JP5060608B2 - アクセルペダル装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両等に適用されるアクセルペダル装置に関し、特に、ドライブバイワイヤーシステムを採用した車両に適用されるアクセルペダル装置に関する。
車両、特に自動車に搭載されるエンジンの燃焼状態、出力、回転制御等を、運転者の意図するアクセルコントロール以上に高精度かつきめ細かに制御する手法として、電子制御スロットルシステムすなわちドライブバイワイヤーシステムが知られている。この電子制御スロットルシステム(ドライブバイワイヤーシステム)は、アクセルペダルとスロットルバルブとをアクセルワイヤーで接続するのではなく、アクセルペダルの踏み込み量を電気信号に変換し、この変換された電気信号に基づいてエンジンの出力制御を行なうものである。
このドライブバイワイヤーシステムにおいては、スロットルバルブの操作荷重がペダル荷重としてアクセルペダルに作用しない。したがって、車両等を一定の速度で走行させる(アクセルペダルを一定の位置に保持する)場合、運転者が疲労しないようにこの荷重を補うような機構が要求される。また、エンジンの出力変動等により車両の加速度が変動し、運転者がその共振系の影響を受けてアクセルペダルの踏み込み量が容易に変動すると、車両の前後振動等を招くことになる。したがって、この振動等を防止するためにも、アクセルペダルの踏み込みに抵抗する力を発生する機構が要求される。
これらに対処するアクセルペダル装置として、例えば、特開平11−235936号公報等に記載されたものが知られている。この公報に開示のアクセルペダル装置は、アクセルペダルからの踏力により休止位置から最大踏み込み位置まで揺動させられるペダルアームと、ペダルアームを休止位置に向けて復帰させるリターンスプリングと、ペダルアームにより移動させられる可動摩擦部材と、この可動摩擦部材を元の位置に戻す戻しスプリングと、可動摩擦部材を摺動自在に案内するハウジング等により構成されている。そして、これら可動摩擦部材、ハウジング等により所定の摩擦力を発生する摩擦力発生機構が構成されている。
この摩擦力発生機構によれば、アクセルペダルを踏み込む際に一定の摩擦力が作用してアクセルペダルにペダル荷重を及ぼし、一方、アクセルペダルを戻す際にリターンスプリングの付勢力に拮抗する一定の摩擦力が作用してアクセルペダルの復帰力を低減させるように機能するものである。これによれば、アクセルペダルには所定の操作荷重(ペダル荷重)が作用するため、一定速度で走行する場合にアクセルペダルを所望の位置に保持することができ、運転者の疲労を軽減することができる。
ところで、上記摩擦力発生機構を備えたアクセルペダル装置においては、図28及び図29に示すように、アクセルペダルの踏力(ペダル荷重)とアクセルペダルの移動量(ストローク)との関係が、スロットルの全閉(アクセルペダルの踏み始め)から全開(最大踏み込み位置)に至るまで一定幅のヒステリシスとなっている。したがって、図28に示すように、スロットルの全開側で要求される踏力(ペダル荷重)に合わせると、全閉位置で復帰力が不足してアクセルレスポンス(アクセルフィーリング)が悪くなる虞がある。一方、図29に示すように、全閉側で要求される踏力(ペダル荷重)に合わせると、全開側で車両の振動に対して運転者あるいはアクセルペダルが共振して、運転性が悪くなる可能性があった。
特開平11−235936号公報
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、スロットルの全閉及び全開で要求される踏力(操作荷重)、すなわち、アクセルペダルの移動範囲全域で要求される踏力のヒステリシス特性を満たすと共に、構造の簡化、小型化を図れ、良好な運転性に寄与するアクセルペダル装置を提供することにある。
本発明のアクセルペダル装置は、アクセルペダルから伝わる踏力により休止位置から最大踏み込み位置まで移動可能なペダルアームと、このペダルアームを揺動自在に支持するペダル軸と、ペダルアームを休止位置に向けて復帰させるべく付勢する復帰スプリングと、ペダルアームの移動に伴って摩擦力を発生する摩擦力発生機構とを備えたアクセルペダル装置であって、上記摩擦力発生機構は、摩擦力を発生する摺動面を画定する摺動案内路と、ペダルアームが最大踏み込み位置に向けて移動する際に発生する摩擦力をその移動量に応じて増加させると共にペダルアームが休止位置に向けて移動する際に発生する摩擦力をその移動量に応じて減少させるべく、摺動案内路内に配置されかつペダルアームの移動に応じて摩擦力を変化させる摩擦力可変手段を有し、摩擦力可変手段は、ペダルアームから加えられる荷重により摺動案内路内を移動させられると共にこの荷重に応じてその移動方向と直交する方向に変位するべく摺動面に押し付けられる可動摩擦部材と、可動摩擦部材をペダルアームの荷重と拮抗する向きに付勢する付勢力を発生すると共にこの付勢力に応じてその移動方向と直交する方向に変位させるべく摺動面に可動摩擦部材を押し付けつつ元の位置に戻す戻しスプリングとを有し、可動摩擦部材は、摺動案内路により案内される方向の両側において、その中央部に向けてお互いに近づくように傾斜する第1傾斜面及び第2傾斜面を有し、可動摩擦部材とペダルアームの自由端部との間には、第1傾斜面に当接する傾斜面を有する第1当接部材が配置され、可動摩擦部材と戻しスプリングとの間には、第2傾斜面に当接する傾斜面を有する第2当接部材が配置されている、ことを特徴としている。
この構成によれば、アクセルペダルが踏まれてペダルアームが休止位置から最大踏み込み位置に移動する際には、摩擦力可変手段がその移動量に応じて摺動案内路内にて発生する摩擦力を増加させるため、復帰スプリングの付勢力にアクセルペダルの踏み込み量に伴って増加する摩擦力を加えた分がペダル荷重として作用し、一方、ペダルアームが最大踏み込み位置から休止位置に移動する(戻る)際には、摩擦力可変手段がその移動量に応じて摺動案内路内にて発生する摩擦力を減少させるため、復帰スプリングの付勢力からアクセルペダルの戻し量に伴って減少する摩擦力を減じた分がペダル荷重として作用することになる。
これにより、ペダル荷重の特性としては、休止位置で最小幅になりかつ最大踏み込み位置で最大幅となるヒステリシスが得られることになる。また、発生する摩擦力は、摺動案内路内の摺動面に対して作用し、ペダルアームが摩擦力発生機構に作用する方向に対して、ペダルアームの受ける反作用の方向が一致(180°反対の方向)するため、例えばペダルアームを支持するペダル軸等の構成部品に無理な力が加わることもなく、作動の信頼性が高まる。
特に、ペダルアームの踏み込み荷重により最大踏み込み位置に向けて可動摩擦部材が移動するとき、その移動量に応じて戻しスプリングの付勢力も大きくなるため、可動摩擦部材が摺動案内路(摺動面)に押し付けられる押付力、すなわち、摩擦力もその移動量に応じて増加し、一方、戻しスプリングの付勢力により休止位置に向けて可動摩擦部材が移動するとき、その移動量に応じて戻しスプリングの付勢力も小さくなるため、可動摩擦部材が摺動案内路(摺動面)に押し付けられる押付力、すなわち、摩擦力もその移動量に応じて減少する。具体的には、第1当接部材と第2当接部材との間に可動摩擦部材が挟持された状態で、ペダルアームから第1当接部材に踏み込み荷重が作用して最大踏み込み位置に向け移動するとき、戻しスプリングの付勢力に抗して可動摩擦部材が移動しつつ摩擦力を増加させ、一方、戻しスプリングから第2当接部材に付勢力が作用して休止位置に向け移動するとき、可動摩擦部材が移動しつつ摩擦力を減少させる。
上記構成において、摺動案内路は略円形の断面形状をなし、可動摩擦部材は、摺動案内路の内周面に密接する略環状をなしかつ少なくとも一部が周方向を横切る向きに切断されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、可動摩擦部材は円筒状の摺動案内路内を往復動し、可動摩擦部材が径方向外側に向けて押し付けられることで摩擦力を発生する。
上記構成において、ペダルアームの自由端部は、第1当接部材に対して係合及び離脱自在となっている、構成を採用することができる。
この構成によれば、ペダルアームが休止位置に向けて戻る際に、仮に可動摩擦部材、第1当接部材、あるいは第2当接部材がスティックして元の位置に戻らない場合が生じても、ペダルアームは確実に休止位置に戻ることになる。
上記構成をなすアクセルペダル装置によれば、スロットルの全閉及び全開で要求される踏力(操作荷重)、すなわち、アクセルペダルの移動範囲全域で要求される踏力のヒステリシス特性を満たすと共に、構造の簡化、小型化を達成でき、良好な運転性に寄与するアクセルペダル装置を得ることができる。
本発明に係るアクセルペダル装置の一実施形態を示す正面図である。 本発明に係るアクセルペダル装置の一実施形態を示す右側面図である。 アクセルペダル装置の一部をなす摩擦力発生機構を示す横断面図である。 アクセルペダル装置の一部をなす摩擦力発生機構を示す縦断面図である。 摩擦力可変手段を形成する可動摩擦部材、第1当接部材、及び第2当接部材を示す断面図である。 摩擦力可変手段の動作を説明する図である。 摩擦力可変手段における摩擦力とアクセルペダルのストロークとの関係を示すグラフである。 アクセルペダル装置における踏力のヒステリシスを示すグラフである。 本発明に係るアクセルペダル装置の他の実施形態を示す側面図である。 アクセルペダル装置の一部をなす摩擦力発生機構を示す縦断面図である。 アクセルペダル装置の一部をなす摩擦力発生機構を示す縦断面図である。 第1可動摩擦部材を示す斜視図である。 第2可動摩擦部材を示す斜視図である。 摩擦力可変手段の動作を説明する図である。 アクセルペダル装置における踏力のヒステリシスを示すグラフである。 本発明に係るアクセルペダル装置のさらに他の実施形態を示す側面図である。 図16に示すアクセルペダル装置の断面図である。 図16に示すアクセルペダル装置の断面図である。 復帰スプリングの平面図である。 復帰スプリングの側面図である。 ペダルアームを示す平面図である。 第1可動摩擦部材、第2可動摩擦部材、及び遊び荷重用スプリングを示す分解斜視図である。 戻しスプリングの平面図である。 戻しスプリングの側面図である。 摩擦力可変手段の動作を説明する図である。 本発明に係るアクセルペダル装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。 第1可動摩擦部材、第2可動摩擦部材、及び遊び荷重用スプリングを示す分解斜視図である。 従来のアクセルペダル装置における踏力のヒステリシスを示すグラフである。 従来のアクセルペダル装置における踏力のヒステリシスを示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。第1の実施形態に係るアクセルペダル装置は、図1及び図2に示すように、自動車等の車体に固定されるブラケット10、ブラケット10に固定されたペダル軸11、ペダル軸11により揺動自在に支持されたペダルアーム12、運転者が踏力を及ぼすアクセルペダル13、ペダル軸11の周りに配置された復帰スプリング14、ペダルアーム12の上端部(自由端部)12aの領域に配置された摩擦力発生機構20、アクセルペダル13の踏み込み量を検知するアクセルポジションセンサ30等を、その基本構成として備えている。
ペダルアーム12は、ペダル軸11を揺動支点として、その下端部に固着されたアクセルペダル13を有し、その上端部が摩擦力発生機構20に作用する自由端部12aを形成している。そして、アクセルペダル13の踏み込み量を調整することにより、ペダルアーム12がペダル軸11回りに揺動して、休止位置(図2中の実線にて示す位置)と最大踏み込み位置との間を移動し、摩擦力発生機構20に及ぼす荷重が調整されるようになっている。また、ペダルアーム12の自由端部12aには、図3及び図4に示すように、後述する第1当接部材24に対する係合及び離脱を確実に行わせるための専用部材12a´が取り付けられており、専用部材12a´を介して、ペダルアーム12の踏み込み荷重が伝達されるようになっている。尚、図2及び図4中の二点鎖線にて示す位置は、休止位置と最大踏み込み位置との間の途中の位置を示す。
復帰スプリング14は、ペダル軸11の周りにおいて、その一端部がブラケット10に掛止され、その他端部がペダルアーム12に掛止されており、休止位置から最大踏み込み位置側に向けて踏み込まれたペダルアーム12(アクセルペダル13)を元の休止位置に復帰させるための付勢力を及ぼすものである。
アクセルポジションセンサ30は、ブラケット10に固定されており、その回転軸に固着されたレバー31が、ペダルアーム12の一部に連結されている。そして、ペダルアーム12が揺動すると、この揺動変位がレバー31を介して回動変位に変換され、アクセルポジションセンサ30は、その回転軸の角度変位としてアクセルペダル13の踏み込み量を検知するようになっている。尚、アクセルポジションセンサ30は接触抵抗式のものであり、その構造は既知であるため、ここでの説明は省略する。
摩擦力発生機構20は、ペダルアーム12の移動に伴って摩擦力を発生するものであり、図3(横断面)及び図4(縦断面)に示すように、ブラケット10の筒状部10aに嵌合されて固着された円筒状のハウジング21、ハウジング21内に往復動自在に取り付けられた環状の可動摩擦部材22、可動摩擦部材22を元の位置へ(図3に示す位置へ)戻すように付勢する戻しスプリング23、ペダルアーム12の自由端部12aと可動摩擦部材22との間に配置された第1当接部材24、可動摩擦部材22と戻しスプリング23との間に配置された第2当接部材25等により構成されている。
ハウジング21は、ステンレス等の強度及び防錆性のある材料を用いて略円形の断面形状をなすように形成されており、その円筒状の内周面(内壁面)21aが摺動面として作用して、可動摩擦部材22を摺動自在に案内する摺動案内路を形成している。また、ハウジング21の下側には、図3及び図4に示すように、長尺な切り欠き(スリット)21bが形成されており、切り欠き(スリット)21bを通して、ペダルアーム12の自由端部12aがハウジング21の内部に往復動自在に挿入されている。
可動摩擦部材22は、図5に示すように、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により略環状に形成され、かつ、その周方向を横切る向きに2箇所で切断された2つの半円弧部材からなり、ハウジング21に挿入された状態でその外周表面22cが内周面(内壁面)21aに密接するようになっている。
また、可動摩擦部材22は、図5に示すように、ハウジング21(摺動案内路21a)により案内される方向の両側において、その中央部に向けてお互いに近づくように傾斜する第1傾斜面22a及び第2傾斜面22bを有している。すなわち、第1傾斜面22a及び第2傾斜面22bは、円錐の表面のうち裾部のみからなる表面形状をなし、中心側から外側に向かうにつれて厚みが厚くなるような断面形状となっている。
尚、ここでは、環状の可動摩擦部材22は、2箇所を切断して2つの半円弧部材として構成したが、これに限定されるものではなく、1箇所を切断して1つの環状部材として構成しても良く、又、複数箇所を切断して複数の円弧部材により構成しても良い。また、ここでは、可動摩擦部材22として環状のものを示したが、これに限らず分割された角形(四角)のものでも良い。
第1当接部材24は、図5に示すように、円板状のプレートに形成されると共にその一側部において、可動摩擦部材22の第1傾斜面22aと適合(当接)するように、円錐の表面のうち裾部のみからなる表面形状をなす傾斜面24aが形成されている。すなわち、第1当接部材24の傾斜面24aが第1傾斜面22aに当接されて押し付けられると、傾斜面24aのくさび作用により、環状の可動摩擦部材22は径方向外側に向かって押し広げられることになる。
第2当接部材25は、図5に示すように、略キャップ状に形成されると共にその一側部において、可動摩擦部材22の第2傾斜面22bと適合(当接)するように、円錐の表面のうち裾部のみからなる表面形状をなす傾斜面25aが形成され、その他側部において戻しスプリング23の一端側を収容する凹部25bが形成されている。すなわち、第2当接部材25の傾斜面25aが第2傾斜面22bに当接されて押し付けられると、傾斜面25aのくさび作用により、環状の可動摩擦部材22は径方向外側に向かって押し広げられることになる。
第1当接部材24及び第2当接部材25は、図5中の二点鎖線にて及び図6にて示すように、可動摩擦部材22を両側から挟持する状態で組み付けられ、両者は可動摩擦部材22から離れることなく当接した状態で移動することになる。
したがって、その移動の瞬間において、第1当接部材24の外側(図6中の右側)からペダルアーム12の踏み込み荷重Fが作用すると、この荷重Fに拮抗する向きに、第2当接部材25の外側(図6中の左側)から戻しスプリング23の付勢力Fが反力として作用することになる。
ここで、上記第1傾斜面22a及び傾斜面24aの法線と可動摩擦部材22の移動方向とのなす角度がθ1、上記第2傾斜面22b及び傾斜面25aの法線と可動摩擦部材22の移動方向とのなす角度がθ2となるように設定されている。
したがって、アクセルペダル13(ペダルアーム12)が踏み込まれるとき、可動摩擦部材22は最大踏み込み位置に向けて(図6中の左側に向けて)移動することになり、このとき、可動摩擦部材22には、移動方向と直交する方向に変位させるべく押し付ける(ハウジング21の内周面(内壁面)21aに向けて押し付ける)押付力として、N1=Ftanθ1、N2=Ftanθ2が作用する。すなわち、アクセルペダル13が踏み込まれて、可動摩擦部材22が最大踏み込み位置に(図6中の左側に)向けて移動する際に、摺動面の動摩擦係数をμとすると、移動方向と反対の向きに(図6中の右向きに)摩擦力f1=μN1+μN2が作用することになる。
一方、アクセルペダル13(ペダルアーム12)が踏み込む前の休止位置に向けて戻されるとき、可動摩擦部材22は休止位置に向けて(図6中の右側に向けて)移動することになり、このとき、可動摩擦部材22には、移動方向と直交する方向に変位させるべく押し付ける(ハウジング21の内周面(内壁面)21aに向けて押し付ける)押付力として、同様にN1=Ftanθ1、N2=Ftanθ2が作用する。
すなわち、アクセルペダル13が戻されて、可動摩擦部材22が休止位置に(図6中の右側に)向けて移動する際に、摺動面の動摩擦係数をμとすると、移動方向と反対の向きに(図6中の左向きに)摩擦力f2=−(μN1+μN2)が作用することになる。
この力関係を図7に基づいて説明すると、踏み込み荷重F及び付勢力Fはアクセルペダル13の踏込み量(x)の1次関数として表されるため、休止位置から最大踏み込み位置に向かう際の摩擦力f1は、
f1=μF(x)(tanθ1+tanθ2)
で表される。したがって、休止位置(x=0)の時点では、
f1(0)=μF(0)(tanθ1+tanθ2)
の摩擦力が作用し、一方、最大踏み込み位置(x=max)に至る時点では、
f1(max)=μF(max)(tanθ1+tanθ2)
の摩擦力が作用することになる。このとき、
f1(max)>f1(0)
の関係にあるため、ペダルアーム12が最大踏み込み位置に向けて移動する際にその移動量(x)に応じて、発生する摩擦力f1は直線的に増加することになる。
一方、アクセルペダル13すなわちペダルアーム12が、最大踏み込み位置から休止位置に向かう際の摩擦力f2は、
f2=−μF(x)(tanθ1+tanθ2)
で表される。したがって、最大踏み込み位置(x=max)の時点では、
f2(max)=−μF(max)(tanθ1+tanθ2)
の摩擦力が作用し、一方、休止位置(x=0)に至る時点では、
f2(0)=−μF(0)(tanθ1+tanθ2)
の摩擦力が作用することになる。このとき、
│f2(max)│>│f2(0)│
の関係にあるため、ペダルアーム12が休止位置に向けて移動する際にその移動量(x)に応じて、発生する摩擦力f2は直線的に減少することになる。
上記の説明から明らかなように、ハウジング21の摺動案内路21a内に配置された可動摩擦部材22、第1当接部材24、第2当接部材25、戻しスプリング23等により、ペダルアーム12が最大踏み込み位置に向けて移動する際に、発生する摩擦力f1をその移動量に応じて増加させると共に、ペダルアーム12が休止位置に向けて移動する際に、発生する摩擦力f2をその移動量に応じて減少させる、すなわち、ペダルアーム12の移動に応じて摩擦力を変化させる摩擦力可変手段が構成されている。
さらに、上記摩擦力可変手段により得られる摩擦力f1,f2と、復帰スプリング14の付勢力及び戻しスプリング23の付勢力の合力F0とを重ね合わせると、アクセルペダル13の踏力特性は、図8に示すようなヒステリシスとして得られることになる。すなわち、最大踏み込み位置に向かう往路と休止位置に戻る復路とにおいて、休止位置側ではヒステリシスが小さく(幅狭)になり、最大踏み込み位置側ではヒステリシスが大きく(幅広)になる。
したがって、従来のワイヤー付きアクセルペダル装置の場合と類似した踏力特性が得られ、これにより、好ましい操作フィーリング、レスポンス特性、車両の制御性等が得られる。
次に、上記アクセルペダル装置の動作について、図8に基づいて説明する。
先ず、アクセルペダル13が踏み込まれていない状態で、ペダルアーム12(及びアクセルペダル13)は休止位置(スロットルバルブの全閉状態に対応する位置)に位置している。このとき、ペダルアーム12には、復帰スプリング14の付勢力及び戻しスプリング23の付勢力の合力F0(0)が休止位置に向けて作用している。
この休止位置にある状態から、アクセルペダル13が踏まれてペダルアーム12が最大踏み込み位置に向けて移動し始めると、ペダルアーム12の自由端部12a(12a´)から第1当接部材24に踏み込み荷重Fが作用すると共に、第2当接部材25に戻しスプリング23の付勢力Fが反力として作用する。と同時に、摩擦力f1が作用し始める。このとき、P1の位置における踏力(ペダル荷重)は、f1(0)+F0(0)となる。
続いて、アクセルペダル13がさらに踏み込まれると、踏力はf1+F0の線に沿って増加し、最大踏み込み位置P2に達した時点で、その踏力はf1(max)+F0(max)となり、最大値を示すことになる。
次に、この最大踏み込み位置にアクセルペダル13が位置する状態から踏力を弱めて戻し始めると、今度は逆向きに摩擦力f2が作用し始める。このとき、P3の位置における踏力は、f2(max)+F0(max)となる。
続いて、アクセルペダル13が戻され続けると、踏力はf2+F0の線に沿って減少し、休止位置P4に達した時点で、その踏力はf2(0)+F0(0)となり、最小値を示すことになる。
アクセルペダル13の踏み込み及び戻し動作が行なわれると、踏力は上記ヒステリシスに沿って変化することになる。
ところで、可動摩擦部材22、第1当接部材24、あるいは第2当接部材25が、仮にハウジング21内でスティックして戻らなくなった場合でも、ペダルアーム12の自由端部12a(12a´)は、第1当接部材24に対して係合及び離脱自在に構成されているため、復帰スプリング14の付勢力により、アクセルペダル13及びペダルアーム12は、必ず休止位置に戻されることになる。
したがって、アクセルポジションセンサ30によりアクセルペダル13の作動状態を検知する際のフェールセーフ機能が確保されることになる。
以上述べたように、この実施形態に係るアクセルペダル装置によれば、可動摩擦部材22、第1当接部材24、第2当接部材25等の簡単な構造により、又、第1傾斜面22a及び傾斜面24aの角度θ1及び第2傾斜面22b及び傾斜面25aの角度θ2を適宜選定することにより、踏力(ペダル荷重)のヒステリシス特性を自由に設定することができ、アクセルペダル13の操作フィーリングを向上させることができ、アクセルコントロールの容易なアクセルペダル装置を得ることができる。また、車両における振動あるいは異常音等の発生を容易に防止することができる。さらに、構造が簡単である故に、組み付けが容易で、製造コストを低減することができる。
図9ないし図15は、本発明に係るアクセルペダル装置の他の実施形態を示すものであり、図9ないし図13は構成図、図14及び図15は動作及び踏力特性を説明するための図である。
この実施形態に係るアクセルペダル装置は、図9に示すように、自動車等の車体49に固定されるブラケット50、ブラケット50に固定されたペダル軸51、ペダル軸51により揺動自在に支持されたペダルアーム52、運転者が踏力を及ぼすアクセルペダル53、ペダル軸51の周りに配置された復帰スプリング54、ペダル軸51よりも上方の領域においてペダルアーム52に固着されたレバー55、レバー55の上端部(ペダルアーム52の自由端部に相当する部分)55aの領域に配置された摩擦力発生機構60、アクセルペダル53の踏み込み量を検知するアクセルポジションセンサ(不図示)等を、その基本構成として備えている。
ペダルアーム52は、ペダル軸51を揺動支点として、その下端部に固着されたアクセルペダル53を有し、その上端部すなわちレバー55の上端部55aが摩擦力発生機構60に作用する自由端部を形成している。そして、アクセルペダル53の踏み込み量を調整することにより、ペダルアーム52がペダル軸51回りに揺動して、休止位置(図9中の実線にて示す位置)と最大踏み込み位置との間を移動し、摩擦力発生機構60に及ぼす荷重が調整されるようになっている。また、ペダルアーム52の自由端部55aには、図9ないし図11に示すように、後述する第1可動摩擦部材63に対する係合及び離脱を確実に行わせるための当接部材56が取り付けられており、当接部材56を介して、ペダルアーム52の荷重が伝達されるようになっている。尚、図9中の二点鎖線にて示す位置は、休止位置と最大踏み込み位置との間の途中の位置を示す。
復帰スプリング54は、ペダル軸51の周りにおいて、その一端部がブラケット50に掛止され、その他端部がペダルアーム52に掛止されており、休止位置から最大踏み込み位置側に向けて踏み込まれたペダルアーム52(アクセルペダル53)を元の休止位置に復帰させるための付勢力を及ぼすものである。
アクセルポジションセンサは、ブラケット50に固定されており、そのセンサ駆動ピン70が、図9ないし図11に示すように、当接部材56と共にレバー55の自由端部(上端部)55aに連結されている。そして、ペダルアーム52が揺動すると、この揺動変位がセンサ駆動ピン70を介してアクセルポジションセンサへ取り込まれ、アクセルペダル53の踏み込み量を検知するようになっている。尚、アクセルポジションセンサは接触抵抗式のものであり、その構造は既知であるため、ここでの説明は省略する。
摩擦力発生機構60は、ペダルアーム52(レバー55)の移動に伴って摩擦力を発生するものであり、図10及び図11の縦断面に示すように、ブラケット50に固着された筒状のハウジング61及びエンドプレート62、ハウジング61内に往復動自在に取り付けられた第1可動摩擦部材63及び第2可動摩擦部材64、第2可動摩擦部材64を元の位置へ(図10に示す位置へ)戻すように付勢する戻しスプリング65、第1可動摩擦部材63と第2可動摩擦部材64との間に配置された遊び荷重用スプリング66等により構成されている。
ハウジング61は、ステンレス等の強度及び防錆性のある材料を用いて略矩形の断面形状をなすように形成されており、その左側端部には閉鎖壁部61aが形成され、その右側端部には開口部61bが形成されている。そして、図10に示すように、ハウジング61内に、第1可動摩擦部材63、遊び荷重用スプリング66、第2可動摩擦部材64、及び戻しスプリング65が順次に収容された状態で、開口部61bを塞ぐようにエンドプレート62が取り付けられている。
したがって、ハウジング61の内壁面61cが摺動面として作用し、第1可動摩擦部材63及び第2可動摩擦部材64を摺動自在に案内する摺動案内路を形成している。また、ハウジング61の下側には、図10及び図11に示すように、長尺な切り欠き(スリット)61dが形成されており、切り欠き61dを通して、ペダルアーム52の自由端部、すなわち、レバー55の自由端部55a及び当接部材56がハウジング61の内部に往復動自在に挿入されている。尚、ハウジング61の側壁には、センサ駆動ピン70の取り付け及び移動を許容するための切り欠き(不図示)が形成されている。
第1可動摩擦部材63は、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成されており、図12に示すように、略矩形形状をなす本体部63a、本体部63aの下側に一体的に形成されてハウジング61の内壁面61cに沿う方向に伸長する2本の接触アーム63b、接触アーム63bの伸長方向に対してその法線のなす角度がθとなるように形成された第1傾斜面63c、本体部63aの略中央部に形成された凹部63d等により形成されている。
第2可動摩擦部材64は、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成されており、図13に示すように、略矩形形状をなす本体部64a、本体部64aの上側に一体的に形成されてハウジング61の内壁面61cに沿う方向に伸長する2本の接触アーム64b、接触アーム64bの伸長方向に対してその法線のなす角度がθとなるように形成された第2傾斜面64c、本体部64aの略中央部において先端が閉鎖するように形成された筒状部64d等により形成されている。
遊び荷重用スプリング66は、圧縮型のコイルスプリングからなり、図10及び図11に示すように、その一端部が第1可動摩擦部材63の凹部63dに収容され、又、その他端部が第2可動摩擦部材64の筒状部64d内に収容されて、第1可動摩擦部材63と第2可動摩擦部材64とをお互いに遠ざける向きに付勢力を発生している。尚、遊び荷重用スプリング66の付勢力は、最も圧縮された状態において、最も伸びた状態にある戻しスプリング65の付勢力よりも小さいか若しくは同等となるように設定されている。
戻しスプリング65は、図10及び図11に示すように、圧縮型のコイルスプリングで直径の大きい第1戻しスプリング65a、同様に圧縮型のコイルスプリングで直径の小さい第2戻しスプリング65bにより構成され、第2可動摩擦部材64とエンドプレート62との間に配置されている。このように、戻しスプリング65を、二つのコイルスプリングにより構成することで、付勢力を設定する際の自由度が増加し、又、装置の小型化も行なうことができる。
上記第1可動摩擦部材63と第2可動摩擦部材64とは、図10及び図11に示すように、ハウジング61の摺動案内路(内壁面)61cに沿って移動する方向において、第1傾斜面63cと第2傾斜面64cとが当接し得るように、お互いに対向して配置されている。すなわち、第1可動摩擦部材63と第2可動摩擦部材64とがお互いに押し付けられると、第1傾斜面63cと第2傾斜面64cとのくさび作用により、第1可動摩擦部材63が下向きにかつ第2可動摩擦部材64が上向きに、すなわち摺動案内路(内壁面)61cに案内されて移動する方向に対して直交する方向にお互いに遠ざかるように、ハウジング61の内壁面61cに押し付けられることになる。
例えば、図14に示すように、第1可動摩擦部材63の外側(図14中の左側)からペダルアーム52(レバー55)の荷重Fが作用すると、第1可動摩擦部材63と第2可動摩擦部材64とは離れることなく当接した状態で移動することから、その移動の瞬間においては、第2可動摩擦部材64の外側(図14中の右側)から、この荷重Fと拮抗する向きに戻しスプリング65の付勢力Fが反力として作用することになる。
したがって、アクセルペダル13(ペダルアーム12)が踏み込まれるとき、第1可動摩擦部材63及び第2可動摩擦部材64は最大踏み込み位置に向けて(図14中の右側に向けて)移動することになり、このとき、第1可動摩擦部材63を下向きにかつ第2可動摩擦部材64を上向きに、お互いを遠ざけるようにハウジング61の内壁面61cに向けて押し付ける押付力として、N=Ftanθが作用する。
すなわち、アクセルペダル53が踏み込まれて、第1可動摩擦部材63及び第2可動摩擦部材64が最大踏み込み位置に(図14中の右側に)向けて移動する際に、第1可動摩擦部材63及び第2可動摩擦部材64と摺動案内路(内壁面)61cとの間には、摺動面の動摩擦係数をμとすると、移動方向と反対の向きに(図14中の左向きに)摩擦力f1=μN、すなわち、f1=μFtanθが作用することになる。
一方、アクセルペダル53(ペダルアーム52)が踏み込む前の休止位置に向けて戻されるとき、第1可動摩擦部材63及び第2可動摩擦部材64は、戻しスプリング65の付勢力Fにより休止位置に向けて(図14中の左側に向けて)移動することになり、このとき、前述同様に第1可動摩擦部材63を下向きにかつ第2可動摩擦部材64を上向きに、それぞれを押し付ける押付力として、N=Ftanθが作用する。
すなわち、アクセルペダル53の踏み込みが戻されて、第1可動摩擦部材63及び第2可動摩擦部材64が休止位置に(図14中の左側に)向けて移動する際に、第1可動摩擦部材63及び第2可動摩擦部材64と摺動案内路(内壁面)61cとの間には、摺動面の動摩擦係数をμとすると、移動方向と反対の向きに(図14中の右向きに)摩擦力f2=−μN、すなわち、f2=−μFtanθが作用することになる。
この力関係を説明すると、ペダルアーム52の荷重F及び戻しスプリング65の付勢力(反力)Fはアクセルペダル53の踏み込み量(x)の1次関数として表されるため、休止位置から最大踏み込み位置に向かう際の摩擦力f1は、
f1=μF(x)tanθ
で表される。したがって、休止位置(x=0)の時点では、
f1(0)=μF(0)tanθ
の摩擦力が作用し、一方、最大踏み込み位置(x=max)に至る時点では、
f1(max)=μF(max)tanθ
の摩擦力が作用することになる。このとき、
f1(max)>f1(0)
の関係にあるため、ペダルアーム52が最大踏み込み位置に向けて移動する際にその移動量(x)に応じて、発生する摩擦力f1は直線的に増加することになる。
一方、アクセルペダル53すなわちペダルアーム52が、最大踏み込み位置から休止位置に向かう際の摩擦力f2は、
f2=−μF1(x)tanθ
で表される。
したがって、最大踏み込み位置(x=max)の時点では、
f2(max)=−μF(max)tanθ
の摩擦力が作用し、一方、休止位置(x=0)に至る時点では、
f2(0)=−μF(0)tanθ
の摩擦力が作用することになる。このとき、
│f2(max)│>│f2(0)│
の関係にあるため、ペダルアーム52が休止位置に向けて移動する際にその移動量(x)に応じて、発生する摩擦力f2は直線的に減少することになる。すなわち、前述の図7に示すものと同様の摩擦力が得られることになる。
上記の説明から明らかなように、ハウジング61の摺動案内路(内壁面)61c内に配置された第1可動摩擦部材63、第2可動摩擦部材64、戻しスプリング65等により、ペダルアーム52が最大踏み込み位置に向けて移動する際に、発生する摩擦力f1をその移動量に応じて増加させると共に、ペダルアーム52が休止位置に向けて移動する際に、発生する摩擦力f2をその移動量に応じて減少させる、すなわち、ペダルアーム52の移動に応じて摩擦力を変化させる摩擦力可変手段が構成されている。
さらに、上記摩擦力可変手段により得られる摩擦力f1,f2と、復帰スプリング54の付勢力、遊び荷重用スプリング66の付勢力、及び戻しスプリング65の付勢力とを重ね合わせると、アクセルペダル53の踏力(ペダル荷重)特性は、図15に示すようなヒステリシスとして得られることになる。すなわち、最大踏み込み位置に向かう往路と休止位置に戻る復路とにおいて、休止位置側ではヒステリシスが小さく(幅狭)なり、レスポンス、操作フィーリング等が良好になり、又、アクセルペダル53の戻り不良に対する余裕代を大きくすることができる。一方、最大踏み込み位置側ではヒステリシスが大きく(幅広)になり、車両(エンジン)の制御性が良好になる。
次に、上記アクセルペダル装置の動作について、図15に基づいて説明する。
先ず、アクセルペダル53が踏み込まれていない状態で、ペダルアーム52(及びアクセルペダル53)は休止位置(スロットルバルブの全閉状態に対応する位置)に位置している。このとき、ペダルアーム52には、復帰スプリング54及び遊び荷重用スプリング66の付勢力が作用し、図10に示すように、当接部材56がハウジング61の閉鎖壁部61aに当接し、休止位置に停止している。
また、図10に示すように、第2可動摩擦部材64は、戻しスプリング65の付勢力により付勢されて、その腕部64bの一端部がハウジング61の閉鎖壁部61aに形成されたストッパ61a´に当接し、休止位置に停止している。さらに、第1可動摩擦部材63は、遊び荷重用スプリング66により付勢されて、第2可動摩擦部材64から離脱すると共に当接部材56に当接し、休止位置に停止している。
この休止位置にある状態から、アクセルペダル53が踏み込まれてペダルアーム52が最大踏み込み位置に向けて移動し始めると、ペダルアーム52の自由端部52a(レバー55の上端部55aに取り付けられた当接部材56)から加わる荷重Fにより、第1可動摩擦部材63は、遊び荷重用スプリング66を圧縮させつつ(図10中右向きに)移動し始め、所定の距離だけ移動した時点すなわち図15中のP1点で、図11に示すように、第2可動摩擦部材64に当接する。
この移動行程においては、第1可動摩擦部材63はハウジング61の摺動案内路(内壁面)61cを摺動するが、この摺動による摩擦力は極力小さくなるように設定されている。
さらに、アクセルペダル53が踏み込まれると、第1可動摩擦部材63及び第2可動摩擦部材64は、図11中右向きに移動し始めると共に、第1可動摩擦部材63の第1傾斜面63cと第2可動摩擦部材64の第2傾斜面64cとのくさび作用により、第1可動摩擦部材63の腕部63b及び第2可動摩擦部材64の腕部64bとハウジング61の摺動案内路(内壁面)61cとの間には、図11中左向きに摩擦力f1が作用し始める。そして、アクセルペダル53の踏力は、f1+F0の線に沿って増加し、最大踏み込み位置P2に達した時点で、その踏力はf1(max)+F0(max)となり、最大値を示すことになる。
次に、この最大踏み込み位置にアクセルペダル53が位置する状態から踏力を弱めて戻し始めると、戻しスプリング65の付勢力Fにより、第2可動摩擦部材64及び第1可動摩擦部材63は休止位置に向けて(図11中の左側に向けて)移動し始める。と同時に、第2可動摩擦部材64の第2傾斜面64cと第1可動摩擦部材63の第1傾斜面63cとのくさび作用により、第2可動摩擦部材64の腕部64b及び第1可動摩擦部材63の腕部63bとハウジング61の摺動案内路(内壁面)61cとの間には、図11中右向きに摩擦力f2が作用し始める。ここで、図15中のP3点における摩擦力f2は、f2(max)+F0(0)となる。そして、アクセルペダル53の踏力は、f2+F0の線に沿って減少し、第2可動摩擦部材64の腕部64cがストッパ61a´に当接して停止した時点(図15中のP4点)で、摩擦力f2は作用しなくなる。そして、図15中のP5を通って、アクセルペダル53は休止位置に至る。
アクセルペダル53の踏み込み及び戻し動作が行なわれると、踏力は図15に示すヒステリシスに沿って変化することになる。
ところで、第2可動摩擦部材64あるいは第1可動摩擦部材63が、仮にハウジング61内でスティックして戻らなくなった場合でも、ペダルアーム52の自由端部52aすなわちレバー55の上端部55aに取り付けられた当接部材56は、第1可動摩擦部材63に対して係合及び離脱自在に構成されているため、復帰スプリング54の付勢力により、アクセルペダル53及びペダルアーム52は、必ず休止位置に戻されることになる。
したがって、アクセルポジションセンサによりアクセルペダル53の作動状態を検知する際のフェールセーフ機能が確保されることになる。
以上述べたように、この実施形態に係るアクセルペダル装置によれば、第1可動摩擦部材63、第2可動摩擦部材64、ハウジング61等の簡単な構造により、又、第1傾斜面63c及び第2傾斜面64cの角度θを適宜選定することにより、踏力(ペダル荷重)のヒステリシス特性を自由に設定することができ、アクセルペダル53の操作フィーリングを向上させることができ、アクセルコントロールの容易なアクセルペダル装置を得ることができる。また、車両における振動あるいは異常音等の発生を容易に防止することができる。さらに、構造が簡単である故に、組み付けが容易で、製造コストを低減することができる。
図16ないし図25は、本発明に係るアクセルペダル装置のさらに他の実施形態を示すものであり、図16ないし図24は構成図、図25は動作を説明するための図である。
この実施形態に係るアクセルペダル装置は、図16ないし図18に示すように、自動車等の車体90に固定されるブラケット100、ブラケット100に一体的に形成されたハウジング110、ハウジング110を覆うカバー120、ハウジング110及びカバー120に回動自在に支持されたペダル軸130、ペダル軸130に固着されて揺動自在に支持されたペダルアーム140、運転者が踏力を及ぼすアクセルペダル150、ペダル軸130の周りに配置された復帰スプリング160、ペダルアーム140の自由端部141の領域に配置された摩擦力発生機構170、アクセルペダル150の踏み込み量を検知するアクセルポジションセンサ180、センサコネクタ190等を、その基本構成として備えている。
ハウジング110には、図17及び図18に示すように、ペダル軸130を嵌合して回動自在に支持するための嵌合穴(軸受穴)111、嵌合穴111の中心から距離Dだけ偏倚した位置にあるC点を中心とした曲率半径をもつ内側環状溝112、同様にC点を中心とした曲率半径をもつ外側環状溝113、内側環状溝112のさらに内側において上側に偏倚した位置に形成されたセンサ用空間部114と、外側環状溝113のさらに外側においてC点を中心とした曲率半径をもつ円弧状溝115等が形成されている。
ここでは、円弧状溝115の中心をC点としたため、外側環状溝113にできるだけ近付けて形成でき、これにより、装置の小型化を行うことができる。尚、円弧状溝115の中心をペダル軸130と一致させることも可能であり、この場合、ペダルアーム140の自由端部141の移動軌跡が円弧状溝115の曲率と一致するため、より確実な係合動作が行われる。
また、円弧状溝115は、図17に示すように、略中間部分から左側が幅広くかつ右側が幅狭に形成されて、その境界部分において段差部115aが形成されている。外側環状溝113には、その一部から径方向外側に向かう掛止溝113aが形成されており、後述する戻しスプリング173の一端部173aを掛止できるようになっている。内側環状溝112には、その一部から径方向内側に向かう掛止溝112aが形成されており、復帰スプリング160の一端部161を掛止できるようになっている。
復帰スプリング160は、図19及び図20に示すように、ステンレス等の材料により形成された捩りスプリングであり、ハウジング110の内側環状溝112に収容された状態で、掛止溝112aに掛止される一端部161、ペダルアーム140の掛止孔142(第21図参照)に掛止される他端部162を備えている。そして、休止位置から最大踏込み位置側に向けて踏込まれたペダルアーム140(アクセルペダル150)を元の休止位置に復帰させるための付勢力を及ぼすものである。
ペダルアーム140は、図18及び図21に示すように、ペダル軸130を圧入嵌合により固着するための嵌合孔140a、摩擦力発生機構170に作用するべく略直角に折り曲げられた自由端部141、復帰スプリング160の他端部162を掛止する掛止孔142、アクセルペダル150を保持するロッド150aを連結する下側連結部143等を備えた板状の長尺な部材として形成されている。
そして、アクセルペダル150の踏み込み量を調整することにより、ペダルアーム140がペダル軸130回りに揺動して、休止位置(図16中の実線にて示す位置)と最大踏み込み位置(図16中の二点鎖線にて示す位置)との間を移動し、摩擦力発生機構170に及ぼす荷重が調整されるようになっている。また、ペダルアーム140の自由端部141は、後述する第1可動摩擦部材171に当接するように配置されて、第1可動摩擦部材171に対する係合及び離脱が確実に行なわれるようになっており、又、ハウジング110に埋設されたゴム部材200に当接して、休止位置に停止するようになっている。
アクセルポジションセンサ180は、ハウジング110のセンサ用空間部114に配置されており、ペダルアーム140と一体的に回動するロータ、ハウジング110に固定されたステータ、永久磁石、ホール素子等からなる非接触式のセンサである。そして、ペダルアーム140が揺動すると、この揺動変位がホール素子を通過する磁束の変化として検出され、アクセルペダル150の踏み込み量を検知するようになっている。
摩擦力発生機構170は、ペダルアーム140(アクセルペダル150)の移動に伴って摩擦力を発生するものであり、図17に示すように、ハウジング110の円弧状溝115内に往復動自在に取り付けられた第1可動摩擦部材171及び第2可動摩擦部材172、第2可動摩擦部材172を元の位置へ(図17に示す位置へ)戻すように付勢する戻しスプリング173、第1可動摩擦部材171と第2可動摩擦部材172との間に配置された遊び荷重用スプリング174等により構成されている。
ここで、ハウジング110の円弧状溝115の内壁面は摺動面として作用し、第1可動摩擦部材171及び第2可動摩擦部材172を摺動自在に案内する摺動案内路を形成している。尚、ハウジング110の下側には、図18に示すように、長尺な切り欠き(スリット)110aが形成されており、ペダルアーム140に一体的に固着されたペダル軸130が取り付けられ、カバー120により覆われた状態で、切り欠き110aを通して、ペダルアーム140の下側連結部143がハウジング110の外部に露出するようになっている。
第1可動摩擦部材171は、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成されており、図22に示すように、円弧状溝115と同一の曲率をなす円弧面171a,171b、円弧面171a,171bの接線に対してその法線のなす角度がθとなるように形成された第1傾斜面171c、第1傾斜面171cと反対側に形成された背面171d、第1傾斜面171cに開口するように形成された筒状穴171e等により形成されている。
第2可動摩擦部材172は、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成されており、図22に示すように、円弧状溝115と同一の曲率をなす円弧面172a,172b、円弧面172a,172bの接線に対してその法線のなす角度がθとなるように形成された第2傾斜面172c、第2傾斜面172cと反対側に形成された背面172d、第2傾斜面172cに開口するように形成された筒状穴172e等により形成されている。
遊び荷重用スプリング174は、図22に示すように、圧縮型のコイルスプリングからなり、その一端部が第1可動摩擦部材171の筒状穴171eに収容され、又、その他端部が第2可動摩擦部材172の筒状穴172eに収容されて、第1可動摩擦部材171と第2可動摩擦部材172とをお互いに遠ざける向きに付勢力を発生している。
尚、遊び荷重用スプリング174の付勢力は、最も圧縮された状態において、最も伸びた状態にある戻しスプリング173の付勢力よりも小さいか若しくは同等となるように設定されている。
戻しスプリング173は、図23及び図24に示すように、ステンレス等の材料により形成された捩りスプリングであり、ハウジング110の外側環状溝113に収容された状態で、掛止溝113aに掛止される一端部173a、第2可動摩擦部材172の背面172dに掛止される他端部173bを備えている。そして、第2可動摩擦部材172を元の休止位置に向けて(図17に示す位置に向けて)復帰させるための付勢力を及ぼしている。
上記第1可動摩擦部材171と第2可動摩擦部材172とは、図17に示すように、ハウジング110の円弧状溝115すなわち摺動案内路(内壁面)に沿って移動する方向において、第1傾斜面171cと第2傾斜面172cとが当接し得るように、お互いに対向して配置されている。すなわち、第1可動摩擦部材171と第2可動摩擦部材172とがお互いに押し付けられると、第1傾斜面171cと第2傾斜面172cとのくさび作用により、第1可動摩擦部材171が径方向内側に(下向きに)かつ第2可動摩擦部材172が径方向外側に(上向きに)、すなわち円弧状溝115に案内されて移動する方向に対して直交する方向にお互いに遠ざかるように、第1可動摩擦部材171の円弧面171aが円弧状溝115の内側の内壁面に向けて、第2可動摩擦部材172の円弧面172bが円弧状溝115の外側の内壁面に向けてそれぞれ押し付けられることになる。
例えば、図25に示すように、第1可動摩擦部材171の外側(図25中の右側)からペダルアーム140の荷重Fが作用すると、第1可動摩擦部材171と第2可動摩擦部材172とは離れることなく当接した状態で左側に向かって移動することから、その移動の瞬間においては、第2可動摩擦部材172の外側(図25中の左側)から、この荷重Fと拮抗する向きに戻しスプリング173の付勢力Fが反力として作用することになる。
したがって、アクセルペダル150(ペダルアーム140)が踏み込まれるとき、第1可動摩擦部材171及び第2可動摩擦部材172は最大踏み込み位置に向けて(図25中の左側に向けて)移動することになり、このとき、第1可動摩擦部材171を下向きにかつ第2可動摩擦部材172を上向きに、お互いを遠ざけるように押し付ける(円弧状溝115の内壁面に向けて押し付ける)押付力として、N=Ftanθが作用する。
すなわち、アクセルペダル150が踏み込まれて、第1可動摩擦部材171及び第2可動摩擦部材172が最大踏み込み位置に(図25中の左側に)向けて移動する際に、第1可動摩擦部材171及び第2可動摩擦部材172と円弧状溝115の内壁面との間には、摺動面の動摩擦係数をμとすると、移動方向と反対の向きに(図25中の右向きに)摩擦力f1=μN、すなわち、f1=μFtanθが作用することになる。
一方、アクセルペダル150(ペダルアーム140)が踏み込む前の休止位置に向けて戻されるとき、第1可動摩擦部材171及び第2可動摩擦部材172は、戻しスプリング173の付勢力Fにより休止位置に向けて(図25中の右側に向けて)移動することになり、このとき、前述同様に第1可動摩擦部材171を下向きにかつ第2可動摩擦部材172を上向きに、それぞれを押し付ける押付力として、N=Ftanθが作用する。
すなわち、アクセルペダル150の踏み込みが戻されて、第1可動摩擦部材171及び第2可動摩擦部材172が休止位置に(図25中の右側に)向けて移動する際に、第1可動摩擦部材171及び第2可動摩擦部材172と円弧状溝115の内壁面との間には、摺動面の動摩擦係数をμとすると、移動方向と反対の向きに(図25中の左向きに)摩擦力f2=−μN、すなわち、f2=−μFtanθが作用することになる。
この力関係を説明すると、ペダルアーム140の荷重F及び戻しスプリング173の付勢力(反力)Fはアクセルペダル150の踏込み量(x)の関数として表されるため、休止位置から最大踏み込み位置に向かう際の摩擦力f1は、
f1=μF(x)tanθ
で表される。したがって、休止位置(x=0)の時点では、
f1(0)=μF(0)tanθ
の摩擦力が作用し、一方、最大踏み込み位置(x=max)に至る時点では、
f1(max)=μF(max)tanθ
の摩擦力が作用することになる。このとき、
f1(max)>f1(0)
の関係にあるため、ペダルアーム140が最大踏み込み位置に向けて移動する際にその移動量(x)に応じて、発生する摩擦力f1は直線的に増加することになる。
一方、アクセルペダル150すなわちペダルアーム140が、最大踏み込み位置から休止位置に向かう際の摩擦力f2は、
f2=−μF1(x)tanθ
で表される。したがって、最大踏込み位置(x=max)の時点では、
f2(max)=−μF(max)tanθ
の摩擦力が作用し、一方、休止位置(x=0)に至る時点では、
f2(0)=−μF(0)tanθ
の摩擦力が作用することになる。このとき、
│f2(max)│>│f2(0)│
の関係にあるため、ペダルアーム140が休止位置に向けて移動する際にその移動量(x)に応じて、発生する摩擦力f2は直線的に減少することになる。すなわち、前述の第7図に示すものと同様の摩擦力が得られることになる。
上記の説明から明らかなように、ハウジング110の摺動案内路としての円弧状溝115内に配置された第1可動摩擦部材171、第2可動摩擦部材172、戻しスプリング173(尚、戻しスプリング173は、その他端部173bのみが円弧状溝115内に配置されている)等により、ペダルアーム140が最大踏み込み位置に向けて移動する際に、発生する摩擦力f1をその移動量に応じて増加させると共に、ペダルアーム140が休止位置に向けて移動する際に、発生する摩擦力f2をその移動量に応じて減少させる、すなわち、ペダルアーム140の移動に応じて摩擦力を変化させる摩擦力可変手段が構成されている。
さらに、上記摩擦力可変手段により得られる摩擦力f1,f2と、復帰スプリング160の付勢力、遊び荷重用スプリング174の付勢力、及び戻しスプリング173の付勢力とを重ね合わせると、アクセルペダル150の踏力(ペダル荷重)特性は、前述の図15に示すようなヒステリシスとして得られることになる。すなわち、最大踏み込み位置に向かう往路と休止位置に戻る復路とにおいて、休止位置側ではヒステリシスが小さく(幅狭)なり、レスポンス、操作フィーリング等が良好になり、又、アクセルペダル150の戻り不良に対する余裕代を大きくすることができる。一方、最大踏み込み位置側ではヒステリシスが大きく(幅広)になり、車両(エンジン)の制御性が良好になる。
次に、上記アクセルペダル装置の動作について、図15に基づいて説明する。
先ず、アクセルペダル150が踏み込まれていない状態で、ペダルアーム140(及びアクセルペダル150)は休止位置(スロットルバルブの全閉状態に対応する位置)に位置している。このとき、ペダルアーム140には、復帰スプリング160及び遊び荷重用スプリング174の付勢力が作用し、図17に示すように、その自由端部141がハウジング110に埋設されたゴム部材200に当接し、休止位置に停止している。
また、第2可動摩擦部材172は、戻しスプリング173の付勢力により付勢されて、その第2傾斜面172cの上端部が円弧状溝115の段差部115aに当接し、休止位置に停止している。さらに、第1可動摩擦部材171は、遊び荷重用スプリング174により付勢されて、第2可動摩擦部材172から離脱すると共にその背面171bがペダルアーム140の自由端部141に当接し、休止位置に停止している。
この休止位置にある状態から、アクセルペダル150が踏み込まれてペダルアーム140が最大踏み込み位置に向けて移動し始めると、ペダルアーム140の自由端部141から加わる荷重Fにより、第1可動摩擦部材171は、遊び荷重用スプリング174を圧縮させつつ(図17中左向きに)移動し始め、所定の距離だけ移動した時点すなわち図15中のP1点で、第2可動摩擦部材172に当接する。この移動行程においては、第1可動摩擦部材171はハウジング110の円弧状溝115を摺動するが、この摺動による摩擦力は極力小さくなるように設定されている。
さらに、アクセルペダル150が踏み込まれると、第1可動摩擦部材171及び第2可動摩擦部材172は、図17中左向きに移動し始めると共に、第1可動摩擦部材171の第1傾斜面171cと第2可動摩擦部材172の第2傾斜面172cとのくさび作用により、第1可動摩擦部材171の円弧面171a及び第2可動摩擦部材172の円弧面172bと円弧状溝115の内壁面との間には、図17中右向きに摩擦力f1が作用し始める。そして、アクセルペダル150の踏力は、f1+F0の線に沿って増加し、最大踏み込み位置P2に達した時点で、その踏力はf1(max)+F0(max)となり、最大値を示すことになる。
尚、最大踏み込み位置に向けて移動する際に、第1可動摩擦部材171の外側の円弧面171bは、その一部が円弧状溝115の外側の内壁面から離れることになるが、くさび作用により円弧状溝115の内側の内壁面に向けて押し付けられているため、安定して移動することができる。
次に、この最大踏み込み位置にアクセルペダル150が位置する状態から踏力を弱めて戻し始めると、戻しスプリング173の付勢力Fにより、第2可動摩擦部材172及び第1可動摩擦部材171は休止位置に向けて(図17中の右側に向けて)移動し始める。と同時に、第2可動摩擦部材172の第2傾斜面172cと第1可動摩擦部材171の第1傾斜面171cとのくさび作用により、第2可動摩擦部材172の円弧面172b及び第1可動摩擦部材171の円弧面171aと円弧状溝115の内壁面との間には、図17中左向きに摩擦力f2が作用し始める。ここで、図15中のP3点における摩擦力f2は、f2(max)+F0(0)となる。そして、アクセルペダル150の踏力は、f2+F0の線に沿って減少し、第2可動摩擦部材172の第2傾斜面172cの上端部が段差部115aに当接して停止した時点(図15中のP4点)で、摩擦力f2は作用しなくなる。そして、図15中のP5を通って、アクセルペダル150は休止位置に至る。
アクセルペダル150の踏み込み及び戻し動作が行なわれると、踏力は図15に示すヒステリシスに沿って変化することになる。
ところで、第2可動摩擦部材172あるいは第1可動摩擦部材171が、仮に円弧状溝115内でスティックして戻らなくなった場合でも、ペダルアーム140の自由端部141は、第1可動摩擦部材171に対して係合及び離脱自在に構成されているため、復帰スプリング160の付勢力により、アクセルペダル150及びペダルアーム140は、必ず休止位置に戻されることになる。
したがって、アクセルポジションセンサ180によりアクセルペダル150の作動状態を検知する際のフェールセーフ機能が確保されることになる。
以上述べたように、この実施形態に係るアクセルペダル装置によれば、第1可動摩擦部材171、第2可動摩擦部材172、ハウジング110の円弧状溝115等の簡単な構造により、又、第1傾斜面171c及び第2傾斜面172cの角度θを適宜選定することにより、踏力(ペダル荷重)のヒステリシス特性を自由に設定することができ、アクセルペダル150の操作フィーリングを向上させることができ、アクセルコントロールの容易なアクセルペダル装置を得ることができる。また、車両における振動あるいは異常音等の発生を容易に防止することができる。さらに、構造が簡単である故に、組み付けが容易で、製造コストを低減することができる。
図26及び図27は、さらに他の実施形態に係るアクセルペダル装置を示すものであり、上記図16ないし図25に示す実施形態に対して、遊び荷重用スプリング174の配置を変更した以外は同様の構成となっている。それ故に、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
この実施形態に係るアクセルペダル装置においては、図26及び図27に示すように、ハウジング110に形成された円弧状溝215が、略中央部よりも右寄りに位置において段差部215aを有し、段差部215aを境に、左側が幅広かつ右側が幅狭の溝に形成され、第1可動摩擦部材271及び第2可動摩擦部材272を摺動自在に案内する摺動案内路を形成している。
第1可動摩擦部材271は、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成されており、図27に示すように、円弧状溝215と同一の曲率をなす円弧面271a,271b、円弧面271a,271bの接線に対してその法線のなす角度がθとなるように形成された第1傾斜面271c、第1傾斜面271cと反対側に形成された背面271d、背面271dに開口するように形成された筒状穴271e等により形成されている。
第2可動摩擦部材272は、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成されており、図27に示すように、円弧状溝215と同一の曲率をなす円弧面272a,272b、円弧面272a,272bの接線に対してその法線のなす角度がθとなるように形成された第2傾斜面272c、第2傾斜面272cと反対側に形成された背面272d等により形成されている。
次に、上記アクセルペダル装置の動作について説明すると、先ず、アクセルペダル150が踏まれていない状態で、第2可動摩擦部材272は戻しスプリング173の付勢力により付勢されて、その第2傾斜面272cが第1可動摩擦部材271の第1傾斜面271cに当接し、さらに、第1可動摩擦部材271は、その背面271dの上端部が円弧状溝215の段差部215aに当接し、休止位置に停止している。また、ペダルアーム140は、遊び荷重用スプリング174及び復帰スプリング160の付勢力により付勢されて、その自由端部141がゴム部材200に当接し、休止位置に停止している。
この休止位置にある状態から、アクセルペダル150が踏み込まれてペダルアーム140が最大踏込み位置に向けて移動し始めると、ペダルアーム140の自由端部141が、遊び荷重用スプリング174を圧縮させつつ(図26中左向きに)移動し始め、所定の距離だけ移動した時点で第1可動摩擦部材271の背面271dに当接する。
さらに、アクセルペダル150が踏み込まれると、第1可動摩擦部材271及び第2可動摩擦部材272は、図26中左向きに移動し始めると共に、第1可動摩擦部材271の第1傾斜面271cと第2可動摩擦部材272の第2傾斜面272cとのくさび作用により、第1可動摩擦部材271の円弧面271a及び第2可動摩擦部材272の円弧面272bと円弧状溝215の内壁面との間には、図26中右向きに摩擦力f1が作用し始める。
尚、最大踏み込み位置に向けて移動する際に、第1可動摩擦部材271の外側の円弧面271bは、常に円弧状溝215の外側の内壁面に沿って移動するため、より一層安定して移動することができる。
次に、最大踏み込み位置にアクセルペダル150が位置する状態から踏力を弱めて戻し始めると、戻しスプリング173の付勢力Fにより、第2可動摩擦部材272及び第1可動摩擦部材271は休止位置に向けて(図26中の右側に向けて)移動し始める。と同時に、第2可動摩擦部材272の第2傾斜面272cと第1可動摩擦部材271の第1傾斜面271cとのくさび作用により、第2可動摩擦部材272の円弧面272b及び第1可動摩擦部材271の円弧面271aと円弧状溝215の内壁面との間には、図26中左向きに摩擦力f2が作用し始める。そして、第1可動摩擦部材272の背面271dの上端部が段差部215aに当接して停止した時点で、摩擦力f2は作用しなくなる。
尚、その他の動作及び踏力ヒステリシスについては、前述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
上記実施形態においては、摩擦力可変手段として、可動摩擦部材、摺動案内路、戻しスプリング等により構成されるものを示したが、これに限定されるものではなく、アクセルペダルを踏み込む際に、発生する摩擦力をそのストロークの増加に比例して増加させ、一方、アクセルペダルを戻す際に、発生する摩擦力をその戻しストロークに反比例して減少させる構成であれば、いずれの構成であっても採用することができる。
以上述べたように、本発明のアクセルペダル装置によれば、摩擦力発生機構として、摩擦力を発生する摺動面を画定する摺動案内路内において、ペダルアームが最大踏み込み位置に向けて移動する際に発生する摩擦力をその移動量に応じて増加させると共にペダルアームが休止位置に向けて移動する際に発生する摩擦力をその移動量に応じて減少させる摩擦力可変手段を設けたことにより、ペダル荷重の特性としては、休止位置側で小さく(幅狭)でかつ最大踏み込み位置側で大きく(幅広に)なるヒステリシスが得られる。
これにより、アクセルペダルのレスポンス、操作フィーリング、車両制御性等を向上させることができ、又、振動等を防止することができる。特に、発生する摩擦力は、摺動案内路内においてのみ作用するため、例えばペダルアームを支持するペダル軸等の如く摺動案内路の外部にある構成部品に対して負荷荷重として作用することはない。したがって、ペダル軸等に無理な力が加わることはなく、装置における作動の信頼性が向上する。
また、アクセルペダルの戻り不良に対する余裕代を大きくとることができ、これにより、確実な動作を保証することができる。
さらに、摩擦力可変手段を、円弧状に往復動自在な第1可動摩擦部材及び第2可動摩擦部材、円弧状の摺動案内路、捩りスプリング等からなる戻しスプリング等により構成することにより、構成部品の集約化が行なえ、より一層の装置の小型化を達成することができる。
以上述べたように、本発明に係るアクセルペダル装置は、自動車等の車両に適用されるアクセルペダル装置として有用であり、特に、ドライブバイワイヤーシステムを採用した自動車等のアクセルペダル装置として用いるのに適している。
等においても有用である。
10 ブラケット
11 ペダル軸
12 ペダルアーム
12a 上端部(自由端部)
13 アクセルペダル
14 復帰スプリング
20 摩擦力発生機構
21 ハウジング
22 可動摩擦部材
22a 第1傾斜面
22b 第2傾斜面
23 戻しスプリング
24 第1当接部材
24a 傾斜面
25 第2当接部材
25a 傾斜面
30 アクセルポジションセンサ
31 レバー

Claims (3)

  1. アクセルペダルから伝わる踏力により休止位置から最大踏み込み位置まで移動可能なペダルアームと、前記ペダルアームを揺動自在に支持するペダル軸と、前記ペダルアームを休止位置に向けて復帰させるべく付勢する復帰スプリングと、前記ペダルアームの移動に伴って摩擦力を発生する摩擦力発生機構とを備え、
    前記摩擦力発生機構は、摩擦力を発生する摺動面を画定する摺動案内路と、前記ペダルアームが前記最大踏み込み位置に向けて移動する際に発生する摩擦力をその移動量に応じて増加させると共に前記ペダルアームが前記休止位置に向けて移動する際に発生する摩擦力をその移動量に応じて減少させるべく、前記摺動案内路内に配置されかつ前記ペダルアームの移動に応じて摩擦力を変化させる摩擦力可変手段を有し、
    前記摩擦力可変手段は、前記ペダルアームから加えられる荷重により前記摺動案内路内を移動させられると共に前記荷重に応じてその移動方向と直交する方向に変位するべく前記摺動面に押し付けられる可動摩擦部材と、前記可動摩擦部材を前記ペダルアームの荷重と拮抗する向きに付勢する付勢力を発生すると共に前記付勢力に応じてその移動方向と直交する方向に変位させるべく前記摺動面に前記可動摩擦部材を押し付けつつ元の位置に戻す戻しスプリングを有し、
    前記可動摩擦部材は、前記摺動案内路により案内される方向の両側において、その中央部に向けてお互いに近づくように傾斜する第1傾斜面及び第2傾斜面を有し、
    前記可動摩擦部材と前記ペダルアームの自由端部との間には、前記第1傾斜面に当接する傾斜面を有する第1当接部材が配置され、
    前記可動摩擦部材と前記戻しスプリングとの間には、前記第2傾斜面に当接する傾斜面を有する第2当接部材が配置されている、
    ことを特徴とするアクセルペダル装置。
  2. 前記摺動案内路は、略円形の断面形状をなし、
    前記可動摩擦部材は、前記摺動案内路の内周面に密接する略環状をなし、かつ、少なくとも一部が周方向を横切る向きに切断されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のアクセルペダル装置。
  3. 前記ペダルアームの自由端部は、前記第1当接部材に対して係合及び離脱自在となっている、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアクセルペダル装置。
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