以下、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が詳細に説明される。なお、本実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更され得る。
[図面の説明]
図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。図2は、この複合機10の内部構成を示す縦断面図である。図3は、プリンタ部11の主要構成を示す部分拡大断面図である。図4は、プリンタ部11の主要部を示す平面図である。図5は、プリンタ部11の主要部を示す斜視図である。図6は、プラテン42の底面側からみた可動支持部88の拡大斜視図である。図7は、プラテン42の天板109の部分拡大斜視図である。図8は、図7におけるVIII−VIII断面を示す断面図である。図9は、図8におけるIX−IX断面であって、ベース120が初期位置にある状態を示す断面図である。図10は、図8におけるIX−IX断面であって、ベース120が搬送方向上流側のスライド端にある状態を示す断面図である。図11は、図8におけるIX−IX断面であって、ベース120が搬送方向下流側のスライド端にある状態を示す断面図である。
[複合機10の概略構成]
複合機10は、プリンタ部11及びスキャナ部12を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。複合機10のうちプリンタ部11が、本発明に係るインクジェット記録装置に相当する。したがって、複合機10においてプリンタ機能以外の機能は任意のものであり、本発明に係るインクジェット記録装置は、例えばスキャナ部12が省略された単機能のプリンタとして実施されてもよい。
複合機10のプリンタ部11は、主にコンピュータやデジタルカメラなどの外部情報機器と接続され得る。外部情報機器から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、プリンタ部11が被記録媒体としての記録用紙に画像や文書を記録する。また、複合機10にはカード形式のメモリなどの各種記憶媒体が装着され得る。この記憶媒体に記憶された画像データなどに基づいて、プリンタ部11が記録用紙に画像を記録することも可能である。
図1に示されるように、複合機10の外形は、横幅及び奥行きが高さよりも大きい幅広薄型の略直方体である。複合機10の下部がプリンタ部11である。複合機10は、正面側に開口13を有する。開口13の内側に、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に設けられている。給紙トレイ20には、複数枚の記録用紙が保持される。画像記録に際して、給紙トレイ20に保持された記録用紙がプリンタ部11の内部へ給送されて所望の画像が記録され、画像記録後の記録用紙が排紙トレイ21へ排出される。
複合機10の上部がスキャナ部12である。スキャナ部12は、いわゆるフラットベッドスキャナとして構成されているが、スキャナ部12の構成は本発明に直接関係しないので詳細な説明が省略される。
複合機10の正面上部に操作パネル15が設けられている。操作パネル15は、プリンタ部11やスキャナ部12を操作するための装置であって、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機10は、操作パネル15からの操作指示に基づいて動作する。複合機10が外部情報機器に接続されている場合には、この外部情報機器からプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機10が動作する。また、複合機10の正面の左上部にスロット部16が設けられている(図1参照)。カード形式のメモリカードは、スロット部16に装着されてデータの読み書きが可能となる。
[プリンタ部11の概略構成]
以下、プリンタ部11の概略構成が説明される。図2に示されるように、複合機10の底側に給紙トレイ20が配置されている。給紙トレイ20には、A4サイズ以下の記録用紙が保持可能である。もっとも、給紙トレイ20にスライドトレイを設けてトレイ面を拡大可能とすれば、A4サイズより大きな記録用紙を給紙トレイ20に保持させることもできる。
給紙トレイ20の奥側には分離板22が設けられている。分離板22は、その上端がプリンタ部11の背面側へ傾倒されている。分離板22によって、給紙トレイ20から重送された記録用紙が分離され、かつ分離された最上位置の記録用紙が上方へ案内される。
排紙トレイ21は、給紙トレイ20の上側に上下二段に配置されている。排紙トレイ21は、画像記録後の記録用紙を積載状態で保持する。給紙トレイ20から排紙トレイ21へは、後述される用紙搬送路23によって記録用紙が搬送可能である。画像記録は、記録用紙の搬送過程において画像記録ユニット24によって行われる。
図3に示されるように、給紙トレイ20の上側に給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ供給する。給紙ローラ25は、アーム26の先端に支持されている。給紙ローラ25は、図に示されていないLFモータを駆動源として、アーム26に沿って設けられた駆動伝達機構27を介して駆動されて回転される。この駆動伝達機構27は、複数のギアが相互に噛合されてなり、各ギアの回転が順次伝達されることによって、LFモータの駆動を給紙ローラ25へ伝達する。
アーム26は、その基端部が基軸28に支持されて、基軸28を回動中心軸として回転可能である。このアーム26の回転によって、給紙ローラ25が、給紙トレイ20に対して接離可能に上下動する。アーム26が下側へ回転すると、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が分離板22へ送り出される。記録用紙は、その先端が分離板22に当接して上方へ案内され、用紙搬送路23へ送り込まれる。給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、この記録用紙は分離板22との当接によって制止される。
用紙搬送路23は、給紙トレイ20における分離板22の上側から、上方へUターンして装置正面側へ延びるいわゆるUターンパスとして形成されている。このUターンパスのうち、装置背面側において湾曲している部分が湾曲部17と称される。用紙搬送路23は、画像記録ユニット24などが配設されている箇所以外は、外側ガイド面と内側ガイド面とによって区画形成されている。
[画像記録ユニット24]
図3に示されるように、画像記録ユニット24は、用紙搬送路23において湾曲部17より搬送方向の下流側に配置されている。画像記録ユニット24は、キャリッジ38と、インクジェット方式の記録ヘッド39とを備えている。記録ヘッド39は、キャリッジ38に搭載されている。キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向と直交する水平方向へ往復動する。図3には現れていないが、複合機10の内部には、記録ヘッド39とは独立してインクカートリッジが配置されている。このインクカートリッジからインクチューブ41(図4参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが記録ヘッド39に供給される。
各図には現れていないが、記録ヘッド39は、その下面に複数のノズルを有する。各ノズルは、C・M・Y・Bkの各色インクに対応して記録用紙の搬送方向にそれぞれ1列に配置されている。各ノズル内に設けられたピエゾ素子の振動によって、各ノズルから各色インクのインク滴が噴出される。キャリッジ38が往復動される間に、記録ヘッド39から各色インクが微小なインク滴として選択的に噴出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像が記録される。なお、各ノズルの搬送方向のピッチや数は、記録される画像の解像度などに応じて適宜設定される。また、カラーインクの種類数に応じて各色に対応したノズルの列数が増減される。
図4及び図5に示されるように、用紙搬送路23の上側において、一対のガイドレール43、44が配置されている。ガイドレール43、44は、記録用紙の搬送方向(図4において紙面の上側から下側に向かう方向)に所定距離が隔てられて、記録用紙の搬送方向と直交する方向(図4において左右方向)を長手方向として配置されている。ガイドレール43、44は、プリンタ部11の筐体内に設けられており、プリンタ部11を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成する。
記録用紙の搬送方向における上流側に配設されたガイドレール43は、ほぼ平板形状である。ガイドレール43における長手方向(図4において左右方向)の長さは、キャリッジ38の往復動範囲より長く設定されている。記録用紙の搬送方向における下流側に配設されたガイドレール44も、ほぼ平板形状であり、その長手方向の長さはガイドレール43の長さと同等である。また、ガイドレール44の搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。
キャリッジ38は、ガイドレール43、44を跨ぐように配置されている。つまり、キャリッジ38の搬送方向上流側の端部がガイドレール43上に載置され、キャリッジ38の搬送方向下流側の端部がガイドレール44上に載置されている。各図には現れていないが、キャリッジ38は、ガイドレール44の縁部45を、ローラ対などによって挟み込んでいる。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、かつ、ガイドレール43、44の長手方向、つまり記録用紙の搬送方向と直交する方向へ摺動可能である。この摺動に際して上記ローラ対が回転しながら縁部45に沿ってスライドする。
ガイドレール44の上面にベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、駆動プーリ47、従動プーリ48及び無端環状のタイミングベルト49を有する。駆動プーリ47及び従動プーリ48は、ガイドレール44の長手方向における両端付近にそれぞれ配置されている。タイミングベルト49は、駆動プーリ47と従動プーリ48との間に架け渡されている。タイミングベルト49の内側には複数の歯が設けられており、この歯が駆動プーリ47の歯と噛合する。駆動プーリ47は、CRモータ73(図5参照)により回転駆動される。駆動プーリ47の回転が伝達されてタイミングベルト49が周運動する。
キャリッジ38は、タイミングベルト49と連結されている。したがって、タイミングベルト49の周運動に基づいてキャリッジ38がガイドレール43、44上を往復動する。前述のように記録ヘッド39がキャリッジ38に搭載されていることから、キャリッジ38の往復動とともに、記録ヘッド39が、記録用紙の搬送方向と直交する方向へ往復動する。
図4に示されるように、不図示のリニアエンコーダを構成するエンコーダストリップ50がガイドレール44に配設されている。エンコーダストリップ50は帯状に形成され、その長手方向に沿って透光部と遮光部とが所定ピッチで交互に配置されている。エンコーダストリップ50は、ガイドレール44の長手方向の両端に設けられた支持部33、34に支持されて、ガイドレール44の上側に長手方向へ延びるように配置されている。キャリッジ38の上面には、透過型センサである光学センサ35が設けられている。光学センサ35は、エンコーダストリップ50に対応して配置され、キャリッジ38の往復動の際にエンコーダストリップ50のパターンを検知する。光学センサ35の検知信号は、キャリッジ38に搭載された不図示のヘッド制御基板からパルス信号として出力される。このパルス信号に基づいてキャリッジ38の移動方向及び速度が算出され、キャリッジ38の往復動が制御される。なお、図5では、エンコーダストリップ50,支持部33,34、光学センサ35が省略されている。
ガイドレール43,44の下側に、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分を占めるように配設されている。プラテン42の幅は、プリンタ部11が搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きく設定されている。したがって、搬送される記録用紙の幅方向における両端は、常にプラテン42上を通過する。後に詳述されるが、このプラテン42に可動支持部88(図5参照)が設けられている。可動支持部88は、記録用紙の搬送方向へスライド可能である。
図4に示されるように、プラテン42の両側には、パージ機構51や廃インクトレイ84などのメンテナンスユニットが配設されている。パージ機構51は、記録ヘッド39のノズルから気泡や異物を吸引除去するためのものである。廃インクトレイ84は、フラッシングと呼ばれる記録ヘッド39からのインクの空噴出を受けるためのものである。なお、図5では、パージ機構51が省略されている。
図4に示されるように、インクチューブ41は、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ38の往復動に追従して撓む弾性を有する。インクチューブ41はCMYBkの各色インクに対応して4本が設けられている。各インクチューブ41の一端はインクカートリッジと連結されて、インクカートリッジから流出するインクが各インクチューブ41を流れる。各インクチューブ41は、装置の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、その一部が装置本体の固定クリップ36に固定され、他端が記録ヘッド39と連結されている。各インクチューブ41は、固定クリップ36からキャリッジ38までの部分が装置本体などに固定されておらず、この部分がキャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。なお、図4においては、固定クリップ36からカートリッジ装着部側へ延びるインクチューブ41は省略されている。また、図5では、インクチューブ41が省略されている。
制御部を構成するメイン基板から記録ヘッド39のヘッド制御基板への記録用信号などの伝送は、フラットケーブル85を通じて行われる。フラットケーブル85は、メイン基板とヘッド制御基板とを電気的に接続する。なお、上記メイン基板は装置正面側(図4において紙面の下側)に配設されており、図4には示されていない。フラットケーブル85は、電気信号を伝送する複数本の導電線をポリエステルフィルムなどの合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のものである。フラットケーブル85も、インクチューブ41と同様に、キャリッジ38の往復動に追従して撓む弾性を有する。なお、図5では、フラットケーブル85が省略されている。
[搬送機構]
記録用紙を搬送する搬送機構は、前述された給紙ローラ25の他、搬送ローラ60及びピンチローラ、排紙ローラ62及び拍車63を主要部材として構成されている。
図3に示されるように、画像記録ユニット24の搬送方向の上流側に一対の搬送ローラ60及びピンチローラが設けられている。なお、図3では、ピンチローラが他の部材に隠れて現れていないが、搬送ローラ60の下側に圧接するようにピンチローラが配置されている。搬送ローラ60及びピンチローラは、用紙搬送路23を搬送される記録用紙を狭持してプラテン42上へ搬送する。
画像記録ユニット24の搬送方向の下流側に一対の排紙ローラ62及び拍車63が設けられている。排紙ローラ62及び拍車63は、記録済みの記録用紙を狭持して排紙トレイ21へ搬送する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータから駆動力が伝達されて同期回転される。搬送ローラ60及び排紙ローラ62が間欠駆動されることにより、記録用紙が所定の改行幅で間欠して搬送される。搬送ローラ60に対応して設けられたロータリーエンコーダ(不図示)は、搬送ローラ60と共に回転するエンコーダディスク61のパターンを光学センサ82(図5参照)で検知する。この検知信号に基づいて、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が制御される。
拍車63は、排紙ローラ62と接離する方向にスライド移動可能に設けられている。拍車63は、コイルバネにより排紙ローラ62に圧接するように付勢されている。排紙ローラ62と拍車63との間に記録用紙が進入すると、拍車63が記録用紙の厚み分だけコイルバネの付勢力に抗して退避するとともに、記録用紙を排紙ローラ62に圧接する。これにより、排紙ローラ62の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。上記ピンチローラも搬送ローラ60に対して同様に設けられている。したがって、記録用紙は、ピンチローラに付勢されて搬送ローラ60に圧接され、これにより、搬送ローラ60の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。
用紙搬送路23における搬送ローラ60より上流側にレジセンサ95が配置されている。レジセンサ95は、図3に示されると検出子と図示されていない光学センサとを有するいわゆるメカニカルセンサである。レジセンサ95の検出子は、用紙搬送路23を貫くように突出したレバー形状であり、回動により用紙搬送路23に出没する。検出子は、バネ材により弾性付勢されて常に用紙搬送路23へ突出しており、用紙搬送路23を搬送される記録用紙が当接すると、弾性付勢に抗して回動して用紙搬送路23から退避する。レジセンサ95は、このような検出子の回動を光学センサにより検出して電気信号として出力する。レジセンサ95が出力する電気信号に基づいて、検出子の位置を記録用紙の先端又は後端が通過したことが判定される。
[プラテン42]
プラテン42は、概略として平板形状であり、図4、図5及び図7に示されるように、その天板109が記録ヘッド39の下面と対向されて配置されている。プラテン42は、記録用紙の幅方向(矢印87の方向)を長手方向として配置されている。プラテン42の天板109は、フレーム100の上面を構成する一部分である。なお、プラテン42が、本発明にかかるインクジェット記録装置用プラテンに相当する。
フレーム100は、例えば合成樹脂や鋼板からなり、プラテン42の骨格を構成する。フレーム100は、断面形状が下向きに開口した略C字形状である。各図には現れていないが、フレーム100はプリンタ部11のフレームに固定されている。図7に示されるように、フレーム100の天板109に、第1固定支持部102及び第2固定支持部103が設けられている。第1固定支持部102は、天板109における搬送方向の上流側において、複数が長手方向に沿って所定間隔で一列に設けられており、各第1固定支持部102は、記録ヘッド39へ向かうように上方へ突出している。第2固定支持部103は、天板109における搬送方向の下流側において、複数が長手方向に沿って所定間隔で一列に設けられており、各第2固定支持部103は、記録ヘッド39へ向かうように上方へ突出している。
複数の第1固定支持部102と複数の第2固定支持部103とは、搬送方向に隔てられて一対をなしており、第1固定支持部102の数と第2固定支持部103の数は同じである。なお、一対とならない第1固定支持部102又は第2固定支持部103がフレーム100の天板109に存在してもよい。搬送方向における第1固定支持部102と第2固定支持部103との離間距離は、記録ヘッド39におけるノズル位置に対応されており、各ノズルからインク滴が噴出される領域より広い。
各第1固定支持部102は薄肉平板形状のリブとして天板109において搬送方向を長手方向として上方へ突出しており、そのリブの角部は面取加工が施されている。同様に、各第2固定支持部103は薄肉平板形状のリブとして天板109において搬送方向を長手方向として上方へ突出しており、その角部は面取加工が施されている。
フレーム100の天板109には、記録用紙の搬送方向へ延びる第1スリット119が複数設けられている。各第1スリット119は、プラテン42の長手方向に沿って所定間隔で配置されている。各第1スリット119は、隣り合う第1固定支持部102の間と、隣り合う第2固定支持部103の間とを含めて、搬送方向へ延出されている。各第1スリット119を通じて、後述される可動支持部88の可動リブ121が、天板109から記録ヘッド39へ向かって上方へ突出している。
図6に示されるように、可動支持部88は、箱状に形成されたベース120と、ベース120に設けられた複数の可動リブ121とを有する。また、ベース120には、後述される突片116(図8参照)が複数設けられている。可動リブ121は、薄肉平板のリブであり、ベースの短手方向を長手方向としてベース120から上方へ突出する。この可動リブ121が、プラテン42のフレーム100の下側から第1スリット119を通じてフレーム100の天板109の上側へ突出する。可動支持部88は、合成樹脂又は金属から構成され得る。ベース120は、概略としてプラテン42の長手方向に細長の平板形状であるが、その断面形状は下方へ開口したC字形状である。ベース120は、フレーム100の下側の開口からその内部へ嵌め込まれる。
ベース120の長手方向の両端部にスライドローラ93が設けられている。なお、図6では、一方のスライドローラ93のみが現れている。各スライドローラ93は、ベース120の長手方向を軸方向としてベース120に回転自在に軸支されている。また、各スライドローラ93の周面の一部が、ベース120の上面から膨出しており、フレーム100の内面と当接して可動支持部88のスライドに従動して回転する。
ベース120の上面に複数の可動リブ121が一体に設けられている。可動リブ121の突出先端は山形である。複数の可動リブ121は、ベース120の長手方向に沿って所定間隔で配置されており、各可動リブ121は、フレーム100に組み付けられた状態において、記録用紙の搬送方向へ延びる。可動リブ121の厚みは、第1スリット119の幅に対応しており、複数の可動リブ121の配置は、複数の第1スリット119の配置と対応している。
駆動機構105は、可動支持部88を記録用紙の搬送方向に往復動させるためのものである。駆動機構105は、排紙ローラ軸92の回転を可動支持部88へ伝達する。駆動機構105は、回転板125と、回転板125の回転運動を可動支持部88の並進運動に変換するレバー部材126とを有する。回転板125は、排紙ローラ軸92から動力伝達機構124を介して伝達される駆動により回転する。
各図には詳細に現れていないが、回転板125はフレーム100に回転自在に支持されている。回転板125は、動力伝達機構124から駆動伝達されて正転又は逆転する。動力伝達機構124は、排紙ローラ軸92に設けられたトルクリミッタ148と、歯車149〜151とを有する。なお、図6においては歯車149〜151の歯が省略されている。トルクリミッタ148は、排紙ローラ軸92と一体に回転する円盤と、その円盤に対向して配置され排紙ローラ軸92に対して回転自在な円盤との一対において、摩擦力によって動力伝達が行う。そして、一対の円盤の間で伝達されるトルクが一定以上となると滑りが生じて動力伝達が行われない。
トルクリミッタ148において、排紙ローラ軸92に対して回転自在な円盤が歯車149と噛み合っている。したがって、トルクリミッタ148を介して排紙ローラ軸92の回転が歯車149へ伝達される。歯車149は歯車150と噛み合っており、さらに歯車150は、歯車151と噛み合っている。歯車150の回転中心軸と歯車151の回転中心軸とは直交しており、歯車150及び歯車151は傘歯車列を構成する。さらに、歯車151の外周面が回転板125の外周面と接触している。これにより、排紙ローラ軸92の回転が円盤125へ伝達される。
回転板125の裏面に、案内溝143が設けられている。案内溝143の形状は、回転板125の回転軸心を含んで裏面に沿って延びる仮想線を設定した場合に、R=kθ(kは定数)を満たす軌跡曲線に沿って形成されており、いわゆるアルキメデス螺旋を描いている。R=kθにしたがう軌跡曲線は、0°≦θ≦180°の範囲であり、この範囲で形成された軌跡曲線が仮想線を中心に左右対称に配置されている。
レバー部材126は、クランク形状の平板であり、可動支持部88のベース120と回転板125とを連結する。具体的には、レバー部材126の先端部145がベース120の裏面側と係合しており、かつ、レバー部材126の基端部146が回転板125の案内溝143と係合している。レバー部材126の中間部147は、プラテン42のフレーム100に支持されているが、レバー部材126とプラテン42のフレーム100との支持構造は図示されていない。なお、この支持構造の一例として、フレーム100に設けられた支軸に中間部147を回動自在に嵌合させる構造が挙げられる。これにより、レバー部材126は、中間部147を中心として回動自在である。
レバー部材126の基端部146は、回転板125の案内溝143と係合した状態において、中間部147を中心として回動する。このレバー部材126の回動がベース120に伝達される。ベース120は、フレーム100に嵌め込まれて記録用紙の搬送方向にのみスライド可能である。よって、回転板125の回転がレバー部材126を介してベース120に伝達され、ベース120が天板109の裏面に沿って記録用紙の搬送方向にスライドする。
レバー部材126の先端部145の変位量は、レバー部材126の基端部146の変位量の所定倍となる。具体的には、この倍率は、中間部147から先端部145までの距離と中間部147から基端部146までの距離との比率に対応する。したがって、先端部145の変位量は、基端部146の変位量を所定倍に増幅したものとなる。よって、回転板125の回転量はレバー部材126によって所定倍となってベース120の搬送方向の変位量に変換される。ベース120の変位量は、可動リブ121が第1固定支持部102と第2固定支持部103との間を往復動可能な量として設定されており、第1固定支持部102又は第2固定支持部103付近までベース120が移動すると、可動リブ121は、記録ヘッド39による画像記録領域外に位置される。
図7及び図8に示されるように、フレーム100の天板109には、記録用紙の搬送方向へ延びる第2スリット110が複数設けられている。各第2スリット110は、プラテン42の長手方向に沿って所定間隔で配置されている。各第2スリット110は、一対となる第1固定支持部102と第2固定支持部103との間において、つまり記録ヘッド39による画像記録領域において、記録用紙の搬送方向へ細長形状に形成されて天板109を厚み方向へ貫通する。図7に示されるように、天板109には、隣り合う第1スリット119の間において、天板109の長手方向に対して3列であり、かつ記録用紙の搬送方向に対して2列となる合計6つの第2スリット110が配置されている。図7には現れていないが、その他の第1スリット119の間においても、同様にして6つの第2スリット110が配置されている。この第2スリット110が、本発明におけるスリットに相当するが、第2スリット110の形状や配置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で変更可能である。
各第2スリット110は、平面視において細長の矩形であり、その内部空間は、記録用紙の搬送方向へ延びる一対の対向壁111,112とフレーム100の長手方向に延びる一対の対向壁113とによって区画されている。なお、図8においては対向壁113と対をなす他方の対向壁が現れていない。この一対の対向壁111,112に沿って、天板109の裏面側から下方へ一対の固定インク誘導板114,115が設けられている。固定インク誘導板114,115は、合成樹脂を用いてフレーム110と一体の成形品として製造し得る。一般に、金型を用いた成型においては、成形品にパーティングラインと称される微細な凹凸形状が生じ得るが、固定インク誘導板114,115の下端にパーティングラインを生じ得るように金型を設計すれば、固定インク誘導板114,115の対向面と第2スリット110の対向壁111,112とをパーティングラインの無い連続面とし得る。この固定インク誘導板114,115が、本発明における固定インク誘導部材に相当する。
図9に示されるように、各固定インク誘導板114,115は、その搬送方向における幅が下方へ向かって狭くなるテーパ形状をなす平板である。各固定インク誘導板114,115はの下端面は、可動支持部88のベース120と接触しない程度に近接されている。また、各固定インク誘導板114,115は、下方へ延出されるに従って、対向相手となる固定インク誘導板114,115へ近づくように傾斜されている。したがって、一対の固定インク誘導板114,115の離間距離は、その上端では第2スリット110における対向壁111,112と同等であり、突出方向である下方に対して徐々に狭くなり、その下端では後述される突片116の厚みより若干広い程度となる。
図8及び図9に示されるように、前述された可動支持部88のベース120には、複数の突片116が設けられている。各突片116は薄肉の平板形状であり、可動リブ121と同様に、記録用紙の搬送方向を長手方向として、ベース120の上面から上方へ、つまり天板109へ向かって突出する。突片116の上端は、天板109の裏面に接触しない程度に近接する。突片116は、ベース120の長手方向に沿って所定間隔で配置されている。突片116の厚みは、一対の固定インク誘導板114,115の下端における離間距離より若干狭い程度である。したがって、突片116は、一対の固定インク誘導板114,115の間を記録用紙の搬送方向へ通過し得る。
各突片116の配置は、天板109に形成された第2スリット110の位置と対応している。詳細には、前述されたように、天板109には、隣り合う第1スリット119の間において6つの第2スリット110が配置されているが、そのうち、天板109の長手方向に配列された3列の第2スリット110に対応して、隣り合う可動リブ121の間に3つの突片116が配置されている。したがって、1つの突片116が記録用紙の搬送方向に並ぶ2対の固定インク誘導板114,115の間を通過し得る。
この突片116及びベース120を主要な構成として、本発明における可動インク誘導部材が実現される。前述されたように、ベース120は、回転板125の回転に基づいてベース120が天板109の裏面に沿って記録用紙の搬送方向にスライドし得るので、突片116もベース120とともに記録用紙の搬送方向へスライドし得る。このスライド過程において、突片116が対応する固定インク誘導板114,115の間を通過する。そして、ベース120のスライド端において、突片116は記録ヘッド39による画像記録領域外に位置される。
図9に示されるように、フレーム100の裏面側において、記録用紙の搬送方向の両端にインク吸収部材117,118がそれぞれ設けられている。インク吸収部材117,118は、記録ヘッド39のノズルから噴出されるインクを吸収して保持可能な部材であり、例えば、フェルトや不織布、紙などを加工して製造され得る。インク吸収部材117,118は、ベース120がスライド端に対応して配置されており、ベース120がスライド端までスライドすると、ベース120の側壁がインク吸収部材117,118と接触する。
[プラテン42のクリーニング方法]
複合機10は、操作パネル15において所定の操作が行われるか、外部情報機器から所定の指令が送信されることによって、クリーニングモードが選択され得る。クリーニングモードが実行されると、本発明にかかるクリーニング方法が行われる。前述されたように、記録ヘッド39から噴出されたインクの一部は、インクミストとして浮遊しプラテン42の天板109に付着する。プラテン42の天板109に付着したインクミストは、成長して大きなインク滴となり得る。このインク滴は、残留インクとして記録用紙を汚す原因となる。このような残留インクを除去すべくクリーニングが行われる。クリーニングを行うタイミングは任意であり、例えば、残留インクによる記録用紙の汚れを発見したユーザが任意に行ってもよいし、所定量の画像記録が行われた後にクリーニングを行うよう警告表示がなされるように予め設定されていてもよい。
図9に示されるように、クリーニングが行われるまでにプラテン42の天板109に付着したインク滴は、天板109の上面から第2スリット110へ流れ込む。このインク滴の流れは、インク滴の重力や第2スリット110による毛管力による。また、図7に示されるように、天板109の上面に第2スリット110へ向かう複数の溝106が形成されることによって、溝106の毛管力を利用して天板109の上面から第2スリット110へインク滴を導いてもよい。
第2スリット110に流れ込んだインク滴122,123は、重力や毛管力によって第2スリット110の下端へ流れ落ち、さらに一対の固定インク誘導板114,115の間を流れ落ちて、その表面張力によって固定インク誘導板114,115の下端付近に滞留する。前述されたように、固定インク誘導板114,115の対向面と第2スリット110の対向壁111,112とはパーティングラインの無い連続面とし得るので、第2スリット110に流れ込んだインク滴122,123は、固定インク誘導板114,115の下端まで淀みなく誘導される。
このような状態において、クリーニングの開始指令があると、制御部がLFモータを駆動し、それにより回転される排紙ローラ軸92の回転が駆動伝達機構105を介して回転板125へ伝達される。なお、可動支持部88のベース120は、初期状態においては第1固定支持部102と第2固定支持部103との間のほぼ中央にあり、突片116は、搬送方向へ並ぶ2対の固定インク誘導板114,115のいずれの間にも位置しない。なお、図9から図11においては、固定インク誘導板114が現れていない。
初期位置から回転板125が90°だけ正転すると、ベース120は、初期位置から矢印131の方向へスライドして、搬送方向上流側のスライド端に到達する。このベース120のスライド過程において、突片116が搬送方向上流側の一対の固定インク誘導板114,115の間を通過する。その際に、固定インク誘導板114,115の下端に滞留していたインク滴122が、突片116の側壁に沿って流れ落ち、図10に示されるように、ベース120の上面に移動する。そして、ベース120がスライド端に到達して、インク吸収部材117に当接すると、ベース120の上面に移動したインク滴122がインク吸収部材117に吸収されて保持される。これにより、固定インク誘導板114,115の間に滞留していたインク滴122が天板109から除去されてインク吸収部材117に保持される。
回転板125が90°を超え270°だけ正転すると、ベース120は、搬送方向上流側のスライド端から矢印132の方向へスライドして、搬送方向下流側のスライド端に到達する。このベース120のスライド過程のおいて、突片116が搬送方向上流側の一対の固定インク誘導板114,115の間を通過するが、この一対の固定インク誘導板114,115の間に滞留していたインク滴122は、前述されたようにして、既に除去されている。つづいて、突片116が搬送方向下流側の一対の固定インク誘導板114,115の間を通過する。その際に、固定インク誘導板114,115の下端に滞留していたインク滴123が、突片116の側壁に沿って流れ落ち、図11に示されるように、ベース120の上面に移動する。そして、ベース120がスライド端に到達して、インク吸収部材118に当接すると、ベース120の上面に移動したインク滴122がインク吸収部材118に吸収されて保持される。これにより、固定インク誘導板114,115の間に滞留していたインク滴123が天板109から除去されてインク吸収部材118に保持される。
そして、可動板125が270°を超え360°だけ正転すると、ベース120は、搬送方向下流側のスライド端から矢印131の方向へスライドして初期位置へ復帰する。これにより、クリーニングが終了する。
なお、前述されたクリーニングは、クリーニングモードとして実行されなくとも、縁なし印刷における記録用紙の搬送の際に、ベース120がスライドされると、クリーニングが同時に行われることとなる。
縁なし印刷の開始指令があると、まず、給紙トレイ20に積載された記録用紙が用紙搬送路23へ給送される。搬送ローラ60及びピンチローラにより搬送される記録用紙の先端がプラテン42上へ到達する。この記録用紙の搬送に追従して可動支持部88がスライドされる。例えば、給紙トレイ20から記録用紙が給紙されてプラテン42へ到達するまでの間は、適宜設けられたロック機構により回転板125の回転が制止される。そして、記録用紙の先端位置をレジセンサ95の検知信号に基づいて判定して、所定のタイミング回転板125のロックを解除して回転板125を正転させる。そうすると、前述されたように、ベース120とともに突片116が初期位置から矢印131の方向へスライドして、固定インク誘導板114,115の間に滞留していたインク滴122が天板109から除去されてインク吸収部材117に保持される。
一方、記録用紙の先端は、第1固定支持部102及び可動リブ121に支持される。その後、LFモータが間欠して駆動されると、可動リブ121に支持されながら記録用紙が間欠して搬送される。記録用紙の搬送が間欠している間に、キャリッジ38とともにスライドされる記録ヘッド39から各色のインク滴が選択的に噴出されて記録用紙に着弾する。縁なし記録では、記録用紙の周囲の縁までインク滴が噴出されるが、仮に記録用紙へ着弾しないインク滴があったとしても、記録用紙に覆われている可動リブ121にインク滴が着弾することはない。
LFモータの間欠駆動により、回転板125が90°を超えて270°まで正転すると、前述されたように、ベース120とともに突片116が初期位置から矢印132の方向へスライドして、固定インク誘導板114,115の間に滞留していたインク滴123が天板109から除去されてインク吸収部材118に保持される。この間において、記録用紙の先端側は可動リブ121に支持されながら搬送されて第2固定支持部103へ到達する。そして、回転板125が270°を超えて360°まで正転すると、ベース120が初期位置へ復帰する。このとき、記録用紙は第1固定支持部102と第2固定支持部103とで支持されている。詳述はされないが、記録用紙の後端側においても同様にして、可動リブ121がスライドされる。
このような縁なし記録における可動リブ121のスライドにおいても、ベース120とともに突片116がスライドして、固定インク誘導板114,115の間に滞留していたインク滴122、123が天板109から除去されてインク吸収部材117、118に保持される。
[本実施形態による作用効果]
本実施形態によれば、天板109に形成された第2スリット110における対向壁111,112に沿って、一対の固定インク誘導板114,115が天板109の裏面側へ突出しているので、天板109におけるインク滴122,123が第2スリット110内へ進入して一対の固定インク誘導部材114,115の突出端へ誘導される。そして、突片116が、ベース120のスライド過程において一対の固定インク誘導部材114,115の間を通過するので、一対の固定インク誘導部材114,115の突出端へ誘導されたインク滴122,123が、突片116からベース120へ移動してスライド端へ運ばれる。これにより、天板109に付着したインク滴122,123を、天板109の上面から除去することができる。
また、一対の固定インク誘導部材114,115は、その離間距離が突出方向に対して徐々に狭くなっているので、インク滴122,123をその突出端へ誘導する毛管現象が生じる。これにより、インク滴122,123が突出端へ淀みなく誘導されるという利点がある。
また、第2スリット110は、天板109における画像記録領域に配置されているので、画像記録領域に付着したインク滴が効率的に第2スリット110へ誘導される。そして、ベース120のスライド端にインク吸収部材117,118が設けられているので、ベース120のスライド端において、突片116からベース120へ移動したインク滴122がインク吸収部材117に吸収される。さらに、インク吸収部材117,118が画像記録領域外に配置されているので、画像記録領域に付着したインク滴117,118が画像領域外まで誘導されて除去される。
また、第2スリット110は、天板109上を搬送される記録用紙の搬送方向へ細長形状であり、突片116がその搬送方向へスライド可能なので、記録ヘッド39の往復動方向に沿った方向が幅広(長手方向)であって、記録用紙の搬送方向に沿った方向が短手方向となるように設計されたプラテン42において、ベース120のスライド範囲を短くすることができる。また、1つのLFモータから駆動伝達機構105によってベース120をスライドさせて、突片116及び可動リブ121を連動して一体に動作させることができるので、これらの動作の制御が容易である。