しかしながら、従来の用紙支持部材は、所定の回動中心軸を中心にして回動されるものであるから(上記特許文献2参照)、用紙支持部材の先端部(記録用紙に接触する部分)は、記録ヘッド側へ接近した後、離隔する。このため、記録用紙が常に記録ヘッドに対して平行に支持されるとは限らない。この問題が解決されるためには、用紙支持部材の回転半径が十分に大きく設定されればよいが、これでは、インクジェット記録装置が大型化してしまうという新たな問題が発生する。また、用紙支持部材の記録用紙を支持する面が、上記回動中心軸を中心とする円弧状に形成されたものがあるが、これでは、記録用紙を支持するポイントが固定されてしまい、搬送される記録用紙の端部が常時支持されないことになる。すなわち、このように記録用紙を支持する面が円弧状に形成されると、記録用紙は上記支持ポイントのみで支持され、当該支持ポイント以外の部位(当該支持ポイントの前後の領域)が撓んでしまい、その結果、前述と同様に記録不良が生じる可能性がある。
そこで、本発明の目的は、搬送される記録用紙の端部をプラテン上で常時支持することにより、縁なし記録を高速で行うことができるインクジェット記録装置を提供することである。
(1)本発明に係るインクジェット記録装置は、搬送方向に搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、上記プラテン上に位置する被記録媒体を搬送方向へ搬送する搬送手段と、上記プラテンに対して対向配置され、上記搬送方向に直交する主走査方向に往復移動しつつ上記プラテン上に搬送された被記録媒体にインク滴を吐出することによって画像を記録する記録ヘッドとを備えている。このインクジェット記録装置は、上記搬送される被記録媒体を支持しつつ上記搬送方向にスライド可能なようにプラテンに設けられた可動支持部と、上記プラテン上における被記録媒体の搬送方向端部の搬送位置に応じたスライド開始タイミングで上記可動支持部をスライドさせるスライド駆動手段とを具備して構成される。
プラテンに搬送された被記録媒体は、このプラテンによって支持される。プラテンに対向して記録ヘッドが配置されており、この記録ヘッドは、主走査方向に移動しつつインク滴を吐出する。これにより、当該被記録媒体に画像が記録される。プラテン上に搬送された被記録媒体は、さらに搬送方向に搬送される。このとき、可動支持部が当該被記録媒体を支持したまま当該搬送方向にスライドされる。すなわち、この被記録媒体の端部は、可動支持部によって常時支持されることになるから、当該被記録媒体の端部が垂れ下がることがない。その結果、この被記録媒体と記録ヘッドとの距離は、一定に保たれる。
このようなインクジェット記録装置では、画像記録中は、被記録媒体および可動支持部は停止され、非画像記録中に被記録媒体および可動支持部は間欠的に搬送される。このとき、可動支持部は被記録媒体の搬送に従ってスライドされる。即ち、被記録媒体が所定幅搬送されると、それに応じて可動支持部も所定幅だけスライドされる。
また、本発明のインクジェット記録装置には、被記録媒体の端部に画像を記録する場合、即ち縁なし記録をする場合に可動支持部へのインク滴の着弾を防止する工夫が施されている。仮に、可動支持部にインク滴が着弾すると、インク滴付着箇所に被記録媒体が支持される際に被記録媒体の裏面が汚れるという問題が生じ得る。具体的には、可動支持部の搬送方向端部から被記録媒体の端部を所定量だけ突出させた状態で該被記録媒体が可動支持部によって支持されている。従って、被記録媒体の端部にインク滴を吐出しても、可動支持部にインク滴が着弾することはない。
ところが、被記録媒体の後端を縁なし記録する場合に、被記録媒体の間欠搬送に追従して可動支持部をスライドさせると、搬送される幅が被記録媒体の突出量よりも大きい場合は、画像記録後の被記録媒体が搬送されるとその後端が可動支持部に掛かる場合がある。この場合、被記録媒体に記録されたインク滴がまだ乾かぬままにその後端が可動支持部に掛かると、可動支持部に未乾燥のインクが付着するおそれがある。可動支持部にインクが付着すると、その付着箇所で被記録媒体が支持されることによって被記録媒体の裏面が汚れるばかりでなく、被記録媒体の後端に印字されたインク量が減じられ画像品質を低下させることになり問題である。
本インクジェット記録装置では、上記プラテン上における被記録媒体の搬送方向端部の搬送位置に応じたスライド開始タイミングで、スライド駆動手段によって上記可動支持部がスライドされるため、被記録媒体の後端に画像が記録された後に、被記録媒体の搬送に先行して可動支持部をスライドさせることができる。これにより、可動支持部へのインクの付着を防止することが可能となる。その結果、被記録媒体を汚さず、高い記録品質を維持することができる。
(2)また、本発明のインクジェット記録装置において、上記プラテンは、上記搬送方向に沿って延びる上面を有するフレームと、上記上面の上記搬送方向上流側部分に突設された第1媒体支持部と、上記第1媒体支持部に対して上記搬送方向に対向配置され且つ該第1媒体支持部との間に上記主走査方向に延びる溝が形成されるように、上記上面の上記搬送方向下流側部分に突設された第2媒体支持部とを有し、上記可動支持部は、上記フレームの上記搬送方向上流側端部と上記フレームの上記搬送方向下流側端部との間で上記搬送方向に沿ってスライド可能に設けられており、上記スライド駆動手段は、被記録媒体の先端が所定の画像記録位置から上記フレームの上記搬送方向下流側端部に至る範囲に位置するときに上記可動支持部の搬送方向先端を該被記録媒体の先端より上記搬送方向上流側へ所定幅ずらしてスライドさせ、被記録媒体の後端が上記範囲に位置するときに上記可動支持部の搬送方向後端を該被記録媒体の後端より上記搬送方向下流側へ所定幅ずらしてスライドさせるものであることが望ましい。
この場合、プラテン上に搬送された被記録媒体は、まず第1媒体支持部によって支持される。さらに、この被記録媒体は、第1媒体支持部上を搬送され、第2媒体支持部側へ送られる。第1媒体支持部と第2媒体支持部との間に上記溝が形成されている。このため、特に縁なし記録が行われるときに、当該被記録媒体の縁を越えて記録ヘッドからインク滴が吐出された場合であっても、この被記録媒体の縁を越えて吐出されたインク滴は、上記溝によって受け止められる。この溝の底部に例えばインク吸収部材(典型的にはシート状のスポンジ)が敷設されていてもよく、これにより、溝内に到達したインク滴が当該溝に確実に吸収される。
上記第1媒体支持部上を搬送される被記録媒体の端部は、上記溝の上方を通過することになる。このとき、搬送される被記録媒体に伴って可動支持部が上記搬送方向にスライドするから、この被記録媒体の端部は、可動支持部によって常時支持され、上記溝内に進入することはない。その結果、この被記録媒体と記録ヘッドとの距離は、一定に保たれる。また、可動支持部は、被記録媒体の端部を支持することによって当該被記録媒体によって隠蔽されることになるから、被記録媒体に対して吐出されたインク滴が可動支持部に付着することがない。したがって、連続して被記録媒体に画像記録される場合において、次の被記録媒体が当該可動支持部上に配置されたときでも、可動支持部に付着した残留インクによって当該被記録媒体の裏面が汚れてしまうという不都合はない。
また、被記録媒体の先端が上記範囲に位置する場合は、可動支持部は、該可動支持部の搬送方向先端が該被記録媒体の先端より搬送方向上流側に所定幅ずらされた状態を維持したままスライドされる。また、被記録媒体の後端が上記範囲に位置する場合は、可動支持部は、該可動支持部の搬送方向後端が該被記録媒体の後端より搬送方向下流側に所定幅ずらされた状態を維持したままスライドされる。従って、被記録媒体後端から可動支持部へのインクの乗り移りが防止され、この乗り移ったインクによって当該被記録媒体の裏面が汚れるという不都合も解消され得る。
(3)また、上記スライド駆動手段は、被記録媒体の先端が上記範囲に位置するときに上記搬送手段による被記録媒体の搬送開始タイミングよりも遅いタイミングで上記可動支持部をスライドさせ、被記録媒体の後端が上記範囲に位置するときに上記搬送手段による被記録媒体の搬送開始タイミングよりも早いタイミングで上記可動支持部をスライドさせるものであることが考えられる。
このように、被記録媒体の先端が上記範囲に位置する場合は搬送手段による搬送開始タイミングよりも遅く、被記録媒体の後端が上記範囲に位置する場合は上記搬送手段による搬送開始タイミングよりも早く可動支持部をスライドさせることで、可動支持部へのインクの乗り移りによる付着が防止される。また、記録媒体と可動支持部との接触による、前記記録媒体のたわみが発生することがなくなるので、その結果、記録品質を一定に保つことができる。
(4)また、搬送手段による搬送動作と可動支持部のスライドと同期させることで、可動支持部へのインクの付着を防止することが考えられる。従って、上記スライド駆動手段は、上記搬送手段による被記録媒体の搬送動作に同期させて上記可動支持部をスライドさせるものであってもよい。
(5)上記第1媒体支持部は、上記上面の上記搬送方向上流側部分に突設され且つ上記主走査方向に並設された複数の第1固定リブから構成され、上記第2媒体支持部は、上記上面の上記搬送方向下流側部分に突設され且つ上記主走査方向に並設された複数の第2固定リブから構成されている。また、上記可動支持部は、上記主走査方向に隣り合う各第1固定リブの間に進入して上記搬送方向上流側端部に対応する第1位置と、上記主走査方向に隣り合う各第2固定リブの間に進入して上記搬送方向下流側端部に対応する第2位置との間でスライド可能に設けられた複数の可動リブから構成されている。
このように、第1媒体支持部及び第2媒体支持部並びに可動支持部がリブから構成されることにより、被記録媒体と第1媒体支持部、第2媒体支持部及び可動支持部との接触面積が小さくなるので、当該被記録媒体の円滑な搬送が可能となる。しかも、第1媒体支持部及び第2媒体支持部並びに可動支持部の構造がきわめて簡単なものとなる。
(6)また、上記溝の幅は、上記記録ヘッドのインク吐出領域よりも広く設定されているのが好ましい。なお、当該「溝の幅」とは、被記録媒体の搬送方向の幅であり、主走査方向に直交する方向(副走査方向)の幅である。
これにより、仮に被記録媒体がプラテン上に配置されていない場合に、記録ヘッドの全ノズルからインク滴が吐出されたとしても、当該吐出されたすべてのインク滴は、上記溝の底面に着弾する。したがって、縁なし記録が行われるときに、記録ヘッドが複雑に制御されることなく、当該記録ヘッドの全ノズルからインク滴が吐出されながら、被記録媒体の端部への画像記録が可能となる。
換言すれば、仮に上記溝の幅が上記記録ヘッドのインク吐出領域よりも狭いとすれば、被記録媒体の搬送方向の先端部分に縁なし記録が行われる場合には、記録ヘッドの上流側のノズルのみからインク滴が吐出され、当該被記録媒体の搬送に伴って順次下流側のノズルからもインク滴が吐出されなければならず、記録ヘッドの複雑な制御が必要となるのに対して、本発明では、そのような複雑な制御が不要であり、前述のように、全ノズルからインク滴が吐出されることによって被記録媒体の端部への縁なし記録が可能である。すなわち、ノズルからのインク滴の吐出に関して複雑な制御を行うことなく、縁なし記録が高速で行われる。
さらに、上記ノズルの断面形状は必ずしも真円ではないことや、ノズル表面に微細なゴミが付着する場合もあり、そのため、インク滴は、ノズルから直下に吐出されるのではなく若干斜め方向に吐出される場合がある。そのような場合においても、上記溝の幅が記録ヘッドのインク吐出領域よりも広く設定されているので、インク滴が溝の外部に付着することがない。その結果、被記録媒体の裏面がインクによって汚れることが確実に防止される。
(7)また、上記可動支持部の上記搬送方向の角部に面取加工が施されていることが好ましい。
この構成では、第1媒体支持部を通過した被記録媒体の端部が可動支持部の搬送方向の角部に当接した場合であっても、当該被記録媒体の端部は、滑らかに可動支持部の上面に案内される。したがって、可動支持部が設けられることに起因して、被記録媒体の円滑な搬送が妨げられることはない。
(8)また、上記スライド駆動手段は、被記録媒体の先端が上記フレームの上記搬送方向上流側端部に搬送されたときに上記可動支持部を上記搬送方向上流側端部に配置し且つ該被記録媒体の搬送に伴って該被記録媒体の先端を支持したまま上記可動支持部を上記搬送方向下流側にスライドさせ、被記録媒体の後端が上記フレームの上記搬送方向上流側端部に搬送されたときに上記可動支持部を上記搬送方向上流側端部に配置し且つ該被記録媒体の搬送に伴って該被記録媒体の後端を支持したまま上記可動支持部を上記搬送方向下流側にスライドさせるものであることが考えられる。
これにより、被記録媒体の先端がプラテン上に搬送されたときは、可動支持部は、当該被記録媒体の先端を一旦搬送方向上流側へ迎えに行くようにスライドされる。そして、この可動支持部は、当該被記録媒体の搬送に伴って当該被記録媒体の先端を支持したまま当該搬送方向下流側にスライドされる。一方、可動支持部が当該搬送方向下流側にスライドされた後、被記録媒体の後端がプラテン上に搬送されたときは、再び、上記可動支持部は、被記録媒体の後端を迎えに行くように搬送方向上流側へスライドされる。そして、当該被記録媒体の搬送に伴って当該被記録媒体の後端を支持したまま当該搬送方向下流側にスライドされる。従って、この被記録媒体の端部は、可動支持部によって常時支持され、上記溝内に進入することはない。その結果、この被記録媒体と記録ヘッドとの距離は、確実に一定に保たれる。
(9)また、本発明は、搬送方向に搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、上記プラテンに対して対向配置され、上記搬送方向に直交する主走査方向に往復移動しつつ上記プラテン上に搬送された被記録媒体にインク滴を吐出することによって画像を記録する記録ヘッドと、上記プラテンの搬送方向上流側に配設され、上記プラテンに向けて被記録媒体を搬送する第1搬送手段と、上記プラテンの搬送方向下流側に配設され、上記記録ヘッドによって画像が記録された被記録媒体を搬送する第2搬送手段とを備えたインクジェット記録装置であって、上記搬送される被記録媒体を支持しつつ上記搬送方向にスライド可能なようにプラテンに設けられた可動支持部と、上記搬送方向に上記可動支持部をスライドさせると共に、少なくとも上記第2搬送手段によって該被記録媒体が搬送される場合に上記可動支持部を上記搬送方向の上流側にスライドさせるスライド駆動手段と、を具備してなるものでもある。
プラテンに搬送された被記録媒体に画像が記録され、その後、さらに搬送方向に搬送されると、可動支持部が当該被記録媒体を支持したまま当該搬送方向にスライドする。従って、この被記録媒体の端部は、可動支持部によって常時支持される。そのため、当該被記録媒体の端部が垂れ下がることはない。
一方、被記録媒体の後端に画像を記録する場合、即ち、縁なし記録をする場合は、その後端の垂れ下がりを防止するため、被記録媒体の後端を可動支持部で支持する必要がある。従って、搬送方向下流側へスライドされた可動支持部を搬送方向上流側に戻すようにスライドさせる必要がある。しかしながら、被記録媒体がその後方側から押し出されるようにして搬送される場合は、可動支持部を搬送方向上流側へスライドさせると、可動支持部と被記録媒体との摩擦によって被記録媒体に対して搬送方向上流側に向けて摩擦力が作用する。この摩擦力によって被記録媒体が撓むおそれが生じ得る。被記録媒体の撓みは、該被記録媒体に画像が記録された際にバンディングと称される横縞模様を出現させ、画像品質を劣化させる要因となる。
本インクジェット記録装置では、少なくとも上記第2搬送手段によって該被記録媒体が搬送されている場合に、スライド駆動手段によって上記可動支持部が上記搬送方向の上流側にスライドされる。従って、被記録媒体に搬送方向とは反対方向の上記摩擦力が作用したとしても、搬送方向下流側の第2搬送手段によって被記録媒体が引っ張られるようにして搬送されるため、上記摩擦力の影響を減じられる。その結果、被記録媒体の撓みが防止され、記録画像にバンディングを発生させることなく、高い画像品質を維持することができる。
(10)上記スライド駆動手段は、上記第1搬送手段および上記第2搬送手段の双方によって被記録媒体が搬送される場合に上記可動支持部を上記搬送方向の上流側にスライドさせるものであることが考えられる。
第1搬送手段と第2搬送手段の双方の搬送手段により被記録媒体が搬送されている場合は、被記録媒体の搬送が極めて安定している。従って、可動支持部を搬送方向の上流側に移動させても、その際に被記録媒体に作用する摩擦力程度では被記録媒体に撓みが生じることはない。従って、上記双方の搬送手段による被記録媒体の搬送中に可動支持部を搬送方向の上流側にスライドさせることで、被記録媒体の撓みは効果的に防止され得る。
(11)また、少なくとも上記第2搬送手段は、駆動ローラと、該駆動ローラに圧接される従動ローラとを有し、被記録媒体を該駆動ローラと該従動ローラとによって狭持しつつ搬送するものであることが望ましい。
被記録媒体の先端が第2搬送手段に到達すると、その先端は駆動ローラと従動ローラとのニップ部に導かれる。そして、被記録媒体の先端は駆動ローラと従動ローラとによって狭持されつつ、その回転力が被記録媒体に伝達される。これにより、被記録媒体は搬送方向へ搬送される。このように第2搬送手段による搬送時は、駆動ローラと従動ローラとによって被記録媒体が狭持されるため、可動支持部の搬送方向上流側へのスライド時に摩擦力が発生したとしても、被記録媒体が搬送方向上流側へ引き寄せられることはない。従って、被記録媒体の撓みを効果的に防止することができる。
(12)本発明のインクジェット記録装置において、上記プラテンは、上記搬送方向に沿って延びる上面を有するフレームと、上記上面の上記搬送方向上流側部分に突設された第1媒体支持部と、上記第1媒体支持部に対して上記搬送方向に対向配置され且つ該第1媒体支持部との間に上記主走査方向に延びる溝が形成されるように、上記上面の上記搬送方向下流側部分に突設された第2媒体支持部とを有し、上記可動支持部は、上記フレームの上記搬送方向上流側端部と上記フレームの上記搬送方向下流側端部との間で上記搬送方向に沿ってスライド可能に設けられており、上記スライド駆動手段は、少なくとも上記第2搬送手段によって被記録媒体が搬送される場合に、上記可動支持部を上記搬送方向上流側にスライドさせて上記フレームの上記搬送方向上流側端部に配置させるものであることが望ましい。
この場合、プラテン上に搬送された被記録媒体は、まず第1媒体支持部によって支持される。さらに、この被記録媒体は、第1媒体支持部上を搬送され、第2媒体支持部側へ送られる。第1媒体支持部と第2媒体支持部との間に上記溝が形成されている。このため、特に縁なし記録が行われるときに、当該被記録媒体の縁を越えて記録ヘッドからインク滴が吐出された場合であっても、この被記録媒体の縁を越えて吐出されたインク滴は、上記溝によって受け止められる。この溝の底部に例えばインク吸収部材(典型的にはシート状のスポンジ)が敷設されていてもよく、これにより、溝内に到達したインク滴が当該溝に確実に吸収される。
上記第1媒体支持部上を搬送される被記録媒体の端部は、上記溝の上方を通過することになる。このとき、搬送される被記録媒体に伴って可動支持部が上記搬送方向にスライドするから、この被記録媒体の端部は、可動支持部によって常時支持され、上記溝内に進入することはない。その結果、この被記録媒体と記録ヘッドとの距離は、一定に保たれる。また、可動支持部は、被記録媒体の端部を支持することによって当該被記録媒体によって隠蔽されることになるから、被記録媒体に対して吐出されたインク滴が可動支持部に付着することがない。したがって、連続して被記録媒体に画像記録される場合において、次の被記録媒体が当該可動支持部上に配置されたときでも、可動支持部に付着した残留インクによって当該被記録媒体の裏面が汚れてしまうという不都合はない。
また、第2搬送手段によって被記録媒体が搬送される場合は、スライド駆動手段によって、上記可動支持部が上記搬送方向上流側にスライドされる。そして、該可動支持部はフレームの搬送方向下流側端部に配置される。これにより、可動支持部により被記録媒体の先端だけでなく後端をも支持することができ、被記録媒体の後端においても記録ヘッドとの距離が一定に保たれる。
(13)また、上記第1媒体支持部は、上記上面の上記搬送方向上流側部分に突設され且つ上記主走査方向に並設された複数の第1固定リブからなり、上記第2媒体支持部は、上記上面の上記搬送方向下流側部分に突設され且つ上記主走査方向に並設された複数の第2固定リブからなり、上記可動支持部は、上記主走査方向に隣り合う各第1固定リブの間に進入して上記搬送方向上流側端部に対応する第1位置と、上記主走査方向に隣り合う各第2固定リブの間に進入して上記搬送方向下流側端部に対応する第2位置との間でスライド可能に設けられた複数の可動リブからなるものであることが望ましい。
このように、第1媒体支持部及び第2媒体支持部並びに可動支持部がリブから構成されることにより、被記録媒体と第1媒体支持部、第2媒体支持部及び可動支持部との接触面積が小さくなるので、当該被記録媒体の円滑な搬送が可能となる。しかも、第1媒体支持部及び第2媒体支持部並びに可動支持部の構造がきわめて簡単なものとなる。
(14)上記溝の幅は、上記記録ヘッドのインク吐出領域よりも広く設定されている。なお、当該「溝の幅」とは、被記録媒体の搬送方向の幅であり、主走査方向に直交する方向(副走査方向)の幅である。
これにより、仮に被記録媒体がプラテン上に配置されていない場合に、記録ヘッドの全ノズルからインク滴が吐出されたとしても、当該吐出されたすべてのインク滴は、上記溝の底面に着弾する。したがって、縁なし記録が行われるときに、記録ヘッドが複雑に制御されることなく、当該記録ヘッドの全ノズルからインク滴が吐出されながら、被記録媒体の端部への画像記録が可能となる。
換言すれば、仮に上記溝の幅が上記記録ヘッドのインク吐出領域よりも狭いとすれば、被記録媒体の搬送方向の先端部分に縁なし記録が行われる場合には、当該溝に対応した一部のノズル、典型例としては、記録ヘッドの上流側のノズルのみを用いて縁なし記録を行わなければならない。一部のノズルのみを用いて縁なし記録を行う場合は、全ノズルを用いて画像記録を行う場合と比べ、被記録媒体の搬送制御、インク滴の吐出制御を異ならせる必要が生じ、インクジェット記録装置において複雑な制御が必要となる。また、一部のノズルのみを用いて縁なし記録をする場合の搬送制御では、記録ヘッドが改行するごとに搬送される搬送幅が著しく狭められるため、駆動伝達部の誤差が画像に及ぼす影響が無視できなくなり、被記録媒体の端部における画像品質を著しく劣化させることになる。また、被記録媒体の端部に画像を記録する際の被記録媒体の搬送速度が低下するため、1ページを記録するのに時間がかかる。しかしながら、本発明では、上記した複雑な制御が不要であり、前述のように、全ノズルからインク滴が吐出されることによって被記録媒体の端部への縁なし記録が可能である。すなわち、ノズルからのインク滴の吐出に関して複雑な制御を行うことなく、高画質を維持した状態で縁なし記録が高速に行われる。
さらに、上記ノズルの断面形状は必ずしも真円ではないことや、ノズル表面に微細なゴミが付着する場合もあり、そのため、インク滴は、ノズルから直下に吐出されるのではなく若干斜め方向に吐出される場合がある。そのような場合においても、上記溝の幅が記録ヘッドのインク吐出領域よりも広く設定されているので、インク滴が溝の外部に付着することがない。その結果、被記録媒体の裏面がインクによって汚れることが確実に防止される。
(15)また、上記可動支持部の上記搬送方向の角部に面取加工が施されていることが好ましい。
この構成では、第1媒体支持部を通過した被記録媒体の端部が可動支持部の搬送方向の角部に当接した場合であっても、当該被記録媒体の端部は、滑らかに可動支持部の上面に案内される。したがって、可動支持部が設けられることに起因して、被記録媒体の円滑な搬送が妨げられることはない。
(16)また、上記スライド駆動手段は、被記録媒体の先端が上記フレームの上記搬送方向上流側端部に搬送されたときに上記可動支持部を上記搬送方向上流側端部に配置し且つ該被記録媒体の搬送に伴って該被記録媒体の先端を支持したまま上記可動支持部を上記搬送方向下流側にスライドさせ、被記録媒体の後端が上記フレームの上記搬送方向上流側端部に搬送されたときに上記可動支持部を上記搬送方向上流側端部に配置し且つ該被記録媒体の搬送に伴って該被記録媒体の後端を支持したまま上記可動支持部を上記搬送方向下流側にスライドさせるものであってもよい。
これにより、被記録媒体の先端がプラテン上に搬送されたときは、可動支持部は、当該被記録媒体の先端を一旦搬送方向上流側へ迎えに行くようにスライドされる。そして、この可動支持部は、当該被記録媒体の搬送に伴って当該被記録媒体の先端を支持したまま当該搬送方向下流側にスライドされる。一方、可動支持部が当該搬送方向下流側にスライドされた後、被記録媒体の後端がプラテン上に搬送されたときは、再び、上記可動支持部は、被記録媒体の後端を迎えに行くように搬送方向上流側へスライドされる。そして、当該被記録媒体の搬送に伴って当該被記録媒体の後端を支持したまま当該搬送方向下流側にスライドされる。従って、この被記録媒体の端部は、可動支持部によって常時支持され、上記溝内に進入することはない。その結果、この被記録媒体と記録ヘッドとの距離は、確実に一定に保たれる。
本インクジェット記録装置によれば、上記プラテン上における被記録媒体の搬送方向端部の搬送位置に応じたスライド開始タイミングで、スライド駆動手段によって上記可動支持部がスライドされるため、被記録媒体の後端に画像が記録された後に、被記録媒体の搬送に先行して可動支持部をスライドさせることができる。その結果、被記録媒体後端から可動支持部へのインクの乗り移りによる付着を防止することが可能となり、被記録媒体の裏面を汚すことなく、高い印刷品質を維持することができる。
また、本インクジェット記録装置では、少なくとも上記第2搬送手段によって該被記録媒体が搬送されている場合に、スライド駆動手段によって上記可動支持部が上記搬送方向の上流側にスライドされる。従って、被記録媒体に搬送方向とは反対方向の上記摩擦力が作用したとしても、搬送方向下流側の第2搬送手段によって被記録媒体が引っ張られるようにして搬送されるため、被記録媒体の撓みが防止される。その結果、記録画像におけるバンディングの発生が防止され、高い画像品質を維持することができる。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係る複合機1(インクジェット記録装置)の外観斜視図であり、図2は、この複合機1の断面図である。
複合機1は、下部にプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFP:Multi Function Product)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。複合機1のうちプリンタ部2が、本発明に係るインクジェット記録装置に相当する。したがって、プリンタ機能以外の機能は任意のものであり、例えば、スキャナ部3が省略された単機能のプリンタとして本発明に係るインクジェット記録装置が実施されてもよい。
複合機1のプリンタ部2は、主にコンピュータ等の外部情報機器と接続されて、該コンピュータ等から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙(被記録媒体)に画像や文書を記録する。なお、複合機1は、デジタルカメラ等が接続されて、デジタルカメラ等から出力される画像データを記録用紙に記録したり、メモリカード等の各種記憶媒体が装填されて、該記憶媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録することも可能である。
図1が示すように、複合機1は高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形であり、複合機1の下部がプリンタ部2である。プリンタ部2は、正面に開口2aが形成されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、開口2aの内側に上下2段に設けられている。給紙トレイ20には、被記録媒体である複数枚の記録用紙が積載され、例えば、A4サイズ以下のB5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容される。給紙トレイ20はスライドトレイ20aを備えており、これが必要に応じて引き出されることによりトレイ面が拡大される(図2参照)。これにより、給紙トレイ20は、例えば、リーガルサイズの記録用紙を収容することができるようになる。給紙トレイ20に収容された記録用紙がプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
複合機1の上部はスキャナ部3である。このスキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1及び図2が示すように、複合機1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー30の下側に、プラテンガラス31及びイメージセンサ32が設けられている。プラテンガラス31には、画像読取りを行う原稿が載置される。プラテンガラス31の下方には、複合機1の奥行き方向(図2の左右方向)を主走査方向とするイメージセンサ32が、複合機1の幅方向(図2の紙面垂直方向)に往復動可能に設けられている。
図1及び図2が示すように、複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機1は、操作パネル4からの操作指示に基づいて動作する。複合機1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機1が動作する。複合機1の正面の左上部には、スロット部5が設けられている(図1参照)。スロット部5には、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能である。操作パネル4において所定の操作を行うことにより、スロット部5に装填された小型メモリカードに記憶された画像データが読み出される。読み出された画像データに関する情報は、操作パネル4の液晶表示部に表示され、この表示に基づいて、任意の画像をプリンタ部2が記録用紙に記録させる。
以下、複合機1の内部構成、特にプリンタ部2の構成について説明される。
図2が示すように、複合機1の底側に給紙トレイ20が設けられ、給紙トレイ20の奥側に分離傾斜板22が設けられている。分離傾斜板22は、給紙トレイ20から重送された記録用紙を分離して、最上位置の記録用紙を上方へ案内する。用紙搬送路23は、分離傾斜板22から上方へ向かった後、正面側へ曲がって、複合機1の背面側から正面側へと延び、画像記録ユニット24を経て排紙トレイ21へ通じている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
図3は、プリンタ部2の主要構成を示す部分拡大断面図である。
図3が示すように、給紙トレイ20の上側に給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ供給する。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、LFモータ71(図5参照)を駆動源として駆動伝達機構27を介して回転駆動される。この駆動伝達機構27は複数のギアを有し、これらが噛合されることにより構成されている。
給紙アーム26は、基軸26aに支持されている。給紙アーム26は、基軸26aを回動軸として回転可能に設けられており、このため、給紙トレイ20に接離可能に上下動することができる。ただし、給紙アーム26は、自重により又はバネ等に付勢されて給紙トレイ20に接触するように下側へ回動付勢されており、給紙トレイ20が挿抜される際に上側へ退避するようになっている。給紙アーム26が下側へ回動されることにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転されることにより、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ送り出される。記録用紙は、その先端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、用紙搬送路23へ送り込まれる。給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、該記録用紙は分離傾斜板22との当接によって制止される。
用紙搬送路23は、画像記録ユニット24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とによって区画形成されている。例えば、複合機1の背面側の用紙搬送路23の湾曲部17は、外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とが装置フレームに固定されることにより構成されている。用紙搬送路23において、特に用紙搬送路23が曲がっている箇所には、回転コロ16が設けられている。この回転コロ16は、用紙搬送路23の幅方向を軸方向として回転自在に設けられている。回転コロ16のローラ面は、外側ガイド面に露出されている。したがって、用紙搬送路23が曲がっている箇所においても、記録用紙が円滑に搬送される。
図3が示すように、用紙搬送路23には、画像記録ユニット24が配置されている。画像記録ユニット24は、インクジェット記録ヘッド39を搭載して主走査方向へ往復動するキャリッジ38を備えている。インクジェット記録ヘッド39には、複合機1内にインクジェット記録ヘッド39とは独立に配置されたインクカートリッジからインクチューブ41(図4参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給される。キャリッジ38が往復動される間に、インクジェット記録ヘッド39から各色インクが微小なインク滴として選択的に吐出されることにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。本実施形態に係る複合機1は、4色のインクで画像記録を行うものであるが、インク色の数は特に限定されず、例えば、6色インクや8色インクにより画像記録を行う場合には、インクカートリッジ40を増やすことが可能であることは勿論である。なお、図3及び図4には、インクカートリッジは図示されていない。
図4は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図であり、主としてプリンタ部2の略中央から装置背面側の構成を示すものである。また、図5は、プリンタ部2の主要構成を示す斜視図であり、画像記録ユニット24の構成を示すものである。
図4及び図5が示すように、用紙搬送路23の上側において一対のガイドレール43,44が配置されている。これらガイドレール43,44は、記録用紙の搬送方向(図4の上側から下側方向)に所定距離を隔てられて対向しており、且つ記録用紙の搬送方向と直交する方向(図4の左右方向)に延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ部2の筐体内に設けられ、プリンタ部2を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐようにして記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動可能に載置されている。このように、ガイドレール43,44が記録用紙の搬送方向にほぼ水平に並べられることにより、プリンタ部2の高さが低くなり、装置の薄型化が実現されている。
記録用紙の搬送方向上流側に配設されたガイドレール43は、用紙搬送路23の幅方向(図4の左右方向)の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものである。また、記録用紙の搬送方向下流側に配設されたガイドレール44は、用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状のものである。キャリッジ38の搬送方向上流側の端部がガイドレール43に載置され、キャリッジ38の搬送方向下流側の端部がガイドレール44に載置されており、キャリッジ38は、各ガイドレール43,44の長手方向に摺動されるようになっている。
ガイドレール44の搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対等の狭持部材により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動することができる。つまり、キャリッジ38は、ガイドレール43,44上に摺動自在に担持され、ガイドレール44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復動する。なお、図示されていないが、縁部45には、キャリッジ38の摺動を円滑にするためにグリースなどの潤滑剤が塗布されている。
ガイドレール44の上面には、図4が示すように、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、用紙搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ47と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト49が張架されてなるものである。駆動プーリ47の軸にはCRモータ73(図5参照)から駆動力が伝達され、駆動プーリ47の回転によりタイミングベルト49が周運動する。なお、タイミングベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものも採用され得る。
キャリッジ38は、その底面側においてタイミングベルト49に固着されている。したがって、タイミングベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上を往復動する。このようなキャリッジ38にインクジェット記録ヘッド39が搭載されて、インクジェット記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向を主走査方向として往復動される。
図4が示すように、ガイドレール44には、リニアエンコーダ77(図8参照)のエンコーダストリップ50が配設されている。エンコーダストリップ50は、透明な樹脂からなる帯状のものである。ガイドレール44の幅方向(キャリッジ38の往復動方向)の両端には、その上面から起立するように一対の支持部33,34が形成されている。エンコーダストリップ50は、その両端部が支持部33,34に係止されて、縁部45に沿って架設されている。なお、同図には示されていないが、支持部33,34の一方には、板バネが設けられており、該板バネによりエンコーダストリップ50の端部が係止されている。この板バネにより、エンコーダストリップ50に長手方向の張力が作用してその弛みが防止されるとともに、エンコーダストリップ50に外力が作用した場合には、該板バネが弾性変形して、エンコーダストリップ50が撓むようになっている。
エンコーダストリップ50には、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが、所定ピッチで長手方向に交互に配置されたパターンが記されている。キャリッジ38の上面のエンコーダストリップ50に対応する位置には、透過型センサである光学センサ35が設けられている。光学センサ35は、キャリッジ38とともにエンコーダストリップ50の長手方向に沿って往復動し、その往復動の際にエンコーダストリップ50のパターンを検知する。インクジェット記録ヘッド39には、インクの吐出を制御するヘッド制御基板が設けられている。このヘッド制御基板は、光学センサ35の検知信号に基づくパルス信号を出力する。このパルス信号に基づいてキャリッジ38の位置が判断されて、キャリッジ38の往復動が制御される。なお、図4及び図5では、ヘッド制御基板はキャリッジ38のヘッドカバーで覆われており、図に表れていない。
図3及び図4が示すように、用紙搬送路23の下側には、インクジェット記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に亘って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過する。後に詳述されるが、プラテン42には、可動リブ121を有する可動支持部104(図8乃至図12参照)が設けられている。この可動支持部104は、プラテン42上を搬送される記録用紙の搬送位置に応じて、後述される駆動機構105(スライド駆動手段の一例)によってスライド駆動される。
図4が示すように、記録用紙が通過しない範囲、すなわちインクジェット記録ヘッド39による画像記録範囲外には、パージ機構51や廃インクトレイ84等のメンテナンスユニットが配設されている。パージ機構51は、インクジェット記録ヘッド39のノズル53(図6参照)から気泡や異物を吸引除去するものである。パージ機構51は、インクジェット記録ヘッド39のノズル53を覆うキャップ52と、キャップ52を通じてインクジェット記録ヘッド39に接続されるポンプ機構と、キャップ52をインクジェット記録ヘッド39のノズル53に接離させるための移動機構とからなる。なお、図4においては、ポンプ機構及び移動機構はガイドフレーム44の下方にあり、図に表れていない。
インクジェット記録ヘッド39から気泡等の吸引除去が行われる際には、インクジェット記録ヘッド39がキャップ52上に位置するようにキャリッジ38が移動される。その状態でキャップ52が上方へ移動されて、インクジェット記録ヘッド39の下面にノズル53が密閉するように密着される。ポンプ機構によりキャップ52内が負圧にされることにより、インクジェット記録ヘッド39のノズル53からインクが吸引される。ノズル53内の気泡や異物は、該インクとともに吸引除去される。
廃インクトレイ84は、フラッシングと呼ばれるインクジェット記録ヘッド39からのインクの空吐出を受けるためのものである。廃インクトレイ84は、プラテン42の上面であって、キャリッジ38の往復動範囲内且つ画像記録範囲外に形成されている。なお、廃インクトレイ84内にはフェルトが敷設されており、フラッシングされたインクは、該フェルトに吸収されて保持される。これらメンテナンスユニットにより、インクジェット記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去、乾燥防止等のメンテナンスが行われる。
図1が示すように、プリンタ部2の筐体の正面には、扉7が開閉自在に設けられている。扉7が開かれると、カートリッジ装着部が装置正面側に露出され、インクカートリッジが装抜可能になる。カートリッジ装着部は、図示されていないが、インクカートリッジに対応して4つの収容室に区画されており、各収容室に、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの各色インクを保持するインクカートリッジが収容される。カートリッジ装着部からキャリッジ38へは、図4が示すように、各色インクに対応した4本の上記インクチューブ41が引き回されている。前述のように、キャリッジ38に搭載されたインクジェット記録ヘッド39には、各インクチューブ41を通じて、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジから各色インクが供給される。
インクチューブ41は、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ38の往復動に追従して撓む可撓性を有する。カートリッジ装着部から導出された各インクチューブ41は、装置の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、図4が示すように、装置本体の固定クリップ36に一旦固定されている。各インクチューブ41は、固定クリップ36からキャリッジ38までの部分が装置本体等に固定されておらず、当該部分がキャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。なお、図4においては、固定クリップ36からカートリッジ装着部側へ延びるインクチューブ41は省略されている。
制御部64(図13参照)を構成するメイン基板からインクジェット記録ヘッド39のヘッド制御基板へはフラットケーブル85を通じて記録用信号等の伝送が行われる。なお、上記メイン基板は装置正面側(図4手前側)に配設されており、図4では図示されていない。フラットケーブル85は、電気信号を伝送する複数本の導電線をポリエステルフィルム等の合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のものであり、メイン基板とヘッド制御基板とを電気的に接続している。
図6は、インクジェット記録ヘッド39のノズル形成面を示す底面図である。
同図が示すように、インクジェット記録ヘッド39の下面にノズル53が設けられている。ノズル53は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色インクごとに、記録用紙の搬送方向に列設されている。なお、図6において、上下方向が記録用紙の搬送方向であり、左右方向がキャリッジ38の往復動方向である。CMYBkの各色インクのノズル53は、それぞれ記録用紙の搬送方向に列をなしており、その各色インクのノズル53の列が、キャリッジ38の往復動方向に並んでいる。各ノズル53の搬送方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定される。また、カラーインクの種類数に応じてノズル53の列数を増減することも可能である。
図7は、インクジェット記録ヘッド39の内部構成を示す部分拡大断面図である。
同図が示すように、インクジェット記録ヘッド39の下面に形成されたノズル53の上流側には、圧電素子54を備えたキャビティ55が形成されている。圧電素子54は所定の電圧が印加されることにより変形され、キャビティ55の容積を縮小する。このキャビティ55の容量の変化によって、キャビティ55内のインクがノズル53からインク滴として吐出される。
キャビティ55は、各ノズル53ごとに設けられており、複数のキャビティ55に亘ってマニホールド56が形成されている。マニホールド56は、CMYBkの各色インクごとに設けられている。マニホールド56の上流側にはバッファタンク57が配設されている。バッファタンク57も、CMYBkの各色インクごとに設けられている。各バッファタンク57には、インクチューブ41を流通するインクがインク供給口58から供給される。バッファタンク57に一旦インクが貯留されることにより、インクチューブ41等でインク内に発生した気泡が捕捉され、キャビティ55及びマニホールド56に気泡が進入することが防止される。バッファタンク57内で捕捉された気泡は、気泡排出口59からポンプ機構により吸引除去される。バッファタンク57からマニホールド56へ供給されたインクは、マニホールド56により各キャビティ55に分配される。
このようにして、インクカートリッジからインクチューブ41を通じて供給された各色インクが、バッファタンク57、マニホールド56を介してキャビティ55へ流れるようにインク流路が構成される。このようなインク流路を通じて供給されたCMYBkの各色インクが、圧電素子54の変形により、ノズル53からインク滴として記録用紙に吐出される。
図3および図5に示すように、画像記録ユニット24の上流側には、搬送ローラ87とピンチローラ88とを有する一対の搬送ローラ対89(搬送手段、第1搬送手段の一例)が設けられている。ピンチローラ88は、該搬送ローラ87の下方に圧接状態で配設されている。搬送ローラ87及びピンチローラ88は、用紙搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持してプラテン42上へ搬送する。ピンチローラ88は、所定の付勢力で搬送ローラ87に押圧された状態でピンチローラホルダ96により回転自在に支持されている。
画像記録ユニット24の下流側には、排紙ローラ90(駆動ローラに相当)と該排紙ローラ90の上方に設けられた拍車ローラ91(従動ローラに相当)とを有する一対の排出ローラ対92(搬送手段、第2搬送手段の一例)が設けられている。排紙ローラ90及び拍車ローラ91は、記録済みの記録用紙を狭持して排紙トレイ21へ搬送する。拍車ローラ91は、記録済みの記録用紙と圧接するので、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸されている。拍車ローラ91は、排紙ローラ90と接離する方向にスライド移動可能に設けられ、図示しないコイルバネにより排紙ローラ90に圧接するように付勢されている。排紙ローラ90と拍車ローラ91との間に記録用紙が進入すると、拍車ローラ91は、記録用紙の厚み分だけ付勢力に反して退避し、該記録用紙を排紙ローラ90に圧接するように狭持する。これにより、排紙ローラ90の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。
搬送ローラ87は、該搬送ローラ87の軸方向の一端に連結されたLFモータ71(図5参照)から駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動される。搬送ローラ87と排紙ローラ90とはギアなどの伝達機構により連結されており、該伝達機構を介して搬送ローラ87から駆動力が排紙ローラ90に伝達される。従って、搬送ローラ87および排紙ローラ90の回転は同期されている。搬送ローラ87に設けられたロータリーエンコーダ76(図13参照)は、搬送ローラ87とともに回転するエンコーダディスク61のパターンを光学センサで検知する。この検知信号に基づいてLFモータ71が制御されることで搬送ローラ87および排紙ローラ90が回転駆動される。なお、前記した可動支持部104のをスライドさせるための後述するリブ用モータ93(図13参照)も上記検知信号に基づいて制御される。これにより、可動支持部104が所定の方向に所定のタイミングでスライド移動される。可動支持部104の駆動手法については図14のフローチャートを用いて後述する。
搬送ローラ87及びピンチローラ88に狭持された記録用紙は、所定の改行幅でプラテン42上を間欠して搬送される。その改行毎にインクジェット記録ヘッド39が走査されて、記録用紙の先端側から画像記録が行われる。画像記録が行われた記録用紙の先端側は、排紙ローラ90及び拍車ローラ91に狭持される。つまり、記録用紙はその先端側を排紙ローラ90及び拍車ローラ91に狭持され、後端側を搬送ローラ87及びピンチローラ88に狭持された状態で所定の改行幅で間欠して搬送され、改行毎にインクジェット記録ヘッド39により画像記録が行われる。さらに記録用紙が搬送されると、記録用紙の後端が搬送ローラ87及びピンチローラ88から抜け出して、搬送ローラ対89による狭持から解放される。つまり、記録用紙は、排紙ローラ90及び拍車ローラ91にのみ狭持されて所定の改行幅で間欠して搬送され、改行毎にインクジェット記録ヘッド39により画像記録が行われる。記録用紙の所定領域に画像記録が行われた後は、排紙ローラ90が連続的に回転駆動される。これにより、排紙ローラ90及び拍車ローラ91により狭持された記録用紙が排紙トレイ21へ排出される。
用紙搬送路23の上記搬送ローラ対89の上流側にレジセンサ95が配置されている。このレジセンサ95は、図3が示す検出子及び図示されていない光学センサを備えている。検出子は、用紙搬送路23に出没可能に配置されている。検出子は、常時用紙搬送路23に突出するように弾性付勢されており、用紙搬送路23を搬送される記録用紙が当接することにより、用紙搬送路23へ没入するように回動する。検出子の出没により、上記光学センサがON又はOFFに変化される。したがって、記録用紙が検出子を出没させることによって、用紙搬送路23における記録用紙の先端又は後端の位置が検出される。
本実施形態に係る複合機1では、LFモータ71は、上述したように、給紙トレイ20からの記録用紙の給紙のほか、プラテン42上に位置する記録用紙の搬送や記録済みの記録用紙の排紙トレイ21への排出の駆動源となっている。すなわち、LFモータ71は、歯車列やタイミングベルトなどで構成された所定の動力伝達機構を介して搬送ローラ87および排紙ローラ90の駆動軸を駆動すると共に(図5参照)、上記駆動伝達機構27を介して給紙ローラ25を駆動するようになっている。
図8は、図5の要部拡大斜視図であって、プラテン42の拡大斜視図である。図9は、プラテン42の平面図である。また、図10は、図9におけるX矢視図である。図11は、プラテン42の底面図であり、さらに、図12は、プラテン42の底面側からみた斜視図である。
プラテン42は、前述のように、記録ヘッド39に対向して(図3において下方に)配置されており、搬送される記録用紙を支持する(図3及び図5参照)。図8が示すように、プラテン42は、全体として薄肉の細長矩形板状を呈している。プラテン42は、その長手方向が上記主走査方向に沿うように配置されている。また、同図において、矢印101の方向が上記搬送方向であって、記録用紙は、上記搬送ローラ対89および排紙ローラ対92によって矢印101の向きに搬送される。
プラテン42は、フレーム100と、フレーム100に設けられた第1固定リブ102(第1媒体支持部に相当)及び第2固定リブ103(第2媒体支持部に相当)と、フレーム100にスライド可能に設けられた可動支持部104と、可動支持部104を後述のようにスライド駆動させる駆動機構105(スライド駆動手段の一例)とを備えている。
フレーム100は、例えば合成樹脂や鋼板からなり、プラテン42の骨格を構成している。フレーム100は、断面形状が略C形(いわゆるチャンネル形)に形成されている。図8乃至図12が示すように、フレーム100の基端及び先端それぞれに、ブラケット106,107が設けられている。これらブラケット106,107は、フレーム100と一体的に形成されている。フレーム100は、ブラケット106,107を介して複合機1に係止固定されている(図3及び図5参照)。なお、図9において紙面右端がフレーム100の先端であり、紙面左側がフレーム100の基端である。
フレーム100の基端に駆動機構取付部108が設けられている。図8乃至図12、特に、図8および図12が示すように、駆動機構取付部108は、フレーム100の基端に延設されており、フレーム100の上面109側に設けられた上板110と、フレーム100の下面側に設けられた下板111とを備えている。上板110及び下板111は、ともに矩形状を呈し、フレーム100と一体的に形成されている。下板111は、後に詳述される駆動機構105を支持するものである。
フレーム100の上面109に上記した第1固定リブ102及び第2固定リブ103が設けられている。具体的には、第1固定リブ102は、上面109の搬送方向上流側端部付近に設けられており、上方に(記録ヘッド39側に)突出されている。また、第2固定リブ103は、上面109の搬送方向下流側端部付近に設けられており、上方に突出されている。図8が示すように、第1固定リブ102及び第2固定リブ103は、矩形の薄肉板状部材からなり、これらが上記上面109に立設されている。
本実施形態では、複数の第1固定リブ102が上面109に設けられており、各第1固定リブ102は、主走査方向に並設されている。同様に、複数の第2固定リブ103が上面109に設けられており、主走査方向に並設されている。なお、図中においては一部の固定リブにのみ符号を付している。このような複数の第1固定リブ102及び第2固定リブ103が設けられることにより、第1固定リブ102と第2固定リブ103との間に溝116が形成されている。溝116は、図8及び図9が示すように、上記主走査方向に延び、且つ上記搬送方向に広がっている。
溝116の幅寸法(搬送方向寸法)は、上記した記録ヘッド39のサイズに対応されている。具体的には、溝116の幅寸法117(図9参照)は、記録ヘッド39のインク吐出領域118(図6参照)よりも広く設定されている。これにより、仮に記録用紙がプラテン42上に配置されていない場合に、記録ヘッド39の全ノズル(インク吐出口53)からインク滴が吐出されたとしても、これらすべてのインク滴は、上記溝116に受け止められる。したがって、縁なし記録が行われるときに、記録ヘッド39の全ノズルからインク滴が吐出されながら、記録用紙の端部への画像記録が可能となる。すなわち、縁なし記録が高速で行われると共に、インク吐出口53からのインク滴の吐出に関し、複雑な制御が不要となる。さらに、上記インク吐出口53の断面形状は必ずしも真円ではないことに加えて、インク吐出口53内に微細なゴミが付着する場合もあり、そのため、インク滴は、インク吐出口53から真直に吐出されるのではなく若干斜め方向に吐出される場合がある。その場合においても、上記溝116の幅が記録ヘッド39のインク吐出領域118よりも広く設定されているので、インク滴が溝116の外部に付着することがない。その結果、記録用紙の裏面がインクによって汚れることが確実に防止される。
特に、本実施形態では、図9が示すように、一の第1固定リブ102と一の第2固定リブ103とは、上記溝116を介して上記搬送方向(矢印101の方向)に対向されている。また、図8が示すように、第1固定リブ102の角部112,113は、面取加工が施されており、一対の傾斜面が形成されている。本実施形態では、第1固定リブ102の搬送方向両側の角部112,113に上記傾斜面が形成されているが、少なくとも搬送方向上流側の角部112に上記傾斜面が形成されていればよい。同様に、第2固定リブ103の角部114,115にも面取加工が施されており、一対の傾斜面が形成されている。本実施形態では、第2固定リブ103の搬送方向両側の角部114,115に上記傾斜面が形成されているが、少なくとも搬送方向上流側の角部114に上記傾斜面が形成されていればよい。このように、第1固定リブ102及び第2固定リブ103の角部112乃至115に面取加工が施されていることによる作用効果については、後述される。
フレーム100の上面109に複数のスリット119が設けられている。図8が示すように、スリット119は、搬送方向に上記上面109の搬送方向上流側端部から下流側端部まで延びている。各スリット119は、隣り合う第1固定リブ102の間と隣り合う第2固定リブ103の間とを連続するように形成されている。可動支持部104が備える可動リブ121は、スリット119にフレーム100の下面から上面109へ嵌め込まれ、当該スリット119から上方に突出している。
具体的には、可動支持部104は、図12が示すように、箱状に形成されたベース120と、矩形の薄肉板状部材からなる可動リブ121とを有する。可動支持部104は、合成樹脂又は金属から構成され得る。ベース120は、断面がC形のチャンネル部材として構成されており、上記フレーム100の内側に嵌め込まれている。同図では示されていないが、このベース120は、その主走査方向両端部が上記フレーム100によってスライド可能に支持されている。したがって、このベース120は、フレーム100の内側で搬送方向(図11において矢印147の方向)に円滑にスライド可能となっている。
ベース120の上面に可動リブ121が設けられている。可動リブ121は、ベース120と一体的に形成されている。可動リブ121は、矩形状を呈し、スリット119を挿通してフレーム100の上面109から上方に突出している。可動リブ121は、ベース120の上面に複数設けられている。具体的には、複数の可動リブ121は、ベース120の上面に上記主走査方向に沿って所定間隔で並設されている。この所定間隔とは、スリット119のピッチに対応されている。したがって、複数の可動リブ121が、各スリット119から上方に突き出している。なお、図中では一部の可動リブ121にのみ符号を付している。
可動リブ121の角部122,123は、第1固定リブ102及び第2固定リブ103と同様に面取加工が施されており、一対の傾斜面が形成されている。本実施形態では、可動リブ121の搬送方向両側の角部122,123に上記傾斜面が形成されているが、少なくとも搬送方向上流側の角部122に上記傾斜面が形成されていればよい。このように、可動リブ121の角部122,123に面取加工が施されているため、第1固定リブ102を通過した記録用紙146の端部が可動支持部104の角部122に当接した場合であっても、この記録用紙146の端部は、滑らかに可動支持部104の上面に案内される。したがって、可動支持部104が設けられることに起因して、記録用紙146の円滑な搬送が妨げられることはない。また、同様に、上述したように、第1固定リブ102及び第2固定リブ103のそれぞれの角部112〜115にも面取加工が施されており、この部分が傾斜面として構成されているため、搬送中の記録用紙146が上記角部112〜115に当接した場合であっても、記録用紙146の円滑な搬送が妨げられることはない。
可動支持部104は、図8乃至図12に示すように、記録用紙の搬送方向の幅が比較的狭く形成されている。具体的には、プラテン42上の溝116の幅寸法117(図9参照)よりも幅方向に狭く形成されている。従って、プラテン42の上方に突出される可動リブ121の幅も同様に溝116の幅寸法117よりも狭く形成されている。このように可動支持部104の幅を狭くすることで、プラテン42を幅方向に小型化することできる。
駆動機構105は、上記した可動支持部104を記録用紙の搬送方向にスライドさせるためのものであって、図11及び図12が示すように、プーリ125と、揺動部材126とを備えている。更にまた、プーリ125に回転力を伝達する図示しないタイミングベルトと該タイミングベルトに出力軸が連結されたリブ用モータ93(図13参照)が設けられている。リブ用モータ93としては、本実施形態では、フィードバック制御の不要なステッピングモータを用いる。このリブ用モータ93が後述するように制御されることで、該リブ用モータ93の駆動力がタイミングベルトを経てプーリ125に伝達され、そして、プーリ125から揺動部材126に伝達される。これにより、揺動部材126が記録用紙の搬送方向に移動される。なお、本実施形態では、リブ用モータ93の駆動力をタイミングベルトおよびプーリ125によって揺動部材126に伝達する機構が例示されるが、もちろん、タイミングベルト及びプーリ125に代えて歯車などの伝達機構を用いてもかまわない。
プーリ125は、円盤状に形成されており、回転中心軸134によって回転可能に支持されている。回転中心軸134は、フレーム100(具体的には、下板111)に固定されており、プーリ125の中心に挿通されている。さらに、このプーリ125は、円形溝136を備えている。円形溝136は、リング状に形成されており、その中心は、プーリ125の中心と異なっている。すなわち、円形溝136は、プーリ125の中心に対して偏心されている。この円形溝136に揺動部材126の基端部126aが係合されている。
揺動部材126は、細長平板からなる本体137と、揺動部材126の基端部126a(本体137の基端部126a)に設けられた係合ピン138(図12参照)と、先端部126bに設けられた係合ロッド139とを備えている。揺動部材126も合成樹脂又は金属から構成され得る。本体137は、揺動中心軸140によって回転自在に支持されている。この揺動中心軸140は、駆動機構取付部108の下板111に固定されており、本体137の中央部から基端部126aの所定の位置に挿通されている。係合ピン138は、本体137から上方に突出するように設けられており(図11参照)、プーリ125の円形溝136に嵌め込まれている。係合ピン138の外径寸法は、円形溝136の溝幅寸法に対応されており、係合ピン138は、円形溝136に沿ってがたつくことなく相対的にスライドすることができるように構成されている。なお、かかる構成としては周知のスライド機構を適用すればよい。
係合ピン138が円形溝136に沿って相対移動することにより、本体137は、揺動中心軸140を中心にして回転する。すなわち、揺動部材126は、揺動中心軸140を中心にして揺動される。これにより、本体137の先端部126bに設けられた係合ロッド139が、揺動中心軸140を中心とする円弧状をスライドすることになる。また、係合ロッド139は、可動支持部104のベース120に連結されている。ただし、このベース120は、長手方向(すなわち、主走査方向)に延びる長孔141を備えており、係合ロッド139は、長孔141に嵌め込まれている。しかも、係合ロッド120の外径寸法は、長孔141の内径寸法に対応されており、係合ロッド139は、走査方向以外の方向について長孔141との間でがたつくことはない。
したがって、前述のように本体137が揺動し、係合ロッド139が揺動中心軸140を中心とする円弧状をスライドした場合には、係合ロッド139が長孔141に沿って主走査方向にスライドしつつ、ベース120が記録用紙の搬送方向に移動される。なお、前述のように、ベース120は、その主走査方向両端部がフレーム100によってスライド可能に支持されているから、ベース120は、フレーム100の内側においてフレーム100の上面109に平行な仮想面上を、搬送方向(図11において矢印147の方向)に円滑にスライドする。換言すれば、揺動部材126が揺動することにより、可動支持部104が搬送方向に沿ってスライドすることになる。
本実施形態では、可動支持部104が後述する位置T1(図15参照)から位置T4(図17参照)の間をスライド可能となるように上記円形溝136が形成されている。なお、必ずしも、可動支持部104のスライド範囲が、位置T1から位置T4に至るまでの範囲である必要はなく、少なくとも、第1固定リブ102の溝116側の端部と可動リブ121の上流側端部とが略一致する位置T3(図16、図17参照)から、第2固定リブ103の溝116側の端部と可動リブ121の下流側端部とが略一致する位置T2に至るまでの範囲であればよい。
図13は、複合機1の制御部64の構成を示すブロック図である。
制御部64は、プリンタ部3のみでなくスキャナ部2も含む複合機1の全体動作を制御するものであり、フラットケーブル85が接続されるメイン基板により構成される。なお、スキャナ部3に関する構成は、本発明の主要な構成ではないのでその詳細な説明は省略される。
制御部64は、図13が示すように、CPU(Central Processing Unit)65、ROM(Read Only Memory)66、RAM(Random Access Memory)67、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)68を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されている。
ROM66には、複合機1の各種動作を制御するためのプログラムや制御に用いられるテーブルデータ等が格納されている。RAM67は、CPU65が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。また、EEPROM68には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LFモータ71、CRモータ73、リブ用モータ93に通電する相励磁信号等を生成する。この信号は、各モータ71,73,94を駆動するための駆動回路72,74,94に付与され、これら駆動回路72,74,94を介して駆動信号が各モータ71,73,94に通電される。このようにして、モータ71,73,94の回転制御が行われる。
駆動回路72は、給紙ローラ25、搬送ローラ87、排紙ローラ90及びパージ機構51に接続されたLFモータ71を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を生成する。この電気信号を受けてLFモータ71が回転し、LFモータ71の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動伝達機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ87、排紙ローラ90、及びパージ機構51へ伝達される。すなわち、前述のように、本実施形態に係る複合機1では、LFモータ71は、給紙トレイ20からの記録用紙の給紙のほか、プラテン42上に位置する記録用紙の搬送や記録済みの記録用紙の排紙トレイ21への排出の駆動源となっている。
駆動回路74は、CRモータ73を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を生成する。この電気信号を受けてCRモータ73が回転し、CRモータ73の回転力がベルト駆動機構46を介して、キャリッジ38へ伝達されることによりキャリッジ38が往復動される。このようにして、キャリッジ38の往復動が制御部64により制御される。
駆動回路94は、リブ用モータ93を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、リブ用モータ93を回転するための電気信号を生成する。この電気信号を受けてリブ用モータ93が回転し、リブ用モータ93の回転力が駆動機構105(図12参照)を介して、揺動部材126へ伝達される。更にその回転力が可動支持部104に伝達されることにより、可動支持部104が記録用紙の幅方向にスライド移動される。これにより、プラテン42上において可動リブ121が記録用紙の幅方向にスライド移動される。なお、制御部64による可動支持部104のスライド移動の詳細については、図14のフローチャートを用いて後述する。
駆動回路75は、インクジェット記録ヘッド39を所定のタイミングで駆動させるものである。駆動回路75は、CPU65から出力される駆動制御手順に基づいて、ASIC70において生成された出力信号を受け、インクジェット記録ヘッド39を駆動制御する。この駆動回路75は、ヘッド制御基板に搭載されており、フラットケーブル85を介して制御部64を構成するメイン基板からヘッド制御基板へ信号が伝送される。これにより、インクジェット記録ヘッド39は、所定のタイミングで各色インクを記録用紙に対して選択的に吐出する。
ASIC70には、搬送ローラ87の回転量を検出するロータリーエンコーダ76、キャリッジ38の位置検知を行うリニアエンコーダ77、記録用紙の先端及び後端の検知を行う上記レジセンサ95(図3参照)が接続されている。キャリッジ38は、複合機1の電源オンにより、ガイドレール43,44の一方の端まで移動されて、リニアエンコーダ77による検知位置が初期化される。この初期位置から、キャリッジ38がガイドレール43,44上を移動すると、キャリッジ38に設けられた光学センサ35がエンコーダストリップ50のパターンを検知し、これに基づくパルス信号数がキャリッジ38の移動量として制御部64に把握される。制御部64は、この移動量に基づいてキャリッジ38の往復動を制御すべく、CRモータ73の回転を制御する。また、制御部64は、レジセンサ95の信号及びロータリーエンコーダ76が検出するエンコーダ量に基づいて記録用紙の先端又は後端の位置を把握し、記録用紙の先端がプラテン42の所定の位置に到達すると、記録用紙を所定の改行幅ごとに間欠搬送すべくLFモータ71の回転を制御する。この改行幅は、記録条件として入力された解像度等に基づいて設定される。
ASIC70には、スキャナ部3や、複合機1の操作指示を行うための操作パネル4、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部5、パソコン等の外部情報機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース78及びUSBインタフェース79等が接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)80やモデム(MODEM)81が接続されている。
以下、図14のフローチャートおよび図15乃至図17の模式図に従って、制御部64により行われる可動支持部104のスライド制御処理の手順の一例とスライド動作の一例について説明される。ここに、図14は、上記スライド制御処理の手順の一例を説明するためのフローチャートである。また、図15乃至図17は、可動支持部104のスライド動作を説明するための模式図である。図中のS1,S2,…は処理手順(ステップ)番号を示す。処理はステップS1から開始される。なお、本実施形態においては、制御部64により行われるスライド制御と上記駆動機構105とによって本発明のスライド駆動手段が具現化される。
当該複合機1において、操作パネル4から縁なし記録機能を有効にする設定がユーザによって予めなされたうえで、画像記録の開始指示が入力された後に、ステップS1以降の処理が開始される。なお、縁なし記録が設定されていないと判断された場合、即ち、通常の画像記録が行われる場合は、可動支持部104が溝116の中央付近に設定された基準位置に静止した状態を維持したまま、画像記録が行われる。
一方、縁なし記録機能が設定されていると判断された場合は、まず、可動支持部104が上記基準位置に移動される。なお、可動支持部104の主走査方向側の一端には検出子124(図8参照)が設けられており、この検出子124を検出するための図示しないフォトインタラプタが用紙搬送路23のガイド部材などに設けられている。これら検出子124およびフォトインタラプタは、可動支持部104が上記基準位置に移動されたときに、検出子124がフォトインタラプタによって検出される位置に配設されている。従って、フォトインタラプタからの検出信号を監視しながらリブ用モータ93を駆動させることによって、可動支持部104の上記基準位置への移動が実現される。
上記基準位置に可動支持部104が移動されると、続いて、ステップS1では、可動支持部104を図15に示す位置T1にスライド移動させる処理が実行される。ここに、上記位置T1は、隣り合う第1固定リブ102の間に予め定められた位置であり、本発明の第1位置に相当する。上記処理は、具体的には、上述したように、CPU65からの指令に従ってリブ用モータ93に通電する相励磁信号がASIC70で生成され、さらに、ASIC70からの出力信号を受けて駆動回路94で生成された電気信号がリブ用モータ93に送られることによって可動支持部104がスライド移動される。CPU65からの上記指令には、上記した基準位置(溝116の中央付近)から位置T1までに可動支持部104をスライド移動させるために要するステップ数が位置情報として含まれており、そのステップ数を基にリブ用モータ93が回転駆動される。なお、後述の位置T2,T3,T4への可動支持部104のスライド移動も上記した位置T1へのスライド移動と同様の制御手順で行われるため、以下の説明では各位置へのスライド移動の処理手順の詳細は省略する。
なお、本実施形態では、後述する記録用紙の給紙に先立って可動支持部104を上記基準位置から位置T1へスライド移動させているが、記録用紙がプラテン42上の画像記録位置に到達する前に可動支持部104を位置T1へ移動させるようにしてもよい。或いは、記録用紙が画像記録位置に到達した後であっても、記録用紙に画像記録が行われる前に上記位置T1へ可動支持部104を移動させればよい。
可動支持部104が位置T1にスライド移動されると、続いて、ステップS2では、給紙トレイ20に収容された記録用紙146(図15参照)をプラテン42へ向けて搬送する処理が実行される。詳細には、まず、LFモータ71が制御部64によって駆動制御されることで給紙ローラ25が回転されることにより給紙トレイ20の最上位位置の記録用紙146が用紙搬送路23に送り出される。記録用紙146が搬送ローラ対89に到達すると、レジスト動作が行われる。このレジスト動作が行われることにより、記録用紙146の先端が揃えられ、記録用紙146の斜行が矯正される。具体的には、LFモータ71により記録用紙146を搬送方向上流側へ戻す方向に回転(逆回転)される搬送ローラ対89によって記録用紙146の進行が妨げられる。上記レジスト動作は、レジセンサ95によって記録用紙146の先端が検出されてから所定時間が経過するまで続けられる。レジスト動作が終了すると、搬送ローラ対89が記録用紙146を搬送方向下流側へ搬送する方向に回転(正回転)される。このとき、記録用紙146は、搬送ローラ対89によって、その先端が画像記録ユニット24(具体的にはインクジェット記録ヘッド39)によって画像記録される位置(画像記録位置)まで搬送される。即ち、記録用紙146の頭出し搬送が行われる。この頭出し搬送は、上記レジスト動作が行われるレジスト位置から画像記録位置までの距離に対応したステップ数に基づいてLFモータ71が駆動制御されることによりなされる。上記頭出し搬送によって、記録用紙146は、その先端が溝116上に幅ΔPだけ突出する位置まで搬送され、その状態で静止される。上記幅ΔPは記録用紙146が溝116に垂れ下がらない程度の微小幅であって、記録用紙146のコシ(剛性)の強さに応じて予め所定幅に設定されている。なお、記録用紙146が上記画像記録位置に搬送されると、図15(a)が示すように、記録用紙146はその先端部分が第1固定リブ102及び可動リブ121によって支持される。このとき、可動リブ121は記録用紙146によって平面視で完全に覆われている。
記録用紙146の頭出し搬送が行われると、続いて、ステップS3では、1改行分の領域の画像記録が実行される。即ち、インクジェット記録ヘッド39から選択的にインク滴が吐出されつつ、走査キャリッジ38が主走査方向へ一往復スライド移動される。なお、可動リブ121は記録用紙146によって平面視で完全に覆われているため、記録用紙146の先端にインク滴が吹き付けられても可動リブ121がインクで汚されることはない。
続いて、ステップS4では、記録用紙146が、その先端に画像記録が行われる位置に存在するかどうかが判断される。具体的には、記録用紙146の先端が上記画像記録位置からフレーム100の搬送方向下流側の端部に至る範囲(以下「端部印刷範囲」と称する)に位置するかどうかが判断される。かかる判断は、例えば、レジスト位置からのLFモータ71のステップ数や、頭出し搬送後のLFモータ71のステップ数をCPU64に監視させ、そのステップ数から記録用紙146の搬送位置を算出することにより判断される。もちろん、このような判断手法に限られず、複数の光学センサを用いて記録用紙146の搬送位置を検出することにより上記判断を行ってもよい。なお、上記した端部印刷範囲は単なる一例である。かかる範囲は適宜設定可能であり、例えば、記録用紙146の先端が溝116上に位置する範囲としてもよい。
ステップS4において、記録用紙146の先端が上記端部印刷範囲に位置すると判断されると、記録用紙146の先端の搬送位置に応じたタイミング(スライド開始タイミング)で可動支持部104がスライド移動される。具体的には、まず、記録用紙146が一改行分だけ間欠搬送され(S5)、その後に、可動支持部104が一改行分だけ搬送方向下流側へスライド移動される(S6)。即ち、可動支持部104のスライド移動が記録用紙146の搬送よりも遅いタイミングで行われる。このとき、可動支持部104は、可動リブ121の搬送方向先端を記録用紙146の搬送方向先端よりも搬送方向上流側へ、少なくとも上記幅ΔP(所定幅に相当)だけずらした状態を維持しつつスライド移動される。従って、可動リブ121は記録用紙146によって常に覆い隠される。
ここで、記録用紙146の間欠搬送は、LFモータ71が制御部64によって一改行幅に相当するステップ数に基づいて駆動制御されることにより達成される。また、可動支持部104のスライド移動も、リブ用モータ93が制御部64によって一改行幅に相当するステップ数に基づいて駆動制御されることにより達成される。本実施形態では、ステップS4において記録用紙146の先端が上記端部印刷範囲に位置すると判断された場合は、上述したように、まず記録用紙146が搬送され、その後、可動支持部104がスライド移動されるため、記録用紙146の先端に吐出された未乾燥のインクが可動リブ121に付着するという不具合は生じない。また、記録用紙146の裏面がインクで汚れることはない。
なお、本実施形態では、記録用紙146の間欠搬送が完了した後に可動支持部104をスライド移動させるようにしているが、記録用紙146の間欠搬送が先に開始されれば十分であって、記録用紙146の間欠搬送中に可動支持部104のスライド移動を開始しても別段かまわない。なお、この場合は、例えば、記録用紙146の搬送速度と可動リブ121の移動速度とを同じ速度に設定するなどして、後にスライド移動される可動リブ121が記録用紙146の先端の搬送位置を追い越さない程度の速度に設定しておくことを要する。また、記録用紙146の間欠搬送と可動支持部104のスライド移動を同期させて同時に開始させてもよい。いずれの場合であっても、可動リブ121にインクが付着して可動リブ121が汚れるという不具合は生じない。
可動支持部104の移動が完了すると、ステップS7では、1ページ分の画像記録が終了したかどうかが判断される。かかる判断は、例えば、LFモータ71のステップ数やキャリッジ38の走査回数などをCPU64に監視させ、かかる数値が所定値に達したかどうかにより判断することができる。ここで、1ページ分の画像記録が終了したと判断されると(S7のYes側)、画像記録済みの記録用紙146を排紙トレイ21に排出する処理が実行される。一方、1ページ分の画像記録が未だ終了していないと判断された場合は(S7のNo側)、上記したステップS3以降の処理が繰り返される。このように、ステップS3からステップS6の処理が繰り返されて、記録用紙146の搬送(S5)と可動支持部104のスライド移動(S6)が繰り返されることにより、図15(a)が示す位置T1から同図(b)および(c)が示すように、記録用紙146の搬送に追従するように可動支持部104がスライド移動される。なお、このときの可動支持部104のスライド移動は、可動リブ121の搬送方向下流側の端部と第2固定リブ103の溝116側の端部とが略一致する位置T2まで可動支持部104が到達した時点で停止され、当該位置T2において可動支持部104は暫く静止される。ところで、上記位置T2は、記録用紙146の先端が溝116に垂れ下がることなく、先端が損傷することなく、第2固定リブ103上へ記録用紙146を導くことができるような位置であればよい。従って、可動リブ121と第2固定リブ103との間に上記した幅ΔP程度の隙間があっても別段かまわない。
記録用紙146の搬送が更に進み、例えば、図16(a)が示すように記録用紙146が搬送されると、ステップS4では記録用紙146の先端が上記端部印刷範囲に位置していないと判断される(S4のNo側)。かかる判断は、CPU64によって監視されたステップ数に基づいて記録用紙146の搬送位置を把握することにより容易に行われ得る。上述の如く判断されると、処理はステップS9に進む。このステップS9では、記録用紙146が、その後端に画像記録が行われる位置に存在するかどうかが判断される。具体的には、記録用紙146の後端が上記端部印刷範囲に位置するかどうかが判断される。かかる判断も、レジスト位置からのLFモータ71のステップ数や、頭出し搬送後のLFモータ71のステップ数などに基づいて記録用紙146の搬送位置を算出することにより判断される。ここで、記録用紙146の後端が上記端部印刷範囲に位置していないと判断された場合は(S9のNo側)、処理はステップS12に進む。
ステップS12では、記録用紙146の搬送位置が中央部記録位置であるかどうかが判断される。ここに、中央部記録位置とは、搬送ローラ対89及び排紙ローラ対92の双方のローラ対によって記録用紙146が狭持されつつ搬送されている状態で画像記録が行われるような記録用紙146の搬送位置を意味する。当該ステップS12における判断も、レジスト位置からのLFモータ71のステップ数や、頭出し搬送後のLFモータ71のステップ数などに基づいて記録用紙146の搬送位置を算出することにより判断される。もちろん、レジセンサ95及び排紙ローラ対92の下流側に設けられた図示しないセンサの検出信号に基づいて上記判断を行ってもよい。
記録用紙146の搬送が進み、その先端が上記端部印刷範囲を抜け出し、その後、ステップS12において、記録用紙146の搬送位置が中央部記録位置であると判断されると(S12のYes側)、続いて、ステップS13では、可動支持部104が図16(c)が示す位置T3に位置しているかどうかが判断される。ここに、位置T3は、可動リブ121の搬送方向上流側の端部と第1固定リブ103の溝116側の端部とが略一致する位置である。なお、現時点では、可動支持部104は図15(c)が示す位置T2で静止されているため、可動支持部104は上記位置T3に位置していない。ところで、位置T3は、記録用紙146の端部(先端または後端)が溝116に垂れ下がることなく、その端部が損傷することなく、第1固定リブ102から可動リブ121に記録用紙146の端部が導かれるような位置であればよい。従って、可動リブ121と第1固定リブ102との間に上記した幅ΔP程度の隙間があっても別段かまわない。
ステップS13において、可動支持部104が位置T3に位置していないと判断されると(S13のNo側)、次順のステップS14において、可動支持部104が位置T3(図16(c)参照)にスライド移動される。即ち、図16(a)が示す位置T2から同図(b)および(c)が示すように、記録用紙146の搬送方向とは逆の方向へ、即ち、位置T2から搬送方向上流側へ可動支持部104がスライド移動される。このとき、可動支持部104は、記録用紙146が間欠搬送される一改行幅だけスライド移動される。そして、上記逆方向へのスライド移動の後に、画像記録後の記録用紙146が搬送方向下流側へ間欠搬送される(S15)。その後、ステップS7へ進む。
一方、ステップS13において、可動支持部104が位置T3に位置していると判断された場合は(S13のYes側)、それ以上の可動支持部104の逆方向へのスライド移動は停止され、記録用紙146の間欠搬送のみが行われる(S15)。
ステップS12において、記録用紙146の搬送位置が中央部記録位置ではないと判断されると、即ち、記録用紙146が搬送ローラ対89及び排紙ローラ対92の双方によって狭持されていない場合は、可動支持部104を搬送方向とは逆の方向へスライド移動させず、画像記録後の記録用紙146のみを搬送方向下流側へ間欠搬送させる(S15)。このように、本実施形態では、記録用紙146が搬送ローラ対89及び排紙ローラ対92の双方によって狭持されつつ搬送されているときに、即ち、記録用紙146が可動リブ121との摩擦力によって引っ張られることのない安定した状態のときに限って可動支持部104が逆方向へスライド移動されるため、記録用紙146の撓みが防止され、良好な画像記録が実現される。
なお、排紙ローラ対92のみによって記録用紙146が狭持搬送されている場合に可動支持部104が逆方向へスライド移動されてもよい。可動支持部104の逆方向へのスライド移動によって一旦記録用紙146が引っ張られて撓んだとしても、その後の記録用紙146の間欠搬送によりその撓みが解消されるからである。
記録用紙146の搬送が更に進み、図17(a)が示すように記録用紙146が搬送されると、ステップS9では記録用紙146の後端が上記端部印刷範囲に位置していると判断される(S9のYes側)。かかる判断は、CPU64によって監視されたステップ数に基づいて記録用紙146の搬送位置を把握することにより容易に行われ得る。上述の如く判断されると、記録用紙146の後端の搬送位置に応じたタイミング(スライド開始タイミング)で可動支持部104がスライド移動される。具体的には、まず、ステップS10において、可動支持部104が一改行分だけ搬送方向下流側へスライド移動される。その後、記録用紙146が一改行分だけ間欠搬送される(S11)。このとき、可動支持部104は、可動リブ121の搬送方向後端を記録用紙146の搬送方向後端よりも搬送方向下流側へ、少なくとも上記幅ΔP(所定幅に相当)だけずらした状態を維持しつつスライド移動される。従って、可動リブ121は記録用紙146によって常に覆い隠される。記録用紙146が一改行分だけ間欠搬送されると、その後、上記したステップS7に進む。即ち、可動支持部104のスライド移動が記録用紙146の搬送よりも早いタイミングで行われる。従って、この場合は、記録用紙146は可動支持部104のスライド移動に追従するように搬送される。なお、本実施形態では、記録用紙146の後端に画像が記録された後は、可動支持部104は図17に示すように、位置T2よりも搬送方向下流側の位置T4までスライド移動される。この位置T4は、隣り合う第2固定リブ102の間に予め定められた位置であり、本発明の第2位置に相当する。
なお、本実施形態では、ステップS10及びS11で説明したように、可動支持部104が所定幅だけスライド移動された後に、記録用紙146を間欠搬送させているが、例えば、記録用紙146の搬送速度と可動リブ121の移動速度とが同じ速度である場合や、記録用紙146の後端が稼働リブ121に追いつかない速度である場合は、可動支持部104のスライド移動が先に開始されればよく、可動支持部104のスライド移動中に記録用紙146の間欠搬送を開始させても別段かまわない。また、可動支持部104のスライド移動と記録用紙146の間欠搬送とを同期させて同時に開始させてもよい。いずれの場合であっても、記録用紙146の後端のインクが可動リブ121に付着して可動リブ121が汚れるという不具合は生じない。
このように、本実施形態では、ステップS9において記録用紙146の後端が上記端部印刷範囲に位置すると判断された場合は、上述したように、まず、可動支持部104がスライド移動され、その後、記録用紙146が搬送されるため、記録直後の後端が可動リブ121上を移動することはない。従って、記録用紙146の後端に吐出された未乾燥のインクが可動リブ121に付着するという不具合は生じず、記録用紙146の裏面がインクで汚れることはない。なお、本実施形態では、可動支持部104は、可動リブ121の搬送方向後端を記録用紙146の搬送方向後端よりも搬送方向下流側へ、少なくとも上記幅ΔP(所定幅に相当)だけずらした状態を維持しつつスライド移動される。これにより、可動リブ121は記録用紙146によって常に覆い隠されるため、可動リブ121にインクが付着することはない。
なお、上述した実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更することができることはもちろんである。例えば、上述の実施形態とは異なり、可動支持部104をスライド移動させる手段として、本出願人により先に出願された特願2005−152963または特願2005−375952の出願に記載された駆動機構を採用してもかまわない。