に配設されている。エンコーダストリップ50は帯状に形成され、その長手方向に沿って透光部と遮光部とが所定ピッチで交互に配置されている。エンコーダストリップ50は、ガイドレール44の長手方向の両端に設けられた支持部33、34に支持されて、ガイドレール44の上側に長手方向へ延びるように配置されている。キャリッジ38の上面には、透過型センサである光学センサ35が設けられている。光学センサ35は、エンコーダストリップ50に対応して配置され、キャリッジ38の往復動の際にエンコーダストリップ50のパターンを検知する。光学センサ35の検知信号は、キャリッジ38に搭載された不図示のヘッド制御基板からパルス信号として出力される。このパルス信号に基づいてキャリッジ38の移動方向及び速度が算出され、キャリッジ38の往復動が制御される。なお、図5では、エンコーダストリップ50,支持部33,34、光学センサ35が省略されている。
ガイドレール43,44の下側に、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分を占めるように配設されている。プラテン42の幅は、プリンタ部11が搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きく設定されている。したがって、搬送される記録用紙の幅方向における両端は、常にプラテン42上を通過する。後に詳述されるが、このプラテン42に可動支持部88(図5参照)が設けられている。可動支持部88は、記録用紙の搬送方向へスライド可能である。
図4に示されるように、プラテン42の両側には、パージ機構51や廃インクトレイ84などのメンテナンスユニットが配設されている。パージ機構51は、記録ヘッド39のノズルから気泡や異物を吸引除去するためのものである。廃インクトレイ84は、フラッシングと呼ばれる記録ヘッド39からのインクの空噴出を受けるためのものである。なお、図5では、パージ機構51が省略されている。
図4に示されるように、インクチューブ41は、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ38の往復動に追従して撓む弾性を有する。インクチューブ41はCMYKの各色インクに対応して4本が設けられている。各インクチューブ41の一端はインクカートリッジと連結されて、インクカートリッジから流出するインクが各インクチューブ41を流れる。各インクチューブ41は、装置の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、その一部が装置本体の固定クリップ36に固定され、他端が記録ヘッド39と連結されている。各インクチューブ41は、固定クリップ36からキャリッジ38までの部分が装置本体などに固定されておらず、この部分がキャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。なお、図4においては、固定クリップ36からカートリッジ装着部側へ延びるインクチューブ41は省略されている。また、図5では、インクチューブ41が省略されている。
制御部64(図6参照)を構成するメイン基板から記録ヘッド39のヘッド制御基板への記録用信号などの伝送は、フラットケーブル85を通じて行われる。フラットケーブル85は、メイン基板とヘッド制御基板とを電気的に接続する。なお、上記メイン基板は装置正面側(図4において紙面の下側)に配設されており、図4には示されていない。フラットケーブル85は、電気信号を伝送する複数本の導電線をポリエステルフィルムなどの合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のものである。フラットケーブル85も、インクチューブ41と同様に、キャリッジ38の往復動に追従して撓む弾性を有する。
[搬送機構]
記録用紙を搬送する搬送機構は、前述された給紙ローラ25の他、搬送ローラ60及びピンチローラ、排紙ローラ62及び拍車63を主要部材として構成されている。
図3に示されるように、画像記録ユニット24の搬送方向の上流側に一対の搬送ローラ60及びピンチローラが設けられている。なお、図3では、ピンチローラが他の部材に隠れて現れていないが、搬送ローラ60の下側に圧接するようにピンチローラが配置されている。搬送ローラ60及びピンチローラは、用紙搬送路23を搬送される記録用紙を狭持してプラテン42上へ搬送する。
画像記録ユニット24の搬送方向の下流側に一対の排紙ローラ62及び拍車63が設けられている。排紙ローラ62及び拍車63は、記録済みの記録用紙を狭持して排紙トレイ21へ搬送する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータ71から駆動力が伝達されて同期回転される。搬送ローラ60及び排紙ローラ62が間欠駆動されることにより、記録用紙が所定の改行幅で間欠して搬送される。搬送ローラ60に対応して設けられたロータリーエンコーダ76(図6参照)は、搬送ローラ60と共に回転するエンコーダディスク61のパターンを光学センサ82(図5参照)で検知する。この検知信号に基づいて、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が制御される。
拍車63は、排紙ローラ62と接離する方向にスライド移動可能に設けられている。拍車63は、コイルバネにより排紙ローラ62に圧接するように付勢されている。排紙ローラ62と拍車63との間に記録用紙が進入すると、拍車63が記録用紙の厚み分だけコイルバネの付勢力に抗して退避するとともに、記録用紙を排紙ローラ62に圧接する。これにより、排紙ローラ62の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。上記ピンチローラも搬送ローラ60に対して同様に設けられている。したがって、記録用紙は、ピンチローラに付勢されて搬送ローラ60に圧接され、これにより、搬送ローラ60の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。
用紙搬送路23における搬送ローラ60より上流側にレジセンサ95が配置されている。レジセンサ95は、図3に示されると検出子と図示されていない光学センサとを有するいわゆるメカニカルセンサである。レジセンサ95の検出子は、用紙搬送路23を貫くように突出したレバー形状であり、回動により用紙搬送路23に出没する。検出子は、バネ材により弾性付勢されて常に用紙搬送路23へ突出しており、用紙搬送路23を搬送される記録用紙が当接すると、弾性付勢に抗して回動して用紙搬送路23から退避する。レジセンサ95は、このような検出子の回動を光学センサにより検出して電気信号として出力する。レジセンサ95が出力する電気信号に基づいて、検出子の位置を記録用紙の先端又は後端が通過したことが判定される。
[制御部64]
制御部64は、プリンタ部3のみでなくスキャナ部2も含む複合機10の全体動作を制御するものであり、前述のフラットケーブル85が接続されるメイン基板により構成される。なお、スキャナ部12の制御に関する構成は、本発明の主要な構成ではないので、その詳細な説明は省略される。
図6に示されるように、制御部64は、CPU(Central Processing Unit)65、ROM(Read Only Memory)66、RAM(Random Access Memory)67、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)68を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。制御部64は、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されている。
ROM66には、複合機10の各種動作を制御するためのプログラムなどがROM66に格納されている。RAM67は、CPU65が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。EEPROM68に、電源オフ後も保持すべき設定やフラグなどが格納される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LFモータ71に通電する相励磁信号などを生成する。この信号は、LFモータ71の駆動回路72に付与され、この駆動回路72を介して駆動信号がLFモータ71に通電される。このようにして、LFモータ71の回転制御が行われる。LFモータ71は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の駆動源であり、かつ給紙ローラ25の駆動源でもある。
駆動回路72は、LFモータ71を所望の回転で駆動させるものである。駆動回路72は、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けてLFモータ71が回転する。LFモータ71の回転が給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62などへ伝達される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、CRモータ73に通電する相励磁信号などを生成する。この信号は、CRモータ73の駆動回路74に付与され、この駆動回路74を介して駆動信号がCRモータ73に通電される。このようにして、CRモータ73の回転制御が行われる。
駆動回路74は、CRモータ73を所望の回転で駆動させるものである。駆動回路74は、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けてCRモータ73が回転する。CRモータ73の回転力は、ベルト駆動機構46を介してキャリッジ38へ伝達され、これにより、キャリッジ38が往復動される。このようにして、キャリッジ38の往復動が制御部64により制御される。
駆動回路75は、記録ヘッド39を所定のタイミングで駆動させるものである。CPU65から出力される駆動制御手順に基づいて、ASIC70が出力信号を生成する。この出力信号に基づいて駆動回路75が記録ヘッド39を駆動制御する。この駆動回路75は、ヘッド制御基板に搭載されている。駆動回路75から出力される信号は、フラットケーブル85を介して制御部64を構成するメイン基板からヘッド制御基板へ伝送される。これにより、記録ヘッド39は、所定のタイミングで各色インクを記録用紙に対して選択的に噴出する。
搬送ローラ60の回転量を検出するロータリーエンコーダ76、キャリッジ38の位置検知を行うリニアエンコーダ77、記録用紙の先端及び後端の検知を行うレジセンサ95がASIC70に接続されている。キャリッジ38は、複合機10の電源オンにより、ガイドレール43、44の一方の端まで移動され、リニアエンコーダ77による検知位置が初期化される。キャリッジ38が初期位置からガイドレール43、44上を移動すると、キャリッジ38に設けられた光学センサ35がエンコーダストリップ50のパターンを検知する。制御部64は、光学センサ35の検知に基づくパルス信号数によって、キャリッジ38の移動方向及び速度を把握する。制御部64は、この移動方向及び速度に基づいてキャリッジ38の往復動を制御すべく、CRモータ73の回転を制御する。また、制御部64は、レジセンサ95の信号及びロータリーエンコーダ76が検出するエンコーダ量に基づいて記録用紙の先端又は後端の位置を把握する。制御部64は、記録用紙の先端がプラテン42の所定の位置に到達すると、記録用紙を所定の改行幅ごとに間欠搬送すべくLFモータ71の回転を制御する。この改行幅は、画像記録の条件として入力された解像度などに基づいて設定される。
スキャナ部12、複合機10の操作指示を行うための操作パネル15、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部16、パソコンなどの外部情報機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース78及びUSBインタフェース79などがASIC70に接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)80やモデム(MODEM)81もASIC70に接続されている。
[プラテン42]
図7に示されるように、プラテン42は、概略として平板形状であり、その上面109が記録ヘッド39の下面と対向されて配置されている。プラテン42は、記録用紙の幅方向(矢印87の方向)を長手方向として配置されている。なお、図7において、矢印89の方向が記録用紙の搬送方向である。
プラテン42は、フレーム100と、フレーム100に設けられた第1固定支持部102及び第2固定支持部103と、フレーム100にスライド可能に設けられた可動支持部88とを主要な構成とし、さらに、可動支持部88をスライド駆動する駆動機構105が一体に組み付けられている。
フレーム100は、例えば合成樹脂や鋼板からなり、プラテン42の骨格を構成する。フレーム100は、断面形状が下向きに開口した略C字形状である。フレーム100の長手方向の両端に、ブラケット106、107がフレーム100と一体にそれぞれ設けられている。フレーム100は、ブラケット106、107を用いてプリンタ部11のフレームに固定される。フレーム100の長手方向の一端側(図7において手前側)に駆動機構取付部108がフレーム100と一体に設けられている。駆動機構取付部108は、水平方向に開口したフック部110を有する。このフック部110によって駆動機構105が支持される。
フレーム100の上面109に、第1固定支持部102及び第2固定支持部103が設けられている。第1固定支持部102は、上面109における搬送方向の上流側端部94側において、複数が長手方向に沿って所定間隔で一列に設けられており、各第1固定支持部102は、記録ヘッド39へ向かうように上方へ突出している。第2固定支持部103は、上面109における搬送方向の下流側端部96側において、複数が長手方向に沿って所定間隔で一列に設けられており、各第2固定支持部103は、記録ヘッド39へ向かうように上方へ突出している。
複数の第1固定支持部102と複数の第2固定支持部103とは、搬送方向に隔てられて一対をなしており、第1固定支持部102の数と第2固定支持部103の数は同じである。なお、一対とならない第1固定支持部102又は第2固定支持部103がフレーム100の上面109に存在しても、本発明を実施するにあたって何ら障害とならないことは言うまでもない。本実施形態においては、第1固定支持部102と第2固定支持部103との間として認識される上面109の一部分が溝116と称される。溝116は、上面109においてプラテン42の長手方向に延びている。溝116の搬送方向の長さ(第1固定支持部102と第2固定支持部103との離間距離)は、記録ヘッド39におけるノズル位置に対応されており、各ノズルからインク滴が噴出される領域より広い。
各第1固定支持部102は薄肉平板形状のリブとして上面109において搬送方向を長手方向として上方へ突出しており、そのリブの角部は面取加工が施されている。同様に、各第2固定支持部103は薄肉平板形状のリブとして上面109において搬送方向を長手方向として上方へ突出しており、その角部は面取加工が施されている。
フレーム100の上面109には、記録用紙の搬送方向へ延びるスリット119が複数設けられている。各スリット119は、プラテン42の長手方向に沿って所定間隔で配置されている。各スリット119は、隣り合う第1固定支持部102の間と、隣り合う第2固定支持部103の間とを含めて、搬送方向へ延出されている。各スリット119を通じて、後述される可動支持部88の可動リブ121が、上面109から記録ヘッド39へ向かって上方へ突出している。
図8及び図9に示されるように、可動支持部88は、箱状に形成されたベース120と、ベース120に設けられた複数の可動リブ121とを有する。可動リブ121は、薄肉平板のリブであり、ベースの短手方向を長手方向としてベース120から上方へ突出する。この可動リブ121が、プラテン42のフレーム100の下側からスリット119を通じてフレーム100の上面109の上側へ突出する。可動支持部88は、合成樹脂又は金属から構成され得る。ベース120は、概略としてプラテン42の長手方向に細長の平板形状であるが、その断面形状は下方へ開口したC字形状である。ベース120は、フレーム100の下側の開口からその内部へ嵌め込まれる。
図8に示されるように、ベース120の長手方向の両端部にスライドローラ93が設けられている。各スライドローラ93は、ベース120の長手方向を軸方向としてベース120に回転自在に軸支されている。また、各スライドローラ93の周面の一部が、ベース120の上面から膨出しており、フレーム100の内面と当接して可動支持部88のスライドに従動して回転する。
図8に示されるように、ベース120の上面に複数の可動リブ121が一体に設けられている。可動リブ121の突出先端は山形である。複数の可動リブ121は、ベース120の長手方向に沿って所定間隔で配置されており、各可動リブ121は、フレーム100に組み付けられた状態において、記録用紙の搬送方向(図8において矢印89の方向)へ延びる。可動リブ121の厚みは、スリット119の幅に対応しており、複数の可動リブ121の配置は、複数のスリット119の配置と対応している。
駆動機構105は、可動支持部88を記録用紙の搬送方向に往復動させるためのものである。駆動機構105は、排紙ローラ軸92の回転を可動支持部88へ伝達する。図10に示されるように、駆動機構105は、回転板125と、回転板125の回転運動を可動支持部88の並進運動に変換するレバー部材126(図8及び図9参照)とを有する。回転板125は、排紙ローラ軸92から動力伝達機構124を介して伝達される駆動により回転する。
図10及び図11に示されるように、回転板125は円盤形状であり、例えば樹脂や金属から構成され得る。回転板125は、円形の円盤部141と、円盤部141の上面の中央に立設された円筒軸127とを有する。円筒軸127は、プラテン42のフレーム100に回転可能に支持される。図には示されていないが、フレーム100に設けられた支軸が円筒軸127に挿入されて支持される。この支軸は、フレーム100の長手方向及び記録用紙の搬送方向に対して直交する方向、つまり上下方向に延出される。回転板125の上面には、円周方向へほぼ連続するガイド128、129が立設されている。ガイド128、129は共に軸127を中心としており、ガイド128がガイド129より径方向外側に配置されている。
回転板125は、動力伝達機構124から駆動伝達されて正転又は逆転する。ここで、図11における矢印130の方向が本明細書において正転方向とされる。ガイド128には、略V字形状の溝114及び溝115が設けられている。溝114によって、ガイド128に2つの壁面が形成される。この壁面の一方は、軸127の軸方向、すなわち回転板125の回転方向に対して直交する方向へ延びる正転規制面132であり、この壁面の他方は、正転規制面132の下縁からガイド128の周方向正転側へ斜めに延び、かつガイド128の上面137と連なる逆転許容面133である。
溝115は、円筒軸127を中心として溝114に対して90°(degree)の角度をなす位置に配置されている。溝115は、溝114と同様の形状であって、ガイド128に2つの壁面を形成する。この壁面の一方は、軸127の軸方向へ延びる正転規制面182であり、この壁面の他方は、正転規制面132の下縁からガイド128の周方向正転側へ斜めに延び、かつガイド128の上面137と連なる逆転許容面183である。後に詳述されるが、溝114は、回転板125の初期位置となる第1位置を決定し、溝115は、回転板125が初期位置から90°だけ回転した第2位置を決定する。
ガイド129にも略V字形状の溝134が設けられている。溝134により、ガイド129に2つの壁面が形成される。この壁面の一方は、軸127の軸方向、すなわち回転板125の回転方向に対して直交する方向に延びる逆転規制面135であり、この壁面の他方は、逆転規制面135の下縁からガイド129の周方向逆転側へ斜めに延び、かつガイド129の上面138と連なる正転許容面136である。
溝114、溝115及び溝134には、回転規制手段156としてのロック部材139及びロック部材140(図12参照)がそれぞれ係合され得る。ロック部材139が溝114、115のいずれかに係合すると、回転板125の正転が規制される。ロック部材140が溝134に係合すると、回転板125の逆転が規制される。
図9及び図12に示されるように、回転板125の裏面142に、案内溝143が設けられている。案内溝143は、円筒軸127を軌跡曲線を描くように形成されている。案内溝143の形状は、円筒軸127の中心を原点とする極座標系において説明される。すなわち、図12において、裏面142に沿って水平方向に延びる仮想軸144を設定した場合に、案内溝143は、R=kθ(kは定数)を満たす軌跡曲線に沿って形成されている。ここで、原点から仮想軸144の左側方向に向かう角度がθ=0であり、原点を中心とする時計回りの方向がθの正の方向である。この軌跡曲線はアルキメデス螺旋を描いている。原点と案内溝143の中心までの距離Rと角度θとは線形関係にある。ただし、本実施形態では、R=kθにしたがう軌跡曲線は、0°≦θ≦180°の範囲であり、この範囲で形成された軌跡曲線が仮想軸144を中心に左右対称(同図において上下対称)に配置されている。したがって、案内溝143は、仮想軸144を基準に上下対称に形成されたアルキメデス螺旋に沿って形成されている。
図9に示されるように、レバー部材126は、クランク形状の平板であり、可動支持部88のベース120と回転板125とを連結する。具体的には、レバー部材126の先端部145がベース120の裏面側と係合しており、かつ、レバー部材126の基端部146が回転板125の案内溝143と係合している。レバー部材126の中間部147は、プラテン42のフレーム100に支持されているが、レバー部材126とプラテン42のフレーム100との支持構造は図示されていない。なお、この支持構造の一例として、フレーム100に設けられた支軸に中間部147を回動自在に嵌合させる構造が挙げられる。これにより、レバー部材126は、中間部147を中心として回動自在である。
レバー部材126の基端部146は、回転板125の案内溝143と係合した状態において、中間部147を中心として回動する。このレバー部材126の回動がベース120に伝達される。ベース120は、フレーム100に嵌め込まれて記録用紙の搬送方向にのみスライド可能である。よって、回転板125の回転がレバー部材126を介してベース120に伝達され、ベース120が記録用紙の搬送方向にスライドする。
レバー部材126の先端部145の変位量は、レバー部材126の基端部146の変位量の所定倍となる。具体的には、この倍率は、中間部147から先端部145までの距離と中間部147から基端部146までの距離との比率に対応する。したがって、先端部145の変位量は、基端部146の変位量を所定倍に増幅したものとなる。よって、回転板125の回転量はレバー部材126によって所定倍となってベース120の搬送方向の変位量に変換される。ベース120の変位量は、可動リブ121が第1固定支持部102と第2固定支持部103との間を往復動可能な量として設定される。
図10に示されるように、動力伝達機構124は、排紙ローラ軸92に設けられたトルクリミッタ148と、歯車149〜151とを有する。なお、同図においては歯車149〜151の歯が省略されている。トルクリミッタ148は、排紙ローラ軸92に設けられたフランジ153と、摩擦板152と、押圧板154と、コイルバネ155とを有する。摩擦板152は、典型的には不織布が採用され得る。押圧板154は、摩擦板152を介してフランジ153に当接される。コイルバネ155は、押圧板154を摩擦板152と共にフランジ153に弾性的に付勢する。コイルバネ155によって押圧板154がフランジ153に押しつけられると、両者間に所定の摩擦力が発生する。この摩擦力によって、押圧板154とフランジ153との間で動力伝達が行われる。押圧板154とフランジ153との間で伝達されるトルクが一定以上となると、摩擦板154がフランジ153に対して滑り、動力伝達が行われない。コイルバネ155の弾性力を適宜設定することによって、トルクリミッタ148により動力伝達が制限されるトルクが変動する。
同図では省略されているが、押圧板154の外周面に歯が形成されており、この歯が歯車149と噛み合っている。したがって、押圧板154が回転すると歯車149も回転する。歯車149は歯車150と噛み合っており、さらに歯車150は、歯車151と噛み合っている。歯車150の回転中心軸と歯車151の回転中心軸とは直交しており、歯車150及び歯車151は傘歯車列を構成する。図10に示されるように、歯車151の外周面が回転板125の外周面と接触している。本実施形態では、歯車151と回転板125との接触により生ずる摩擦力によって、両者間でトルク伝達が行われる。なお、歯車151及び回転板125の双方に歯が形成され、両者が平歯車列を構成して駆動伝達してもよいことは勿論である。
図10に示されるように、回転板125と隣接して回転規制手段156が設けられている。回転規制手段156は、ロック部材139及びロック部材140と、コイルバネ157と、ロック部材139の姿勢を変化させる当接部材158とを有する。コイルバネ157は、ロック部材139が回転板125と係合する方向へロック部材139を弾性的に付勢する。当接部材158は、ロック部材139を姿勢変化させるべくキャリッジ38が当接する部分である。
ロック部材139は、クランク形状であり、その基端側が支持軸159によって回動自在に支持されている。したがって、ロック部材139は、支持軸159を中心として矢印160の方向へ回動可能である。ロック部材139の先端には係合爪161が設けられている。係合爪161は、回転板125における溝114の内壁面形状に対応したくさび形状であり、溝114と係合可能である。溝115も、溝114と同様の構造なので、係合爪161は溝115とも係合可能である。
ロック部材139が支持軸159を中心に回動することによって、係合爪161が溝114又は溝115に嵌め込まれた姿勢と、係合爪161が溝114及び溝115から脱出した姿勢とに姿勢変化する。本明細書において、係合爪161が溝114又は溝115に嵌め込まれた姿勢が「回転規制姿勢」と称され、係合爪161が溝114及び溝115から脱出した姿勢が「回転許容姿勢」と称される。なお、コイルバネ155の弾性付勢によって、外力を受けない常時においては、ロック部材139は回転規制姿勢を維持する。
係合爪161が溝114に係合すると、回転板125に正転方向の駆動伝達がされても、係合爪161が正転規制面132(図11参照)と当接して、回転板125の正転を制止する。これにより、回転板125は初期位置である第1位置に維持される。係合爪161が溝115に係合しても、同様に回転板125の正転が制止される。これにより、回転板125は初期位置から90°だけ回転した第2位置に維持される。
回転板125に逆転方向の駆動伝達がされた場合には、係合爪161が溝114又は溝115に係合しても、係合爪161が逆転許容面133、183(図11参照)に案内されてガイド128の上面137に到達し、ロック部材139がコイルバネ155の弾性力に抗して回転許容姿勢へ姿勢変化する。これにより、回転板125は、係合爪161の係合に拘わらず逆転可能である。
ロック部材140は、四角柱形状であり、図10では現れていないが、その下端部に係合爪が形成されている。この係合爪もロック部材139の係合爪161と同様に楔形状であり、回転板125のガイド129に設けられた溝134(図11参照)に係合する。ロック部材140は、上下方向へ移動可能であり、コイルバネ162によって常時下方へ弾性付勢されている。したがって、ロック部材140の係合爪が溝134と係合すると、その係合爪が逆転規制面135(図11参照)と当接して、回転板125の逆転を制止する。一方、ロック部材140の係合爪が溝134に係合しても、回転板125に正転方向の駆動伝達がされると、係合爪が正転許容面136(図11参照)に案内されてガイド129の上面に到達し、ロック部材140がコイルバネ162の弾性力に抗して上方へ移動する。これにより、回転板125は、ロック部材140の係合爪の係合に拘わらず正転可能である。
図10に示されるように、当接部材158はロック部材139の基端側に設けられて、支持軸159を中心としてロック部材139と一体に回動可能である。当接部材158の先端部164は、上方へ延びるレバー形状であり、キャリッジ38が当接可能である。キャリッジ38が当接部材158の先端部164に当接すると、ロック部材139が回転許容姿勢に姿勢変化する。
[画像記録における記録用紙の搬送]
複合機10は、操作パネル15において所定の操作が行われるか、外部情報機器から所定の指令が送信されることによって、画像記録の態様が選択される。画像記録の態様とは、いわゆる縁あり記録又は縁なし記録である。以下、縁なし記録が選択された際の画像記録における記録用紙の搬送が説明される。
画像記録の開始指令があると、まず、給紙トレイ20に積載された記録用紙が用紙搬送路23へ給送される。具体的には、制御部64がLFモータ71を駆動して、給紙ローラ25が回転される。給紙の際には、LFモータ71は逆転で駆動される。これにより、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が搬送方向と逆方向に回転され、給紙ローラ25が記録用紙を給送する方向に回転される。給紙トレイ20から用紙搬送路23に給送された記録用紙は、用紙搬送路23に沿って下方から上方へ反転するように搬送される。
用紙搬送路23において、記録用紙の先端がレジセンサ95に当接してレジセンサ95がONとなる。記録用紙がさらに搬送されることにより、記録用紙の先端が搬送ローラ60及びピンチローラに当接する。搬送ローラ60は、搬送方向と逆方向に回転されているので、この状態で記録用紙の先端が搬送ローラ60及びピンチローラに挟持されず、記録用紙は、搬送ローラ60及びピンチローラに当接した状態でレジスト処理される。レジスト処理における記録用紙の先端の位置が、図13においてレジスト位置174として示されている。記録用紙がレジスト処理された後、制御部64はLFモータ71を正転で駆動する。これにより、搬送ローラ60が搬送方向へ回転され、レジスト処理された記録用紙が搬送ローラ60及びピンチローラにニップされる。その後、記録用紙の先端は、図13において線図167が示すようにプラテン42上を通過する。
給紙からレジスト処理されるまでの間では、排紙ローラ62が搬送方向と逆方向に回転するが、前述されたようにロック部材140によって回転板125の逆転が制止されることにより、トルクリミッタ148に一定以上のトルクが発生して滑りが生じ、回転板125が制止された状態で排紙ローラ62のみが逆転する。仮に、記録用紙が給送される際に回転板125が初期位置でなければ回転板125が逆転するが、回転板125が初期位置まで逆転すると、ロック部材140によって回転板125の逆転が制止される。このようなLFモータ71の逆転駆動は、回転板125が初期位置にイニシャライズされるための動作として、複合機10の電源オンのときやエラー解除後に行われるように設定されていてもよい。
縁なし記録に際して、記録用紙の搬送に追従して可動支持部88がスライドされる。詳述するに、記録用紙の先端がレジスト位置174へ到達したときには、可動支持部88はプラテン42の中央に位置し(図14(a))、レバー部材126の基端部146は、回転板125の案内溝143の所定位置に配置されている。この案内溝143の所定位置とは、図12において参照符号165で示される位置である。換言すれば、参照符号165で示される所定位置とは、円筒軸127の中心を通り仮想軸144と直交する仮想軸172が案内溝143と交差する位置である。なお、図14(a)における可動支持部88、回転板125及びレバー部材126の相対的位置関係が、回転板125の初期位置に対応する各部材の初期位置である。
レジスト処理後に記録用紙の先端がプラテン42上へ到達すると、図13における線図168が示すように、LFモータ71が正転で間欠駆動される。また、記録用紙の先端がプラテン42に到達する前後において所定のタイミングでCRモータ73が駆動されてキャリッジ38が当接部材158に当接する。キャリッジ38の当接により当接部材158が姿勢変化するタイミングが線図169、175,176,177により示されている。線図169などにおいて、ロック部材139の係合爪161が溝114又は溝115から退避するような当接部材158の姿勢変化がONである。
当接部材158がONとなると、ロック部材139の係合爪161と溝114との係合が解除され、回転板125が正転可能となる。したがって、レジスト処理後に、LFモータ71によって排紙ローラ軸92が搬送方向に回転されると、この回転が動力伝達機構124を介して回転板125に伝達され、回転板125が正転する。そして、回転板125の回転がレバー部材126により可動支持部88へ伝達され、可動支持部88の可動リブ121が図13の線図170に示されるように変位する。
回転板125が90°だけ正転すると、係合爪161が溝115と係合する。これにより、回転板125は、その位置からさらに正転することが制止される。回転板125が正転すると、レバー部材126の基端部146は、図12において所定位置165から矢印171の方向に相対的に移動する。基端部146の所定位置165と円筒軸127との距離は、回転板125の回転に伴って漸次小さくなるので、レバー部材126は、中間部147を揺動中心として揺動し、その結果、可動支持部88が上記搬送方向上流側へ移動する。回転板125の回転角度が90°に達して正転が制止されたとき、可動支持部88は搬送方向の上流端にある(図14(b))。可動支持部88は、記録用紙の先端が第1固定支持部102を通過する前に、前述された上流端へ移動して停止する。このとき、可動支持部88の可動リブ121は、搬送方向に対して第1固定支持部102とほぼ同位置となる(図15(a))。
図15に示されるように、記録用紙184の先端がプラテン42へ到達してさらに搬送されると、記録用紙184は、第1固定支持部102及び可動リブ121に支持される。換言すれば、記録用紙184が、第1固定支持部102及び可動リブ121を上側から覆う(図15(b))。その後、所定のタイミングでCRモータ73が駆動されて、線図175に示されるタイミングでキャリッジ38が当接部材158に当接する。これにより、前述と同様にロック部材139がONとなって、係合爪161と溝115との係合が解除され、回転板125が再び正転可能となる。その結果、LFモータ71の間欠駆動により、可動リブ121が線図170に示されるように、搬送方向の下流側へ変位する。記録用紙184も、LFモータ71の間欠駆動によって回転する搬送ローラ60によって搬送されるので、線図167に示されるように、可動リブ121に支持された状態でプラテン42上を搬送される。可動支持部88、回転板125及びレバー部材126の相対的位置関係は、図14(a)〜(d)の順に変化する。
回転板125の回転角度が90°を超え270°まで到達する範囲では、基端部146の位置165と円筒軸127との距離は、回転板125の回転に伴って漸次大きくなる。したがって、図14(b)〜(d)に示されるように、レバー部材126は、中間部147を揺動中心として揺動し、その結果、可動支持部88は、搬送方向の下流側へ移動する。回転板125の回転角度が270°に達すると、可動リブ121は、搬送方向に対して第2固定支持部103とほぼ同じ位置となる。さらに、回転板125が回転することにより、基端部146の位置165と円筒軸127との距離は、回転板125の回転に伴って漸次小さくなる。したがって、レバー部材126は、中間部147を揺動中心として揺動し、可動支持部88は、搬送方向の上流側へ移動する。回転板125の回転角度が360°に達すると、可動支持部88は、回転板125の初期位置に対応する位置に復帰する。
記録用紙184の搬送が間欠している間に、キャリッジ38とともにスライドされる記録ヘッド39から各色のインク滴が選択的に噴出されて記録用紙184に着弾する。縁なし記録では、記録用紙184の周囲の縁までインク滴が噴出されるが、仮に記録用紙184へ着弾しないインク滴があったとしても、記録用紙184に覆われている可動リブ121にインク滴が着弾することはない。
回転板125が初期位置に復帰すると、前述されたように、係合爪161が溝114に係合することによって回転板125の正転が制止される。一方、LFモータ71の駆動力は搬送ローラ60及び排紙ローラ軸92に伝達されて、記録用紙184は間欠して搬送される。そして、線図173に示されるように、記録用紙184の後端がプラテン42へ到達する。記録用紙184の後端の位置は、レジセンサ95の検知信号に基づいて判定される。そして、所定のタイミングでキャリッジ38が当接部材158に当接され、線図176に示されるように、当接部材158がONとなる。その結果、前述と同様に、ロック部材139の係合爪161と溝114との係合が解除され、回転板125が正転可能となる。
回転板125の正転によって、線図170に示されるように可動リブ121が変位する。可動支持部88、回転板125及びレバー部材126の相対的位置関係は、再び図14(b)〜(d)の順に変化する。可動リブ121が搬送方向の上流端へ移動すると、係合爪161と溝115との係合によって回転板125の正転が制止され、可動リブ121が上流端で停止する。そして、記録用紙184の後端が第1固定支持部102を通過する前に、線図177に示されるタイミングでキャリッジ38が当接部材158に当接する。これにより、係合爪161と溝115との係合が解除され、回転板125が正転する。その結果、可動リブ121は、線図170が示すように変位する。その際に、記録用紙184は、可動リブ121に支持された状態で搬送される。可動支持部88、回転板125及びレバー部材126の相対的位置関係は、図14(b)〜(d)の順に変化する。
記録用紙184の搬送が間欠している間に、キャリッジ38とともにスライドされる記録ヘッド39から各色のインク滴が選択的に噴出されて記録用紙184に着弾する。縁なし記録では、記録用紙184の周囲の縁までインク滴が噴出されるが、仮に記録用紙184へ着弾しないインク滴があったとしても、記録用紙184に覆われている可動リブ121にインク滴が着弾することはない。回転板125が一回転すると、回転板125は初期位置に復帰する。画像記録が終了すると、LFモータ71は正転で連続駆動され、記録用紙184が排紙トレイ21へ排出される。
ここでは詳細に説明されないが、プリンタ部11は、縁有り記録も行い得る。縁有り記録では、可動支持部88が記録用紙184に追従して移動する必要はないので、キャリッジ38が当接部材158に当接されることはなく、回転板125は初期位置に停止したままである。可動支持部88が常時においてプラテン42の中央に配置されているので、記録用紙184の先端又は後端が第1固定支持部102と第2固定支持部103との間に垂れることがなく、記録ヘッド39と記録用紙184との間の距離(ヘッドギャップ)が一定に保たれる。
[プラテン42のクリーニング方法]
複合機10は、操作パネル15において所定の操作が行われるか、外部情報機器から所定の指令が送信されることによって、クリーニングモードが選択され得る。クリーニングモードが実行されると、本発明にかかるクリーニング方法が行われる。前述されたように、記録ヘッド39から噴出されたインクの一部は、インクミストとして浮遊しプラテン42の上面109に付着する。プラテン42の上面109に付着したインクミストは、成長して大きなインク滴となり得る。このインク滴は、残留インクとして記録用紙を汚す原因となる。このような残留インクを除去すべくクリーニングが行われる。クリーニングを行うタイミングは任意であり、例えば、残留インクによる記録用紙の汚れを発見したユーザが任意に行ってもよいし、所定量の画像記録が行われた後にクリーニングを行うよう警告表示がなされるように予め設定されていてもよい。
クリーニングにおける各動作は、所定のプログラムとしてROM66に格納されており、そのプログラムに基づいて制御部64がプリンタ部11を動作させる。また、クリーニングの実行に先立って、給紙トレイ20にクリーニングシート197(図17参照)。が装填される。クリーニングシート197は、記録用紙と同様のシートであって、インク滴を吸収保持可能なものである。なお、クリーニングシート197が本発明におけるシートに相当するが、クリーニングシート197は専用品として準備される必要はなく、画像記録に用いられる普通紙が本発明におけるシートとして用いられてもよい。
以下に詳述されるクリーニング方法は、主として以下に示されるS1〜S5の各ステップを含む。なお、本発明において、以下にS1,S4,S5として示される各ステップは省略することが可能であり、これら各ステップを省略したクリーニングモードがプリンタ部11に設定されてもよい。
(S1)クリーニングシート197を湾曲変形させるステップ(本発明の第5ステップに相当)。
(S2)可動支持部88が第1固定支持部102側又は第2固定支持部103側へ移動されるステップ(本発明の第1ステップに相当)。
(S3)クリーニングシート197の先端又は後端を第1固定支持部102と第2固定支持部103との間の上面109へ接触されるステップ(本発明の第2ステップに相当)。
(S4)クリーニングシート197の先端又は後端を上面109に接触させた状態で、クリーニングシート197を往復動させるステップ(本発明の第3ステップに相当)。
(S5)クリーニングシート197の先端又は後端を上面109から離間させて乾燥するステップ(本発明の第4ステップ)に相当。
クリーニングの開始指令があると、まず、給紙トレイ20に装填されたクリーニングシート197が用紙搬送路23へ給送される。具体的には、制御部64がLFモータ71を駆動して、給紙ローラ25が回転される。このときにLFモータ71は逆転で駆動される。これにより、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が搬送方向と逆方向に回転され、給紙ローラ25がクリーニングシート197を給送する方向に回転される。給紙トレイ20から用紙搬送路23に給送されたクリーニングシート197は、用紙搬送路23に沿って下方から上方へ反転するように搬送される。
クリーニングシート197の先端が用紙搬送路23の湾曲部17に到達すると、クリーニングシート197の搬送が一時停止される。具体的には、制御部64がLFモータ71の駆動を停止し、その停止時間をカウントする。停止時間が予め設定された時間となると、LFモータ71の駆動を再開する。これにより、クリーニングシート197の先端部分は、湾曲部17に沿って湾曲された状態のままで停止時間だけ放置される。湾曲部17において、クリーニングシート197は、記録ヘッド39と対向する面が外側であるので、この一時停止によって、クリーニングシート197の先端部分がプラテン42の上面109へ接触する側へ湾曲変形される(S1)。なお、この一時停止における停止時間は、クリーニングシート197を湾曲変形可能な時間としてROM66に予め設定され得る。
クリーニングシート197が再び搬送されると、クリーニングシート197の先端がレジセンサ95に当接してレジセンサ95がONとなる。クリーニングシート197がさらに搬送されると、クリーニングシート197の先端側が搬送ローラ60及びピンチローラに狭持されて搬送される。なお、クリーニングにおいては、前述されたレジスト処理は任意であるが、制御部64は、LFモータ71の回転を逆転方向から正転方向へ切り換えるために、LFモータ71の駆動を一時停止する(図16における参照符号188)。LFモータ71が正転で駆動されると、搬送ローラ60が搬送方向へ回転され、クリーニングシート197が搬送ローラ60及びピンチローラにニップされてプラテン42上を搬送される。プラテン42上を搬送されるクリーニングシート197の先端は、図16において線図187により示される。
なお、給紙からレジスト処理されるまでの間では、排紙ローラ62が搬送方向と逆方向に回転するが、前述されたようにロック部材140によって回転板125の逆転が制止されることにより、トルクリミッタ148に制限以上のトルクが発生して滑りが生じ、回転板125が制止された状態で排紙ローラ62のみが逆転する。
クリーニングに際して、クリーニングシート197の搬送に対して所定のタイミングで可動支持部88がスライドされる。詳述するに、クリーニングシート197の先端が搬送ローラ60と当接する位置188へ到達する前に、CRモータ73が駆動されてキャリッジ38が当接部材158に当接する。キャリッジ38の当接により当接部材158が姿勢変化するタイミングが線図189により示される。線図189において、ロック部材139の係合爪161が溝114又は溝115から退避するような当接部材158の姿勢変化がONである。
当接部材158がONとなると、ロック部材139の係合爪161と溝114との係合が解除され、回転板125が正転可能となる。したがって、LFモータ71によって排紙ローラ軸92が搬送方向に回転されると、この回転が動力伝達機構124を介して回転板125に伝達され、回転板125が正転する。そして、回転板125の回転がレバー部材126により可動支持部88へ伝達され、可動支持部88の可動リブ121が図16の線図190に示されるように変位する。
回転板125が90°だけ正転すると、係合爪161が溝115と係合する。これにより、回転板125は、その位置からさらに正転することが制止される。なお、係止爪161と溝115との係合は回転板125の逆転を制止しないので、回転板125は、その位置から逆転することは可能である。回転板125が初期位置から正転すると、レバー部材126の基端部146は、図12において所定位置165から矢印171の方向に相対的に移動する。基端部146の所定位置165と円筒軸127との距離は、回転板125の回転に伴って漸次小さくなるので、レバー部材126は、中間部147を揺動中心として揺動し、その結果、可動支持部88が上記搬送方向上流側へ移動する。回転板125の回転角度が90°に達して正転が制止されたとき、可動支持部88は搬送方向の上流端にある(図14(b))。このとき、可動支持部88の可動リブ121は、搬送方向に対して第1固定支持部102とほぼ同位置となる(S2)。
クリーニングシート197の先端がプラテン42へ到達すると、クリーニングシート197は、第1固定支持部102及び可動リブ121に支持される。さらにクリーニングシート197が搬送されると、クリーニングシート197の先端部分は、第1固定支持部102及び可動リブ121を超えて第2固定支持部103へ進む。このとき、可動リブ121は搬送方向の上流側で制止されたままである。換言すれば、第1固定支持部102と第2固定支持部103との間に可動リブ121がない状態である。そうすると、クリーニングシート197の先端が第2固定支持部103に到達する前にクリーニングシート197が撓んで下方へ垂れる。さらに、前述されたように、クリーニングシート197の先端部分は、上面109へ接触する側へ湾曲変形している。これにより、図17(a)に示されるように、クリーニングシート197の先端は、第2固定支持部103へ到達する前にプラテン42の上面109に接触する(S3)。
クリーニングシート197はインクを吸収可能なので、クリーニングシート197の先端がプラテン42の上面109に接触することによって、上面109に付着しているインク滴198がクリーニングシート197に吸収される。
制御部64は、クリーニングシート197の先端が第2固定支持部103へ到達する直前のタイミングで、LFモータ71を所定の時間間隔で正転方向と逆転方向とを交互にして駆動させる(図16における線図191)。これにより、搬送ローラ60が搬送方向とその逆方向とに交互に回転して、クリーニングシート197が搬送方向に対して前進と後退とを繰り返す。これにより、クリーニングシート197の先端が上面109に対して摺動する(S4)。なお、LFモータ71を回転方向を切り換えて駆動する回数は、本実施形態にでは3回に設定されているが、この回数は任意に変更されてよい。また、正転方向又は逆転方向へ駆動する時間は、クリーニングシート197の先端が摺動する範囲を考慮して設定される。
一方、前述されたように、係合爪161と溝115との係合によって、回転板125は正転方向への回転が制止され、かつ逆転方向への回転が許容されているので、可動リブ121は、第1固定支持部102付近において、搬送方向へ前進と後退とを繰り返すが、この可動リブ121の動きは、クリーニングシート197の先端を上面109から離すものではない。これにより、クリーニングシート197の先端が摺動する範囲において、プラテン42の上面109に付着したインク滴198が除去される。
つづいて、可動リブ121が初期位置へ向かって戻されるとともに、クリーニングシート197が搬送方向と逆方向へ後退される。詳細には、制御部64は、LFモータ71を逆転方向に駆動させる。これにより、回転板125は、前述されたように90°回転した位置から初期位置へ向かって逆転する。これを受けて、可動リブ121は、第1固定支持部102付近から、第1固定支持部102と第2固定支持部103との中央付近へ、つまり初期位置へ向かってスライドされる。このとき、下方へ垂れていたクリーニングシート197の先端が可動リブ121に支持されて、クリーニングシート197の先端がプラテン42の上面109から離間する。そして、クリーニングシート197の先端が可動リブ102より搬送方向下流側にある状態で、つまりクリーニングシート197が可動リブ121を覆っている状態で、制御部64がLFモータ71の駆動を停止する。これにより、図17(b)に示されるように、インクを吸収したクリーニングシート197の先端は、プラテン42の上面109から離間され、かつ可動リブ121とは接触しない状態となる。この状態で予め設定された乾燥時間だけLFモータ71が停止されることにより、インクを吸収したクリーニングシート197の先端が乾燥される(S5)。この乾燥時間は、クリーニングシート197の材質や吸収されるインク量などを考慮して予め設定されてROM66に格納され得る。
所定の乾燥時間が経過した後、可動リブ121が初期位置へ戻される。具体的には、制御部64がLFモータ71を逆転方向へ駆動させる。これにより、回転板125が逆転されて初期位置へ復帰し、ロック部材139の係合爪161が溝114に係合して回転板125の正転が制止され、かつロック部材140の係合爪が溝134に係合して回転板125の逆転が制止される。一方、LFモータ71の駆動力は搬送ローラ60に伝達されて、クリーニングシート197は搬送方向と逆方向へ搬送される。このとき、クリーニングシート197の先端が可動リブ121の上端を摺動するが、その先端は既に乾燥されているのでインクが可動リブ121に付着することがない。可動リブ121が初期位置へ復帰した後、制御部121はLFモータ71を正転方向へ連続して駆動させる。これにより、線図188に示されるように、クリーニングシート197の先端がプラテン42上を通過する。
クリーニングシート197の後端が用紙搬送路23の湾曲部17に到達すると、クリーニングシート197の搬送が一時停止される。具体的には、制御部64がLFモータ71の駆動を停止し、その停止時間をカウントする。停止時間が予め設定された時間となると、LFモータ71の駆動を再開する。これにより、クリーニングシート197の後端部分は、湾曲部17に沿って湾曲された状態のままで停止時間だけ放置される。これにより、先端部分と同様にして、クリーニングシート197の後端部分がプラテン42の上面109へ接触する側へ湾曲変形される(S1)。
クリーニングシート197が再び搬送されると、クリーニングシート197の後端がレジセンサ95を通過してレジセンサ95がOFFとなり、それから所定時間が経過した後に、クリーニングシート197の後端がプラテン42上を搬送される。プラテン42上を搬送されるクリーニングシート197の後端は、図16において線図192により示される。なお、クリーニングシート197の後端が搬送ローラ60及びピンチローラを通過した後は、クリーニングシート197は排紙ローラ62及び拍車63に狭持されて搬送される。
再び、クリーニングシート197の搬送に対して所定のタイミングで可動支持部88がスライドされる。詳述するに、クリーニングシート197の後端がプラテン42へ到達する前に、CRモータ73が駆動されてキャリッジ38が当接部材158に当接する。キャリッジ38の当接により当接部材158が姿勢変化するこのタイミングが線図193により示される。これにより、前述と同様に、回転板125が正転可能となり、可動リブ121が図16の線図195に示されるように変位する。
回転板125が90°だけ正転すると、係合爪161が溝115と係合する。これにより、回転板125は、その位置からさらに正転することが制止され、可動リブ121が第1固定支持部102と同等の位置となる。その後、再びCRモータ73が駆動されてキャリッジ38が当接部材158に当接する。このタイミングが線図194により示される。これにより、回転板125が更に正転可能となり、可動リブ121が第1固定支持部102から第2固定支持部103へ向かってスライドする。回転板125の回転角度が90°を超え270°へ到達すると、図14(b)〜(d)に示されるように、レバー部材126は、中間部147を揺動中心として揺動し、その結果、可動リブ121は、搬送方向に対して第2固定支持部103とほぼ同じ位置となる。
このとき、クリーニングシート197の後端は第1固定支持部102を超えて第2固定支持部103へ進んでいるが、第1固定支持部102と第2固定支持部103との間に可動リブ121は存在しない。そうすると、クリーニングシート197の後端が第2固定支持部103に到達する前にクリーニングシート197が撓んで下方へ垂れる。さらに、前述されたように、クリーニングシート197の後端部分は、上面109へ接触する側へ湾曲変形している。これにより、図18(a)に示されるように、クリーニングシート197の後端は、第2固定支持部103へ到達する前にプラテン42の上面109に接触する(S3)。
クリーニングシート197はインクを吸収可能なので、クリーニングシート197の後端がプラテン42の上面109に接触することによって、上面109に付着しているインク滴199がクリーニングシート197に吸収される。
制御部64は、クリーニングシート197の後端が第1固定支持部102を通過した直後のタイミングで、LFモータ71を所定の時間間隔で正転方向と逆転方向とを交互にして駆動させる(図16における線図196)。これにより、排紙ローラ61が搬送方向とその逆方向とに交互に回転して、クリーニングシート197が搬送方向に対して前進と後退とを繰り返す。これにより、クリーニングシート197の後端が上面109に対して摺動する(S4)。なお、LFモータ71を回転方向を切り換えて駆動する回数は、本実施形態にでは3回に設定されているが、この回数は任意に変更されてよい。また、正転方向又は逆転方向へ駆動する時間は、クリーニングシート197の後端が摺動する範囲を考慮して設定される。
一方、回転板125は正転方向及び逆転方向のいずれへの回転も制止されないので、可動リブ121は、第2固定支持部103付近において、搬送方向へ前進と後退とを繰り返すが、この可動リブ121の動きは、クリーニングシート197の後端を上面109から離すものではない。これにより、クリーニングシート197の後端が摺動する範囲において、プラテン42の上面109に付着したインク滴199が除去される。
つづいて、可動リブ121が初期位置へ向かって戻されるとともに、クリーニングシート197が搬送方向へ搬送される。詳細には、制御部64は、LFモータ71を正転方向に駆動させる。これにより、回転板125は、前述されたように270°回転した位置から更に正転する。これを受けて、可動リブ121は、第2固定支持部103付近から、第1固定支持部102と第2固定支持部103との中央付近へ、つまり初期位置へ向かってスライドされる。このとき、下方へ垂れていたクリーニングシート197の後端が可動リブ121に支持されて、クリーニングシート197の後端がプラテン42の上面109から離間する。そして、クリーニングシート197の後端が可動リブ102より搬送方向上流側にある状態で、つまりクリーニングシート197が可動リブ121を覆っている状態で、制御部64がLFモータ71の駆動を停止する。これにより、図18(b)に示されるように、インクを吸収したクリーニングシート197の後端は、プラテン42の上面109から離間され、かつ可動リブ121とは接触しない状態となる。この状態で予め設定された乾燥時間だけLFモータ71が停止されることにより、インクを吸収したクリーニングシート197の後端が乾燥される(S5)。この乾燥時間は、クリーニングシート197の材質や吸収されるインク量などを考慮して予め設定されてROM66に格納され得る。
所定の乾燥時間を経過した後、可動リブ121が初期位置へ戻される。具体的には、制御部64がLFモータ71を正転方向へ駆動させる。これにより、回転板125が正転されて初期位置へ復帰し、係合爪161が溝114に係合して回転板125の正転が制止され、かつロック部材140の係合爪が溝134に係合して回転板125の逆転が制止される。一方、LFモータ71の駆動力は排紙ローラ61へ伝達されて、クリーニングシート197は搬送方向へ搬送される。このとき、クリーニングシート197の後端が可動リブ121の上端を摺動して通過するが、その後端は既に乾燥されているのでインクが可動リブ121に付着することがない。また、さらにLFモータ71が正転方向へ連続して駆動されることにより、線図192に示されるように、クリーニングシート197の後端がプラテン42上を通過し、排紙ローラ61及び拍車62を通過して排紙トレイ21へ排出されるが、クリーニングシート197の後端は既に乾燥されているのでインクが排紙ローラ61や拍車62に付着することがない。
[本実施形態による作用効果]
本実施形態によれば、可動リブ121が搬送方向の上流側又は下流側へ移動して、第1固定支持部102又は第2固定支持部103のいずれか一方にのみ支持されたクリーニングシート197の先端又は後端が、第1固定支持部102と第2固定支持部103との間へ垂れ込んでプラテン42の上面109に接触するので、プラテン42の上面109に残留したインク滴198,199をクリーニングシート197が吸収して除去する。これにより、プラテン42の上面109をクリーニングできる。
また、前述されたクリーニングにおいて、制御部64が搬送機構を介して、クリーニングシート197の先端又は後端が上面109に接触した状態において、クリーニングシート197を搬送方向へ往復動させるので、クリーニングシート197の先端又は後端がプラテン42の上面109を摺動する。これにより、クリーニングシート197が摺動する範囲におけるインク滴198,199が吸収除去される。
また、前述されたクリーニングにおいて、制御部64が駆動機構及び搬送機構を介して、可動リブ121を第1固定支持部102と第2固定支持部103との間の中央付近へ移動させることにより、クリーニングシート197の先端又は後端がプラテン42の上面109から離間され、その後、所定の乾燥時間だけ可動リブ121が待機されるとともにクリーニングシート197の搬送が停止されることにより、インクを吸収したクリーニングシート197の先端部分又は後端部分が乾燥されるので、その後にクリーニングシート197が搬送されても、可動リブ121や排紙ローラ61などにインクが付着しない。
また、前述されたクリーニングにおいて、制御部64が搬送機構を介して、搬送路23における湾曲部17においてクリーニングシート197の搬送を一時停止することによって、クリーニングシート197の先端又は後端をプラテン42の上面109に接触する曲げ方向へ湾曲変形させるので、クリーニングシート197が第1固定支持部102と第2固定支持部103との間に垂れやすくなるという利点がある。
[変形例]
なお、本発明は以下に示される変形例により実施されてもよい。
前述されたクリーニングにおいて、制御部64は、クリーニングシート197に対して記録ヘッド39からインクを噴出させて、ピンチェック又はテスト印字を行ってもよい。前述された実施形態では、クリーニングシート197の先端がプラテン42の上面109に接触して所定の乾燥時間が経過してから、クリーニングシート197の後端がプラテン42の上面109に接触するまでの間においては、制御部64がLFモータ71を正転方向へ連続駆動し、搬送ローラ60及び排紙ローラ61によってクリーニングシート197が連続搬送されるが、図16に示されるように、可動リブ121が初期位置へ復帰されると、クリーニングシート197は、第1固定支持部102、第2固定支持部103、及び可動リブ121によって支持されて、クリーニングシート197とのヘッドギャップ(記録ヘッド39からクリーニングシート197までの距離)が一定に保たれる。
したがって、前述された間において、記録ヘッド39のピンチェック又はテスト印字を行うことにより、クリーニングシート197の上端部及び下端部以外の領域を有効活用することができる。また、プラテン42のクリーニングと、ピンチェック又はテスト印字を同時に行えるので、メンテナンスに要する時間が短縮される。なお、ピンチェックとテスト印字とは、1枚のクリーニングシート197に対していずれか一方のみを行っても双方を行ってもよい。また、ピンチャック又はテスト印字における記録ヘッド39の各ピン(ノズル)からのインク噴出タイミングは公知のタイミングが採用できる。
また、本実施形態では、回転板125の正転が初期位置から90°だけ回転された位置で制止されることとしたが、回転板125の正転又は逆転を制止する回転位置は、本発明の要旨を変更しない範囲で変更されてもよい。例えば、回転板125の正転及び逆転を初期位置から90°及び270°だけ回転された2つの位置において制止すれば、可動リブ121は、第1固定支持部102付近及び第2固定支持部103付近の2つの位置で一旦制止され、その後にキャリッジ38が当接部材158が姿勢変化させない限りスライドしない。そうすると、LFモータ71が正転方向及び逆転方向に交互に回転されてクリーニングシート197の先端又は後端がプラテン42の上面109を摺動する際に、可動リブ121が連動してスライドすることがない。
一方、回転板125の回転を初期位置以外では制止しないこととすれば、LFモータ71が正転方向及び逆転方向に交互に回転されてクリーニングシート197の先端又は後端がプラテン42の上面109を摺動する際に、可動リブ121が連動してスライドすることとなるが、本実施形態においてクリーニングシート197の後端がプラテン42の上面109を摺動するタイミングのように、可動リブ121が所定範囲でスライドしてもクリーニングシート197の先端又は後端が上面109から離間しないようなタイミング及び摺動範囲を設定すればよい。